測位装置
【課題】屋内の複雑に変化する通信環境に即した測位結果を求めることを可能にする。
【解決手段】各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、任意の測位時に受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部を備え、位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を真値記憶部に送って対応表を更新するようにしたものである。
【解決手段】各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、任意の測位時に受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部を備え、位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を真値記憶部に送って対応表を更新するようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグなどの電波を発する小型の無線端末を用いて屋内測位を行う測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、屋外における測位方法に関しては、カーナビゲーションシステムで代表されるようにGPS(Global Positioning System)衛星を利用した測位が主流となっている。一方、屋内における測位方法としては、RFID、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などの近距離通信技術を適用した、電波デバイスと称する小型の無線端末を使うものが提案されている(例えば非特許文献1〜5参照)。例えばRFIDを用いた測位システムの場合、測定対象エリアの異なる所定位置に複数個のリーダ(読み取り機)を対応付けて設置し、当該エリア内を移動する測位対象のRFIDタグとの間で通信を行う構成となっている。各リーダは、RFIDタグからの電波を受信すると、受信したID情報とその受信電波強度(Received Signal Strength Indicator:以下、RSSI値とする)を、LANなどを介して測位処理部に送る。測位処理部では、例えばRSSI値を距離換算してリーダとRFIDタグ間の距離を求め、三角測量により、算出した距離とリーダの位置とからRFIDタグの位置を計算するようにしている。また、別の例として、事前処理で測定対象エリア内の所定の複数位置に対してRFIDタグを置き、各位置に対するRSSI値を各リーダで収集しておき、測位時にその事前学習データを参照して測位対象のRFIDタグの位置を算出するという方法がある(非特許文献5参照)。
また、電波デバイスとGPSといった複数の測位方法を組み合わせた測位システムも提案されている(例えば特許文献1,2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2002−318272号公報
【特許文献2】特開2002−310692号公報
【非特許文献1】神谷泉・小白井亮一・増田亮太・清野憲二・神田秀彦・羽場純, 「無線LAN測位に関する基礎実験とその評価 − いつでもどこでも可能な測位環境の確立に向けて −」, 日本写真測量学会誌 「写真測量とリモートセンシング」 Vol.44, No.4, 2005
【非特許文献2】田中完爾・木室義彦・山野健太郎・平山満・近藤英二・松本三千人, 「RFIDシステムによる自己位置推定とタグ配置作業」, 電子情報通信学会論文誌, D−II, Vol.J88−D−II, No.9, pp.1759−1770
【非特許文献3】神谷泉, 「測位技術の調査とICタグ, UWBの測位への応用」, 国土地理院時報, No.106, 2005,http://www.gsi.go.jp/REPORT/JIHO/vol106/106-5.pdf
【非特許文献4】北須賀輝明・中西恒夫・福田晃, 「無線通信網を用いた屋内向け測位方式」, 情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム Vol.44, No.SIG10(ACS 2), July 2003http://www.f.csce.kyushu-u.ac.jp/~kitasuka/papers/2003/ipsj-kitasuka-v44acs2a013.pdf
【非特許文献5】小川智明・吉野修一・清水雅史, 「屋内における無線タグを用いた学習型位置推定法」, 情報処理学会研究報告 2004−UBI−5, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の屋内を対象とした測位方法で、RSSI値と距離の関係を利用しているものは、屋内特有の通信環境があるため、測定のタイミングにより同一の位置に対する測位結果に違いを生じるという問題がある。特に屋内では、壁、パーティション、天井、その他の設置物が存在し、電波の反射が起こりやすくなり、マルチパスが発生するからである。そのため、同一地点を観測しても電波の強度などが揺らぎ、測位結果にばらつきを生じることになる。また、屋内の電波障害の要因となるパーティションなどは増減、設置位置変更などを伴うことが多いため、通信環境が一様に保たれず、上記のような測位結果に影響を及ぼす。また、事前学習データを用いる方法は、測位処理は速いが、充実した事前データを取得するためには収集工数を要する上、上記のように時間経過により通信環境が変化するため、取得しておいたデータが適応しなくなり、安定した測位結果が得られなくなる。さらにその他の測位方法による場合でも、電波を用いる以上、屋内という通信環境により同様の問題が生じる。そのため、通信環境に即した測位システムの構築が求められる。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、屋内の複雑に変化する通信環境に即した測位結果を求めることが可能な測位装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る測位装置は、所定の測定対象エリア内に在る移動可能な測位対象の無線端末から送信される当該端末の識別情報を含む電波を、当該測定対象エリアの所定の位置に設置された複数の受信部により受信し、各受信部における電波の受信状態をそれぞれ測定して識別情報単位の組にして得る受信状態取得手段と、測定対象エリア内の所定の複数位置に同種無線端末を置いて各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、任意の測位時に受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部と、真値探索部で抽出された真値あるいは位置推測部で算出された推定位置を現在測位対象としている無線端末の測位結果として出力する測位結果出力部を備え、位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を真値記憶部に送って対応表を更新するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、測位時に取得した受信状態に対して、事前処理時に収集作成した受信状態と真値の対応表を用いた真値探索部による測位処理で測位結果が得られない場合に、位置推測部の推測処理による推定位置を測位結果として得るようにしたので、通信環境による受信状態の変化に対しても常時安定した測位を可能にする。また、このとき得られた推定位置と受信状態を対応表に加えて自動更新するようにしたので、真値探索部による以降の測位処理において同じ取得受信状態に対しての測位結果を得ることが可能になり、位置推測部よる場合よりも速い処理で行うことができるようになる。さらに、事前処理で収集作成した対応表のデータ量が少ない場合には、測位処理の実績を加えていくことで対応表のデータの充実化を図ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
無線端末1は、例えば人やロボットなどに所持させて所定の測定対象エリア内を移動させる小型の測位対象で、情報受信部11と情報送信部12を備えている。情報送信部12は、アクティブRFIDタグであり、測位処理装置2に向けて電波を送信する手段で、その電波には無線端末自身を識別する識別情報を含んでいる。また、情報受信部11は、例えば測位装置2で得た当該無線端末1自身の測位結果を受信する手段で、無線端末1の所持者が自分の現在位置を確認したり、移動可能なロボットが次の移動量を算出する基準データとして用いたりするのに使用される。
【0009】
測位装置2は、以下の各部を備えている。
