説明

混合ガス供給システム

【課題】工程の負荷変動があったとしても所望のガス混合比を得ることができる混合ガス供給システムを提供する。
【解決手段】複数のガス導管路に流れるガスの質量流量を複数の流量制御装置によって質量流量が制御され、ガス混合器で混合されたガスを所定の工程に導くガス配管路に設けられて、ガス混合器で混合された混合ガスの濃度を計測する濃度計測部と、予め校正されて、ガス混合器で混合された各ガスの混合比と濃度計測部が計測した濃度情報との相関関係を保持する濃度情報保持部と、混合比設定部によって設定された混合比と濃度情報保持部が保持する濃度情報から導かれる各ガスの混合比との差分を求めて流量制御装置にそれぞれのガスの流量指令を出力してガス導管路に流れるガスの質量流量を制御する流量監視部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のガス供給源から供給されるガスを混合して、所定の工程(ガス負荷)に供給する混合ガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からガス供給源から供給される複数のガスを混合して所望のガスを生成してガス負荷に供給する混合ガス供給システムが適用されている。この混合ガス供給システムとして例えば、ボンベのような容器に充填された気体(ガス)を混合し、混合ガスとしてガス負荷に供給する場合は、図3に示すように各ボンベに充填された複数種のガスを所定の混合比になるよう調整した後、ガス負荷に供給される。ちなみにこの図は、三種類のガスとしてボンベ1aに充填されたCOガス、ボンベ1bに充填されたArガスおよびボンベ1cに充填されたNガスを混合してガス負荷(図示せず)に混合ガス供給管3を介して供給する混合ガス供給システムを例示したものである。
【0003】
このシステムにおいて混合ガスを所望のガス混合比に調整するべくそれぞれのボンベ1a,1b,1cに充填されたガスを後段のガス負荷に導くガス配管路3a,3b,3cには、これらのガス配管路3a,3b,3cに流れるガスの体積流量を計測する体積流量計5a,5b,5cがそれぞれ介挿されて、図示しない流量調整装置によって各ボンベから流れ出るガスの体積流量が調整されて所望のガス混合比が得られるようになっている。
【0004】
或いは、複数のガスを混合して供給する装置として液体ソースにキャリアガスを通すことによって液体ソースを撹拌してガス化させたソースガスを一定量で供給するガス供給装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平5−329357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した体積流量計やガス供給装置にあっては、体積流量によってガス混合比が所望の比率になるように構成されたものであり、気体温度変化の影響を受けて所望のガス混合比を得ることができないという問題があった。
つまり質量流量は、図4の実線に示すように供給されるガス容積が一定であれば、ガスの温度変化、すなわちこのガスが充填されたボンベの温度変化の影響を受けることがない反面、体積流量は、図4の一点鎖線に示すように例え供給されるガスの容積が一定であったとしても、ボンベの温度変化の影響を受け、温度が高くなるほど流量が多くなるためである。
【0006】
また一般に使用環境下にあるガスの温度は、ボンベ充填時の基準温度と異なっている。このため計測された体積流量は、ガスの温度と圧力の影響を受け、基準温度の流量に換算し難いと言う問題があり、それ故、適切なガス混合比を維持することが困難になるという問題もあった。
ちなみにボンベ内の使用環境(温度、圧力)をある値に決めうちで仮定して、なおかつ、流量計測部における温度および圧力を計測した計測値を用いて演算すればガスの基準温度の流量を求めることもできるものの、結局、ボンベ内の使用環境が不明であるため、演算された体積流量値は、誤差を多く含む値となり、管理値としては不向きであるという問題がある。
【0007】
また、複数のボンベにそれぞれ充填された異なる種類のガスを混合して使用する場合、工程の負荷変動(ガス負荷の変動)があると、所望のガス混合比から逸脱する懸念があった。
