説明

混合装置、流延ドープの製造方法、及び溶液製膜方法

【課題】粘度差のある原料ドープ及び液状の添加剤の混合を容易に行なう。
【解決手段】混合ユニットは、静的混合機95Sと動的混合機95Dとを備える。動的混合機95Dは、ステータ90の上流側に位置する流通管部90Aと回転羽根91とによりなる。回転羽根91は、流通管部90Aに形成された回転部材収容孔90AH内にて、内壁面90NAから離隔するように配される。静的混合機95Sは、ステータ90の下流側に位置する狭管部90Bと、狭管部90Bを貫通する狭流路90BTと、狭流路90BTに配されたエレメント群100とを有する。回転羽根91と流通管部90Aとの隙間96は、狭流路90BTに連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置、流延ドープの製造方法、及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有する熱可塑性フィルム(以下、フィルムと称する)は、軽量であり、成形が容易であるため、光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である光学フィルム(例えば、位相差フィルムや偏光板保護フィルム等)に用いられている。
【0003】
このようなフィルムは、溶液製膜方法によりつくられる。溶液製膜方法は、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、流延ドープと称する)を流し、支持体上に流延膜を形成する。次に、流延膜が搬送可能になった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとする。そして、この湿潤フィルムを乾燥室へ送る。乾燥室では、湿潤フィルムをローラに巻きかけて搬送しながら、湿潤フィルムから溶剤を蒸発させてフィルムとする。
【0004】
この溶液製膜方法では、製造しようとするフィルムの光学特性等に応じて、流延ドープの成分を適宜調節する。この流延ドープの成分の調節方法としては、ポリマー及び溶剤を含む原料ドープに所定の添加剤を加えることが知られている。
【0005】
特許文献1〜2には、原料ドープに所定の液状の添加剤の混合により、流延ドープをつくる方法が開示されている。更に、原料ドープに添加液を添加する方法として、原料ドープが流れる配管内に配されたノズルを用いて、原料ドープ中で添加液を添加する方法が開示されている。しかしながら、原料ドープに添加液を添加しただけでは、粘度差の大きな原料ドープ及び添加液は容易に混合しない。そこで、特許文献1〜2では、スタティックミキサを用いて、添加液が添加された原料ドープを混合し、流延ドープをつくっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−283762号公報
【特許文献2】特開2010−100042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、スタティックミキサは、粘度差の大きい2つの液の混合に適するものの、粘度差・添加剤の添加量が著しく大きい場合、流延ドープの均質について要求レベルが向上した場合等には、特許文献1,2のように、複数のスタティックミキサを直列に配して混合を行なう。
【0008】
ところが、直列に配されたスタティックミキサへ液を送ろうとすると、スタティックミキサにおける液の圧力損失が高くなってしまう。この結果、送液に要する圧力が増大することとなり、場合によっては、送液用ポンプの変更をせざるを得ない。更に、送液圧力の増大に伴って、液を通過する配管やスタティックミキサの各部品の強度を向上せざるを得ない。
【0009】
更に、原料ドープへ添加する添加剤の切り替えを行なう場合には、スタティックミキサ内に残留した液体(原料ドープ等)を取り除く作業が必要になるが、スタティックミキサを直列に配した場合には、スタティックミキサ内の液体の除去作業に要する時間が長くなってしまうこと、及び除去される液体の量が増大してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、液状の添加剤とポリマー液の混合を容易にする混合装置を提供するものである。更に、本発明は、液状の添加剤とポリマー液の混合により流延ドープの製造する流延ドープの製造方法及び溶液製膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部と、前記動的混合部の入口部よりも流路断面積が小さく前記流通管の出口に連接する狭流路が設けられた狭流路部品及び前記狭流路部品に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通するプレ混合流路が設けられたプレ混合部品及び前記プレ混合部品に固設されたプレ混合エレメントを有し、前記プレ混合エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合するプレ静的混合部と、前記プレ混合流路の出口に連接する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔し前記プレ混合エレメントに隣接するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記動的混合部の入口部よりも流路断面積が小さく前記流通管の出口に連接する狭流路が設けられた狭流路部品及び前記狭流路部品に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部を備えたことが好ましい。前記静的混合部は前記狭流路内に配されていても良いし、前記狭流路の出口を覆うように設けられていてもよい。
【0014】
前記狭流路は、第1狭流路と、前記第1狭流路の出口に連接し流路断面積が前記第1狭流路よりも大きい第2狭流路とを備えたことが好ましい。
【0015】
前記狭流路の出口に連接する第2の前記流通管及び前記第2の流通管の内壁面から離隔するように前記第2の流通管内に配された第2の前記回転部材を有し、前記第2の流通管の内壁面及び前記第2の回転部材の隙間を流れる前記液を前記第2の回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる第2の前記動的混合部を備えたことが好ましい。
【0016】
本発明は、液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部と、前記隙間にて前記流通管に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部とを備えたことを特徴とする。
【0017】
前記狭流路の出口に連接する第2の前記流通管及び前記第2の流通管の内壁面から離隔するように配された第2の前記回転部材を有し、前記内壁面及び前記第2の回転部材の隙間を流れる前記液を前記第2の回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる第2の前記動的混合部を備えたことが好ましい。
【0018】
前記回転部材の内径が前記流通管の入口から出口に向かって漸減することが好ましい。
【0019】
前記ポリマー液の粘度Aと前記添加剤の粘度Bとの比A/Bの増大に伴い混合性が低下するが、本発明の混合装置によれば、ミキサ(スタティックミキサやドライブミキサ)やミキサを単に直列的に配したものに比べ、混合性の低下分を抑えることができる。例えば、比A/Bが100以上である場合、混合性の低下分の抑制効果が顕著に発揮される。
【0020】
本発明の流延ドープの製造方法は、上記の混合装置を用いて、ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なうことを特徴とする。