受信状態取得手段20は、複数の受信部201と受信状態情報入力部202から構成されている。受信部201は、無線端末1からの識別情報を含む電波を受信し、電波の受信状態としてRSSI値を測定する手段で、アクティブRFIDタグに対する複数のリーダを想定する。この例では、4個の受信部201a,201b,201c,201dが所定の測定対象エリアの異なる位置に設置されているものとする(例えば図8のR1 〜R4 を参照)。受信状態情報入力部202は、各受信部20でそれぞれ取得したRSSI値を識別情報単位の組データに統合する手段である。受信部201と受信状態情報入力部202の間の通信は、有線LAN、無線LANなどを介して行うことを想定している。なお、受信状態取得手段20は周知の構成である。この例では、電波の受信状態を受信部201で測定したRSSI値を例にしているが、受信状態としては、ほかに電波から得られる電波到達時間、発信元の角度などもあり、その測定処理が複雑なものについては、受信部201ではなく受信状態情報入力部202側で行う場合も当然考えられる。
【0010】
真値入力部22は、事前処理に用いる機能で、測定対象エリア内の所定の複数位置に無線端末1を置いて、各位置における電波から測定したRSSI値の組と装置外から入力される位置の真値(RSSI値の組に対応する無線端末のエリア地図上の座標である。以下、位置の真値を単に「真値」と呼ぶことにする。)を対応付ける手段である。真値記憶部23は、真値入力部22で対応付けられたRSSI値と真値とを対応表にして記憶領域51に格納し、またそれらのデータの転送・更新を行う手段である。
【0011】
真値探索部24は、任意の測位時に受信部201、受信状態情報入力部202で取得した同一識別情報のRSSI値の組(以下、取得RSSI値の組とする。)に基づいて真値記憶部23が保持している対応表を参照し、一致するRSSI値の組に対応する真値を抽出する手段である。位置推測部25は、真値探索部24の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得RSSI値の組に対して、予め準備したRSSI値と距離の関係および各受信部201の設定位置を用いて無線端末1の存在可能領域を算出し、当該存在可能領域の重心を算出して推定位置として得る手段である。測位結果出力部28は、真値探索部24で抽出された真値あるいは位置推測部25で算出された推定位置を測位対象としている無線端末の測位結果として出力する手段である。
【0012】
パラメータ管理部26は、位置推測部25が推測処理で得た推定位置とそのとき使用した取得RSSI値の組を保持し管理する手段で、パラメータ生成部261およびパラメータ記憶部262を有している。パラメータ生成部261は、位置推測部25で算出された推定位置と取得RSSI値の組を保持しておき、これら保持データの中から無線端末の移動に依存するRSSI値の変化を持つデータのみを選択する手段である。パラメータ記憶部262は、パラメータ生成部261で選択された推定位置と取得RSSI値の組を真値候補データとして保持する手段である。
【0013】
次に、事前処理の動作について説明する。
まず、事前処理として、任意の状態で測位を行うときに使用する照合データとして、RSSI値の組と真値の対応表を作成する。この場合、測定対象エリアの地図データを準備しておき、当該エリア内の決められた複数の位置に無線端末1を、例えば順次当てはめ、その各位置において発せられる情報送信部12からの電波を各受信部201で受信する。各受信部201では、受信した電波のRSSI値をそれぞれ測定して受信状態情報入力部202に送る。受信状態情報入力部202では、測定された各RSSI値を組にして真値入力部22に送る。真値入力部22では、取得したRSSI値の組と、外部から入力される測定対象エリアの地図データ上の真値を対応付けて真値記憶部23に送る。真値記憶部23では、測定対象エリアの各位置において順次取得したRSSI値の組と真値を対応表にして格納する(図2のステップST21、ST22)。このとき作成された対応表は図11に例示したようなデータ構成となる。
【0014】
真値記憶部23は、上記対応表作成・格納の処理以外に、後述の測位処理以降の処理を図2に示す手順で行う。測位処理の際には、真値探索部24からの要求に応じて対応表のRSSI値の組と真値を渡す(ステップST24、ST25)。また、後述するように位置推測部25の推測処理により得られた推定位置とそのときに使用した取得RSSI値の組が得られるが、その中から選択された真値候補データなるものがパラメータ管理部26から送られて来るので、真値記憶部23では、その真値候補データを対応表に追加して更新する(ステップST21、ST22)。その場合、真値候補データとして送られてきた取得RSSI値の組と推定位置が、保持している対応表の情報と重複・矛盾が起きないかどうかを調べ、整合処理を行う(ステップST23)。なお、ここで言う重複とは、「同一のRSSI値の組に対して異なる位置が測位結果として送られてきたこと」である。また、矛盾とは、「同一の位置に対して異なるRSSI値の組が送られてきた」ことを意味するものとする。このような重複・矛盾が起きた場合には、通信環境の変化によりRSSI値が変動したことが想定される。それ故に、新しく送られてきた情報(RSSI値)の方が正しいと考えられる。そのため、重複・矛盾が起きた場合の処理として、対応表側の重複・矛盾の対象となるデータを位置推測部25から送られてきた真値候補データで上書きする。これにより、測位に用いるデータを、通信環境の変化に対応した値にすることができる。
【0015】
次に、移動可能な状態にある無線端末に対して行う測位処理の動作について説明する。
測位が開始されると、測定対象エリア内の任意の位置にある無線端末1の情報送信部12が発する電波が各受信部201で受信され、測定されたRSSI値が受信状態情報入力部202に送られる。受信状態情報入力部21では、識別情報を基準にした取得RSSI値の組を生成し、真値探索部24へ入力する。
【0016】
真値探索部24は図3に示す手順で処理を行う。すなわち、真値探索部24では、取得RSSI値の組を受け取ると、真値記憶部23の対応表からRSSI値の組と真値を読み出し(ステップST31)、取得RSSI値と読み出したRSSI値の組のマッチングを取る(ステップST32)。このマッチング手法としては、RSSI値の完全一致ないしは相関を取ることによって多少のRSSI値のぶれを許容して一致判定をとるものとする。マッチングの結果(ステップST33)、一致するRSSI値の組が対応表に存在した場合には、RSSI値の組に対応する真値を測位結果出力部28に出力し(ステップST34)、パラメータ生成部261にマッチングが取れたことを通知する(ステップST35)。一方、ステップST33において、一致するRSSI値の組が対応表に存在しなかった場合には、取得RSSI値を位置推測部25に送り、推測処理を行う。
【0017】
位置推測部25は、図4に示すように、領域計算部251、真値・パラメータ生成部252および最近点計算部253を有している。真値探索部24の処理において、対応表の中に一致するRSSI値の組が存在しなかった場合、位置推測部25では、取得RSSI値の組に基づいて無線端末1の位置を、図5に示す処理フローのようにして推定する。
まず、領域計算部251において、入力された取得RSSI値の組に基づいて、予め準備したRSSI値と距離の関係を表すテーブル(図9を参照)、またはRSSI値から距離を算出する計算式を用いて、無線端末1と各受信部201間の距離をそれぞれ計算する(ステップST41)。次に、各受信部201の設定位置を中心として、算出した距離を半径とした円と当該距離に幅を持たせた半径の同心円を描いてそれぞれの円周帯を求め、各円周帯のすべてが重複する部分を無線端末1が存在可能な領域として求める(ステップST42)。該当する領域を求めることができた場合(ステップST43)、その領域の重心を計算し、その重心を無線端末1の推定位置とする(ステップST44)。算出した推定位置は測位結果出力部28に送られ、また、この推定位置と上記計算に用いた取得RSSI値は真値・パラメータ生成部252に送られる(ステップST45)。
【0018】
次に、真値・パラメータ生成部252では、後述するパラメータ記憶部262で保持している真値候補データ(過去に推定処理したRSSI値の組と推定位置)を参照し、上記算出された推定位置と取得RSSI値の組とマッチするものが存在するかどうかを調べる(ステップST46)。存在した場合は、その該当する真値候補データを真値記憶部23に転送し、新たなRSSI値の組と位置の真値として対応表に更新登録する。一方、存在しない場合には、今回の推定位置と取得RSSI値の組をパラメータ生成部261に送る(ステップST48)。
【0019】
