説明

混合培養物中でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とメチシリン感受性黄色ブドウ球菌とを区別する方法

本発明は、増幅させた核酸分子より生物学的複雑性が高い核酸分子を含む試料などの試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出するための、単離オリゴヌクレオチドおよび方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅させた核酸分子より生物学的複雑性が高い核酸分子を含む試料などの試料中、例えばゲノムDNA中の、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出するための、オリゴヌクレオチドおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2004年7月26日に出願した米国特許仮出願第60/591,127号の利益を主張するものである。
(発明の背景)
黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性株(MRSA)は、世界で第1位の院内病原菌となっている。この細菌は、米国の大規模な大学付属病院におけるブドウ球菌院内感染全体の40%超の原因である。ごく最近では、該細菌はより小規模な病院(200〜500床の病院で20%の発生率)、ならびに療養施設でも蔓延するようになってきた(非特許文献1)。MRSA株の異常かつ最も憂うべき特性は、この菌株が化学療法的に有用な他の抗生物質に対するその感受性を抑制するさらなる耐性因子を獲得することができることである。そのような多剤耐性の菌株は現在世界中で蔓延し、最も「進んだ」形態のこの病原菌は、ほとんどの使用可能な抗菌剤に対する耐性機構を有している(非特許文献2)。
【0003】
メチシリン耐性は、mecA遺伝子と関係する。この遺伝子は、祖先のMRSA細胞が外来の供給源から獲得したと思われる、SCCmec因子(ブドウ球菌カセット染色体(Staphylococcal Cassette Chromosome)mec;非特許文献3)と呼ばれるブドウ球菌でない起源不明のDNA片上に認められる。mecA遺伝子は、PBP2Aと呼ばれるペニシリン結合タンパク質(PBP)をコードし(非特許文献4)、このタンパク質はβラクタム系抗生物質ファミリー全体に対する親和性が極めて低い。現在の見方では、PBP2Aは1種の「代理の」細胞壁合成酵素であり、PBPの通常の相補体(壁合成の通常の触媒)がその環境中のβラクタム系抗生物質によって完全に不活性化されてしまったためにもはや機能できないとき、ブドウ球菌中で重要な作業である細胞壁合成を引き継ぐことができる。抗生物質耐性の表現型についてのmecA遺伝子およびその遺伝子産物PBP2Aの極めて重要な性質は、トランスポゾンTn551をmecA遺伝子内に組み込む初期のトランスポゾン不活性化実験によって示された。その結果は、親細菌での最小発育阻止濃度(MIC)の値1600ug/mlからトランスポゾン突然変異体での低い値約4ug/mlへの、耐性レベルの劇的な低下であった(非特許文献5)。
【0004】
病院内でのブドウ球菌感染は、抗生物質耐性株が増加し、コアグラーゼ陽性および陰性の両方のブドウ球菌種により引き起こされる感染の数が増加するにつれて、治療がますます困難になってきている。これらの感染の有効な治療は、種の同定(種の特定)および抗生物質耐性の決定のための多数の試験が非常に長い時間を要するために、軽減されてしまう。菌種と抗生物質耐性の状態の両方が迅速に同定されると、患者の治療コースを早く実施し、かつ広域抗生物質の使用を少なくすることができる。したがって、ブドウ球菌種を同定かつ区別し、かつ/またはmecA遺伝子を検出するための迅速、高感度かつ選択的な方法が必要である。
【0005】
通常、患者内のMRSAを検出するためには、患者から鼻腔スワブを採取してこれを反復培養し、感染の特定を行うと同時に最も一般的に使用される抗生物質であるメチシリンまたはその誘導体に対する耐性または感受性を決定する。そもそも複数回培養する必要が
あるために、スワブから最終的なアッセイまで確定診断を行うのにかかる典型的な時間は24〜48時間である。スワブから直接MRSAを同定するアッセイを開発することによって、培養する必要がなくなる可能性がある。
【0006】
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、ならびにmecA遺伝子を含む日和見性の非病原性細菌を含む、患者の鼻腔スワブ由来の混合培養物から、MRSAを確実に区別する技術は、標準的な方法としては現れていない。フレツスキーら(Huletsky
et al.)は、mecA挿入部位の右末端結合部でMRSAの核酸配列とハイブリダイズするプローブを用いたリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してMRSAを同定する方法を開発している(非特許文献6;特許文献1)。しかし、ディーケマら(Diekema et al.)によって最近指摘されたように(非特許文献7)、抗菌耐性の検出にPCRを使用することは、患者試料の品質が原因で増幅工程が阻害される可能性など、リスクを伴う(非特許文献8)。
【0007】
したがって、PCRを行わずに鼻腔スワブなどの混合培養物からこれら2つの集団を区別することができる技術が開発されると、MRSA細胞の偽陽性率が解消し、一部の患者にはメチシリンを投与する必要がなくなり、臨床医/医師は代替の抗生物質(バンコマイシンなど)を投与することができ、ならびに24〜48時間が不要となることによって患者の入院が短くなるであろう。
【特許文献1】国際公開公報第02/099034号パンフレット
【非特許文献1】ウェンツェルら(Wenzel et al.)、1992年、Am.J.Med.第91巻(補巻3B)、p.221〜7ページ
【非特許文献2】ブルームバーグら(Blumberg et al.)、1991年、J.Inf.Disease、第63巻、p.1279〜85
【非特許文献3】イトウら(Ito et al.)、2001年、Agents Chemother.第45巻、p.1323〜1336
【非特許文献4】ムラカミ(Murakami)およびトマシュ(Tomasz)、1989年、J.Bacteriol.第171巻、p.874〜79
【非特許文献5】マシューズ(Matthews)およびトマシュ(Tomasz)、1990年、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第34巻、p.1777〜9
【非特許文献6】フレツスキーら(Huletsky et al.)、2004年、J.of Clin.Microbiol.第42巻、p.1875〜84
【非特許文献7】ディーケマら(Diekema et al.)、2004年、J.Clin.Microbiol.7月号、p.2879〜83
【非特許文献8】ポールら(Paule et al.)、2003年、J.Clin.Microbial.第41巻、p.4805〜4807
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、混合培養物中でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とメチシリン感受性黄色ブドウ球菌とを区別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、増幅させた核酸分子より生物学的複雑性が高い核酸分子を含む試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を検出する方法を提供する。mecA遺伝子は、ブドウ球菌カセット染色体mec(SCCmec)と呼ばれる遺伝因子によって担持されている(非特許文献3)。このmecA遺伝子カセットの、黄色ブドウ球菌ゲノム中への挿入部位は既知であり、その配列は保存されている(非特許文献3)。黄色ブドウ球菌染色体への挿入後、SCCmecは左末端結合領域と右末端結合領域とを有し(図1)、S
CCmec配列は黄色ブドウ球菌染色体の配列と隣接している。本発明の1態様では、mecA遺伝子カセット配列の一部と挿入領域内の黄色ブドウ球菌配列の一部とを含むmecA遺伝子カセット挿入部位の左側結合部に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプローブでMRSAを検出する。
【0010】
本発明は、(a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す核酸配列、あるいは(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す核酸配列の相補体とハイブリダイズする核酸配列、で構成される単離オリゴヌクレオチドを提供する。本発明はまた、本発明のオリゴヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターを含む宿主細胞、および本発明の単離オリゴヌクレオチドを含むキットも提供する。
【0011】
1態様では、試料中のMRSAを検出する方法は、a)左側結合部のmecA遺伝子カセットの一部と、かつ挿入領域の黄色ブドウ球菌配列の一部と相補的な配列を有する捕捉オリゴヌクレオチドが結合した、位置指定可能な基材を供給する工程と、b)MRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程と、c)捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションに有効な条件下で試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、d)基材を洗浄して非特異的に結合した物質を除去する工程と、e)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、からなる。
【0012】
他の態様では、事前に標的の増幅または複雑性の低減を行わずに試料中の標的核酸配列を検出する方法は、a)捕捉プローブがMRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、捕捉オリゴヌクレオチドが結合した位置指定可能な基材を供給する工程と、b)左側結合部のmecA遺伝子カセットの一部と、かつ黄色ブドウ球菌挿入部位の一部と相補的な配列を有する検出オリゴヌクレオチドを含む検出プローブを供給する工程と、c)捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションに有効な条件下で試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、d)基材を洗浄して非特異的に結合した物質を除去する工程と、e)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、からなる。
【0013】
特定の態様では、左側結合部のmecA遺伝子カセットの一部および黄色ブドウ球菌挿入部位の一部と相補的な配列を有する捕捉オリゴヌクレオチドまたは検出オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す配列を含む。
【0014】
他の特定の態様では、MRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する捕捉オリゴヌクレオチドまたは検出オリゴヌクレオチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23で示す核酸配列を含む。
【0015】
他の実施形態では、試料中の核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現したRNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアまたは他の細胞小器官のDNA、遊離の細胞DNA、ウイルスDNAまたはウイルスRNA、あるいは上記の2種以上の混合物を含みうる。
【0016】
1実施形態では、本発明の方法で使用する基材は、それぞれが1つまたは複数の異なる1塩基多型またはヌクレオチドの相違を認識することができる複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含むことが可能であり、試料は、それぞれが異なる1塩基多型またはヌクレオチドの相違を含むとともに複数の捕捉オリゴヌクレオチドの1つとハイブリダイズすることができる複数の核酸標的を含み得る。さらに、本発明の方法において、異なる核酸標的とハイブリダイズすることができる検出オリゴヌクレオチドがそれぞれ結合した1つまたは複数の種類の検出プローブを供給することができる。
【0017】
1実施形態では、試料中に存在する核酸標的が検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、試料を検出プローブと接触させ、次いで、核酸標的が基材上の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、検出プローブに結合した核酸標的を基材と接触させることができる。あるいは、試料中に存在する核酸標的が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、試料を基材と接触させ、次いで、核酸標的が検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、捕捉オリゴヌクレオチドに結合した核酸標的を検出プローブと接触させることができる。他の実施形態では、試料を検出プローブおよび基材と同時に接触させることができる。
【0018】
さらに他の実施形態では、検出オリゴヌクレオチドは検出可能な標識を含み得る。標識は、例えば、蛍光性、発光性、リン光性、放射性、またはナノ粒子であってもよく、検出オリゴヌクレオチドは、デンドリマー、分子凝集物、量子ドット、またはビーズと結合することができる。標識は、例えば、光学的、電子的、音響学的、音響光学的、重力学的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的、または物理的な手段による検出を可能にする。
【0019】
1実施形態では、検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブでもよい。ナノ粒子は、例えば、金や銀などの貴金属から作製することができる。ナノ粒子は、例えば、光学スキャナまたは平台式スキャナを使用して検出することができる。スキャナは、グレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結することが可能であり、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される。ナノ粒子が、オートメタログラフィーを進めることができる金、銀、または他の金属から作製される場合、標的核酸分子によってナノ粒子と結合した基材を、銀染色などのシグナル増幅工程を使用して高感度で検出することができる。あるいは、ナノ粒子と結合した基材を、例えば、いずれもその全体が本願明細書に援用される2001年12月7日出願の米国特許出願第10/008,978号、2001年12月7日出願の国際特許出願第PCT/US01/46418号、2004年5月27日出願の米国特許出願第10/854,848号、2004年11月22日出願の米国特許出願第10/995,051号、2004年5月27日出願の国際特許出願第PCT/US04/16656号に記載の方法を使用して、ナノ粒子によって散乱した光を検出することにより、検出することもできる。
