説明

混合トコフェロール成分を含有する口腔ケア組成物

促進された抗歯肉炎効果を提供する、歯磨剤組成物などの口腔ケア組成物を開示する。組成物には、トコフェロール成分が含まれ、そのトコフェロール成分は約10%〜約90%のガンマトコフェロールから成り、残りの成分がアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 歯周病は、口腔の組織で生じる炎症の一種である。歯肉炎(歯周病の初期段階)は、歯垢(歯肉線上の、柔らかく、粘り気のある、無色の細菌のフィルム)の集積によって引き起こされる歯肉の炎症である。適切なブラッシング及びフロッシングによって定期的に除去されない場合、歯垢が歯と歯肉の上に蓄積し、歯肉炎となる可能性がある。歯肉炎の良く知られた徴候には、赤く腫れた柔らかい歯肉が含まれ、その場合、歯を磨いたときに出血する可能性がある。治療しない場合、歯肉炎は、歯周炎などのより深刻な歯周病、そして最終的には骨の破壊及び歯の喪失まで進行する可能性がある。
【0002】
[0002] アメリカ人成人の80%近くが何らかの形の歯周病を有する。歯周病は、習慣的なブラッシング、フロッシング、及び専門家による歯の清掃を含む極めて簡単な歯の衛生療法によって一般に治療及び最小化することができるが、一方、この衛生習慣は必ずしも厳密に続けられるとは限らず、成人人口における比較的高い歯周病の存在の原因となる。よって、歯の定期的なブラッシングが歯周病の発症を治療及び最小化することを助けるように歯磨剤の抗歯肉炎活性を増強することができれば、それは望ましいだろう。
【0003】
[0003] ビタミンE(トコフェロール)は、スキンクリーム及びスキンローションにおいてしばしば用いられる;皮膚の治癒を促進し及び火傷などの損傷後の瘢痕化を減少する際に役割を果たすことが報告されている。天然ビタミンEは、4つのトコフェロール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)及び4つのトコトリエノールという、8つの異なる形又は異性体で存在する。口腔治療においてトコフェロールを取り込もうとするいくつかの試みが研究されたが、現在までのところ、トコフェロールの歯肉組織に対する効果に関する結果は、よくても曖昧なものである。洗浄剤(rinse)の形で局所的に適用した場合、ビタミンEの使用が歯肉溝滲出液中のプロスタグランジンE2の濃度の減少をもたらすことが報告された。何人かの研究者が、アルファトコフェロールの形のビタミンEの使用を歯肉炎及び歯周炎に対するその効果について評価した。アルファトコフェロールは、練り歯磨き中で局所的に適用した場合、歯肉組織に浸透したが、霊長類動物及びヒトにおいて歯肉炎に対して効果を与えないことが報告された。
【0004】
[0004] ビタミンEは、歯周病以外の多くの健康への影響について研究された。例えば、Violi et al., Ann. NY Acad. Sci. 1031:292-304 (2004)は、文献を解析し、ビタミンEが心臓血管疾患の治療に対して好ましい効果を有することを文献が支持するか否かを判断している。くわえて、Panganamala et al., Prostaglandins, 14(2): 261-271 (1977)には、トコフェロールを使用して、アラキドン酸誘導性血小板凝集及びADP誘導性血小板凝集、並びに大豆リポキシダーゼの活性を阻害することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Violi et al., Ann. NY Acad. Sci. 1031:292-304 (2004)
【非特許文献2】Panganamala et al., Prostaglandins, 14(2): 261-271 (1977)
【発明の概要】
【0006】
[0005] 本発明には、約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む口腔ケア組成物が含まれる。トコフェロール成分は約50重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される。本発明には、約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む組成物を、哺乳動物の口腔表面へ適用することを含む、哺乳動物の全身の健康を改善又は維持する方法も含まれる。トコフェロール成分は少なくとも約50重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[0006] 図1は、基準時の平均のポケットの深さ及び練り歯磨きAと練り歯磨きBについての1ヶ月時点の平均のポケットの深さを表す(棒グラフは平均値であり、ひげ(whisker)は標準誤差である)。
