混合系統キナーゼの阻害およびそのための用途
例えば癌のような新生物形成細胞での細胞増殖を阻害するためのMLKタンパク質若しくはポリペプチドの阻害剤の使用方法が本明細書に提供される。こうした方法は癌を処置するのに使用することができ、かつ、さらに、処置を受領する個体に対する毒性の付随する低減を伴い、癌を処置するための低下された投薬量での抗癌剤の投与と共に使用しうる。MLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を阻害しかつMLK活性を有する新生物形成細胞の細胞増殖を阻害するための阻害剤のスクリーニング方法もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の補助金の説明
本発明は、米国国防総省から助成金DAMD17−01−1−0548により得られた補助金を使用して部分的に実現された。結果、連邦政府は本発明においてある種の権利を有する。
関連出願の交差引用
本非仮出願は、2004年3月16日出願の米国仮出願第60/553,497号明細書(現在放棄)の利益を主張する。
発明の分野
本発明は全般として医学および細胞生物学の分野に関する。とりわけ、本発明は、癌細胞の増殖の予防方法および癌治療の間の抗癌化合物の毒性の低減方法に関する。より具体的には、本発明は、癌細胞の増殖を予防するための多系統キナーゼ(multi−lineage kinase)タンパク質の活性の阻害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記述
混合系統キナーゼ(mixed−lineage kinase)(MLK)ファミリーに属するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼは、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの活性を制御し、また、組織の発達およびアポトーシス応答の調節に主に関与している(1)。MLKファミリーは、二重(dual)ロイシンジッパーをもつキナーゼ(DLK)であるMLK1〜4、およびロイシンジッパーキナーゼ(LZK)を包含する(1−2)。MLKタンパク質はそれぞれ、1個のSrc相同性3(Src homology 3)(SH3)ドメイン、1個の触媒ドメイン、2個のロイシンジッパー(LeuZip)モチーフ、およびCdc42/Rac相互作用結合(CRIB)モチーフを包含する、タンパク質相互作用およびシグナル伝達に重要である高度に保存された構造的モチーフを含有する(1)。MLK1〜4サブファミリーの調節および機能は、脳、骨格筋および精巣に局在するMLK2、ならびに偏在的に発現されるMLK3について特徴づけられている(1)。現在、唯一の部分的配列情報はMLK1について既知であり、そしてMLK4の生理学的機能は定義されていない。
【0003】
MLKタンパク質は、CRIBモチーフと相互作用することにより原形質膜に細胞質のMLKタンパク質を動員するCdc42およびRac1を包含する上流のGタンパク質により活性化される(3)。MLKタンパク質活性は、SH3ドメインと、CRIBドメインとロイシンジッパー領域の間の単一のプロリン残基との間の分子内相互作用を伴う自己阻害によってもまた調節されうる(4)。最近、MLK3の安定性が、MLK3が熱ショックタンパク質90(HSP90)と相互作用する能力に結びつけられ、最近のデータは、HSF90のゲルダナマイシン阻害が低下されたMLK3の安定性および発現をもたらすことを示唆している(5)。
【0004】
神経細胞中でのストレスで活性化されるタンパク質キナーゼおよびアポトーシス経路の活性化におけるMLKタンパク質の機能的役割は十分に特徴づけられている(6−8)。MLK3は、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)キナーゼ、MKK4およびMKK7を直接リン酸化かつ活性化することによる、JNK MAPキナーゼの強力な活性化因子である(9−10)。MLK3はまた、主たるp38 MAPキナーゼ活性化因子であるMKK3およびMKK6の直接リン酸化により、p38 MAPキナーゼも活性化するとみられる(10)。MLKタンパク質は、MLK誘発性のJNK活性化、チトクロームc放出、およびアポトーシス経路のカスパーゼ活性化を伴う機構により、パーキンソン病、
ハンチントン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の進行において決定的な役割を演じていると提案された(6,8)。従って、CEP−1347(KT7515)およびCEP−11004(KT−8138)を包含するインドールカルバゾールファミリーに属するMLK活性の数種の小分子阻害剤が、臨床試験で試験されており、そして、未熟な神経細胞の死の予防において有益と判明するかもしれない(6−8、11−12)。
【0005】
非神経細胞において、MLKタンパク質はまた細胞増殖の促進においても機能しうる。例えば、MLK3の過剰発現は、MEK1およびERK活性化を伴う機構により、軟寒天上でのNIH 3T3細胞の形質転換および増殖を誘導することが報告された(13)。同様に、成長因子は、腫瘍細胞の増殖においてB−RafおよびERK経路を活性化するのにMLK3を利用するとみられる(14)。MLK3活性は、JNK非依存性である機構により有糸分裂の間に中心体の構成および微小管の安定性に影響を及ぼすことにより、細胞増殖を調節しうる(15)。付加的な証拠は、MLK3が、活性化されたRac1変異体を発現する細胞中の形態学的変化を媒介することにより細胞の形質転換を促進しうることを示唆している(16)。最近、MLK様タンパク質MLTKの過剰発現が、ヌードマウスモデルで細胞の形質転換を誘発するのに十分であることが示された(17)。また、最近の報告は、MLK3が乳癌細胞株中でアップレギュレートされていることを示す(5)。従って、十分な証拠が、MLKタンパク質を細胞増殖の促進と結びつけている。
【0006】
形質転換細胞により引き起こされる病態生理学的状態(state)若しくは状態(condition)を処置するための、形質転換細胞の増殖の調節方法に対する、当該技術分野における必要性が存在する。従来技術は、癌細胞の増殖の阻害方法の欠如において不完全である。とりわけ、従来技術は、癌細胞増殖を停止させるためのMLKタンパク質の阻害方法を欠く。本発明は、当該技術分野におけるこの長年の必要性および欲求を成就する。
【発明の開示】
【0007】
[発明の要約]
本発明は新生物形成細胞の増殖の阻害方法に関する。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させることを含んでなる。MLK活性の阻害は、それにより新生物形成細胞の増殖を阻害する。
【0008】
本発明は、新生物形成細胞の増殖の関係する阻害方法に向けられる。新生物形成細胞を、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と接触させる。混合系統キナーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有し、ここでMLK活性の阻害は新生物の増殖を阻害する。
【0009】
本発明はまた、被験体における癌の処置方法にも向けられる。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること、および阻害剤の結合に際してMLK若しくはMLKポリペプチドの活性を阻害して癌細胞の増殖を停止させることを含んでなる。癌細胞の増殖の停止が癌を処置する。該方法は、個体に抗癌剤を投与するさらなる一段階を含みうる。
【0010】
本発明は、癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の関係する低減方法に向けられる。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に共投与することを含んでなる。阻害剤とともに投与される抗癌剤の投薬量は、該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満である。個体に対する癌治療の毒性がそれにより低減される。
【0011】
本発明は、混合系統キナーゼ(MLK)活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止
させる化合物のスクリーニング方法にさらに向けられる。MLKタンパク質若しくはそのポリペプチドまたはMLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを、化合物の存在若しくは非存在下で測定する。化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較した、化合物の存在下でのMLK活性のレベルの減少は、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示す。活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させる。阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と、阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を比較する。阻害性化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての阻害性化合物の存在下での細胞増殖の減少は、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す。
【0012】
本発明は、本明細書に記述されるスクリーニング方法により同定される化合物にさらになお向けられる。これらの化合物は、混合系統キナーゼ若しくはそのポリペプチドの活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止させる。これらの化合物は、本発明に記述される新生物形成細胞の細胞増殖の阻害方法、癌の処置方法、若しくは抗癌剤の毒性の低減方法のいずれでも使用しうる。
【0013】
本発明のさらなる態様は、癌細胞を包含する新生物形成細胞の増殖の阻害方法、癌の処置、ならびに/若しくは癌の処置、ならびにそれのための医薬品および製薬学的組成物の製造における、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物の使用に向けられる。
【0014】
他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、開示の目的上示される本発明の現在好ましい態様の以下の記述から明らかであろう。
[発明の詳細な記述]
本発明の一態様において、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させてそれにより新生物形成細胞の増殖を阻害することを含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法が提供される。本態様の全局面において、新生物形成細胞は癌を含みうる。癌の代表例は、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有するいずれかの癌である。本態様の全局面において、化合物はインドロカルバゾール分子でありうる。代表例はCEP−11004若しくはCEP−1347である。
【0015】
一局面において、混合系統キナーゼは配列番号3に示される配列を有するMLK1ポリペプチドでありうる。別の局面において、混合系統キナーゼは配列番号4に示される配列を有するMLK2タンパク質でありうる。なお別の局面において、混合系統キナーゼは配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有するMLK3タンパク質でありうる。
【0016】
関連する一態様において、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有する混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させることを含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法が提供され、ここでMLK活性の阻害が新生物の増殖を阻害する。本態様の全局面において、新生物形成細胞は上述されたところの癌を含みうる。加えて、全局面において、阻害剤は上述されたとおりである。
【0017】
本発明の別の態様において、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること;癌細胞の増殖が停止されるような前記阻害剤の結合に際してMLK若しくはMLKポリペプチドの活性を阻害してそれにより被験体中の癌を処置することを含んでなる、被験体中の癌の処置方法が提供される。
【0018】
本態様に加えて、該方法は被験体に抗癌剤を投与することを含みうる。本態様の局面において、抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。本態様の別の局面において、抗癌剤の投薬量は、該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する該抗癌剤の毒性を低減する。抗癌剤の例は、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキン、およびシクロホスファミドである。加えて、全局面において、癌の型、MLK阻害剤、ならびにMLKタンパク質およびそのポリペプチドは上述されたとおりである。
【0019】
関連する一態様において、本発明は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に投与することを含んでなり、阻害剤と共に投与される抗癌剤の投薬量は該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する癌治療の毒性を低減する、癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の低減方法を提供する。本態様の局面において、抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。本態様の全局面において、MLK阻害剤、MLKタンパク質およびポリペプチド、抗癌剤ならびに癌の型は上述されたとおりである。
【0020】
本発明のなお別の態様において、a)化合物の存在若しくは非存在下で、混合系統キナーゼ(MLK)タンパク質若しくはそのポリペプチド、または前記MLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを測定すること;b)化合物の存在下でのMLK活性のレベルを化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較することであって、化合物の存在下でのMLK活性の減少は、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示し;c)活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させること;およびd)阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を、阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と比較することであって、該化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての該化合物の存在下での細胞増殖の減少が、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す、を含んでなる、MLK活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止する化合物のスクリーニング方法が提供される。
【0021】
本態様の全局面において、混合系統キナーゼはMLK2タンパク質若しくはMLK3タンパク質若しくはMLK1ポリペプチド、またはMLK活性を有するポリペプチドフラグメントである。MLK1ポリペプチドは配列番号3に示される配列を有しうる。MLK2ポリペプチドは配列番号4に示される配列を有しうる。MLK3ポリペプチドは配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有しうる。MLK活性を有するMLKポリペプチドフラグメントは、MLK2若しくはMLK3タンパク質またはMLK1ポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸を含みうる。全局面において、新生物形成細胞および癌の型は上述されたとおりである。
【0022】
関連する一態様において、混合系統キナーゼ活性および新生物形成細胞の細胞増殖の阻害剤のスクリーニング方法により同定される化合物が提供される。
【0023】
以下の略語を本明細書で使用する。混合系統キナーゼ、MLK;マイトジェン活性化タンパク質、MAP;細胞外シグナル制御キナーゼ、ERK;c−Jun NH2末端キナーゼ、JNK;二重ロイシンジッパーをもつキナーゼ、DLK;Cdc42/Rac相互作用結合、CRIB;CEP−11004、[3,9−ビス[(イソプロピルチオ)メチル]−(8R*,9S*,11S*)−(−)−9−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−8−メチル−2,3,9,10−テトラヒドロ−8,11−エポキシ−1H,8H,11H−2,7b,11a−トリアザジベンゾ(a,g)シクロオクタ(cde)トリンデン−1−オン];CEP−1347 [3,9−ビス[(エチルチオ)メチル]−(8R*,9S*,11S*)−(−)−9−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−8−メチル−2,3,9,10−テトラヒドロ−8,11−エポキシ−1H,8H,11H−2,7b,11a−トリアザジベンゾ(a,g)シクロオクタ(cde)トリンデン−1−オン]。
【0024】
本明細書で使用されるところの「a」若しくは「an」という用語は1個若しくはそれ以上を意味しうる。「含んでなる」という語とともに使用される場合に請求の範囲(1個若しくはそれ以上)にて本明細書で使用されるところの「a」若しくは「an」という語は、1個若しくは1個以上を意味しうる。本明細書で使用されるところの「別の」は、少なくとも第二のもの若しくはそれ以上を意味しうる。
【0025】
本明細書で使用されるところの「接触させること」という用語は、記述されるところのMLKタンパク質またはそのポリペプチド若しくはフラグメント、あるいはそれを含んでなる細胞との接触に阻害剤をもたらすいかなる適する方法も指す。in vitro若しくはex vivoで、これは、MLKタンパク質またはそのポリペプチド若しくはフラグメントあるいはそれを含んでなる細胞を、適する媒体中で阻害剤に曝露することにより達成される。in vivoでの応用のためには、いずれかの既知の投与方法が、本明細書に記述されるとおり適する。
【0026】
本明細書で使用されるところの「新生物」という用語は、とりわけ異常な細胞増殖を特徴とする組織若しくは細胞の塊を指す。異常な細胞増殖は、正常組織若しくは細胞の増殖を越えかつそれと協調せずそして該変化を惹起した刺激が停止するか若しくは除去された後に同一の過剰な様式で持続する、これらの組織若しくは細胞の増殖をもたらす。腫瘍組織若しくは細胞は、通常、良性若しくは悪性のいずれかであり得る組織若しくは細胞の塊をもたらす、正常組織若しくは細胞に関しての構造の構成および協調の欠如を示す。当業者に明らかであろうとおり、「癌」という用語は悪性新生物を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「形質転換された」という用語若しくは「形質転換細胞」という句は、腫瘍性増殖を表す細胞を指す。
【0028】
