説明

温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器

【課題】
急激な温度変化が生じる場合においても、発振周波数を補償することのできる温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】
基板上に設置される温度補償型水晶発信器であって、水晶振動子と、前記水晶振動子上に形成された抵抗体と、前記水晶発振子より基板の設置位置よりに配設される検温手段と、補正回路前記抵抗体を流れる電流値と前記検温素子の出力とに基づき前記発振周波数を補正する補正手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信機器、又は情報機器等の電子機器に用いられ、環境温度の変動による発振周波数の変動を補償する機能を有する温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Xtal Oscillator)は、通信機器又は情報機器等の様々な電子機器に用いられている。
【0003】
図1は、従来の温度補償型水晶発振器の断面構造を示す図である。従来の温度補償型水晶発振器は、筐体1の内部に配設される水晶振動子2及びIC(Integrated Circuit:集積回路)3を含む。この水晶振動子2は、図1に示されるように、水晶片21と、該水晶片21に接続される一対の励振電極22、23を有する。
【0004】
また、筐体1は、蓋部1Aを有するセラミック製の筐体であり、水晶振動子2及びIC3が内部に配設されて乾燥窒素が充填された状態で密封されている。
【0005】
また、水晶振動子2の水晶片21は、筐体1の内部空間の略中心部に位置するように、筐体1の内壁1Bに接続されている。水晶片21は、例えば、ATカットにより所望の固有振動数が得られる厚さに成形されており、一対の励振電極22、23が形成されている。励振電極22、23としては、金(Au)製の薄膜電極を用いる。
【0006】
IC3は、筐体1の内部空間の底部に配設されている。また、温度センサ4は、IC3の温度に応じて抵抗値が変化する検温素子であり、例えば、ニクロム線を用いることができる。
【0007】
図2は、図1で示した従来の温度補償型水晶発振器の回路を示す図である。
【0008】
IC3は、可変容量コンデンサ31、インバータ32、出力バッファ回路33、補正回路34、及びメモリ35を含む。
【0009】
可変容量コンデンサ31及びインバータ32は、水晶振動子の励振電極22、23に接続され、水晶振動子2を含むループ状の発振回路を形成している。
【0010】
また、出力バッファ回路33は、発振回路で得られた発振信号をクロック信号に変換して外部に出力する回路である。出力バッファ回路33は、実際には複数のインバータを含むことが多いが、説明の便宜上、図2では一つのインバータとして示す。
【0011】
可変容量コンデンサ31は、静電容量を変更可能な可変容量素子であり、ループ状の発振回路の静電容量値を変更可能にするために、発振回路に直列に挿入されているものである。本明細書に記載する可変容量コンデンサ31は、バリキャップダイオード(varicap diode)などの可変容量コンデンサを用いて形成したものであり、補正回路34からの印加電圧に応じて、その静電容量が可変されるものである。
【0012】
また、メモリ35は、IC3に内蔵されるメモリであり、温度信号を表す電流値を補正回路34を可変容量コンデンサ31へ印加する電流値に変換する際に用いる該水晶振動子2の周波数温度特性の逆特性を表すデータを格納しており、補正回路34は、このメモリ35を参照して温度センサ4で検出される温度を表す温度信号(電流値)に応じた前記可変容量コンデンサ31への電圧を印加するものである。この補正回路34は、たとえば特開2008−300978(特に図3)に示すような回路構成となっている。
【0013】
以上の構成により、温度センサ4で検出される温度が変化すると、可変容量コンデンサ31の静電容量が調節されるため、発振周波数は、温度変化に対して安定するように制御される。
【0014】
このような温度補償型水晶発振器の出力バッファ回路33から出力されるクロック信号は、例えば、電子機器に含まれるCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)又は通信部等で用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】登録実用新案第2503834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
電子機器の小型化に伴い、温度補償型水晶発振器が用いられる電子機器では実装の高密度化が進んでいる。特に、携帯電話等の携帯機器では、高密度の実装が行われる。
【0017】
このような高密度実装を実現するためには、電子機器の内部における設計の自由度は大幅に制約され、携帯電話機の送信ユニットなどの発熱部品の近傍に温度補償型水晶発振器を実装しなければならないケースがある。
【0018】
携帯電話機の送信ユニットの場合、通信を行う際に急激に温度が上昇する。
【0019】
この送信ユニットで発生した熱は、主に基板を介して温度補償型水晶発信器へ伝わるため、上記従来の構成のように、温度センサが基板近くに設置されている場合は、温度センサが水晶振動子より先に温度が上昇することになる。このため、温度センサが検出した温度と水晶振動子との間で温度差が生じるため、温度補正が正確に行われず、温度補償型水晶発信器からの出力周波数が変化してしまう。これに対応するために、水晶発振子に直接温度センサを搭載することも考えられる。