このため、ボンベのガスが空になり工程(プロセス)の稼働が停止したり、まだ残量があるにもかかわらずボンベを交換したりする等の不具合を招来することがあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情を考慮してなされたものであって、その目的は、工程の負荷変動があったとしても所望のガス混合比を得ることができる混合ガス供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成すべく本発明に係る混合ガス供給システムは、複数のガス導管路にそれぞれ介挿されて、指示された流量指令に従ってこれらガス導管路に流れるガスの質量流量をそれぞれ制御する複数の流量制御装置と、この流量制御装置によって質量流量が制御された複数の前記ガスを混合するガス混合器と、このガス混合器で混合された前記ガスを所定の工程に導くガス配管路に設けられて、前記ガス混合器で混合された混合ガスの濃度を計測する濃度計測部と、予め校正されて、前記ガス混合器で混合された各ガスの混合比と前記濃度計測部が計測した濃度情報との相関関係を保持する濃度情報保持部と、前記ガス混合器によって混合される複数の前記ガスの混合比を設定する混合比設定部と、この混合比設定部によって設定された混合比と前記濃度情報保持部が保持する濃度情報から導かれる各ガスの混合比との差分を求めて前記流量制御装置にそれぞれの前記ガスの流量指令を出力して複数の前記ガス導管路をそれぞれ流れるガスの質量流量を制御する流量監視部とを備えることを特徴としている。
【0010】
上述の混合ガス供給システムは、複数の混合ガスの混合比を変化させたとき、濃度計測部が計測する濃度情報との相関関係を濃度情報保持部にて予め校正情報として保持しておく。そして上述の混合ガス供給システムは、混合比設定部から入力された複数のガスの所望の混合比と、濃度情報保持部に保持された濃度情報とを比較して差分を求め、ガス導管路にそれぞれ介挿された流量制御装置に流量指令を出力して所望のガス混合比を得る。
【0011】
好ましくは前記流量制御装置は、複数の前記ガス配管路にそれぞれ介挿されて、これらガス配管路に流れるガス流量を調整する調整弁と、この調整弁の後段の前記ガス配管路に介挿されて、このガス配管路に流れる前記ガスの質量流量を計測する質量流量計測部と、この質量流量計測部が計測した質量流量と予め設定された質量流量とを比較して前記調整弁の開度を調整し、上記設定された質量流量にする弁制御部とを備えることを特徴としている。
【0012】
上述の混合ガス供給システムは、各ガス導入路に介挿された流量制御装置が備える質量流量計測部によって計測された質量流量が流量指定された質量流量になるように弁制御部の開度を調整する。したがって上述の混合ガス供給システムは、各ガスを予め設定された質量流量比に維持した混合ガスを供給する。
特に前記流量監視部は、複数の前記ガスの基準温度をそれぞれ入力する入力部と、前記質量流量計測部によって計測された前記ガスの質量流量を前記入力された前記ガスの基準温度ベースに換算する残量演算部とを備えることを特徴としている。
【0013】
上述の混合ガス供給システムは、複数のガス毎に予め定められている基準温度ベースを基にそれぞれのガスの質量流量を所定の温度ベースの質量流量に換算する。
そして、前記流量監視部は、複数の質量流量計測部がそれぞれ計測した前記ガス毎の質量流量と前記各ガスが前記工程に供給された時間との積から前記ガス毎の積算流量をそれぞれ求める積算流量演算部を備えて構成される。
【0014】
上述の混合ガス供給システムは、複数のガス供給源からそれぞれガス導管路を介して導かれるガスの質量流量を質量流量計測部が計測するとともに、質量残量演算部によって所定温度の質量流量に換算する。そして換算した質量流量と当該ガスが工程に供給された時間との積を求めてガス毎の積算流量を求める。
或いは複数の前記ガス供給源は、それぞれ所定のボンベに充填されており、前記流量監視部は、これら複数の前記ボンベにそれぞれ充填された前記ガス毎の容量と前記積算流量演算部が求めた前記ガス毎の積算流量との差分から前記各ボンベのガス残量をそれぞれ求める残量演算部を備えて構成される。
