説明

測光装置

【課題】測定装置において、反射測定による測光に加え、少なくとも透過測定を含む他の測光を、迅速かつ高精度に行うことができるようにする。
【解決手段】基準光軸Oに沿ってピンホール15bから入射する光束を測光する分光器15を有し、被測定試料Wからの光束を集光して測光を行う分光測定装置1であって、保持台部6aと、チルトステージ6Aおよびシフトステージ6Bと、集光光学系13と、平行光束の測定光束を発生する光源ユニット11、3と、対物光学系17と、透過測定用偏向部5と、集光光学系13を透過してピンホール15bに向かう光束の光軸の基準光軸Oに対するずれを観察する観察部16と、を備え、測定光束に応じてチルトステージ6Aおよびシフトステージ6Bまたは透過測定用偏向部5のチルトステージおよびシフトステージにより光軸を調整する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測光装置に関する。例えば、基準光軸に沿って入射開口から入射する光束を測光する測光部を有し、被測定体からの光束を集光して入射開口に入射させて測光を行う測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子の測光装置として、例えば、顕微分光装置が知られている。例えば、波長毎にグレーティングを回転し単一波長を取り出す分光器であるモノクロメータは、このような顕微分光装置の一例であり、反射測定、透過測定のいずれにも用いられている。
近年、検査時間の短縮化が望まれているため、分光装置としてはグレーティングを回転することなく各波長のスペクトル分布をラインセンサ等により同時測光できる分光器であるポリクロメータが注目されており、顕微分光反射率測定にポリクロメータが用いられる場合がある。
例えば、特許文献1には、反射対物レンズ、集光レンズ、ハーフミラーからなる顕微光学系と、ハーフミラーおよび反射対物レンズを介して試料に光を照射する光源部と、試料で反射され顕微光学系によって集光された光の分光スペクトルを取得するための測光分光部とを備える顕微測光装置が記載されている。
この顕微測光装置は、顕微分光反射率測定を行うものであって、測光分光部は、凹面回折格子とCCDとを備えるポリクロメータになっている。
ただし、顕微分光反射率測定に加えて、光学素子の透過測定や反射率の角度依存性の測定等を、ポリクロメータで行えるようにした測光装置は知られていない。
例えば、特許文献2には、汎用分光光度計あるいは液体クロマトグラフ検出器として使用される分光光度計であるマルチチャンネル型分光光度計が記載されている。
このマルチチャンネル型分光光度計は、試料セル(被測定体)を透過した光束をスリット(入射開口)に入射し、凹面グレーティングによって分光し、分光されたスリットの像の光量をフォトダイオードアレイによって測定する測光装置であって、透過測定を行うポリクロメータである。
しかし、試料セルを透過した光束をスリットに直接入射する構成になっており、反射測定に対応しておらず顕微鏡も備えていないため、反射率の角度依存性の測定や顕微分光反射率測定は行えない構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2806747号公報
【特許文献2】特許第3572681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学素子は、反射率だけでなく透過率の測定が必要となることが多く、場合によっては角度依存性反射率の測定も必要になる。ところが、顕微分光反射率測定と、透過測定や反射率の角度依存性の測定を同一の装置で行うためには、透過測定、反射率の角度依存性の測定の際に、分光器のスリットにケラレてしまう可能性があり、高精度に測定できない。そのため、モノクロメータを用いた測光装置を用いる必要があり、測定に時間がかかってしまうという問題がある。
測定時間短縮のため、ポリクロメータを用いた分光器を用いて顕微分光反射率を測定すると、透過測定や反射率の角度依存性の測定は、他の測光装置に被測定体を移動して測定を行わなければならず、移動や測光装置の初期設定などの作業時間が取られる。このため、全体としては充分な時間短縮効果が得られないという問題がある。
また、同じ光学素子の測定のために複数の測光装置を用意しなければならず、設備コストが増大したり、測光装置の占有スペースが増大したりするという問題がある。
特許文献2に記載のポリクロメータの試料セルとスリットの間に顕微鏡を配置することも考えられるが、特許文献2に記載の測光装置に、顕微鏡のような倍率の高い集光光学系を配置しただけでは、試料セルからの透過光束や反射光束を分光器のスリットに入射させることができなくなり、入射できたとしてもケラレが生じて、測定精度が低下してしまうおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、反射測定による測光に加え、少なくとも透過測定を含む他の測光を、迅速かつ高精度に行うことができる測光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、基準光軸に沿って入射開口から入射する光束を測光する測光部を有し、被測定体からの光束を集光して前記入射開口に入射させて測光を行う測光装置であって、前記被測定体の有効領域よりも大径の