【0020】
しかしながら、上記したような急激な温度変化が生じた場合、水晶発振子は、急速に過熱されるため、水晶振動子の温度変化を検出するのでは、温度変化に追従できないことがある。
【0021】
本実施例に基づく発明では、このような急激な温度変化が生じる場合においても、発振周波数を補償することのできる温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本実施の形態では、上記従来の課題を解決するために、水晶振動子と、前記水晶振動子上に形成された抵抗体と、前記水晶発振子より基板の設置位置よりに配設される検温手段と、前記抵抗体を流れる電流値と前記検温素子の出力とに基づき前記発振周波数を補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
急激に温度変化が生じた場合、水晶振動子と検温手段との間には温度差が生じるが、上記した構成によれば、水晶振動子より基板に近い位置の温度と水晶振動子の温度との差に基づく温度補正が可能であるため、急激な温度変化に追従可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の一般的な温度補償型水晶発振器の断面構造を示す図である
【図2】従来の一般的な温度補償型水晶発振器の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の断面構造を示す図である。
【図4】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の遅延切替制御部43による遅延処理の切替制御の手順を示す図である。
【図7】兼用電極110の温度が急激に上昇した場合に、制御遅れによって発振周波数に変動が生じることを概念的に示す特性図である。
【図8】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100において、温度センサ4から出力される温度情報を遅延させる処理を概念的に示す特性図である。
【図9】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100が熱源PAから熱伝導を受ける際の温度分布を示す図である。
【図10】実施の形態1の温度補償型水晶発振器100を含む携帯電話機(a)と、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100が実装されたプリント基板(b)を示す図である。
【図11】実施の形態2の温度補償型水晶発振器200の構成を示す図である。
【図12】実施の形態2の温度補償型水晶発振器200の構成を示す図である。
【図13】実施の形態3の温度補償型水晶発振器300の構成を示す図である。
【図14】実施の形態3の温度補償型水晶発振器300の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器を適用した実施の形態について説明する。
【0026】
[実施の形態1]
図3は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の断面構造を示す図である。
【0027】
なお、従来の一般的な温度補償型水晶発振器と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
実施の形態1の温度補償型水晶発振器100は、筐体1の内部に水晶振動子2、励振電極2A、IC3、温度センサ4、及び兼用電極110を含む。
【0029】
兼用電極110は、水晶振動子2の上面側に配設され、水晶振動子2の温度を直接検出できる第1検温素子であるとともに、水晶振動子2の下面側に配設される励振電極2Aと対をなす励振電極であればよい。すなわち、兼用電極110は、水晶振動子2の温度を検出するための温度センサ(第1検温素子)と、水晶振動子2の励振電極のうちの一方とを兼用する電極である。この兼用電極110は、水晶振動子2の温度を検出できる薄膜電極であればよく、例えば、ニクロム(Ni−Cr:ニッケルとクロムを含む合金)薄膜を用いることができる。
【0030】
また、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、IC3の上に配設される温度センサ4は、第1検温素子としての兼用電極110より基板よりの位置に配設される第2検温素子である。
【0031】
このように、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100は、水晶振動子2の温度を検出するための2つの検温素子として、IC3の上に配設される温度センサ4と、兼用電極110とを有する。
【0032】
また、ここでは、励振電極2Aとして金薄膜を用いる形態について説明するが、励振電極2Aの材質は金に限られず、銀(Ag)又はアルミニウム(Al)等を用いてもよい。
【0033】
なお、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、従来の一般的な温度補償型水晶発振器において水晶振動子2の上面側に配設されていた励振電極2B(図1参照)を兼用電極110に変更した構造を有するため、兼用電極110の質量は、水晶振動子2の固有周波数に影響が生じないように調整される必要がある。
【0034】
図4及び図5は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の構成を示す図である。