なお、ステップST43において、無線端末1の存在可能な領域が存在しなかった場合には、取得RSSI値の組は最近点計算部253に送られる。最近点計算部253では、その取得RSSI値の組に基づいて真値記憶部23が保持する対応表を参照し、RSSI値の組の中から取得RSSI値に最も近いものを探し出す。具体的には、真値探索部24で行ったマッチング方法(ステップST32、ST33)よりも条件を緩くしたもので、例えばRSSI値の差の平均値が最も小さいもの、あるいは相関が(真値探索部24で条件に合うほどのものではないにしても)最も大きいものを選択する。このマッチングの結果、取得RSSI値に近いRSSI値の組が存在した場合、そのRSSI値に対応した真値を推定位置として測位結果出力部28に出力する(ステップST49)。
【0020】
パラメータ管理部26において、パラメータ生成部261は、図6に示す処理フローに示すように、位置推測部25の推測処理で得た推測結果データを保持し、真値記憶部23の更新データとして有効な真値候補データの生成を行う。
上述したように、パラメータ生成部261には、位置推測部25の処理(図5のステップST46、ST48)で、パラメータ記憶部262で保持する真値候補データとマッチしなかった場合の取得RSSI値の組と推定位置が送られて来るが、これを推測結果データとして保持する(ステップST51)。一方、真値探索部24でマッチング(図3のステップST33、ST34)がとれたときには、その通知を受けて、保持していた推測結果データ(取得RSSI値の組と推定位置)の中から、今後の真値探索に使用するための真値候補データを選択する(ステップST52)。パラメータ生成部261では、選択した取得RSSI値の組と推定位置をパラメータ記憶部262へ転送する(ステップST53)。
【0021】
ここで、パラメータ生成部261がステップST52で行う真値候補データの選択の具体的方法について説明する。位置推測部25で推測処理が行われる場合、無線端末1が発する電波の到来間隔が短いことから、その処理は連続することが多い。そのため、位置推測部25から受け取って保持していたデータを時系列に並べ、隣接するRSSI値の変動状態を調べ、直前のものに対してRSSI値に所定以上の変化が見られる場合にのみ、その取得RSSI値の組と推定位置を残し、変化が少ないデータは破棄する。これにより、無線端末の移動に依存する変化を持つ取得RSSI値の組と推定位置を有効データ(真値候補データ)として選択できる。換言すれば、変動の小さいRSSI値は電波の揺らぎや無線端末がほぼ同位置あることに依存しているため、それに対応するデータは除去することができる。この手法の根拠は、RSSI値は理論的に距離の2乗に反比例するので、無線端末が移動している場合は、その間すべての取得RSSI値が変動すると考えられることにある。この処理により、真値候補データにする量を削減することにもなるので、対応表の更新で、類似する余分なデータが多量に登録されるのを防止することもできる。
【0022】
パラメータ記憶部262では、図7に示す処理フローに従って、パラメータ生成部261によって選択された取得RSSI値の組と推定位置が転送されてきた場合は、真値候補データとして保持する(ステップST61、ST62)。また、位置推測処理時の新規の推測結果とのマッチング(ステップST46)で使用する際には保持した真値候補データを位置推測部25に転送する(ステップST63、ST64)。
なお、パラメータ管理部26では、上記例では、パラメータ生成部261で真値候補データを選択しているが、対応表を充実化するための目的だけであれば、パラメータ生成部261を使用せず、推測結果データをそのまま真値候補データとするようにしてもよい。
【0023】
次に、位置推測部25による推測動作を、具体例を挙げて説明する。
図8および図12は、屋内の所定の矩形フロアを測定対象エリアとし、そのエリアに在る移動可能な無線端末(アクティブICタグ)T1を、測定対象エリアの異なる所定の位置にそれぞれ設置した複数の受信部(リーダ)R1 ,R2 ,R3 ,R4 を用いて測位する状況を示している。図9および図10は、位置推測25で使用するために予め準備された測位用パラメータの例を示すもので、図9は無線端末に対する受信部におけるRSSI値と両者間の距離の対応関係を、16段階で示したデータテーブルである。また、図10は、測定対象エリア、すなわち図8のx−y軸、原点で定義される座標系における各受信部の設置位置(座標値)を示すデータである。図11は真値記憶部23に格納されたRSSI値の組と真値の対応表の例を示しており、真値は図12における△印の位置の座標値に相当する。
【0024】
今、図12に示される位置に在る無線端末T1が発する電波の各受信部で取得した取得RSSI値の組を(R1 ,R2 ,R3 ,R4 )=(5,5,7,7)としたときの測位処理を考える。この場合、真値探索部24において、取得RSSI値の組と対応表のRSSI値の組とのマッチング処理(図3のステップST32)で、各受信部におけるRSSI値が完全一致するかどうかをチェックする手法を適用としたとする。この場合、真値記憶部23で保持する図11の対応表に一致するデータがないので、位置推測部25では、取得RSSI値の組に基づいて無線端末T1の位置を推測する。最初、図9のRSSI値と距離の関係テーブルを用いて無線端末T1の存在可能領域を求める。例えば、受信部R1 と無線端末T1との距離を計算し、受信部R1 の座標値を中心として、算出距離(6.31mm)を半径とした円と当該算出距離に幅を持たせた半径(3.98mm)の同心円を描いて、図13の斜線で示すような円周帯を求める。この円周帯は、受信部R1 から見た無線端末T1の存在可能領域となる。同様にして、他のリーダR2 ,R3 ,R4 のそれぞれから見た無線端末T1の存在可能領域を求め、全ての存在可能領域の共通部分(重複部分)を得ると、図14の斜線部で示すようになる。この共通部分が無線端末T1の実際の存在可能領域となる。次に、この領域の重心(1.5,4.5)を算出して無線端末T1の推定位置とする。なお、重心の計算方法としては、最終的に求めた存在可能領域を、円の交点を頂点とする多角形で近似することで、計算を簡素化してもよい。
【0025】
位置推測部25は、このようにして求めた推定位置と取得RSSI値の組をパラメータ生成部261に送り保持しておく。パラメータ生成部261では、その後の真値探索部24のマッチング処理が成功した時間を利用して、保持している推測結果データのうち、無線端末T1の移動に依存する取得RSSI値の変化を持つデータのみを選択してパラメータ記憶部262に真値候補データとして格納しておく。そして、以降に位置推測部25で推測を行った際に、真値候補データと同じ取得RSSI値の組と推定位置を再び求めたことを確認した場合には、パラメータ記憶部262で保持していた真値候補データの該当する推定位置とRSSI値の組を真値記憶部23に転送して対応表に追加登録を行う。したがって、その後の測位処理において、真値探索部24によるマッチング処理により、更新された対応表から真値を求めることが容易となり、通信環境に対応した測位が可能になり、また、位置推測部25による推測計算も削減できるようになるので測位処理時間も改善されるようになる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、事前処理として、測位対象エリアの複数の地点においた無線端末に対するRSSI値の組を収集してそれらの位置の真値を対応付けた対応表にしておき、その後の測位処理時において、真値探索部24により、順次受信する取得RSSI値の組に基づいてこの対応表を参照して対応する位置の真値を測位結果として出力し、真値探索部24で測位結果が得られなかった場合には、位置推測部25により取得RSSI値に対して、RSSI値と距離の関係および受信部20の設置位置を用いて無線端末の存在可能領域を算出し、その存在可能領域の重心を無線端末の推定位置として算出して測位結果とするようにしている。したがって、通信環境による受信状態の変化に対しても常時安定した測位を可能にする。
【0027】
また、この実施の形態1によれば、パラメータ生成部261により、位置推測部25による推定位置と取得RSSI値の中から無線端末の移動に依存するRSSI値の変化を持つデータのみを抽出して真値候補データとしてパラメータ記憶部262に保持しておき、位置推測部25の推測処理で再度同じデータが得られた場合には該当する推定位置と取得RSSI値を転送して対応表に加え更新するようにしている。したがって、この自動更新の処理を繰り返し行うことにより、真値探索部24による以降の測位処理において、同じ取得RSSI値の組に対しての測位結果を得ることが可能になり、位置推測部25よる場合よりも速い処理で行うことができるようになる。また、真値候補データは無線端末の移動に依存する変化を持つデータのみとしており、加えて位置推測部25の2度の推測処理で得られた同じ真値候補データのみを対応表の更新データとして用いているため、対応表を測位結果として信憑性の高いデータで構成でき、以降の位置推測部25の推測処理の精度を高めることができる。さらに、事前処理で作成した対応表のデータ量が少ない場合には、測位処理の実績を加えていくことで対応表のデータの充実化を図ることも可能となる。