【0021】
本発明は、ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なう流延ドープの製造方法において、前記ポリマー液に前記添加剤を添加する添加工程と、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液をせん断方向に歪ませて、前記液の粘度を低下させる低粘度化工程と、前記低粘度化工程における前記液の粘度の低下分が回復する前に行なわれ、静的混合機を用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合工程とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明は、ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なう流延ドープの製造方法において、前記ポリマー液に前記添加剤を添加する添加工程と、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液の分断により、前記添加剤及び前記ポリマー液を混合するプレ静的混合工程と、前記プレ静的混合工程による前記液の歪みが回復する前に行なわれ、前記液をせん断方向に歪ませて前記液の粘度を低下させる低粘度化工程とを有することを特徴とする。
【0023】
前記低粘度化工程における前記液の粘度の低下分が回復する前に行なわれ、静的混合機を用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合工程を有することが好ましい。
【0024】
前記静的混合工程による前記液の歪が回復する前に行なわれ、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液をせん断方向に歪ませて、前記添加剤及び前記ポリマー液の界面を増大させる界面増大工程を有することが好ましい。
【0025】
前記低粘度化工程または前記界面増大工程では、前記液が導入される流通管と前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材との隙間を流れる前記液を、前記回転部材の回転を用いてせん断方向に歪ませることが好ましい。
【0026】
本発明の溶液製膜方法は、上記の流延ドープの製造方法によって得られたドープを用いて、支持体上にドープを流出して、前記ドープからなる膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、前記膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記支持体から剥ぎ取り湿潤フィルムとする剥離工程と、前記湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、互いに隣接した動的混合部と静的混合部とを用いて、粘度差の大きなポリマー液及び添加剤の混合を容易に行なうことができる。
【0028】
また、静的混合部では、配管内におけるエレメントの数、配置方法等の各条件を調整して、混合の最適化が行われる。したがって、静的混合部を用いる場合には、ポリマー液や添加液の組成が変更される度に、混合の最適化のための調整を行わなければならず、結果として、多品種のフィルムを効率よく製造することができないが、本発明では、回転部材を備えた動的混合部を有するため、回転部材の回転数の制御により、混合条件の調節が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】流延ドープ製造設備及び溶液製膜設備の概要を示す説明図である。
【図2】添加部の概要を示す斜視図である。
【図3】第1の混合装置の概要を示す斜視図である。
【図4】第1の混合装置の概要を示す断面図である。
【図5】第1の混合ユニットの概要を示す斜視図である。
【図6】第1の混合ユニットの概要を示す斜視図である。
【図7】第1の混合ユニットの概要を示す斜視図である。
【図8】第1の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図9】第1の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図10】第1の静的混合機の概要を示す斜視図である。
【図11】液の流れ方向に直交する面におけるエレメント群の断面図である。
【図12】エレメント群のXII−XII線断面図である。
【図13】エレメント群のXIII−XIII線断面図である。
【図14】第1の流延ドープ製造方法の概要を示すフロー図である。
【図15】第2の流延ドープ製造方法の概要を示すフロー図である。
【図16】第2の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図17】第3の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図18】第4の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図19】第5の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図20】第6の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図21】第7の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図22】一の混合ユニットの狭流路の出口と、一の混合ユニットの下流側に隣接する二の混合ユニットの狭流路の入口との位置関係を示す説明図である。
【図23】第8の混合ユニットの概要を示す斜視図である。
【図24】第9の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図25】第9の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図26】第10の混合ユニットの概要を示す断面図である。
【図27】第2の混合装置の概要を示す断面図である。
【図28】第2の静的混合機の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示すように、溶液製膜設備10は、流延ドープ製造設備12と接続する。流延ドープ製造設備12は、原料ドープ14及び添加剤15から流延ドープ16をつくるものであり、溶液製膜設備10は、流延ドープ16からフィルム18をつくるものである。
【0031】
(原料ドープ)
原料ドープ14には、溶剤とフィルムの原料となるポリマーとが含まれる。原料ドープ14において、ポリマーは溶剤に溶解していてもよいし、分散していてもよい。また、原料ドープ14におけるポリマーの濃度は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、17質量%以上25質量%以下であることが最も好ましい。ポリマー及び溶剤の詳細については後述する。
【0032】
原料ドープ14には、予め添加剤が含まれていてもよい。原料ドープ14に予め含まれる添加剤としては、可塑剤やマット剤などがある。原料ドープ14における可塑剤の含有量は、0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。原料ドープ14におけるマット剤の含有量は、0.01質量%以上0.05質量%以下であることが好ましい。
【0033】
(添加剤)