【0015】
上述の混合ガス供給システムは、積算流量演算部によって残量演算部にて換算された使用状況下あるいは所定の環境条件下における複数のガス毎の質量流量と、複所定の工程に供給された時間との積を求め前記ガスの積算流量を求める。
より好ましくは複数の前記ガス供給源は、それぞれ所定のボンベに充填されてなり、これら複数の前記ボンベにそれぞれ充填された前記ガス毎の容量と前記積算流量演算部が求めた前記ガス毎の積算流量との差分から前記各ボンベのガス残量をそれぞれ求める残量演算部を備えることが望ましい。
【0016】
また上記混合ガス供給システムは、前記残量演算部によりそれぞれ換算された複数の前記ガス毎の質量流量および/または前記積算流量演算部が求めた複数の前記ガス毎の積算流量を出力する出力部を備えて構成される。
上述の混合ガス供給システムは、複数のボンベにそれぞれ充填されたガス毎の容量と積算流量演算部が求めたガス毎の積算流量との差分から前記各ボンベのガス残量をそれぞれ求め、残量演算部によりそれぞれ換算された複数のガス毎の質量流量や積算流量演算部が求めた複数のガス毎の積算流量を例えば、出力部としてLEDや液晶パネル等のほか、所定の情報機器(例えば、携帯端末やパソコン)の表示画面に出力して表示する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の混合ガス供給システムによれば、制御部が所定の質量流量比になるように各ガスの質量流量を計測して調整弁の開度を調整しているので、混合ガスを用いる工程におけるガスの使用量(ガス負荷)が変化したとしても所望のガス比に調整された混合ガスを得ることができる。
また、本発明の混合ガス供給システムは、積算流量演算部によって残量演算部が換算した複数のガス毎の質量流量と各ガスが所定の前記工程に供給された時間との積から複数のガス毎の積算流量をそれぞれ求めているので、基準温度がそれぞれ異なる複数のガスを混合したとしても、それぞれのガスの積算流量(ガス供給量)を正しく求めることができる。
【0018】
特に本発明の混合ガス供給システムは、複数のボンベにそれぞれ充填されたガスを混合して用いる場合、残量演算部が複数のボンベにそれぞれ充填されたガス毎の容量と積算流量演算部が求めた前記ガス毎の積算流量との差分を算出して各ボンベのガス残量を求め、残量演算部によりそれぞれ換算された複数のガス毎の質量流量や積算流量演算部が求めた複数のガス毎の積算流量を表示部にて表示している。このため、複数のボンベにそれぞれ充填されたガス残量を正確に求めることができるとともに、ガス欠等によって混合ガスが供給できない等の不具合を事前に防止することができる等の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る混合ガス供給システムについて図面を参照しながら説明する。尚、図1は本発明を実施する形態の一例であって、この図によって本発明が限定されるものではない。
この図において1は、混合対象のガスがそれぞれ充填されて、所定の工程(ガス負荷)にガスを混合して供給するガス供給源となる複数のボンベである。これら複数のボンベ1には、予めガス充填工場等にて所定の異なるガス種がそれぞれ充填される。そしてボンベ1に充填されたガスは、ガス導管路3aおよびガス配管路3bを介して図示しない下流側の工程(ガス負荷)へ供給される。
【0020】
一方、複数のガス導管路3aには、ガス導管路3a内をそれぞれ流れるガスの質量流量を検出して、予め設定された流量に調整する流量制御装置10(以下、MFCということがある)がそれぞれ介挿されている。このMFC10は、概略的にはガス導管路3aに介挿されて、このガス導管路3aに流れるガスの流量をその開度によって調整する調整弁11と、この調整弁11の後段に配置されて、ガス導管路3aに流れるガスの質量流量を計測する質量流量計測部12、ガス導管路3aに流れるガスの質量流量を設定する設定部13、この設定部13に設定されたガスの質量流量と、質量流量計測部12が計測した質量流量との差分値(偏差)信号を受けて、ガス導管路3aに流れる流量を調整弁11の駆動制御によって調整する弁制御部14を備えて構成される。
