説明

温熱材料及びそれを用いた温熱浴装置

【課題】 家庭や小規模な施設への敷設が容易であり、ラジウム放射線や遠赤外線を放射する石材からの放射線を効率よく利用することが可能な温熱材料及びそれを利用した岩盤浴装置を提供する。
【解決手段】
放射線や遠赤外線を放出する放射線放出成分を含む石材又はセラミックを含む石材層と、絶縁体で覆われた面状発熱体からなる熱源とを、間に高熱伝導性の保護層を挟んで積層し、ステンレス等の外箱に収納し一体化する。熱源から放出される赤外線を効率よく石材層から放出させるとともに石材層から放射線や遠赤外線を放出させて高い温熱効果を得ることができる。石材層と熱源とを含む積層体を複数個に分割しモジュール化することにより搬送を容易に行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱治療装置、岩盤浴装置、床材等に好適に使用される温熱材料に関し、特に放射線や遠赤外線を放出する石材を利用した温熱材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岩盤浴は種々の病気に対する自然治癒力を高めるものとして知られており、温泉地、スポーツトレージングジム、銭湯などの施設に設けられている。例えば、特許文献1には、ラジウム放射線を放射する岩盤上に敷設されるラジウム放射線温浴装置が提案されている。
【0003】
これら施設に備えられた岩盤浴は、熱源として温水を利用しており、そのためのボイラー、配管、コンクリート内への埋設工事などを必要とし、設備が大型化し、家庭や小規模な施設への設置は不可能であり、既存の施設への設置も困難である。また温水を利用しているので、定期的にパイプ内洗浄や水漏れの点検を行なう必要があり、保守点検の負担が大きいという問題もある。さらに温水を熱源とした場合、温度ムラが生じやすい、温度コントロールが難しい等の問題もある。
【0004】
特許文献2には、浴槽の温水を循環させて、その循環路にラジウムを含有する鉱石を収納したケーシングを設置する放射能泉装置も開示されているが、この場合、ラジウムは水に逸散されたものだけを利用することになるので利用効率が低く、またこの装置は浴室という限定された空間にしか用いることができない。
【特許文献1】特開2002−35078号公報
【特許文献2】特開平8−84762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、家庭や小規模な施設への敷設が容易であり、ラジウム放射線や遠赤外線を放射する石材からの放射線を効率よく利用することが可能な温熱材料を提供することを目的とする。また本発明は温度コントロールが容易で、且つ保守点検の負担が少ない温熱材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の温熱材料は、石材又はセラミックを含む石材層と、絶縁体で覆われた面状発熱体からなる熱源とを積層し、一体化したことを特徴とする。石材層は、好適には、放射線や遠赤外線を放出する放射線放出成分を含む。
石材層と熱源との間には、高熱伝導性の保護層を設けてもよい。これにより石材層と接触することによる面状発熱体の損傷を防ぐことができる。
また熱源の、前記石材層が積層される側の反対側には保温層を設けてもよい。
【0007】
また本発明の温熱材料は、前記石材層と熱源とを含む積層体を外箱に収納した構成とすることができる。これにより熱源から放出される赤外線が外部に散逸するのを防ぎ、効率よく赤外線を利用することができる。この場合、石材層と熱源とを含む積層体は、複数個に分割して箱体に収納することができる。
本発明の温熱材料は、熱源の少なくとも一つに温度センサーを備えることが好ましい。これにより複数の温熱材料について、温度制御を容易に行なうことができる。
【0008】
本発明の温熱浴装置は、上述した温熱材料を利用したものであり、温熱材料を収納するための1又は複数の支持枠が形成された架台と、この支持枠に収納された上記温熱材料とを備えたことを特徴とする。
本発明の温熱浴装置は、好適には、架台は、前記支持枠が形成された側の反対側に複数の可動輪が固定されている。これにより温熱装置の移動が容易になる。
また本発明の温熱装浴置は、複数の支持枠に収納された温熱材料は、単一のコネクタを介して電源に接続される構成としてもよい。これにより駆動回路を簡略にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石材、特に放射線や遠赤外線を放出する石材と熱源を組合わせることにより、石材から放出される放射線と熱源から放出される赤外線との相乗効果による高い治療効果を得ることができる。また熱源として面状発熱体を利用することにより温度制御や保守が容易となる。また本発明の温熱材料は、箱体に収納されてモジュール状に構成されているので、家庭や小規模な施設或いは既存の施設への搬入、敷設が容易であり、また温熱浴の材料としてのみならず、床材等として利用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の温熱材料の基本的な構造を示す断面図で、この温熱材料10は、ラジウム、ラドン等の放射線を放出する成分を含む石材或いは遠赤外線を放出するセラミックス等の層(石材層)11と、面状発熱体を含む熱源12と、保温材からなる保温層13と、石材層11と熱源12との間に設けられた保護層14とを積層し、一体化した構造を有している。保温層13と熱源12との間には、必要に応じて、板材15が設けられる。
【0011】