【0035】
図4(a)では水晶振動子2、励振電極2A、及び兼用電極110を斜視で示し、図4(b)では水晶振動子2、励振電極2A、及び兼用電極110を断面で示す。また、図5では、励振電極2A及び兼用電極110を回路記号で示す。なお、図示の便宜上、図4(a)と図4(b)では、水晶振動子2の向きが天地逆になっている。
【0036】
実施の形態1の温度補償型水晶発振器100は、補正回路補正回路40を有する。この補正回路40は、IC3の一部として実現され、従来の一般的な温度補償型水晶発振器におけるメモリ35(図2参照)に相当するメモリ45を含む。補正回路40の詳細については後述する。
【0037】
図4(a)に示すように、第1電極としての兼用電極110は、平板状の水晶振動子2の上面側(基板搭載側とは反対側の面)に配設される。また、第2電極としての励振電極2Aは、平板状の水晶振動子2の下面側(基板搭載側の面)に配設される。
【0038】
励振電極2Aは、水晶振動子2の下面の略中心に配設されており、平面視で楕円形の電極部2aの長軸上にストライプ状の延伸部2bが接続された形状である。
【0039】
兼用電極110は、水晶振動子2の上面の略中心に配設されており、平面視で楕円形の電極部110aの長軸上にストライプ状の一対の延伸部110b、110cが接続された形状である。
【0040】
兼用電極110の延伸部110b及び110cは、交流遮断用のコイル111を介して補正回路40と接続されている。
【0041】
また、兼用電極110の延伸部110bは、可変容量コンデンサ31の入力側に接続されており、励振電極2Aの延伸部2bは、インバータ32の出力側に接続されている。これにより、兼用電極110は、励振電極2Aと対をなして可変容量コンデンサコンデンサ31及びインバータ32と発振回路用のループを形成するように接続されている。
【0042】
また、インバータ32の出力側には出力バッファ回路33が接続される。出力バッファ回路33から出力される発振信号は、温度補償型水晶発振器100の最終出力となる。
【0043】
補正回路40は、選択部41、遅延部42、遅延切替制御部43、補正部44、及びメモリ45を備え、IC3の一部として実現される回路である。
【0044】
このうち、メモリ35は、IC3に内蔵されるメモリであり、温度信号を表す電流値を補正回路40を可変容量コンデンサ31へ印加する電流値に変換する際に用いる該水晶振動子2の周波数温度特性の逆特性を表すデータを格納しており、補正回路34は、このメモリ35を参照して温度センサ4及び兼用電極110で検出される温度を表す温度信号(電流値)に応じた前記可変容量コンデンサ31への電圧を印加するものである。
【0045】
なお、この実施の形態では、温度センサ4及び兼用電極110との抵抗値は、同一抵抗値とし、かつ、材料はどちらもニクロムにて形成するものとする。
【0046】
選択部41には温度センサ4と兼用電極110が接続されている。選択部41は、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差を閾値と比較する比較器と、比較結果に応じて選択部41の出力を選択的に切り替える切替スイッチを含む。選択部41は、切替スイッチを切り替えることにより、温度センサ4又は兼用電極110のいずれかで検出される温度を表す温度情報としての電流値を選択して出力する。
【0047】
具体的には、選択部41は、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が閾値以上である場合には、温度センサ4で検出される温度を表す温度情報としての電流値を出力する。
【0048】
一方、選択部41は、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が閾値未満である場合には、兼用電極110で検出される温度を表す温度情報としての電流値を出力する。
【0049】
このように、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が閾値以上であるか否かの判定を制御サイクル毎に行うことにより、検出温度の差の上昇度合を監視することができる。そして、検出温度の差の上昇度合を監視することは、温度センサ4の検出温度の上昇度合が、兼用電極110の検出温度の上昇度合よりも所定度合い以上大きいか否かを監視することになる。
【0050】
なお、比較器での比較は、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差を表す電流値と、閾値を表す電流値との比較によって行われる。
【0051】
遅延部42は、入力信号を遅延させて出力することのできる遅延回路であり、例えば、デジタルディレイラインを用いることができる。遅延部42で入力信号の遅延処理を実行するか否かの切り替えは、遅延切替制御部43によって行われる。
【0052】
具体的には、選択部41から出力される電流値が温度センサ4で検出された温度であると遅延切替制御部43によって判定された場合は、遅延部42は遅延処理を実行する状態に切り替えられる。この場合、遅延部42は、温度センサ4で検出された温度を表す電流値を所定時間だけ遅延させて出力する。この補正の結果、補正部44では、温度センサ4で検出された温度に基づいた電圧を可変容量コンデンサ31に印加することになる。
【0053】
一方、選択部41から出力される電流値が兼用電極110からの出力であった場合は、遅延部42は遅延処理を実行しない状態に切り替えられる。この場合、遅延部42は、兼用電極110で検出された温度を表す電流値を遅延させずにそのまま出力する。この結果、補正部44では、兼用電極110で検出された温度に基づいた電圧が可変容量コンデンサ31に印加される。
