説明

淡水化発電プラント

【課題】発電設備における発電サイクルの熱効率を向上させることができるとともに各機器の動力を低減させることができ、さらに十分に精製された淡水を得ることができる淡水化発電プラントを提供する。
【解決手段】淡水化発電プラントは発電設備1および淡水化設備2から構成されている。発電設備1は、外部から第1の海水が導入されるボイラー11と、発電を行うためのタービン13と、凝縮器14とを有している。この発電設備1において発電用媒体がボイラー11、タービン13および凝縮器14を順に循環移動するようになっている。淡水化設備2は、第1の海水よりも温度が低い第2の海水を凝縮器14に送る海水ポンプ19と、凝縮器14から第2の海水が送られる逆浸透膜装置22とを有している。逆浸透膜装置22は、凝縮器14から送られる第2の海水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の表面海水等を熱源とし低温の深層海水等を冷源として発電を行うとともに、深層海水等から淡水を生成する淡水化発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆浸透膜を利用した海水淡水化装置が知られている。このシステムは、海水に対して通常5MPa以上の圧力をかけ、濃度による浸透圧以上にして塩水より淡水を得る方法である。しかしながら、大量に淡水を得るためには昇圧ポンプなど電力を使用する設備が必要であり、通常、燃料や電力配線網からの電力供給が必要となる。また、フラッシュ蒸発法を使用する場合でも何らかの熱源が必要となる。
【0003】
一方、海洋温度差発電と造水とを組み合わせたシステムに関する提案において、ランキンサイクルによる発電とフラッシュ蒸発とを組み合わせた装置等が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。このような方法では、CO発生量の低減に効果があり、水不足を解消する装置として大きな注目を集めている。図5は、このような従来の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
図5に示す淡水化発電プラントは、発電設備と淡水化設備とに分けられる。発電設備は、外部から海洋の表層水S(温水)が表層水ポンプ86により導入されるボイラー81と、発電を行うためのタービン82と、凝縮器83とを有しており、発電用媒体、具体的には例えばアンモニアがボイラー81、タービン82および凝縮器83を順に循環移動するようになっている。この循環移動は、ポンプ84により行われる。また、淡水化設備は、海洋の深層海水D(冷水)を凝縮器83に送る深層水ポンプ87と、ボイラー81の下流側に接続されこのボイラー81から送られた表層水をフラッシュ蒸発させるフラッシュ蒸発器88と、凝縮器83の下流側に接続されるとともにフラッシュ蒸発器88から水蒸気が送られる淡水凝縮器89と、淡水凝縮器89により凝縮された淡水を回収する淡水回収タンク90とを有している。
【0004】
ここで、発電設備において、発電用媒体であるアンモニアはボイラー81において外部から導入された表層水(温水)との熱交換によって加熱され、この加熱により生成されるアンモニア蒸気がタービン82に送られる。そして、当該アンモニア蒸気により、タービン82に接続された発電機85で発電が行われるようになっている。
また、淡水化設備において、深層水ポンプ87から凝縮器83に送られる深層海水(冷水)は熱交換によって、タービンから排出されたアンモニア蒸気を冷却するようになっている。また、淡水凝縮器89は、フラッシュ蒸発器88から送られた水蒸気を、発電設備の凝縮器83から送られた深層海水を用いて熱交換により凝縮するようになっている。さらに、淡水回収タンク90は、淡水凝縮器89により凝縮された淡水を回収するようになっている。
【0005】
而して、海洋の深層水はミネラル豊富でかつ雑菌がほとんど存在しない非常にきれいな水であり、化粧水や健康的価値のある深層水からの造水が望まれていた。また、濃縮水は健康食品等の原料としての活用が望まれていた。
【0006】
しかしながら、通常、海水の淡水化においてこのようなフラッシュ蒸発を適用した場合には、フラッシュ蒸発器88においてミスト発生などに伴う塩分の移動を無視することができないという問題があった。
【0007】
また、例えば特許文献1等には、発電サイクルを造水装置に組み合わる他の構成が提案されている。しかしながら、発電設備のボイラー側、凝縮器側共に下流側に造水装置の熱交換器がある場合には、ランキンサイクルの沸騰側および凝縮側温度は一定のため、熱交換器入口側で大きな差とする必要があること、および凝縮器の使用温度が限られて発電側で大きな温度差を取ることができず、このため発電サイクルの利点である温度変化を沸騰、凝縮プロセスに十分に取り込むことができず、熱効率向上や表層水、深層水の駆動ポンプの低減をそれほど見込むことができないという問題があり、発電サイクルの熱効率向上、発電設備の各機器の動力の低減が望まれるという課題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−47015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、発電設備における発電サイクルの熱効率を向上させることができるとともに各機器の動力を低減させることができ、さらに十分に精製された淡水を得ることができる淡水化発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外部から第1の海水が導入されるボイラー、発電を行うためのタービン、および凝縮器を有し、発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、および前記凝縮器から第2の海水が送られる逆浸透膜装置を有する淡水化設備と、を備え、前記発電設備において、前記発電用媒体はボイラーにおいて外部から導入された第1の海水との熱交換によって加熱され、この加熱された発電用媒体のうち気体が前記タービンに送られて当該気体によりタービンで発電が行われ、前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記逆浸透膜装置は前記凝縮器から送られる第2の海水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラントである。ここで、第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることが好ましい。