本明細書で使用されるところの「処置すること」という用語、または「癌を処置すること」若しくは「新生物を処置すること」という句は、限定されるものでないが、新生物若しくは癌の増殖を停止させること、新生物若しくは癌を殺すこと、または新生物若しくは癌の大きさを縮小させることを挙げることができる。増殖を停止させることは、腫瘍若しくは癌細胞の大きさまたは数若しくは大きさのいかなる増大も停止させること、あるいは新生物若しくは癌細胞の分裂を停止させることを指す。大きさを縮小させることは、新生物若しくは癌の大きさまたは腫瘍若しくは癌細胞の数若しくは大きさを低下させることを指す。
【0029】
本明細書で使用されるところの「被験体」という用語は処置のいかなる標的も指す。
【0030】
本明細書で使用されるところの「MLK阻害剤」という用語は、限定されるものでないがMLK1、MLK2および/若しくはMLK3ポリペプチドを挙げることができる混合系統キナーゼ(MLK)ポリペプチドの活性を遮断、停止、阻害および/若しくは抑制する天然、半合成若しくは合成起源の分子的実体を意味している。
【0031】
本明細書で使用されるところの「MLKポリペプチド」という用語は「MLKタンパク
質」と互換性に使用される。本明細書に記述される実験は、以下の理由からMLK3アイソフォームに焦点をあてた。第一に、MLK3は偏在的に発現され、そしてMLKタンパク質の最良に特徴づけられたものである。第二に、MLK2はキナーゼ触媒ドメインおよび他の領域においてMLK3と70%以上の配列の同一性を共有するとは言え、MLK2ポリペプチドの発現は脳および筋組織に制限されている。第三に、MLK1の完全な配列は未だ同定されなければならない。しかしながら、ヒトMLK3(配列番号1)ポリペプチドの阻害は非制限的例示の一態様であること、ならびに、マウス(配列番号2)のような多様な哺乳動物でのMLK3ポリペプチド、ならびに/若しくはヒトMLK2ポリペプチド(配列番号4)および/若しくはヒトMLK1(配列番号3)ポリペプチドの阻害は、本発明の技術思想および範囲内とされていることが企図されている。
【0032】
本発明は、MLKタンパク質若しくはポリペプチドが、腫瘍性増殖を表す形質転換細胞中での有糸分裂の間の微小管形成の重要な調節物質としてはたらくことを開示する。その後、MLKタンパク質若しくはポリペプチドの阻害は、中期から後期への移行に必要な有糸分裂紡錘体を適正に形成することの不能により、前中期様停止で有糸分裂の進行を阻害する。MLKタンパク質の阻害は、形質転換細胞の有糸分裂移行および細胞増殖を優先的に阻害しうるが、しかし正常細胞ではしない。形質転換細胞での細胞周期の調節の固有の異常は、これらの細胞を、MLK阻害剤に応答しての細胞周期停止およびアポトーシスをうけるようにより感受性にしうる。従って、MLKタンパク質若しくはポリペプチドは、正常細胞の機能に影響を及ぼすことなく、癌細胞増殖の処置の独特の標的としてはたらく。
【0033】
新生物形成細胞増殖が、正常の形質転換されていない細胞の機能に影響を及ぼすことなく停止(arrest)、停止(stop)、遮断されるか、若しくは起こることを停止するような、限定されるものでないが癌を挙げることができる新生物を処置するための独特の標的としてMLKポリペプチドを利用する方法が、本明細書で提供される。従って、本発明はMLKタンパク質の特定のポリペプチド配列を結合しかつ癌細胞増殖に影響を及ぼすその活性を阻害若しくは妨害するMLK阻害剤に引き寄せられる。MLK阻害剤は、MLKポリペプチド、すなわち限定されるものでないが配列番号1、2および/若しくは4のような完全長のポリペプチド、または配列番号3のようなそのペプチドフラグメントの活性を遮断、停止、阻害および/若しくは抑制しうる。ポリペプチドフラグメントは、配列番号3のMLK1ポリペプチド、配列番号4のMLK2ポリペプチド、または配列番号1若しくは2のMLK3ポリペプチドを包含するMLKポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸もまた含みうる。
【0034】
MLK阻害剤は、インドロカルバゾール化合物またはその誘導体若しくはアナログ、あるいは、キナーゼ活性のようなMLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を妨害するのに有効な他の分子でありうる。代表的阻害剤はCEP−11004若しくはCEP−1347である。CEP−11004がMLK3に選択的に結合することが企図される。潜在的化合物を、MLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を阻害しかつ形質転換細胞の細胞増殖を阻害するそれらの能力についてスクリーニングしうることもまた企図される。例えば、活性化されたMLK活性を有する癌細胞培養物を潜在的MLK阻害剤と接触させる。対照に比較しての細胞増殖の減少は、トリパンブルー排除若しくはコロニー形成アッセイのような標準的アッセイにより測定しうる。MLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を阻害しかつ細胞増殖を阻害するのに有効な化合物を、DNA含量のFACS分析によりさらにスクリーニングして、細胞増殖の低下の性質を特徴付けしうる。
【0035】
あるいは、MLKの潜在的阻害剤は、最初に、MLK関連の活性の既知の基質の存在下で、本明細書に記述される1種若しくはそれ以上のMLKタンパク質若しくはポリペプチ
ドと潜在的阻害剤を接触させることにより、スクリーニングしうる。例えば、MLK関連の活性を、ATP、およびMLK活性を介してリン酸化される基質の存在下、ならびに潜在的MLK阻害剤の存在若しくは非存在下でアッセイしうる。潜在的阻害剤の非存在下での活性に比較しての潜在的阻害剤の存在下でのMLK活性の低下は、それがMLK活性を阻害する能力を有することを示す。こうした酵素アッセイは当該技術分野で既知かつ標準的である。MLKポリペプチドはMLK1〜4のいずれでもありうるか、若しくは記述されるところのそのフラグメントでありうるが、但し、該ポリペプチドフラグメントはMLK1〜4ポリペプチドに関連した最低1種の活性を保持する。その後、MLK関連の活性のいずれかの潜在的阻害剤を、記述されるところの細胞増殖アッセイで使用しうる。
【0036】
癌細胞の細胞増殖の潜在的阻害剤は、MLKタンパク質の活性を阻害若しくは妨害することが既知の天然、半合成若しくは合成化合物でありうるか、または、化学物質ライブラリーからスクリーニングされた化合物でありうるか、あるいは、既知の阻害剤に類似の構造を有する合成の誘導体若しくはアナログ化合物でありうる。本明細書に記述される方法により同定されるMLKの阻害剤は、正常細胞の増殖に影響を及ぼすことなく癌細胞の増殖を阻害し得る。こうした阻害剤は、新生物形成細胞の増殖を阻害するため、癌を処置するため、若しくは正常細胞に対する抗癌剤の毒性を低減させるために使用しうる。
【0037】
MLK阻害剤は、形質転換細胞、例えば、限定されるものでないが癌を挙げることができる新生物の存在により特徴づけられる病態生理学的状態を有するいかなる被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトも処置するのに使用しうる。例えば、癌は、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有する別の癌でありうる。被験体へのMLK阻害剤の投与は、正常細胞の増殖に影響を及ぼすことなく癌細胞の増殖停止をもたらす。こうして、細胞増殖は阻害され、そして、癌を殺すことまでおよびそれを包含する治療効果が達成され、それにより癌を処置する。本発明のMLK阻害剤を、非悪性の腫瘍性疾患および障害の増殖を阻害するのに使用しうることが企図されている。
【0038】
抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。MLK阻害剤との共投与の効果は、癌若しくは癌細胞に対し少なくとも最小限の薬理学的若しくは治療効果を有することが既知である通常必要とされる抗癌剤の投薬量、例えば、癌細胞を排除するのに必要とされる投薬量を低下させることである。付随して、正常細胞、組織および器官に対する抗癌剤の毒性が、癌細胞に対する該薬物のいかなる細胞傷害性、細胞分裂阻害性、アポトーシス性または他の殺す若しくは阻害性の治療効果も低減する、やわらげる、除外する若しくは別の方法で妨害することなく、低下される。
【0039】
MLK阻害剤および抗癌剤は、当該技術分野で標準的ないずれの方法によっても、例えば、皮下で、静脈内に、非経口で、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、局所に、腸に、直腸に、鼻に、頬側に、膣に、または吸入スプレーにより、薬物ポンプにより、あるいは経皮貼付剤若しくは埋植物内に含有されて、全身に若しくは局所にのいずれかで独立に投与し得る。MLK阻害剤の投薬製剤は、投与方法に適する慣習的な非毒性の生理学的若しくは製薬学的に許容できる担体若しくはベヒクルを含みうる。
【0040】
MLK阻害剤および抗癌剤若しくはそれらの製薬学的組成物は、治療効果を達成、維持若しくは改善するために独立に1回若しくはそれ以上投与しうる。投薬量、またはMLK阻害剤および抗癌剤のいずれか若しくは双方の適する投薬量が単一の投与される用量を含んでなるか若しくは複数の投与される用量を含んでなるかを決定することは、当業者の熟練内に十分にある。適切な投薬量は、被験体の健康状態、癌の進行若しくは寛解、投与経路および使用される製剤に依存する。
【0041】
以下の実施例は、本発明の多様な態様を具体的に説明する目的上示され、そして、本発明をいかなる様式でも制限することを意味していない。
【実施例1】
【0042】
細胞培養および試薬
HeLa、NIH 3T3、HEK293、A549若しくはMRC−5細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)ならびにペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したDMEM中で増殖させた。エストロゲン受容体(ER)陰性の乳癌細胞SUM−159はミシガン大学ヒト乳癌細胞株(SUM株)から得、そしてDMEM+10% FBS中で増殖させた。いくつかの実験において、細胞を、pEGFP(BD Biosciences/Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、ヘマグルチニン(HA)標識MLK3、キナーゼ・デッド(kinase dead)変異体MLK3(MLK3 K144R)、GFP標識MLK2(Donna Dorow博士により恵与される)、Flag標識DLK、若しくはHA標識JNK1のcDNA(1μg)で、Lipofectamine(R)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を使用してトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクション16〜24時間後に収集した。
【0043】
MLK3(C−20)、JNK(C−17)、リン酸化型JNK(phospho−JNK)1/2(G−7)、サイクリンB1(GNS1)、MKK2(C−16)およびCdc2(#17)に特異的な抗体を、Santa Cruz Biotech(カリフォルニア州サンタクルズ)から購入した。p62ヌクレオポリン(N43620)およびリン酸化型特異的(phospho−specific)ヒストンH3(セリン10)(カタログ番号07−081)に対する抗体は、それぞれBD Biosciences(カリフォルニア州パロアルト)およびUpstate Biotechnology(バージニア州シャーロッツビル)から購入した。CEP−11004(Cephalon Inc.ペンシルベニア州ウエストチェスターより恵与される)を、DMSO中0.4mMのストック濃度で再構成した。
【実施例2】
【0044】
細胞の同期化
いくつかの実験において、細胞を、以前に記述された(18−19)ところの二重チミジンブロックにより同期させた。簡潔には、細胞を10%FBS含有DMEM中2mMチミジンとともに16時間インキュベートした。過剰のチミジンをハンクス液(HBSS)で洗い落とし、そして細胞を完全培地とともに細胞周期に戻した(release back)。8時間後に、細胞を、10%FBS含有DMEM中2mMチミジンとともに別の16時間2回目処理して、G1/S期の境界で細胞を停止させた。同期させた細胞をその後HBSSで洗浄しかつ細胞周期に戻し、そしてG1/S解放(relase)後の多様な時点で分析のため収集した。細胞周期分析は、下述されるところの蛍光標示式細胞分取(FACS)により行った。いくつかの実験では、CEP−11004を、G1/Sブロックからの解放5時間後(後期S期(late S−phase)若しくは早期G2期(early G2−phase)に対応した)に、同期させた細胞に添加した。
【実施例3】
【0045】
細胞増殖アッセイ
処理後に、細胞を、トリプシン処理およびトリパンブルー(Sigma)での染色後に血球計算板でカウントした。細胞の95%以上がトリパンブルー色素を排除した。細胞増殖はコロニー形成アッセイを使用してもまた測定した。増殖している細胞をトリプシン処理し、そして、多様な濃度のCEP−11004の存在若しくは非存在下で再プレーティングした(100mm皿あたり1000細胞)。8〜14日間のインキュベーション後に
、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定し、そして0.2%クリスタルバイオレット(20%メタノール中)で1〜2分間染色した。細胞を蒸留水で数回洗浄し、そして形成されたコロニー(最低40細胞/コロニーあたり)をカウントした。
【実施例4】
【0046】
イムノブロッティングおよび免疫沈降
タンパク質分析のため、細胞を冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄し、300μlの組織溶解緩衝液(TLB)(20mMトリス塩基、pH7.4、137mM NaCl、2mM EDTA、1%Triton X−100、25mM β−グリセロリン酸、2mMピロリン酸ナトリウム、10%グリセロール、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および1mMベンズアミジン)で溶解し、そして20,000×gで遠心分離してライセートを澄明にした。およそ20μgの全タンパク質をSDS−PAGEにより分離した。タンパク質をPVDFメンブレン(Perkin Elmer Life Sciences;マサチューセッツ州ボストン)に転写し、トリス緩衝生理的食塩水(TBS)(50mMトリス塩基、pH7.4、0.15M NaClおよび0.1%Tween−20)中5%脱脂粉乳で1〜2時間ブロッキングし、そして1%BSA溶液を含有するTBS中で一次抗体とともに1ないし16時間インキュベートした。メンブレンをTBS−Tween溶液で数回洗浄し、そしてHRP結合抗マウス若しくは抗ウサギ抗体(0.1μg/ml)とともにインキュベートした。免疫反応性は高感度ケミルミネッセンス法(ECL:Amersham、英国バッキンガムシャー)により検出した。
【0047】
いくつかの実験において、タンパク質を、細胞ライセートとインキュベートした1μg/mlの一次抗体を用い、4℃で4〜16時間免疫沈降させた。プロテインA若しくはGセファロース(Amersham/Pharmacia、スウェーデン・ウプサラ)を追加の4時間添加し、そして免疫複合体をキナーゼ緩衝液(KB、25mM Hepes、pH7.4、25mM MgCl2および1mM DTT)で2回洗浄した。免疫複合体中のタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、そしてイムノブロッティングにより分析した。
【実施例5】
【0048】
免疫蛍光
6センチメートルプレート中の円形のガラス製カバーガラス上で増殖させた細胞を、実施例4に記述されたとおり過剰のチミジンを使用してG1/S期の境界で同期させた。細胞周期への戻し後の指定された時間に、カバーガラスを4%パラホルムアルデヒドで8分間固定し、そしてPBS中0.1%Triton X−100で2分間浸透化した。細胞染色パターンを、冷メタノールで10分間固定かつ浸透化した細胞で確認した。細胞を、MLK3、α−チューブリン、サイクリンB1、リン酸化型特異的ヒストンH3若しくはp62ヌクレオポリンに対する抗体で染色し、次いでフルオレセイン若しくはテキサスレッド結合二次抗体とともにインキュベートし、そして細胞DNAについて4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、PBS中0.2μg/ml)で対染色した。細胞を、Nikon E800エピ蛍光顕微鏡(Image Systems、メリーランド州コロンビア)を使用して同定し、そしてハママツのCCDカメラで捕捉した。細胞画像を、IPlabソフトウェア(Scanalytics、バージニア州フェアファックス)を使用して処理した。
【実施例6】
【0049】
MLK3キナーゼアッセイ
野性型MLK3若しくは触媒的に不活性のMLK3KR(K144R)を、CEP−11004で若しくは伴わずに処理したトランスフェクトした細胞から免疫沈降させ、そして、免疫複合体を、0.2mMオルトバナジン酸ナトリウムを補充した冷KBで洗浄した。免疫沈降したMLK3を、10μCiのγ−32P ATP、20μMのコールドATPおよび基質として0.5μgのミエリン塩基性タンパク質(MBP)を含有するキナーゼ緩衝液とともに30℃で45分間インキュベートした。反応を2×SDSサンプル緩衝液でクエンチし、SDS−PAGEにより分離し、そしてPVDFメンブレン(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)に転写した。MBPおよびMLK3中への放射活性リン酸の取り込みを、それぞれphosphorimager(Amersham Biosciences/Molecular Dynamics)およびイムノブロッティングにより分析した。
【実施例7】
【0050】
FACS分析。
【0051】
同期させた細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、3mlの冷(−20℃)70%エタノールで固定し、そして4℃で一夜保存した。細胞をその後、0.2Mトリス、pH7.5、20mM EDTA、1mg/ml RNアーゼA(Sigma)に溶解した100μg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma)とともに室温で1時間インキュベートし、そして等容量のPBSで希釈した。DNA含量をフローサイトメトリー(FACScan Analyzer、BD Biosciences)により測定し、そしてSync Wizardモデル、ModFit LTソフトウェア(BD Biosciences)を使用して解析した。G1、SおよびG2/M期の細胞の割合を決定するために、2Nおよび4Nのピークについての設定を、G1/Sで停止した細胞からの各実験内で定義し、そして所定の実験内の全サンプルに適用した。
【実施例8】
【0052】
Cdc2キナーゼ活性
Cdc2を、Cdc2抗体(0.5μg)とともに氷上で2時間インキュベートすることにより、細胞ライセートから免疫沈降させた。ライセートをその後、プロテインG−セファロースとともに、混合を伴い4℃で追加の2時間インキュベートした。免疫複合体を冷キナーゼ緩衝液で洗浄し、そして、10μCiのγ−32P ATP、20μMのコールドATP、および基質としての2.5μgのヒストン(タイプIII−SS、Sigma)を含有するキナーゼ緩衝液とともに30℃で30分間インキュベートした。反応をSDS−PAGEサンプル緩衝液で停止し、そしてタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。ヒストン中への32Pの取り込みを、phosphorimager分析により測定した。
【実施例9】
【0053】
分裂指数アッセイ