添加剤15には、用途に応じた種々の添加剤と溶剤とを含む。添加剤15としては、用途に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤(UV剤)、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、レターデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤などを用いることができる。また、添加剤15に含まれる溶剤としては、原料ドープ14に含まれる溶剤と同一であることが好ましい。
【0034】
(粘度比)
原料ドープ14の粘度の下限は10Pa・s以上であることが好ましく、20Pa・s以上であることがより好ましい。原料ドープ14の粘度の上限は200Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下であることがより好ましい。また、添加剤15の粘度の下限は0.8mPa・s以上であることが好ましく、1mPa・s以上であることがより好ましい。添加剤15の粘度の上限は0.1Pa・s以下であることが好ましく、0.05Pa・s以下であることがより好ましい。原料ドープ14の粘度ηdと、添加液の粘度ηtとの粘度比ηd/ηtの下限は、100以上であることが好ましく、1000以上であることが好ましい。また、粘度比ηd/ηtの上限は、特に限定されないが、例えば、150000以下であることがより好ましい。なお、原料ドープ14、添加液、流延ドープ16の粘度は、JIS K 7117によって求めることができる。
【0035】
(流延ドープ)
流延ドープ16は、原料ドープ14と添加剤15とからつくられる。なお、流延ドープ16中の固形分(ポリマー及び添加剤)全体を100質量%とした場合の流延ドープ16における添加液の濃度の上限は、55質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。流延ドープ16における添加液の濃度の下限は、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
(溶液製膜設備)
溶液製膜設備10は、流延室21とピンテンタ22と乾燥室23と巻取室24とを有する。流延室21には、流延ドープ16を流出する流延ダイ30、流延ダイ30から流出した流延ドープ16から流延膜31を形成する流延ドラム32、及び流延膜31を剥ぎ取る剥取ローラ34が設置されている。流延ドラム32は図示を省略した駆動装置により軸を中心に、方向Z1へ回転する。流延室21内及び流延ドラム32は、図示しない温調装置によって、流延膜31を冷却する温度に設定されている。
【0037】
流延ダイ30は、回転する流延ドラム32に向けて、流延ドープ16を連続的に流出する。その後、流延ドラム32上には、流延ドープ16からなる帯状の流延膜31が形成される。冷却により、流延ドラム32上の流延膜31は、自立して搬送可能な状態となる。自立して搬送可能な状態となった流延膜31は、剥取ローラ34によって流延ドラム32から剥ぎ取られ、帯状の湿潤フィルム36となる。
【0038】
流延室21とピンテンタ22との間の渡り部38では、搬送ローラ39が、湿潤フィルム36をピンテンタ22へ案内する。ピンテンタ22は、湿潤フィルム36の両側縁部を貫通して保持する多数のピンプレートを有る。移動するピンプレートにより保持された湿潤フィルム36には乾燥風が送られる。これにより、湿潤フィルム36は乾燥し、帯状のフィルム18となる。
【0039】
ピンテンタ22の下流には耳切装置40が設けられている。耳切装置40はフィルム18の両側縁部を裁断する。この裁断した両側縁部は、送風によりクラッシャに送られて、粉砕される。粉砕された両側縁部を、原料ドープ14または流延ドープ16の調製に用いても良い。
【0040】
乾燥室23には、多数のローラ41が設けられており、これらにフィルム18が巻き掛けられて搬送される。乾燥室23内の雰囲気の温度や湿度などは、図示しない空調機により調節されており、乾燥室23の通過によりフィルム18の乾燥処理が行われる。
【0041】
乾燥室23と巻取室24との間には、フィルム18を冷却する冷却室42、フィルム18を除電する強制除電装置(除電バー)、及びフィルム18の両側縁部にナーリングを付与するナーリング付与ローラ等が設けられる。巻取室24には、プレスローラを有する巻取機43が設置されており、フィルム18が巻き芯に巻き取られる。
【0042】
(流延ドープ製造設備)
流延ドープ製造設備12は、原料ドープ14のストックタンク51と、原料ドープ14及び添加剤15を混合する混合装置52とを有する。
【0043】
ストックタンク51は、モータ51aで回転する攪拌翼51bとジャケット51cとを備える。ストックタンク51には原料ドープ14が貯留されている。ストックタンク51内の原料ドープ14は、ジャケット51cにより温度が略一定となるように調整される。また、攪拌翼51bの回転によって、ポリマーなどの凝集を抑制しつつ、原料ドープ14の均質な状態を維持している。
【0044】
ストックタンク51及び混合装置52は送液管53により接続される。また、混合装置52及び流延ダイ30は配管54により接続される。
【0045】
送液管53には、ストックタンク51から混合装置52に向かって、ポンプ55とフィルタ56と添加部57とが設けられる。ポンプ55は、原料ドープ14をストックタンク51から混合装置52へ送り出すものであり、フィルタ56は、原料ドープ14内の異物を取り除くものである。
【0046】
添加部57には、送液管53中を流れる原料ドープ14に添加剤15を添加するノズル60が設けられる。ノズル60は、送液管62により添加剤15を貯留する添加剤タンク63と接続する。送液管62には、添加剤15を添加部57へ送り出すポンプ65が設けられる。
【0047】
(添加部)
図2に示すように、添加部57において、送液管62と接続するノズル60は、送液管53(図1参照)に設けられた流路67内に配される。ノズル60は添加剤15を流出するスリット出口68を備える。ノズル60は、スリット出口68が原料ドープ14の流れ方向下流側へ向くように配される。
【0048】
(混合装置)
混合装置52は、図3に示すように、パイプ70と駆動軸71とを有する。駆動軸71は、パイプ70の軸線上に配される。駆動軸71は、パイプ70の中空部を貫通するように配され、パイプ70の外に配された軸受部72により軸支される。駆動軸71は、モータ73に接続する。制御部75は、モータ73を介して、駆動軸71を一の方向へ回転する。
【0049】
(シール部)
パイプ70の両端の中空部であるシール部70Sには、図4に示すように、駆動軸71に設けられたラビリンス部材81と、ラビリンス部材81を覆うように設けられたシール部材82とが配される。
【0050】
ラビリンス部材81は、円筒状に形成され、駆動軸71に嵌着されるラビリンス本体81aと、ラビリンス本体81aの外周面に設けられる螺旋凸条81bとを備える。螺旋凸条81bは、駆動軸71の回転方向に向かうに従って、パイプ70の両端側から中央側へ伸びるように形成される。
【0051】
駆動軸71が貫通するシール部材82は、螺旋凸条81bと近接するように設けられる筒状の第1シール具82aと、駆動軸71と近接するように設けられ、第1シール具82aよりもパイプ70中央側に隣接する筒状の第2シール具82bとを備える。第1シール具82aと第2シール具82bとは一体となって形成されることが好ましい。
【0052】
パイプ70は、対となるシール部70Sの間に、入口70A及び出口70Bを有する。入口70Aは送液管53に接続し、出口70Bは配管54に接続する。こうして、パイプ70の中空部のうち対となるシール部70Sの間には、駆動軸71が貫通する流路70Rが形成される。この流路70Rの長さは、混合に必要な長さ以上有ればよく、例えば1m以上であることが好ましい。流路70Rの長さの上限は、設置場所に応じて決定すればよく、例えば、2m以下であることが好ましい。