【0020】
他の実施形態では、基材に結合したオリゴヌクレオチドが2つの電極の間に配置され、ナノ粒子が電気の伝導体である物質から作製され、かつ本発明の方法における工程(e)が、電気伝導度の変化を検出する工程を含んでいてもよい。電極を、例えば金から作製することができ、ナノ粒子を金から作製する。あるいは、基材を銀染色液と接触させて、電気伝導度の変化を生じさせることもできる。
【0021】
特定の実施形態では、特異的な結合対の相互作用によって、捕捉プローブと基材とを結合させることができる。他の実施形態では、捕捉プローブおよび基材は、特異的な結合対の相補体を含み得る。特異的な結合対の相補体は、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、ポリペプチド、抗体、抗原、炭水化物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモ
ン、ステロイド、ビタミン、薬物、ウイルス、多糖、脂質、リポ多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、核タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、イムノグロブリン、アルブミン、ヘモグロビン、凝固因子、ペプチド性ホルモンおよびタンパク質性ホルモン、非ペプチド性ホルモン、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、腫瘍特異的エピトープを含むペプチド、細胞、細胞表面分子、微生物、微生物の断片、部分、構成成分または生成物、有機小分子、核酸およびオリゴヌクレオチド、上記の物質のいずれかの代謝物または上記の物質のいずれかに対する抗体を含み得る。
【0022】
本発明の具体的な好ましい実施形態は、下記の特定の好ましい実施形態のより詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
前後関係より別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
本開示に従って使用されるとき、下記の用語は、別途指定のない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする。
【0024】
本願明細書において、「核酸配列」、「核酸分子」、または「核酸」とは、本願明細書で定義される1つまたは複数のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本願明細書において、「標的核酸分子」または「標的核酸配列」とは、本発明の方法の使用者が試料中に検出することを所望する配列を構成するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。
【0025】
本願明細書において言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、複数のヌクレオチドで構成される1本鎖または2本鎖の核酸ポリマーを意味する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、リボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよいし、あるいはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾体でもよい。前記の修飾体には、ブロモウリジンなどの塩基修飾、アラビノシドや2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース修飾、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート(phoshoraniladate)やホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合の修飾がある。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、DNAの1本鎖型および2本鎖型を含む。
【0026】
本願明細書において言及される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在するオリゴヌクレオチド結合または天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合のうち少なくともいずれかによって一緒に結合した、天然に存在するヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドとは、一般に1本鎖で長さが200塩基以下であるポリヌクレオチドメンバーを含んでなる、ポリヌクレオチドのサブセットである。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの長さは2〜60塩基である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの長さは12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25〜40塩基である。他の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの長さは25塩基以下である。例えば、遺伝子突然変異体の構築における使用では、オリゴヌクレオチドは、1本鎖でも2本鎖でもよい。タンパク質コード配列に関して、本発明のオリゴヌクレオチドはセンスオリゴヌクレオチドでもアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。
【0027】
「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチ
オエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデートやホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、ラプランシュら(LaPlanche et al.)、1986年、Nucl.Acids Res.、第14巻、p.9081;ステックら(Stec et al.)、1984年、J.Am.Chem.Soc.、第106巻、p.6077;スタインら(Stein et al.)、1988年、Nucl.Acids Res.第16巻、p.3209;ゾンら(Zon et al.)、1991年、Anti−Cancer Drug Design、第6巻、p.539;ゾンら(Zon et al.)、1991年、「OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH」、p.87〜108(エフ エクスタイン(F.Eckstein)編、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)[英国オックスフォード(Oxford)所在];ステックら(Stec et al.)、米国特許第5,151,510号;ウールマン(Uhlmann)およびペイマン(Peyman)、1990年、Chemical Reviews、第90巻、p.543(これらの開示は任意の目的で本願明細書に援用される)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドまたはそのハイブリダイゼーションの検出が可能となるように検出可能な標識を含んでもよい。
【0028】
「ベクター」という用語は、コード情報を宿主細胞へと受け渡すのに使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すのに使用する。
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に適しており、かつ挿入した異種核酸配列の発現を誘導および/または調節する核酸配列を含むベクターを指す。発現には、転写、翻訳、およびイントロンが存在する場合はRNAスプライシングなどのプロセスが含まれるが、これらに限定はされない。
【0029】
「作動可能なように連結した」という用語は、本願明細書において、隣接配列(フランキング配列)がその通常の機能を発揮するように構成または構築されている、隣接配列の配置を指すのに使用する。したがって、コード配列と作動可能なように連結した隣接配列は、該コード配列の複製、転写および/または翻訳を行うことができる。例えば、プロモーターがコード配列の転写を誘導できるとき、該コード配列はプロモーターと作動可能なように連結している。正しく機能する限り、隣接配列はコード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、プロモーター配列とコード配列の間に、翻訳されないが転写される介在配列が存在する場合もあり、該プロモーター配列は、依然として該コード配列と「作動可能なように連結している」とみなすことができる。
【0030】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換されているか、または形質転換することが可能で、次いで対象とする選択した遺伝子を発現することができる細胞を指すのに使用する。この用語は、選択した遺伝子が存在する限り、形態または遺伝子構造が元の親と同一であってもなくても、親細胞の子孫を含む。
【0031】
1実施形態では、本発明は、配列番号1〜23のいずれかで示される核酸分子のいずれかと関連する核酸分子を提供する。本願明細書において、「関連核酸分子」とは、配列番号1〜23のいずれかの核酸分子の対立遺伝子バリアントまたはスプライスバリアントを含み、上記ヌクレオチド配列のいずれかと相補的な配列を含む。さらに、関連核酸分子はまた、本願明細書で定義する中程度または高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1〜23のいずれかの核酸分子、または本願明細書で定義する核酸断片の完全に相補的な配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む分子をも含む。本願明細書で提供されるヌクレオチド配列を使用して、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAのライブラリーを関連配列についてスクリーニングするためのハイブリダイゼーションプローブを調製
することができる。本願明細書に記載の配列アラインメントアルゴリズムを使用して、既知の配列と有意な同一性を示す本発明の核酸分子のヌクレオチド配列領域が容易に決定され、この領域を使用してスクリーニング用プローブを設計することができる。
【0032】
「高度にストリンジェントな条件」という用語は、その配列が高度に相補的であるDNA鎖のハイブリダイゼーションを許容するとともに、著しくミスマッチなDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件を指す。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー(厳密性)は、主として温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度によって決まる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための「高度にストリンジェントな条件」の例は、65〜68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および42℃で50%ホルムアミドである。サムブルック(Sambrook)、フリッシュ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor
Laboratory)、1989年);アンダーソンら(Anderson et al.)、「Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach」第4章(アイアールエルプレスリミテッド社(IRL Press Limited))を参照されたい。
【0033】
よりストリンジェントな条件(高温、低イオン強度、高濃度のホルムアミドまたは他の変性剤など)を使用することもできるが、ハイブリダイゼーション率が影響を受けることになる。非特異的ハイブリダイゼーションかつ/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少させる目的で、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液中に他の物質を含めてもよい。その例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO(SDS)、フィコール(ficoll)、デンハルト溶液(Denhardt’s
solution)、超音波破砕したサケ精子DNA(または他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランであるが、他の適切な物質を使用することもできる。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的な影響を及ぼさずに、これらの添加物の濃度および種類を変化させることができる。ハイブリダイゼーション実験は通常、pH6.8〜7.4で行われるが、典型的なイオン強度の条件では、ハイブリダイゼーション率はpHにほとんど関係がない。アンダーソンら(Anderson et al.)、「Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach」第4章(アイアールエルプレスリミテッド社(IRL Press Limited))を参照されたい。
【0034】
DNA2重鎖の安定性に影響を及ぼす要因には、塩基の組成、長さ、および塩基対ミスマッチの程度が挙げられる。これらの変量を調節し、配列関連性が異なるDNAのハイブリッド形成を可能にするために、当業者はハイブリダイゼーション条件を調整することができる。完全に整合したDNA2重鎖の融解温度は、下記の方程式によって概算することができる:
(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
式中、Nは形成される2重鎖の長さであり、[Na+]はハイブリダイゼーションまたは洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、(%G+C)はハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基の割合(%)である。整合が不完全なハイブリッドでは、融解温度は1%のミスマッチそれぞれについて約1℃低下する。
【0035】
「中程度にストリンジェントな条件」という用語は、「高度にストリンジェントな条件