カバーガラス上で増殖させた細胞を、実施例4〜5に記述されるとおりG1/S期の境界で同期させた。いくつかの場合には、トランスフェクトされた細胞を同定するために、MLK3をpEGFPベクターと共発現させた。チミジンで誘発したG1/S期ブロックからの解放後5時間に、細胞を、変動する濃度のCEP−11004の存在若しくは非存在下でインキュベートした。解放後変動する時点でカバーガラスを固定し、そして細胞DNAをDAPIで染色した。前期、前中期、中期、後期若しくは終期のGFP陽性の有糸分裂細胞を同定し、カウントし、そして分裂指数を決定するためにカウントした全細胞の一画分として表した。各実験内で、300ないし350細胞を各条件および時点についてカウントした。
【実施例10】
【0054】
MLKタンパク質の阻害は、HeLa細胞で増殖を阻害しかつG2若しくはM期停止を引
き起こす
MLKタンパク質の阻害剤がRasで形質転換したNIH 3T3細胞の増殖を予防したが、しかし正常NIH 3T3細胞に対する影響を有しなかったことが最近報告された(20)。従って、形質転換細胞での細胞周期事象に対するMLK阻害の影響を分析した。MLK阻害剤CEP−11004の添加が形質転換したHeLa細胞の増殖を阻害しうるかどうかを最初に試験した。示されるとおり、HeLa細胞の増殖はCEP−11004により阻害された一方、NIH 3T3細胞の増殖は影響を受けなかった(図1A)。他の形質転換細胞の増殖を、コロニー形成アッセイを使用して検査した。図1Bに示されるとおり、CEP−11004は、A549気道上皮癌細胞のコロニー形成の用量依存性の阻害を引き起こした。コロニー形成の同様の阻害が、CEP−11004で処理したHeLa細胞およびER陰性SUM159乳癌細胞で観察された(データは示されない)。
【0055】
細胞増殖のCEP−11004誘発性の阻害の性質を決定するために、DNA含量のFACS分析を使用して、細胞周期の進行に対するCEP−11004の影響を測定した。示されるとおり、CEP−11004で20時間処理したHeLa若しくはHEK293細胞は、細胞周期のG2若しくはM期での停止を示す4N DNAを蓄積した(図2A〜2B)。対照的に、NIH 3T3細胞若しくは正常の二倍体肺線維芽細胞MRC−5細胞中のDNA含量プロファイルは、CEP−11004の非存在若しくは存在下で同様であった(図2C〜2D)。
【0056】
MLK3がG2期および有糸分裂の間に活性化されることを示す以前のデータ(15)に基づき、同期させたHeLa細胞中での細胞周期の進行に対するCEP−11004の影響を検査した。G1/S期の境界で同期させた細胞を細胞周期に5時間戻して、S期の大部分の完了を可能にした。細胞をCEP−11004で若しくは伴わずに変動する時間処理し、そしてDNA含量をFACSにより測定した。G1/Sブロックからの解放後7と9時間との間に、未処理の細胞は4N DNAを伴う細胞の増大により示されるとおりG2およびM期にある(図3A)。G1/S解放後11時間までに、未処理の細胞は有糸分裂を脱しかつG1期に再進入した(図3A)。対照的に、CEP−11004で処理した細胞は、G1/S期の解放後11および13時間での4N DNAを含有する細胞の持続性の蓄積により明らかなとおり、G2若しくはM期で停止する(図3B)。同調して、G2若しくはM期でのCEP−11004誘発性の停止が、未処理の同期させた細胞に比較して、G1/S期の解放後11および13時間での持続性のサイクリンB1発現(図3C)および上昇したCdc2キナーゼ活性(図3D)により示された。
【実施例11】
【0057】
CEP−11004はMLK3を阻害するが、しかし他の関連するキナーゼを阻害しない
MLKタンパク質(および他の関連するキナーゼでない)の阻害に対するCEP−11004の特異性を検査した。これらの実験はMLK3アイソフォームに焦点を当てた。MLK3は偏在的に発現され、そしてMLKタンパク質の最良のものを特徴付けられる。また、MLK2はキナーゼ触媒ドメインおよび他の領域中でMLK3と70%以上の配列の同一性を共有するとは言え、MLK2発現は脳、骨格筋および精巣に制限される(21)。加えて、MLK1の完全な配列は未だ同定されなければならない。最後に、MLK3は最近、G2/M期の移行に関与することが関係づけられた(15)。
【0058】
CEP−11004がMLK3活性を阻害する能力を最初に試験した。HA標識MLK3野性型をHeLa細胞中で過剰発現させ、そして収集前にCEP−11004で若しくは伴わずに4時間処理した。図4Aに示されるとおり、CEP−11004処理は、未処理の細胞に比較して、発現されるMLK3活性を有意に阻害した。次に、関連する混合系統キナーゼ、二重ロイシンジッパーキナーゼ(DLK)の活性に対するCEP−11004の効果を、トランスフェクトしたCHO細胞で測定した。DLK若しくはMLK3活性の尺度としてJNK MAPキナーゼリン酸化を使用して、CEP−11004はMLK3を阻害したが、しかしDLKで誘発したJNKのリン酸化はしなかった(図4B)。他者(15)と一致して、MLK3が、GI/S期に比較してG2およびM期移行の間により高い活性(約4倍)を有することが示され、そしてこの活性はCEP−11004により阻害された(データは示されない)。
【0059】
MLK3の過剰発現はMEK1によりERKの活性化を誘導することが示されている(13)。従って、MLK3野性型若しくは構成的に活性のMKK1変異体の過剰発現後のERK活性化に対するCEP−11004の効果を検査した。MLK3および活性のMKK1の双方がERK活性を刺激するとは言え、MLK3で誘発されたERK活性化のみがCEP−11004により阻害された(図4C)。最後に、CEP−11004がMLK2およびMLK3タンパク質を阻害する能力を比較した。GFP標識MLK2若しくはHA標識MLK3をHA標識JNK1と24時間共発現させ、そしてその後、収集前にCEP−11004で若しくは伴わずに追加の3時間処理した。MLK3に誘発されるJNK1のリン酸化は100nMのCEP−11004で80%阻害された一方、JNK1のMLK2活性化の有意の阻害は400nM以上のCEP−11004を必要とした(図4DおよびE)。これは、MLK2に比較してMLK3に対しおよそ3倍より高い特異性を有するCEP−11004と一致する(11)。従って、これらのデータは、CEP−11004により標的とされる主要なMLKアイソフォームとしてのMLK3を裏付ける。
【0060】
加えて、われわれは、CEP−11004が他のMLK関連(DLK)若しくはMLKに関連しないタンパク質キナーゼ(MKK1)の活性に影響を及ぼさないことを示す。にもかかわらず、他者は、NIT 3T3細胞のRas誘発性の増殖に対するMLK阻害の効果がp21活性化型キナーゼ1(Pak1)の同時阻害によるかもしれないことを示唆した(20)。Pak1活性は、CEP−11004の存在若しくは非存在下で試験されなかった。本明細書で細胞周期の停止を開始させるのに使用した用量が、MLK阻害剤がPak1活性を阻害するために必要とされる報告されたIC50濃度よりおよそ10倍より少なかったためである(20)。有糸分裂の停止は約100〜200nMの濃度で発生することが企図される(図6A〜6C)。
【0061】
CEP−11004に類似の生物学的特性を有する別のMLK阻害剤、CEP−1347がERK経路を活性化することが報告された(12)。しかしながら、これらの実験は神経細胞中で行われ、そしてCEP−11004が神経細胞以外でERK活性化を引き起こすという証拠は見出されていない。対照的に、示されたとおり、CEP−11004処理は、MLK3に誘発されるERK活性化を阻害し(図4C)、新生物形成細胞中でのERK経路の活性化におけるMLK3の役割と矛盾しない(14)。これは、神経以外の新生物形成細胞の増殖の促進、しかし神経細胞の細胞死におけるMLK3の相反する役割をさらに裏付ける。加えて、これらのデータは、神経細胞中のERK経路の負の調節、しかし神経以外の新生物形成細胞中のERK活性化の正の調節を特徴とする、MLK3の2つの機能を示唆する。
【実施例12】
【0062】
CEP−11004は前中期での有糸分裂の停止を誘発する
CEP−11004が有糸分裂への進行に影響を及ぼしたとは思われなかった(図3A〜3D)ため、CEP−11004で誘発されるM期停止の性質を、CEP−11004の存在若しくは非存在下で処理した同期させた細胞での有糸分裂の多様な段階を検査することにより特徴付けした。カバーガラス上で増殖させたG1/S期細胞を、細胞周期に5時間戻し、400nMのCEP−11004で若しくは伴わずに、G1/Sブロックからの解放後に追加の4若しくは6時間のインキュベーションの間(すなわちそれぞれ9および11時間)処理し、そしてDNAをDAPIで染色した。染色体の形態を蛍光顕微鏡検
査により検査し、そして前期、前中期、中期若しくは後期/終期の細胞の割合を決定した。G1/S後9時間で、CEP−11004で処理した細胞は、未処理の細胞に比較して前中期細胞の蓄積を示し始めた(図5A、左のグラフ)。
【0063】
さらに、中期若しくは後期/終期の細胞はCEP−11004で処理した細胞中で明らかでなかった(図5A、左のグラフ)。CEP−11004で処理した細胞は、後期/終期の細胞の増大した数を示した対照細胞と異なり、前中期で主に蓄積したため、この差違はG1/S解放後11時間でなおより明らかになった(図5A、右のグラフ)。CEP−11004に応答して前中期で蓄積する細胞の数は用量依存性であった。細胞周期に5時間戻し、そしてその後多様な濃度のCEP−11004で追加の8時間(G1/S解放後13時間)処理した、G1/S期で同期させた細胞は、前中期細胞の割合の用量依存性の増大を示した(図5B)。
【実施例13】
【0064】
MLK3の過剰発現は有糸分裂の停止に対するCEP−11004の効果を無効にする
MLKタンパク質の阻害が前中期での有糸分裂の停止を引き起こしたこと、およびMLK3はCEP−11004の主要な標的であったことを示した以前のデータを考え、MLK3の過剰発現がCEP−11004により誘発される有糸分裂の停止を無効にし得るかどうかを試験した。HeLa細胞を、トランスフェクトされた細胞を同定するために、対照ベクター若しくはHA−MLK3の存在下でpEGFPとコトランスフェクトし、そしてその後、過剰のチミジンを使用してG1/Sの境界で同期させた。G1/S解放後5時間に、細胞を多様な濃度のCEP−11004とともに追加の8時間インキュベートした。有糸分裂の進行を、サイクリンB1についてイムノブロットすること、分裂指数を決定すること、およびCdc2キナーゼ活性をアッセイすることにより検査した。サイクリンB1レベルは、100若しくは200nMのCEP−11004で処理した擬似トランスフェクト細胞中で上昇し、これは有糸分裂の停止と矛盾しない(図6A)。対照的に、MLK3でトランスフェクトした細胞は、外因性のMLK3がこれらの濃度のCEP−11004により誘発される有糸分裂の停止を予防する能力と矛盾しない、CEP−11004処理後のより低いサイクリンB1レベルを有した(図6A)。
【0065】
次に、分裂指数を、変動する濃度のCEP−11004で処理した擬似若しくはMLK3でトランスフェクトした細胞でのDAPI染色により測定した。期待されたとおり、擬似トランスフェクトした細胞は、有糸分裂の停止と矛盾しない、CEP−11004処理後のより高レベルの有糸分裂細胞を示した(図6B)。対照的に、MLK3でトランスフェクトした細胞は、CEP−11004処理後に減少した分裂指数を示した(図6B)。最後に、100若しくは200nMのCEP−11004で処理した、擬似若しくはMLK3でトランスフェクトした細胞中のCdc2キナーゼ活性を測定した。サイクリンB1発現に同様に、CEP−11004で処理した擬似トランスフェクトした細胞は、MLK3でトランスフェクトした細胞に比較してより高いCdc2活性を表した(図6C)。これらのデータは、外因性のMLK3が、CEP−11004で誘発した有糸分裂の停止を克服することが可能であることを示唆する。
【実施例14】
【0066】
CEP−11004は早期有糸分裂におけるヒストンH3リン酸化を遅らせる
CEP−11004で誘発される有糸分裂の停止の機構を、有糸分裂特異的なリン酸化事象をモニターすることによりさらに検査した。セリン10でのヒストンH3のリン酸化は有糸分裂の進行のマーカーとして一般に使用される(22−23)。HeLa細胞を、G1/S期のチミジンブロックからの解放後5時間にCEP−11004で若しくは伴わずに処理し、そして追加の4時間インキュベートさせた。細胞をその後固定し、そして有糸分裂細胞を同定するために、サイクリンB1およびリン酸化型ヒストン(phosph
−histone)H3(pH3)の免疫蛍光のため処理した。対照細胞での後期の間に、核エンベロープ崩壊の前の核中でサイクリンB1およびpH3染色が観察された(図7A)。対照的に、CEP−11004で処理した細胞は、これらの細胞がサイクリンB1との強い核反応性を示したにもかかわらず、後期の間の核pH3染色を含有しなかった(図7A)。早期有糸分裂細胞中での阻害されたpH3染色に対するこの影響は、約200nMのCEP−11004用量で観察された(データは示されない)。これらのデータは、MLKタンパク質活性が有糸分裂の間のヒストンH3のリン酸化に直接若しくは間接的に関与していることを示唆する。これは、後期の細胞中での核および中心体へのMLK3のターゲッティングを示唆した、後期細胞中でのMLK3の局在化と矛盾しない(図7B)。
【0067】
核エンベロープ崩壊(NEB)前および後のpH3染色の比較を行った。期待されたとおり、未処理の細胞中では、pH3染色は、NEB前の早期有糸分裂およびNEB後の有糸分裂の後の段階で観察された(図8A〜8B)。核エンベロープの完全性を、p62ヌクレオポリンタンパク質について染色することにより決定した(図8A〜8B)。図7A〜7Bと同様に、NEB前の早期有糸分裂におけるpH3染色は、CEP−11004で処理した細胞中で観察されなかった(図8A)。しかしながら、pH3染色は、未処理およびCEP−11004で処理した細胞の双方の前中期のNEB後に容易に明らかであった(図8B)。一緒に、これらのデータは、MLK活性が、Cdc2/サイクリンB1に依存しない機構による早期有糸分裂の間のヒストンH3のリン酸化に重要であることを示す。
【0068】
CEP−11004は早期有糸分裂中のS10でのヒストンH3のリン酸化を明瞭に阻害したとは言え、MLK3がリン酸化を直接司るのか若しくは間接的に司るのかは明らかでない。ヒストンH3は、PKA、Msk1、ERKおよびp38 MAPキナーゼを包含する多数のキナーゼにより、細胞周期を通じてリン酸化される(27)。これらのキナーゼの全部がヒストンH3のS10をリン酸化し得るとは言え、リン酸化の機能的役割は明確でなく、そして、それが起こる細胞周期の期に依存しうる。免疫蛍光データは、MLK3が有糸分裂細胞の核に局在化することができ(図7B)、そしてMLK3によるヒストンH3の直接リン酸化を支援しうることを示唆する。MLK3が、in vitroでヒストンH3のS10をリン酸化する有糸分裂キナーゼNIMAに関係するという知見(28)は、これと矛盾しない。
【0069】
MLK3がERKおよびp38シグナル伝達経路を活性し得、また、セリン10でのヒストンH3のリン酸化がストレス刺激に応答してERKおよびp38 MAPキナーゼにより媒介されうる(29)としても、これらのキナーゼがNEB前の早期有糸分裂の間のヒストンのリン酸化に寄与しているかどうかは未だ決定されるべきである。これはNEB前の早期有糸分裂細胞の核中の活性のERKの存在と矛盾しない(30−31)。有糸分裂の間のS10でのヒストンH3のリン酸化を調節する他の潜在的な候補のキナーゼはオーロラAおよびBキナーゼであり、オーロラBは、オーロラAが主に中心体に局在化するために最もありそうな生理学的ヒストンH3キナーゼである(32)。にもかかわらず、オーロラBの枯渇は、他の有糸分裂キナーゼの関与を示すヒストンH3のS10リン酸化を排除しない(27)。オーロラキナーゼはリン酸化により調節されるとは言え、MLKタンパク質をオーロラキナーゼの調節と結びつける証拠は存在しない。
【0070】
有糸分裂の進行の間のMLKタンパク質の阻害後に観察される遅延されたヒストンH3リン酸化の意義は知られていない。有糸分裂の間のS10でのヒストンH3のリン酸化の要件は論争中のままである。例えば、S10でのヒストンH3のリン酸化が、テトラヒメナにおいて適正な染色体凝縮および有糸分裂の進行に必要とされることが示唆されている(33−34)とは言え、ヒストンH3のS10のアラニン突然変異を含有する酵母変異
体株ならびに野性型株が増殖する(35)。
【実施例15】
【0071】
CEP−11004は有糸分裂の間に異常な紡錘体極形成を引き起こす
有糸分裂細胞中での紡錘体極の集成に対するCEP−11004の影響を検査した。同期させた細胞を、S期の終了時にCEP−11004で若しくは伴わずに4時間処理し、次いで、微小管のマーカーとしてのα−チューブリンおよび紡錘体極のマーカーとしてのγ−チューブリンについて免疫染色した。示されるとおり、CEP−11004処理は有糸分裂細胞中で微小管の構造の有意の破壊を引き起こした(α−チューブリン、図9A)が、しかし紡錘体極の数に対する影響を有しなかった(γ−チューブリン、図9A)。加えて、CEP−11004におけるDAPI染色により測定されるところの染色体の構造は高度に解体された(図9A)。有糸分裂細胞の60%以上が異常な微小管構造を含有した(図9B)。CEP−11004で4時間処理した間期細胞の検査は、未処理の細胞に比較して、微小管に対する明らかな影響を示さなかった(データは示されない)。従って、CEP−11004で処理した細胞が中期を通って進行することの不能は、微小管の構造の欠陥および異常な紡錘体形成によることがありそうである。
【0072】
MLK3の過剰発現が微小管の不安定性を促進することが最近示唆された(15)とは言え、MLK3活性の阻害が有糸分裂細胞中での微小管の構造に対し何の効果を有するかは明らかでない。CEP−11004への数時間以内の曝露の有糸分裂の微小管の構造に対する強い効果が示されているが、しかしながら、何のMLKに調節される微小管関連のタンパク質が影響を受けているのかは不明である。異所性のMLK3の発現が、JNK若しくはp38 MAPキナーゼ活性化を伴わない機構により、HEK293細胞中で微小管を不安定化することが示された(15)。しかしながら、この観察結果がMLK3に独特であるのか若しくは過剰発現のアーチファクトであるのかは明らかでない。MLK2および活性のJNKもまた、微小管と共局在しかつモータータンパク質と相互作用することが示された(24)。これらの相互作用が細胞周期依存性の様式で起こっていたかどうかは決定されなかった。アポトーシス刺激に対する細胞応答を媒介しうるゴルジ複合体タンパク質、ゴルジン−160の直接のMLK3リン酸化の新規の役割が記述されている(25)。従って、MLK3は、下流のMAPキナーゼ活性化に依存しない細胞周期の間のMLK3の機能を説明するのに役立ちうる、付加的な基質を有しうる。
【0073】
CEP−11004によるMLK3阻害が、有糸分裂の進行に必要な微小管事象を破壊することにより細胞増殖を予防することが企図される。これは、最初、RNA干渉(RNAi)を使用するMLK3のダウンレギュレーションが細胞増殖若しくはフローサイトメトリーによるDNA含量に影響しないことを示す未公表データを引用した以前の研究(15)とよい対照をなすように思われうる。しかしながら、2件の研究を直接比較することは困難であり、また、いくつかの理由が、そのデータ(15)と本明細書のデータの間の矛盾を説明し得る。第一に、以前の研究(15)では、MLK3は、HeLa細胞と比較して、コルセミド処理に応答して、機能的G2期チェックポイントを報告によれば有するヒト骨肉腫SAOS2細胞株においてダウンレギュレートされた(26)。第二に、RNAi処理はMLK3を完全に枯渇させるのに十分であることはありそうもなく、そして残存するMLK3はこれらの細胞中で有糸分裂の進行を促進するのに十分でありうる。第三に、MLK3を枯渇させたSAOS2細胞は、有糸分裂の進行の間にMLK3の代わりになるとみられる他の補償機構を可能にし得たRNAiとの2〜3日間のインキュベーションにより生成された。
【0074】
以下の参考文献を本明細書で引用した:
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