【0054】
なお、このような遅延部42における遅延処理の実行/不実行の切替処理は、遅延切替制御部43が選択部41の選択状態を検出することによって実行される。
【0055】
また、遅延部42が入力信号を遅延させる遅延時間は、温度センサ4の検出温度の方が兼用電極110の検出温度よりも高く、検出温度同士の差が所定値以上である場合に、温度センサ4の検出温度と同一の温度を兼用電極110が検出するまでの遅延時間から、フィードバック制御の遅れ時間を減算した時間に設定されている。
【0056】
ここで、フィードバック制御の遅れ時間(制御遅れ時間)は、兼用電極110で検出された温度を表す電流値が補正回路40に伝達され、補正電圧によって可変容量コンデンサ31の静電容量が変更されるまでの制御に必要な時間である。
【0057】
すなわち、遅延部42が入力信号を遅延させる所定時間は、温度センサ4に対する兼用電極110の熱伝導の遅延時間から、制御遅れ時間を減算した時間に設定される。
【0058】
このように熱伝導の遅延時間を考慮するのは、パワーアンプのような熱源の温度が急激に上昇し、プリント基板を介して熱伝導を受ける場合に、プリント基板により近い温度センサ4の方が先に温度が上昇し、兼用電極110の温度上昇が遅れるためである。
【0059】
これにより、急激な温度上昇が生じた場合でも、温度センサ4で検出された温度情報(電流値)を所定時間だけ遅延させて、補正回路に入力させることにより、水晶振動子2の実際の温度に近い温度を導出することができる。
【0060】
なお、温度センサ4に対する兼用電極110の熱伝導の遅延時間は、温度補償型水晶発振器100の構造による固有の時間となるため、温度補償を行う前に予め計測しておけばよい。また、制御遅れ時間は、例えば、補正回路40の制御サイクルに基づいて導出すればよい。
【0061】
なお、遅延切替制御部43は、例えば、CPUで実現することができる。
【0062】
なお、遅延切替制御部43の判定処理の詳細については、図6を用いて後述する。
【0063】
補正部44は、後述するメモリ45に格納された水晶振動子2の周波数温度特性の逆特性を用いて、遅延部42から入力される電流値を水晶振動子2の周波数温度特性とは逆特性となる補償電圧に変換して出力する。補正部44から出力される補償電圧は、補正回路40の出力として可変容量コンデンサ31に供給される。
【0064】
補正回路40から出力される補償電圧は、可変容量コンデンサ31に供給され、可変容量コンデンサ31の静電容量が制御される。
【0065】
すなわち、可変容量コンデンサ31の静電容量は、温度センサ4又は兼用電極110のいずれかで検出される温度に基づいて制御されることになり、環境温度が変動しても、発振回路で発振する発振信号の発振周波数の変動が少なくなるように温度補償が行われることとなる。
【0066】
このように、実施の形態1では、温度センサ4で検出される温度の上昇度合が兼用電極110で検出される温度の上昇度合よりも所定度合以上大きいか否かの判定を行うために、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差の時間的な上昇度合を選択部41が監視する。
【0067】
しかしながら、温度センサ4で検出される温度の上昇度合が兼用電極110で検出される温度の上昇度合よりも所定度合以上大きいか否かの判定は、検出温度の差の時間的な変化度合に基づく判定に限定されるものではない。
【0068】
例えば、温度センサ4で検出される温度の上昇度合と、兼用電極110で検出される温度の上昇度合とをそれぞれ監視し、上昇度合同士の差が所定度合以上であるか否かを判定してもよい。
【0069】
図4(b)では、説明の便宜上、励振電極2Aの延伸部2b、兼用電極110の延伸部110b及び110cを省略し、水晶振動子2に対する励振電極2Aと兼用電極110の厚さ方向のスケールを拡大して示す。
【0070】
なお、水晶振動子2は、所定の固有振動数で振動するように結晶の切断方位と寸法が設定される。水晶振動子2の寸法は、例えば、長さ(図中横方向)3.2mm、幅(図面を貫く方向)2.5mm、厚さ1mmである。また、兼用電極110は、例えば、厚さが0.1μm程度のニクロム薄膜であり、スパッタリング法又は蒸着法等によって水晶振動子2に作製される。なお、水晶振動子2の下面とIC3の上面との間隔は、例えば、0.3mm程度である。ただし、これらの数値は一例に過ぎず、水晶振動子2の寸法、又は、水晶振動子2の下面とIC3の上面との間隔は、発振周波数及びその他の設計事項に応じて設定される。
【0071】
図4(b)においても、兼用電極110は、補正回路40及びコイル111を含む閉回路の一部であるとともに、励振電極2Aと対をなして、可変容量コンデンサ31及びインバータ32を含むループを形成していることが示されている。
【0072】
また、図5に回路記号で示すように、兼用電極110には、補正回路40及びコイル111を含む回路と、可変容量コンデンサ31を含む回路とが接続されているため、兼用電極110には、水晶振動子2の温度に応じた直流電流が流れるとともに、発振信号(交流成分)が流れる。
【0073】
しかしながら、コイル111で交流成分が遮断されるため、補正回路40及びコイル111を含む閉回路には直流電流のみが流れ、補正回路40には兼用電極110で検出される温度を表す電流値のみが入力されることになる。
【0074】
また、可変容量コンデンサ31で直流電流が遮断されるため、インバータ32には交流成分である発振信号のみが入力される。