」の下で生じ得るものより塩基対のミスマッチの程度が大きいDNA2重鎖が形成可能である条件を指す。典型的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、50〜65℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または37〜50℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび20%ホルムアミドである。1例として、0.015Mのナトリウムイオン中50℃の「中程度にストリンジェントな条件」によって約21%のミスマッチが許容される。
【0036】
「高度にストリンジェントな条件」と「中程度にストリンジェントな条件」の間には絶対的な区別がないことが当業者には理解されるであろう。例えば、0.015Mのナトリウムイオン(ホルムアミドは含まない)では、完全に整合した長いDNAの融解温度は約71℃である。(同じイオン強度で)65℃で洗浄する場合、この洗浄では約6%のミスマッチが許容されるであろう。より関連性が低い配列を捕捉するためには、当業者は、単に温度を低下させてもよいし、イオン強度を上昇させてもよい。
【0037】
下記の式により、最大で約20ntのオリゴヌクレオチドプローブについて1MのNaCl中での融解温度の十分な概算値が得られる:
Tm=2℃/(A−T塩基対)+4℃/(G−C塩基対)
6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)中のナトリウムイオン濃度は1Mである。サグスら(Suggs et al.)、「Developmental Biology Using Purified Genes」683ページ(ブラウン(Brown)およびフォックス(Fox)編、1981年)を参照されたい。
【0038】
オリゴヌクレオチドについてのストリンジェンシーの高い洗浄条件は通常、6×SSC,0.1%SDS中で該オリゴヌクレオチドのTmより0〜5℃低い温度である。
他の実施形態では、関連核酸分子は、配列番号1〜23のいずれかで示されるヌクレオチド配列と少なくとも約70%同一であるヌクレオチド配列を含むか、または該ヌクレオチド配列で構成される。好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1〜23のいずれかで示されるヌクレオチド配列と約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約95、96、97、98もしくは99%同一である。
【0039】
当技術分野で知られている「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関係であって、配列を比較することによって決定される関係を指す。当技術分野では、「同一性」はまた、場合によっては、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度であって、2つ以上のヌクレオチド配列または2つ以上のアミノ酸配列の間の整合によって決定される程度をも意味する。「同一性」とは、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって位置指定される、(もしあれば)ギャップアラインメントを用いて、2つ以上の配列のうち短い方の同一な整合の割合(%)を測定するものである。
【0040】
「類似性」という用語は、関連する概念に関して当技術分野で使用されるが、「同一性」と異なり、「類似性」とは、同一な整合と保存的置換の整合とをどちらも含む関連性の尺度を指す。例えば、2つのポリペプチド配列が、10/20の同一なアミノ酸を有し、残りがすべて非保存的置換である場合、同一性および類似性の割合(%)はどちらも50%となる。同じ例において、さらに保存的置換の部位が5つある場合は、同一性(%)は50%のままであるが類似性(%)は75%(15/20)となる。したがって、保存的置換がある場合、2つのポリペプチド間の類似性(%)は、その2つのポリペプチド間の同一性(%)よりも高くなる。
【0041】
関連する核酸およびポリペプチドの同一性および類似性は、既知の方法によって容易に算出することができる。そのような方法には、それだけに限らないが、「COMPUTA
TIONAL MOLECULAR BIOLOGY」(レスク エーエム(Lesk,A.M.)編)、1988年、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)[米国ニューヨーク州所在];「BIOCOMPUTING:INFORMATICS AND GENOME PROJECTS」(スミス ディーダブリュー(Smith,D.W.)編)、1993年、アカデミックプレス社(Academic Press)[米国ニューヨーク州所在];「COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA,Part1」(グリフィン エーエム(Griffin,A.M.)およびグリフィン エイチジー(Griffin,H.G.)編)、1994年、ヒューマナプレス社(Humana Press)[米国ニュージャージー州所在];フォンハインジェ ジー(von Heinje,G.)「SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY」、1987年、アカデミックプレス社(Academic Press);「SEQUENCE ANALYSIS PRIMER」(グリブスコフ エム(Gribskov,M.)およびデベロー ジェイ(Devereux,J.)編)、1991年、エム ストックトンプレス社(M.Stockton Press)[米国ニューヨーク州所在];カリロら(Carillo et al.)、1988年、SIAM J.Applied Math.、第48巻、p.1073;ならびにダービンら(Durbin et al.)、1998年、「BIOLOGICAL SEQUENCE ANALYSIS」、ケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press)に記載されているものがある。
【0042】
同一性を決定する好ましい方法を設計して、試験した配列間で最大の整合を得る。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラム中に記載されている。2つの配列間で同一性を決定する好ましいコンピュータプログラムの方法には、限定するものではないが、GAPを含むGCGプログラムパッケージ(デベローら(Devereux et al.)、1984年、Nucl.Acid.Res.、第12巻、p.387;Genetics Computer Group、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)所在])、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(アルツシュールら(Altschul et al.)、1990年、J.Mod.Biol.、第215巻、p.403〜410)がある。BLASTXプログラムは、米国バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)(NCBI)および他の供給源(BLAST Manual、アルツシュールら(Altschul et al.)、NCB/NLM/NIH[米国メリーランド州ベゼスタ(Bethesda)20894所在];アルツシュールら(Altschul et al.)、1990年、上記)から公的に利用可能である。有名なスミスウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムを使用して、同一性を決定することもできる。
【0043】
例えば、コンピュータアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)所在])を使用して、配列同一性(%)を決定すべき2つの核酸分子を、それぞれのヌクレオチドが最適に整合するようにアラインメントする(アルゴリズムによって決定される「整合範囲(matched span)」)。ギャップ開始ペナルティ(3×対角項平均として算出される;「対角項平均(average diagonal)」とは、使用する比較行列の対角項の平均である;「対角項」とは、特定の比較行列によって、完全なヌクレオチドの整合それぞれに割り当てられたスコアまたは数である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常は0.1×ギャップ開始ペナルティである)、ならびにPAM250やBLOSUM62などの比較行列を、アルゴリズムと併せて使用する。標準的な比較行列もアルゴリズムによって使用される
(デイホフら(Dayhoff et al.)、「5Atlas of Protein Sequence and Structure」(補巻3、1978年)(PAM250比較行列);ヘニコフら(Henikoff et al.)、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci USA 第89巻、p.10915〜19(BLOSUM62比較行列)を参照)。
【0044】
核酸分子配列の比較で好ましいパラメータには、
アルゴリズム:ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)、上記;
比較行列:整合=+10、不整合(ミスマッチ)=0
ギャップペナルティ:50
ギャップ長ペナルティ:3
が挙げられる。
【0045】
上記のパラメータを備えたGAPプログラムも有用である。上記のパラメータは、核酸分子比較の初期設定パラメータである。
Program Manual,Wisconsin Package、バージョン9、1997年9月で示されるものなど、他の例示的なアルゴリズム、ギャップ開始ペナルティ、ギャップ伸長ペナルティ、比較行列、および類似性の閾値を使用することができる。行われるべき特定の選択は、当業者には明らかであり、DNA対DNA、タンパク質対タンパク質、タンパク質対DNAなど、行われる特定の比較、さらには比較が所与の配列対の間のものであるのか(この場合はGAPまたはBestFitが一般に好ましい)、または1つの配列と大きな配列データベースとの間のものであるのか(この場合はFASTAまたはBLASTAが好ましい)によって決まることになる。
【0046】
「相同性」という用語は、タンパク質または核酸の配列間での類似性の程度を指す。相同性の情報は、特定のタンパク質または核酸の種の遺伝学的関連性を理解するのに重要である。相同性は、配列をアラインメントして比較することによって決定することができる。通常、アミノ酸の相同性を決定するために、タンパク質の配列を、既知タンパク質の配列のデータベースと比較する。相同な配列は、その配列に沿ってどこかに共通の機能的同一性を共有している。類似性または同一性が高いことは通常相同性を示すものであるが、類似性または同一性が低いことが必ずしも相同性の欠如を示すものではない。
【0047】
本発明の核酸分子は、様々な方法、例えば、それだけに限らないが、化学合成、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーのスクリーニング、発現ライブラリーのスクリーニング、および/またはcDNAのPCR増幅などで容易に得ることができる。
【0048】
本願明細書で使用する組換えDNA法は一般に、サムブルックら(Sambrook et al.)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(コールドスプリングハーバー研究所出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年)および/または「Current Protocols in Molecular Biology」(オースベルら(Ausubel et al.)編、グリーンパブリッシャーズインコーポレイテッド社(Green Publishers Inc.)およびウイリーアンドサンズ社(Wiley and Sons)、1994年)中に示されるものである。本発明は、本願明細書に記載の核酸分子、およびそのような分子を得る方法を提供する。
【0049】
本発明の方法で使用する「基材」は、オリゴヌクレオチドが結合することができる任意の表面でよい。そのような表面には、限定するものではないが、ガラス、金属、プラスチック、またはオリゴヌクレオチドの結合用に設計された官能基で被覆された材料が挙げら
れる。被覆は、単分子層より薄くてもよく、実際、被覆は、オリゴヌクレオチドがその中へと拡散して内部表面と結合することができる多孔性の三次元構造を作り出すのに十分な厚さの多孔性物質を含み得る。
【0050】
本願明細書において「位置指定可能な基材」という用語は、スポットの列など1つまたは複数の別個の領域を備えた基材を指し、各領域またはスポットは、標的オリゴヌクレオチドの一部と結合するように設計された異なる種類のオリゴヌクレオチドを含むことができる。1つまたは複数の標的オリゴヌクレオチドを含む試料を各領域またはスポットに適用することが可能であり、アッセイの残りは本願明細書に記載の方法の1つでを行うことができる。
【0051】
本願明細書において、「オリゴヌクレオチドの種類」とは、同じ配列を有する複数のオリゴヌクレオチド分子を指す。オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子、結合体、粒子、ラテックス微小球などの「種類」とは、同じ種類のオリゴヌクレオチドが結合しているものを指す。「オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子」は、「ナノ粒子−オリゴヌクレオチド結合体」と呼ばれることもあるし、あるいは、本発明の検出方法の場合には「ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブ」、「ナノ粒子プローブ」または単に「プローブ」と呼ばれることもある。
【0052】
「結合する(bind)」および「結合した(bound)」という用語、ならびに該用語が文法的に変化したものすべては、本願明細書において、分子がその表面の部分の構造および/または形状ならびに化学的性質から互いに固着する能力を指すのに使用される。例えば、酵素はその基質と結合することができ、抗体はその抗原と結合することができ、DNA鎖はその相補的な鎖と結合することができる。結合は、例えば、結合定数または会合定数(K)、またはその逆数である解離定数(K)によって特徴付けることができる。
【0053】
本願明細書において使用する「相補体」という用語および該用語が文法的に変化したものは、相補的なヌクレオチド塩基対(すなわち、アデニンと、DNAではチミン、RNAではウラシルとの対、およびシトシンとグアニンとの対)で互いに水素結合を形成する核酸配列を指す。「相補体」は、互いにハイブリダイズすることができる一対の核酸配列の部分または鎖のうちの1つでもよい。本願明細書において使用する核酸配列の「相補体」は、必ずしもすべての部位に相補的な塩基対を有していなければならないわけではないが、本願明細書に記載の中程度および/または高度にストリンジェントな条件下での核酸分子とその相補体とのハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な数の相補的な塩基対を有する。
【0054】