開口部を有し、前記被測定体を保持する保持台と、該保持台の姿勢を調整する調整ステージと、前記入射開口に焦点面を合わせて前記基準光軸に同軸に配置された集光光学系と、平行光束である測定光束を発生する光源部と、前記基準光軸に対し進退可能に設けられ、前記基準光軸上に進出した際に、前記測定光束を前記被測定体に収束光束として照射するとともに前記被測定体での反射光束を集光して、前記集光光学系に入射させる対物光学系と、前記測定光束を前記被測定体に照射し、該被測定体からの透過光束を前記集光光学系に入射させる透過測定光学系と、前記被測定体からの前記透過光束の光軸を調整する透過測定光軸調整部と、前記集光光学系を透過して前記入射開口に向かう光束の光軸の前記基準光軸に対するずれを観察する観察部と、を備え、前記反射光束を測定する際は前記調整ステージにより前記保持台により前記反射光束の光軸を調整し、前記透過光束を測定する際は前記透過測定光軸調整部により前記透過光束の光軸を調整する構成とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の測光装置において、前記測定光束の入射角を変えて前記被測定体に照射し、該被測定体からの反射光束を前記集光光学系に入射させる角度可変反射測定光学系と、前記被測定体からの前記反射光束の光軸を調整する角度可変反射測定光軸調整部と、を備える構成とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の測光装置において、前記光源部は、前記対物光学系に前記測定光束を入射する第1の光源ユニットと、前記透過測定光学系または前記角度可変反射測定光学系に前記測定光束を入射する第2の光源ユニットと、を備え、該第2の光源ユニットと、前記透過測定光学系および前記角度可変反射測定光学系との間に、前記第2の光源ユニットから出射される前記測定光束の光路を切り換える光路切換部が設けられた構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測光装置において、前記測光部は、前記入射開口から入射する光束を回折する回折格子と、該回折格子による回折光を受光する複数の受光部を有する受光素子と、を備える構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測光装置によれば、集光光学系および対物光学系で構成される光学系と、集光光学系および透過測定光学系で構成される光学系とを備え、さらに調整ステージ、および透過測定光軸調整部を備えるため、反射測定による測光に加え、少なくとも透過測定を含む他の測光を、迅速かつ高精度に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る測光装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る測光装置の概略光路を示す模式的な光路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る測光装置に用いる被測定体の例を示す模式的な正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る測光装置に用いる光路切換部の模式的な平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る測光装置に用いる透過測定光学系および透過測定光軸調整部の構成を示す模式的な正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る測光装置に用いる角度可変反射測定光学系および角度可変反射測定光軸調整部の構成を示す模式的な正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る測光装置による透過測定の模式的な光路図である。
【図8】本発明の実施形態に係る測光装置による角度可変反射測定の模式的な光路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態の測光装置について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る測光装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の実施形態に係る測光装置の概略光路を示す模式的な光路図である。図3(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る測光装置に用いる被測定体の例を示す模式的な正面図である。図4は、本発明の実施形態に係る測光装置に用いる光路切換部の模式的な平面図である。図5は、本発明の実施形態に係る測光装置に用いる透過測定光学系および透過測定光軸調整部の構成を示す模式的な正面図である。図6は、本発明の実施形態に係る測光装置に用いる角度可変反射測定光学系および角度可変反射測定光軸調整部の構成を示す模式的な正面図である。
【0013】
本実施形態の分光測定装置1は、図1、2に示すように、被測定試料W(被測定体、図2参照)の顕微分光反射測定、透過光束の分光測定(以下、透過測定と称する)、分光反射の角度依存性の測定(以下、角度可変反射測定と称する)を行う測光装置である。いずれの測定も、分光強度、または分光相対強度(反射率または透過率)の測定が可能である。
