説明

渡航書類および個人書類の検証、生体データの読み取り、当該書類所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイス

本発明によれば、統合非接触型または接触型チップのついた書類を含め、パスポート、査証、ID書類の確認と検証を可能にするハンドヘルドポータブルデバイスは、生体データ、すなわち指紋、顔画像、または目の虹彩画像を必要とする場合があり、書類所持者の本人確認を行うのにかかるデータ収集方法に基づいた場合、採取した指紋、顔画像または目の虹彩画像に基づいて、それぞれ、ID書類なしに人物の本人確認を行う場合がある。こうした画像はホストコンピューターに送信され、当該人物から採取されたデータと渡航書類およびID書類が発行された人物のデータベースにあるデータとが比較された後に、ホストコンピューターから読み取られたデータが戻され、転送されてハンドヘルドデバイスのオプティカルディスプレイに表示される。また、作業員はタッチセンシティブオプティカルディスプレイまたはキーボードを使って有線または無線接続を行うことでホストコンピューターと通信する機会を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、生体データの読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認を目的としたハンドヘルドポータブルデバイスは、パスポート、査証、IDカード等の渡航書類および本人確認書類の真性を検証するために、可視光、赤外線(IR)、および紫外線(UV)放射の波動または粒子を使用する制御デバイスの情報テクノロジーの応用分野に属するものであり、また波長を特定しない光を使用した反射光のオプティカルスキャニング等の電磁放射による記録キャリアの検知デバイスに属するものでもあり、また画像処理、すなわちIDを確立しない画像情報の処理や光学リファレンスマスクを使用した調整を行うことで、印刷または書かれた文字の形状にあるマークを認識、あるいはパターン(指紋等)を認識するデバイスに属するものでもあり、また出入国時の本人確認と個人登録を行うデバイスに属するものでもある。
【背景技術】
【0002】
本発明によれば、パスポートおよび個人書類の確認、生体データの読み取り、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスは、電子チップ(接触または非接触型)が埋め込まれた書類を含む、パスポート、査証、またはIDカード等の個人書類を確認することを目的としたデバイスの実現という問題を解決するものである。これらの書類は最新の機械可読書類に関する国際推奨と標準(例えば、国際民間航空機関のICAO9303推奨および国際規格 ISO 7501)に則って作成されており、機械可読の人口統計学的データおよび生体データおよび安全特性を含んでおり、確認作業においては複数のスペクトラムによる(白色光、赤外線(IR)光および紫外線(UV)光の照明)によるパスポートのページ全体のスキャニングおよび接触型(電子IDカード)または非接触型インターフェース(電子パスポート)チップを使った実際の電子書類の読み取りが行われる。本デバイスにより、書類、テキスト、データ、1Dおよび2Dバーコードおよび電子透かしの機械可読ゾーンの読み取りに関する問題が解決される。本発明により解決されるもう一つの問題は、書類自体の真偽の確認に加え、書類から読み取られた指紋と書類を提示する人物の指紋とを比較することで、書類を提示している人物の自動検証が行え、また書類から読み取られた顔画像と本人の顔画像の比較、または本人確認検証の間に書類から読み取られた目の虹彩と本人の目の虹彩の比較も、いわゆる1:1検証、または本人確認検証の間に行えるデバイスが実現していることである。本発明の目的は、いわゆる1:N検証、すなわち顔による本人確認問題の解決策を見付けることでもあり、これはある人物が書類を所持していない場合に、採取された生体データ(指紋、顔、および/または目の虹彩の映像)を有線または無線接続を使用したデバイスと接続されているデータベースに送り、データベースの検索を行うという形で行われる。本発明によりさらに解決を見ることができる技術上の問題は、要警戒リスト(デバイス自体のメモリーに保存できる)の確認が可能になることである。
【0003】
単一のロケーションで実施される書類管理プロセスは、書類収集に必要な時間、管理デバイスを使ってチェックポイントまで届ける時間、またその後渡航者に書類を戻す時間のため途方もなく長い時間がかかり、また書類を所持する渡航者が管理デバイスの傍を通り、そこで入国管理員が渡航者の渡航書類を検証するというプロセスもまた渡航者の出入国の移動を遅らせるものであることが明らかになっており、出入国に際して、迅速で効率的な書類審査を行うことが必要となっている。このため、耐久性のある、コンパクトサイズで、手にして持ち運べ、列車、バス等の屋外での使用が可能な完全統合型の、シンプルなデバイスを作ることで問題を解決する必要性が確立されている。
【0004】
書類をデバイスに置いた直後に短時間でこれを読み取り、同時に、書類に関する国際推奨および標準に従った(例えば国際民間航空機関のICAO 9303 推奨および国際規格 ISO 7501)、機械可読の、一定の人口学および生体データおよび安全特性を含んだ数多くの異なるエレメントを読み取ることができ、これによりデータの読み取り、相互比較、検査を行う権限を持つ役人に試験結果を示し、役人が精査または検索を行うために各審査結果をアーカイブに保存することができるマルチ機能のデバイスを実現する必要から、書類の確認と検証を行う多種多様なデバイスが出現した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Datastrip Products Co. (米国)、Bundesdrukerei GmbH (ドイツ)、SAGEM (フランス)等の公知の製造会社による既存のハンドヘルドポータブルデバイスには、以下に挙げられるように、いくつかのかなり不利な点がある。これらのデバイスでは、ページ全体の書類スキャンができず、機械可読ゾーン(MRZ)のみのスキャンになる。また、バーコードのスキャンには異なるモジュールを使用しなくてはならない。さらに、スキャンされた画像からは顔画像を抽出することができない。また、顔画像から電子透かしを確認できない。最後に、これらのデバイスでは赤外線(IR)光のみを使用するため、紫外線(UV)の保護エレメントまたは変化する光学エレメント(ホログラムまたは同様の記録)等の自動検証ができない。