本願明細書において使用する「捕捉オリゴヌクレオチド」という用語は、基材に結合し、標的核酸分子上の相補的なヌクレオチド配列または遺伝子の位置を突き止める(すなわち試料中でハイブリダイズする)ことができる核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを指し、従って標的核酸分子はハイブリダイゼーション後に捕捉オリゴヌクレオチドを介して基材と結合する。適切であるが非限定的な捕捉オリゴヌクレオチドの例には、DNA、RNA、PNA、LNA、またはその組合せがある。捕捉オリゴヌクレオチドは天然の配列を含んでいても合成配列を含んでいてもよく、修飾ヌクレオチドを有していても有していなくてもよい。
【0055】
本発明の「検出プローブ」は、特定の核酸配列と相補的なヌクレオチド配列を含んでなる1つまたは複数の検出オリゴヌクレオチドを結合させることができる任意の担体であってよい。担体それ自体が標識として働いてもよいし、または検出可能な標識を含むか該標識で修飾されてもよく、あるいは検出オリゴヌクレオチドがそのような標識を有していて
もよい。本発明の方法に適した担体には、限定するものではないが、ナノ粒子、量子ドット、デンドリマー、半導体、ビーズ、上方または下方に転換するリン光体、大きなタンパク質、脂質、炭水化物、または十分なサイズの任意の適切な無機分子もしくは有機分子、あるいはこれらの組合せがある。
【0056】
本願明細書において、「検出オリゴヌクレオチド(detector oligonucleotide)」または「検出オリゴヌクレオチド(detection oligonucleotide)」とは、標的核酸分子上の相補的なヌクレオチド配列または遺伝子の位置を突き止める(すなわち試料中でハイブリダイズする)のに使用することができる核酸配列を含む、本願明細書で定義するオリゴヌクレオチドである。適切であるが非限定的な検出オリゴヌクレオチドの例には、DNA、RNA、PNA、LNA、またはその組合せがある。検出オリゴヌクレオチドは天然の配列を含んでいても合成配列を含んでいてもよく、修飾ヌクレオチドを有していても有していなくてもよい。
【0057】
1実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドまたは検出オリゴヌクレオチドは、左側結合部の、mecA遺伝子カセットの一部および黄色ブドウ球菌挿入部位の一部と相補的な配列を有する(すなわち、この相補的な配列は、挿入部位にまたがって挿入部位の一方の側のmecA遺伝子カセット配列と他方の側の黄色ブドウ球菌遺伝子配列とにハイブリダイズする)。特定の実施形態では、そのようなオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す配列を含む。
【0058】
本願明細書において、「mecA遺伝子カセット」という用語は、SCCmecとして定義される遺伝因子を指し、SCCmecは、イトウら(Ito et al.)の文献(2001年、Antimicrob.Agents Chemother.第45巻、p.1323〜1336)に記載のように、mecA遺伝子を担持し、黄色ブドウ球菌ゲノム中に挿入される。本願明細書において、「挿入部位」とは、mecA遺伝子カセットが黄色ブドウ球菌ゲノムにつながる部位であり、すなわち、挿入部位の一方の側がmecA遺伝子カセット配列であり、他方の側が黄色ブドウ球菌の配列である。挿入部位は、本願明細書に援用するイトウら(Ito et al.)(2001年、Antimicrob.Agents Chemother.第45巻、p.1323〜1336)および米国特許第6,156,507号明細書に記載されている。
【0059】
他の実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドまたは検出オリゴヌクレオチドは、黄色ブドウ球菌ゲノム核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する。特定の実施形態では、そのようなオリゴヌクレオチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23で示す核酸配列を含む。
【0060】
本願明細書において、「標識」という用語は、光学的、電子的、光電子工学的、磁気的、重力学的、音響学的、酵素的、あるいはその他の物理的または化学的な手段によって検出することができる検出可能なマーカーを指す。「標識される(標識された)」という用語は、そのような検出可能なマーカーを、例えば、放射標識ヌクレオチドの組み込み、または検出可能なマーカーのオリゴヌクレオチドへの結合により組み込むことを指す。
【0061】
本願明細書における「試料」とは、核酸を含み、本発明の方法で使用することができる、任意の量の物質を指す。例えば、試料は、ヒト、動物、植物、菌類、酵母、細菌、ウイルス、組織培養物またはウイルス培養物、あるいは上記の組合せに由来する生物学的な試料でもよいし、あるいは該生物学的な試料から抽出されてもよい。固形組織(例えば、骨
髄、リンパ節、脳、皮膚)、体液(例えば、血清、血液、尿、喀痰、精液またはリンパ液)、骨格組織、または個々の細胞を含んでもよいし、またはそれらから抽出されてもよい。あるいは、試料は、精製または部分的に精製された核酸分子、ならびに、例えば、本発明の方法をうまく実施するのに適した条件を作るために使用する緩衝液および/または試薬を含んでもよい。
【0062】
本発明の1実施形態では、試料中の標的核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、細胞の核酸、または細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)もしくは寄生体に由来する核酸、あるいはこれらの組合せを含んでもよい。
【0063】
他の実施形態では、試料中の標的核酸分子を増幅することができる。例えば、任意の目的で本願明細書に援用するサムブルックら(Sambrook et al.)、2001年、「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」、第3版、コールドスプリングハーバー研究所出版局(Cold Spring Harbor Laboratory Press)[米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)所在]に記載のように、核酸分子を増幅する複数の方法が当技術分野で知られている。そのような方法には、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル型増幅、および縮重プライマーを使用する全ゲノム増幅がある。さらなる例示的な方法には、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、およびキメラプライマーで開始する等温核酸増幅法(ICAN(商標)、タカラバイオ株式会社(Takara Bio Inc)[日本国所在])がある。当業者なら、NASBAがRNA標的またはDNA標的からRNAを増幅する転写に基づく増幅方法であり、例えば、ビオメリュー社(bioMerieux)[オランダ国ボクステル(Boxtel)所在]から入手可能であるプロトコールを使用して実行できることを認識するであろう。本発明の方法で有用な核酸分子のPCR増幅の特定の例は、例えば、その開示をすべて本願明細書に援用する、米国特許第5,629,156号明細書、米国特許第5,750,338号明細書、および米国特許第5,780,224号明細書に記載されている。
【0064】
本願明細書において、核酸分子の「生物学的複雑性」とは、例えば、本願明細書に援用する、レビン(Lewin)著「GENE EXPRESSION 2、Second Edition:Eukaryotic Chromosomes」、1980年、ジョンウイリーアンドサンズ社(John Wiley and Sons)[ニューヨーク所在]に記載のように、核酸分子中に存在する非反復ヌクレオチド配列の数を指す。例えば、非反復配列を含む30塩基の単純なオリゴヌクレオチドは複雑性が30である。4,200,000塩基対を含む大腸菌(E.coli)ゲノムは、本質的に反復配列を有していないので、複雑性は4,200,000である。細菌ゲノムは通常約500,000〜約10,000,000塩基対であり(カスジェンス(Casjens)、1998年、Annu.Rev.Genet.第32巻、p.339〜77)、それぞれ約500,000〜約10,000,000の複雑性に相当する。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA252のゲノムは、2,902,619塩基対のゲノムを有し(GenBank(登録商標)受入番号NC_002952)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌MSSA476(GenBank受入番号NC_002953)は、2,799,802塩基対のゲノムを有する。黄色ブドウ球菌ゲノムは反復配列をほとんど有しておらず、全体的な複雑性が約3,000,000である。それと対照的に、ヒトゲノムは3,000,000,000塩基対程度を有し、その多くが反復配列である(例えば、約2,000,000,000塩基対)。ヒトゲノムの全体的な複雑性(すなわち、非反復ヌクレオチドの数)は、1,000,000,000程度である。
【0065】
DNA分子などの核酸分子の複雑性は、異なる反復配列の数(すなわち、該核酸分子中
に存在する各々の異なる配列のコピー数)に依存しない。例えば、DNAが、長さaヌクレオチドの配列を1つ、長さbヌクレオチドの配列を5コピー、長さcヌクレオチドの配列を50コピー有する場合、複雑性はa+b+cとなるが、配列aの反復頻度は1、bは5、cは10となる。
【0066】
所与のDNA内の異なる配列の全長は、該DNAのC1/2を算出することによって、実験的に決定することが可能であり、下記の式:
1/2=1/k
で表される。
上記の式において、Cは時間t1/2(反応が1/2終了したとき)で1本鎖であるDNAの濃度であり、kは速度定数である。C1/2は、DNAの相補的な2つの鎖が半分再会合するのに必要とされる値を表す。DNAの再会合は通常、1本鎖のままであるDNAの分画(C/C)または再会合した分画(1−C/C)を、Ctの対数に対してプロットしたCot曲線の形で表される。Cot曲線は、1968年にブリテン(Britten)およびコーネ(Kohne)によって導入された(1968年、Science第161巻、p.529〜540)。Cot曲線は、再会合している配列それぞれの濃度が所与のDNAの再生の速度を決定することを示している。これに対し、C1/2は、反応中に存在する異なる配列の全長を表すものである。
【0067】
DNAのC1/2は、該DNAの複雑性に比例する。したがって、DNAの複雑性の決定は、そのC1/2を複雑性が既知である標準DNAのC1/2と比較することによって行うことができる。通常、DNAの生物学的複雑性の決定に使用する標準DNAは大腸菌DNAである。大腸菌DNAは、大腸菌ゲノム中のあらゆる配列が固有のものであると推定されるため、そのゲノムの長さ(4.2×10塩基対)と同一の複雑性を有する。したがって、下記の式:
[C1/2(任意のDNA)]/[C1/2(大腸菌DNA)]
=[複雑性(任意のDNA)]/4.2×10
を使用して、DNAの生物学的複雑性を決定することができる。
【0068】
特定の実施形態では、本発明は、PCRまたは特定のDNA配列を優先的に増幅する任意の他の方法による酵素的な複雑性の低減を必要とせずに、ゲノムDNAを含む試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の信頼性のある検出および識別(すなわち同定)を行う方法を提供する。
【0069】
1実施形態では、本発明の方法は、1工程または2工程のハイブリダイゼーションを使用して実現することができる。図2に1工程のハイブリダイゼーションの概略図を示す。図3に2工程のハイブリダイゼーションの概略図を示す。2工程の方法では、ハイブリダイゼーション事象は2つの別々の反応中で起こる。第1に標的が捕捉オリゴヌクレオチドと結合し、結合しなかった核酸をすべて除去した後、捕捉された標的核酸の第2の部分と特異的に結合することができる検出プローブを供給する第2のハイブリダイゼーションが行われる。
【0070】
2工程のハイブリダイゼーションが関与する本発明の方法は、反応が2工程で行われるため、第1のハイブリダイゼーション事象(すなわち、標的核酸分子の捕捉)の間、検出プローブの特定の固有の特性(ナノ粒子プローブの高いTmや鋭敏な融解挙動など)の調節を伴わずに行われる。第1の工程は所望の標的配列だけを捕捉するには十分にストリンジェントではないが、第1工程の適用によって、対象とする特定の配列がかなり濃縮される。したがって、次いで第2の工程(検出プローブの結合)を行って、標的核酸分子についての所望の特異性が実現される。これら2つの識別ハイブリダイゼーション事象の組合せから、標的核酸分子についての全体的な特異性が可能となる。しかし、この優れた特異
性を実現するためには、非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。そのようなストリンジェントな条件下では、捕捉プローブによって少量の標的および検出プローブしか捕捉されない。この標的の量は通常非常に少ないので、バックグラウンド内に埋もれて標準的な蛍光の方法による検出を免れてしまう。したがって、適当に設計された検出プローブを使用してこの少量の標的を検出することが本発明にとって極めて重要である。本発明において記載される検出プローブの本質は、典型的には多数の検出オリゴヌクレオチドを含むように修飾されている担体部分に存し、このことによってこの検出プローブのハイブリダイゼーション動態が促進される。第2に、該検出プローブはまた、1つまたは複数の高感度な標識部分で標識され、このことによって、適当な検出機器と併せて、少数の捕捉された標的−検出プローブの複合体の検出が可能となる。したがって、このプロセスを機能させるのは、高感度な検出系と併せて、全ての因子を適切に調整することである。
【0071】
本発明の2工程のハイブリダイゼーション法は、検出工程について本願明細書に記載した任意の検出プローブを使用する工程を含んでもよい。好ましい実施形態では、この方法の第2の工程でナノ粒子プローブを使用する。ナノ粒子を使用し、第2のハイブリダイゼーション工程でのストリンジェンシー条件が第1の工程と同じである場合、ナノ粒子プローブ上の検出オリゴヌクレオチドは、捕捉オリゴヌクレオチドより長くてもよい。したがって、ナノ粒子プローブの固有の特徴(高いTmおよび鋭敏な融解挙動)に必要な条件は不要である。
【0072】
本発明の適当に設計された捕捉オリゴおよび検出プローブと組み合わせた1工程および2工程のハイブリダイゼーション法は、試料中のMRSA核酸配列を検出する以前の方法を超える、予期されない新たな利点をもたらす。具体的には、本発明の方法は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく検出方法において、必要に応じて、試料中の標的の数を最大にし、同時に標的でない配列の相対的な濃度を低下させて、標的との結合の可能性を高める増幅工程を必要とせず、かつ、それ自体固有の問題を有する放射性トレーサーの使用も必要としない。事前に標的配列を増幅せずに特異的な検出を行うことは、非常に大きな利点をもたらす。例えば、増幅は研究施設または診断施設からの汚染を生じることが多く、その結果偽陽性の試験結果が生じうる。PCRまたは他の標的増幅法は、特別に訓練された人員、高価な酵素および特別な設備を必要とする。最も重要なことに、増幅の効率は各標的配列およびプライマー対によって変化しうるので、ゲノム中に存在する標的配列および/または標的配列の相対量の決定に誤りまたは失敗が生じうる。さらに、本発明の方法は工程が少なく、したがって、核酸標的を検出するノーザンブロットアッセイおよびサザンブロットアッセイなどのゲルに基づく方法より実施が容易でありかつ効率がよい。