分光測定装置1の概略構成は、図1に示すように、被測定体保持部6、顕微分光反射率測定部10、光源ユニット3(光源部、第2の光源ユニット)、光路切換部4、透過測定用偏向部5、および角度可変測定用偏向部7を備える。
【0014】
被測定体保持部6は、被測定試料Wを測定時に保持するもので、顕微分光反射測定、透過測定、および角度可変反射測定の各測定に共通に用いられる。
被測定体保持部6の概略構成は、被測定試料Wを後述する基準光軸O上で顕微分光反射率測定部10と透過測定用偏向部5との間に保持するために設けられた保持台部6a(保持台)と、保持台部6aを水平面に対して傾斜させるチルトステージ6Aと、チルトステージ6Aを水平面内の2軸方向に移動可能に支持するシフトステージ6Bとを備える。
本実施形態では、保持台部6aは、チルトステージ6Aの上部に設けられている。
また、保持台部6a、チルトステージ6A、およびシフトステージ6Bの中心部には、図2に示すように、透過測定の対象となる被測定試料Wの有効領域よりも大径の開口部6bが鉛直方向に貫通して設けられている。
シフトステージ6Bは、水平に載置された板状の基台2Aに設置された架台2D上に固定されている。これにより、被測定体保持部6は、基台2Aの上方の一定高さに支持されている。
また、架台2Dには、図1に示すように、被測定体保持部6の開口部6bと重なる範囲に、開口部6bよりも大径の開口部2aが貫通して設けられている。
【0015】
被測定試料Wは特に限定されないが、例えば、レンズ、光学フィルタ、反射ミラー、プリズム等の光学素子などを挙げることができる。
以下の説明では、被測定試料Wの具体例として、図3(a)、(b)、(c)に示すように、平凸レンズからなる凸レンズW、光学ガラス製の平行平板W、基準受面に対して45°だけ傾斜した反射面を有する断面が直角二等辺三角形状の傾斜ミラーWを用いて説明する場合がある。
【0016】
以下では、分光測定装置1における方向を示す場合に、分光測定装置1に固定したXYZ座標系のX軸、Y軸、Z軸を参照する場合がある。このXYZ座標系は、XY平面が水平面に一致し鉛直上向きがZ軸の正方向とされ、Y軸の負方向から正方向に向かう方向が正面図を見る方向になっている。すなわち、X軸の正方向は、図1において紙面左側から右側に向かう方向であり、Y軸の負方向は、同じく紙面手前側から奥側に向かう方向である。
【0017】
保持台部6aの構成は、被測定試料Wを測定中に保持台部6a上で動かないように保持するとともに、透過測定を行う際に開口部6bを通して被測定試料Wに下方から照射される測定光束を遮らないように、被測定試料Wの有効領域を開口部6bの内側に重ねて保持できる適宜の構成を採用することができる。
例えば、保持台部6aとして、面、角、突起などで形成された鉛直方向の受け部と、被測定試料Wを水平方向または鉛直下方に押圧する押え部とからなる構成を採用することができる。また、被測定試料Wの質量や形状によって、鉛直方向の受け部に載置するのみで安定して保持できる場合には、押え部を有しない構成としてもよい。
チルトステージ6Aの構成は、測定に必要となる傾斜角の角度範囲で傾動する適宜の傾動ステージを採用することができる。
シフトステージ6Bの構成は、例えば、ねじ送り機構を用いた2軸移動ステージを採用することができる。
【0018】
このような構成により、チルトステージ6Aは、保持台である保持台部6aの姿勢を調整する調整ステージを構成している。
【0019】
顕微分光反射率測定部10は、図2に示すように、光源ユニット11(光源部、第1の光源ユニット)、ハーフミラー12、対物光学系17、集光光学系13、第1ビームスプリッタ14、分光器15(測光部)、観察部16、および表示ユニット18を備える。
本実施形態では、光源ユニット11、ハーフミラー12、対物光学系17、集光光学系13、第1ビームスプリッタ14、分光器15、および観察部16は、筐体10aに固定され、表示ユニット18は、筐体10aの外部に配置され、ケーブル19によって分光器15および観察部16と電気的に接続されている。
【0020】
また、分光器15、第1ビームスプリッタ14、集光光学系13、およびハーフミラー12は、分光器15によって測光を行うための入射光軸で規定される分光測定装置1の基準光軸O上に、この順に配置されている。本実施形態では、基準光軸Oは、Z軸に平行となるように設定されている。
光源ユニット11はハーフミラー12の側方に配置されている。また、観察部16は、第1ビームスプリッタ14の側方に配置されている。
【0021】
対物光学系17は、図1に示すように、対物鏡筒9bに収容され、筐体10aの下面に設けられたレボルバ9に装着されている。
レボルバ9は、Z軸に平行な回転軸9aを中心に回転可能に設けられており、対物光学系17を回転移動することにより、対物光学系17のレンズ光軸が基準光軸O上に整列する進出位置と、対物光学系17が基準光軸Oに沿う光路上から退避する退避位置とを切り換えることができるようになっている。
また、レボルバ9は、回転軸9aに関して対物光学系17と軸対称となる位置に、Z軸に沿う貫通孔等からなる光透過部9cが形成されている。このため、レボルバ9を、回転して光透過部9cの中心を基準光軸Oに整列させると、対物光学系17は退避位置に移動する。このように、光透過部9cの中心を基準光軸Oに整列させると、基準光軸O上を進む光束が光量損失を起こすことなく透過できるようになっている。