【0011】
このような淡水化発電プラントによれば、発電設備に流入される海水の出入り口における温度差を大きくすることができるので、この海水の流量を減少させて発電設備の各機器の動力を低減することができる。また、第2の海水として海洋の深層水を用いた場合には、雑菌の少ない清浄な健康飲料や化粧水の原料となる、深層水からの淡水を得ることができるとともに、深層水温度を発電設備で上昇させることができるので、逆浸透膜装置の逆浸透膜を通過する際の拡散係数を大きくすることができ、深層水の透過率が向上するので淡水化発電プラント自体をより小型化することができる。また、逆浸透膜装置自体は極めて省エネルギー性能に優れている。
【0012】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電用媒体は、アンモニアと水との混合物であることが好ましい。このことにより、発電設備の熱効率を向上させることと動力の低減を行うことができる。
【0013】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行う制御設備を更に備え、当該制御設備は、前記淡水化設備を夜間のみにおいて運転させるよう当該淡水化設備の運転制御を行うようになっていることが好ましい。このように、夜間における電力需要が少なくなるときに淡水化設備を選択的に作動するようにしたことにより、電力需要の少ない夜間の電力使用に貢献することができ、このため電力負荷の平準化に寄与することができる。
【0014】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記淡水化設備は、前記発電設備の凝縮器から排出された第2の海水を海洋へ直接戻すための戻り管を更に有し、前記逆浸透膜装置から排出された第2の海水は前記戻り管の途中部分に送られるようになっていることが好ましい。このことにより、濃い塩分水溶液の密度効果により冷却水の循環が促進されて深層水取水動力が低減されるとともに、排水は重力により自然に深海に戻っていく効果を持つので淡水化発電プラントの環境への悪影響をより小さくすることができる。
【0015】
本発明は、外部から第1の海水が導入されるボイラー、発電を行うためのタービン、および凝縮器を有し、発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、前記発電設備のボイラーの下流側に接続されこのボイラーから送られた第1の海水を蒸発させる蒸発器、前記凝縮器の下流側に接続されるとともに前記蒸発器から蒸気が送られる淡水凝縮器、および前記淡水凝縮器の下流側に設けられた逆浸透膜装置を有する淡水化設備と、を備え、前記発電設備において、前記発電用媒体はボイラーにおいて外部から導入された第1の海水との熱交換によって加熱され、この加熱された発電用媒体のうち気体が前記タービンに送られて当該気体によりタービンで発電が行われ、前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記淡水凝縮器は、前記蒸発器から送られた蒸気を、前記発電設備の凝縮器から送られた第2の海水を用いて熱交換により凝縮し、前記逆浸透膜装置はこの凝縮された凝縮水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラントである。ここで、第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることが好ましい。
【0016】
このような淡水化発電プラントによれば、逆浸透膜装置によって凝縮水中に含まれる塩分を更に除去することにより、塩分濃度が十分に低い、精製された水を得ることができる。
【0017】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電設備は、海洋から前記ボイラーに第1の海水を導入するための第1の取水管を有し、この第1の取水管の取水口はメッシュにより覆われていることが好ましい。また、前記淡水化設備は、海洋から前記海水ポンプに第2の海水を導入するための第2の取水管を有し、この第2の取水管の取水口はメッシュにより覆われていることが好ましい。このことにより、海洋生物の発電設備や淡水化設備内への侵入を防止することができる。
【0018】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電設備は、海洋から前記ボイラーに第1の海水を導入するための第1の取水管を有し、この第1の取水管は、前記発電設備のボイラー側の一部分が地中に配設され、取水口近傍において地中から海洋に突出するような構造となっていることが好ましい。また、前記淡水化設備は、海洋から前記海水ポンプに第2の海水を導入するための第2の取水管を有し、この第2の取水管は、前記淡水化設備の海水ポンプ側の一部分が地中に配設され、取水口近傍において地中から海洋に突出するような構造となっていることが好ましい。このことにより、取水システムのコストを低減することができるとともに、構造信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明は、外部から第1の海水が導入されこの第1の海水を用いて熱交換によって発電用媒体を加熱するボイラー、前記ボイラーから送られた発電用媒体を液体および気体に分離する気液分離器、前記気液分離器から送られた気体を用いて発電を行うためのタービン、前記気液分離器から送られた液体および前記タービンから送られた気体が合流して送られる凝縮器を有し、前記発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、導入される流体の冷却を行うための氷蓄熱装置、第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記氷蓄熱装置および前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、前記氷蓄熱装置に接続された淡水回収タンク、および前記氷蓄熱装置に接続された濃縮液回収タンクを有する淡水化設備と、を備え、前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記氷蓄熱装置は前記海水ポンプから送られた第2の海水から製氷を行って淡水を分離し、この氷蓄熱装置から前記淡水回収タンクに淡水が送られるとともに前記濃縮液回収タンクに第2の海水の濃縮液が送られ、前記氷蓄熱装置は前記発電設備の凝縮器に冷水を送り、この凝縮器に送られる冷水は熱交換によって前記発電用媒体を更に冷却するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラントである。ここで、第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることが好ましい。