【図2】[0007] 図2は、基準時の歯垢の広がり(plaque prevalence)及び練り歯磨きAと練り歯磨きBについての1ヶ月時点の歯垢の広がりを表す(棒グラフは平均値であり、ひげは標準誤差である)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0008] 本発明は、混合トコフェロール物質を含有する歯磨剤組成物及び他の口腔ケア組成物であって、抗歯肉炎効果の改善を提供するものに関する。
[0009] 本発明は、歯磨剤、練り歯磨き、歯磨き粉、又は口腔洗浄剤(oral rinse)などの口腔ケア組成物に関する。これらの組成物は、口腔へ適用する場合、使用者に抗歯肉炎の利益を提供することができる。本発明は口腔ケア組成物/歯磨剤組成物において見られる従来の成分と供に、混合トコフェロール成分を含む。
【0009】
[0010] トコフェロール、すなわちビタミンEは、4つのトコフェロール及び4つのトコトリエノールという8つの異なる形又は異性体で存在する、脂溶性ビタミンである。アルファ、ベータ、ガンマ、及びデルタの形がトコフェロールとトコトリエノールの両方にあり、それらはクロマノール環のメチル基の数によって決定される。それぞれの形は、それ独特の生物学的活性を有する。トコフェロールの形は、構造:
【0010】
【化1】

【0011】
[ここで、R1、R2、及びR3のそれぞれは、表Iに示されるように、その形に依存して水素原子又は-CH3である]
【0012】
【表1】

【0013】
によって表される。
[0011] 本発明において使用されるトコフェロール成分は、天然又は合成といった、いずれかの供給源から得られたトコフェロールを含んでよい。従来の供給源には、植物油、全粒粉、魚、木の実、サジー(sea buckthorn)、及び緑色葉野菜が含まれる。
【0014】
[0012] 本発明の組成物において利用されるトコフェロール成分は、(トコフェロール成分の)約10%〜約90%又は約50%〜約90%のガンマトコフェロールから成り、残りの成分は、アルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの物質の混合物から選択される。一態様において、トコフェロール成分は約50%〜約90%のガンマトコフェロールから成り、残りの成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、及びそれら物質の混合物である。別の態様において、トコフェロール成分には約50%〜約90%のガンマトコフェロール又は約10%〜約90%のガンマトコフェロールが含まれ、残りの成分はアルファトコフェロールである。本発明のさらに別の態様において、トコフェロール成分には、ガンマトコフェロール及びアルファトコフェロールの50:50混合物が含まれる。上記の定義内に包含される他の組み合わせもまた使用してよい。トコフェロール成分は、本発明の口腔ケア組成物中に約0.1%〜約5%、例えば口腔ケア(例えば歯磨剤)組成物の約0.5〜約1.5%で一般に存在する。
【0015】
[0013] 本発明において使用されるトコフェロールは、当該技術分野で公知の又は開発されるであろう、いずれかの手段によって得られる。トコフェロールを合成する方法、及びトコフェロールのさまざまな異性体を分離するためのクロマトグラフィー技術は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Lienau, et al., Analytical Chemistry, 74(20): 5192-5198 (2002)を参照。
【0016】
[0014] 例えば歯磨剤、歯磨き粉、及び口腔洗浄剤において使用される、いずれかの従来の口腔ケアビヒクルも、本発明において使用することができる。本発明の歯磨剤組成物を製造するために使用されるビヒクルは、その中に保湿剤を含有する水層を含む。保湿剤は、例えば、200〜1000の範囲の分子量のグリセリン、ソルビトール、キシリトール、及び/又はプロピレングリコールであってよいが、他の保湿剤及びそれらの混合物を用いてもよい。保湿剤の濃度は、口腔組成物の約5重量%〜約70重量%を構成してもよい。
【0017】
[0015] 本発明の歯磨剤組成物は、さまざまな任意の歯磨成分を含有することができる。以下に記載のように、そのような任意の成分には、増粘剤、界面活性剤、フッ化物イオン源、合成陰イオン性ポリカルボキシレート、フレーバー剤、研磨剤、追加の抗歯垢剤、及び着色剤が含まれてよいが、これらには限定されない。含まれてよい他の物質は、スズイオン剤、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール(octaphinol)、ナイシン、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、精油、フラノン、バクテリオシン、エチルラウロイルアルギネート(ethyl lauroyl arginate)、モクレン抽出物、金属イオン源、重炭酸アルギニン、ホノキオール、マゴノール(magonol)、ウルソル酸、ウルシック酸(ursic acid)、モリン、サジー抽出物(extract of sea buckthorn)、ペルオキシド、酵素、ツバキ抽出物、フラボノイド、フラバン、ハロゲン化ジフェニルエーテル、クレアチン、プロポリス、及びアルギニン(遊離塩基又は塩)である。