【0073】
1実施形態では、試料中のMRSAを検出する方法は、a)左側結合部の、mecA遺伝子カセットの一部および黄色ブドウ球菌挿入部位の一部と相補的な配列を有する捕捉オリゴヌクレオチドが結合した位置指定可能な基材を供給する工程と、b)MRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する検出オリゴヌクレオチドを含む検出プローブを供給する工程と、c)捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションに有効な条件下で試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、からなる。
【0074】
他の実施形態では、事前の標的増幅または複雑性の低減を行わずに試料中の標的核酸配列を検出する方法は、a)MRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する捕捉オリゴヌクレオチドが結合した位置指定可能な基材を供給する工程と、b)左側結合部
の、mecA遺伝子の遺伝子カセットの一部および黄色ブドウ球菌挿入部位の一部と相補的な配列を有する検出オリゴヌクレオチドを含む検出プローブを供給する工程と、c)捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列のハイブリダイゼーションに有効な条件下で試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、からなる。
【0075】
他の実施形態では、検出可能となるように検出オリゴヌクレオチドを標識することができる。ポリヌクレオチドを標識する様々な方法が当技術分野で知られ、本願明細書で開示される方法において有利に使用することができる。特定の実施形態では、本発明の検出可能な標識は、蛍光性、発光性、ラマン活性、リン光性、放射性であってもよいし、散乱光中で有効であってもよいし、固有の質量を有するものでもよく、あるいは他のものは何らかの他の容易かつ特異的に検出可能な物理的または化学的特性を有し、前記の検出可能な特性を高めるために、標識を凝集させてもよいし、または標識を1つもしくは複数コピーとしてデンドリマー、分子凝集物、量子ドットやビーズなどの担体と結合させてもよい。標識は、例えば、光学的、電子的、音響学的、音響光学的、重力学的、電気化学的、酵素的、化学的、ラマン法の、または質量分析的な手段によって検出を可能にする。
【0076】
1実施形態では、本発明の検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブでもよい。ナノ粒子は、そのサイズに由来する固有の物理的化学的特性のために強い関心の対象となっている。その特性により、ナノ粒子は、従来の検出方法よりも感度がよく、特異的が高く、費用効率が良い新たな種類の生物学的センサーを開発する有望な経路を提供するものである。ナノ粒子を合成する方法およびその得られた特性を研究する方法が、過去10年にわたって広く開発されてきた(クラブンデ(Klabunde)編、「Nanoscale Materials in Chemistry」、ウィリーインターサイエンス社(Wiley Interscience)、2001年)。しかし、生物学的検出におけるその使用は、これら2つの異質な物質の本質的な不適合性に起因して、対象とする生物学的分子でナノ粒子を官能化する堅牢な方法がないことから限定されていた。修飾されたオリゴヌクレオチドでナノ粒子を官能化する高度に有効な方法が開発された。その全体を本願明細書に援用する米国特許第6,361,944号明細書および同第6,417,340号明細書(譲受人:ナノスフェアー インコーポレイテッド(Nanosphere,Inc.))を参照されたい。その方法は、オリゴヌクレオチドで濃密に官能化され、驚くべき粒子安定性およびハイブリダイゼーション特性を有するナノ粒子をもたらす。得られたDNA修飾粒子はまた、高濃度の電解質を含む溶液中でのその安定性、遠心分離または凍結に対する安定性、および加熱と冷却とを反復したときの温度安定性によって示されるように、非常に頑強であることも証明されている。この装荷方法はまた、制御可能かつ調整可能でもある。異なるサイズおよび組成のナノ粒子を官能化し、該ナノ粒子上へのオリゴヌクレオチド認識配列の装荷を上記装荷方法で制御することができる。適切であるが非限定的なナノ粒子の例には、いずれもその全体を本願明細書に援用する、米国特許第6,506,564号明細書;国際特許出願第PCT/US02/16382号;2003年5月7日に出願された米国特許出願第10/431,341号明細書;および国際特許出願第PCT/US03/14100号に記載されているものがある。
【0077】
DNA修飾ナノ粒子、特にDNA修飾金ナノ粒子プローブを調製するための上記の装荷方法から、オリゴヌクレオチドの新たな比色検出の方式が開発されるに至った。この方法は、2つの金ナノ粒子プローブと、対象とするDNA標的の2つの別々の領域とのハイブリダイゼーションに基づいている。各プローブが、同じ配列を有する複数のオリゴヌクレオチドで官能化されているので、標的の結合により、十分な標的が存在すれば標的DNA/金ナノ粒子プローブ凝集物が形成される。DNA標的の認識の結果、粒子同士の粒子間
距離の短縮による比色上の変化が生じる。この比色上の変化は、UV−可視光分光光度計で光学的に、または裸眼で視覚的に確認することができる。さらに、溶液が膜上で濃縮されれば、この色が強くなる。したがって、単純な比色上の変化によって、特定のDNA配列の有無に関する証拠がもたらされる。このアッセイを使用して、フェムトモル量およびnM濃度のモデルDNA標的、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅された核酸配列が、ゲノムDNAを伴った状態でも同様に検出された(ストルホフ(Storhoff et al.)ら、2004年、Nature Biotechnology 第22巻、p.883〜7)。重要なことに、金プローブ/DNA標的複合体が極度に鋭敏な融解変化を示し、それによって該複合体がDNA標的に対する特異性の高い標識となることが実証されている。モデル系では、色および温度に基づくスポット試験を介して、または分光光度分析で凝集物の融解変化をモニターすることにより、1塩基の挿入、欠失、またはミスマッチが容易に検出可能であった(ストルホフ(Storhoff et al.)ら、1998年、J.Am.Chem.Soc.第120巻、p.1959)。例えば、米国特許第5,506,564号明細書も参照されたい。
【0078】
鋭敏な融解変化により、ミスマッチな標的の存在下でも、非常に高いストリンジェンシー(例えば、プローブ/標的の完全な整合の融解温度より1度だけ低い)の下でハイブリダイゼーションおよび検出を行えば、完全に整合する標的を検出することができた。分子蛍光体標識で観察される融解変化など、融解変化がより幅広い場合は、融解温度に近い温度でハイブリダイゼーションおよび検出を行うと、プローブ/標的複合体の部分的な融解によるシグナルの著しい減少からもたらされる感度の低下、ならびにミスマッチなプローブ/標的複合体の部分的なハイブリダイゼーションによりもたらされるミスマッチなプローブのシグナルに起因する特異性の低下が生じるであろうことに留意することが重要である。したがって、ナノ粒子プローブは、核酸検出法について特異性の高い検出を提供するものである。
【0079】
本願明細書において、ナノ粒子プローブ、特に金ナノ粒子プローブは、驚くべきことに、かつ思いがけないことに、増幅を伴っても伴わなくても、ゲノムDNA、細菌DNAを含む試料中のMRSAの直接検出に適している。第1に、ナノ粒子オリゴヌクレオチド検出プローブで観察される極度に鋭敏な融解変化から、ヒトゲノムDNAのバックグラウンド中でも単一塩基の識別を可能にする先例のない驚くべきアッセイの特異性が得られる。第2に、DNAマイクロアレイに基づくアッセイにおける、銀を用いるシグナル増幅手法はさらに、非常に高い感度の向上をもたらすことができる。
【0080】
ナノ粒子は、例えば、光学スキャナまたは平台式スキャナを使用して、本発明の方法で検出することができる。スキャナは、グレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結することが可能であり、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される。
【0081】
適切なスキャナには、反射形式で操作することができる、コンピュータ内へ文書を走査するために使用するもの(例えば、平台式スキャナ)、この機能を発揮することができるか、または同じ種類の光学部品を利用する他の装置、任意の種類のグレースケールを感知する測定装置、および本発明に従って基材を走査するように改変されている標準的なスキャナ(例えば、基材用の保持器を備えるように改変された平台式スキャナ)(現時点では、透過形式で作動するスキャナを使用できる可能性は見出されていない)がある。スキャナの解像度は、基材上の反応領域がスキャナの単一画素より大きくなるように十分でなければならない。アッセイによって生じた検出可能な変化を、基材を背景として観察することができれば、任意の基材とともにスキャナを使用することができる(例えば、銀染色によって生じるような灰色のスポット(グレースポット)は、白色のバックグラウンドに対して観察することはできるが、灰色のバックグラウンドに対して観察することはできない
)。スキャナは、白黒スキャナでもよいし、あるいは、好ましくはカラースキャナでもよい。
【0082】
最も好ましくは、スキャナは、コンピュータ内へ文書を走査するのに使用する種類の標準的なカラースキャナである。そのようなスキャナは安価であり、商業的に容易に入手可能である。例えば、エプソン社(Epson)のExpression(R)636(600×600dpi)、ユーマックス社(UMAX)のAstra 1200(300×300dpi)、またはマイクロテック(Microtec)1600(1600×1600dpi)を使用することができる。該スキャナを、基材を走査することによって得られた画像を処理するソフトウェアを搭載したコンピュータと連結する。該ソフトウェアは、アドビ社(Adobe)のPhotoshop(R)5.2やコーレル社(Corel)のPhotopaint(R)8.0などの商業的に容易に入手可能な標準的なソフトウェアでよい。グレースケール測定値の算出にソフトウェアを使用することにより、アッセイの結果を定量する手段がもたらされる。
【0083】
ソフトウェアはまた、着色スポットに色番号を提供することもでき、走査結果の画像(例えば、プリントアウト)を作成してこれを再検討して、核酸の存在、核酸の量またはその両方を定量的に決定することができる。さらに、陽性結果を表す色から陰性結果を表す色を差し引くことによって、アッセイの感度を上昇させることができることが分かっている。
【0084】
コンピュータは、商業的に容易に入手可能である標準的なパーソナルコンピュータでよい。したがって、標準的なソフトウェアを搭載した標準的なコンピュータと連結した標準的なスキャナを使用することによって、アッセイを基材上で行うとき、核酸を検出し定量する、便利で、簡単で、安価な手段をもたらすことができる。走査結果をコンピュータに保存して、さらに参照または使用するための結果の記録を維持することもできる。もちろん、必要に応じて、より洗練された機器およびソフトウェアを使用することもできる。
【0085】
銀染色は、銀の還元を触媒する任意の種類のナノ粒子を用いて使用することができる。貴金属(例えば、金および銀)から作製されるナノ粒子が好ましい。バッセルら(Bassell,et al.)、J.Cell Biol.、第126巻、p.863〜876(1994年);ブラウン−ハウランドら(Braun−Howland et al.)、Biotechniques、第13巻、p.928〜931(1992年)を参照されたい。核酸の検出に使用するナノ粒子が銀の還元を触媒しない場合、銀イオンが核酸と複合体を形成して還元を触媒することができる。ブラウンら(Braun et al.)、Nature、第391巻、p.775(1998年)を参照されたい。また、核酸上のリン酸基と反応することができる銀染色も知られている。
【0086】
銀染色を使用して、上記に記載のものを含めた、基材上で行う任意のアッセイにおいて、検出可能な変化を生じさせるかまたは促進することができる。具体的には、銀染色は、一種類のナノ粒子を使用するアッセイの感度の大きな上昇をもたらし、その結果、ナノ粒子の層、凝集プローブおよびコアプローブを使用せずにすむ場合が多いことが分かっている。
【0087】
他の実施形態では、基材に結合したオリゴヌクレオチドを2つの電極の間に位置付けて、ナノ粒子を電気の伝導体である物質から作製し、かつ本発明の方法の工程(d)に、電気伝導度の変化を検出する工程を含めることもできる。さらに他の実施形態では、それぞれが異なる標的核酸配列を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドをアレイ状のスポットとして基材に結合させ、オリゴヌクレオチドの各スポットを2つの電極の間に位置付け、ナノ粒子を電気の伝導体である物質から作製し、かつ本発明の方法の工程(d)
に、電気伝導度の変化を検出する工程を含める。電極を、例えば、金から作製することができ、ナノ粒子を金から作製する。あるいは、基材を銀染色液と接触させて、電気伝導度の変化を生じさせることもできる。
【0088】
特定の実施形態では、試料中の核酸分子は、増幅させた核酸分子より生物学的複雑性が高い。当業者なら、例えば、本願明細書に援用するレビン(Lewin)著「GENE EXPRESSION 2、Second Edition:Eukaryotic Chromosomes」、1980年、ジョンウイリーアンドサンズ社(John Wiley and Sons)[ニューヨーク所在]に記載の方法を使用して、標的核酸配列の生物学的複雑性を容易に決定することができる。
【0089】
ハイブリダイゼーション動態は、反応相手(すなわちハイブリダイズしなければならない鎖)の濃度に絶対的に依存する。細胞試料から抽出した所与の量のDNAでは、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(存在する場合)、および染色体外因子のDNA(存在する場合)の全DNA量は、わずか数μgである。したがって、ハイブリダイズする反応相手の現実の濃度は、これらの反応相手のサイズおよび抽出したDNAの複雑性に依存することになる。例えば、単一ゲノム当たり1コピーで存在する30塩基の標的配列は、異なる複雑性を有する異なる供給源由来のDNA試料を比較すると、異なる濃度で存在する。例えば、全ヒトDNA1μgにおける同じ標的配列の濃度は、1μgの細菌DNA試料中の約1000分の1であり、小プラスミドDNA1μgの試料の約1,000,000分の1となる。
【0090】