【0020】
このような淡水化発電プラントによれば、凝縮、沸騰の温度は均一でなく、凝縮が進む程凝縮温度は低くなり、沸騰が進む程沸騰温度は高くなる。従って向流操作によって発電設備のボイラーや凝縮器の出入り口における温度差を大きくすることができる。また、沸騰最終温度を高くでき、発電用媒体の循環サイクルの熱効率を向上させることができる。この二つの効果により発電設備の各機器の動力を低減させることができる。また、第2の海水として海洋の深層水を用いた場合には、雑菌の少ない清浄な健康飲料や化粧水の原料となる、深層水からの淡水を得ることができる。
【0021】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行う制御設備を更に備え、当該制御設備は、夜間において前記氷蓄熱装置の運転を行いこの氷蓄熱装置において第2の海水から製氷を行い、昼間において前記氷蓄熱装置から前記発電設備の凝縮器に冷水を送るよう前記淡水化設備の運転制御を行うようになっていることが好ましい。このことにより、淡水化発電プラントを、電力需要の変動に対応可能なものとすることができる。
【0022】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電設備は、前記気液分離器により分離された液体を貯留するための外部タンクを更に有し、前記制御設備は、前記氷蓄熱装置を動作させないときには前記気液分離器により分離された液体を外部タンクに所定の量だけ貯留して、発電用媒体の低沸点成分濃度を増加させて前記凝縮器の動作圧力に対する前記タービンの動作圧力の比を大きくしてこのタービンにおける発電電力量を増大させ、前記氷蓄熱装置を動作させるときには前記外部タンクに貯留された液体を再び循環系に戻し、タービンと凝縮器の動作圧力を調整して発電電力量を低下させるよう、前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行うことが好ましい。このことにより、昼間と夜間の間における電力負荷変動に対応した適切な運転状態を実現させることができる。
【0023】
上記の淡水化発電プラントにおいては、前記発電用混合媒体は、アンモニアと水との混合物であることが好ましい。このことにより、発電設備における熱的性能を高くすることができ、この発電設備の各種ボイラー、凝縮器等の熱交換器の伝熱面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の淡水化発電プラントによれば、発電設備における発電サイクルの熱効率を向上させることができるとともに各機器の動力を低減させることができ、さらに十分に精製された淡水を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明による淡水化発電プラントの第1の実施の形態を示す図である。具体的には、図1は、本実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態の淡水化発電プラントは、発電設備1と、淡水化設備2と、これらの発電設備1および淡水化設備2を制御する制御設備3とから構成されている。発電設備1は、外部から海洋の表層水(第1の海水)が導入されるボイラー11と、発電を行うためのタービン13と、凝縮器14とを有している。この発電設備1において、アンモニアと水との混合媒体(発電用媒体)がボイラー11、タービン13および凝縮器14を順に循環移動するようになっている。また、淡水化設備2は、海洋の深層海水(第1の海水よりも温度が低い第2の海水)を凝縮器14に送る深層水ポンプ(海水ポンプ)19と、凝縮器14から深層海水が送られる逆浸透膜装置22とを有している。
【0027】
ここで、発電設備1において、発電用媒体である混合媒体はボイラー11において外部から導入された温水との熱交換によって加熱され、この加熱された混合媒体のうち気体がタービン13に送られてこの気体によりタービン13で発電が行われるようになっている。
また、淡水化設備2において、深層水ポンプ19から凝縮器14に送られる深層海水は熱交換によって混合媒体を冷却し、逆浸透膜装置22は凝縮器14から送られる深層海水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっている。さらに、淡水化設備2は、凝縮器14から排出された深層海水を海洋へ直接戻すための戻り管28を更に有し、逆浸透膜装置22から排出された深層海水は戻り管28の途中部分に送られるようになっている。
【0028】
さらに、制御設備3は、淡水化設備2を夜間のみにおいて運転させるよう当該淡水化設備2の運転制御を行うようになっている。
【0029】
以下、このような淡水化発電プラントの各構成要素について詳述する。
【0030】
図1に示すように、発電設備1は、ボイラー11と、気液分離器12と、タービン13と、凝縮器14と、熱交換器16と、凝縮液体の搬送を行うための混合媒体ポンプ17と、弁34と、接続配管とを有している。また、淡水化設備2は、搬送ポンプ21と、逆浸透膜装置22と、淡水回収タンク23と、動力回収タービン25と、接続配管とを有している。海洋のうち表層水Sは熱源となり、この表層水Sをボイラー11に送るための表層水ポンプ18および配管が配設されている。また、海洋のうち深層水Dは冷源となり、前述のように深層水Dを凝縮器14に送るための深層水ポンプ19および配管が配設されている。本実施の形態では、深層水ポンプ19は淡水化設備2に含まれているものとする。