本明細で挙げられるいかなる特許若しくは刊行物も、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示す。これらの特許および刊行物は、各個々の刊行物がとりわけかつ個々に引用することにより組み込まれた場合と同一の程度まで、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0078】
当業者は、本発明は目的を実施しかつ挙げられた最終目標および利点ならびにその中に固有のものに十分に適合されることを容易に認識するであろう。多様な改変および変形が、本発明の技術思想若しくは範囲から離れることなく本発明の実施においてなされ得ることが当業者に明らかであろう。請求の範囲により定義されるところの本発明の技術思想内に包含されるその中の変更および他の用途が、当業者に思い付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の上で列挙される特徴、利点および目的、ならびに明らかになるであろう他者が獲得されかつ詳細に理解され得る内容、より具体的には上で簡潔に要約された本発明の記述が、添付の図面で具体的に説明されるそのある態様を参照することにより有されうる。
これらの図面は本明細の一部を形成する。しかしながら、添付の図面は本発明の好ましい態様を具体的に説明し、そして従ってそれらの範囲の制限とみなされるべきでないことに注意すべきである。
【図1A−1B】MLK活性の阻害が細胞増殖を阻害することを示す。図1Aは、72時間までのCEP−11004(500nM)の非存在(黒四角若しくは丸)または存在(白四角若しくは丸)下で増殖させたHeLa若しくはNIH 3T3細胞を示す。細胞の数を時間0および各条件で24、48若しくは72時間後にカウントした。図1Bは、変動する用量のCEP−11004の存在下でプレーティングした、トリプシン処理したA549細胞(処置あたり1000)を示す。14日後に、生じるコロニーをクリスタルバイオレットで染色しかつカウントした。同様の結果が、HeLaおよびSUM152乳癌細胞で得られた。
【図2A−2D】CEP−11004が形質転換細胞でG2/M期停止を引き起こすことを示す。HeLa(図2A)、HEK293(図2B)、NIH3T3(図2C)若しくはMRC5(図2D)細胞をCEP−11004(500nM)の非存在(対照)若しくは存在下で15時間処理し、そして細胞中の2N若しくは4N DNA含量を、ヨウ化プロピジウム染色に続くFACS分析により測定した。
【図3A−3D】後期S期/早期G2期の間の同期させた細胞のCEP−11004処理がG2/M期停止を引き起こすことを示す。HeLa細胞を、二重チミジンブロックによりG1/S期の境界で同期させ、細胞周期に戻し、そしてCEP−11004(500nM)の非存在(図3A)若しくは存在(図3B)下で解放後5時間処理した。細胞を、G1/S解放後の示される多様な時点でトリプシン処理により収集し、DNAをヨウ化プロピジウムで染色し、そしてG1、S若しくはG2/M期の細胞の割合をFACSにより測定した。図3Cにおいて、HeLa細胞を図3Aでのとおり同期させ、細胞周期に戻し、そしてCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で処理した。多様な時点で収集したライセートを、サイクリンB1(上図)若しくはタンパク質負荷対照としての全MKK2(下図)についてイムノブロットした。図3Dにおいて、同期させた細胞中のヒストンキナーゼ活性を、Cdc2の免疫沈降後の未処理(黒丸)若しくはCEP−11004処理(白丸)細胞中で測定した。データは3回の独立した実験からの平均および標準誤差を示す。
【図4A−4E】CEP−11004はMLK3を標的とするがしかしDLK若しくはMKK1活性を標的としないことを示す。図4Aにおいて、HeLa細胞を、HA標識MLK4の野性型(WT)若しくは触媒的に不活性のMLK3(KR)変異体でトランスフェクトした。MLK3野性型でトランスフェクトした細胞を、CEP−11004(500nM)とともに若しくは伴わずに収集前4時間インキュベートした。野性型および不活性のMLK3をMLK3抗体で免疫沈降させ、そしてin vitroキナーゼアッセイの基質としてのMBPとともにインキュベートした。該グラフは、各条件下でのMBP中へのリン酸取込みの相対量を示し、また、イムノブロットは免疫沈降物中のMLK3タンパク質の量を示す。図4Bにおいて、HeLa細胞を、HA標識JNK1およびMLK3野性型若しくはFlag標識DLKでトランスフェクトし、そしてその後、CEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で収集前4時間処理した。活性のJNK(pJNK)、HA−JNK1、Flag−DLK若しくはHA−MLK3のイムノブロットをそれぞれ上から下の図に示す。図4Cにおいて、HeLa細胞を、野性型(WT)MLK3、不活性(KR)MLK3、若しくは構成的に活性のMKK1変異体(CA)でトランスフェクトし、そしてその後CEP−11004(500nM)で若しくは伴わずに処理した。活性のERKの相対レベルを、リン酸化型特異的ERK1/2(ppERK)抗体でイムノブロットすることにより測定した(上図)。α−チューブリンについてイムノブロットすることによりタンパク質負荷量をモニターした(下図)。図4Dにおいて、HeLa細胞を、HA−JNK1およびGFP標識MLK2若しくはHA−MLK3でコトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をその後、多様な濃度のCEP−11004で1時間処理し、そして、リン酸化型特異的JNK1/2抗体(pJNK、上図)でイムノブロットすることによりJNK活性を測定した。HA−JNK1、GFP−MLK2若しくはHA−MLK3の発現を下図に示す。HA−MLK3ブロット中の上および下矢印はそれぞれMLK3のリン酸化および脱リン酸化された形態を示す。図4Eは、MLK2(黒四角)若しくはMLK3(白四角)を発現する細胞中でのデンシトメトリーによる全JNKに対するpJNKの比を測定することにより定量されるところの相対JNK活性のグラフである。
【図5A−5B】CEP−11004が前中期での細胞周期の停止を引き起こすことを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を、過剰のチミジンでG1/S境界で同期させ、そして細胞周期に戻した。解放5時間後に、細胞をCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で追加の4若しくは6時間(G1/S解放後9若しくは11時間の累積時間)処理した。図5Aにおいて、前期(P)、前中期(PM)、中期(M期)若しくは後期/終期(AT)の細胞の割合を、対照(白棒)若しくはCEP−11004処理(黒棒)細胞中の染色体のDAPI染色により決定した。左および右のグラフは、G1/S期の解放後それぞれ9および11時間の有糸分裂細胞の割合を表す。データは3回の独立した実験からの平均および標準誤差を表す。図5Bにおいて、前中期の細胞の数を、増大する濃度のCEP−11004(G1/S期の解放後5時間に添加した)での処理後のG1/S期の解放後11時間にカウントした。300〜350細胞を各濃度でカウントした。
【図6A−6C】外因性のMLK3がCEP−11004で誘発された有糸分裂停止を阻害することを示す。HeLa細胞を、HA標識MLK3野性型の存在若しくは非存在(擬似)下でpEGFPとコトランスフェクトし、そしてその後二重チミジンブロックにより同期させた。G1/S解放後5時間に、細胞を多様な濃度のCEP−11004(75、100、200nM)で8時間処理し、そしてその後収集した(G1/S解放後13時間)。図6Aは、サイクリンB1(上図)、MLK3(中図)およびタンパク質負荷対照としてのβ−アクチン(下図)のイムノブロットを示す。図6Bにおいて、MLK3を伴い若しくは伴わずにpEGFPでトランスフェクトした、同期させたHeLa細胞をカバーガラス上で増殖させ、多様な濃度のCEP−11004で若しくは伴わずに処理し、G1/Sからの解放後13時間に固定し、そしてDAPIで染色した。有糸分裂細胞(前期、前中期、中期、および後期/終期の細胞)の数を、GFP陽性細胞(黒棒)若しくはMLK3を共発現するGFP陽性細胞(白棒)中でのDAPI染色により測定した。図6Cは、pEGFP単独若しくはpEGFPおよびMLK3でトランスフェクトした細胞中でのG1/S解放13時間後に収集したライセート中の相対Cdc2キナーゼ活性を示す。ヒストン基質中への放射標識リン酸の取込み(上図)および免疫沈降物中のCdc2についてのイムノブロット(下図)を示す。IgG(L)は抗体L鎖を示す。
【図7A−7B】CEP−11004が早期後期の核ヒストンH3リン酸化を遅らせることを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を過剰のチミジンでG1/Sで同期させ、そして細胞周期に戻した。解放後5時間に、細胞をCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下でインキュベートした。追加の4時間のインキュベーション後(G1/S解放9時間後)に細胞を固定し、そして上および中央の図でそれぞれサイクリンB1若しくはリン酸化されたヒストンH3(pH3)について共免疫染色した(図7A)。MLK3およびサイクリンB1の発現をそれぞれ上および中央の図に示す(図7B)。有糸分裂細胞(矢印により示される)を、核サイクリンB1および/若しくはpH3染色の存在により測定した。図7A〜7Bの細胞はDAPIで対染色した(下図)。
【図8A−8B】CEP−11004が核エンベロープ崩壊前のヒストンH3リン酸化を阻害することを示す。HeLa細胞を、図5A−5Bで記述されるとおり免疫染色のため調製した。細胞をpH3(上図)および核エンベロープのマーカーとしてのヌクレオポリン(p62、中図)について染色した。CEP−11004の非存在若しくは存在下で処理した後期(核エンベロープ崩壊前)(図8A)若しくは前中期(核エンベロープ崩壊後)(図8B)の細胞を同定した。矢印により示されるところの有糸分裂細胞は、凝縮した染色体のDAPI染色(下図)により同定された。隣接する間期細胞を比較のため示す。
【図9A−9B】CEP−11004が異常な有糸分裂紡錘体を誘導することを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を、記述された図5のとおりCEP−11004の非存在若しくは存在下で処理した。図9Aにおいて、細胞をG1/Sブロックからの解放後9時間に収集し、そして有糸分裂紡錘体の構成を、微小管および紡錘体極を同定するためα若しくはγ−チューブリンについての免疫染色により評価した。細胞を、有糸分裂染色体を同定するためDAPIで対染色した。図9Bにおいて、対照若しくはCEP−11004処理した細胞中の異常な紡錘体を伴う有糸分裂細胞の割合を3回の別個の実験で定量した。最低300の有糸分裂細胞を各実験において各条件下でカウントした。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の補助金の説明
本発明は、米国国防総省から助成金DAMD17−01−1−0548により得られた補助金を使用して部分的に実現された。結果、連邦政府は本発明においてある種の権利を有する。
関連出願の交差引用
本非仮出願は、2004年3月16日出願の米国仮出願第60/553,497号明細書(現在放棄)の利益を主張する。
発明の分野
本発明は全般として医学および細胞生物学の分野に関する。とりわけ、本発明は、癌細胞の増殖の予防方法および癌治療の間の抗癌化合物の毒性の低減方法に関する。より具体的には、本発明は、癌細胞の増殖を予防するための多系統キナーゼ(multi−lineage kinase)タンパク質の活性の阻害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記述
混合系統キナーゼ(mixed−lineage kinase)(MLK)ファミリーに属するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼは、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの活性を制御し、また、組織の発達およびアポトーシス応答の調節に主に関与している(1)。MLKファミリーは、二重(dual)ロイシンジッパーをもつキナーゼ(DLK)であるMLK1〜4、およびロイシンジッパーキナーゼ(LZK)を包含する(1−2)。MLKタンパク質はそれぞれ、1個のSrc相同性3(Src homology 3)(SH3)ドメイン、1個の触媒ドメイン、2個のロイシンジッパー(LeuZip)モチーフ、およびCdc42/Rac相互作用結合(CRIB)モチーフを包含する、タンパク質相互作用およびシグナル伝達に重要である高度に保存された構造的モチーフを含有する(1)。MLK1〜4サブファミリーの調節および機能は、脳、骨格筋および精巣に局在するMLK2、ならびに偏在的に発現されるMLK3について特徴づけられている(1)。現在、唯一の部分的配列情報はMLK1について既知であり、そしてMLK4の生理学的機能は定義されていない。
【0003】
MLKタンパク質は、CRIBモチーフと相互作用することにより原形質膜に細胞質のMLKタンパク質を動員するCdc42およびRac1を包含する上流のGタンパク質により活性化される(3)。MLKタンパク質活性は、SH3ドメインと、CRIBドメインとロイシンジッパー領域の間の単一のプロリン残基との間の分子内相互作用を伴う自己阻害によってもまた調節されうる(4)。最近、MLK3の安定性が、MLK3が熱ショックタンパク質90(HSP90)と相互作用する能力に結びつけられ、最近のデータは、HSF90のゲルダナマイシン阻害が低下されたMLK3の安定性および発現をもたらすことを示唆している(5)。
【0004】
神経細胞中でのストレスで活性化されるタンパク質キナーゼおよびアポトーシス経路の活性化におけるMLKタンパク質の機能的役割は十分に特徴づけられている(6−8)。MLK3は、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)キナーゼ、MKK4およびMKK7を直接リン酸化かつ活性化することによる、JNK MAPキナーゼの強力な活性化因子である(9−10)。MLK3はまた、主たるp38 MAPキナーゼ活性化因子であるMKK3およびMKK6の直接リン酸化により、p38 MAPキナーゼも活性化するとみられる(10)。MLKタンパク質は、MLK誘発性のJNK活性化、チトクロームc放出、およびアポトーシス経路のカスパーゼ活性化を伴う機構により、パーキンソン病、
ハンチントン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の進行において決定的な役割を演じていると提案された(6,8)。従って、CEP−1347(KT7515)およびCEP−11004(KT−8138)を包含するインドールカルバゾールファミリーに属するMLK活性の数種の小分子阻害剤が、臨床試験で試験されており、そして、未熟な神経細胞の死の予防において有益と判明するかもしれない(6−8、11−12)。
【0005】
非神経細胞において、MLKタンパク質はまた細胞増殖の促進においても機能しうる。例えば、MLK3の過剰発現は、MEK1およびERK活性化を伴う機構により、軟寒天上でのNIH 3T3細胞の形質転換および増殖を誘導することが報告された(13)。同様に、成長因子は、腫瘍細胞の増殖においてB−RafおよびERK経路を活性化するのにMLK3を利用するとみられる(14)。MLK3活性は、JNK非依存性である機構により有糸分裂の間に中心体の構成および微小管の安定性に影響を及ぼすことにより、細胞増殖を調節しうる(15)。付加的な証拠は、MLK3が、活性化されたRac1変異体を発現する細胞中の形態学的変化を媒介することにより細胞の形質転換を促進しうることを示唆している(16)。最近、MLK様タンパク質MLTKの過剰発現が、ヌードマウスモデルで細胞の形質転換を誘発するのに十分であることが示された(17)。また、最近の報告は、MLK3が乳癌細胞株中でアップレギュレートされていることを示す(5)。従って、十分な証拠が、MLKタンパク質を細胞増殖の促進と結びつけている。
【0006】
形質転換細胞により引き起こされる病態生理学的状態(state)若しくは状態(condition)を処置するための、形質転換細胞の増殖の調節方法に対する、当該技術分野における必要性が存在する。従来技術は、癌細胞の増殖の阻害方法の欠如において不完全である。とりわけ、従来技術は、癌細胞増殖を停止させるためのMLKタンパク質の阻害方法を欠く。本発明は、当該技術分野におけるこの長年の必要性および欲求を成就する。
【発明の開示】
【0007】
[発明の要約]
本発明は新生物形成細胞の増殖の阻害方法に関する。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させることを含んでなる。MLK活性の阻害は、それにより新生物形成細胞の増殖を阻害する。
【0008】
本発明は、新生物形成細胞の増殖の関係する阻害方法に向けられる。新生物形成細胞を、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と接触させる。混合系統キナーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有し、ここでMLK活性の阻害は新生物の増殖を阻害する。
【0009】
本発明はまた、被験体における癌の処置方法にも向けられる。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること、および阻害剤の結合に際してMLK若しくはMLKポリペプチドの活性を阻害して癌細胞の増殖を停止させることを含んでなる。癌細胞の増殖の停止が癌を処置する。該方法は、個体に抗癌剤を投与するさらなる一段階を含みうる。
【0010】
本発明は、癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の関係する低減方法に向けられる。該方法は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に共投与することを含んでなる。阻害剤とともに投与される抗癌剤の投薬量は、該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満である。個体に対する癌治療の毒性がそれにより低減される。
【0011】
本発明は、混合系統キナーゼ(MLK)活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止
させる化合物のスクリーニング方法にさらに向けられる。MLKタンパク質若しくはそのポリペプチドまたはMLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを、化合物の存在若しくは非存在下で測定する。化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較した、化合物の存在下でのMLK活性のレベルの減少は、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示す。活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させる。阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と、阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を比較する。阻害性化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての阻害性化合物の存在下での細胞増殖の減少は、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す。
【0012】
本発明は、本明細書に記述されるスクリーニング方法により同定される化合物にさらになお向けられる。これらの化合物は、混合系統キナーゼ若しくはそのポリペプチドの活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止させる。これらの化合物は、本発明に記述される新生物形成細胞の細胞増殖の阻害方法、癌の処置方法、若しくは抗癌剤の毒性の低減方法のいずれでも使用しうる。