1実施形態では、ハイブリダイゼーション条件は、例えば下記の実施例で示すように、標的核酸が50,000以上の生物学的複雑性を有する核酸試料の一部である場合でも、捕捉オリゴヌクレオチドおよび/または検出オリゴヌクレオチドと前記標的核酸配列との特異的かつ選択的なハイブリダイゼーションに有効であり、該特異的かつ選択的ハイブリダイゼーションによって1塩基のミスマッチが検出可能である。
【0091】
本発明の方法をさらに使用して、生物学的な微生物(例えば、ブドウ球菌)の特定の種を同定し、かつ/または抗生物質耐性を付与する遺伝子(例えば、抗生物質メチシリンに対する耐性を付与するmecA遺伝子)を検出することができる。
【0092】
他の実施形態では、本発明は、左側結合部におけるmecA遺伝子カセットの一部およびmecA遺伝子を含む黄色ブドウ球菌の挿入部位と結合するオリゴヌクレオチド配列、ならびにこれらの配列を使用するキットを提供する。これらの配列は、ブドウ球菌種、またはいくつかの形の抗生物質耐性を引き起こすmecA遺伝子に対して、感度が高いと同時に選択的でもあるように設計されている。
【0093】
本発明はまた、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す配列を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと、生物学的試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出に有用な他の試薬とを含むキットにも関する。そのような試薬は、検出可能な標識、ブロッキング処理用血清、陽性および陰性対照試料、ならびに検出試薬を含んでもよい。
【0094】
[実施例]
下記の例示的な実施例により、本発明をさらに実証する。実施例は例示の目的で提供されるものであり、本発明をどのような形にも限定しないものとする。これらの実施例において、すべての割合(%)は、固体の場合は重量%、液体の場合は体積%であり、すべての温度は、別段に示さない限り、摂氏度数で示す。
【実施例1】
【0095】
ナノ粒子プローブを使用する、増幅していないゲノムDNA中のSNPを同定するための1工程および2工程のハイブリダイゼーション法
その全体を本願明細書に援用する、1997年7月21日に出願された国際出願第PCT/US97/12783号;2000年6月26日に出願された国際出願第PCT/US00/17507号;2001年1月12日に出願された国際出願第PCT/US01/01190号に記載の手順を使用して、標的のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)配列を検出する金ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブを調製した。図4に、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)またはMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)捕捉プローブオリゴヌクレオチドを有するDNAマイクロアレイを用いた、標的DNA検出用の、オリゴヌクレオチドが結合した金ナノ粒子プローブの使用を概念的に示す。ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドの配列は、標的の配列の一部分と相補的であり、基材に結合した捕捉オリゴヌクレオチドの配列は、標的配列の他の部分と相補的である。ハイブリダイゼーション条件下で、ナノ粒子プローブ、捕捉プローブ、および標的配列が結合して複合体を形成する。得られた複合体のシグナル検出は、従来の銀染色で促進することができる。
【0096】
(a)金ナノ粒子の調製
フレンス(Frens)、1973年、Nature Phys.Sci.、第241巻、p.20およびグラバー(Grabar)、1995年、Anal.Chem.第67巻、p.735に記載のように、クエン酸塩を用いたHAuClの還元によって、金コロイド(直径13nm)を調製した。簡潔に述べると、すべてのガラス器具を王水(HCl3部、HNO一部)中で洗浄し、Nanopure(R)HOですすぎ、使用前にオーブン乾燥させた。HAuClおよびクエン酸ナトリウムは、アルドリッチケミカルカンパニー社(Aldrich Chemical Company)から購入した。HAuCl水溶液(1mM、500mL)を撹拌しながら還流した。次いで、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50mL)を迅速に添加した。溶液の色が淡黄色から暗紅色に変化し、還流は15分間継続した。室温まで冷却した後、この赤色の溶液をミクロンセパレーションズインコーポレイテッド社(Micron Separations Inc.)の1ミクロンフィルターに通して濾過した。ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)8452Aダイオードアレイ分光光度計を使用したUV−可視光分光分析、および日立(Hitachi)8100透過電子顕微鏡を使用した透過電子顕微鏡法(TEM)によって、Auコロイドを特徴付けた。直径15nmの金粒子は、10〜35ヌクレオチドの範囲の標的およびプローブオリゴヌクレオチド配列とともに凝集させると、眼に見える色の変化を生じる。
【0097】
(b)オリゴヌクレオチドの合成
MRSAのDNA配列の特定の標的セグメントと相補的となるように設計された捕捉プローブオリゴヌクレオチドを、ホスホロアミダイト化学法[エクスタイン エフ(Eckstein,F.)(編)「OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH」、(アイアールエルプレス社(IRL Press)、英国オックスフォード(Oxford)所在、1991年)]を用いるシングルカラム形式で、ABI8909DNA合成機を使用して、1マイクロモルスケールで合成した。捕捉配列には、アレイ化工程の間に基材に共有結合させるための活性基として働く、いずれかの3’−アミノ修飾体を含めた。DNA合成に関する下記の標準的なプロトコールによってオリゴヌクレオチドを合成した。3’−アミノ修飾体が固体支持体に結合しているカラム、標準的なヌクレオチドホスホロアミダイトおよび試薬は、グレンリサーチ社(Glen Research)[米国バージニア州スターリング(Sterling)所在]から入手した。最終的なジメトキシトリチル(DMT)保護基は、
精製を援助するためオリゴヌクレオチドから切断しなかった。合成後、アンモニア水を使用してDNAを固体支持体から切断し、その結果、3’末端に遊離アミンを含むDNA分子が得られた。逆相カラム(バイダック社(Vydac))を装備したアジレント(Agilent)1100シリーズの機器で、0.03MのEtNHOAc緩衝液(TEAA)、pH7を、95%CHCN/5%TEAAの1%/分の勾配で使用することにより、逆相HPLCを実施した。流速は1mL/分とし、260nmでUV検出を行った。緩衝液の回収および蒸発の後、80%酢酸で室温にて30分間処理することにより、オリゴヌクレオチドからDMTを切断した。次いで、該溶液を乾固状態近くまで蒸発させ、水を添加し、該オリゴヌクレオチド水溶液から酢酸エチルを使用して切断されたDMTを抽出した。260nmでの吸光度によりオリゴヌクレオチドの量を決定し、分析用逆相HPLCにより最終的な純度を評価した。
【0098】
MRSA遺伝子のアッセイで使用する捕捉配列を下記の表1に示す。MRSA遺伝子の検出用に設計された検出プローブオリゴヌクレオチドは、5’末端にステロイドジスルフィドリンカーを含み、その後に認識配列が続いている。プローブの配列も下記の表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
プローブオリゴヌクレオチドの合成は、捕捉プローブについて記載した方法に下記の改変を加えて行った。第1に、アミノ修飾体カラムの代わりに、認識配列の3’−末端を反映する適当なヌクレオチドを備えた支持体を使用した。第2に、ステロイドジスルフィド
を含む修飾ホスホロアミダイトを使用することによって、カップリング工程で5’−末端のステロイド環ジスルフィドを導入した(その開示全体を本願明細書に援用する、レッチンガーら(Letsinger et al.)、2000年、Bioconjugate Chem.第11巻、p.289〜291および国際出願第PCT/US01/01190号(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc.))を参照)。ホスホロアミダイト試薬は、以下のように調製することができる:エピアンドロステロン(0.5g)、1,2−ジチアン−4,5−ジオール(0.28g)、およびp−トルエンスルホン酸(15mg)のトルエン(30mL)溶液を、水を除去する条件下で7時間還流した(ディーンスターク(Dean Stark)装置);次いで、減圧下でトルエンを除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させた。この溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、シロップ状の残留物になるまで濃縮し、ペンタン/エーテル中で1晩置いた後、白色固体としてステロイド−ジチオケタール化合物(400mg)を得た;Rf(TLC、シリカプレート、溶離液としてエーテル)0.5;比較のために、同じ条件下で得られたエピアンドロステロンおよび1,2−ジチアン−4,5−ジオールのRf値は、それぞれ0.4および0.3である。ペンタン/エーテルからの再結晶化によって、mp110〜112℃の白色粉末が得られた;H NMR、δ3.6(1H,COH)、3.54−3.39(2H,m 2COH/ジチアン環)、3.2−3.0(4H,m 2CHS)、2.1−0.7(29H,m ステロイドH);質量スペクトル(ES):C2336(M+H)の計算値 425.2179、実測値
425.2151;(C2337)Sの分析:計算値 15.12、実測値
15.26。ステロイド−ジスルフィドケタールホスホロアミダイト誘導体を調製するために、ステロイド−ジチオケタール(100mg)をTHF(3mL)中に溶解させ、ドライアイスアルコール槽で冷却した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(80μL)およびβ−シアノエチルクロロジイソプロピルホスホロアミダイト(80μL)を連続して添加した;次いで混合物を室温まで温め、2時間撹拌し、酢酸エチル(100mL)と混合し、5%NaHCO水溶液および水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固した。残留物を最小量のジクロロメタン中に溶解させ、ヘキサンの添加により−70℃で沈殿させ、真空下で乾燥させた;収量100mg;31P NMR 146.02。DNA合成が終了した後、エピアンドロステロン−ジスルフィドが連結したオリゴヌクレオチドをアンモニア水条件下で支持体から脱保護し、上記に記載のように逆相カラムを使用するHPLCで精製した。
【0101】
(c)オリゴヌクレオチドと金ナノ粒子の結合
プローブは、最終体積2mLで、最初に4μMのオリゴヌクレオチド溶液を15nmのクエン酸塩安定化金ナノ粒子コロイドの約14nM溶液とともに24時間インキュベートすることにより調製した。この調製物の塩濃度を、室温で40時間にわたって0.8Mまで徐々に上昇させた。得られた溶液を0.2μmのセルロースアセテートフィルターに通し、13,000Gで20分間遠心することによってナノ粒子プローブをペレットにした。上清を除去した後、ペレットを水中に再懸濁させた。最終工程で、プローブ溶液を再度ペレットにし、プローブ貯蔵用緩衝液(10mM リン酸、100mM NaCl、0.01%(w/v)NaN)中に再懸濁させた。520nmでの吸光度に基づいて濃度を概算した後、濃度を10nMに調整した(ε=2.4×10−1cm−1)。
【0102】
MRSAのDNAに特異的な下記のナノ粒子−オリゴヌクレオチド結合体を、金ナノ粒子がエピアンドロステロンジスルフィド基を介して適当なオリゴヌクレオチドの5’末端と結合するように調製した。
【0103】
(d)DNAマイクロアレイの調製
NoAb(ノアブ・バイオディスカバリーズ社(NoAb Biodiscoveries)[カナダ国オンタリオ州ミシソーガ(Mississauga)所在])またはC
odeLink(商標)(アマシャムバイオサイエンス社(Amersham Biosciences)[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)所在])の修飾顕微鏡スライド上に、ゲノミックソルーションズプロシスガントリー(Genomic Solutions Prosys(商標)Gantry)(ゲノミックソルーションズ社(Genomic Solutions)[米国ミシガン州アンアーバー(Ann Arbor)所在])を用いて、SynQuad(商標)非接触型分注ノズルまたはテレケムステルスSMP3(Telechem Stealth SMP3)(テレケムインターナショナル社(Telechem International)[米国カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale)所在])スプリットピンによりアレイをプリントした。各アレイ上の各スポットは、プリント後に直径200〜400μmであった。スライドの種類または分注方法とは無関係に、アミン修飾オリゴヌクレオチドを150mMリン酸ナトリウム(pH8.5)中で約100μMに懸濁させた。スライドを低湿度(相対湿度<30%)でアレイ化し、その後保湿チャンバ(相対湿度>70%)中で約18時間再水和した。次いでスライドを乾燥させ、洗浄して過剰なオリゴヌクレオチドを除去し、使用するまでキャビネット型乾燥器(相対湿度<20%)中で貯蔵した。各スライド上で複数のハイブリダイゼーション実験が可能となるように、アレイ化スポットの配置を設計し、その全体を本願明細書に援用する2003年4月21日に出願された米国特許出願第10/352,714号明細書に記載の方法を使用して、スライドを別々の試験用ウェルに区分することによって実現された。捕捉体はそれぞれ3連でスポット化した。スライドのアレイ化後の工程については、製造業者が推奨するプロトコールに従った。
【0104】
(e)ハイブリダイゼーション
MRSA検出アッセイの手順
その全体を本願明細書に援用する、2003年12月12日に出願された米国特許出願第10/735,357号明細書中に概略的に記載されているプロトコールを使用することによって、MRSA検出を行った。具体的には、MRSAアッセイの手順を下記の通りに行った。各細菌試料由来の超音波破砕した精製ゲノムDNAを、最初に95℃で90秒間変性させ、次いで、20%ホルムアミド、5×SSC、0.05%トゥイーン20(Tween20)、およびナノ粒子プローブの複合混合物(250pM)を含む緩衝液中で、最終体積を50μlとして、40℃で30分間ハイブリダイズさせた。スライドを0.5MのNaNO中で洗浄し、銀現像液(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc)[米国イリノイ州ノースブルック(Northbrook)所在])を使用して室温で3分間シグナルを現像した。あるいは、銀染色工程についてのシグマ社(Sigma)のプロトコールに従って、2つの市販の銀増感液(カタログ番号55020および55145、シグマコーポレーション社(Sigma Corporation)[米国ミズーリ州セントルイス(St.Louis)所在])を新たに混合した1:1の混合物試料に室温で5分間さらすことによりシグナルを得ることもできる。スライドを空気乾燥させ、次いで、Verigene(商標)(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc)[米国イリノイ州ノースブルック(Northbrook)所在])を使用してスライドを走査し画像化した。