【0028】
さらに、この実施の形態1によれば、位置推測部25の上記推測処理で無線端末の存在可能領域を求めることができなかった場合に、取得RSSI値の組に基づいて真値記憶部23の対応表を参照して、最も近いRSSI値の組を抽出し、そのデータに対応する位置の真値を推定位置として出力するようにしている。したがって、近似する測位結果を得ることができるため、測位測位装置として、1度の処理で測位結果が得られないということを無くし、無線端末の概略位置を確認することが可能となる。
【0029】
なお、この実施の形態1では、無線端末としてアクティブRFIDタグを想定した説明としていたが、この発明を、RSSI値あるいはその他の受信状態を求めることができる無線LAN、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などを適用した無線端末を用いたケースでも、同様な効果を奏し得ることが分かる。
また、図8に示すように、受信部(リーダ)の設置位置を測定対象エリアの周辺に配置した例を想定して説明してきたが、測定対象エリアの面積が広い場合には内部の位置に受信部を増設すればよく、エリアが回廊のように長手方向に延長される場合には順次周囲にも増設すればよい。なお、そのような場合、受信端末からの電波は近距離用のため届かなくなる場所ができ、全ての受信部で所定値以上のRSSI値を取得できなくなる可能性が生じる。そこで、測定対象エリアを複数のブロックに分け、各ブロックを受け持つ受信部の組(例えば4個ずつ)を予め決めておき、ブロック間を移動する無線端末からの電波のRSSI値が所定値以上となった、ブロックを担当する受信部の組に切り替え、その組のRSSI値を用いて測位を行うようにすればよい。この場合、真値記憶部の対応表のデータは、ブロックの担当受信部毎に予め生成する必要があるが、受信部の識別情報を用いて管理すればよい。この発明による測位装置は、このようにして広範囲の屋内における測位も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る真値記憶部の処理を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る真値探索部の処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る位置推測部の機能構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る位置推測部の処理を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るパラメータ生成部の処理を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係るパラメータ記憶部の処理を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る測位する状況を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るアクティブICタグとリーダにおけるRSSI値と距離の関係を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る測定対象エリアにおけるリーダの設置位置を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係るRSSI値の組と真値の対応表を例示する説明図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る測定対象エリア上の測位状況を例示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係る無線端末の存在可能領域の求め方を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態1に係る位置推測部で算出された無線端末の存在可能領域を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1(T1) 無線端末、11 情報受信部、12 情報送信部、2 測位装置、20 受信状態取得手段、201(201a〜201d,R1 〜R4 ) 受信部、202 受信状態情報入力部、21 受信状態情報入力部、22 真値入力部、23 真値記憶部、24 真値探索部、25 位置推測部、251 領域計算部、252 真値・パラメータ生成部、253 最近点計算部、26 パラメータ管理部、261 パラメータ生成部、262 パラメータ記憶部、28 測位結果出力部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグなどの電波を発する小型の無線端末を用いて屋内測位を行う測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、屋外における測位方法に関しては、カーナビゲーションシステムで代表されるようにGPS(Global Positioning System)衛星を利用した測位が主流となっている。一方、屋内における測位方法としては、RFID、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などの近距離通信技術を適用した、電波デバイスと称する小型の無線端末を使うものが提案されている(例えば非特許文献1〜5参照)。例えばRFIDを用いた測位システムの場合、測定対象エリアの異なる所定位置に複数個のリーダ(読み取り機)を対応付けて設置し、当該エリア内を移動する測位対象のRFIDタグとの間で通信を行う構成となっている。各リーダは、RFIDタグからの電波を受信すると、受信したID情報とその受信電波強度(Received Signal Strength Indicator:以下、RSSI値とする)を、LANなどを介して測位処理部に送る。測位処理部では、例えばRSSI値を距離換算してリーダとRFIDタグ間の距離を求め、三角測量により、算出した距離とリーダの位置とからRFIDタグの位置を計算するようにしている。また、別の例として、事前処理で測定対象エリア内の所定の複数位置に対してRFIDタグを置き、各位置に対するRSSI値を各リーダで収集しておき、測位時にその事前学習データを参照して測位対象のRFIDタグの位置を算出するという方法がある(非特許文献5参照)。
また、電波デバイスとGPSといった複数の測位方法を組み合わせた測位システムも提案されている(例えば特許文献1,2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2002−318272号公報
【特許文献2】特開2002−310692号公報
【非特許文献1】神谷泉・小白井亮一・増田亮太・清野憲二・神田秀彦・羽場純, 「無線LAN測位に関する基礎実験とその評価 − いつでもどこでも可能な測位環境の確立に向けて −」, 日本写真測量学会誌 「写真測量とリモートセンシング」 Vol.44, No.4, 2005
【非特許文献2】田中完爾・木室義彦・山野健太郎・平山満・近藤英二・松本三千人, 「RFIDシステムによる自己位置推定とタグ配置作業」, 電子情報通信学会論文誌, D−II, Vol.J88−D−II, No.9, pp.1759−1770
【非特許文献3】神谷泉, 「測位技術の調査とICタグ, UWBの測位への応用」, 国土地理院時報, No.106, 2005,http://www.gsi.go.jp/REPORT/JIHO/vol106/106-5.pdf
【非特許文献4】北須賀輝明・中西恒夫・福田晃, 「無線通信網を用いた屋内向け測位方式」, 情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム Vol.44, No.SIG10(ACS 2), July 2003http://www.f.csce.kyushu-u.ac.jp/~kitasuka/papers/2003/ipsj-kitasuka-v44acs2a013.pdf