【0053】
パイプ70、駆動軸71の形成材料は、例えば、ステンレスなどの金属である。ラビリンス部材81、シール部材82の形成材料は、例えば、テフロン(登録商標)などの合成樹脂である。
【0054】
(混合ユニット)
図3及び図4に示すように、流路70Rには混合ユニット85が配される。図中には、流路70Rに4つの混合ユニット85を並べているが、本発明はこれに限られず、流路70Rに設ける混合ユニット85の数は、1〜3個、または5個以上でもよい。
【0055】
図5及び図6に示すように、混合ユニット85は、パイプ70に固定され駆動軸71が貫通するステータ90と、駆動軸71に軸支された回転羽根91とを備える。
【0056】
(回転羽根)
ステンレス製の回転羽根91は、図6及び図7に示すように、軸支環部91Aと回転部材91Rとを備える。軸支環部91Aは、回転部材91Rを軸支するためのものであり、駆動軸71に取り付けられる。回転部材91Rは、回転環部91Bと、回転羽根本体91Cとを備える。回転環部91Bは軸支環部91Aの上流端に取り付けられ、回転羽根本体91Cは、回転環部91Bの上流端にて、径方向に延設され回転環部91Bの周方向にて所定の形成ピッチで並べられる。回転環部91Bの径は、上流側から下流側まで略一定である。回転羽根本体91Cの径は、上流側から下流側に向かうに従って、小さくなる。軸支環部91Aにより、回転部材91Rは、軸支環部91Aの回転に従って回転可能になる。
【0057】
(ステータ)
図8及び図9に示すように、管状に形成されたステンレス製のステータ90には、上流側から下流側に向かって、流通管部90Aと狭管部90Bとが形成される。流通管部90Aには回転部材91Rを収容する回転部材収容孔90AHが設けられる。上流側から下流側まで流通管部90Aを貫通する回転部材収容孔90AHの径は、上流側から下流側に向かうに従って小さくなる。回転羽根91と流通管部90Aとにより、動的混合機95Dが形成される。ステータ90の半径R90は、例えば、10mm以上300mm以下であり、流通管部90Aの長さL90Aは、例えば、20mm以上600mm以下であり、狭管部90Bの長さL90Bは、例えば、5mm以上100mm以下である。
【0058】
狭管部90Bには、駆動軸71を挿通するための駆動軸貫通孔90BHと、軸支環部91Aを回転自在な状態で収容する軸支環収容孔90BJと、駆動軸71に沿って延設された狭流路90BTとが設けられる。狭流路90BTの入口は回転部材収容孔90AHに開口し、狭流路90BTの出口は狭管部90Bの下流端面に開口する。
【0059】
狭流路90BTは4つ設けられ、狭流路90BTの形成ピッチは、駆動軸71の回転方向において略等角度である。
【0060】
ここで、各流路の断面は、流路における液の流れ方向に直交する面であり、各流路の断面積は、当該直交する面に現れる断面形状の面積である。
【0061】
駆動軸71を介して、軸支環部91Aが軸支環収容孔90BJに収容されるように、回転羽根91をステータ90に取り付けることにより、回転環部91Bの環部周面91BS及び回転羽根本体91Cの羽根部周面91CSは、それぞれ流通管部90Aの内壁面90NAに近接する。このため、流通管部90Aと回転環部91B及び回転羽根本体91Cとの間には、原料ドープ14及び添加剤15を含む液が流通可能な隙間96が形成される。隙間96は、回転部材収容孔90AHの入口から狭流路90BTの入口まで形成される。隙間96、すなわち、流通管部90Aと回転環部91B及び回転羽根本体91Cとの間隔CL1は、例えば、0.2mm以上5mm以下である。間隔CL1の下限値は取り付け精度に基づいて決定される。間隔CL1の上限値は、所望のせん断粘度の低下量を得るために必要なせん断歪み速度に基づいて決定される。
【0062】
図8に示すように、原料ドープ14及び添加剤15を含む液が流通する狭流路90BTには、エレメント群100が設けられる。エレメント群100と狭管部90Bとにより、静的混合機95Sが形成される。
【0063】
図10に示すように、エレメント群100は、第1分断エレメント101〜第2分断エレメント102を有する。第1分断エレメント101〜第2分断エレメント102が、入口から出口に向かって順次並べられる。第1分断エレメント101は、ステンレス製の第1仕切板101A及び第2仕切板101Bを有する。流れ方向に平行な第1仕切板101A及び第2仕切板101Bは、狭流路90BTの第1の径方向DR1(図11参照)において交互に並べられる(図12参照)。第1仕切板101A及び第2仕切板101Bは、それぞれ細長く形成され、狭流路90BTの第2の径方向DR2に直交する断面において互いに交差するように配される(図13参照)。ここで、第2の径方向DR2は、第1の径方向DR1と直交する。同様に、第2分断エレメント102は、ステンレス製の第1仕切板102A及び第2仕切板102Bを有する(図10参照)。流れ方向に平行な第1仕切板102A及び第2仕切板102Bは、狭流路90BTの第2の径方向DR2(図11参照)において交互に並べられる(図13参照)。第1仕切板102A及び第2仕切板102Bは、それぞれ細長く形成され、狭流路90BTの第2の径方向DR2に直交する断面において互いに交差するように配される(図12参照)。流れ方向と各仕切板の長手方向との角度θ101A、θ101B、θ102A、θ102Bは、例えば、15°以上75°以下であることが好ましく、略45°であることが好ましい。
【0064】
なお、図中には、狭流路90BTに第1分断エレメント101を2個並べているが、本発明はこれに限られず、狭流路90BTに設ける第1分断エレメント101の数は、1個または3個以上でもよい。同様に、狭流路90BTに設ける第2分断エレメント102の数は、2個に限られず、1個または3個以上でもよい。
【0065】
図1に戻って、制御部75は、ポンプ55、65の操作により、添加液及び原料ドープ14の流速比が所定の範囲内となるように調節する。添加部57における原料ドープ14の流速Vaと、添加部57における添加液の流速Vbの比(=Vb/Va)の値は、1以上15以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましく、1.2以上1.8以下であることが特に好ましい。流速Aは、ポンプ55による原料ドープ14の流量をQaとし、流路67(図2参照)の断面積をSaとするときに、Qa/Saで表され、流速Bは、ポンプ65による添加液の流量をQbとし、スリット出口68(図2参照)の断面積をSbとするときに、Qb/Sbで表される。
【0066】
(流延ドープ製造方法)
流延ドープ製造設備12では、図14に示す流延ドープ製造方法110が行われる。流延ドープ製造方法110は、添加工程111と、動的混合工程112と、静的混合工程113とを有する。静的混合工程113の後、溶液製膜設備において溶液製膜方法が行われ、フィルムがつくられる。流延ドープ製造方法110と溶液製膜方法とは連続して行われることが好ましい。
【0067】
次に、流延ドープ製造方法110の詳細について説明する。
【0068】
(添加工程)
図1において、ポンプ55は、ストックタンク51から添加部57へ所定の流量の原料ドープ14を送り出す。また、ポンプ65は、タンク63から添加部57へ所定の流量の添加剤15を送り出す。図2に示すように、添加部57において、ノズル60は、送液管53中を流れる原料ドープ14中で、添加剤15を噴出する。こうして、添加部57では、原料ドープ14中に添加剤15を添加する添加工程111(図14参照)が行われる。