【0031】
まず、発電設備1について説明する。
この淡水化発電プラントのシステムは、海洋温度差を駆動源とするシステムである。このため、例えば熱帯または亜熱帯地方の比較的温暖な海洋水を熱源とする。海洋の表層水Sから表層水ポンプ18によって26〜30℃程度の表層海水を汲み上げ、混合媒体のボイラー11の熱源とする。ボイラー11において表層海水により熱を受けた混合媒体は沸騰して二相流となり、気液分離器12へ流出する。
【0032】
ここで、混合媒体はアンモニアと水との混合物からなるので、非共沸混合物であるアンモニア水が気液分離する場合、混合媒体の低沸点成分であるアンモニア濃度の高い気体とアンモニア濃度の低い液体とに分離する。ボイラー11で最初に沸騰し始める気体のアンモニア濃度は極めて高く、次第に沸騰が進むにつれ低濃度へと段階的に移行する。このため、ボイラー11で実際に沸騰が生じる温度は当初は比較的低い温度となるが、混合媒体が伝熱面を進むにつれて次第にこの温度が上昇する。このため、表層海水と混合媒体とを向流操作で熱交換させれば表層海水の温度に近い状態まで最終的な温度レベルを上げることができる。
【0033】
しかも、表層海水の出口温度レベルは、熱交換器16から混合媒体がボイラー11に入ってくる温度レベルに近い温度まで低減させることが可能であり、これによってボイラー11に出入りする表層海水の温度差を大きくすることができる。このことにより、同じ熱量をボイラー11に伝える場合、供給される表層海水の流量を極めて小さくすることができ、表層水ポンプ18の動力を極めて小さいレベルに抑えることができる。
【0034】
気液分離器12で分離された気体はタービン13で膨張仕事を行い、発電機26によって電力を発生させる。一方、気液分離器12内の液体部分は熱交換器16において、混合媒体ポンプ17(後述)によって凝縮器14から送られた混合媒体と熱交換を行い、その後弁34を通過し、タービン13から排出される少し湿分を含む気体と混合する。十分低い温度レベルであるタービン13からの排出気体は、上記の液体に吸収されて温度が上昇し、凝縮器14に流入する。凝縮器14では、6、7℃の深層海水と向流操作により熱交換されて凝縮される。凝縮された液体は混合媒体ポンプ17で熱交換器16に送られ、この熱交換器16で上記の気液分離した液体と熱交換を行い、最終的にボイラー11に送られる。このようにして発電設備1における混合媒体の循環が行われる。
【0035】
次に、淡水化設備2について説明する。
深層水ポンプ19によって発電設備1の凝縮器14で凝縮が行われて温められた深層水は、6MPa程度の圧力まで搬送ポンプ21によって加圧されて逆浸透膜装置22に送られる。この逆浸透膜装置22において淡水が逆浸透膜により搾り出され、淡水回収タンク23に回収される。一方、淡水が搾り出された後の、濃度の高くなった深層水は動力回収タービン25によって動力が回収される。この動力は搬送ポンプ21の動力の一部に使用される。そして、動力回収タービン25から排出された深層水は戻り管28に戻される。
【0036】
この戻り管28に戻された濃縮液は塩分濃度が高く比重が大きいので、戻り管28にあるうちは密度差による深層水ポンプ19の動力の回収に役立つ。また、深層水排出口から海中に放出された濃縮液を含み表層水と比較して未だ冷たく比重が大きな水は、海洋の深層に向けて自然に落下していき、表層の海洋に影響を与えないようにすることができる。これらの動力回収および自然落下の効果を生み出すために、数十mの深さまで深層水出口管が延びていることが好ましい。
【0037】
なお、上記のような動力回収を行わない場合は、海水1m/hの淡水化を行うのに6,7kW程度の電力が必要となるが、動力回収を行うことにより2〜3kW程度の電力で済むようになる。例えば1000kWのプラントを形成した場合、そのうち500〜600kW程度の電力を使用することができるが、深夜10時間程度の電力だけを振り分けることにより一日2000m程度の淡水を得ることができるようになる。しかも深層水は非常に清潔であり、前処理を必要としない。これは逆浸透膜装置22における逆浸透膜のコストにとっても極めて好ましい。また、深層水の温度を発電設備1の凝縮器14を通過させて幾分高くして使用しているので、逆浸透膜の透過係数を比較的高くすることができ、逆浸透膜装置22の小型化、コスト低減等に役立つこととなる。
【0038】
上記の態様においては水産利用等を考えない場所で淡水化発電プラントを使用する場合、すなわち、深層水の発電および淡水化以外の他の用途は行わずにそのまま深層水を海洋に戻す方式を適用する場合について説明したが、深層水や濃縮塩水の水産物への利用を行う場合や、地域冷房に使用する場合は、深層水を追加的に利用しても良いのは当然のことである。深層水や濃縮塩水の水産物への利用を行う場合は、深層水排出側の配管は上記のような数十mの深さまで延びる必要はなく、水産利用する海域にそのまま放出するような構成とすればよい。
【0039】
表層水ポンプ18や深層水ポンプ19の取水管は、陸地から穴を掘ってこの穴の中に設置され、海面下の暴風や波浪、潮位の影響のないレベルで海中に入っている。陸中、海中ではこの取水管を硬質ポリエチレンで構成し、取水管の陸上における部分はライナー被覆鋼管で構成されている。このことにより、1000kWクラスのプラントで直径が例えば1.5m程度の取水管を比較的低コストで配設することができる。また、表層水ポンプ18や深層水ポンプ19の取水管の取水口に粗い網(メッシュ)を設置することにより、海洋生物の取水管への侵入を防ぐことができる。
【0040】
〔第2の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図2は、本発明による淡水化発電プラントの第2の実施の形態を示す図である。具体的には、図2は、本実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
図2に示す本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