【非特許文献5】小川智明・吉野修一・清水雅史, 「屋内における無線タグを用いた学習型位置推定法」, 情報処理学会研究報告 2004−UBI−5, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の屋内を対象とした測位方法で、RSSI値と距離の関係を利用しているものは、屋内特有の通信環境があるため、測定のタイミングにより同一の位置に対する測位結果に違いを生じるという問題がある。特に屋内では、壁、パーティション、天井、その他の設置物が存在し、電波の反射が起こりやすくなり、マルチパスが発生するからである。そのため、同一地点を観測しても電波の強度などが揺らぎ、測位結果にばらつきを生じることになる。また、屋内の電波障害の要因となるパーティションなどは増減、設置位置変更などを伴うことが多いため、通信環境が一様に保たれず、上記のような測位結果に影響を及ぼす。また、事前学習データを用いる方法は、測位処理は速いが、充実した事前データを取得するためには収集工数を要する上、上記のように時間経過により通信環境が変化するため、取得しておいたデータが適応しなくなり、安定した測位結果が得られなくなる。さらにその他の測位方法による場合でも、電波を用いる以上、屋内という通信環境により同様の問題が生じる。そのため、通信環境に即した測位システムの構築が求められる。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、屋内の複雑に変化する通信環境に即した測位結果を求めることが可能な測位装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る測位装置は、所定の測定対象エリア内に在る移動可能な測位対象の無線端末から送信される当該端末の識別情報を含む電波を、当該測定対象エリアの所定の位置に設置された複数の受信部により受信し、各受信部における電波の受信状態をそれぞれ測定して識別情報単位の組にして得る受信状態取得手段と、測定対象エリア内の所定の複数位置に同種無線端末を置いて各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、任意の測位時に受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部と、真値探索部で抽出された真値あるいは位置推測部で算出された推定位置を現在測位対象としている無線端末の測位結果として出力する測位結果出力部を備え、位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を真値記憶部に送って対応表を更新するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、測位時に取得した受信状態に対して、事前処理時に収集作成した受信状態と真値の対応表を用いた真値探索部による測位処理で測位結果が得られない場合に、位置推測部の推測処理による推定位置を測位結果として得るようにしたので、通信環境による受信状態の変化に対しても常時安定した測位を可能にする。また、このとき得られた推定位置と受信状態を対応表に加えて自動更新するようにしたので、真値探索部による以降の測位処理において同じ取得受信状態に対しての測位結果を得ることが可能になり、位置推測部よる場合よりも速い処理で行うことができるようになる。さらに、事前処理で収集作成した対応表のデータ量が少ない場合には、測位処理の実績を加えていくことで対応表のデータの充実化を図ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
無線端末1は、例えば人やロボットなどに所持させて所定の測定対象エリア内を移動させる小型の測位対象で、情報受信部11と情報送信部12を備えている。情報送信部12は、アクティブRFIDタグであり、測位処理装置2に向けて電波を送信する手段で、その電波には無線端末自身を識別する識別情報を含んでいる。また、情報受信部11は、例えば測位装置2で得た当該無線端末1自身の測位結果を受信する手段で、無線端末1の所持者が自分の現在位置を確認したり、移動可能なロボットが次の移動量を算出する基準データとして用いたりするのに使用される。
【0009】
測位装置2は、以下の各部を備えている。
受信状態取得手段20は、複数の受信部201と受信状態情報入力部202から構成されている。受信部201は、無線端末1からの識別情報を含む電波を受信し、電波の受信状態としてRSSI値を測定する手段で、アクティブRFIDタグに対する複数のリーダを想定する。この例では、4個の受信部201a,201b,201c,201dが所定の測定対象エリアの異なる位置に設置されているものとする(例えば図8のR1 〜R4 を参照)。受信状態情報入力部202は、各受信部20でそれぞれ取得したRSSI値を識別情報単位の組データに統合する手段である。受信部201と受信状態情報入力部202の間の通信は、有線LAN、無線LANなどを介して行うことを想定している。なお、受信状態取得手段20は周知の構成である。この例では、電波の受信状態を受信部201で測定したRSSI値を例にしているが、受信状態としては、ほかに電波から得られる電波到達時間、発信元の角度などもあり、その測定処理が複雑なものについては、受信部201ではなく受信状態情報入力部202側で行う場合も当然考えられる。
【0010】
真値入力部22は、事前処理に用いる機能で、測定対象エリア内の所定の複数位置に無線端末1を置いて、各位置における電波から測定したRSSI値の組と装置外から入力される位置の真値(RSSI値の組に対応する無線端末のエリア地図上の座標である。以下、位置の真値を単に「真値」と呼ぶことにする。)を対応付ける手段である。真値記憶部23は、真値入力部22で対応付けられたRSSI値と真値とを対応表にして記憶領域51に格納し、またそれらのデータの転送・更新を行う手段である。
【0011】
真値探索部24は、任意の測位時に受信部201、受信状態情報入力部202で取得した同一識別情報のRSSI値の組(以下、取得RSSI値の組とする。)に基づいて真値記憶部23が保持している対応表を参照し、一致するRSSI値の組に対応する真値を抽出する手段である。位置推測部25は、真値探索部24の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得RSSI値の組に対して、予め準備したRSSI値と距離の関係および各受信部201の設定位置を用いて無線端末1の存在可能領域を算出し、当該存在可能領域の重心を算出して推定位置として得る手段である。測位結果出力部28は、真値探索部24で抽出された真値あるいは位置推測部25で算出された推定位置を測位対象としている無線端末の測位結果として出力する手段である。
【0012】
パラメータ管理部26は、位置推測部25が推測処理で得た推定位置とそのとき使用した取得RSSI値の組を保持し管理する手段で、パラメータ生成部261およびパラメータ記憶部262を有している。パラメータ生成部261は、位置推測部25で算出された推定位置と取得RSSI値の組を保持しておき、これら保持データの中から無線端末の移動に依存するRSSI値の変化を持つデータのみを選択する手段である。パラメータ記憶部262は、パラメータ生成部261で選択された推定位置と取得RSSI値の組を真値候補データとして保持する手段である。
【0013】
次に、事前処理の動作について説明する。
まず、事前処理として、任意の状態で測位を行うときに使用する照合データとして、RSSI値の組と真値の対応表を作成する。この場合、測定対象エリアの地図データを準備しておき、当該エリア内の決められた複数の位置に無線端末1を、例えば順次当てはめ、その各位置において発せられる情報送信部12からの電波を各受信部201で受信する。各受信部201では、受信した電波のRSSI値をそれぞれ測定して受信状態情報入力部202に送る。受信状態情報入力部202では、測定された各RSSI値を組にして真値入力部22に送る。真値入力部22では、取得したRSSI値の組と、外部から入力される測定対象エリアの地図データ上の真値を対応付けて真値記憶部23に送る。真値記憶部23では、測定対象エリアの各位置において順次取得したRSSI値の組と真値を対応表にして格納する(図2のステップST21、ST22)。このとき作成された対応表は図11に例示したようなデータ構成となる。
【0014】
真値記憶部23は、上記対応表作成・格納の処理以外に、後述の測位処理以降の処理を図2に示す手順で行う。測位処理の際には、真値探索部24からの要求に応じて対応表のRSSI値の組と真値を渡す(ステップST24、ST25)。また、後述するように位置推測部25の推測処理により得られた推定位置とそのときに使用した取得RSSI値の組が得られるが、その中から選択された真値候補データなるものがパラメータ管理部26から送られて来るので、真値記憶部23では、その真値候補データを対応表に追加して更新する(ステップST21、ST22)。その場合、真値候補データとして送られてきた取得RSSI値の組と推定位置が、保持している対応表の情報と重複・矛盾が起きないかどうかを調べ、整合処理を行う(ステップST23)。なお、ここで言う重複とは、「同一のRSSI値の組に対して異なる位置が測位結果として送られてきたこと」である。また、矛盾とは、「同一の位置に対して異なるRSSI値の組が送られてきた」ことを意味するものとする。このような重複・矛盾が起きた場合には、通信環境の変化によりRSSI値が変動したことが想定される。それ故に、新しく送られてきた情報(RSSI値)の方が正しいと考えられる。そのため、重複・矛盾が起きた場合の処理として、対応表側の重複・矛盾の対象となるデータを位置推測部25から送られてきた真値候補データで上書きする。これにより、測位に用いるデータを、通信環境の変化に対応した値にすることができる。