【0013】
本発明のさらなる態様は、癌細胞を包含する新生物形成細胞の増殖の阻害方法、癌の処置、ならびに/若しくは癌の処置、ならびにそれのための医薬品および製薬学的組成物の製造における、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物の使用に向けられる。
【0014】
他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、開示の目的上示される本発明の現在好ましい態様の以下の記述から明らかであろう。
[発明の詳細な記述]
本発明の一態様において、混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させてそれにより新生物形成細胞の増殖を阻害することを含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法が提供される。本態様の全局面において、新生物形成細胞は癌を含みうる。癌の代表例は、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有するいずれかの癌である。本態様の全局面において、化合物はインドロカルバゾール分子でありうる。代表例はCEP−11004若しくはCEP−1347である。
【0015】
一局面において、混合系統キナーゼは配列番号3に示される配列を有するMLK1ポリペプチドでありうる。別の局面において、混合系統キナーゼは配列番号4に示される配列を有するMLK2タンパク質でありうる。なお別の局面において、混合系統キナーゼは配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有するMLK3タンパク質でありうる。
【0016】
関連する一態様において、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有する混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させることを含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法が提供され、ここでMLK活性の阻害が新生物の増殖を阻害する。本態様の全局面において、新生物形成細胞は上述されたところの癌を含みうる。加えて、全局面において、阻害剤は上述されたとおりである。
【0017】
本発明の別の態様において、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること;癌細胞の増殖が停止されるような前記阻害剤の結合に際してMLK若しくはMLKポリペプチドの活性を阻害してそれにより被験体中の癌を処置することを含んでなる、被験体中の癌の処置方法が提供される。
【0018】
本態様に加えて、該方法は被験体に抗癌剤を投与することを含みうる。本態様の局面において、抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。本態様の別の局面において、抗癌剤の投薬量は、該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する該抗癌剤の毒性を低減する。抗癌剤の例は、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキン、およびシクロホスファミドである。加えて、全局面において、癌の型、MLK阻害剤、ならびにMLKタンパク質およびそのポリペプチドは上述されたとおりである。
【0019】
関連する一態様において、本発明は、混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に投与することを含んでなり、阻害剤と共に投与される抗癌剤の投薬量は該抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する癌治療の毒性を低減する、癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の低減方法を提供する。本態様の局面において、抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。本態様の全局面において、MLK阻害剤、MLKタンパク質およびポリペプチド、抗癌剤ならびに癌の型は上述されたとおりである。
【0020】
本発明のなお別の態様において、a)化合物の存在若しくは非存在下で、混合系統キナーゼ(MLK)タンパク質若しくはそのポリペプチド、または前記MLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを測定すること;b)化合物の存在下でのMLK活性のレベルを化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較することであって、化合物の存在下でのMLK活性の減少は、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示し;c)活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させること;およびd)阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を、阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と比較することであって、該化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての該化合物の存在下での細胞増殖の減少が、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す、を含んでなる、MLK活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止する化合物のスクリーニング方法が提供される。
【0021】
本態様の全局面において、混合系統キナーゼはMLK2タンパク質若しくはMLK3タンパク質若しくはMLK1ポリペプチド、またはMLK活性を有するポリペプチドフラグメントである。MLK1ポリペプチドは配列番号3に示される配列を有しうる。MLK2ポリペプチドは配列番号4に示される配列を有しうる。MLK3ポリペプチドは配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有しうる。MLK活性を有するMLKポリペプチドフラグメントは、MLK2若しくはMLK3タンパク質またはMLK1ポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸を含みうる。全局面において、新生物形成細胞および癌の型は上述されたとおりである。
【0022】
関連する一態様において、混合系統キナーゼ活性および新生物形成細胞の細胞増殖の阻害剤のスクリーニング方法により同定される化合物が提供される。
【0023】
以下の略語を本明細書で使用する。混合系統キナーゼ、MLK;マイトジェン活性化タンパク質、MAP;細胞外シグナル制御キナーゼ、ERK;c−Jun NH2末端キナーゼ、JNK;二重ロイシンジッパーをもつキナーゼ、DLK;Cdc42/Rac相互作用結合、CRIB;CEP−11004、[3,9−ビス[(イソプロピルチオ)メチル]−(8R*,9S*,11S*)−(−)−9−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−8−メチル−2,3,9,10−テトラヒドロ−8,11−エポキシ−1H,8H,11H−2,7b,11a−トリアザジベンゾ(a,g)シクロオクタ(cde)トリンデン−1−オン];CEP−1347 [3,9−ビス[(エチルチオ)メチル]−(8R*,9S*,11S*)−(−)−9−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−8−メチル−2,3,9,10−テトラヒドロ−8,11−エポキシ−1H,8H,11H−2,7b,11a−トリアザジベンゾ(a,g)シクロオクタ(cde)トリンデン−1−オン]。
【0024】
本明細書で使用されるところの「a」若しくは「an」という用語は1個若しくはそれ以上を意味しうる。「含んでなる」という語とともに使用される場合に請求の範囲(1個若しくはそれ以上)にて本明細書で使用されるところの「a」若しくは「an」という語は、1個若しくは1個以上を意味しうる。本明細書で使用されるところの「別の」は、少なくとも第二のもの若しくはそれ以上を意味しうる。
【0025】
本明細書で使用されるところの「接触させること」という用語は、記述されるところのMLKタンパク質またはそのポリペプチド若しくはフラグメント、あるいはそれを含んでなる細胞との接触に阻害剤をもたらすいかなる適する方法も指す。in vitro若しくはex vivoで、これは、MLKタンパク質またはそのポリペプチド若しくはフラグメントあるいはそれを含んでなる細胞を、適する媒体中で阻害剤に曝露することにより達成される。in vivoでの応用のためには、いずれかの既知の投与方法が、本明細書に記述されるとおり適する。
【0026】
本明細書で使用されるところの「新生物」という用語は、とりわけ異常な細胞増殖を特徴とする組織若しくは細胞の塊を指す。異常な細胞増殖は、正常組織若しくは細胞の増殖を越えかつそれと協調せずそして該変化を惹起した刺激が停止するか若しくは除去された後に同一の過剰な様式で持続する、これらの組織若しくは細胞の増殖をもたらす。腫瘍組織若しくは細胞は、通常、良性若しくは悪性のいずれかであり得る組織若しくは細胞の塊をもたらす、正常組織若しくは細胞に関しての構造の構成および協調の欠如を示す。当業者に明らかであろうとおり、「癌」という用語は悪性新生物を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「形質転換された」という用語若しくは「形質転換細胞」という句は、腫瘍性増殖を表す細胞を指す。
【0028】
本明細書で使用されるところの「処置すること」という用語、または「癌を処置すること」若しくは「新生物を処置すること」という句は、限定されるものでないが、新生物若しくは癌の増殖を停止させること、新生物若しくは癌を殺すこと、または新生物若しくは癌の大きさを縮小させることを挙げることができる。増殖を停止させることは、腫瘍若しくは癌細胞の大きさまたは数若しくは大きさのいかなる増大も停止させること、あるいは新生物若しくは癌細胞の分裂を停止させることを指す。大きさを縮小させることは、新生物若しくは癌の大きさまたは腫瘍若しくは癌細胞の数若しくは大きさを低下させることを指す。
【0029】
本明細書で使用されるところの「被験体」という用語は処置のいかなる標的も指す。
【0030】
本明細書で使用されるところの「MLK阻害剤」という用語は、限定されるものでないがMLK1、MLK2および/若しくはMLK3ポリペプチドを挙げることができる混合系統キナーゼ(MLK)ポリペプチドの活性を遮断、停止、阻害および/若しくは抑制する天然、半合成若しくは合成起源の分子的実体を意味している。
【0031】
本明細書で使用されるところの「MLKポリペプチド」という用語は「MLKタンパク
質」と互換性に使用される。本明細書に記述される実験は、以下の理由からMLK3アイソフォームに焦点をあてた。第一に、MLK3は偏在的に発現され、そしてMLKタンパク質の最良に特徴づけられたものである。第二に、MLK2はキナーゼ触媒ドメインおよび他の領域においてMLK3と70%以上の配列の同一性を共有するとは言え、MLK2ポリペプチドの発現は脳および筋組織に制限されている。第三に、MLK1の完全な配列は未だ同定されなければならない。しかしながら、ヒトMLK3(配列番号1)ポリペプチドの阻害は非制限的例示の一態様であること、ならびに、マウス(配列番号2)のような多様な哺乳動物でのMLK3ポリペプチド、ならびに/若しくはヒトMLK2ポリペプチド(配列番号4)および/若しくはヒトMLK1(配列番号3)ポリペプチドの阻害は、本発明の技術思想および範囲内とされていることが企図されている。
【0032】
本発明は、MLKタンパク質若しくはポリペプチドが、腫瘍性増殖を表す形質転換細胞中での有糸分裂の間の微小管形成の重要な調節物質としてはたらくことを開示する。その後、MLKタンパク質若しくはポリペプチドの阻害は、中期から後期への移行に必要な有糸分裂紡錘体を適正に形成することの不能により、前中期様停止で有糸分裂の進行を阻害する。MLKタンパク質の阻害は、形質転換細胞の有糸分裂移行および細胞増殖を優先的に阻害しうるが、しかし正常細胞ではしない。形質転換細胞での細胞周期の調節の固有の異常は、これらの細胞を、MLK阻害剤に応答しての細胞周期停止およびアポトーシスをうけるようにより感受性にしうる。従って、MLKタンパク質若しくはポリペプチドは、正常細胞の機能に影響を及ぼすことなく、癌細胞増殖の処置の独特の標的としてはたらく。
【0033】
新生物形成細胞増殖が、正常の形質転換されていない細胞の機能に影響を及ぼすことなく停止(arrest)、停止(stop)、遮断されるか、若しくは起こることを停止するような、限定されるものでないが癌を挙げることができる新生物を処置するための独特の標的としてMLKポリペプチドを利用する方法が、本明細書で提供される。従って、本発明はMLKタンパク質の特定のポリペプチド配列を結合しかつ癌細胞増殖に影響を及ぼすその活性を阻害若しくは妨害するMLK阻害剤に引き寄せられる。MLK阻害剤は、MLKポリペプチド、すなわち限定されるものでないが配列番号1、2および/若しくは4のような完全長のポリペプチド、または配列番号3のようなそのペプチドフラグメントの活性を遮断、停止、阻害および/若しくは抑制しうる。ポリペプチドフラグメントは、配列番号3のMLK1ポリペプチド、配列番号4のMLK2ポリペプチド、または配列番号1若しくは2のMLK3ポリペプチドを包含するMLKポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸もまた含みうる。
【0034】
MLK阻害剤は、インドロカルバゾール化合物またはその誘導体若しくはアナログ、あるいは、キナーゼ活性のようなMLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を妨害するのに有効な他の分子でありうる。代表的阻害剤はCEP−11004若しくはCEP−1347である。CEP−11004がMLK3に選択的に結合することが企図される。潜在的化合物を、MLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を阻害しかつ形質転換細胞の細胞増殖を阻害するそれらの能力についてスクリーニングしうることもまた企図される。例えば、活性化されたMLK活性を有する癌細胞培養物を潜在的MLK阻害剤と接触させる。対照に比較しての細胞増殖の減少は、トリパンブルー排除若しくはコロニー形成アッセイのような標準的アッセイにより測定しうる。MLKタンパク質若しくはポリペプチドの活性を阻害しかつ細胞増殖を阻害するのに有効な化合物を、DNA含量のFACS分析によりさらにスクリーニングして、細胞増殖の低下の性質を特徴付けしうる。
【0035】
あるいは、MLKの潜在的阻害剤は、最初に、MLK関連の活性の既知の基質の存在下で、本明細書に記述される1種若しくはそれ以上のMLKタンパク質若しくはポリペプチ
ドと潜在的阻害剤を接触させることにより、スクリーニングしうる。例えば、MLK関連の活性を、ATP、およびMLK活性を介してリン酸化される基質の存在下、ならびに潜在的MLK阻害剤の存在若しくは非存在下でアッセイしうる。潜在的阻害剤の非存在下での活性に比較しての潜在的阻害剤の存在下でのMLK活性の低下は、それがMLK活性を阻害する能力を有することを示す。こうした酵素アッセイは当該技術分野で既知かつ標準的である。MLKポリペプチドはMLK1〜4のいずれでもありうるか、若しくは記述されるところのそのフラグメントでありうるが、但し、該ポリペプチドフラグメントはMLK1〜4ポリペプチドに関連した最低1種の活性を保持する。その後、MLK関連の活性のいずれかの潜在的阻害剤を、記述されるところの細胞増殖アッセイで使用しうる。
【0036】
癌細胞の細胞増殖の潜在的阻害剤は、MLKタンパク質の活性を阻害若しくは妨害することが既知の天然、半合成若しくは合成化合物でありうるか、または、化学物質ライブラリーからスクリーニングされた化合物でありうるか、あるいは、既知の阻害剤に類似の構造を有する合成の誘導体若しくはアナログ化合物でありうる。本明細書に記述される方法により同定されるMLKの阻害剤は、正常細胞の増殖に影響を及ぼすことなく癌細胞の増殖を阻害し得る。こうした阻害剤は、新生物形成細胞の増殖を阻害するため、癌を処置するため、若しくは正常細胞に対する抗癌剤の毒性を低減させるために使用しうる。
【0037】
MLK阻害剤は、形質転換細胞、例えば、限定されるものでないが癌を挙げることができる新生物の存在により特徴づけられる病態生理学的状態を有するいかなる被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトも処置するのに使用しうる。例えば、癌は、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有する別の癌でありうる。被験体へのMLK阻害剤の投与は、正常細胞の増殖に影響を及ぼすことなく癌細胞の増殖停止をもたらす。こうして、細胞増殖は阻害され、そして、癌を殺すことまでおよびそれを包含する治療効果が達成され、それにより癌を処置する。本発明のMLK阻害剤を、非悪性の腫瘍性疾患および障害の増殖を阻害するのに使用しうることが企図されている。
【0038】
抗癌剤はMLK阻害剤と同時に若しくは連続して投与しうる。MLK阻害剤との共投与の効果は、癌若しくは癌細胞に対し少なくとも最小限の薬理学的若しくは治療効果を有することが既知である通常必要とされる抗癌剤の投薬量、例えば、癌細胞を排除するのに必要とされる投薬量を低下させることである。付随して、正常細胞、組織および器官に対する抗癌剤の毒性が、癌細胞に対する該薬物のいかなる細胞傷害性、細胞分裂阻害性、アポトーシス性または他の殺す若しくは阻害性の治療効果も低減する、やわらげる、除外する若しくは別の方法で妨害することなく、低下される。
【0039】
MLK阻害剤および抗癌剤は、当該技術分野で標準的ないずれの方法によっても、例えば、皮下で、静脈内に、非経口で、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、局所に、腸に、直腸に、鼻に、頬側に、膣に、または吸入スプレーにより、薬物ポンプにより、あるいは経皮貼付剤若しくは埋植物内に含有されて、全身に若しくは局所にのいずれかで独立に投与し得る。MLK阻害剤の投薬製剤は、投与方法に適する慣習的な非毒性の生理学的若しくは製薬学的に許容できる担体若しくはベヒクルを含みうる。
【0040】
MLK阻害剤および抗癌剤若しくはそれらの製薬学的組成物は、治療効果を達成、維持若しくは改善するために独立に1回若しくはそれ以上投与しうる。投薬量、またはMLK阻害剤および抗癌剤のいずれか若しくは双方の適する投薬量が単一の投与される用量を含んでなるか若しくは複数の投与される用量を含んでなるかを決定することは、当業者の熟練内に十分にある。適切な投薬量は、被験体の健康状態、癌の進行若しくは寛解、投与経路および使用される製剤に依存する。
【0041】
以下の実施例は、本発明の多様な態様を具体的に説明する目的上示され、そして、本発明をいかなる様式でも制限することを意味していない。
【実施例1】
【0042】
細胞培養および試薬