【0021】
そして複数のガス導管路3aに流れるガスは、MFC10によって質量流量が調整された後、これらのガスを混合して出力するガス混合部5に与えられる。なお、MFC10で調整される質量流量は、単位時間に流れるガスの分子量に相当する。
このガス混合部5にて混合されたガスは、ガス配管路3bを介して図示しない下流側の工程(ガス負荷)へ供給される。ガス混合部5の後段に位置するガス配管路3bには、混合されたガスの濃度を計測する濃度計測部6、この濃度計測部6が混合ガスの濃度を計測する際、ガス配管路3bを閉塞する閉止弁7および混合ガスの圧力を計測する圧力計測部8が設けられている。この濃度計測部6は、気体の質量流量を計測するマスフローメータ(MFM)を適用することができる。
【0022】
また、詳細は後述するが本発明の混合ガス供給システムは、複数のMFC10の質量流量計測部12が計測した各ガスの質量流量、MFM6が検出した混合ガスの質量流量および圧力計測部8が計測した混合ガスの圧力情報を受けて、複数のガス配管路3bにそれぞれ流れるガスの質量流量を制御するMFC10に流量指定を与える流量監視部20を備える。この流量監視部20は、複数のボンベ1等から供給される複数種のガスを混合して所定のガス混合比が得られるよう、各MFC10が備える設定部13に流量指令を与える役割を担っている。
【0023】
詳しくはこの流量監視部20には、各ガスがガス導管路3aを流れる質量流量の比率と、そのときの濃度計測部6が計測した濃度計測値との関係を保持する濃度情報保持部21、複数種の混合ガスの混合比、ボンベ1に充填されたガスの基準温度および充填量を入力する入力部22、この入力部22で入力されたガスの混合比と濃度情報保持部21が保持する濃度情報とから、各MFC10の質量流量計測部12が計測した各ガスの質量流量情報、濃度計測部6が計測した混合ガスの濃度情報および圧力計測部8が計測した混合ガスの圧力情報を受けて、各MFC10のガス流量を求める制御部23、この制御部23が求めた各MFC10の対する流量設定値を、各MFC10にそれぞれ与える流量比設定部24が設けられている。
【0024】
更にこの流量監視部20には、各質量流量計測部12がそれぞれ計測したガス毎の質量流量を、入力部22から入力されたガス毎の基準温度の質量流量に換算する残量換算部25、この残量換算部25が換算したガスの質量流量とこのガスがガス負荷に供給された時間との積から当該ガスの積算流量を求める積算流量演算部26、入力部22から入力されたボンベ1のガス充填量と積算流量演算部26が求めたガスの積算流量との差分、すなわちガス負荷に供給されたガスの供給量との差分からボンベ1内のガスの残量を求める残量演算部27、残量演算部27により換算された各ガスの質量流量や積算流量演算部26が求めたガスの積算流量をそれぞれ表示する表示部28を備えて構成される。
【0025】
このように構成された本発明の一実施形態に係る混合ガス供給システムについてより詳細に説明する。この混合ガス供給システムは、複数のガス供給源(例えばボンベ1)から、ガス導管路3aによってガス混合部5に導かれる複数のガスの混合比を流量監視部20に設けられた入力部22から入力することによって混合ガスを工程(ガス負荷)に供給する如く構成されている。
【0026】
この混合ガス供給システムは、その使用に先だって濃度情報保持部21の校正(キャリブレーション)が必要である。このキャリブレーションは、複数のガスの混合比を種々変えてガスを混合し、そのとき濃度計測部6が計測する濃度情報とガスの混合比との相関関係を求め、この相関関係を濃度情報保持部21に予め保持するものである。
具体的には、異なる2種類のガスAとガスBとを混合させた混合ガスを工程に供給する場合、ガスの混合比を、ガスA:ガスB=10:0、ガスA:ガスB=9:1、ガスA:ガスB=8:2、・・・、ガスA:ガスB=0:10というように変化させ、流量監視部20の制御部23が、そのとき濃度計測部6が計測した濃度を濃度情報保持部21に保持させる。このようにして複数のガスの混合比率を変化させ、そのとき濃度計測部6が計測した濃度情報を濃度情報保持部21に保持させる。