図2に示すように、発電設備1は、外部から海洋の表層水(第1の海水)が導入されるボイラー11と、発電を行うためのタービン13と、凝縮器14とを有しており、アンモニアと水との混合媒体(発電用媒体)がボイラー11、タービン13および凝縮器14を順に循環移動するようになっている。また、淡水化設備2は、海洋の深層海水(第1の海水よりも温度が低い第2の海水)を凝縮器14に送る深層水ポンプ(海水ポンプ)19と、ボイラー11の下流側に接続されこのボイラー11から送られた表層水を蒸発させるフラッシュ蒸発器31と、凝縮器14の下流側に接続されるとともにフラッシュ蒸発器31から水蒸気が送られる淡水凝縮器32と、淡水凝縮器32の下流側に設けられた逆浸透膜装置22とを有している。
【0042】
ここで、発電設備1において、発電用媒体である混合媒体はボイラー11において外部から導入された温水との熱交換によって加熱され、この加熱された混合媒体のうち気体がタービン13に送られてこの気体によりタービン13で発電が行われるようになっている。
また、淡水化設備2において、深層水ポンプ19から凝縮器14に送られる深層海水は熱交換によって混合媒体を冷却するようになっている。また、淡水凝縮器32は、フラッシュ蒸発器31から送られた水蒸気を、発電設備1の凝縮器14から送られた深層海水を用いて熱交換により凝縮するようになっている。さらに、逆浸透膜装置22は、この凝縮された凝縮水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっている。また、淡水化設備2は、淡水凝縮器32から排出された深層海水を海洋へ直接戻すための戻り管28を更に有し、逆浸透膜装置22から排出された深層海水は戻り管28の途中部分に送られるようになっている。
【0043】
以下、このような淡水化発電プラントの各構成要素について詳述する。
本実施の形態の淡水化発電プラントについて、第1の実施の形態に係る淡水化発電プラントと異なる点は、発電設備1において発電に使用した後の海洋の表層水から水蒸気を生成するフラッシュ蒸発器31が設置されており、このフラッシュ蒸発器31で発生した水蒸気は、発電設備1の凝縮器14を通過した深層水により淡水凝縮器32において凝縮されて淡水となることである。表層水に一部含まれる溶存空気や塩分を含むミストは、フラッシュ蒸発器31で発生した水蒸気とともに淡水凝縮器32に送られて、このミストは水蒸気とともに淡水凝縮器32の底部のタンクに塩分を含む淡水となって溜められる。
【0044】
一方、溶存空気と一部の水蒸気は飽和水蒸気圧を維持し、非凝縮性の空気が溜まらないように真空ポンプ33によって除去される。この真空ポンプ33は動力を低減するために多段とし、途中に熱交換器を設け、進入する水蒸気を凝縮除去しながら真空ポンプ33を運転するようになっている。淡水凝縮器32の底部タンクに溜まった、塩分を少し含む水から、逆浸透膜装置22を用いることによって精製された淡水を得ることができる。多少のミストを含む水蒸気は、元々は清潔な水であるので前処理を必要としない。また、塩分濃度はきわめて低いので、逆浸透膜における逆浸透圧を1MPa以下の極めて低い圧力とすることができ、逆浸透膜装置22における動力費を低減させることができる。淡水精製後の塩分濃度が増大した濃縮液は戻り管28に戻される。
【0045】
〔第3の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。図3は、本発明による淡水化発電プラントの第3の実施の形態を示す図である。具体的には、図3は、本実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
図3に示す本実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
図3に示すように、本実施の形態の淡水化発電プラントは、発電設備1と、淡水化設備2と、これらの発電設備1および淡水化設備2を制御する制御設備3とから構成されている。発電設備1は、外部から海洋の表層水(第1の海水)が導入されこの表層水を用いて熱交換によってアンモニアと水との混合媒体(発電用媒体)を加熱するボイラー11と、ボイラー11から送られた混合媒体を液体および気体に分離する気液分離器12と、気液分離器12から送られた気体を用いて発電を行うためのタービン13と、気液分離器12から送られた液体およびタービン13から送られた気体が合流して送られる第1凝縮器15aおよび第2凝縮器15bと、を有している。この発電設備1において、アンモニアと水との混合媒体がボイラー11、タービン13、第1凝縮器15a、第2凝縮器15bを順に循環移動するようになっている。
【0047】
また、淡水化設備2は、導入される流体の冷却を行うための一対の氷蓄熱装置41,42と、海洋の深層海水(第1の海水よりも温度が低い第2の海水)を各氷蓄熱装置41,42および第1凝縮器15aに送る深層水ポンプ(海水ポンプ)19と、各氷蓄熱装置41,42に接続された淡水回収タンク45と、各氷蓄熱装置41,42に接続された濃縮液回収タンク44とを有している。
【0048】
ここで、発電設備1において、上記の混合媒体はボイラー11において外部から表層水ポンプ18により導入された表層海水との熱交換によって加熱され、この加熱された混合媒体のうち気体がタービン13に送られてこの気体によりタービン13で発電が行われるようになっている。
また、淡水化設備2において、深層水ポンプ19から第1凝縮器15aに送られる深層海水は熱交換によって混合媒体を冷却し、一方、氷蓄熱装置41,42は深層水ポンプ19から送られた深層海水から製氷を行って淡水を生成するようになっている。また、氷蓄熱装置41,42から淡水回収タンク45に淡水が送られるとともに濃縮液回収タンク44に深層海水の濃縮液が送られるようになっている。さらに、氷蓄熱装置41,42は発電設備1の第2凝縮器15bに冷水を送り、この第2凝縮器15bに送られる冷水は熱交換によって混合媒体を更に冷却するようになっている。
氷蓄熱装置41,42にはそれぞれ圧縮機(具体的には例えば冷凍機)が設けられており、この冷凍機により深層海水から製氷を行うようになっている。この冷凍機は、発電設備により生成される電力を利用することにより駆動されるようになっている。
【0049】
以下、このような淡水化発電プラントの各構成要素について詳述する。
【0050】