市場に現在あるソリューションの最大の欠点は開かれた電子パスポートをゆっくりと線スキャンし、非接触型チップを読み取るために特定の位置にパスポートを置くというメカニズムが使われているか、または開かれたパスポートを手で機会可読ゾーン(MRZ)リーダーにかざし、閉じてから、これを非接触型チップの読み取りのためにある位置に置き、また書類にバーコードがある場合には、バーコードを読み取るための追加の作業が必要となるという事実に反映されている。こうしたソリューションにおいて、さらに不利な点は、書類に厚みがある場合デバイスに通す際に問題が発生する場合があるということである。パスポートをデバイスに通すというメカニズムによるソリューションには、機能不全や不均一な動き等を起こしやすい可動部分があることからくる、さらなる欠点がある。読み取りデバイスに書類を通す形のソリューションすべてにある最大の欠点は、書類を損傷する可能性があることである。すなわち、薄くて柔らかい簡単に曲がりやすい書類ページでよく起こる問題であるが、しわになったり、ひどいケースでは破れたり、書類が通過中のデバイスのギャップに挟まったりする場合がある。前記のすべての不利な点からは、作業員の両手が機械可読ゾーンおよびチップの読み取りの間ふさがっている(最長20秒)という事実による問題がさらに引き起こされる。
【0006】
光学線スキャナを使用している既知のソリューションにおいては、通常光学線スキャンは読み取りを行うためにデバイスのトップに組み立てられるため、容易に損傷を受けやすい状態に置かれており、また既述のように、長期にわたる作業においては可動部分(複雑な機械構造)の故障の可能性が増大する。
【0007】
もう一つの既知のハンドヘルドデバイスでよく知られている欠点は、書類をスキャナに通す間、入国管理員の両手が塞がり、ハンドヘルドデバイスに書類を通す作業が数秒後に完了した後、書類がバーコードを含んでいる場合には、作業員はバーコードリーダーの前に書類を配置するという別の作業を行わなくてはならないことである。さらに、既知のソリューションの欠点は、書類にある非接触型チップの読み取りに、さらに追加の作業が必要とされることである。
【0008】
既存のハンドヘルドデバイスには、非接触型チップ読み取りのための小さなアンテナがあるが、「シールドされた」電子パスポート(書類のカバーにさらに導電糸(conductive threads)がある場合、パスポートが閉じられると、パスポートカバーがチップをさらに「シールドする」ことになる)では、その読み取りが行われない。このため、作業員は、再び両手を使って書類を開け、アンテナの上方に移動させ、書類の内側にある非接触型チップの位置を探し、見つけると、今度はそれを適切に読み込むよう注意を払わなくてはならず、この読み取り作業が正確に行われるように細心の注意を払い、集中しなくてはならない。前述のすべてに加え、既知のデバイスでは限られた厚さの書類しか扱えないことを強調する必要がある。
【0009】
既知のソリューションの問題や欠点を解決には、例えば耐久性がある作りで、コンパクトサイズ、人間工学的特長を備え、手に持って持ち運ぶのに適し、屋外でも使えるといった完全統合型のポータブルハンドヘルドデバイスの実現があるが、これは一つの位置で同時に書類のオプティカルスキャニングと電子(ワイヤレス)読み取りを行い、デバイスの下部にあるスキャン/読み取り表面上に書類自体を配置することによりスキャニングが開始され、そしてそれに伸縮する書類ホルダーが添えられ(これにより入国管理員が書類を配置した後に手が自由になる)、様々なサイズ(サイズID−3まで)または異なる厚さの書類のページ全体のオプティカルスキャニングが行われるもので、前述したことが、結果として本発明による生体データを読み取り、渡航書類および本人確認書類を検証し、当該書類の所持者の本人確認を行うためのハンドヘルドポータブルデバイスの構築に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生体データを読み取り、渡航書類および個人書類を検証し、当該書類の所持者の本人確認を行うためのハンドヘルドポータブルデバイスは、前述の技術上の問題を解決し、既知のソリューションにある記述した欠点を排除し、手に持って持ち運ぶのに適した屋外で使用可能な完全統合型ポータブルデバイスとして実現しており、独自のバッテリー電源供給をもち(バッテリーは適切なアダプターにより充電される)、ベースにはバッテリー充電ポート以外に、デバイスとPC間の接続と通信を行うためのUSBクライアント、USBホスト、イーサネット(登録商標)、RS−232ポートが備わっている。本発明によれば、生体データを読み取り、渡航書類およびID書類を検証し、当該書類の所持者の本人確認を行うためのハンドヘルドポータブルデバイスは、コンピューターとタッチスクリーンの大型カラーディスプレイを搭載しており、書類(たとえば、非接触型チップのある電子パスポート)はデバイス下部にあるオプティカルスキャニングを行うための大きな表面に置かれ、これにより書類のオプティカルスキャニングと非接触型チップからのデータの読み取りが同時に行われる。デバイス内の光学スキャナは白色光、赤外線(IR)光、および紫外線(UV)光を使用しており、デバイスはまた接触型および非接触型電子カードリーダー(スマートカード)、SAMモジュールリーダー(携帯電話機の小型SIMカードのようなもの)、ならびに指紋読取装置を備えている。光学的な実施例には、書類を提示する人物の本人確認を行うための、人物の顔画像を取り込むカメラ、LED光(フラッシュのようなもの)、照明付き目の虹彩スキャンモジュール、ワイヤレスコミュニケーションモジュール(GSM(登録商標)/GPRS/EDGE/3G/CDMA、TETRA、Wi−Fi、WiMax、Bluetooth(登録商標))、データが採られた場所(ロケーション)の情報を提供するGPSモジュールが備わっている。既述のワイヤレス接続の他にも、デバイスは、USBクライアント、USBホスト、イーサネット(登録商標)、RS−232等の多くの標準的有線ポートを備えている場合がある。
【0011】