【0027】
尚、濃度計測部6は、気体の質量流量を計測するマスフローメータ(MFM)を適用することができる。この場合、測定に先立ってガス配管路3bを閉塞する閉止弁7を閉止する。すると濃度計測部6を構成するMFMに混合されたガスが導かれる。このマスフローメータは、例えば熱式流量計が適用され気体の濃度をその熱伝達率の違いによって計測するものである。そして、気体の濃度の計測が終了すると、再び閉止弁7を開放して、混合ガスを次段のガス負荷に供給する。
【0028】
ちなみに熱式流量計としては、例えばフローセンサがある。このフローセンサは、基本的には図2に示すようにシリコン基台上に設けた発熱抵抗体RHを挟んで流体の通流方向Fに該発熱抵抗体RHと独立して一対の測温抵抗体Ru,Rdを設けて構成されて、発熱抵抗体RHから発せられる熱の拡散度合い(温度分布)が前記流体の通流によって変化することを利用し、前記測温抵抗体Ru,Rdの熱による抵抗値変化から前記流体の流量を検出する。つまり、このフローセンサを適用した熱式流量計は、発熱抵抗体RHから発せられた熱が流体の流量に応じて下流側の測温抵抗体Rdに加わることで、熱による抵抗値の変化が上流側の測温抵抗体Ruよりも大きいことを利用して流量を計測するよう構成されている。
【0029】
上述したようにして濃度情報保持部21に濃度情報の設定が完了した後、制御部23は、入力部22から入力された複数のガスの混合比を受け、濃度情報保持部21に保持されたガス比率情報に対応するガスの濃度情報に従って、各ガス導管路3aに介挿されたMFC10にそれぞれ流量指令を与える。するとMFC10は、それぞれが備える調整弁11の開度を制御してガスの流量を調整し、ガス混合部5にガスを送り込む。
【0030】
そして制御部23は、ガス混合部5からガス配管路3bを介して工程に送り込まれるガスの濃度を上述したようにして濃度計測部6によって計測し、ガス混合部5によって混合される複数のガスの混合比が正しいか否かを判定する。制御部23は、ガスの混合比が不正であると判定した場合、濃度情報保持部21が保持する情報を参照しながら適切なガスの混合比率になるように流量比設定部24を介して複数のガス導管路3aにそれぞれ介挿されたMFC10の設定部13に与えた設定情報を更新する。
【0031】
するとMFC10は、流量監視部20から与えられて流量指定が設定部13に設定された新たな質量流量値に基づいて、ガスの流量を増加させる場合には、弁制御部14に調整弁11の開度を増すように操作指令を出す一方、ガスの流量を減少させる場合には、調整弁11の開度を減らすように操作指令を出す。
また本発明の混合ガス供給システムは、ボンベに充填されたガスの積算使用量、引いてはボンベに充填されたガスの残量を求めることも可能である。まず、流量監視部20の入力部22から、あるボンベ1に充填されたガスの基準温度Tn[℃]を予め入力する。そして使用状況下あるいは所定の環境条件におけるガスの使用温度をT[℃]とする。すると所定の環境条件を例えばT=0[℃]とし、質量流量計測部12が計測した流量がQn[m/s]であるとすれば、ボイル・シャルルの法則から、質量流量計測部12が計測した流量QnをT=0[℃]に換算した流量Qは、次式で求めることができる。
【0032】
Q=Qn×{(273+Tn)/(273+T)} (1)
=Qn×(273+Tn)/273[m/s]
このようにして換算された質量流量を用いて、流量監視部20は、工程(ガス負荷)にガスが供給された時間tとの積を求め、積算流量演算部26が積算流量すなわちガス負荷に供給された供給量V[m]を求める。
【0033】
具体的に積算流量演算部26は、
V=∫Qdt
なる演算を施して供給量V[m]を求める。そして、残量演算部27は、入力部22から入力された各ボンベ1毎のガス充填容量V[m]からこの求めた供給量V[m]を差し引いてボンベ1内のガス残量を求める。
【0034】
このようにして所定の環境条件の温度に換算されたガスの流量、積算流量(供給量)およびガス残量は、出力部28に出力表示される。この出力部28は、例えばLEDや液晶パネル等の表示装置である。尚、出力部28は、この表示装置以外にも、特に図示しないが携帯端末装置やパソコン等に所定の伝送路を介して伝送された積算流量を、これらの装置が備える表示部(画面)に出力表示するようにしてもよい。