【0015】
次に、移動可能な状態にある無線端末に対して行う測位処理の動作について説明する。
測位が開始されると、測定対象エリア内の任意の位置にある無線端末1の情報送信部12が発する電波が各受信部201で受信され、測定されたRSSI値が受信状態情報入力部202に送られる。受信状態情報入力部21では、識別情報を基準にした取得RSSI値の組を生成し、真値探索部24へ入力する。
【0016】
真値探索部24は図3に示す手順で処理を行う。すなわち、真値探索部24では、取得RSSI値の組を受け取ると、真値記憶部23の対応表からRSSI値の組と真値を読み出し(ステップST31)、取得RSSI値と読み出したRSSI値の組のマッチングを取る(ステップST32)。このマッチング手法としては、RSSI値の完全一致ないしは相関を取ることによって多少のRSSI値のぶれを許容して一致判定をとるものとする。マッチングの結果(ステップST33)、一致するRSSI値の組が対応表に存在した場合には、RSSI値の組に対応する真値を測位結果出力部28に出力し(ステップST34)、パラメータ生成部261にマッチングが取れたことを通知する(ステップST35)。一方、ステップST33において、一致するRSSI値の組が対応表に存在しなかった場合には、取得RSSI値を位置推測部25に送り、推測処理を行う。
【0017】
位置推測部25は、図4に示すように、領域計算部251、真値・パラメータ生成部252および最近点計算部253を有している。真値探索部24の処理において、対応表の中に一致するRSSI値の組が存在しなかった場合、位置推測部25では、取得RSSI値の組に基づいて無線端末1の位置を、図5に示す処理フローのようにして推定する。
まず、領域計算部251において、入力された取得RSSI値の組に基づいて、予め準備したRSSI値と距離の関係を表すテーブル(図9を参照)、またはRSSI値から距離を算出する計算式を用いて、無線端末1と各受信部201間の距離をそれぞれ計算する(ステップST41)。次に、各受信部201の設定位置を中心として、算出した距離を半径とした円と当該距離に幅を持たせた半径の同心円を描いてそれぞれの円周帯を求め、各円周帯のすべてが重複する部分を無線端末1が存在可能な領域として求める(ステップST42)。該当する領域を求めることができた場合(ステップST43)、その領域の重心を計算し、その重心を無線端末1の推定位置とする(ステップST44)。算出した推定位置は測位結果出力部28に送られ、また、この推定位置と上記計算に用いた取得RSSI値は真値・パラメータ生成部252に送られる(ステップST45)。
【0018】
次に、真値・パラメータ生成部252では、後述するパラメータ記憶部262で保持している真値候補データ(過去に推定処理したRSSI値の組と推定位置)を参照し、上記算出された推定位置と取得RSSI値の組とマッチするものが存在するかどうかを調べる(ステップST46)。存在した場合は、その該当する真値候補データを真値記憶部23に転送し、新たなRSSI値の組と位置の真値として対応表に更新登録する。一方、存在しない場合には、今回の推定位置と取得RSSI値の組をパラメータ生成部261に送る(ステップST48)。
【0019】
なお、ステップST43において、無線端末1の存在可能な領域が存在しなかった場合には、取得RSSI値の組は最近点計算部253に送られる。最近点計算部253では、その取得RSSI値の組に基づいて真値記憶部23が保持する対応表を参照し、RSSI値の組の中から取得RSSI値に最も近いものを探し出す。具体的には、真値探索部24で行ったマッチング方法(ステップST32、ST33)よりも条件を緩くしたもので、例えばRSSI値の差の平均値が最も小さいもの、あるいは相関が(真値探索部24で条件に合うほどのものではないにしても)最も大きいものを選択する。このマッチングの結果、取得RSSI値に近いRSSI値の組が存在した場合、そのRSSI値に対応した真値を推定位置として測位結果出力部28に出力する(ステップST49)。
【0020】
パラメータ管理部26において、パラメータ生成部261は、図6に示す処理フローに示すように、位置推測部25の推測処理で得た推測結果データを保持し、真値記憶部23の更新データとして有効な真値候補データの生成を行う。
上述したように、パラメータ生成部261には、位置推測部25の処理(図5のステップST46、ST48)で、パラメータ記憶部262で保持する真値候補データとマッチしなかった場合の取得RSSI値の組と推定位置が送られて来るが、これを推測結果データとして保持する(ステップST51)。一方、真値探索部24でマッチング(図3のステップST33、ST34)がとれたときには、その通知を受けて、保持していた推測結果データ(取得RSSI値の組と推定位置)の中から、今後の真値探索に使用するための真値候補データを選択する(ステップST52)。パラメータ生成部261では、選択した取得RSSI値の組と推定位置をパラメータ記憶部262へ転送する(ステップST53)。
【0021】
ここで、パラメータ生成部261がステップST52で行う真値候補データの選択の具体的方法について説明する。位置推測部25で推測処理が行われる場合、無線端末1が発する電波の到来間隔が短いことから、その処理は連続することが多い。そのため、位置推測部25から受け取って保持していたデータを時系列に並べ、隣接するRSSI値の変動状態を調べ、直前のものに対してRSSI値に所定以上の変化が見られる場合にのみ、その取得RSSI値の組と推定位置を残し、変化が少ないデータは破棄する。これにより、無線端末の移動に依存する変化を持つ取得RSSI値の組と推定位置を有効データ(真値候補データ)として選択できる。換言すれば、変動の小さいRSSI値は電波の揺らぎや無線端末がほぼ同位置あることに依存しているため、それに対応するデータは除去することができる。この手法の根拠は、RSSI値は理論的に距離の2乗に反比例するので、無線端末が移動している場合は、その間すべての取得RSSI値が変動すると考えられることにある。この処理により、真値候補データにする量を削減することにもなるので、対応表の更新で、類似する余分なデータが多量に登録されるのを防止することもできる。
【0022】
パラメータ記憶部262では、図7に示す処理フローに従って、パラメータ生成部261によって選択された取得RSSI値の組と推定位置が転送されてきた場合は、真値候補データとして保持する(ステップST61、ST62)。また、位置推測処理時の新規の推測結果とのマッチング(ステップST46)で使用する際には保持した真値候補データを位置推測部25に転送する(ステップST63、ST64)。
なお、パラメータ管理部26では、上記例では、パラメータ生成部261で真値候補データを選択しているが、対応表を充実化するための目的だけであれば、パラメータ生成部261を使用せず、推測結果データをそのまま真値候補データとするようにしてもよい。
【0023】
次に、位置推測部25による推測動作を、具体例を挙げて説明する。
図8および図12は、屋内の所定の矩形フロアを測定対象エリアとし、そのエリアに在る移動可能な無線端末(アクティブICタグ)T1を、測定対象エリアの異なる所定の位置にそれぞれ設置した複数の受信部(リーダ)R1 ,R2 ,R3 ,R4 を用いて測位する状況を示している。図9および図10は、位置推測25で使用するために予め準備された測位用パラメータの例を示すもので、図9は無線端末に対する受信部におけるRSSI値と両者間の距離の対応関係を、16段階で示したデータテーブルである。また、図10は、測定対象エリア、すなわち図8のx−y軸、原点で定義される座標系における各受信部の設置位置(座標値)を示すデータである。図11は真値記憶部23に格納されたRSSI値の組と真値の対応表の例を示しており、真値は図12における△印の位置の座標値に相当する。
【0024】