【0069】
図8に示すように、添加剤15及び原料ドープ14を含む液120は、混合ユニット85へ送られる。混合ユニット85では、制御部75(図3参照)の制御の下、駆動軸71が回転する。駆動軸71の回転に従い、回転部材91Rが回転する。
【0070】
(動的混合工程)
動的混合工程112では、低粘度化工程112Aと界面増大工程112Bとが行なわれる。
【0071】
(低粘度化工程)
流通管部90Aに送られた液120は、回転する回転部材91Rにより内壁面90NAへ押し付けられながら、隙間96を流れる。回転部材91Rによる内壁面90NAへの押し付けにより、液210、特に液120に含まれる高分子(ポリマーや添加剤)にはせん断応力が発生する結果、液120に含まれる高分子は、せん断方向に歪む。高分子のせん断歪み速度の増大により、原料ドープ14や添加剤15のせん断粘度が低下する。こうして、隙間96では、液120の粘度を下げる低粘度化工程112Aが行なわれる。なお、低粘度化工程112Aにおける原料ドープ14や添加剤15のせん断粘度の低下分は、低粘度化工程112A前の原料ドープ14や添加剤15のせん断粘度のおよそ半分以上になることが望ましい。
【0072】
(界面増大工程)
更に、動的混合機95Dでは、液120に含まれる高分子がせん断方向に歪む結果、原料ドープ14や添加剤15の界面が増大、すなわち原料ドープ14及び添加剤15の接触面積が増大させる界面増大工程112Bが行なわれる。原料ドープ14及び添加剤15の接触面積が増大する結果、相互拡散による混合が進む。
【0073】
液120に含まれる高分子を歪ませるためには、環部周面91BS及び羽根部周面91CSの速さ、すなわち回転部材91Rの周速が大きいほど好ましい。環部周面91BS及び羽根部周面91CSから、内壁面90までの距離が、0.2mm以上5mm以下の場合、回転部材91Rの周速は0.5m/秒以上6.0m/秒以下であることが好ましい。
【0074】
(静的混合工程)
隙間96を通過した液120は、狭流路90BTを通過する。図10に示すように、狭流路90BTでは、各エレメント101,102を用いて液120を分断し、原料ドープ14及び添加剤15の混合を進める静的混合工程113が行なわれる。液120が、各エレメント101,102により分断されると、液120に存在する原料ドープ14及び添加剤15の界面の面積の総和が増大する。界面の面積の増大により、液120における原料ドープ14及び添加剤15の混合がすすむ。
【0075】
本発明では、図8に示すように、動的混合機95Dの入口部すなわち回転部材収容孔90AHの入口の断面積よりも狭流路90BTの断面積が小さいため、静的混合工程113において、低粘度化工程112Aでの液120の粘度の低下量の全てが回復しない。この結果、次の(1)、(2)により、原料ドープ14及び添加剤15の混合が進みやすくなる。本発明によれば、従来に比べて、粘度差の大きな容易に混合を進めることが可能となる。
(1) 狭流路90BTにおける原料ドープ14の粘度は、回転部材収容孔90AHの入口におけるものに比べて小さい。
(2) 狭流路90BTにおける原料ドープ14及び添加剤15の粘度差は、回転部材収容孔90AHの入口におけるものに比べて小さい。
【0076】
更に、動的混合機95D及び静的混合機95Sに加え、更に下流側に動的混合機95Dを配することにより、原料ドープ14及び添加剤15の混合を更に促進して、流延ドープを製造することができる。図15に示す流延ドープ製造方法120は、添加工程111と、動的混合工程112と、静的混合工程113と、動的混合工程114とを有する。各混合機の意義は次の通りである。上流側の動的混合機95Dでは、動的混合工程112が行なわれる。動的混合工程112では、低粘度化工程112A及び界面増大工程112Bが行われる。静的混合機95Sでは静的混合工程113が行われる。下流側の動的混合機95Dでは動的混合工程114が行なわれる。動的混合工程114では、低粘度化工程114A及び界面増大工程114Bが行われる。ここで、混合が促進される要因は、(A)〜(D)が考えられる。なお、(A)〜(C)は、前述の構成で得られるものと共通する。
(A)動的混合工程112、114(低粘度化工程や界面増大工程)を行なうこと
(B)静的混合工程113を行なうこと
(C)低粘度化工程112Aを経た液120の歪みが回復する前、すなわち低粘度化工程112Aの直後に静的混合工程113を行なうこと
(D)静的混合工程113を経た液120の歪みが回復する前、すなわち静的混合工程113の直後に界面増大工程114Bを行なうこと
【0077】
そして、(D)は次のようにして起こるものと考えられる。上流側の動的混合機95から出された直後の液120における原料ドープ14及び添加剤15の界面は、内壁面90NAに沿うように、すなわち円弧状または環状に形成される。原料ドープ14及び添加剤15の界面が環状である液120をそのまま下流側の動的混合機95Dへ送り込んでも、界面の状態はほとんど変わらないため、原料ドープ14及び添加剤15の接触面積が増大させる界面増大工程を効果的に行なうことができない。ところが、上流側の動的混合機95から出され液120を、下流側の動的混合機95Dへの導入より前に静的混合機95Sに導入することにより、円弧状または環状の界面を乱す静的混合工程113を行なうことができる。静的混合工程113を経た原料ドープ14及び添加剤15の界面は、静的混合工程113前の原料ドープ14及び添加剤15の界面に比べて、径方向においてばらつくように存在する。径方向においてばらついて存在する界面を有する液120を、下流側の動的混合機95Dへ導入することにより、原料ドープ14及び添加剤15の接触面積が増大させる界面増大工程を効果的に行なうことができる。
【0078】
流延ドープ製造工程120と溶液製膜方法とは連続して行われることが好ましい。なお、流延ドープ製造工程120において、動的混合工程114の後に再び静的混合工程を行ってもよい。このように、静的混合工程及び動的混合工程を交互に行なうことにより、原料ドープ14及び添加剤15の混合を進めることができる。
【0079】
低粘度化工程112Aにて低下した粘度の全てが静的混合工程113中に回復しないようにするために、エレメント群100が配される狭流路90BTの断面積は、回転部材収容孔90AHの入口部の断面積よりも小さいことが必要となる。また、混合性の向上及び圧力損失の低下を両立させたい場合には、狭流路90BTの断面積を、入口から出口に向かうに従って漸増させてもよい。例えば、図16に示すように、第1狭流路131BTと第1狭流路131BTよりも断面積が広い第2狭流路132BTとから、狭流路90BTを形成しても良い。第1狭流路131BTの入口は回転部材収容孔90AHに開口する。第2狭流路132BTの入口は、第1狭流路131BTの出口と連接し、第2狭流路132BTの出口は、狭管部90Bの下流端面に開口する。この場合、エレメント群100の設置位置は、第1狭流路131BT及び第2狭流路132BTのいずれでも良いが、静的混合工程113を行なう際、低粘度化工程112Aにより低下した粘度の回復量ができるだけ小さいことが望ましい点を考慮すると、断面積の狭い第1狭流路131BTとすることが好ましい。また、狭流路90BTの断面積を、入口から出口にかけて連続的に増大させてもよい(図17参照)。
【0080】
上記実施形態では、エレメント群100を狭流路90BTに配したが、本発明はこれに限られず、狭管部90Bの下流端面、すなわちステータ90の下流端面90Dにおいて、狭流路90BTの出口を覆うように、エレメント群100を設けても良い(図18参照)。また、隙間96の下流側、すなわち内壁面90NAと環部周面91BSとの間にエレメント群100を設けても良いし(図19参照)、内壁面90NAと羽根部周面91CSとの間にエレメント群100を設けても良い(図20参照)。隙間96にエレメント群100を設ける場合、狭流路90BTを省き、隙間96の出口をステータ90の下流端面90Dに開口させてもよい。