【0075】
図6は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100の遅延切替制御部43による遅延処理の切替制御の手順を示す図である。
【0076】
遅延切替制御部43は、選択部41から出力される電流値が温度センサ4又は兼用電極110のいずれで検出された温度であるかを判定する(ステップS1)。この判定は、上述のように、選択部41が切替スイッチを切り替えるための制御指令に基づいて行われる。
【0077】
温度センサ4で検出された温度であると判定した場合(ステップS1でYes)は、遅延切替制御部43は、遅延処理を実行する状態に遅延部42を切り替える(ステップS2A)。
【0078】
急激な温度上昇により、兼用電極110によって検出される温度と水晶振動子2の実際の温度とに温度差が生じていると考えられるため、兼用電極110よりも熱的に上流側に位置する温度センサ4で検出された温度を用いて正確な温度補償を行うためである。
【0079】
一方、兼用電極110で検出された温度であると判定した場合(ステップS1でNo)は、遅延切替制御部43は、遅延処理を実行しない状態に遅延部42を切り替える(ステップS2A)。
【0080】
急激な温度上昇は生じておらず、兼用電極110によって検出される温度は水晶振動子2の実際の温度を表していると考えられるため、水晶振動子2に配設される兼用電極110で検出された温度を用いて正確な温度補償を行うためである。
【0081】
以上のように、遅延切替制御部43により、遅延部42における遅延処理の実行/不実行の切り替えが行われる。
【0082】
図7は、兼用電極110の温度が急激に上昇した場合に、制御遅れによって発振周波数に変動が生じることを概念的に示す特性図である。図7(a)において、縦軸は兼用電極110によって検出される温度を電流値として示し、横軸は時間軸を示す。また、図7(b)において、縦軸は出力バッファ回路33から出力される発振信号の周波数を示し、横軸は時間軸を示す。
【0083】
なお、図7に示す特性は、比較説明用に示す特性であり、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100において生じる動作を示すものではない。
【0084】
時刻t=0において、兼用電極110に急激な温度上昇が生じ、この温度上昇の度合がフィードバック制御に制御遅れを生じさせる程度であるとする。
【0085】
このとき、水晶振動子2の実際の温度は、実線で示すように上昇するが、兼用電極110で検出され、フィードバック制御に用いられる温度を表す電流値の特性は、一点鎖線で示すように、制御遅れの時間t1だけ遅れて追従する。
【0086】
このように、フィードバック制御に用いられる温度情報に制御遅れが生じると、可変容量コンデンサ31の静電容量の制御が時間t1だけ遅れるため、時刻t=0の直後に発振周波数に比較的大きな変動が生じる。
【0087】
このような発振周波数の変動は、時刻t=t2(>>t1)程度まで続くため、発振周波数の温度補償が正確に行われない期間が生じる。
【0088】
図8は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100において、温度センサ4から出力される温度情報としての電流値を遅延させる処理を概念的に示す特性図である。図8(a)において、縦軸は温度センサ4によって検出される温度と遅延された温度情報を電流値として示し、横軸は時間軸を示す。また、図8(b)において、縦軸は出力バッファ回路33から出力される発振信号の周波数を示し、横軸は時間軸を示す。図8に示す遅延処理は、遅延部42によって実行される処理である。
【0089】
実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、上述のように、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が所定値以上である場合には、温度センサ4で検出される温度を表す電流値が選択部41から出力される。
【0090】
この場合、遅延部42の遅延処理は、遅延切替制御部43によって遅延処理を実行する状態に切り替えられるため、破線で示す温度センサ4の検出値は、所定時間t3だけ遅延されて補正部44に入力される。
【0091】
ここで、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が所定値以上である場合に、温度センサ4での検出温度と同一の温度を兼用電極110が検出するまでの熱伝導の遅延時間をt4とすると、遅延される所定時間t3は、t3=t4−t1で表される。t1は、上述のように、制御遅れ時間である。
【0092】
このため、遅延部42からは、温度センサ4によって出力される温度情報としての電流値が図8に一点鎖線で示すように時間t3だけ遅延されたタイミングで出力され、補正部44に入力される。
【0093】
水晶振動子2の実際の温度は、図8に二点鎖線で示すように、温度センサ4で検出される温度に対して遅延時間t4だけ遅れて上昇するので、制御遅れ時間t1だけ早いタイミングで上昇する温度情報(図8の一点鎖線)を補正部44に入力することにより、水晶振動子2の実際の温度変化を表す温度情報に基づく補償電圧を出力することができる。
【0094】
これにより、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100によれば、温度センサ4と兼用電極110との間における熱伝導の遅延時間と、制御遅れ時間との影響を抑制して、発振周波数の温度補償を正確に行うことができる。