本発明によれば、ハンドヘルドポータブルデバイスの取り扱いが簡単なことは、少し離れたところからパスポートの全ページを同時にオプティカルスキャニングし、また大きなエリアからチップの中身を読み取ることが可能なため、小型でスリムなデバイスとなることに反映されている。また、書類の機械可読ゾーン、データ付きテキスト、1Dおよび2Dバーコード、ならびに電子透かし読み取りも行う。書類自体の真性を確認するだけでなく、その人物の指紋と書類から読み取られた指紋との比較により、またその人物の顔画像と書類から読み取られた顔画像との比較により、またその人物の目の虹彩と書類から読み取られた目の虹彩との比較により(1:1検証、または本人確認検証)、また1:N検証、すなわちその人物が書類を所持していない場合に、採取された生体データ(指紋、顔画像および目の虹彩画像)をデバイスと接続されているデータベースに有線または無線手段を使って送信し、データベースの検索を行うことでその人物の本人確認を行うことにより、書類を提示する人物の自動検証を行うことが可能である。これらのデータがデバイス自体に保存されている場合、指名手配中の人物の要警戒リストの確認をすることも可能である。
【0012】
本発明の生体データの読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスは、付属の図面に示されており、参照番号は、デバイスの同一エレメントを示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のハンドヘルドポータブルデバイスがコンピューターとの通信用の複数のコネクターを備えたバッテリー充電スタンドの上に置かれた外観を示している。
【図2】デバイスの正面、右側面、下側を表すハンドヘルドデバイスの軸測投影図を示している。
【図3】デバイスの上面、右側面、背面を表すハンドヘルドデバイスの軸測投影図とデータ読取位置にあるパスポートを示している。
【図4】デバイスの上面、右側面、背面を表すハンドヘルドデバイスの軸測投影図をパスポートなしで示したものである。
【図5】デバイスの正面、右側面、底面を表す内部軸測投影図を筺体および光学スキャナなしで示したものである。
【図6】デバイスの上面、右側面、背面を表す内部軸測投影図を、筺体なしで示したものである。
【図7】デバイスの背面、右側面、底面を表す内部軸測投影図を、筺体なしで示したものである。
【図8】デバイスの光学スキャナの軸測投影図で、パスポートが透明な表面の上に、読取位置に置かれているところを示している。
【図9】光学スキャナの右側投影図で、パスポートが透明な表面の上に読取位置に置かれているところを示している。
【図10】データページのビューと査証のあるページの一部のビューがある、ICAO 9303の推奨に従ったID−3様式のパスポートの配置図を示している。
【図11】ICAO 9303推奨に従った標準的なパスポートデータページのデータのレイアウトと可読ゾーンを示している。
【図12】ICAO 9303推奨に従った、標準的な機械可読査証のデータのレイアウトと可読ゾーンを示している。
【図13】データのレイアウトと機械可読ゾーンのあるID−1サイズの標準的生体IDカードのレイアウトを示している。
【図14】ハンドヘルドポータブルデバイスのブロック図を示している。
【図15】ハンドヘルドポータブルデバイスの光学スキャナのブロック図を示している。
【図16】センサおよび光学マトリクスのアプリケーション回路図を示している。
【図17】実装された照明の回路図を示している。
【図18】デバイスのオプティカルスキャニングのアルゴリズムを示している。
【図19】本発明のハンドヘルドポータブルデバイスの使用と操作のアルゴリズムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、コンピューターとの複数の通信ポートを備えたバッテリー充電スタンドに置かれている、本発明の生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスの外観を示している。機能キー(非表示)付きコマンドパネル3、ラウドスピーカー4、およびタッチセンシティブオプティカルディスプレイ5が、デバイスの筺体1の正面2に統合されている。指紋スキャナ7は筺体1の上面6の上に置かれ、コンタクトカードリーダー9の長方形スロットが、右側面8に見える。生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスは、デバイスの底面11にあるポートとスタンド10の適切なコネクター(バッテリーの充電、ホストコンピューターとのコミュニケーション(USBおよびイーサネット(登録商標)ポート等)用)間の接続を可能にするインターフェースのあるスタンド10の上に置かれている。
【0015】
図2は、デバイスの正面2、右側面8、および底面11を表すハンドヘルドポータブルデバイスの不等角投影図を示している。機能キー(非表示)付きコマンドパネル3、ラウドスピーカー4、およびタッチセンシティブオプティカルディスプレイ5が、正面2に統合されており、コンタクトカードリーダー9の長方形スロットが、右側面8に見える。デバイス底面11には、デバイスとホストコンピューターのコミュニケーションに使用される各種のポート(バッテリー充電用のポート12、USBホストコネクター13、イーサネット(登録商標)ポート14、USBクライアントポート15、およびRS−232ポート16)がある。
【0016】
図3は、デバイスの上面6、右側面8、および背面17を表すハンドヘルドポータブルデバイスの不等角投影図を示しており、スキャナの透明なプレートの上にデータページが開かれたパスポート18が置かれており(読取データの位置にある)、パスポート18は柔軟なパスポートホルダー19により読取位置に置かれ、固定されている。
【0017】
図4は、デバイスの上面6、右側面8、および背面17を表すハンドヘルドポータブルデバイスの不等角投影図を示しており、パスポートはなく、デバイスの背面17の下半分の上にあるスキャナの透明なプレート20(これはガラス、硬質プラスチック、あるいは他の透明素材でできており、その上にパスポートのデータページが置かれる)が見えている。背面17の上半分の上には本人確認と検証が行われる人物の画像を撮るための照明付きカメラ21、および同一人物の目の虹彩をスキャンするモジュール22が置かれている。
【0018】
図5は、筺体および光学スキャナなしのデバイスの正面、右側面、底面の内側不等角投影図を示している。ここでは、生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスの内側に格納されたエレメントの位置が見える。非接触型カードリーダー91は接触型カードリーダー9の近くに描かれている。図5は、また、開かれたパスポート18全体(両ページ)を電磁場が覆う大型アンテナ23、バッテリー24、内部に暗号キーおよびその他の最先端のデジタル保護システムの暗号エレメントを格納しているSAMチップ(SAM1およびSAM2)のリーダー25、26、ならびにGPSモジュール30のようなデバイスとコンピューター間の無線コミュニケーションを行うための一連のモジュール27、28および29を示している。