【0081】
また、エレメント群100は、上流側の流通管部90Aから下流側の流通管部90Aまで、液120が流通する流路内を延設されることが好ましい。例えば、図18に示すように、エレメント群100は、上流側のステータ90の下流端面90Dから、下流側のステータ90における隙間96まで設けられることが好ましい。また、図8、16〜20に示された各エレメント群100を組み合わせても良い。
【0082】
上記実施形態では、狭流路90BTを駆動軸71に沿って延設したが、狭流路90BTの入口から狭流路90BTの出口に向かうに従って駆動軸71から遠ざかるように、狭流路90BTを形成しても良い(図21参照)。なお、図21では、エレメント群100の図示は省略している。
【0083】
上記実施形態では、駆動軸71の回転方向において略等しい角度で狭流路90BTを設けた(図5参照)が、本発明はこれに限られない。また、狭流路90BTの形成数は複数ではなく、一つであってもよい。例えば、図22に示すように、上流側の混合ユニット85における狭流路90BTの出口90BXは、駆動軸71の回転方向において、当該混合ユニット85の下流側に隣接する混合ユニット85における狭流路90BTの入口90BYと異なる位相であることが好ましい。また、上流側の混合ユニット85における狭流路90BTの出口90BXは、当該混合ユニット85の下流側に隣接する混合ユニット85における狭流路90BTの入口90BYよりも、駆動軸71の回転方向の上流側に設けることが好ましい。駆動軸71の回転方向において、直線L90BXから直線L90BYまでの角度φは、例えば、180°以上360°未満であることが好ましい。ここで、直線L90BXは、駆動軸71の回転中心O71と出口90BXの形成位置とを通る直線であり、直線L90BYは、駆動軸71の回転中心O71と出口90BYの形成位置とを通る直線である。
【0084】
上記実施形態では、流れ方向に直交する面における狭流路90BTの断面形状を円形としたが、本発明はこれに限られない。流れ方向に直交する面における狭流路90BTの形状を、例えば、駆動軸71の外周に沿った円弧状としてもよいし、環状としてもよい。
【0085】
なお、回転羽根本体91Cに代えて、上流側から下流側に向かって径が漸減する円錐台状に設けられた回転独楽本体141Cを用いても良い(図23参照)。
【0086】
回転部材収容孔90AHの及び回転羽根本体91Cの形状は、隙間96が形成可能なものであれば、特に限定されない。例えば、回転部材収容孔90AHの径及び回転羽根本体91Cの径は、上流側から下流側まで一定であってもよいし(図24、25参照)、上流側から下流側に向かうに従って大きくてもよい(図26参照)。
【0087】
なお、原料ドープ14及び添加剤15のプレ混合を行なうプレ静的混合機を設けても良い(図27参照)。プレ静的混合機は、静的混合機95Sと略同様の構造であり、エレメント群100とパイプ70とを有する。エレメント群100は混合ユニット85の上流側に隣接させることが好ましい。なお、混合ユニット85が複数設けられる場合には、エレメント群100の設置位置は、最も上流側に設けられた混合ユニット85、すなわち回転羽根91の上流側に隣接させることが好ましい。
【0088】
(プレ静的混合工程)
プレ静的混合機では、エレメント群100を用いて液120を分断し、原料ドープ14及び添加剤15の混合を進めるプレ静的混合工程が行なわれる。液120が、エレメント群100により分断されると、液120に存在する原料ドープ14及び添加剤15の界面の面積の総和が増大する。界面の面積の増大により、液120における原料ドープ14及び添加剤15の混合がすすむ。
【0089】
プレ静的混合機のすぐ下流側の混合ユニット85では、動的混合工程112が行なわれる結果、原料ドープ14及び添加剤15の混合がすすむ。
【0090】
エレメント群100を混合ユニット85から離して設けた場合には、プレ静的混合工程における歪が全て回復してしまう。本発明では、プレ静的混合機の設置位置を混合ユニット85の上流側へ隣接させたため、エレメント群100により分断され、原料ドープ14及び添加剤15の界面の面積の総和が増大する状態の液120に対し、すなわち、プレ静的混合工程における歪が全て回復する前の液120に対し、動的混合工程112が行なわれる。このため、プレ静的混合機130を混合ユニット85から離して設けた場合に比べ、原料ドープ14及び添加剤15の混合がすすみやすい。なお、動的混合工程112の後に、静的混合工程113を行うことが好ましい。
【0091】
なお、回転部材91Rの回転軸は、パイプ70の軸線と平行に配されていても良いし、パイプ70の軸線に交差するように配されていても良い。
【0092】
図10に示す第1分断エレメント101及び第2分断エレメント102に代えて、図28に示すような、上流側から交互に配される第1分断捻転エレメント141及び第2分断捻転エレメント142を用いても良い。第1分断捻転エレメント141及び第2分断捻転エレメント142は、それぞれ、狭流路91BTの延設方向に延びた板状に形成され、延設方向の一端部は、延設方向の他端部に対し略180°捩れている。第2分断捻転エレメント142の上流端は、上流に設けられた第1分断捻転エレメント142の下流端と略90°で交差する。
【0093】
上記実施形態では、本発明を用いて、原料ドープ14と添加剤15との混合を行なったが、原料ドープ14や添加剤15の物質によっては、本発明により、原料ドープ14に添加剤15が溶解した状態をつくることも可能である。
【0094】
(ポリマー)
本発明に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0095】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たすものであることが好ましい。下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。セルロースアシレートの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0096】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0097】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0098】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0099】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶剤を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0100】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0101】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0102】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0103】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0104】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。