図1に示すように、発電設備1は、ボイラー11と、気液分離器12と、タービン13と、第1凝縮器15aと、第2凝縮器15bと、熱交換器16と、凝縮液体の搬送を行うための混合媒体ポンプ17と、弁34と、接続配管とを有している。また、淡水化設備2は、氷蓄熱装置41,42と、淡水回収タンク45と、濃縮液回収タンク44と、氷蓄熱ポンプ43と、弁52〜62と、接続配管とを有している。海洋のうち表層水Sは熱源となり、この表層水Sをボイラー11に送るための表層水ポンプ18および配管が配設されている。また、海洋のうち深層水Dは冷源となり、前述のように深層水Dを氷蓄熱装置41,42および第1凝縮器15aに送るための深層水ポンプ19および配管が配設されている。本実施の形態では、深層水ポンプ19は淡水化設備2に含まれているものとする。
【0051】
本実施の形態の淡水化発電プラントにおいて、発電設備1の構成は、凝縮器が第1凝縮器15aと第2凝縮器15bとに分けられている点以外は、図1に示すような第1の実施の形態における淡水化発電プラントの発電設備と同様の構成となっている。
【0052】
淡水化設備2について以下に説明する。
氷蓄熱装置は、2台またはそれ以上設けられており、それぞれ回分操作され順次交代して運転されるようになっている。ここでは、主に氷蓄熱装置41を用いて氷蓄熱操作を説明する。
氷蓄熱装置41は、淡水回収タンク45よりも高い位置に設置されており、氷蓄熱操作の前に弁53,58を開け、弁58により氷蓄熱装置41内の保有水を淡水回収タンク45に全量回収する。次に弁58を閉めるとともに弁52を開け、深層海水を氷蓄熱装置41内に導き、氷蓄熱装置41内の冷凍機を作動させて製氷動作を行う。このときに他の弁52,57,59は閉じた状態、すなわちいわゆる隔離された状態で動作を行う。冷熱機の排熱は、第1凝縮器15aを通過した後の深層水を用いて当該冷熱機のCOPを高く維持する。
【0053】
一方、このときに、もう一方の氷蓄熱装置42は解氷動作を行っており、冷熱を第2凝縮器15bに送っている。つまり、弁56,61,54は開の状態で、他の弁55,60,62は閉の状態となっている。この状態で、氷蓄熱ポンプ43によって淡水回収タンク45、氷蓄熱装置42、第2凝縮器15bとの間で淡水を循環させ、氷蓄熱装置42で0℃近くまで冷却された淡水により、第2凝縮器15bを冷却している。氷蓄熱装置41に十分氷が溜まれば、氷蓄熱運転は停止され、弁57,53を開けて、製氷が進んで塩分濃度の高くなった液体を濃縮液回収タンク44に回収し、この濃縮液を健康食品、養殖などの原料として用いる。
【0054】
次に、弁57を閉め、淡水回収タンク45と弁58との間にあるポンプ46を作動させ、氷蓄熱装置41に淡水を満水位置まで充填して弁58を閉じる。充填後、弁53を閉止させて氷蓄熱装置41の解氷操作を開始する。すなわち、弁58,59を開け、淡水回収タンク45、氷蓄熱装置41,42(並列)、第2凝縮器15bの間で冷水を循環させ冷熱を第2凝縮器15bに伝える。しばらく並列運転を行った後、氷蓄熱装置42を切り離してこの氷蓄熱装置42は製氷運転に移行する。すなわち、弁56,60を閉じ、弁55,61を開けて氷蓄熱装置42の淡水を淡水回収タンク45に回収する。その後弁61を閉じ、弁60を開けて深層海水を氷蓄熱装置42に導き、満水となったら弁55を閉じ、氷蓄熱装置42の冷凍機を運転して製氷を行う。この冷凍機の排熱は、第1凝縮器15aを通過した後の深層水を用いることにより当該冷熱機のCOPを高く維持する。このときにもう一方の氷蓄熱装置41が解氷運転を行っているのは上記の通りである。
【0055】
上述のように、製氷、解氷を切り換えて氷蓄熱装置41,42を運転する。このような運転によって、雑菌を含まない健康飲料や化粧水の原料となる、経済価値の高い深層水からの淡水を淡水回収タンク45に回収することができる。また、発電用媒体として混合媒体を使用しているので、ボイラー11の作動流体温度を高くすることができ、第1凝縮器15aの作業流体温度を低くすることができる。さらに、第2凝縮器15bの冷却温度が約0℃と低いので、プラントの熱効率を大きく向上させることができる。また、表層水、深層水の各々のボイラー11、第1凝縮器15aでの出入り口温度差を大きくすることができるので、各々の流量を低いレベルに維持することができ、表層水ポンプ18および深層水ポンプ19の動力を小さくすることができる。
【0056】
なお、経済的価値のある深層水からの淡水を多量に発生させる場合には、氷蓄熱装置の数を増やし、順次運転を切り換えるようにして深層水充填と製氷とを次々に行うようにすることが好ましい。このことにより、充填流量を平準化させることができ、充填操作による第1凝縮器15aにおける深層水流量の変動を防ぐことができる。
【0057】
また、深層水による淡水をそれほど必要としない場合、第2凝縮器15bの意味合いは混合媒体の凝縮性能が若干低下するのを補完するものとなる。すなわち、凝縮しきれない気体部分を残さずに完全に凝縮させる補完的機器の意味合いや、凝縮器における熱交換部分の伝熱面積を小さくすることができるといった効果が強くなる。このことも、プラントの安定運転や経済性にとって重要なことである。更に、本プラントでは、副産物として、健康食品や養殖用の原料となる経済的付加価値の高い深層水製濃縮栄養塩水が得られる。
【0058】
〔第4の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第4の実施の形態について説明する。図4は、本発明による淡水化発電プラントの第4の実施の形態を示す図である。具体的には、図4は、本実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【0059】
図4に示す淡水化発電プラントは、発電設備1の気液分離器12の下流側に外部タンク27を追加的に設置し、氷蓄熱運転を深夜の安価な電力を用いて行い、昼間に解氷を行う点が異なるのみであり、他は実質的に図3に示す第3の実施の形態と同様の構成を有している。
図4に示す本実施の形態において、図3に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