本発明の温熱材料10は、好適には、構成する各材料を図示するような上部が開口された箱体16に収納し、モジュール化することが好ましい。
【0012】
石材層11を構成する石材としては、コバルト、ラジウム、ラドン等の放射線放出成分を含む石材が好ましいが、御影石、花崗岩、玉石などの自然石やセラミックスを用いてもよい。これらは小石、岩石を砕いた塊状或いは砂利状のものでもよく、このような石材を焼成したものでもよい。また石材をモルタル等で一体化したものでもよい。
【0013】
熱源12は、通電することによりジュール熱を発生する面状発熱体を絶縁性材料で覆ったもので、好適には、図2に示すように、発熱体として炭素繊維を使用し、この炭素繊維と絶縁性の硝子繊維と電源供給用の導体とを織り込んだ織物状の発熱体121の両面に、それぞれ1ないし複数の絶縁性フィルム122、122を熱溶着し、一方の面にアルミニウム等の金属123を蒸着した構造を有している。このような構造の面状発熱体は、高い絶縁性が保たれると共に、アルミ等の蒸着面123によって発熱体121の放出する熱が反射され、蒸着面を有しない側に効率よく熱が放射され、少ない電力で高い昇温効果が得られる。
【0014】
また発熱体121を構成する電源供給用の導体は、外部接続用コネクタに接続されている。本発明の温熱材料10をモジュールとして用いる場合には、図示するように、コネクタ17を箱体16の端部に固定し、外部と接続できるようにする。また本発明の温熱材料10を、図3に示すように複数個に分割したモジュールとして用いる場合には、各発熱体の電源供給用の導体を共通のリード線を介して単一のコネクタと接続してもよい。本発明の温熱材料に用いるコネクタ及びリード線は、いずれも防水型のものを用いることが好ましい。
【0015】
保温層13を構成する材料としては、例えば、コルク、毛、軟質繊維板、発泡プラスチックなどの有機質系材料や、石綿・岩綿などの天然鉱物、グラスウール、ロックウールなどの人工無機鉱物、珪(けい)藻土・珪酸カルシウムなど無機質系材料を用いることができる。上述したように面状発熱体121は、下面に金属蒸着面を設けることにより放射による熱の散逸を最小限にすることができるが、さらに保温層13を設けることにより、発熱体が発する熱が熱伝導によって外部に散逸するのを防止できる。
【0016】
保護層14は、石材層11によって面状発熱体が損傷を受けるのを防止するための層で、熱伝導性が良好で且つ面状発熱体121からの赤外線を減衰させない材料で構成する。具体的にはポリカーボネート等の樹脂や樹脂に熱伝導性のよい顔料、例えばカーボンブラック、金属粉などを混入させたプラスチックボードなどが用いられる。
【0017】
箱体16を構成する材料は、特に限定されないが、アルミニウム、ステンレス等の金属板が好ましく、特にステンレス鋼板が好ましい。ステンレス鋼の熱伝導率は、14〜17kcal/m2h℃であるのに対し、アルミニウムの熱伝導率は200kcal/m2h℃であることから、前者のほうが外部への熱損失を防ぐ効果が高い。
また箱体16の保温層13が収納される部分には、図示していないが、保温層13の厚みとほぼ同じ厚みの井桁状のリブが設けられており、石材層11、保護層14及び板材15の重量に十分耐え得る構造になっている。
【0018】
本発明の温熱材料10は、モジュール型の場合には、上述のように構成材料を一体化したものを、石材層11が上面となるように、住宅や病院等の施設の床や浴室の床等に組み込んで使用することができるほか、屋外への設置も可能である。本発明の温熱材料10は、例えば床材として用いた場合には、冬季は熱源を駆動することにより、面状発熱体による赤外線と石材からの放射線との相乗効果により単なる温熱効果のみならず、代謝の促進、自然治癒力の増進などの効果が得られる。また夏季には熱源を使用せず、石材の冷たさでクーラーがなくても冷却効果が得られる。
【0019】
また本発明の温熱材料10を図3に示すように複数個に分割したモジュールとすることにより、搬入機器やエレベーターの積載荷重を心配することなく、施設内への搬入や据付工事を容易に行なうことができる。
【0020】
以上、本発明の温熱材料10を、モジュール型とした場合の実施形態を説明したが、本発明の温熱材料10は、温熱材料を構成する各層、即ち熱源12及び石材層11を設置すべき場所に構成する各材料を順次積層して構成することも可能である(定置型)。この場合には、熱源12を構成する面状発熱体は、コネクタ部分のみを露出させて、コンクリート内に埋設し、その上に石材層11を設けてもよい。
【0021】
次に本発明の温熱材料10を適用した温熱装置の一例として、岩盤浴装置の実施の形態を説明する。
【0022】
図4は、上述した温熱材料10の複数をモジュール化した温熱岩盤浴装置20を示す図で、上面が開口したステンレス製のパン21に、複数(ここでは15個)の温熱材料10を並置して収納したものであり、人はこの温熱材料10の上に直接或いは敷物等を適宜置いた上に載ることができる。
【0023】
各温熱材料10の熱源は、図示していない共通のリード線を介してパン21の外面に固定された防水構造のコネクタ22に電気的に接続されており、ケーブル24により制御盤25に接続される。また複数の温熱材料10の少なくとも一つには、図示しない温度センサーが内蔵されており、この温度センサーも防水型のリード線を介して防水構造のコネクタ23に接続され、ケーブルにより制御盤25に接続される。
【0024】
制御盤25は、熱源の温度を設定することが可能になっており、温度センサーからの検出温度に応じて各温熱材料の熱源をオンオフ制御し、熱源の温度が設定された温度となるように制御する。