【0035】
尚、使用状況下あるいは所定の環境条件における温度が上述した0[℃]以外の場合、残量演算部27は、(1)式の「T」にその温度値(摂氏)を代入して流量を換算する。
かくして本発明の混合ガス供給システムは、濃度情報保持部21にて予め校正情報として複数の混合ガスの混合比を変化させたとき、濃度計測部6が計測した濃度情報と混合比との相関関係を保持しているので、ガス導管路3aにそれぞれ介挿された流量制御装置の流量を制御して複数のガス混合比と、濃度情報保持部に保持された濃度情報とを比較して差分を求め、所望のガス混合比を維持することができる。したがって、本発明の混合ガス供給システムは、ガス負荷の流量が変化したとしても所望のガス混合比を維持すること可能である。
【0036】
また、本発明の混合ガス供給システムは、ガス導管路3aに流れるガスの質量流量を制御する流量制御装置10を用いて、この流量制御装置10が備える質量流量計測部12によって計測されたガスの質量流量が予め設定された質量流量になるように弁制御部14の開度を調整している。このため本発明の混合ガス供給システムは、入力部22から入力された所望の質量流量比、すなわち所望の分子量比に維持した混合ガスを供給することができる。
【0037】
なお、より好ましくは、前述した濃度情報保持部21には、ガス混合比と濃度情報との相関関係を示す情報とともに、圧力計測部8が計測する混合ガスの圧力情報も併せて保持することが望ましい。
このようにすることで流量監視部20は、混合したガスがリークしたり何らかの原因で適切な混合比が得られなくなったりしたことをより確実に検出することができる。例えば、ガスリークが生じた場合、流量監視部20は、圧力計測部8が計測した混合ガスの圧力変動情報から知ることができる。
【0038】
また本発明の混合ガス供給システムは、質量流量計測部12が計測したガス導管路3aを流れるガスの質量流量を入力部22から入力されたガスの基準温度を用いて残量演算部が所定の使用状況下あるいは所定の環境条件下の温度に換算した質量流量を求めているので、異なる基準温度で充填されたガス毎の正しい質量流量(ガス供給量)を得ることができる。
【0039】
更に本発明の混合ガス供給システムは、更に残量演算部27が換算したガスの質量流量と、このガスがガス負荷に供給された時間との積からガスの積算流量を求める積算流量演算部26を備えているので、異なる基準温度で充填されたガスごとの正しい積算流量、すなわちガス負荷に供給されたガスの使用容量を求めることができる。更に、本発明の混合ガス供給システムは、ボンベ1に充填されたガスの容量と積算流量演算部が求めた積算流量との差分からボンベ1のガス残量を求める残量演算部を備えているので、ボンベ1内のガス残量を正確に把握することができ、引いてはボンベ1に対するガスの補充時期を最適化することができる。
【0040】
或いは本発明の混合ガス供給システムは、流量換算部25により換算されたガスの質量流量、積算流量演算部26もしくは残量演算部27が求めたガスの積算使用量およびボンベ1のガス残量を表示する表示部28を備えているので、この表示部28により所定の使用状況下あるいは所定の環境条件下の温度に換算されたガスの質量流量、使用容量およびボンベ1のガス残量を確認することができる等の実用上多大なる効果を奏する。
【0041】
尚、本発明の混合ガス供給システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合ガス供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】熱式流量検出装置(マスフローメータ)の基本構造とその計測概念を説明するための図である。
【図3】複数のボンベにそれぞれ充填された複数種のガスを混合してガス負荷に供給するガス供給システムの構成例を示す図である。
【図4】温度変化に伴う質量流量および体積流量の変化の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1 ボンベ