今、図12に示される位置に在る無線端末T1が発する電波の各受信部で取得した取得RSSI値の組を(R1 ,R2 ,R3 ,R4 )=(5,5,7,7)としたときの測位処理を考える。この場合、真値探索部24において、取得RSSI値の組と対応表のRSSI値の組とのマッチング処理(図3のステップST32)で、各受信部におけるRSSI値が完全一致するかどうかをチェックする手法を適用としたとする。この場合、真値記憶部23で保持する図11の対応表に一致するデータがないので、位置推測部25では、取得RSSI値の組に基づいて無線端末T1の位置を推測する。最初、図9のRSSI値と距離の関係テーブルを用いて無線端末T1の存在可能領域を求める。例えば、受信部R1 と無線端末T1との距離を計算し、受信部R1 の座標値を中心として、算出距離(6.31mm)を半径とした円と当該算出距離に幅を持たせた半径(3.98mm)の同心円を描いて、図13の斜線で示すような円周帯を求める。この円周帯は、受信部R1 から見た無線端末T1の存在可能領域となる。同様にして、他のリーダR2 ,R3 ,R4 のそれぞれから見た無線端末T1の存在可能領域を求め、全ての存在可能領域の共通部分(重複部分)を得ると、図14の斜線部で示すようになる。この共通部分が無線端末T1の実際の存在可能領域となる。次に、この領域の重心(1.5,4.5)を算出して無線端末T1の推定位置とする。なお、重心の計算方法としては、最終的に求めた存在可能領域を、円の交点を頂点とする多角形で近似することで、計算を簡素化してもよい。
【0025】
位置推測部25は、このようにして求めた推定位置と取得RSSI値の組をパラメータ生成部261に送り保持しておく。パラメータ生成部261では、その後の真値探索部24のマッチング処理が成功した時間を利用して、保持している推測結果データのうち、無線端末T1の移動に依存する取得RSSI値の変化を持つデータのみを選択してパラメータ記憶部262に真値候補データとして格納しておく。そして、以降に位置推測部25で推測を行った際に、真値候補データと同じ取得RSSI値の組と推定位置を再び求めたことを確認した場合には、パラメータ記憶部262で保持していた真値候補データの該当する推定位置とRSSI値の組を真値記憶部23に転送して対応表に追加登録を行う。したがって、その後の測位処理において、真値探索部24によるマッチング処理により、更新された対応表から真値を求めることが容易となり、通信環境に対応した測位が可能になり、また、位置推測部25による推測計算も削減できるようになるので測位処理時間も改善されるようになる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、事前処理として、測位対象エリアの複数の地点においた無線端末に対するRSSI値の組を収集してそれらの位置の真値を対応付けた対応表にしておき、その後の測位処理時において、真値探索部24により、順次受信する取得RSSI値の組に基づいてこの対応表を参照して対応する位置の真値を測位結果として出力し、真値探索部24で測位結果が得られなかった場合には、位置推測部25により取得RSSI値に対して、RSSI値と距離の関係および受信部20の設置位置を用いて無線端末の存在可能領域を算出し、その存在可能領域の重心を無線端末の推定位置として算出して測位結果とするようにしている。したがって、通信環境による受信状態の変化に対しても常時安定した測位を可能にする。
【0027】
また、この実施の形態1によれば、パラメータ生成部261により、位置推測部25による推定位置と取得RSSI値の中から無線端末の移動に依存するRSSI値の変化を持つデータのみを抽出して真値候補データとしてパラメータ記憶部262に保持しておき、位置推測部25の推測処理で再度同じデータが得られた場合には該当する推定位置と取得RSSI値を転送して対応表に加え更新するようにしている。したがって、この自動更新の処理を繰り返し行うことにより、真値探索部24による以降の測位処理において、同じ取得RSSI値の組に対しての測位結果を得ることが可能になり、位置推測部25よる場合よりも速い処理で行うことができるようになる。また、真値候補データは無線端末の移動に依存する変化を持つデータのみとしており、加えて位置推測部25の2度の推測処理で得られた同じ真値候補データのみを対応表の更新データとして用いているため、対応表を測位結果として信憑性の高いデータで構成でき、以降の位置推測部25の推測処理の精度を高めることができる。さらに、事前処理で作成した対応表のデータ量が少ない場合には、測位処理の実績を加えていくことで対応表のデータの充実化を図ることも可能となる。
【0028】
さらに、この実施の形態1によれば、位置推測部25の上記推測処理で無線端末の存在可能領域を求めることができなかった場合に、取得RSSI値の組に基づいて真値記憶部23の対応表を参照して、最も近いRSSI値の組を抽出し、そのデータに対応する位置の真値を推定位置として出力するようにしている。したがって、近似する測位結果を得ることができるため、測位測位装置として、1度の処理で測位結果が得られないということを無くし、無線端末の概略位置を確認することが可能となる。
【0029】
なお、この実施の形態1では、無線端末としてアクティブRFIDタグを想定した説明としていたが、この発明を、RSSI値あるいはその他の受信状態を求めることができる無線LAN、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などを適用した無線端末を用いたケースでも、同様な効果を奏し得ることが分かる。
また、図8に示すように、受信部(リーダ)の設置位置を測定対象エリアの周辺に配置した例を想定して説明してきたが、測定対象エリアの面積が広い場合には内部の位置に受信部を増設すればよく、エリアが回廊のように長手方向に延長される場合には順次周囲にも増設すればよい。なお、そのような場合、受信端末からの電波は近距離用のため届かなくなる場所ができ、全ての受信部で所定値以上のRSSI値を取得できなくなる可能性が生じる。そこで、測定対象エリアを複数のブロックに分け、各ブロックを受け持つ受信部の組(例えば4個ずつ)を予め決めておき、ブロック間を移動する無線端末からの電波のRSSI値が所定値以上となった、ブロックを担当する受信部の組に切り替え、その組のRSSI値を用いて測位を行うようにすればよい。この場合、真値記憶部の対応表のデータは、ブロックの担当受信部毎に予め生成する必要があるが、受信部の識別情報を用いて管理すればよい。この発明による測位装置は、このようにして広範囲の屋内における測位も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る真値記憶部の処理を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る真値探索部の処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る位置推測部の機能構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る位置推測部の処理を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るパラメータ生成部の処理を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係るパラメータ記憶部の処理を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る測位する状況を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るアクティブICタグとリーダにおけるRSSI値と距離の関係を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る測定対象エリアにおけるリーダの設置位置を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係るRSSI値の組と真値の対応表を例示する説明図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る測定対象エリア上の測位状況を例示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係る無線端末の存在可能領域の求め方を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態1に係る位置推測部で算出された無線端末の存在可能領域を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1(T1) 無線端末、11 情報受信部、12 情報送信部、2 測位装置、20 受信状態取得手段、201(201a〜201d,R1 〜R4 ) 受信部、202 受信状態情報入力部、21 受信状態情報入力部、22 真値入力部、23 真値記憶部、24 真値探索部、25 位置推測部、251 領域計算部、252 真値・パラメータ生成部、253 最近点計算部、26 パラメータ管理部、261 パラメータ生成部、262 パラメータ記憶部、28 測位結果出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定対象エリア内に在る移動可能な測位対象の無線端末から送信される当該端末の識別情報を含む電波を、当該測定対象エリアの所定の位置に設置された複数の受信部により受信し、各受信部における電波の受信状態をそれぞれ測定して識別情報単位の組にして得る受信状態取得手段と、