【0018】
[0016] 本発明の組成物において使用される増粘剤には、天然及び合成のゴム及びコロイドが含まれてよく、それらの例には、カラギーナン(リッチモス(rich moss))、キサンタンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシルエチルセルロースが含まれる。無機増粘剤には、増粘剤として機能する非晶質シリカ化合物が含まれ、そして、Cabot Corporationによって製造されLenape Chemical(Bound Brook, New Jersey)によって流通されるヒュームドシリカであるCab-o-Sil;J. M. Huber Chemicals Division(Havre deGrace, Maryland)から入手可能なZeodent 165;及びW.R. Grace CorporationのDavidson Chemical Division(Baltimore, Maryland)から入手可能なSylodent 15としても知られるSylox 15を含む商標で入手可能なコロイド状シリカ化合物が含まれる。増粘剤は、組成物の約0.1重量%〜約10重量%の量で、より具体的には、組成物の約0.5重量%〜約4重量%の量で、歯磨剤組成物中に一般に存在する。
【0019】
[0017] 本発明の組成物において界面活性剤を使用して、予防作用の増加を達成し、歯磨剤組成物をより美容上受け入れやすくすることができる。界面活性剤は、好ましくは、洗浄及び発泡特性を組成物に与える洗浄性物質である。界面活性剤はしばしば陰イオン性であるが、非イオン性界面活性剤などの他の界面活性剤も使用することができる。界面活性剤の適した例は、高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸(例えば水素化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸モノグリセリドのナトリウム塩)、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルキル硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリルスルホン酸、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムなどの高級アルキルスルホ酢酸、1,2-ジヒドロキシプロパンスルホン酸の高級脂肪酸エステル、及び、脂肪酸、アルキル、又はアシルラジカル中に12〜16の炭素を有するような低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和の高級脂肪族アシルアミドなどの水溶性塩である。最後に挙げたアミドの例は、N-ラウリルサルコシン、及びN-ラウリルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩、及びエタノールアミン塩である。この界面活性剤は、典型的には、約0.3重量%〜約5重量%の量で、より具体的には約0.5重量%〜約2重量%の量で、本発明の歯磨剤組成物中に存在する。
【0020】
[0018] 非イオン性界面活性剤も、本発明の歯磨剤組成物において利用することができる。それらの物質には、Polyoxamer 407、Steareth 30、Polysorbate 20、及びPEG-40 Castor Oilなどの非陰イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、及び、コカミドプロピルベタイン(テゴバイン(tegobaine))及びコカミドプリピルベタインラウリルグルコシドなどの両性界面活性剤、エチレンオキシドとそのエチレンオキシドと反応性で長い炭化水素鎖(例えば、約12から約20の炭素原子の脂肪族鎖)を有する様々な水素含有化合物との縮合産物であって、この縮合産物(エトキサマー(ethoxamer))が、ポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、及び他の脂肪族部分との縮合産物並びにポリ(エチレンオキシド)とプロピレンオキシド及びポリプロピレンオキシド(例えば、PluronicTM材料)との縮合産物などの、親水性ポリオキシエチレン部分を有するもの、が含まれる。
【0021】