【0025】
この岩盤浴装置20は、必要に応じて、図5に示すような架台30に搭載して使用する。架台30は、強固な材質の材料からなる枠材31と、枠材31の底部の複数箇所に固定されたキャスター32と、側部に沿った複数箇所(ここでは8箇所)に設けられ、ネジ部によって上下位置を調整可能なアジャスター33とからなり、枠材31の上部に図4に示す岩盤浴装置20をはめ込み固定するようになっている。岩盤浴装置20を搬送する際には、アジャスター33を上方に上げた状態でキャスター32により移動させ、設置場所ではアジャスター33を下方に下げて固定する。
【0026】
この岩盤浴装置20は、用いる材料や大きさによっても異なるが、典型的には80〜100kg程度の重量となる。しかし、このような架台30に搭載することにより、搬送や設置を容易に行なうことができる。また荷重を複数のアジャスターで分担するので、一般集合住宅や小楯の住宅でも安易に設置することができる。
【0027】
本発明の岩盤浴装置20は、熱源として通電により発熱する面状発熱体を利用しているので、大規模な工事を必要とすることなく、既存の施設においても容易に設置することができる。また温水を用いる場合に比べ温度のコントロールが容易で、特に温度センサーを備えることにより自動的に岩盤浴に最適である所望の温度を実現できる。また石材層がラジウムやラドンなどを含むものを使用することにより、これら成分の放射線と面状発熱体からの赤外線との相乗した効果が得られる。
【実施例】
【0028】
熱源として、厚さ1.1mm、幅900mm、長さ1800mmの赤外線放出面状発熱体を使用し、定置型及び図1に示す構造のモジュール型の温熱装置を作製した。発熱体の電源は単相200Vを用い、目標温度を42℃に設定し、温度センサーによるオンオフ制御を行なった。オンオフ制御の温度差(ディファレンシャル)は3℃とした。
【0029】
目標温度に達するまでの所要時間、ディファレンシャルの温度効果の所要時間、及び連続運転時の運転サイクルを表1に示す。またこの運転サイクルから求めた12時間使用時の消費電力を併せて表1に示す。
【0030】
【表1】


条件:室温28℃、晴天、湿度55%
表1の結果からもわかるように、比較的少ない消費電力で39〜42℃の温度を保つことができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、設置、保守が容易で、且つ低い初期コスト及びランニングコストで駆動できる温熱材料が提供される。これにより既存の施設や個人住宅にも簡単に温熱浴装置の設置をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の温熱材料の一実施の形態を示す断面図
【図2】図1の温熱材料に好適な面状発熱体を示す図
【図3】図1の温熱材料を用いた温熱材料モジュールを示す図
【図4】図1の温熱材料を用いた岩盤浴装置を示す図
【図5】図4の岩盤浴装置用の架台を示す図
【符号の説明】
【0033】
10・・・温熱材料、11・・・石材層、12・・・熱源、13・・・保温層、14・・・保護層、16・・・箱体、20・・・岩盤浴装置、30・・・架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石材又はセラミックを含む石材層と、絶縁体で覆われた面状発熱体からなる熱源とを積層し、一体化したことを特徴とする温熱材料。
【請求項2】
前記石材層は、放射線や遠赤外線を放出する放射線放出成分を含むことを特徴とする温熱材料。
【請求項3】
前記石材層と熱源との間に、高熱伝導性の保護層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の温熱材料。
【請求項4】
前記熱源の、前記石材層が積層される側の反対側に保温層を設けたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の温熱材料。
【請求項5】
前記石材層と熱源とを含む積層体を収納する箱体を備えたことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の温熱材料。
【請求項6】
前記石材層と熱源とを含む積層体を複数個に分割して箱体に収納したことを特徴とする請求項5記載の温熱材料。
【請求項7】
前記積層体の少なくとも一つに温度センサーを備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の温熱材料。
【請求項8】
温熱材料を収納するための1又は複数の支持枠が形成された架台と、前記支持枠に収納された請求項1ないし7いずれか1項に記載の温熱材料とを備えたことを特徴とする温熱浴装置。
【請求項9】
前記架台は、前記支持枠が形成された側の反対側に複数の可動輪が固定されていることを特徴とする温熱浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−136609(P2006−136609A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330307(P2004−330307)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000137650)株式会社ミサワ商会 (2)
【出願人】(504422601)株式会社金坂シー・エス研究所 (1)
【出願人】(598164267)株式会社ライフ技術研究所 (7)
【出願人】(504422612)有限会社空デザイン (2)
【Fターム(参考)】