【0019】
図6は、指紋スキャナ7のある上面、筺体なしの右側面および背面を表すデバイスの内側の不等角投影図を示している。ここでは、レンズ32(1つのみ示される)付きセンサ31等のスキャナエレメントが支持板40上にマトリクス配列され、また、白色、赤外線および紫外線LEDが上部に配列されている照明キャリア33を見ることができる。
【0020】
図7は、筺体なし状態で背面、右側面、および底面を表すデバイスの内側の不等角投影図を示しており、マトリクスに配置されたレンズ32(1つのみ示される)付きセンサ31およびLED付き照明キャリア33からなるスキャナエレメントを備えた指示板40を見ることができる。
【0021】
図8は、デバイスの光学スキャナの不等角投影図を示している。ここでは、透明の表面20に読取位置に置かれているパスポート18も示されており、より明確な図面を提供するために、レンズ32付きオプティカルイメージセンサ31を含む1ユニットの位置のみが示されている。これらのユニットは、マトリクスに配列され、各センサがエリアの一部のみをスキャンし、隣接するセンサの端のマージンが重なり合うことにより個々のセンサの個々の画像からなる「全体像」が得られ、そこでは重なり部分は知覚できない。
【0022】
図9は、パスポートが読取位置にて透明な表面の上に置かれている光学スキャナの側面投影図を示している。スキャンする対象物を照らすエレメントおよび光学素子のセンサからなる検出エレメントが相互に間隔を置いて配列されているのが示されている。ここでは図面を簡潔にするため1ユニットのみが示されている。
【0023】
図10は、ICAO 9303の推奨に従った、データページのビューと査証ページの一部のビューがある半分開いた状態のID−3様式のパスポートの配置図を示している。データページ4にはパスポートを発行した国または組織の名前があるエリア、パスポート所持者の画像上方には書類またはパスポートの登録情報があるゾーン、また画像右側にはパスポート所持者の姓、名、誕生日(場所、日付等)、個人のID番号、住所、発行日と有効期間等の人口統計学的情報のゾーンがある。人口統計学的情報ゾーンの下には、光学バーコードのゾーンがある。書類所持者に関する本人確認データページの一番下には、パスポートのページ縦全体にわたり光学式読取可能文字(OCR)で書かれた機械可読ゾーン(MRZ)がある。パスポートが閉じた状態では「シールドされた」、すなわち生体データのある非接触型チップの認証されていない読取は、パスポートを開いてない状態でできないようにする導電糸が前後のカバーに含まれているパスポートがあることに注意する必要がある。
【0024】
図11は、ICAO9303推奨に従った、標準的なID−3様式のパスポートデータページにあるレイアウトデータと可読ゾーンを示している。ここでは、上方部分には書類を発行した国または組織の名前のあるゾーンがあり、この下、真ん中から左に3分の1のところのパスポート所持者の画像上方には書類またはパスポートの種類に関する登録情報のゾーンがある。また真ん中から3分の2のところにはパスポート所持者に関する人口統計学的データ(姓、名、誕生データ(場所、日付等)、個人ID番号、居住住所、発効日と有効期間等)が広がっている。また、このゾーンの下には光学バーコードのためのゾーンがある。書類所持者の本人確認データの一番下、パスポートのページ縦全体にわたりスキャナで読み取れる光学式読取可能文字(OCR)で書かれた機械可読ゾーン(MRZ)がある。
【0025】
図12は、ICAO 9303推奨に従った、標準的な機械可読査証のデータのレイアウトと読取ゾーンを示している。これには同様に配置されたデータがあり、アンテナを通してのみ読み取り可能なデータのある非接触型チップを含んでいる場合がある。
【0026】
図13は、データのレイアウトと機械可読ゾーンのあるID−1サイズの標準的生体IDカードの外観を示しており、接触インターフェース(contact interface)のあるチップが付いており、その下方には3つのストリップがある機械可読ゾーンがある。
【0027】
ICAO 9303推奨またはISO7501 基準により定義された書類タイプに準拠した本発明のハンドヘルドポータブルデバイスでは、パスポート(ID−3サイズ)、査証様式A(ID−3書類の中に収まる)、査証様式(ID−2サイズ)、TD1カード(ID−1サイズ)、TD2カード/ラベル/ステッカー(ID−2サイズ)、および全国IDカードならびに運転免許証の読み取りが可能である。
【0028】
図14は、本発明の生体データを読み取り、渡航書類および個人書類を検証し、当該書類の所持者の本人確認を行うハンドヘルドポータブルデバイスを示しており、このハンドヘルドポータブルデバイスに含まれている基本的な構造の考え方と電子部品を見ることができる。これらの電子部品には図面のデバイスの組み立て部分の番号と同一の参照番号が表示されている。これにより本発明の該ポータブルハンドヘルドデバイスは渡航書類および本人確認書類(パスポート、査証、IDカード、非接触型または接触型チップが埋め込まれた書類)の確認および検証を行うことができ、書類所持者の指紋、顔および目の虹彩等の生体データを読み取り、また、こうした収集データに基づいて書類所持者の特定を行う。しかしまた、現場の指紋データ、書類を所持していない人物の写真撮影、および目の虹彩を記録して、該データを渡航書類または本人確認データ発行先の人物のデータベースから取り出されたデータと比較し、採取したデータをホストコンピューターに送り、ホストコンピューターから戻って来たデータをダウンロードしてハンドヘルドポータブルデバイスのオプティカルディスプレイ5に表示することにより、書類なしの人物認識も行える。一方、作業員は、タッチセンシティブオプティカルディスプレイ5およびコマンドパネル3の機能キーパッドを通じて有線・無線接続によりホストコンピューターと通信する。
【0029】