[0019] 本発明の歯磨剤組成物は、約25ppm〜約5000ppmのフッ化物イオンを供給するために十分な量で抗虫歯剤として、フッ化物イオン源又はフッ化物供給成分も含んでよく、それらには、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、並びにフッ化スズ(stannous flouoride)及び塩化スズなどのスズフッ化物(tin flouoride)といった可溶性アルカリ金属塩などの無機フッ化物塩が含まれる。フッ化ナトリウムは、本発明の特定の態様において使用される化合物である。
【0022】
[0020] フッ化物化合物にくわえて、Na4P2O7、K4P2O7、Na2K2P2O7、Na2H2P2O7、及びK2H2P2O7などのジアルカリ金属又はテトラアルカリ金属のピロリン酸塩を含むピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの長鎖ポリリン酸、及びトリメタリン酸ナトリウムなどの環状リン酸などの、抗歯石剤も含まれてよい。これらの抗虫歯剤は、約1重量%〜約5重量%の濃度で歯磨剤組成物中に含まれる。
【0023】
[0021] 本発明の歯磨剤組成物において有用な別の活性剤は、抗菌剤であり、歯磨剤組成物の約0.2重量%〜約1重量%で存在することができる。そのような有用な抗菌剤には、トリクロサン(2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル)などのハロゲン化ジフェニルエーテルなどの、フェノール性化合物又はビスフェノール性化合物に基づく、非陽イオン性抗菌剤が含まれる。
【0024】
[0022] 合成陰イオン性ポリカルボキシレートも、いずれかの抗菌剤、抗歯石剤又は歯磨剤組成物内のいずれかの他の活性剤のための効果促進剤として、本発明の歯磨剤組成物において使用することができる。そのような陰イオン性ポリカルボキシレートはそれらの遊離酸の形で、又は、好ましくは部分的に中和された、又はより好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属(例えばカリウム及びナトリウム)塩またはアンモニウム塩の形で一般に用いられる。本発明の一態様には、無水マレイン酸又はマレイン酸と、別の高分子化可能なエチレン系不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜1,800,000、より具体的には約30,000〜700,000の分子量を有するメチルビニルエステル無水マレイン酸との1:4:1共重合体が含まれる。これらの共重合体の例は、GAF CorporationからGantrezの商標名で入手可能な、例えばAN139(MW=500,000)、AN119(MW=250,000);S-97医薬品グレード(MW=700,000)、AN169(MW=1,200,000〜1,800,000)、及びAN179(MW=1,800,000より大きい);であり、ここで、本発明において利用可能な具体的なポリマーはS-97医薬品グレード(MW=700,000)である。
【0025】
[0023] 存在する場合、陰イオン性ポリカルボキシレートは、歯磨剤組成物内のいずれかの抗菌剤、抗歯石剤、又は他の活性剤の効果の望ましい促進を達成するために効果的な量で使用される。一般に、陰イオン性ポリカルボキシレートは、組成物の約0.05重量%〜約4重量%、より具体的には組成物の約0.5重量%〜約2.5重量%で、歯磨剤組成物内に存在する。
【0026】
[0024] 本発明の歯磨剤組成物には、J.M. Huber Chemical Division(Havre deGrace, Maryland)によって販売されるZeodent 115、又はW.R. Grace and CompanyのDavison Chemical Divisionによって販売されるSilodent, 783などの、約20ミクロンまでの平均粒径を有する沈降シリカなどの、研磨剤が含まれてよい。他の有用な歯磨研磨剤には、メタリン酸、メタリン酸カリウム、リン酸トリカルシウム、リン酸ジカルシウム二水和物、ケイ酸アルミニウム、か焼アルミナ、ベントナイト、又は他のシリカ物質、又はそれらの組み合わせが含まれる。本発明において有用な研磨物質の具体的態様には、約100cc/100gシリカ未満、より具体的には約45cc/100gシリカ〜約70cc/100gシリカ未満の範囲内の油吸収値(oil absorption value)を有するシリカゲル及び沈降非晶質シリカが含まれる。これらのシリカは、約3ミクロン〜約12ミクロン又は約5ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径、及び5重量%のスラリーとして測定した場合に約4〜約10又は約6〜約9のpHを有するコロイド状粒子である。
【0027】
[0025] 油吸収値は、ASTM Rub-Out Method D281を使用して測定される。低油吸収シリカ研磨剤は、使用される場合、約5重量%〜約40重量%、あるいは約10重量%〜約30重量%の濃度で、本発明の口腔組成物中に存在する。
【0028】