上述のように、本実施の形態の淡水化発電プラントは、氷蓄熱運転を深夜の安価な電力を用いて行い、昼間に解氷を行うようになっている。すなわち、この淡水化発電プラントの制御設備3は、夜間において氷蓄熱装置41,42の運転を行いこれらの氷蓄熱装置41,42において深層海水から製氷を行い、昼間において氷蓄熱装置41,42から第2凝縮器15bに冷水を送るよう淡水化設備2の運転制御を行うようになっている。このような淡水化発電プラントにおいては、発電設備1の循環系のアンモニア水におけるアンモニアの濃度を調整して運転を行う。このために、図4に示すように、発電設備1は、気液分離器12により分離された液体を貯留するための外部タンク27を有している。
【0061】
具体的に説明すると、昼間の解氷運転時において発電設備1は第3の実施の形態で説明した通りの運転を行う。ただし、気液分離器12から排出された液体を、ガス圧操作によって例えば液面計が設置された外部タンク27に一部回収する。このことにより、発電設備1におけるアンモニア濃度を高める。また、タービンの蒸気圧力は高くしてタービン13の下段にある凝縮器の操作圧力を低くする。これによってタービン入口出口圧力比が大きくなり、タービン出力は向上する。このために、発電設備1において混合媒体ポンプ17aから混合媒体ポンプ17への切り換えを行う。すなわち、昼間の解氷運転時において、弁63,64を開け、弁65,66を閉じて第2凝縮器15bを使用した運転操作を行い、タービンの出力を増大させる。
【0062】
一方、深夜において、外部タンク27のガス圧力を上げて、弁67を開けて液体を発電設備1の循環系内に充填させてアンモニア濃度を幾分低下させる。これに伴ないタービン蒸気圧力は低くなり、凝縮器圧力は幾分高くなる。これによってタービン入口出口圧力比は前記の昼の場合より小さくなり、発電出力は低下する。また、弁63,64を閉じ、弁65,66を開けて第2凝縮器15bをバイパスする。このことにより、第1凝縮器15aにおいて深層水による冷却で十分液体に戻るような濃度条件、圧力条件となる。このように、昼間において電力需要の大きなときには発電量を大きくして運転を行い、一方夜間において電力需要の小さなときには発電量を低下させて運転を行う。また、淡水化設備2は、昼間は解氷運転を行い、深夜には製氷運転を行う。
【0063】
このことにより、深夜には電力を多量に使い、一方昼間には電力をあまり使用せずに出力を大きくすることができ、日間電力需要の変動に応じた運転を行うことができる。このため、電力負荷の平準化に寄与することができる。
【0064】
このような低沸点濃度変化運転において、本実施の形態のプラントを温泉水と表層水との間で使用したり、下水などを熱源に使用したりするときには、冷熱源、温熱源が季節変動する。このようなときに、本実施の形態のプラントでは、季節によって低沸点成分濃度を変化させ、運転圧力を変化させて最適な状態で運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図5】従来の淡水化発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1 発電設備
2 淡水化設備
3 制御設備
11 ボイラー
12 気液分離器
13 タービン
14 凝縮器
15a 第1凝縮器
15b 第2凝縮器
16 熱交換器
17 混合媒体ポンプ
17a 追加の混合媒体ポンプ
18 表層水ポンプ
19 深層水ポンプ
21 搬送ポンプ
22 逆浸透膜装置
23 淡水回収タンク
25 動力回収タービン
26 発電機
27 外部タンク
28 戻り管
31 フラッシュ蒸発器
32 淡水凝縮器
33 真空ポンプ
34 弁
41,42 氷蓄熱装置
43 氷蓄熱ポンプ
44 濃縮液回収タンク
45 淡水回収タンク
46 ポンプ
52〜67 弁
81 ボイラー
82 タービン
83 凝縮器
84 ポンプ
85 発電機
86 表層水ポンプ
87 深層水ポンプ
88 フラッシュ蒸発器
89 淡水凝縮器
90 淡水回収タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から第1の海水が導入されるボイラー、発電を行うためのタービン、および凝縮器を有し、発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、
第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、および前記凝縮器から第2の海水が送られる逆浸透膜装置を有する淡水化設備と、
を備え、
前記発電設備において、前記発電用媒体はボイラーにおいて外部から導入された第1の海水との熱交換によって加熱され、この加熱された発電用媒体のうち気体が前記タービンに送られて当該気体によりタービンで発電が行われ、
前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記逆浸透膜装置は前記凝縮器から送られる第2の海水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラント。
【請求項2】
第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることを特徴とする請求項1記載の淡水化発電プラント。
【請求項3】
前記発電用媒体は、アンモニアと水との混合物であることを特徴とする請求項1または2記載の淡水化発電プラント。
【請求項4】
前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行う制御設備を更に備え、
当該制御設備は、前記淡水化設備を夜間のみにおいて運転させるよう当該淡水化設備の運転制御を行うようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項5】
前記淡水化設備は、前記発電設備の凝縮器から排出された第2の海水を海洋へ直接戻すための戻り管を更に有し、
前記逆浸透膜装置から排出された第2の海水は前記戻り管の途中部分に送られるようになっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項6】
外部から第1の海水が導入されるボイラー、発電を行うためのタービン、および凝縮器を有し、発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、