図15は、ハンドヘルドポータブルデバイスの光学スキャナのブロック図を示している。ハンドヘルドポータブルデバイスに電子光学スキャナのソリューションが実装されているため、異なる種類の照明を使って短い距離で大きなエリアをスキャンすることが可能になる。また、前記の透明な表面20のエレメントに加え、レンズ32付きセンサ31(CMOSセンサまたは一般的にA/Dコンバータおよびシグナル同調コンポーネントが追加されたCCDセンサ)がマトリクスNxM(N、M=1、2、3、すなわち、実現されたデバイスではN=3、およびM=4)に配列されており、白色光、赤外線光および紫外線光を放射するLED付きN+3列パネルからなる照明アセンブリ33(実現されたデバイスではN=3)は、いずれのセンサ31についても視野角に入らないように、また全体反射に起因する反射光線が、対応するセンサの視野角に入らないように配置され、可能な限り同質の光(白色、IR、およびUV)が得られるようになっている。光学スキャナの電子制御装置アセンブリは照明を制御し、必要な場合は一定のセンサおよび選定された光(白色、IR、UV)に必要なLEDのみを点灯することを述べておく。各センサ31は対象物(書類の全体ページの一部)の「該当」部分を余分のマージンをもってスキャンするため、隣接するセンサは両方のセンサに共通な対象物の表面部分をスキャンする。これにより大きな(統合)画像における個々の画像を継ぎ目が分からないよう整合することが可能になる。センサ31の個々の画像の送受信を行い、センサ31の動作パラメータを設定し、そして照明キャリア33を制御する電子アセンブリは、いわゆるフレーム取り込み装置(frame grabber)とよばれ、センサ31と交信する光学スキャナ制御装置(I2C制御装置)、照明キャリア33を制御するレジスタ、スキャンされた画像の一時的なキャプチャと保存を行うRAMメモリ、制御および同期信号を提供する論理回路、ならびにインターフェース、すなわちPCI Expressコントローラーからなり、PCI Expressコントローラーは、処理ユニット(実現しているソリューションではミニチュアのPC、すなわちX86アーキテクチャを持つコンピューター)とデータの送受信を行い、個々のセンサ31の一つひとつのアウトプットがデータ転送(データバス)用の共通8−bitバスに接続され、これを介して単一センサ31により記録された画像データが処理される。1マトリクス列にある4つのセンサ31から送り出されるデータを受け入れる32−bitデータバスを介して接続することも可能である。書類の配置、スキャニング、スキャン終了の手順は、コンポーネントおよびアセンブリの状況および適切な出力を示す表示(聴覚および視覚)に従って行われる。
【0030】
図16は、オブジェクトレンズO付き表面オプティカルセンサSの各センサがマトリクスNxM(N、M=1、2、3・・・)に配列されたものを示しており、実現されたデバイスでは3x4マトリクスの配列で、透明な表面20(ガラス、硬質透明プラスチック等)に平行しているため、各センサ31は対象物(書類の全体ページ)の「該当」部分をスキャンし、そこから統合画像が作成される。
【0031】
図17は、LED付きの同一プレートから構成される実装された照明のブロック図を示しており、各プレート上のLEDは白色光、IR光およびUV光を放射し、センサの各列にはLED付きプレート1ペアがある実施例では、照明は、白色光、IR光、およびUV光のLEDを備えた6つの同一のキャリアプレート33から構成されており、これらの6プレートは幾何学的に3つのペアプレート(1−4、2−5、3−6)に配列され、各センサ列にはLED付きプレート1ペアがある。各プレートとその上のLEDは強度が大きく、また可能な限り均一の光(白色、IR、およびUV)を出し、センサの視野角に入らないように配置されている。また、全体反射による反射光線が対応するセンサの視野角に入らないようになっている。照明を制御する電子制御装置により、特定のセンサおよび選定された光に必要とされるLEDのみをオンにすることができる。例えば、1列目の4つのセンサの1つを使って白色の画像スキャンが行われる場合、1番目と4番目(1−4)の照明プレート上にある白色LEDのみが点灯する。2列目の4つのセンサのうち1つを使って白色画像スキャンが行われる場合、2番目と5番目(2−5)の照明プレート上にある白色LEDのみが点灯する。3列目の4つのセンサのうち1つを使って白色画像スキャンが行われる場合、3番目と6番目(3−6) の照明プレート上にある白色LEDのみが点灯する。このようにして、LEDの全体反射による干渉なしに、すべての12個のセンサを使った連続スキャンを行うことが可能である。
【0032】
別のタイプの照明(IRまたはUV)を使用した画像スキャニングの手順も、他のLEDライトが選定され、点灯されるという点を除いては同様である。同列にある全ての4個のセンサによるスキャンを同時に行うことは、3列のセンサを3回スキャンすることで可能である。このソリューションは高速スキャンを可能にするため優れてはいるが、制御電子回路はより複雑なものになる。
【0033】
前述のスキャナをNxMマトリクスで一般化することは可能である。この場合、その照明はNペアの照明パネルで実現される。しかし、分析を行った結果、ID−3サイズの書類表面をスキャンするには、3x4センサを備えたソリューションが全体的な寸法を最小にする上で最適であることが明らかになっている。
【0034】
ハンドヘルドポータブルデバイスを製作、組み立てる場合、調整が行われ、すなわち、後に単一センサ画像を望まれる画質の統合画像に操作、適合する際に使用される画像パラメーターの定義のことである。デバイスの調整は、デバイス製造の際に一度だけ行われる。特別にスキャンされた対象物(平坦な表面に印刷される)が調整目的のために使用される。パラメーターは決定され、保存され、デバイス自体の永久的保存場所で保管される。こうしたパラメーターは高質の統合画像を得るためには不可欠のものである。デバイス使用中に、書類の光学スキャンがされると、保存されたパラメーターが処理中に使用され、見た目に不均一さのない統合画像が作成される。長期間にわたる操作により不整合が出てきた場合には、調整手続きを繰り返すことが可能である。
【0035】
調整プロセスは2つのステップで行われる。第一のステップは、白色バランスを定義しているパラメーター(画像のカラー化)、および照明による光の不均一さやレンズの特徴によって引き起こされるその他の不均一さによる不均一を是正するパラメーターを基に、均質のグレイエリアの画像が12個すべてのセンサで撮られる。第二のステップは、幾何補正および画像マッチングのパラメーターを基に、別個の調整画像が12個すべてのセンサで撮られる。光の不均一補正、幾何補正、および画像マッチングのアルゴリズムは、専門に開発されたアルゴリズム(および画像手順と調整手順)であり、単一のカメラまたは標準的スキャナにより撮られたものであるため、結果として高品質の統合画像を得ることができる。こうしたアルゴリズムはプロセッサユニットで実行される。
【0036】