【0095】
なお、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、図8に破線で示すように温度センサ4で温度が検出されても、熱伝導の遅延時間(t4)から制御遅れ時間(t1)を減じた所定時間(t3)だけ遅延させた一点鎖線で示す温度特性を用いて補償電圧を生成する。このため、時刻t=0で温度センサ4が温度を検出しても、時刻t=t3までは温度補償は行われない。
【0096】
また、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差が所定値未満になったときには、選択部41の出力は、温度センサ4で検出された温度を表す電流値から兼用電極110で検出された温度を表す電流値に切り替わる。これは、温度センサ4の検出温度の上昇度合と兼用電極110の検出温度の上昇度合との差が所定値未満になるからである。
【0097】
このため、図8に示すt5の前後のあたりで、補償電圧は兼用電極110で検出された温度を表す電流値に基づいて生成されることになる。
【0098】
実施の形態1の温度補償型水晶発振器100によれは、急激な温度上昇が生じた場合でも、温度センサ4で得られる温度情報を遅延させることにより、水晶振動子2の温度を正確に把握することができる。
【0099】
このため、温度上昇が急すぎて兼用電極110で得られる温度情報では制御遅れが生じてしまうような状況でも、水晶振動子2の温度を正確に導出して可変容量コンデンサ31の静電容量を正確に制御することができる。
【0100】
このため、実施の形態1によれば、環境温度が急激に変動しても、正確に発振周波数の温度補償を行うことのできる温度補償型水晶発振器100を提供することができる。
【0101】
なお、以上では、補正回路40が選択部41、遅延部42、遅延切替制御部43、補正部44、及びメモリ45を含む形態について説明した。しかしながら、補正回路40の回路構造は、温度センサ4の検出温度の上昇度合が兼用電極110の検出温度の上昇度合よりも所定度合い以上大きい場合に、温度センサ4の検出温度、熱伝導の遅延時間、及び制御遅れ時間に基づいて発振周波数の温度補償を行えるのであれば、上述の回路に限定されるものではない。
【0102】
図9は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100が熱源PAから熱伝導を受ける際の温度分布を示す図である。図9において、濃く示す部分の方が薄く示す部分よりも温度が高いことを表す。
【0103】
温度補償型水晶発振器100を収容する筐体1は、プリント基板Sの上に設置されており、プリント基板Sの裏面には、パワーアンプPAが実装されている。
【0104】
このパワーアンプPAは、温度補償型水晶発振器100の外部熱源であり、例えば、携帯電話機等のように通信を行う電子機器に含まれる。このため、非通信時には殆ど発熱しないが、通信時には発熱する。特に、通信開始時には発熱量が多く、パワーアンプPAの温度は急激に上昇する。
【0105】
このように急激に温度が上昇すると、パワーアンプPAの熱が熱伝導によってプリント基板Sを経由し、筐体1に到達する。筐体1に到達した熱は、筐体1の底部側(プリント基板S側)から温度補償型水晶発振器100に伝達される。
【0106】
このため、プリント基板Sに近いIC3の方が、プリント基板Sよりも遠い水晶振動子2よりも温度が高くなる。この温度分布は、温度センサ4と兼用電極110の検出温度の差として現れる。
【0107】
実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、このように急激な温度上昇が生じた場合でも、対応が可能である。
【0108】
図10は、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100を含む携帯電話機(a)と、実施の形態1の温度補償型水晶発振器が実装されたプリント基板(b)を示す図である。
【0109】
図10(a)に示す携帯電話機50は、通信用の回路等が実装されたプリント基板60を含む。プリント基板60には、通信回路61と温度補償型水晶発振器100が実装されている。
【0110】
携帯電話機50は、小型化や多機能化に伴い内部のスペースが限られているため、温度補償型水晶発振器100が熱源の近くに配設される場合もあり得る。典型的な熱源としては、図9に示すようなパワーアンプが挙げられる。パワーアンプは、携帯電話機50が通信を行っていない場合には殆ど発熱しないが、通信が開始されると急激に温度が上昇するため、温度補償型水晶発振器100が急激な熱伝導を受けて温度が急激に上昇することがある。
【0111】
しかしながら、このような場合でも、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100では、温度センサ4で得られる温度情報を遅延させることにより、水晶振動子2の温度を正確に導出することができるため、発振周波数を正確に温度補償することができる。
【0112】
このため、携帯電話機50の通信又は種々の演算処理を正確に行うことができる。
【0113】
特に、温度補償型水晶発振器100の発振信号を携帯電話機50の基準クロック信号として用いる場合、又は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能の基準クロックとして用いる場合等には、クロック信号に非常に高い精度が要求される。
【0114】