【実施例2】
【0105】
金ナノ粒子プローブを用いた、細菌ゲノムDNAからのMRSAの検出
この実施例では、アレイ形式の金ナノ粒子に基づく検出を使用してMRSA配列を検出する方法を説明する。表1に示すオリゴヌクレオチド捕捉プローブを有するマイクロアレイプレートを、表1に示すオリゴヌクレオチド検出プローブで標識した金ナノ粒子とともに使用した。マイクロアレイプレート、捕捉プローブ、および検出プローブは、実施例1に記載の通りに調製した。
【0106】
(a)標的DNAの調製
29個のメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)試料および19個の黄色ブドウ球菌試料を、エバンストンノースウェスタンヘルスケア病院(Evanston Northwestern Healthcare Hospital)、[米国イリノイ州60201、エバンストン(Evanston)、エバンストンホスピタル(Evanston Hospital)所在]からスワブとして受け取った。該スワブを使用して、トリプチックソイブロス(Tryptic Soy Broth)(TSB)入りの2ml管に接種し、これを37℃で1晩増殖させた。
【0107】
1白金耳量の1晩培養物を(a)個々のコロニー増殖用の5%ヒツジ血液寒天プレート上、ならびに(b)メチシリン耐性試験用の6mcg/mLのオキサシリンを含むマンニトール塩寒天プレートの4分円上、に画線した。プレートを37℃で24時間インキュベートした。コロニーの形態および溶血パターンを各試料について記録した。
【0108】
1試料だけが、血液寒天上で混合形態のコロニーを示した。8個の試料が混合溶血パターンを有するコロニーを示した。12個の試料(2個がCoNSに分類され、10個が黄色ブドウ球菌に分類される)が、オキサシリン含有寒天上で著しい増殖を示した。これらをメチシリン耐性とした。5個の試料がオキサシリン含有寒天上で非常に限局した増殖または極小点のコロニーを示し、これらをメチシリン半耐性とし、30℃に戻してさらに24時間置いた。31個の試料は、オキサシリン含有寒天上でいかなる種類の増殖も示さなかった。これらをメチシリン感受性とした。
【0109】
メチシリン耐性試料については、複数コロニーに相当する1白金耳量の細胞をMSA−オキサシリンプレートから拾い、TSB入りの2ml管に接種した。メチシリン半耐性およびメチシリン感受性の試料については、ブドウ球菌と一致する表現型を有する複数コロニーに相当する1白金耳量の細胞を血液寒天プレートから拾い、TSB入りの2ml管に接種した。接種した培養物を37℃で1晩振盪しながら増殖させ、次いで無菌グリセロールと混合し、−80℃で凍結した。これらの凍結培養物を使用してTSBに接種して、DNA単離用の細胞を増殖させた。アクロモペプチダーゼを使用して細胞を溶解し、キアゲン社(QIAGEN)のゲノミックDNA20/G(QIAGEN Genomic DNA 20/G)プロトコールを使用してゲノムDNAを単離した。
【0110】
(b)MRSA遺伝子検出アッセイ
精製したゲノムDNAを、マイクロアレイ形式で、ClearRead(商標)技術(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc)[米国イリノイ州ノースブルック(Northbrook)所在])を使用して、オリゴヌクレオチドPVR1〜10を捕捉プローブとして使用してスクリーニングした。簡潔に述べると、精製ゲノムDNA500ngを、先に記載したように、最初の変性工程の後、20%ホルムアミド、5×SSC、0.05%Tween20、および250pMのナノ粒子プローブ複合混合物(表1に示すNanoRR2およびNanoRR5)を含む緩衝液中で、40℃で30分間ハイブリダイズさせた(各試料についてn=48)。スライドを0.5MのNaNO中で洗浄し、銀現像液(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc)[米国イリノイ州ノースブルック(Northbrook)所在])を使用して、シグナルを現像した。Verigene(商標)機器(ナノスフェアー インコーポレイテッド社(Nanosphere,Inc)[米国イリノイ州ノースブルック(Northbrook)所在])を使用してスライドを走査し画像化し、JMPソフトウェア(SASインスティテュートインコーポレイテッド社(SAS Institute,Inc.)、[米国ノースカロライナ州ケアリー(Cary)所在])を使用してデータを分析した。
【0111】
1ウェル当たり陰性対照スポット9個の平均強度値+3×標準偏差を使用して閾値を作成した。強度値がその試料ウェルの閾値を上回った場合に、試料を陽性反応が得られたものと定義した。
【0112】
実験の結果を表2に示す。細菌培養から得られた結果と比較して成功率は100%であった。すなわち、MRSA、MSSAおよびMR/MS非SA(MRCONおよびMSCON)はすべて正しく同定された。捕捉オリゴヌクレオチドPVR1〜10ならびに複合的なナノ粒子プローブ混合物NanoRR2およびNanoRR5(表1)とハイブリダイズした菌株はすべてMRSAとして正しく同定されたが、非MRSA株はハイブリダイズしなかった。
【0113】
【表2】

【0114】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(MRCONの1例)のゲノムDNAを、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)のゲノムDNAと混合することによって、該手法の特異性を調べた。この混合試料を従来の分子生物学に基づく手法、たとえばPCR、プローブを使用するハイブリダイゼーションなどで、mecA遺伝子を使用して評価すると、MRSE細菌がmecA遺伝子を1コピー有することが知られているため、偽陽性を招くはずである。そのような混合試料は、従来の技術を使用する場合、MRSAを含む試料と区別できず、その結果MRSAについて偽陽性となるはずである。
【0115】
ATCCからMRSEおよびMSSA細胞を入手し(それぞれカタログ番号27626および29213)、上記に記載のように培養してゲノムDNAを精製した。3:1〜1:3(MRSE:MSSA)の範囲で、MRSEのゲノムDNAをMSSAのゲノムDNAに添加(スパイク)した。同じプローブ混合物を使用して、マイクロアレイスライドを前と同様にハイブリダイズさせた(各希釈についてN=10)。その結果を図5に示す。スパイクされたMSSAは、3:1(MRSE:MSSA)の比でもMRSAと全く間違えられなかった。図5には、mecA遺伝子に対する捕捉プローブおよび検出プローブをマイクロアレイハイブリダイゼーションアッセイで調べた、より従来的な手法から得られた結果も示す。mecAを使用すると、1:3(MRSE:MSSA)の比でも明らかに誤りが生じた。この実験の結果は、アッセイの特異性を示すものである。
【0116】
上記の開示は、本発明の特定の具体的な実施形態を強調するものであり、該実施形態と等価な改変形態または代替形態はすべて、添付の特許請求の範囲に示す本発明の趣旨および範囲内にあることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】黄色ブドウ球菌へのmecA遺伝子カセット挿入部位の左側結合部における結合部捕捉プローブの位置を示す図。
【図2】本発明の1工程ハイブリダイゼーション法を示す概略図。
【図3】本発明の2工程ハイブリダイゼーション法を示す概略図。
【図4】ナノ粒子で標識した検出プローブ、基材と結合した野生型または変異型捕捉プローブ、および野生型の標的がハイブリダイズした複合体を示す概略図。
【図5A】本発明の結合部捕捉体/プローブ手法の優れた特異性を、より従来的なハイブリダイゼーション手法と比較して実証する結果を示す図。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌株由来のDNAに、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌株由来のDNAを様々なモル比で意図的に添加(スパイク)した。得られたDNA混合物を使用して、特定のナノ粒子プローブ(NanoRR2)とともに、特定の左側結合部捕捉体を含むマイクロアレイスライドとハイブリダイズさせ、上側パネルにその強度の結果を示す。下側パネルには、同じDNA混合物を、mecA遺伝子に特異的なナノ粒子プローブを使用してmecA遺伝子捕捉体とハイブリダイズさせたときのハイブリダイゼーションの結果を示す。結合部捕捉体/プローブでの結果は、存在するMRSE DNAの量に関わらず交差ハイブリダイゼーションを示さなかったが、mecA遺伝子特異的捕捉体/プローブの組合せを使用した場合は、添加されたMRSE DNAが極めて少量でも広範な交差ハイブリダイゼーションが観察されている。
【図5B】本発明の結合部捕捉体/プローブ手法の優れた特異性を、より従来的なハイブリダイゼーション手法と比較して実証する結果を示す図。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌株由来のDNAに、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌株由来のDNAを様々なモル比で意図的に添加(スパイク)した。得られたDNA混合物を使用して、特定のナノ粒子プローブ(NanoRR2)とともに、特定の左側結合部捕捉体を含むマイクロアレイスライドとハイブリダイズさせ、上側パネルにその強度の結果を示す。下側パネルには、同じDNA混合物を、mecA遺伝子に特異的なナノ粒子プローブを使用してmecA遺伝子捕捉体とハイブリダイズさせたときのハイブリダイゼーションの結果を示す。結合部捕捉体/プローブでの結果は、存在するMRSE DNAの量に関わらず交差ハイブリダイゼーションを示さなかったが、mecA遺伝子特異的捕捉体/プローブの組合せを使用した場合は、添加されたMRSE DNAが極めて少量でも広範な交差ハイブリダイゼーションが観察されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す核酸配列、あるいは
b.配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す該核酸配列の相補体とハイブリダイズする核酸配列
で構成される単離オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載の前記核酸分子を含むベクター。
【請求項3】
請求項3に記載の前記ベクターを含む宿主細胞。
【請求項4】
請求項1に記載の単離オリゴヌクレオチドを含むキット。
【請求項5】
試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出する方法であって、
a.請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを含んでなる捕捉プローブが結合した位置指定可能な基材を供給する工程と、
b.MRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程と、
c.捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションに有効な条件下で試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、
d.基材を洗浄して非特異的に結合した物質を除去する工程と、
e.捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、
からなる方法。
【請求項6】
前記捕捉オリゴヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す核酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出オリゴヌクレオチドが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23で示す核酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
試料中に存在するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、試料を検出プローブと接触させ、次いで、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が基材上の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、検出プローブに結合したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸を基材と接触させる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
試料中に存在するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、試料を基材と接触させ、次いで、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、捕捉オリゴヌクレオチドに結合したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸を検出プローブと接触させる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
試料を検出プローブおよび基材と同時に接触させる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
検出オリゴヌクレオチドが、検出可能な標識を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