前記測定対象エリア内の所定の複数位置に同種無線端末を置いて前記各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、
任意の測位時に前記受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて前記対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、
前記真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および前記各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部と、
前記真値探索部で抽出された真値あるいは前記位置推測部で算出された推定位置を現在測位対象としている無線端末の測位結果として出力する測位結果出力部を備え、
前記位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を前記真値記憶部に送って前記対応表を更新するようにしたことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
位置推測部で算出された推定位置と取得受信状態の組を真値候補データとして保持するパラメータ管理部を備え、
前記位置推測部は、その後の推測処理で真値候補データと同じ値を算出した場合に、前記パラメータ管理部で保持していた該当する推定位置と取得受信状態の組を真値記憶部に転送して対応表を更新するようにしたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
パラメータ管理部は、
位置推測部で算出された推定位置と取得受信状態の組を保持しておき、これら保持データの中から無線端末の移動に依存する受信状態の変化を持つデータのみを選択するパラメータ生成部と、
前記パラメータ生成部で選択された推定位置と取得受信状態の組を真値候補データとして保持するパラメータ記憶部とを有し、
前記位置推測部は、その後の推測処理において前記パラメータ記憶部で保持する真値候補データと同じ値を算出した場合に、該当する推定位置と取得受信状態の組を真値記憶部に転送して対応表を更新するようにしたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
パラメータ生成部は、保持していた取得受信状態の組のデータを時系列に並べ、受信状態に直前のものに対して所定以上の変化が見られる場合にのみ、その取得受信状態の組と推定位置を真値候補データとして選択するようにしたことを特徴とする請求項3記載の測位装置。
【請求項5】
パラメータ生成部は、真値探索部で位置の真値を抽出した場合に無線端末の移動に依存した受信状態の変化を持つデータのみを選択する処理を行うようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の測位装置。
【請求項6】
位置推測部は、予め準備した受信状態と距離の関係テーブルまたは関係式を用いて、無線端末と各受信部間の距離を計算し、各受信部の設定位置を中心として、算出距離を半径とした円と当該算出距離に幅を持たせた半径の同心円を描いてそれぞれの円周帯を求め、各円周帯のすべてが重複する部分を前記無線端末が存在可能な領域として求め、当該領域の重心を前記無線端末の推定位置として算出するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項7】
位置推測部は、無線端末の存在可能な領域を算出できなかった場合に、取得受信状態の組に基づいて真値記憶部の対応表を参照し、最も近い受信状態の組に対応した真値を推定位置として算出することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項1】
所定の測定対象エリア内に在る移動可能な測位対象の無線端末から送信される当該端末の識別情報を含む電波を、当該測定対象エリアの所定の位置に設置された複数の受信部により受信し、各受信部における電波の受信状態をそれぞれ測定して識別情報単位の組にして得る受信状態取得手段と、
前記測定対象エリア内の所定の複数位置に同種無線端末を置いて前記各受信部で予め測定した受信状態の組と測定時の無線端末の位置の真値を対応付けた対応表を格納する真値記憶部と、
任意の測位時に前記受信状態取得手段から入力される同一識別情報の取得受信状態の組に基づいて前記対応表を参照し、一致する受信状態の組に対応する真値を抽出する真値探索部と、
前記真値探索部の測位処理で該当する真値が得られなかった場合に、取得受信状態の組に対して、予め準備した受信状態と距離の関係および前記各受信部の設定位置を用いて無線端末の存在可能な領域を算出し、当該領域の重心を推定位置として算出する位置推測部と、
前記真値探索部で抽出された真値あるいは前記位置推測部で算出された推定位置を現在測位対象としている無線端末の測位結果として出力する測位結果出力部を備え、
前記位置推測部で算出された推定位置とその算出に用いた取得受信状態の組を前記真値記憶部に送って前記対応表を更新するようにしたことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
位置推測部で算出された推定位置と取得受信状態の組を真値候補データとして保持するパラメータ管理部を備え、
前記位置推測部は、その後の推測処理で真値候補データと同じ値を算出した場合に、前記パラメータ管理部で保持していた該当する推定位置と取得受信状態の組を真値記憶部に転送して対応表を更新するようにしたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
パラメータ管理部は、
位置推測部で算出された推定位置と取得受信状態の組を保持しておき、これら保持データの中から無線端末の移動に依存する受信状態の変化を持つデータのみを選択するパラメータ生成部と、
前記パラメータ生成部で選択された推定位置と取得受信状態の組を真値候補データとして保持するパラメータ記憶部とを有し、
前記位置推測部は、その後の推測処理において前記パラメータ記憶部で保持する真値候補データと同じ値を算出した場合に、該当する推定位置と取得受信状態の組を真値記憶部に転送して対応表を更新するようにしたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
パラメータ生成部は、保持していた取得受信状態の組のデータを時系列に並べ、受信状態に直前のものに対して所定以上の変化が見られる場合にのみ、その取得受信状態の組と推定位置を真値候補データとして選択するようにしたことを特徴とする請求項3記載の測位装置。
【請求項5】
パラメータ生成部は、真値探索部で位置の真値を抽出した場合に無線端末の移動に依存した受信状態の変化を持つデータのみを選択する処理を行うようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の測位装置。
【請求項6】
位置推測部は、予め準備した受信状態と距離の関係テーブルまたは関係式を用いて、無線端末と各受信部間の距離を計算し、各受信部の設定位置を中心として、算出距離を半径とした円と当該算出距離に幅を持たせた半径の同心円を描いてそれぞれの円周帯を求め、各円周帯のすべてが重複する部分を前記無線端末が存在可能な領域として求め、当該領域の重心を前記無線端末の推定位置として算出するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項7】
位置推測部は、無線端末の存在可能な領域を算出できなかった場合に、取得受信状態の組に基づいて真値記憶部の対応表を参照し、最も近い受信状態の組に対応した真値を推定位置として算出することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−39603(P2008−39603A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214669(P2006−214669)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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