図18は、センサ31の個々の画像に基づく統合画像を得るための該ハンドヘルドポータブルデバイスにおけるオプティカルスキャニングのアルゴリズムを示している。これは、透明な表面20に書類を置くことで始まり、ステップ100において選定された照明が点灯される。ステップ100において画像の照明が点灯されると、ステップ110において次のセンサでのスキャニングパラメーターが設定され、ステップ111においてセンサは露出され、ステップ112において結果データ(画像)がメモリー転送される。ステップ113において、制御電子回路は全てのセンサがスキャンされたかをチェックする。スキャンされていない場合には、ステップ110において次のセンサでのスキャニングパラメーターを設定する。ステップ113のチェックにおいてすべてのセンサがスキャンされていることが確認されるまで、すべてのプロセスが繰り返される。ステップ120において、前記のスキャニングと同時に画像処理の準備が整っているかの確認が行われる。準備が整っている場合には、ステップ121において受け取り画像の処理が行われる。ステップ122においてすべての画像が処理されると、ステップ130で統合画像が作成され、これにてスキャンプロセスが終了する。
【0037】
図19は、非接触型チップで渡航書類および個人書類を確認する際の、またパスポート、査証またはIDカード等の当該書類を提示する書類所持者の本人確認を検証する際のハンドヘルドポータブルデバイスの使用および操作アルゴリズムを示している。書類を所持していない人物の本人確認、人物の顔画像または目の虹彩画像の採取、接触型チップの読み取り等はここでは示されていない。本アルゴリズムは、白色光、IR光、およびUV光の照明によるパスポートの全体ページのスキャニング、および書類、テキストデータ、1Dおよび2Dのバーコード、ならびに電子透かしの機会可読ゾーン(MRZ)の読み取りが行われる接触型(e−ID)または非接触型インターフェイス(電子パスポート)によるチップの付いた現行の電子書類の読み取りを含むチェックを示している。ID−1形式の書類はその配置にかかわらず、コードがあるページをスキャナに面して、透明プレート20の上に置くことで通常読み取られる。書類の真性の確認に加え、書類から読み取られた顔画像と書類所持者の顔画像を比較し、書類から読み取られた目の虹彩画像と書類所持者の目の虹彩を比較することにより(いわゆる1:1検証、または個人の本人確認の検証)書類所持者の自動検証を行うことも可能である。
【0038】
該処理は、ステップ200において、電子パスポート18を書類保持者の画像とデータのあるページを開いた状態で透明な表面20に面して置くことにより始まり、ステップ201において書類の自動検知が開始され、その後ステップ202において、選定された光を使用した機械可読ゾーン(MRZ)のスキャニングが開始される。ステップ210において書類のページの残りの部分のスキャニングが行われ、ステップ211において選定された光によるスキャニングが行われる。その他の光の種類による書類の全ページのスキャニングは、ステップ212において、すべての画像のスキャニングが終了するまで行われる。ステップ210から212と同時に次のステップが実行される。ステップ310において、画像処理の準備ができているかを確認する。準備ができている場合は、ステップ311において画像処理が行われ、ステップ312において画像コンテンツの分析が行われ、ステップ313においてデータの読み取りが行われる。ステップ410において、スキャンされた書類のMRZの光学文字の読み取りが行われ(MRZにあるOCR−B文字)、ステップ420においてチップデータの読み取りが行われる。ステップ500において書類保持者の指を指紋スキャナ7の上に置き、ステップ501においてハンドヘルドポータブルデバイスは指紋のスキャンを行う。
【0039】
さらなる手順では、ステップ600においてデータ検証が行われ、ステップ601にて報告書が作成され、ステップ602において書類から読み取られたデータと書類所持者についてのデータに不一致があると、ステップ603において警告が発動される。ステップ600から603が行われると同時に、ステップ700においてディスプレイのためのデータおよび報告書の準備がされ、ステップ701においてオプティカルディプレイ5上にてデータおよびレポートが表示され、ステップ702において書類および/または人物の検証を行う権限をもった人物による視覚的コントロールが行われる。ステップ800における視聴覚表示では、書類の読み取りプロセスの状況を表示し、書類の読み取りプロセスが完了したことが示され、その後ステップ810において書類が書類のスキャニング/読み取り場所から取り除かれると、ハンドヘルドポータブルデバイスは新たなスタート準備、渡航書類および本人確認書類の新たな検証準備、ならびにパスポート、査証、またはIDカード(いわゆる1:1検証または本人確認検証)等の書類所持者の本人確認検査を行う準備が整う。既述のように、人物が書類を所持していない場合でも、該ハンドヘルドポータブルデバイスにより採取された生体データをハンドヘルドポータブルデバイスと有線または無線手段により接続されているデータベースに送信し、データベースで検索を行うことで1:N検証、すなわち個人の本人確認を行うことも可能である。また、デバイス自体に保存することができる指名手配人物の要警戒リストを確認することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
開示された本発明の生体データの読み取り、渡航書類および個人書類の検証、ならびに、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスの添付の図面を検査することにより、本発明のデバイスはパスポート(ID−3サイズ)等の書類(ICAO 9303の推奨およびISO 7501基準で定義されている)、様式Aの査証(ID−3書類に納めることができる)、様式Bの査証(サイズID−2)、TD1カード(サイズID−1)、TD2カード/ラベル/ステッカー(サイズID−2)ならびに全国IDカードと運転免許証を読み取ることができることから、その利点と好機を判定することは可能である。
【0041】
書類内ではアンテナ付きチップの位置は任意であることは知られているところであり、このため、例えば、パスポートにおいては、このチップは前のカバーまたは後ろのカバー、データページ、またはパスポートの真ん中のページにある。ページ内における場所または幾何学的配置は定義されていない。本発明のハンドヘルドポータブルデバイスでは、チップおよびアンテナが置かれた書類内の場所に関係なく、またデバイス上の書類の主要な唯一の位置に、読み取りおよび/または検証のために書類が設定されているかに関係なく、チップの中身を読み取ることが可能である。これは、とりわけ 2つの ID−3 書類のサイズ(パスポートを開いた大きさ)に対応する大型アンテナにより可能となる。もう一つの実施例においては、小さな寸法のアンテナを2つ配置することによってこれが実現でき、この場合、各アンテナの範囲は、開いたパスポートの各半分をカバーする。