検出可能な標識が、光学的、電子的、音響学的、音響光学的、重力学的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的、または物理的な手段による検出を可能にする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標識が蛍光性である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記標識が発光性である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記標識がリン光性である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記標識が放射性である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記標識がナノ粒子である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記標識がデンドリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記標識が分子凝集物である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記標識が量子ドットである、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記標識がビーズである、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記検出プローブが、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項5に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子が貴金属から作製される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ粒子が金または銀から作製される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子が金から作製される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記検出工程が、基材を銀染色液と接触させる工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記検出工程が、前記ナノ粒子によって散乱した光を検出する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記検出工程が、光学スキャナを用いた観察を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記スキャナはグレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結され、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検出工程が、平台式スキャナを用いた観察を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記スキャナはグレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結され、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
基材に結合したオリゴヌクレオチドが2つの電極の間に配置され、ナノ粒子が電気の伝導体である物質から作製され、かつ工程(d)が電気伝導度の変化を検出する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記電極が金から作製され、前記ナノ粒子が金から作製される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
電気伝導度の変化を生じさせるために、基材を銀染色液と接触させる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記試料が、増幅させた核酸分子と比べて生物学的複雑性が高い核酸分子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項36】
前記高い生物学的複雑性が約50,000を超える、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記高い生物学的複雑性が約50,000〜約3,000,000である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記高い生物学的複雑性が約3,000,000である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
試料中の核酸分子を増幅させる、請求項5に記載の方法。
【請求項40】
試料中の核酸分子が、ポリメラーゼ連鎖反応、ローリングサークル型増幅、NASBA、またはiCANによって増幅される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出する方法であって、
a.捕捉プローブがMRSA核酸配列の少なくとも一部と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、捕捉オリゴヌクレオチドが結合した位置指定可能な基材を供給する工程と、
b.請求項1に記載のオリゴヌクレオチドである検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程と、
c.捕捉オリゴヌクレオチドとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションおよび検出プローブとMRSA核酸配列とのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、試料を基材および検出プローブと接触させる工程と、
d.基材を洗浄して非特異的に結合した物質を除去する工程と、
e.捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブがMRSA核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と、
からなる方法。
【請求項42】
前記検出オリゴヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10で示す核酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記捕捉オリゴヌクレオチドが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、または配列番号23で示す核酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
試料中に存在するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が検出プローブ上の検出オリゴ
ヌクレオチドとハイブリダイズするように、該試料を検出プローブと接触させ、次いで、該メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が基材上の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、検出プローブと結合した該メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸を基材と接触させる、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
試料中に存在するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、該試料を基材と接触させ、次いで、該メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸が検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように、捕捉オリゴヌクレオチドと結合した該メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の核酸を検出プローブと接触させる、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
試料を検出プローブおよび基材と同時に接触させる、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
検出オリゴヌクレオチドが、検出可能な標識を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
検出可能な標識が、光学的、電子的、音響学的、音響光学的、重力学的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的、または物理的な手段による検出を可能にする、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記標識が蛍光性である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記標識が発光性である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記標識がリン光性である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記標識が放射性である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記標識がナノ粒子である、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記標識がデンドリマーである、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記標識が分子凝集物である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記標識が量子ドットである、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記標識がビーズである、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記検出プローブが、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項41に記載の方法。
【請求項59】
前記ナノ粒子が貴金属から作製される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記ナノ粒子が金または銀から作製される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ナノ粒子が金から作製される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記検出工程が、基材を銀染色液と接触させる工程を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記検出工程が、前記ナノ粒子によって散乱した光を検出する工程を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記検出工程が、光学スキャナを用いた観察を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記スキャナはグレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結され、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記検出工程が、平台式スキャナを用いた観察を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
前記スキャナはグレースケール測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータと連結され、検出した核酸の量を定量的に測定するためにグレースケール測定値が算出される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
基材に結合したオリゴヌクレオチドが2つの電極の間に配置され、ナノ粒子が電気の伝導体である物質から作製され、かつ工程(d)が電気伝導度の変化を検出する工程を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項69】
前記電極が金から作製され、前記ナノ粒子が金から作製される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
電気伝導度の変化を生じさせるために、基材を銀染色液と接触させる、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記試料が、増幅させた核酸分子と比べて生物学的複雑性が高い核酸分子を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項72】
前記高い生物学的複雑性が約50,000を超える、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記高い生物学的複雑性が約50,000〜約3,000,000である、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記高い生物学的複雑性が約3,000,000である、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
試料中の核酸分子を増幅させる、請求項41に記載の方法。
【請求項76】
試料中の核酸分子が、ポリメラーゼ連鎖反応、ローリングサークル型増幅、NASBA、またはiCANによって増幅される、請求項41に記載の方法。
【請求項77】
捕捉プローブおよび基材が、特異的な結合対の相互作用によって結合する、請求項1または41に記載の方法。
【請求項78】
捕捉プローブおよび基材が、特異的な結合対の相補体を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
特異的な結合対の相補体が、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、ポリペプチド、抗体、抗原、炭水化物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物、ウイルス、多糖、脂質、リポ多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、核タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、イムノグロブリン、アルブミン、ヘモグロビン、凝固因子、ペプチド性ホルモンおよびタンパク質性ホルモン、非ペプチド性ホルモン、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、腫瘍特異的エピトープを含むペプチ
ド、細胞、細胞表面分子、微生物、微生物の断片、部分、構成成分もしくは生成物、有機小分子、核酸およびオリゴヌクレオチド、上記の物質のいずれかの代謝物または上記の物質のいずれかに対する抗体を含む、請求項78に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−507296(P2008−507296A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523752(P2007−523752)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/026578
【国際公開番号】WO2006/028601
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(501216012)ナノスフェアー インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】NANOSPHERE INC.
【Fターム(参考)】