[0026] 本発明において有用な低吸収シリカ研磨剤の例は、W.R. Grace and Companyの一部門であるDavison Chemical(Baltimore, Maryland)によって商品名Sylodent XWAで販売されるもの;及び、29重量%の水分含量を有し、コロイド状シリカの粒子から構成されるシリカヒドロゲル、Sylodent 650 XWAである。粒子は、例えば、直径約7〜約10ミクロンであり、70cc/100gシリカ未満の油吸収を有する。
【0029】
[0027] 本発明の組成物において使用されるシリカは、さまざまな研磨性を有してよい。しかし、シリカは、約90より大きい被膜清掃比(pellicle cleaning ratio)(PCR)の値及び約250未満の放射性象牙質摩耗(radioactive dentin abrasion)(RDA)の値を有することが望ましいだろう。
【0030】
[0028] 本発明の歯磨剤組成物は、フレーバー剤を含んでよい。本発明の実施において使用されるフレーバー剤には、精油、並びに様々なフレーバーを与えるアルデヒド、エステル、アルコール及び同様の物質が含まれる。精油の例には、スペアミント、ペパーミント、冬緑樹、ササフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン、ライム、グレープフルーツ、及びオレンジの油が含まれる。また有用なのは、メントール、カルボン(carvone)、及びアネトールなどの化学物質である。これらのうち、最も普通に用いられるものは、ペパーミント及びスペアミントの油である。フレーバー剤は、約0.1重量%〜約5重量%、より具体的には約0.5重量%〜約1.5重量%の濃度で歯磨剤組成物中に組み込まれる。
【0031】
[0029] さまざまな他の物質が本発明の歯磨剤組成物に組み込まれてよく、硝酸カリウムなどの減感剤;過酸化水素、カルシウムペルオキシド、及びウレアペルオキシドなどのホワイトニング剤;保存剤;シリコーン;色素/着色剤;及びクロロフィル化合物が含まれる。これらの添加剤は、存在する場合、それらの従来の量で、及び具体的には、それらの望まれる利益を提供するが、歯磨剤組成物それ自体について望まれる特性及び特徴に実質的に害を与えない量で、歯磨剤組成物に組み込まれる。
【0032】
[0030] 歯磨剤の製造は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国特許3,966,863;3,980,767;4,328,205;及び4,358,437に記載され、これらすべては参照として本明細書中に援用される。より具体的には、本発明の歯磨剤を製造するためには、一般に、保湿剤(例えばグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、及び/又はポリエチレングリコール)を撹拌しながら従来のミキサー中で水中へ分散させる。この分散物に、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、カラギーナン、又はキサンタンゴムなどの有機増粘剤;いずれかの陰イオン性ポリカルボキシレート;フッ化ナトリウム虫歯予防剤などのいずれかの塩;及びいずれかの甘味料を添加し;得られる混合物を均質なゲル層が形成されるまで撹拌する。このゲル層の中へ、TiO2などの利用されるいずれかの色素、及び組成物のpHを調節するために必要ないずれかの酸又は塩基を添加する。これらの成分を均質な層が得られるまで混合する。混合物は、次いで、高速/真空ミキサーへ移され、ここで、Zeodent 165などの無機増粘剤、及び界面活性剤成分を混合物へ添加する。いずれかの利用される研磨剤をこの時点で添加する。トリクロサンなどのいずれかの水不溶性抗菌剤を、歯磨剤へ含まれるようにフレーバーオイル中に可溶化し、そしてその溶液を界面活性剤とともに混合物へ添加し、次いで、それを、約20〜約50mmHg、より具体的には約30mmHgの減圧下で、約5〜約30分、高速で混合する。得られる産物は、均質で半固体状の、絞り出し可能なペースト又はゲル産物である。
【実施例】
【0033】
実施例I
[0031] 上記に記載の製造法を使用して、本発明の以下の4つの組成物を製造する。表IIに記載の混合トコフェロールは、ガンマトコフェロール及びアルファトコフェロールの50:50混合物を含む。
【0034】
【表2】

【0035】
[0032] 製造された歯磨剤組成物は、定期的に使用された場合、歯の清掃及び使用者への抗歯肉炎の利益の提供に有効である。
実施例II
[0033] 性別、人種、及び人口統計層が混合された41人の被験者を選択した。全ての被験者は、18〜65歳の間であり、全体的な健康が良く、そしてさまざまな重症度の歯肉炎を有すると診断されていた。
【0036】
[0034] 被験者を二つのグループ:A及びBに分けた。
[0035] グループAには、処方A(表III参照)の練り歯磨き(“練り歯磨きA”)で一日二回ブラッシングすることを指示した。
【0037】