【0105】
(可塑剤)
可塑剤としては、リン酸エステルやポリエステル系ポリマーが用いられる。
【0106】
リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートが挙げられ、いずれも本発明に用いることができる。
【0107】
ポリエステル系ポリマーとしては、ポリエステルジオールが好ましく、ジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)および/またはヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主原料として、縮合反応することにより得られるものが挙げられる。
【0108】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジカルボン酸は2種類以上用いてもよい。また、ジカルボン酸の炭素数は4〜8であることが好ましく、4〜6であることが好ましく、6が特に好ましい。炭素数が少ない方が、セルロースアシレートフィルムの透湿度を下げることができ、また、相溶性の点からも好適であり、コストやポリエステルジオールの取り扱い性から、6が好ましい。
【0109】
また、ジオールとしては脂肪族グリコール、すなわち、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ブチレングリコール(例えば、1,4−ブタンジオール)、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオールは2種類以上用いてもよい。また、ジオールの炭素数は2〜20であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、2が特に好ましい。炭素数が少ない方がセルロースエステルドープもしくはセルロースエステルフィルムとの相溶性に優れ、また湿熱サーモによるブリードアウト(泣き出し)耐性に優れるため好ましいためである。
【0110】
これらの重合体ないしは共重合体の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレン(テレフタレート/イソフタレート)ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)などが挙げられる。その他、表1に示すポリエステルジオール(可塑剤A〜D)も、本発明において可塑剤として用いることができる。
【0111】
【表1】

【0112】
表1中、二塩基酸の欄において、AAはアジピン酸(C6)、CAはコハク酸(C4)を示し、グリコールの欄において、EGはエチレングリコール(C2)を、PGは1,2−プロピレングリコール(C3)を示す。なお、表1に示す可塑剤A〜Dについて、水酸基価に特に制限はないが、例えば、表1に示す水酸基価であることが好ましい。
【0113】
本発明に用いることのできるポリエステルジオールは、セルロースアシレートドープおよびセルロースアシレートフィルムと相溶するものを、所望の光学特性を満たすよう、その構造や分子量、添加量を選択する。ポリエステルジオールは、主鎖の両末端がアルコール性の水酸基であることがセルロースアシレートドープおよびセルロースアシレートフィルムとの相溶性と光学特性制御の両立の点から好ましい。特に添加量を、セルロースアシレートに対して5質量%以上とすることが必要であり、9〜40質量%とすることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0114】
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、光学異方性の制御に対してはポリエステルジオールの水酸基価(OHV)および分子量を一定範囲に抑えることが、品質を一定に保つために重要である。特に水酸基価は品質管理にとっても好ましい。水酸価の測定は、日本工業規格JIS K 1557−1:2007に記載の無水酢酸法等を適用できる。
【0115】
水酸基価は、40mgKOH/g以上170mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が更に好ましく、90mgKOH/g以上140mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0116】
水酸基価が大きすぎると、分子量が小さく、低分子量成分の量が多くなり、揮散性が大きくなり好ましくない傾向があり、また、水酸基価が小さすぎると、溶剤への溶解性やセルロースアシレートとの相溶性が悪くなり、好ましくない傾向がある。
【0117】
本発明におけるポリエステルジオールの数平均分子量(Mn)は、水酸基価の値からの計算やGPCの測定から求めることが出来る。分子量の値としては650以上2800以下であることが好ましく、700以上2000以下であることが更に好ましく、800以上1250以下であることが特に好ましい。また、光学的に等方性とするためには800以上1200以下であるものが特に好適に用いられる。
【0118】
その他、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるサーモトロピック液晶性を示す熱可塑性ポリエステル樹脂を可塑剤として使用することもできる。
【0119】
ここでいう芳香族オキシカルボニル単位としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4´−ヒドロキシジフェニル−4−カルボン酸から生成した構造単位を、芳香族ジオキシ単位としては、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノンから生成した構造単位を、芳香族ジカルボニル単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位を、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールから生成した構造単位を例示することができる。具体例としては、p−オキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート、p−オキシ安息香酸/6−オキシ−2−ナフトエ酸などのサーモトロピック液晶性ポリエステルが挙げられる。
【0120】
(マット剤)
マット剤としては、無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよい。無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルローストリアセテートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0121】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール76、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール312及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0122】
セルロースアシレート、溶剤及び添加剤については、特開2005−104148号に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 溶液製膜設備
12 流延ドープ製造設備
14 原料ドープ
15 添加剤
16 流延ドープ
18 フィルム
71 駆動軸
85 混合ユニット
90 ステータ
90A 流通管部
90B 狭管部
91 回転羽根