HeLa、NIH 3T3、HEK293、A549若しくはMRC−5細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)ならびにペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したDMEM中で増殖させた。エストロゲン受容体(ER)陰性の乳癌細胞SUM−159はミシガン大学ヒト乳癌細胞株(SUM株)から得、そしてDMEM+10% FBS中で増殖させた。いくつかの実験において、細胞を、pEGFP(BD Biosciences/Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、ヘマグルチニン(HA)標識MLK3、キナーゼ・デッド(kinase dead)変異体MLK3(MLK3 K144R)、GFP標識MLK2(Donna Dorow博士により恵与される)、Flag標識DLK、若しくはHA標識JNK1のcDNA(1μg)で、Lipofectamine(R)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を使用してトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクション16〜24時間後に収集した。
【0043】
MLK3(C−20)、JNK(C−17)、リン酸化型JNK(phospho−JNK)1/2(G−7)、サイクリンB1(GNS1)、MKK2(C−16)およびCdc2(#17)に特異的な抗体を、Santa Cruz Biotech(カリフォルニア州サンタクルズ)から購入した。p62ヌクレオポリン(N43620)およびリン酸化型特異的(phospho−specific)ヒストンH3(セリン10)(カタログ番号07−081)に対する抗体は、それぞれBD Biosciences(カリフォルニア州パロアルト)およびUpstate Biotechnology(バージニア州シャーロッツビル)から購入した。CEP−11004(Cephalon Inc.ペンシルベニア州ウエストチェスターより恵与される)を、DMSO中0.4mMのストック濃度で再構成した。
【実施例2】
【0044】
細胞の同期化
いくつかの実験において、細胞を、以前に記述された(18−19)ところの二重チミジンブロックにより同期させた。簡潔には、細胞を10%FBS含有DMEM中2mMチミジンとともに16時間インキュベートした。過剰のチミジンをハンクス液(HBSS)で洗い落とし、そして細胞を完全培地とともに細胞周期に戻した(release back)。8時間後に、細胞を、10%FBS含有DMEM中2mMチミジンとともに別の16時間2回目処理して、G1/S期の境界で細胞を停止させた。同期させた細胞をその後HBSSで洗浄しかつ細胞周期に戻し、そしてG1/S解放(relase)後の多様な時点で分析のため収集した。細胞周期分析は、下述されるところの蛍光標示式細胞分取(FACS)により行った。いくつかの実験では、CEP−11004を、G1/Sブロックからの解放5時間後(後期S期(late S−phase)若しくは早期G2期(early G2−phase)に対応した)に、同期させた細胞に添加した。
【実施例3】
【0045】
細胞増殖アッセイ
処理後に、細胞を、トリプシン処理およびトリパンブルー(Sigma)での染色後に血球計算板でカウントした。細胞の95%以上がトリパンブルー色素を排除した。細胞増殖はコロニー形成アッセイを使用してもまた測定した。増殖している細胞をトリプシン処理し、そして、多様な濃度のCEP−11004の存在若しくは非存在下で再プレーティングした(100mm皿あたり1000細胞)。8〜14日間のインキュベーション後に
、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定し、そして0.2%クリスタルバイオレット(20%メタノール中)で1〜2分間染色した。細胞を蒸留水で数回洗浄し、そして形成されたコロニー(最低40細胞/コロニーあたり)をカウントした。
【実施例4】
【0046】
イムノブロッティングおよび免疫沈降
タンパク質分析のため、細胞を冷リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄し、300μlの組織溶解緩衝液(TLB)(20mMトリス塩基、pH7.4、137mM NaCl、2mM EDTA、1%Triton X−100、25mM β−グリセロリン酸、2mMピロリン酸ナトリウム、10%グリセロール、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および1mMベンズアミジン)で溶解し、そして20,000×gで遠心分離してライセートを澄明にした。およそ20μgの全タンパク質をSDS−PAGEにより分離した。タンパク質をPVDFメンブレン(Perkin Elmer Life Sciences;マサチューセッツ州ボストン)に転写し、トリス緩衝生理的食塩水(TBS)(50mMトリス塩基、pH7.4、0.15M NaClおよび0.1%Tween−20)中5%脱脂粉乳で1〜2時間ブロッキングし、そして1%BSA溶液を含有するTBS中で一次抗体とともに1ないし16時間インキュベートした。メンブレンをTBS−Tween溶液で数回洗浄し、そしてHRP結合抗マウス若しくは抗ウサギ抗体(0.1μg/ml)とともにインキュベートした。免疫反応性は高感度ケミルミネッセンス法(ECL:Amersham、英国バッキンガムシャー)により検出した。
【0047】
いくつかの実験において、タンパク質を、細胞ライセートとインキュベートした1μg/mlの一次抗体を用い、4℃で4〜16時間免疫沈降させた。プロテインA若しくはGセファロース(Amersham/Pharmacia、スウェーデン・ウプサラ)を追加の4時間添加し、そして免疫複合体をキナーゼ緩衝液(KB、25mM Hepes、pH7.4、25mM MgCl2および1mM DTT)で2回洗浄した。免疫複合体中のタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、そしてイムノブロッティングにより分析した。
【実施例5】
【0048】
免疫蛍光
6センチメートルプレート中の円形のガラス製カバーガラス上で増殖させた細胞を、実施例4に記述されたとおり過剰のチミジンを使用してG1/S期の境界で同期させた。細胞周期への戻し後の指定された時間に、カバーガラスを4%パラホルムアルデヒドで8分間固定し、そしてPBS中0.1%Triton X−100で2分間浸透化した。細胞染色パターンを、冷メタノールで10分間固定かつ浸透化した細胞で確認した。細胞を、MLK3、α−チューブリン、サイクリンB1、リン酸化型特異的ヒストンH3若しくはp62ヌクレオポリンに対する抗体で染色し、次いでフルオレセイン若しくはテキサスレッド結合二次抗体とともにインキュベートし、そして細胞DNAについて4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、PBS中0.2μg/ml)で対染色した。細胞を、Nikon E800エピ蛍光顕微鏡(Image Systems、メリーランド州コロンビア)を使用して同定し、そしてハママツのCCDカメラで捕捉した。細胞画像を、IPlabソフトウェア(Scanalytics、バージニア州フェアファックス)を使用して処理した。
【実施例6】
【0049】
MLK3キナーゼアッセイ
野性型MLK3若しくは触媒的に不活性のMLK3KR(K144R)を、CEP−11004で若しくは伴わずに処理したトランスフェクトした細胞から免疫沈降させ、そして、免疫複合体を、0.2mMオルトバナジン酸ナトリウムを補充した冷KBで洗浄した。免疫沈降したMLK3を、10μCiのγ−32P ATP、20μMのコールドATPおよび基質として0.5μgのミエリン塩基性タンパク質(MBP)を含有するキナーゼ緩衝液とともに30℃で45分間インキュベートした。反応を2×SDSサンプル緩衝液でクエンチし、SDS−PAGEにより分離し、そしてPVDFメンブレン(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)に転写した。MBPおよびMLK3中への放射活性リン酸の取り込みを、それぞれphosphorimager(Amersham Biosciences/Molecular Dynamics)およびイムノブロッティングにより分析した。
【実施例7】
【0050】
FACS分析。
【0051】
同期させた細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、3mlの冷(−20℃)70%エタノールで固定し、そして4℃で一夜保存した。細胞をその後、0.2Mトリス、pH7.5、20mM EDTA、1mg/ml RNアーゼA(Sigma)に溶解した100μg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma)とともに室温で1時間インキュベートし、そして等容量のPBSで希釈した。DNA含量をフローサイトメトリー(FACScan Analyzer、BD Biosciences)により測定し、そしてSync Wizardモデル、ModFit LTソフトウェア(BD Biosciences)を使用して解析した。G1、SおよびG2/M期の細胞の割合を決定するために、2Nおよび4Nのピークについての設定を、G1/Sで停止した細胞からの各実験内で定義し、そして所定の実験内の全サンプルに適用した。
【実施例8】
【0052】
Cdc2キナーゼ活性
Cdc2を、Cdc2抗体(0.5μg)とともに氷上で2時間インキュベートすることにより、細胞ライセートから免疫沈降させた。ライセートをその後、プロテインG−セファロースとともに、混合を伴い4℃で追加の2時間インキュベートした。免疫複合体を冷キナーゼ緩衝液で洗浄し、そして、10μCiのγ−32P ATP、20μMのコールドATP、および基質としての2.5μgのヒストン(タイプIII−SS、Sigma)を含有するキナーゼ緩衝液とともに30℃で30分間インキュベートした。反応をSDS−PAGEサンプル緩衝液で停止し、そしてタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。ヒストン中への32Pの取り込みを、phosphorimager分析により測定した。
【実施例9】
【0053】
分裂指数アッセイ
カバーガラス上で増殖させた細胞を、実施例4〜5に記述されるとおりG1/S期の境界で同期させた。いくつかの場合には、トランスフェクトされた細胞を同定するために、MLK3をpEGFPベクターと共発現させた。チミジンで誘発したG1/S期ブロックからの解放後5時間に、細胞を、変動する濃度のCEP−11004の存在若しくは非存在下でインキュベートした。解放後変動する時点でカバーガラスを固定し、そして細胞DNAをDAPIで染色した。前期、前中期、中期、後期若しくは終期のGFP陽性の有糸分裂細胞を同定し、カウントし、そして分裂指数を決定するためにカウントした全細胞の一画分として表した。各実験内で、300ないし350細胞を各条件および時点についてカウントした。
【実施例10】
【0054】
MLKタンパク質の阻害は、HeLa細胞で増殖を阻害しかつG2若しくはM期停止を引
き起こす
MLKタンパク質の阻害剤がRasで形質転換したNIH 3T3細胞の増殖を予防したが、しかし正常NIH 3T3細胞に対する影響を有しなかったことが最近報告された(20)。従って、形質転換細胞での細胞周期事象に対するMLK阻害の影響を分析した。MLK阻害剤CEP−11004の添加が形質転換したHeLa細胞の増殖を阻害しうるかどうかを最初に試験した。示されるとおり、HeLa細胞の増殖はCEP−11004により阻害された一方、NIH 3T3細胞の増殖は影響を受けなかった(図1A)。他の形質転換細胞の増殖を、コロニー形成アッセイを使用して検査した。図1Bに示されるとおり、CEP−11004は、A549気道上皮癌細胞のコロニー形成の用量依存性の阻害を引き起こした。コロニー形成の同様の阻害が、CEP−11004で処理したHeLa細胞およびER陰性SUM159乳癌細胞で観察された(データは示されない)。
【0055】
細胞増殖のCEP−11004誘発性の阻害の性質を決定するために、DNA含量のFACS分析を使用して、細胞周期の進行に対するCEP−11004の影響を測定した。示されるとおり、CEP−11004で20時間処理したHeLa若しくはHEK293細胞は、細胞周期のG2若しくはM期での停止を示す4N DNAを蓄積した(図2A〜2B)。対照的に、NIH 3T3細胞若しくは正常の二倍体肺線維芽細胞MRC−5細胞中のDNA含量プロファイルは、CEP−11004の非存在若しくは存在下で同様であった(図2C〜2D)。
【0056】
MLK3がG2期および有糸分裂の間に活性化されることを示す以前のデータ(15)に基づき、同期させたHeLa細胞中での細胞周期の進行に対するCEP−11004の影響を検査した。G1/S期の境界で同期させた細胞を細胞周期に5時間戻して、S期の大部分の完了を可能にした。細胞をCEP−11004で若しくは伴わずに変動する時間処理し、そしてDNA含量をFACSにより測定した。G1/Sブロックからの解放後7と9時間との間に、未処理の細胞は4N DNAを伴う細胞の増大により示されるとおりG2およびM期にある(図3A)。G1/S解放後11時間までに、未処理の細胞は有糸分裂を脱しかつG1期に再進入した(図3A)。対照的に、CEP−11004で処理した細胞は、G1/S期の解放後11および13時間での4N DNAを含有する細胞の持続性の蓄積により明らかなとおり、G2若しくはM期で停止する(図3B)。同調して、G2若しくはM期でのCEP−11004誘発性の停止が、未処理の同期させた細胞に比較して、G1/S期の解放後11および13時間での持続性のサイクリンB1発現(図3C)および上昇したCdc2キナーゼ活性(図3D)により示された。
【実施例11】
【0057】
CEP−11004はMLK3を阻害するが、しかし他の関連するキナーゼを阻害しない
MLKタンパク質(および他の関連するキナーゼでない)の阻害に対するCEP−11004の特異性を検査した。これらの実験はMLK3アイソフォームに焦点を当てた。MLK3は偏在的に発現され、そしてMLKタンパク質の最良のものを特徴付けられる。また、MLK2はキナーゼ触媒ドメインおよび他の領域中でMLK3と70%以上の配列の同一性を共有するとは言え、MLK2発現は脳、骨格筋および精巣に制限される(21)。加えて、MLK1の完全な配列は未だ同定されなければならない。最後に、MLK3は最近、G2/M期の移行に関与することが関係づけられた(15)。
【0058】
CEP−11004がMLK3活性を阻害する能力を最初に試験した。HA標識MLK3野性型をHeLa細胞中で過剰発現させ、そして収集前にCEP−11004で若しくは伴わずに4時間処理した。図4Aに示されるとおり、CEP−11004処理は、未処理の細胞に比較して、発現されるMLK3活性を有意に阻害した。次に、関連する混合系統キナーゼ、二重ロイシンジッパーキナーゼ(DLK)の活性に対するCEP−11004の効果を、トランスフェクトしたCHO細胞で測定した。DLK若しくはMLK3活性の尺度としてJNK MAPキナーゼリン酸化を使用して、CEP−11004はMLK3を阻害したが、しかしDLKで誘発したJNKのリン酸化はしなかった(図4B)。他者(15)と一致して、MLK3が、GI/S期に比較してG2およびM期移行の間により高い活性(約4倍)を有することが示され、そしてこの活性はCEP−11004により阻害された(データは示されない)。
【0059】
MLK3の過剰発現はMEK1によりERKの活性化を誘導することが示されている(13)。従って、MLK3野性型若しくは構成的に活性のMKK1変異体の過剰発現後のERK活性化に対するCEP−11004の効果を検査した。MLK3および活性のMKK1の双方がERK活性を刺激するとは言え、MLK3で誘発されたERK活性化のみがCEP−11004により阻害された(図4C)。最後に、CEP−11004がMLK2およびMLK3タンパク質を阻害する能力を比較した。GFP標識MLK2若しくはHA標識MLK3をHA標識JNK1と24時間共発現させ、そしてその後、収集前にCEP−11004で若しくは伴わずに追加の3時間処理した。MLK3に誘発されるJNK1のリン酸化は100nMのCEP−11004で80%阻害された一方、JNK1のMLK2活性化の有意の阻害は400nM以上のCEP−11004を必要とした(図4DおよびE)。これは、MLK2に比較してMLK3に対しおよそ3倍より高い特異性を有するCEP−11004と一致する(11)。従って、これらのデータは、CEP−11004により標的とされる主要なMLKアイソフォームとしてのMLK3を裏付ける。
【0060】
加えて、われわれは、CEP−11004が他のMLK関連(DLK)若しくはMLKに関連しないタンパク質キナーゼ(MKK1)の活性に影響を及ぼさないことを示す。にもかかわらず、他者は、NIT 3T3細胞のRas誘発性の増殖に対するMLK阻害の効果がp21活性化型キナーゼ1(Pak1)の同時阻害によるかもしれないことを示唆した(20)。Pak1活性は、CEP−11004の存在若しくは非存在下で試験されなかった。本明細書で細胞周期の停止を開始させるのに使用した用量が、MLK阻害剤がPak1活性を阻害するために必要とされる報告されたIC50濃度よりおよそ10倍より少なかったためである(20)。有糸分裂の停止は約100〜200nMの濃度で発生することが企図される(図6A〜6C)。
【0061】
CEP−11004に類似の生物学的特性を有する別のMLK阻害剤、CEP−1347がERK経路を活性化することが報告された(12)。しかしながら、これらの実験は神経細胞中で行われ、そしてCEP−11004が神経細胞以外でERK活性化を引き起こすという証拠は見出されていない。対照的に、示されたとおり、CEP−11004処理は、MLK3に誘発されるERK活性化を阻害し(図4C)、新生物形成細胞中でのERK経路の活性化におけるMLK3の役割と矛盾しない(14)。これは、神経以外の新生物形成細胞の増殖の促進、しかし神経細胞の細胞死におけるMLK3の相反する役割をさらに裏付ける。加えて、これらのデータは、神経細胞中のERK経路の負の調節、しかし神経以外の新生物形成細胞中のERK活性化の正の調節を特徴とする、MLK3の2つの機能を示唆する。
【実施例12】
【0062】
CEP−11004は前中期での有糸分裂の停止を誘発する
CEP−11004が有糸分裂への進行に影響を及ぼしたとは思われなかった(図3A〜3D)ため、CEP−11004で誘発されるM期停止の性質を、CEP−11004の存在若しくは非存在下で処理した同期させた細胞での有糸分裂の多様な段階を検査することにより特徴付けした。カバーガラス上で増殖させたG1/S期細胞を、細胞周期に5時間戻し、400nMのCEP−11004で若しくは伴わずに、G1/Sブロックからの解放後に追加の4若しくは6時間のインキュベーションの間(すなわちそれぞれ9および11時間)処理し、そしてDNAをDAPIで染色した。染色体の形態を蛍光顕微鏡検
査により検査し、そして前期、前中期、中期若しくは後期/終期の細胞の割合を決定した。G1/S後9時間で、CEP−11004で処理した細胞は、未処理の細胞に比較して前中期細胞の蓄積を示し始めた(図5A、左のグラフ)。
【0063】
さらに、中期若しくは後期/終期の細胞はCEP−11004で処理した細胞中で明らかでなかった(図5A、左のグラフ)。CEP−11004で処理した細胞は、後期/終期の細胞の増大した数を示した対照細胞と異なり、前中期で主に蓄積したため、この差違はG1/S解放後11時間でなおより明らかになった(図5A、右のグラフ)。CEP−11004に応答して前中期で蓄積する細胞の数は用量依存性であった。細胞周期に5時間戻し、そしてその後多様な濃度のCEP−11004で追加の8時間(G1/S解放後13時間)処理した、G1/S期で同期させた細胞は、前中期細胞の割合の用量依存性の増大を示した(図5B)。
【実施例13】
【0064】
MLK3の過剰発現は有糸分裂の停止に対するCEP−11004の効果を無効にする
MLKタンパク質の阻害が前中期での有糸分裂の停止を引き起こしたこと、およびMLK3はCEP−11004の主要な標的であったことを示した以前のデータを考え、MLK3の過剰発現がCEP−11004により誘発される有糸分裂の停止を無効にし得るかどうかを試験した。HeLa細胞を、トランスフェクトされた細胞を同定するために、対照ベクター若しくはHA−MLK3の存在下でpEGFPとコトランスフェクトし、そしてその後、過剰のチミジンを使用してG1/Sの境界で同期させた。G1/S解放後5時間に、細胞を多様な濃度のCEP−11004とともに追加の8時間インキュベートした。有糸分裂の進行を、サイクリンB1についてイムノブロットすること、分裂指数を決定すること、およびCdc2キナーゼ活性をアッセイすることにより検査した。サイクリンB1レベルは、100若しくは200nMのCEP−11004で処理した擬似トランスフェクト細胞中で上昇し、これは有糸分裂の停止と矛盾しない(図6A)。対照的に、MLK3でトランスフェクトした細胞は、外因性のMLK3がこれらの濃度のCEP−11004により誘発される有糸分裂の停止を予防する能力と矛盾しない、CEP−11004処理後のより低いサイクリンB1レベルを有した(図6A)。