このため、実施の形態1の温度補償型水晶発振器100を携帯電話機50に用いることは、特にクロック信号に高い精度が求められるような機種では、非常に有効的である。
【0115】
なお、図10には、温度補償型水晶発振器100を搭載した電子機器の一例として携帯電話機50を示したが、温度補償型水晶発振器100を搭載可能な電子機器は、携帯電話機50に限られるものではない。
【0116】
[実施の形態2]
図11及び図12は、実施の形態2の温度補償型水晶発振器200の構成を示す図である。図11では水晶振動子2、励振電極2A、及び兼用電極210を断面で示し、図12では、励振電極2A、及び兼用電極210を回路記号で示す。
【0117】
実施の形態2の温度補償型水晶発振器200は、第1電極である兼用電極210の構造が実施の形態1と異なる。
【0118】
図11に示すように、兼用電極210は、水晶振動子2の温度を検出するための検温用電極211、絶縁層212、及び、水晶振動子2に電圧を印加するための印加用電極213の積層体である。
【0119】
検温用電極211は、補正回路40と温度補償用の閉回路を形成するように接続されている。
【0120】
印加用電極213は、励振電極2Aと対をなして可変容量コンデンサ31及びインバータ32と発振回路用のループを形成するように接続されている。
【0121】
なお、検温用電極211と印加用電極213とは絶縁層212によって絶縁されており、温度補償用の閉回路と、発振回路用のループとは電気的に絶縁分離されているため、実施の形態1のように交流遮断用のコイルを配設する必要はない。
【0122】
また、兼用電極210が水晶振動子2の表面上に配設される位置は、実施の形態1の兼用電極110と同一である。
【0123】
また、検温用電極211は、水晶振動子2の温度を検出できる検温素子であればよく、例えば、ニクロム薄膜を用いることができる。絶縁層212は、検温用電極211と印加用電極213を電気的に絶縁できる薄膜層であればよく、例えば、酸化シリコン層を用いることができる。印加用電極213は、励振電極2Aと対をなして水晶振動子2に電圧を印加できる薄膜電極であればよく、例えば、金(Au)製の薄膜を用いることができる。
【0124】
ここで、検温用電極211としてのニクロム薄膜、絶縁層212としての酸化シリコン層、及び、印加用電極213としての金薄膜は、例えば、蒸着法又はスパッタリング法で順次作製することができる。すなわち、水晶振動子2の表面上に検温用電極211を形成し後に、検温用電極211の上に絶縁層212を形成し、絶縁層212の上に、印加用電極213を形成することにより、兼用電極210を作製することができる。
【0125】
なお、検温用電極211、絶縁層212、及び印加用電極213の材質及び作製方法は、上述ものに限定されるものではない。
【0126】
このような構造の温度補償型水晶発振器200の兼用電極210及び励振電極2Aを回路記号で示すと、図12に示す通りとなる。兼用電極210の検温用電極211と印加用電極213は絶縁分離されているため、補正回路40を含む温度補償用の閉回路と、可変容量コンデンサ31及びインバータ32を含む発振回路用のループとは、完全に絶縁分離されている。
【0127】
補正回路40には、検温用電極211で検出された温度に応じた直流電流が流れ、この直流電流は、補正回路40で補償電流値に変換されて出力される。そして、可変容量コンデンサ31の静電容量は、検温用電極211で正確に検出された温度(温度を表す電流値)に基づいて正確に制御される。このため、可変容量コンデンサ31及びインバータ32を含む発振回路で発振される発振周波数は、水晶振動子2の温度に応じて正確に温度補償が行われる。
【0128】
以上より、実施の形態2によれば、環境温度が急激に変動しても、熱源に近い温度センサ4で得られる温度情報を遅延させることにより、熱伝導の遅延時間と制御遅れ時間の影響を抑制し、水晶振動子2の温度を正確に導出することができる。このため、発振周波数を正確に温度補償することができる温度補償型水晶発振器200を提供することができる。実施の形態2の温度補償型水晶発振器200は、特に、制御遅れが問題になるような高速処理にも対応可能である。
【0129】
[実施の形態3]
図13及び図14は、実施の形態3の温度補償型水晶発振器300の構成を示す図である。図13では水晶振動子2、励振電極2A、2B、及び温度センサ310を斜視で示し、図14では、水晶振動子2、励振電極2A、2B、及び温度センサ310を回路記号で示す。
【0130】
実施の形態3の温度補償型水晶発振器300は、水晶振動子2に一対の励振電極2A、2Bが配設されるとともに、励振電極2Bが配設されている面側に、水晶振動子2の温度を検出する第2検温素子としての温度センサ310が配設される点が実施の形態1と異なる。
【0131】
励振電極2Aは、水晶振動子2の下面の略中心に配設されており、平面視で楕円形の電極部2aにストライプ状の延伸部2bが接続された形状である。
【0132】
また、励振電極2Bは、水晶振動子2の上面の略中心に配設されており、平面視で楕円形の電極部2cにストライプ状の延伸部2dが接続された形状である。
【0133】
このように、励振電極2Aと2Bの構造は、全く同一である。
【0134】
温度センサ310は、水晶振動子2の上面(励振電極2Bが配設される面)において、励振電極2Bとは絶縁分離された状態で、水晶振動子2の上面の端部に沿って形成された平面視コの字型の温度センサである。
【0135】