【0042】
また、書類の中の人物画像は、確認が可能な電子透かしにより保護されている場合があることも知られている。本発明のハンドヘルドポータブルデバイスにより、書類のオプティカルスキャニングと適切な処理により得られた人物画像の電子透かしの有効性を確認するコンテンツの抽出が可能になる。
【0043】
本発明によれば、前述されたハンドヘルドポータブルデバイスの仕様における利点に加え、本デバイスは一つの位置において、同時に書類のオプティカルスキャニングと電子的(無線)読み取りを行い、一方で柔軟な書類ホルダーのおかげで、作業者は書類をスキャニング/読み取り位置に置いた後は手が自由になる。また、スキャニング/読み取りのために書類を透明な表面に置くことにより、スキャニング/読み取りが自動的に開始されることも利点である。スキャニング/読み取りが行われる間、書類が置かれている場所はデバイスの背面であることから、作業者はデータの入力またはレポートを読むために、正面に位置しているタッチセンシティブオプティカルディスプレイ5へ自由にアクセスできるさらなる利点は、様々なサイズ(最大ID−3サイズ)および異なる厚さの書類の全体ページのオプティカルスキャニングが行われること、また書類のオプティカルスキャニングは白色光、IR光、UV光により行われること、また書類の機械可読ゾーン(MRZ)のデータの自動抽出と読み取りが行われること、そして2Dバーコードの自動的なデータ抽出と読取が行われること、および1Dバーコードのデータの抽出と読取が行われることに反映されている。優れた利点は、スキャン書類から顔画像を抽出し、スキャン書類から抽出された顔画像の電子透かしを確認することが可能であることである。該ハンドヘルドポータブルデバイスは白色光、IR光、UV光を使用してスキャニング中に書類を照らすため、UV光で見ることができる保護的エレメントを抽出し、既知の書類のデータベースにある対応するフォームと比較し、照明角度の変更中に外観を変える保護エレメントの抽出を行うことも可能であるという利点がある。接触型チップからのデータ読み取り(書類は接触型カードホルダーCCRに置かれる)、指紋のスキャニング、および指紋のスキャニングと書類のスキャニング/読取を同時に行い、チップから読み取られた指紋とスキャンされた指紋の比較(1:1)、または2Dバーコードから読み取られた指紋とスキャンされた指紋との比較が可能であること、また書類所持者の顔画像を撮り、スキャンされた書類から抽出された顔画像と書類所持者の写真撮影で得られた顔画像との比較(1:1)、またはチップから読み取られた顔画像と書類保持者の写真撮影で得られた顔画像との比較が可能であることは、本デバイスのさらに有利な点である。もう一つの利点は書類所持者の目の虹彩画像を撮り(写真撮影)、チップから読み取られた目の虹彩画像と書類所持者の写真撮影により撮られた目の虹彩画像と比較する(1:1)ことで、より正確な書類所持者の認識が行えることである。また、ハンドヘルドポータブルデバイスでは、確認書類/人物に関するデータに付帯して位置および時間情報を与えることのできる内蔵GPSモジュールを使用して、認識手順が実施された場所を特定する(いわゆるデータのジオタグ(geo-tagging))ことも可能である。
【0044】
本発明のハンドヘルドポータブルデバイスは、有線または無線手段(図面および本発明の説明に可能なインターフェースがリストされている)によりデータベースに接続することが可能で、書類/人物を指名手配中の書類/人物のデータベースと比較することができる。データベースはデバイス自体のメモリーに保存することも、また遠隔サイトに保存することもできる。
【0045】
該デバイスの可能性と利点を説明するために、該デバイスは検査された人物/書類のデータをデバイス自体のメモリーに保存、または後で保存データをデータベースに転送する(有線または無線手段で)ことが可能で、またデバイスはコンピューティングセンターにあるデータベースに接続されているため、渡航書類またはその他の本人確認書類(IDカード、運転免許証等)を所持しない人物の本人確認に関するクエリーを作成し、データベースに送信することが可能であり、(検索1:N)、またその他の検証を実施することが可能であることを述べておく。
【0046】
デバイスから、あるいはデバイスへのデータ転送をバッテリーを充電しながら同時に行うことが可能であることも利点であり、また、「稼働中」すなわち、デバイスの操作中にバッテリーを交換することも可能である。
【0047】
生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスは図面に示された特定の実施例を使って説明されたが、公開されたソリューションは該発明を説明するためにのみ使用されており、構造の細部、アセンブリの相互配置、構造の個々のエレメントの実施形態、およびプロセスの一定のステップは前記の仕様と図面において説明および示されたものとの関係で変更されることがあるものの、これは以下の特許請求に定義されている該発明の概念からは逸脱していないことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体、機能キー付きコマンドパネル、ラウドスピーカー、タッチセンシティブオプティカルディスプレイ、指紋スキャナ、接触型カードリーダー、非接触型カードリーダーおよびホストコンピューターと通信するための複数の通信ポートを含む、生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、ならびに当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項2】
パスポートの両ページ、すなわち完全に開かれたパスポートを覆う電磁場を持つ大型アンテナ、バッテリー、保存された暗号キーおよびその他の暗号エレメントを備えたSAM1およびSAM2チップのリーダー、GPSモジュール、Wi−Fiモジュール、Bluetooth(登録商標)モジュール、WiMAXモジュール、GSM(登録商標)/GPRSモジュール、EDGE/3G/CDMAモジュールおよびTETRAモジュールを備えたデバイスグループの中から選ばれた少なくとも1つのデバイスをさらに備えた、請求項1のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項3】