【0065】
次に、分裂指数を、変動する濃度のCEP−11004で処理した擬似若しくはMLK3でトランスフェクトした細胞でのDAPI染色により測定した。期待されたとおり、擬似トランスフェクトした細胞は、有糸分裂の停止と矛盾しない、CEP−11004処理後のより高レベルの有糸分裂細胞を示した(図6B)。対照的に、MLK3でトランスフェクトした細胞は、CEP−11004処理後に減少した分裂指数を示した(図6B)。最後に、100若しくは200nMのCEP−11004で処理した、擬似若しくはMLK3でトランスフェクトした細胞中のCdc2キナーゼ活性を測定した。サイクリンB1発現に同様に、CEP−11004で処理した擬似トランスフェクトした細胞は、MLK3でトランスフェクトした細胞に比較してより高いCdc2活性を表した(図6C)。これらのデータは、外因性のMLK3が、CEP−11004で誘発した有糸分裂の停止を克服することが可能であることを示唆する。
【実施例14】
【0066】
CEP−11004は早期有糸分裂におけるヒストンH3リン酸化を遅らせる
CEP−11004で誘発される有糸分裂の停止の機構を、有糸分裂特異的なリン酸化事象をモニターすることによりさらに検査した。セリン10でのヒストンH3のリン酸化は有糸分裂の進行のマーカーとして一般に使用される(22−23)。HeLa細胞を、G1/S期のチミジンブロックからの解放後5時間にCEP−11004で若しくは伴わずに処理し、そして追加の4時間インキュベートさせた。細胞をその後固定し、そして有糸分裂細胞を同定するために、サイクリンB1およびリン酸化型ヒストン(phosph
−histone)H3(pH3)の免疫蛍光のため処理した。対照細胞での後期の間に、核エンベロープ崩壊の前の核中でサイクリンB1およびpH3染色が観察された(図7A)。対照的に、CEP−11004で処理した細胞は、これらの細胞がサイクリンB1との強い核反応性を示したにもかかわらず、後期の間の核pH3染色を含有しなかった(図7A)。早期有糸分裂細胞中での阻害されたpH3染色に対するこの影響は、約200nMのCEP−11004用量で観察された(データは示されない)。これらのデータは、MLKタンパク質活性が有糸分裂の間のヒストンH3のリン酸化に直接若しくは間接的に関与していることを示唆する。これは、後期の細胞中での核および中心体へのMLK3のターゲッティングを示唆した、後期細胞中でのMLK3の局在化と矛盾しない(図7B)。
【0067】
核エンベロープ崩壊(NEB)前および後のpH3染色の比較を行った。期待されたとおり、未処理の細胞中では、pH3染色は、NEB前の早期有糸分裂およびNEB後の有糸分裂の後の段階で観察された(図8A〜8B)。核エンベロープの完全性を、p62ヌクレオポリンタンパク質について染色することにより決定した(図8A〜8B)。図7A〜7Bと同様に、NEB前の早期有糸分裂におけるpH3染色は、CEP−11004で処理した細胞中で観察されなかった(図8A)。しかしながら、pH3染色は、未処理およびCEP−11004で処理した細胞の双方の前中期のNEB後に容易に明らかであった(図8B)。一緒に、これらのデータは、MLK活性が、Cdc2/サイクリンB1に依存しない機構による早期有糸分裂の間のヒストンH3のリン酸化に重要であることを示す。
【0068】
CEP−11004は早期有糸分裂中のS10でのヒストンH3のリン酸化を明瞭に阻害したとは言え、MLK3がリン酸化を直接司るのか若しくは間接的に司るのかは明らかでない。ヒストンH3は、PKA、Msk1、ERKおよびp38 MAPキナーゼを包含する多数のキナーゼにより、細胞周期を通じてリン酸化される(27)。これらのキナーゼの全部がヒストンH3のS10をリン酸化し得るとは言え、リン酸化の機能的役割は明確でなく、そして、それが起こる細胞周期の期に依存しうる。免疫蛍光データは、MLK3が有糸分裂細胞の核に局在化することができ(図7B)、そしてMLK3によるヒストンH3の直接リン酸化を支援しうることを示唆する。MLK3が、in vitroでヒストンH3のS10をリン酸化する有糸分裂キナーゼNIMAに関係するという知見(28)は、これと矛盾しない。
【0069】
MLK3がERKおよびp38シグナル伝達経路を活性し得、また、セリン10でのヒストンH3のリン酸化がストレス刺激に応答してERKおよびp38 MAPキナーゼにより媒介されうる(29)としても、これらのキナーゼがNEB前の早期有糸分裂の間のヒストンのリン酸化に寄与しているかどうかは未だ決定されるべきである。これはNEB前の早期有糸分裂細胞の核中の活性のERKの存在と矛盾しない(30−31)。有糸分裂の間のS10でのヒストンH3のリン酸化を調節する他の潜在的な候補のキナーゼはオーロラAおよびBキナーゼであり、オーロラBは、オーロラAが主に中心体に局在化するために最もありそうな生理学的ヒストンH3キナーゼである(32)。にもかかわらず、オーロラBの枯渇は、他の有糸分裂キナーゼの関与を示すヒストンH3のS10リン酸化を排除しない(27)。オーロラキナーゼはリン酸化により調節されるとは言え、MLKタンパク質をオーロラキナーゼの調節と結びつける証拠は存在しない。
【0070】
有糸分裂の進行の間のMLKタンパク質の阻害後に観察される遅延されたヒストンH3リン酸化の意義は知られていない。有糸分裂の間のS10でのヒストンH3のリン酸化の要件は論争中のままである。例えば、S10でのヒストンH3のリン酸化が、テトラヒメナにおいて適正な染色体凝縮および有糸分裂の進行に必要とされることが示唆されている(33−34)とは言え、ヒストンH3のS10のアラニン突然変異を含有する酵母変異
体株ならびに野性型株が増殖する(35)。
【実施例15】
【0071】
CEP−11004は有糸分裂の間に異常な紡錘体極形成を引き起こす
有糸分裂細胞中での紡錘体極の集成に対するCEP−11004の影響を検査した。同期させた細胞を、S期の終了時にCEP−11004で若しくは伴わずに4時間処理し、次いで、微小管のマーカーとしてのα−チューブリンおよび紡錘体極のマーカーとしてのγ−チューブリンについて免疫染色した。示されるとおり、CEP−11004処理は有糸分裂細胞中で微小管の構造の有意の破壊を引き起こした(α−チューブリン、図9A)が、しかし紡錘体極の数に対する影響を有しなかった(γ−チューブリン、図9A)。加えて、CEP−11004におけるDAPI染色により測定されるところの染色体の構造は高度に解体された(図9A)。有糸分裂細胞の60%以上が異常な微小管構造を含有した(図9B)。CEP−11004で4時間処理した間期細胞の検査は、未処理の細胞に比較して、微小管に対する明らかな影響を示さなかった(データは示されない)。従って、CEP−11004で処理した細胞が中期を通って進行することの不能は、微小管の構造の欠陥および異常な紡錘体形成によることがありそうである。
【0072】
MLK3の過剰発現が微小管の不安定性を促進することが最近示唆された(15)とは言え、MLK3活性の阻害が有糸分裂細胞中での微小管の構造に対し何の効果を有するかは明らかでない。CEP−11004への数時間以内の曝露の有糸分裂の微小管の構造に対する強い効果が示されているが、しかしながら、何のMLKに調節される微小管関連のタンパク質が影響を受けているのかは不明である。異所性のMLK3の発現が、JNK若しくはp38 MAPキナーゼ活性化を伴わない機構により、HEK293細胞中で微小管を不安定化することが示された(15)。しかしながら、この観察結果がMLK3に独特であるのか若しくは過剰発現のアーチファクトであるのかは明らかでない。MLK2および活性のJNKもまた、微小管と共局在しかつモータータンパク質と相互作用することが示された(24)。これらの相互作用が細胞周期依存性の様式で起こっていたかどうかは決定されなかった。アポトーシス刺激に対する細胞応答を媒介しうるゴルジ複合体タンパク質、ゴルジン−160の直接のMLK3リン酸化の新規の役割が記述されている(25)。従って、MLK3は、下流のMAPキナーゼ活性化に依存しない細胞周期の間のMLK3の機能を説明するのに役立ちうる、付加的な基質を有しうる。
【0073】
CEP−11004によるMLK3阻害が、有糸分裂の進行に必要な微小管事象を破壊することにより細胞増殖を予防することが企図される。これは、最初、RNA干渉(RNAi)を使用するMLK3のダウンレギュレーションが細胞増殖若しくはフローサイトメトリーによるDNA含量に影響しないことを示す未公表データを引用した以前の研究(15)とよい対照をなすように思われうる。しかしながら、2件の研究を直接比較することは困難であり、また、いくつかの理由が、そのデータ(15)と本明細書のデータの間の矛盾を説明し得る。第一に、以前の研究(15)では、MLK3は、HeLa細胞と比較して、コルセミド処理に応答して、機能的G2期チェックポイントを報告によれば有するヒト骨肉腫SAOS2細胞株においてダウンレギュレートされた(26)。第二に、RNAi処理はMLK3を完全に枯渇させるのに十分であることはありそうもなく、そして残存するMLK3はこれらの細胞中で有糸分裂の進行を促進するのに十分でありうる。第三に、MLK3を枯渇させたSAOS2細胞は、有糸分裂の進行の間にMLK3の代わりになるとみられる他の補償機構を可能にし得たRNAiとの2〜3日間のインキュベーションにより生成された。
【0074】
以下の参考文献を本明細書で引用した:
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
本明細で挙げられるいかなる特許若しくは刊行物も、本発明が属する技術分野の当業者の水準を示す。これらの特許および刊行物は、各個々の刊行物がとりわけかつ個々に引用することにより組み込まれた場合と同一の程度まで、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0078】
当業者は、本発明は目的を実施しかつ挙げられた最終目標および利点ならびにその中に固有のものに十分に適合されることを容易に認識するであろう。多様な改変および変形が、本発明の技術思想若しくは範囲から離れることなく本発明の実施においてなされ得ることが当業者に明らかであろう。請求の範囲により定義されるところの本発明の技術思想内に包含されるその中の変更および他の用途が、当業者に思い付くであろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の上で列挙される特徴、利点および目的、ならびに明らかになるであろう他者が獲得されかつ詳細に理解され得る内容、より具体的には上で簡潔に要約された本発明の記述が、添付の図面で具体的に説明されるそのある態様を参照することにより有されうる。
これらの図面は本明細の一部を形成する。しかしながら、添付の図面は本発明の好ましい態様を具体的に説明し、そして従ってそれらの範囲の制限とみなされるべきでないことに注意すべきである。
【図1A−1B】MLK活性の阻害が細胞増殖を阻害することを示す。図1Aは、72時間までのCEP−11004(500nM)の非存在(黒四角若しくは丸)または存在(白四角若しくは丸)下で増殖させたHeLa若しくはNIH 3T3細胞を示す。細胞の数を時間0および各条件で24、48若しくは72時間後にカウントした。図1Bは、変動する用量のCEP−11004の存在下でプレーティングした、トリプシン処理したA549細胞(処置あたり1000)を示す。14日後に、生じるコロニーをクリスタルバイオレットで染色しかつカウントした。同様の結果が、HeLaおよびSUM152乳癌細胞で得られた。
【図2A−2D】CEP−11004が形質転換細胞でG2/M期停止を引き起こすことを示す。HeLa(図2A)、HEK293(図2B)、NIH3T3(図2C)若しくはMRC5(図2D)細胞をCEP−11004(500nM)の非存在(対照)若しくは存在下で15時間処理し、そして細胞中の2N若しくは4N DNA含量を、ヨウ化プロピジウム染色に続くFACS分析により測定した。
【図3A−3D】後期S期/早期G2期の間の同期させた細胞のCEP−11004処理がG2/M期停止を引き起こすことを示す。HeLa細胞を、二重チミジンブロックによりG1/S期の境界で同期させ、細胞周期に戻し、そしてCEP−11004(500nM)の非存在(図3A)若しくは存在(図3B)下で解放後5時間処理した。細胞を、G1/S解放後の示される多様な時点でトリプシン処理により収集し、DNAをヨウ化プロピジウムで染色し、そしてG1、S若しくはG2/M期の細胞の割合をFACSにより測定した。図3Cにおいて、HeLa細胞を図3Aでのとおり同期させ、細胞周期に戻し、そしてCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で処理した。多様な時点で収集したライセートを、サイクリンB1(上図)若しくはタンパク質負荷対照としての全MKK2(下図)についてイムノブロットした。図3Dにおいて、同期させた細胞中のヒストンキナーゼ活性を、Cdc2の免疫沈降後の未処理(黒丸)若しくはCEP−11004処理(白丸)細胞中で測定した。データは3回の独立した実験からの平均および標準誤差を示す。
【図4A−4E】CEP−11004はMLK3を標的とするがしかしDLK若しくはMKK1活性を標的としないことを示す。図4Aにおいて、HeLa細胞を、HA標識MLK4の野性型(WT)若しくは触媒的に不活性のMLK3(KR)変異体でトランスフェクトした。MLK3野性型でトランスフェクトした細胞を、CEP−11004(500nM)とともに若しくは伴わずに収集前4時間インキュベートした。野性型および不活性のMLK3をMLK3抗体で免疫沈降させ、そしてin vitroキナーゼアッセイの基質としてのMBPとともにインキュベートした。該グラフは、各条件下でのMBP中へのリン酸取込みの相対量を示し、また、イムノブロットは免疫沈降物中のMLK3タンパク質の量を示す。図4Bにおいて、HeLa細胞を、HA標識JNK1およびMLK3野性型若しくはFlag標識DLKでトランスフェクトし、そしてその後、CEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で収集前4時間処理した。活性のJNK(pJNK)、HA−JNK1、Flag−DLK若しくはHA−MLK3のイムノブロットをそれぞれ上から下の図に示す。図4Cにおいて、HeLa細胞を、野性型(WT)MLK3、不活性(KR)MLK3、若しくは構成的に活性のMKK1変異体(CA)でトランスフェクトし、そしてその後CEP−11004(500nM)で若しくは伴わずに処理した。活性のERKの相対レベルを、リン酸化型特異的ERK1/2(ppERK)抗体でイムノブロットすることにより測定した(上図)。α−チューブリンについてイムノブロットすることによりタンパク質負荷量をモニターした(下図)。図4Dにおいて、HeLa細胞を、HA−JNK1およびGFP標識MLK2若しくはHA−MLK3でコトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をその後、多様な濃度のCEP−11004で1時間処理し、そして、リン酸化型特異的JNK1/2抗体(pJNK、上図)でイムノブロットすることによりJNK活性を測定した。HA−JNK1、GFP−MLK2若しくはHA−MLK3の発現を下図に示す。HA−MLK3ブロット中の上および下矢印はそれぞれMLK3のリン酸化および脱リン酸化された形態を示す。図4Eは、MLK2(黒四角)若しくはMLK3(白四角)を発現する細胞中でのデンシトメトリーによる全JNKに対するpJNKの比を測定することにより定量されるところの相対JNK活性のグラフである。
【図5A−5B】CEP−11004が前中期での細胞周期の停止を引き起こすことを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を、過剰のチミジンでG1/S境界で同期させ、そして細胞周期に戻した。解放5時間後に、細胞をCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下で追加の4若しくは6時間(G1/S解放後9若しくは11時間の累積時間)処理した。図5Aにおいて、前期(P)、前中期(PM)、中期(M期)若しくは後期/終期(AT)の細胞の割合を、対照(白棒)若しくはCEP−11004処理(黒棒)細胞中の染色体のDAPI染色により決定した。左および右のグラフは、G1/S期の解放後それぞれ9および11時間の有糸分裂細胞の割合を表す。データは3回の独立した実験からの平均および標準誤差を表す。図5Bにおいて、前中期の細胞の数を、増大する濃度のCEP−11004(G1/S期の解放後5時間に添加した)での処理後のG1/S期の解放後11時間にカウントした。300〜350細胞を各濃度でカウントした。
【図6A−6C】外因性のMLK3がCEP−11004で誘発された有糸分裂停止を阻害することを示す。HeLa細胞を、HA標識MLK3野性型の存在若しくは非存在(擬似)下でpEGFPとコトランスフェクトし、そしてその後二重チミジンブロックにより同期させた。G1/S解放後5時間に、細胞を多様な濃度のCEP−11004(75、100、200nM)で8時間処理し、そしてその後収集した(G1/S解放後13時間)。図6Aは、サイクリンB1(上図)、MLK3(中図)およびタンパク質負荷対照としてのβ−アクチン(下図)のイムノブロットを示す。図6Bにおいて、MLK3を伴い若しくは伴わずにpEGFPでトランスフェクトした、同期させたHeLa細胞をカバーガラス上で増殖させ、多様な濃度のCEP−11004で若しくは伴わずに処理し、G1/Sからの解放後13時間に固定し、そしてDAPIで染色した。有糸分裂細胞(前期、前中期、中期、および後期/終期の細胞)の数を、GFP陽性細胞(黒棒)若しくはMLK3を共発現するGFP陽性細胞(白棒)中でのDAPI染色により測定した。図6Cは、pEGFP単独若しくはpEGFPおよびMLK3でトランスフェクトした細胞中でのG1/S解放13時間後に収集したライセート中の相対Cdc2キナーゼ活性を示す。ヒストン基質中への放射標識リン酸の取込み(上図)および免疫沈降物中のCdc2についてのイムノブロット(下図)を示す。IgG(L)は抗体L鎖を示す。
【図7A−7B】CEP−11004が早期後期の核ヒストンH3リン酸化を遅らせることを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を過剰のチミジンでG1/Sで同期させ、そして細胞周期に戻した。解放後5時間に、細胞をCEP−11004(500nM)の非存在若しくは存在下でインキュベートした。追加の4時間のインキュベーション後(G1/S解放9時間後)に細胞を固定し、そして上および中央の図でそれぞれサイクリンB1若しくはリン酸化されたヒストンH3(pH3)について共免疫染色した(図7A)。MLK3およびサイクリンB1の発現をそれぞれ上および中央の図に示す(図7B)。有糸分裂細胞(矢印により示される)を、核サイクリンB1および/若しくはpH3染色の存在により測定した。図7A〜7Bの細胞はDAPIで対染色した(下図)。
【図8A−8B】CEP−11004が核エンベロープ崩壊前のヒストンH3リン酸化を阻害することを示す。HeLa細胞を、図5A−5Bで記述されるとおり免疫染色のため調製した。細胞をpH3(上図)および核エンベロープのマーカーとしてのヌクレオポリン(p62、中図)について染色した。CEP−11004の非存在若しくは存在下で処理した後期(核エンベロープ崩壊前)(図8A)若しくは前中期(核エンベロープ崩壊後)(図8B)の細胞を同定した。矢印により示されるところの有糸分裂細胞は、凝縮した染色体のDAPI染色(下図)により同定された。隣接する間期細胞を比較のため示す。