第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、前記発電設備のボイラーの下流側に接続されこのボイラーから送られた第1の海水を蒸発させる蒸発器、前記凝縮器の下流側に接続されるとともに前記蒸発器から蒸気が送られる淡水凝縮器、および前記淡水凝縮器の下流側に設けられた逆浸透膜装置を有する淡水化設備と、
を備え、
前記発電設備において、前記発電用媒体はボイラーにおいて外部から導入された第1の海水との熱交換によって加熱され、この加熱された発電用媒体のうち気体が前記タービンに送られて当該気体によりタービンで発電が行われ、
前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記淡水凝縮器は、前記蒸発器から送られた蒸気を、前記発電設備の凝縮器から送られた第2の海水を用いて熱交換により凝縮し、前記逆浸透膜装置はこの凝縮された凝縮水から淡水を逆浸透膜により分離するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラント。
【請求項7】
第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることを特徴とする請求項6記載の淡水化発電プラント。
【請求項8】
前記発電設備は、海洋から前記ボイラーに第1の海水を導入するための第1の取水管を有し、この第1の取水管の取水口はメッシュにより覆われていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項9】
前記淡水化設備は、海洋から前記海水ポンプに第2の海水を導入するための第2の取水管を有し、この第2の取水管の取水口はメッシュにより覆われていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項10】
前記発電設備は、海洋から前記ボイラーに第1の海水を導入するための第1の取水管を有し、この第1の取水管は、前記発電設備のボイラー側の一部分が地中に配設され、取水口近傍において地中から海洋に突出するような構造となっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項11】
前記淡水化設備は、海洋から前記海水ポンプに第2の海水を導入するための第2の取水管を有し、この第2の取水管は、前記淡水化設備の海水ポンプ側の一部分が地中に配設され、取水口近傍において地中から海洋に突出するような構造となっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項12】
外部から第1の海水が導入されこの第1の海水を用いて熱交換によって発電用媒体を加熱するボイラー、前記ボイラーから送られた発電用媒体を液体および気体に分離する気液分離器、前記気液分離器から送られた気体を用いて発電を行うためのタービン、前記気液分離器から送られた液体および前記タービンから送られた気体が合流して送られる凝縮器を有し、前記発電用媒体が前記ボイラー、タービンおよび凝縮器を順に循環移動するようになっている発電設備と、
導入される流体の冷却を行うための氷蓄熱装置、第1の海水よりも温度が低い第2の海水を前記氷蓄熱装置および前記発電設備の凝縮器に送る海水ポンプ、前記氷蓄熱装置に接続された淡水回収タンク、および前記氷蓄熱装置に接続された濃縮液回収タンクを有する淡水化設備と、
を備え、
前記淡水化設備において、前記海水ポンプから前記凝縮器に送られる第2の海水は熱交換によって前記発電用媒体を冷却し、前記氷蓄熱装置は前記海水ポンプから送られた第2の海水から製氷を行って淡水を分離し、この氷蓄熱装置から前記淡水回収タンクに淡水が送られるとともに前記濃縮液回収タンクに第2の海水の濃縮液が送られ、前記氷蓄熱装置は前記発電設備の凝縮器に冷水を送り、この凝縮器に送られる冷水は熱交換によって前記発電用媒体を更に冷却するようになっていることを特徴とする淡水化発電プラント。
【請求項13】
第1の海水は海洋の表層水であり、第2の海水は海洋の深層水であることを特徴とする請求項12記載の淡水化発電プラント。
【請求項14】
前記淡水化設備の氷蓄熱装置は、前記発電設備により生成される電力を利用する圧縮機によって前記第2の海水から製氷を行うようになっていることを特徴とする請求項12または13記載の淡水化発電プラント。
【請求項15】
前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行う制御設備を更に備え、
当該制御設備は、夜間において前記氷蓄熱装置の運転を行いこの氷蓄熱装置において第2の海水から製氷を行い、昼間において前記氷蓄熱装置から前記発電設備の凝縮器に冷水を送るよう前記淡水化設備の運転制御を行うようになっていることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。
【請求項16】
前記発電設備は、前記気液分離器により分離された液体を貯留するための外部タンクを更に有し、
前記制御設備は、前記氷蓄熱装置を動作させないときには前記気液分離器により分離された液体を外部タンクに所定の量だけ貯留して、発電用媒体の低沸点成分濃度を増加させて前記凝縮器の動作圧力に対する前記タービンの動作圧力の比を大きくしてこのタービンにおける発電電力量を増大させ、前記氷蓄熱装置を動作させるときには前記外部タンクに貯留された液体を再び循環系に戻し、タービンと凝縮器の動作圧力を調整して発電電力量を低下させるよう、前記発電設備および前記淡水化設備の運転制御を行うことを特徴とする請求項15記載の淡水化発電プラント。
【請求項17】
前記発電用媒体は、アンモニアと水との混合物であることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか一項に記載の淡水化発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309295(P2007−309295A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141691(P2006−141691)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】