95D 動的混合機
95S 静的混合機
96 隙間
100 エレメント群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、
前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部と、
前記動的混合部の入口部よりも流路断面積が小さく前記流通管の出口に連接する狭流路が設けられた狭流路部品及び前記狭流路部品に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部とを備えたことを特徴とする混合装置。
【請求項2】
液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、
前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通するプレ混合流路が設けられたプレ混合部品及び前記プレ混合部品に固設されたプレ混合エレメントを有し、前記プレ混合エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合するプレ静的混合部と、
前記プレ混合流路の出口に連接する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔し前記プレ混合エレメントに隣接するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部とを備えたことを特徴とする混合装置。
【請求項3】
前記動的混合部の入口部よりも流路断面積が小さく前記流通管の出口に連接する狭流路が設けられた狭流路部品及び前記狭流路部品に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部を備えたことを特徴とする請求項2記載の混合装置。
【請求項4】
前記静的混合部が前記狭流路内に配されたことを特徴とする請求項1または3記載の混合装置。
【請求項5】
前記静的混合部は、前記狭流路の出口を覆うように設けられたことを特徴とする請求項1または3記載の混合装置。
【請求項6】
前記狭流路は、第1狭流路と、前記第1狭流路の出口に連接し流路断面積が前記第1狭流路よりも大きい第2狭流路とを備えたことを特徴とする請求項1、3〜5記載の混合装置。
【請求項7】
前記狭流路の出口に連接する第2の前記流通管及び前記第2の流通管の内壁面から離隔するように前記第2の流通管内に配された第2の前記回転部材を有し、前記第2の流通管の内壁面及び前記第2の回転部材の隙間を流れる前記液を前記第2の回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる第2の前記動的混合部を備えたことを特徴とする請求項1、3〜6記載の混合装置。
【請求項8】
液状の添加剤とポリマー液との混合を行なう混合装置において、
前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液が流通する流通管及び前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材を有し、前記内壁面及び前記回転部材の隙間を流れる前記液を前記回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる動的混合部と、
前記隙間にて前記流通管に固設された分断エレメントを有し、前記分断エレメントを用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合部とを備えたことを特徴とする混合装置。
【請求項9】
前記狭流路の出口に連接する第2の前記流通管及び前記第2の流通管の内壁面から離隔するように配された第2の前記回転部材を有し、前記内壁面及び前記第2の回転部材の隙間を流れる前記液を前記第2の回転部材の回転によりせん断方向に歪ませる第2の前記動的混合部を備えたことを特徴とする請求項8記載の混合装置。
【請求項10】
前記回転部材の内径が前記流通管の入口から出口に向かって漸減することを特徴とする請求項1,3〜9記載の混合装置。
【請求項11】
前記ポリマー液の粘度Aと前記添加剤の粘度Bとの比A/Bは100以上であることを特徴とする請求項1、3〜10のうちいずれか1項記載の混合装置。
【請求項12】
請求項1〜11の混合装置を用いて、ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なうことを特徴とする流延ドープの製造方法。
【請求項13】
ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なう流延ドープの製造方法において、
前記ポリマー液に前記添加剤を添加する添加工程と、
前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液をせん断方向に歪ませて、前記液の粘度を低下させる低粘度化工程と、
前記低粘度化工程における前記液の粘度の低下分が回復する前に行なわれ、静的混合機を用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合工程と
を有することを特徴とする流延ドープの製造方法。
【請求項14】
ポリマー液及び液状の添加剤の混合を行なう流延ドープの製造方法において、
前記ポリマー液に前記添加剤を添加する添加工程と、
前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液の分断により、前記添加剤及び前記ポリマー液を混合するプレ静的混合工程と、
前記プレ静的混合工程による前記液の歪みが回復する前に行なわれ、前記液をせん断方向に歪ませて前記液の粘度を低下させる低粘度化工程とを有することを特徴とする流延ドープの製造方法。
【請求項15】
前記低粘度化工程における前記液の粘度の低下分が回復する前に行なわれ、静的混合機を用いて前記添加剤及び前記ポリマー液を混合する静的混合工程を有することを特徴とする請求項14記載の流延ドープの製造方法。
【請求項16】
前記静的混合工程による前記液の歪が回復する前に行なわれ、前記添加剤及び前記ポリマー液を含む液をせん断方向に歪ませて、前記添加剤及び前記ポリマー液の界面を増大させる界面増大工程を有することを特徴とする請求項13または15記載の流延ドープの製造方法。
【請求項17】
前記低粘度化工程または前記界面増大工程では、前記液が導入される流通管と前記流通管の内壁面から離隔するように前記流通管内に配された回転部材との隙間を流れる前記液を、前記回転部材の回転を用いてせん断方向に歪ませることを特徴とする請求項11ないし16のうちいずれか1項記載の流延ドープの製造方法。
【請求項18】
請求項11ないし17のうちいずれか1項記載の流延ドープの製造方法によって得られたドープを用いて、支持体上にドープを流出して、前記ドープからなる膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、
前記膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記支持体から剥ぎ取り湿潤フィルムとする剥離工程と、
前記湿潤フィルムから溶剤を蒸発させるフィルム乾燥工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−6347(P2013−6347A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140530(P2011−140530)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】