3a ガス導管路
3b ガス配管路
5 ガス混合部
6 濃度計測部
7 閉止弁
8 圧力計測部
10 流量制御装置(MFC)
11 調整弁
12 質量流量計測部
13 設定部
14 弁制御部
20 流量監視部
21 濃度情報保持部
22 入力部
23 制御部
24 流量比設定部
25 流量換算部
26 積算流量演算部
27 残量演算部
28 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス導管路にそれぞれ介挿されて、指示された流量指令に従ってこれらガス導管路に流れるガスの質量流量をそれぞれ制御する複数の流量制御装置と、
この流量制御装置によって質量流量が制御された複数の前記ガスを混合するガス混合器と、
このガス混合器で混合された前記ガスを所定の工程に導くガス配管路に設けられて、前記ガス混合器で混合された混合ガスの濃度を計測する濃度計測部と、
予め校正されて、前記ガス混合器で混合された各ガスの混合比と前記濃度計測部が計測した濃度情報との相関関係を保持する濃度情報保持部と、
前記ガス混合器によって混合される複数の前記ガスの混合比を設定する混合比設定部と、
この混合比設定部によって設定された混合比と前記濃度情報保持部が保持する濃度情報から導かれる各ガスの混合比との差分を求めて前記流量制御装置にそれぞれの前記ガスの流量指令を出力して複数の前記ガス導管路をそれぞれ流れるガスの質量流量を制御する流量監視部と
を備えることを特徴とする混合ガス供給システム。
【請求項2】
前記流量制御装置は、複数の前記ガス配管路にそれぞれ介挿されて、これらガス配管路に流れるガス流量を調整する調整弁と、
この調整弁の後段の前記ガス配管路に介挿されて、このガス配管路に流れる前記ガスの質量流量を計測する質量流量計測部と、
この質量流量計測部が計測した質量流量と予め設定された質量流量とを比較して前記調整弁の開度を調整し、上記設定された質量流量にする弁制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の混合ガス供給システム。
【請求項3】
前記流量監視部は、複数の前記ガスの基準温度をそれぞれ入力する入力部と、
前記質量流量計測部によって計測された前記ガスの質量流量を前記入力された前記ガスの基準温度ベースに換算する残量演算部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の混合ガス供給システム。
【請求項4】
前記流量監視部は、複数の質量流量計測部がそれぞれ計測した前記ガス毎の質量流量と前記各ガスが前記工程に供給された時間との積から前記ガス毎の積算流量をそれぞれ求める積算流量演算部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の混合ガス供給システム。
【請求項5】
複数の前記ガス供給源は、それぞれ所定のボンベに充填されてなり、
前記流量監視部は、これら複数の前記ボンベにそれぞれ充填された前記ガス毎の容量と前記積算流量演算部が求めた前記ガス毎の積算流量との差分から前記各ボンベのガス残量をそれぞれ求める残量演算部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の混合ガス供給システム。
【請求項6】
前記流量監視部は、前記残量演算部によりそれぞれ換算された複数の前記ガス毎の質量流量および/または前記積算流量演算部が求めた複数の前記ガス毎の積算流量を出力する出力部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の混合ガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−244946(P2007−244946A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68911(P2006−68911)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】