[0036] グループBには、処方B(表III参照)の練り歯磨きで(“練り歯磨きB”)一日二回ブラッシングすることを指示した。
【0038】
【表3】

【0039】
[0037] 被験者を、基準時の来診(練り歯磨きの使用前)及び2ヶ月の来診時に検査した。
[0038] それぞれの来診の間、口腔の健康のさまざまな測定を行い、それには歯肉ポケットの深さ及び歯垢の測定が含まれた。
【0040】
[0039] ポケットの深さは、遊離歯肉線(free gingival margin)からポケットの底までを測定し、すべてミリメートルで記録した。それぞれの被験者において、ポケットの深さを6ヶ所で測定した(近心頬側、頬側、遠心頬側、近心舌側、舌側、及び遠心舌側)。
【0041】
[0040] 歯垢は、Loe et al., The gingival index, the plaque index, and the retention index. J. Periodontal., 1967 38:610-616の方法に従い、それぞれの被験者において168ヶ所で測定した。
【0042】
[0041] 練り歯磨きA又は練り歯磨きBで1ヶ月ブラッシングした後のこれらのパラメータのそれぞれについての結果を図1及び2に示す。
[0042] 図1は、練り歯磨きAを1ヶ月使用した被験者の平均のポケットの深さが、練り歯磨きBを使用した被験者の平均のポケットの深さと比較して、減少したことを示す。
【0043】
[0043] 図2は、練り歯磨きAを1ヶ月使用した被験者が、練り歯磨きBを使用した被験者より、歯垢形成の大幅な減少を経験したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む口腔ケア組成物であって、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、前記口腔ケア組成物。
【請求項2】
トコフェロール成分が、組成物の約0.5重量%〜1.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
残りのトコフェロール成分が、アルファトコフェロール、ベータトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
残りのトコフェロール成分がアルファトコフェロールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
トコフェロール成分が、ガンマトコフェロール及びアルファトコフェロールの50:50混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
フッ化物イオン源をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
スズイオン剤、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール(octaphinol)、ナイシン、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、精油、フラノン、バクテリオシン、エチルラウロイルアルギネート(ethyl lauroyl arginate)、モクレン抽出物、金属イオン源、重炭酸アルギニン、ホノキオール、マゴノール(magonol)、ウルソル酸、ウルシック酸(ursic acid)、モリン、サジー抽出物(extract of sea bacthorn)、ペルオキシド、酵素、ツバキ抽出物、フラボノイド、フラバン、ハロゲン化ジフェニルエーテル、クレアチン、プロポリス、及びアルギニン(遊離塩基又は塩)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも約5のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
研磨剤、抗菌剤、歯垢分散剤(plaque dispersion agent)、抗接着剤、虫歯予防剤、減感剤、フレーバー剤、着色剤、及び感覚剤(sensate)から選択される物質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物から選択される約5%〜約75%の保湿剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む組成物であって、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、前記組成物を、哺乳動物の口腔表面に適用することを含む、哺乳動物の全身の健康を改善又は維持する方法。
【請求項12】