【図9A−9B】CEP−11004が異常な有糸分裂紡錘体を誘導することを示す。カバーガラス上で増殖させたHeLa細胞を、記述された図5のとおりCEP−11004の非存在若しくは存在下で処理した。図9Aにおいて、細胞をG1/Sブロックからの解放後9時間に収集し、そして有糸分裂紡錘体の構成を、微小管および紡錘体極を同定するためα若しくはγ−チューブリンについての免疫染色により評価した。細胞を、有糸分裂染色体を同定するためDAPIで対染色した。図9Bにおいて、対照若しくはCEP−11004処理した細胞中の異常な紡錘体を伴う有糸分裂細胞の割合を3回の別個の実験で定量した。最低300の有糸分裂細胞を各実験において各条件下でカウントした。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物形成細胞を該新生物形成細胞中の混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と接触させて、それによりMLK活性の前記阻害が新生物形成細胞の増殖を阻害すること
を含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法。
【請求項2】
新生物形成細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、若しくはRas突然変異を有する癌細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項5】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2タンパク質である、上記方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3タンパク質である、上記方法。
【請求項9】
配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有する混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させること、
を含んでなり、
MLK活性の前記阻害が新生物形成細胞の増殖を阻害する、
新生物形成細胞の増殖の阻害方法。
【請求項10】
新生物形成細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、およびRas突然変異を有する癌細胞よりなる群から選択される癌細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記化合物がCEP−11004若しくはCEP−1347である、上記方法。
【請求項12】
被験体における癌の処置方法であって、
前記被験体中の癌細胞中の混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること
を含んでなり、前記結合が前記癌細胞の増殖を阻害して、それにより被験体中の癌を処置する、
上記方法。
【請求項13】
被験体に抗癌剤を投与すること
をさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗癌剤が阻害剤と同時に若しくは連続して投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗癌剤が、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキンおよびシクロホスファミドよりなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗癌剤の投薬量が、前記抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する該抗癌剤の毒性を低下させる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
癌が、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有する癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、前記阻害剤がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項19】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項21】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2である、上記方法。
【請求項22】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3である、上記方法。
【請求項23】
癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の低減方法であって、
混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に投与することであって、阻害剤とともに投与される抗癌剤の投薬量が、前記抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する癌治療の毒性を低減させる、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項24】
抗癌剤が阻害剤と同時に若しくは連続して投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記阻害剤がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項26】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2ポリペプチドである、上記方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3ポリペプチドである、上記方法。
【請求項30】
抗癌化合物が、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキン、およびシクロホスファミドよりなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
個体が、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、およびRas突然変異を有する癌よりなる群から選択される癌を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
混合系統キナーゼ(MLK)活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止させる化合物のスクリーニング方法であって、
化合物の存在若しくは非存在下で、MLKタンパク質若しくはそのポリペプチドまたは前記MLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを測定すること;
化合物の存在下でのMLK活性のレベルを、化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較することであって、化合物の存在下でのMLK活性の減少が、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示し;
活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、前記MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させること;および
阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を、阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と比較することであって、化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての化合物の存在下での細胞増殖の減少が、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す、
を含んでなる、上記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、MLK2タンパク質、MLK3タンパク質、MLK1ポリペプチド、およびMLK活性を有するMLK1、MLK2若しくはMLK3のポリペプチドフラグメントよりなる群から選択される、上記方法。
【請求項34】
MLK1ポリペプチドが、配列番号3に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
MLK2タンパク質が、配列番号4に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
MLK3タンパク質が、配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、MLK活性を有する前記MLKポリペプチドフラグメントが、MLK2若しくはMLK3タンパク質またはMLK1ポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸を含んでなる、上記方法。
【請求項38】
新生物形成細胞が癌細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
癌細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、若しくはRas突然変異を有する癌細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法により同定される化合物。
【請求項1】
新生物形成細胞を該新生物形成細胞中の混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と接触させて、それによりMLK活性の前記阻害が新生物形成細胞の増殖を阻害すること
を含んでなる、新生物形成細胞の増殖の阻害方法。
【請求項2】
新生物形成細胞が癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、若しくはRas突然変異を有する癌細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項5】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2タンパク質である、上記方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3タンパク質である、上記方法。
【請求項9】
配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4よりなる群から選択される配列を有する混合系統キナーゼ(MLK)の活性を選択的に阻害する化合物と新生物形成細胞を接触させること、
を含んでなり、
MLK活性の前記阻害が新生物形成細胞の増殖を阻害する、
新生物形成細胞の増殖の阻害方法。
【請求項10】
新生物形成細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、およびRas突然変異を有する癌細胞よりなる群から選択される癌細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記化合物がCEP−11004若しくはCEP−1347である、上記方法。
【請求項12】
被験体における癌の処置方法であって、
前記被験体中の癌細胞中の混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤を投与すること
を含んでなり、前記結合が前記癌細胞の増殖を阻害して、それにより被験体中の癌を処置する、
上記方法。
【請求項13】
被験体に抗癌剤を投与すること
をさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗癌剤が阻害剤と同時に若しくは連続して投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗癌剤が、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキンおよびシクロホスファミドよりなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗癌剤の投薬量が、前記抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する該抗癌剤の毒性を低下させる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
癌が、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、若しくはRas突然変異を有する癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、前記阻害剤がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項19】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項21】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2である、上記方法。
【請求項22】
請求項12に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3である、上記方法。
【請求項23】
癌治療の必要な個体における癌治療の毒性の低減方法であって、
混合系統キナーゼ(MLK)若しくはそのポリペプチドに選択的に結合する阻害剤および抗癌剤を個体に投与することであって、阻害剤とともに投与される抗癌剤の投薬量が、前記抗癌剤が単独で投与される場合に必要とされる投薬量未満であり、それにより個体に対する癌治療の毒性を低減させる、
ことを含んでなる、上記方法。
【請求項24】
抗癌剤が阻害剤と同時に若しくは連続して投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記阻害剤がインドロカルバゾール分子である、上記方法。
【請求項26】
インドロカルバゾール分子がCEP−11004若しくはCEP−1347である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号3を含んでなるMLK1ポリペプチドである、上記方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号4を含んでなるMLK2ポリペプチドである、上記方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、配列番号1を含んでなるか若しくは配列番号2中のMLK3ポリペプチドである、上記方法。
【請求項30】
抗癌化合物が、シスプラチン、オキザリプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、メトトレキセート、ビンブラスチン、エトポシド、ドセタキセルヒドロキシ尿素、セレコキシブ、フルオロウラシル、ブスルファン、メシル酸イマチニブ、アレムブズマブ、アルデスロイキン、およびシクロホスファミドよりなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
個体が、乳癌、肺癌、子宮頚癌、膵癌、膀胱癌、結腸癌、およびRas突然変異を有する癌よりなる群から選択される癌を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
混合系統キナーゼ(MLK)活性を阻害しかつ新生物形成細胞の増殖を停止させる化合物のスクリーニング方法であって、
化合物の存在若しくは非存在下で、MLKタンパク質若しくはそのポリペプチドまたは前記MLK活性を有するポリペプチドフラグメントの活性のレベルを測定すること;
化合物の存在下でのMLK活性のレベルを、化合物の非存在下でのMLK活性のレベルと比較することであって、化合物の存在下でのMLK活性の減少が、該化合物がMLK活性を阻害する能力を有することを示し;
活性化されたMLK活性を有する新生物形成細胞の培養物を、前記MLK活性を阻害する能力を有する化合物と接触させること;および
阻害性化合物の存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量を、阻害性化合物の非存在下での新生物形成細胞の細胞増殖の量と比較することであって、化合物の非存在下での細胞増殖に比較しての化合物の存在下での細胞増殖の減少が、該阻害性化合物が細胞増殖を予防する能力を有することを示す、
を含んでなる、上記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記混合系統キナーゼが、MLK2タンパク質、MLK3タンパク質、MLK1ポリペプチド、およびMLK活性を有するMLK1、MLK2若しくはMLK3のポリペプチドフラグメントよりなる群から選択される、上記方法。
【請求項34】
MLK1ポリペプチドが、配列番号3に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
MLK2タンパク質が、配列番号4に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
MLK3タンパク質が、配列番号1若しくは配列番号2に示される配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、MLK活性を有する前記MLKポリペプチドフラグメントが、MLK2若しくはMLK3タンパク質またはMLK1ポリペプチドの約700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150若しくは100の連続するアミノ酸を含んでなる、上記方法。
【請求項38】
新生物形成細胞が癌細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
癌細胞が、乳癌細胞、肺癌細胞、子宮頚癌細胞、膵癌細胞、膀胱癌細胞、結腸癌細胞、若しくはRas突然変異を有する癌細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法により同定される化合物。
【図2A−2D】
【図3A】
【図3B】
【図3D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6B】
【図9B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図6A】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図3A】
【図3B】
【図3D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6B】
【図9B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図6A】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【公表番号】特表2007−529540(P2007−529540A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504050(P2007−504050)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008682
【国際公開番号】WO2005/094802
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506311046)ユニバーシテイ・オブ・メリーランド・ボルチモア (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008682
【国際公開番号】WO2005/094802
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506311046)ユニバーシテイ・オブ・メリーランド・ボルチモア (1)
【Fターム(参考)】
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