温度センサ310は、水晶振動子2の温度を検出できる検温素子であればよく、例えば、ニクロム薄膜を用いることができる。このようなニクロム薄膜は、スパッタリング法又は蒸着法によって作製することができるが、材質及び作製方法は、ここに示すものに限られず、他の材質又は作製方法を用いてもよい。
【0136】
なお、図13には、水晶振動子2の上面(励振電極2Bが配設される面)の端部に沿って平面視でコの字型に作製された温度センサ310を示すが、温度センサ310の形状は、平面視でコの字型のものに限られず、他の形状であってもよい。また、温度センサ310が配設される位置は、水晶振動子2の表面上であればよく、図13に示す位置に限られない。ただし、水晶振動子2は、所定の固有振動数で発振を行う必要があるため、温度センサ310の質量又は配設される位置は、固有振動数を考慮して決定される必要がある。
【0137】
励振電極2Aの延伸部2bはインバータ32の出力側に接続され、励振電極2Bの延伸部2dは可変容量コンデンサ31の入力側に接続される。これにより、励振電極2A、2B、可変容量コンデンサ31、及びインバータ32を含む発振回路用のループが形成される。
【0138】
また、コの字型の温度センサ310の両方の端部310a、310bの間には、補正回路40が接続され、温度補償用の閉回路が形成される。
【0139】
なお、図13に示すように、温度補償用の閉回路と、発振回路用のループとは電気的に絶縁分離されているため、実施の形態1のように交流遮断用のコイルを配設する必要はない。
【0140】
このような構造の温度補償型水晶発振器300の温度センサ310と励振電極2A及び2Bを回路記号で示すと、図14に示す通りとなる。励振電極2Bと温度センサ310は絶縁分離されているため、補正回路40を含む温度補償用の閉回路と、可変容量コンデンサ31及びインバータ32を含む発振回路用のループとは、完全に絶縁分離されている。
【0141】
補正回路40には、温度センサ310で検出された温度に応じた直流電流が流れ、この直流電流は、補正回路40で補償電流値に変換されて出力される。そして、可変容量コンデンサ31の静電容量は、温度センサ310で正確に検出された温度(温度を表す電流値)に基づいて正確に制御される。このため、可変容量コンデンサ31及びインバータ32を含む発振回路で発振される発振周波数は、水晶振動子2の温度に応じて正確に温度補償が行われる。
【0142】
以上より、実施の形態3によれば、環境温度が急激に変動しても、熱源に近い温度センサ4で得られる温度情報を遅延させることにより、熱伝導の遅延時間と制御遅れ時間の影響を抑制し、水晶振動子2の温度を正確に導出することができる。このため、発振周波数を正確に温度補償することができる温度補償型水晶発振器300を提供することができる。実施の形態3の温度補償型水晶発振器300は、特に、制御遅れが問題になるような高速処理にも対応可能である。
【0143】
なお、実施の形態3では、一つの温度センサ310が水晶振動子2に取り付けられている形態について説明したが、温度センサ310は、複数取り付けられていてもよい。
【0144】
以上、本発明の例示的な実施の形態の温度補償型水晶発振器、温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板、及び温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0145】
1 筐体
1A 蓋部
2 水晶振動子
2A 励振電極
2a、2c 電極部
2b、2d 延伸部
3 IC
31 可変容量コンデンサ
32 インバータ
33 出力バッファ回路
40 補正回路
41 選択部
42 遅延部
43 遅延切替制御部
44 補正部
45 メモリ
50 携帯電話機
60 プリント基板
61 通信回路
100、200、300 温度補償型水晶発振器
110、210 兼用電極
110a 電極部
110b、110c 延伸部
111 コイル
211 検温用電極
212 絶縁層
213 印加用電極
310 温度センサ
310a、310b 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設置される温度補償型水晶発信器であって、
水晶振動子と、
前記水晶振動子上に形成された抵抗体と、
前記水晶発振子より基板の設置位置よりに配設される検温手段と、
補正回路前記抵抗体を流れる電流値と前記検温素子の出力とに基づき前記発振周波数を補正する補正手段と
を有する、温度補償型水晶発振器。
【請求項2】
前記抵抗体を流れる電流値、前記検温素子の出力、及び、発振周波数の補正量とを記憶した記憶手段を有し、
前記補正手段は、前記記憶手段を参照して、発振周波数の補正を行う事を特徴とする請求項1に記載の温度補償型水晶発信器。
【請求項3】
前記抵抗体は、前記水晶振動子の励磁電極であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度補償型水晶発信器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度補償型水晶発振器を実装したプリント基板。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度補償型水晶発振器を搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−258491(P2010−258491A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102568(P2009−102568)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】