組成物が、スズイオン剤、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール、ナイシン、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、精油、フラノン、バクテリオシン、エチルラウロイルアルギネート、モクレン抽出物、金属イオン源、重炭酸アルギニン、ホノキオール、マゴノール、ウルソル酸、ウルシック酸、モリン、サジー抽出物、ペルオキシド、酵素、ツバキ抽出物、フラボノイド、フラバン、ハロゲン化ジフェニルエーテル、クレアチン、プロポリス、及びアルギニン(遊離塩基又は塩)から選択される物質をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む組成物であって、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、前記組成物を、哺乳動物の口腔表面へ適用することを含む、哺乳動物における歯肉の炎症(gum inflammation)、歯肉炎(gingivitis)、及び/又は歯周炎を改善及び/又は予防する方法。
【請求項14】
組成物が、スズイオン剤、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール、ナイシン、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、精油、フラノン、バクテリオシン、エチルラウロイルアルギネート、モクレン抽出物、金属イオン源、重炭酸アルギニン、ホノキオール、マゴノール、ウルソル酸、ウルシック酸、モリン、サジー抽出物、ペルオキシド、酵素、ツバキ抽出物、フラボノイド、フラバン、ハロゲン化ジフェニルエーテル、クレアチン、プロポリス、及びアルギニン(遊離塩基又は塩)から選択される物質をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トコフェロール成分が、組成物の約0.5重量%〜1.5重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
残りのトコフェロール成分が、アルファトコフェロール、ベータトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
残りのトコフェロール成分がアルファトコフェロールである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
トコフェロール成分が、ガンマトコフェロール及びアルファトコフェロールの50:50混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む口腔ケア組成物であって、トコフェロール成分は約10%〜約90%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロールである、前記組成物。
【請求項20】
約1ヶ月から約1年の間少なくとも一日二回、口腔表面を口腔ケア組成物と接触させることを含む、歯肉の炎症、歯肉炎、及び/又は歯周炎を改善及び/又は予防する方法であって、前記口腔ケア組成物は約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含み、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択され、第一の研磨剤と第二の研磨剤の比が約1:1.6〜約1.6:1の範囲であり、そして定期的口腔組成物は約90より大きい被膜清掃比(pellicle cleaning ratio)及び約250未満の放射性象牙質摩耗(radioactive dentin abrasion)を有する、前記方法。
【請求項21】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む組成物であって、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、前記組成物を、哺乳動物の口腔表面へ適用することを含む、口腔表面上の歯垢形成を軽減又は阻害する方法。
【請求項22】
約0.1%〜約5%のトコフェロール成分を含む組成物であって、トコフェロール成分は約10重量%〜約90重量%のガンマトコフェロールから成り、そして残りのトコフェロール成分はアルファトコフェロール、ベータトコフェロール、デルタトコフェロール、及びそれらの混合物から選択される、前記組成物を、哺乳動物の口腔表面へ適用することを含む、歯周ポケットの深さを減らす方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523573(P2010−523573A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502179(P2010−502179)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/056659
【国際公開番号】WO2008/121519
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】