ドキュメントスキャナ、人物の写真撮影用照明付きカメラ、目の虹彩のスキャニングモジュール、および柔軟な書類ホルダーのデバイスグループの中から選ばれた少なくとも1つのデバイスをさらに備えた、請求項1のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項4】
前記ドキュメントスキャナが、いずれの前記センサについても、直接のまたは全体の反射光線による視覚角の外側に置かれた発光ダイオード(LED)の照明キャリアとレンズ付きセンサを備え、同時に可視光線、赤外線、および紫外線のスペクトル帯において可能な限り同質の照明を得ることができるセンサを備える、請求項3のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項5】
前記センサが、増設A/Dコンバータと信号同期コンポーネント付きで、NxMマトリクスに配列された前記レンズが付いているCMOSセンサおよびCCDセンサグループの中から選定される、請求項4のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項6】
前記照明キャリアがN+3列の白色光、赤外線光および紫外線光を放射するLEDで組み立てられている、請求項4のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項7】
前記ドキュメントスキャナが、前記センサの画像キャプチャ・送信用キャプチャリングデバイス、すなわちフレーム取り込み装置、センサの操作パラメーターを設定し前記照明キャリアを制御する論理回路、スキャン画像の一時的キャプチャと保存を行うRAM、制御および同期信号を提供する論理回路、ならびにデータの処理ユニットとの送受信を行うためのインターフェースからなるデバイスグル―プの中から選定された少なくとも1つのデバイスを備える、請求項3のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項8】
すべての個別センサの出力が共通データバスに接続され、選定された個別センサのキャプチャ画像がこれを通じて同時に読み取られる、請求項7のハンドヘルドポータブルデバイス。
【請求項9】
a) ドキュメントスキャナの透明な表面に書類を置く、
b) 書類の自動検知、および
c) 書類の全体ページのスキャニング、
のステップを含む、生体データ読み取り、渡航書類および個人書類の検証、ならびに当該書類の所持者の本人確認のためのハンドヘルドポータブルデバイスを使った書類スキャニングの方法。
【請求項10】
書類の全ページのスキャニングのステップが、
a) 最初のセンサ一式による書類の機械可読ゾーンのスキャニング、
b) 残りのセンサによる書類ページの残りのエリアのスキャニング、
c) 選定された種類の照明による書類のスキャニング、
d) すべての画像がスキャンされるまで、ステップb)からd)を行う、
e) ステップb)からd)を行うのと同時に、画像処理の準備が整っているかを確認、
f) 準備が整っている場合には、画像処理を行う、
g) 準備が整っている場合には、画像コンテンツの分析を行う、
f) 準備が整っている場合には、データの読み取りを行う、
i) データ検証、
j) レポート作成、
k) 書類から読み取られたデータと人物から採取されたデータとの比較、
l) ステップk)において誤った比較がある場合の警告作成、
m) オプティカルディスプレイ上に表示するためのデータおよびレポートの作成、
m) オプティカルディスプレイ上でのデータおよびレポートの表示、
m) オプティカルディスプレイ上のデータおよびレポートの視覚検査、
p) 書類スキャニングの状況を示す視聴覚表示、および
q) スキャニング位置から書類を取り除く、
のステップにより行われる、請求項9の書類スキャニングの方法。
【請求項11】
選定された種類の照明による書類のスキャニングのステップが、
a) 選定された種類の照明の点灯、
b) 次のセンサのためのキャプチャリングパラメータの設定、
c) 次のセンサの露出、
d) メモリーへの画像キャプチャと保存、
e) すべてのセンサが露出するまで、ステップb)からe)を行う、
f) キャプチャ画像の処理準備が整っているかの確認、
g) 処理準備の整ったキャプチャ画像の処理、
h) すべての画像が処理されるまで、ステップf)からh)をステップb)からe)と同時に行う、および
i) 統合画像の作成、
のステップにより行われる、請求項10の書類スキャニングの方法。
【請求項12】
書類の全ページのスキャニングのステップが、さらに、
a) スキャン書類(MRZにあるOCR−B文字)の機械可読ゾーン(MRZ)にある光学文字およびバーコードの読み取り、
b) チップの保存データの読み取り、
c) 書類所持者である人物の指を指紋スキャナに置く、および
d) 指紋のスキャニング、
のステップにより行われる、請求項10の書類スキャニングの方法。
【請求項13】
書類の全ページのスキャニングのステップが、さらに、
a) 本人確認が検証の必要な人物の指を指紋スキャナに置く、
b) 指紋のスキャニング、
c) 有線または無線手段でデバイスに接続されているデータベースへのデータ送信、および
d) データベースの検索、
のステップにより行われる、請求項10の書類スキャニングの方法。
【請求項14】
書類の全ページのスキャニングのステップが、さらに、
a) 人物の顔画像の撮影、
a) 人物の目の虹彩画像の撮影、
c) 有線または無線手段でデバイスに接続されているデータベースへのデータ送信、および
d) データベースの検索、
のステップにより行われる、請求項10の書類スキャニングの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−528379(P2012−528379A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512995(P2012−512995)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/RS2010/000007
【国際公開番号】WO2010/138013
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511289345)ブラタコム(リミテッド) (1)
【Fターム(参考)】