以下では、特に断らない限り、図2に示すように、対物光学系17が進出位置に位置しているものとして説明する。
【0022】
筐体10aは、図1に示すように、基準光軸Oが保持台部6aの略中心を通るように、基台2A上で被測定体保持部6よりもX軸負方向側に立設された支持柱2Cの側部において、Z軸に沿う方向に移動可能に設けられた移動ステージ8を介して固定されている。これにより、筐体10aは、被測定体保持部6の上方で、Z軸に沿う方向に移動可能に支持されている。
【0023】
図2に示すように、光源ユニット11は、ハーフミラー12を介して、対物光学系17に白色の平行光束である測定光束Lを入射するもので、光源11Aと、コリメート光学系11Bとを備える。
光源11Aは、白色光を発生するもので、例えば、ハロゲンランプ、重水素ランプなどを採用することができる。
コリメート光学系11Bは、光源11Aで発生した光束を集光して平行光束とし、測定光束Lを形成するものである。本実施形態では、X軸に平行な軸線である光軸Oに沿って光源11AからX軸正方向側に向かって、集光レンズ11a、ピンホール板11b、およびコリメータレンズ11cがこの順に配置されている。
集光レンズ11aは、光源11Aで発生した光束を集光して、ピンホール板11bを照明するレンズである。
ピンホール板11bは、被測定試料Wの被測定面Sの一部をスポット状に照明するため、集光レンズ11aによって集光された光束の透過範囲を規制するピンホール11dを備える絞り部材である。
コリメータレンズ11cは、ピンホール11dから出射された発散光束を平行光束とするため、焦点位置がピンホール11dの中心に一致するように配置されたレンズまたはレンズ群である。
【0024】
ハーフミラー12は、対物光学系17および集光光学系13の間の光路上で、コリメータレンズ11cに対向する位置に配置され、コリメータレンズ11cを透過した測定光束Lの一部を対物光学系17側に反射して、基準光軸Oの軸上光束である測定光束Lとして、対物光学系17に入射させるとともに、Z軸負方向側から入射した光束の一部をZ軸正方向側に透過させるものである。
なお、ハーフミラー12の位置は、予め、光源ユニット11から出射される測定光束L11の光軸Oが、基準光軸Oに一致するように調整されている。例えば、分光測定装置1の製造時に光軸合わせされて位置が固定されている。ただし、経時的な位置の変化を修正することができるように、光軸調整機構を備えた構成としてもよい。
【0025】
対物光学系17は、進出位置に移動された際に、ハーフミラー12で反射された測定光束Lを、対物光学系17に対向して保持された被測定試料Wの被測定面Sに向けて集光して測定光束Lを形成するとともに、測定光束Lが被測定面Sで反射された光束である測定光束Lを集光して、平行光束である測定光束Lを形成するレンズまたはレンズ群である。このため、対物光学系17としては、無限遠設計のレンズまたはレンズ群を採用している。
【0026】
集光光学系13は、基準光軸Oの軸上光束として進む平行光束を、後述する分光器15の入射開口であるピンホール15b内に結像させるレンズまたはレンズ群であり、ピンホール15bに焦点面を合わせて基準光軸Oと同軸に配置されている。
【0027】
第1ビームスプリッタ14は、集光光学系13と分光器15の間の光路上に配置され、集光光学系13によって集光される測定光束Lの光路を、基準光軸Oに沿って透過する測定光束Lの光路と、基準光軸Oに交差する方向に進む測定光束Lの光路とに分岐する光路分岐部材である。
【0028】
分光器15は、ピンホール板15a、凹面グレーティング15c(回折格子)、およびラインセンサ15d(複数の受光部を有する受光素子)を備え、ピンホール板15aの中心部に設けられた入射開口であるピンホール15bから入射された光束を、凹面グレーティング15cによって回折することにより波長毎に分解して、ラインセンサ15d上の異なる位置に結像し、ラインセンサ15dの出力から、測定光束Lの分光強度を示す分光スペクトル信号を取得する測光部である。
分光器15は、ピンホール15bの中心を通る入射光軸が基準光軸Oと一致しており、分光器15のピンホール15bは集光光学系13の焦点位置に配置されている。
ラインセンサ15dとしては、分光強度を適宜の分解能で取得する複数の受光部を有する受光素子であれば、特に限定されない。例えば、フォトダイオードアレイなどの受光素子を採用することができる。
また、分光器15は、ケーブル19を介して表示ユニット18と電気的に接続され、分光スペクトル信号を表示ユニット18に送出できるようになっている。
【0029】
観察部16は、集光光学系13に入射する光束の光軸の基準光軸Oに対するずれを観察するためのものであり、第2ビームスプリッタ16a、第1撮像素子16b、コリメータレンズ16c、および第2撮像素子16dを備える。これにより、第1ビームスプリッタ14によって反射された測定光束Lを用いて、集光光学系13に入射する光束の光軸の、基準光軸Oに直交する方向の平行ずれ(以下、光軸シフトと称する)と、基準光軸O0に対する傾斜(チルト)(以下、光軸チルトと称する)とをそれぞれ観察できるようになっている。
【0030】
第2ビームスプリッタ16aは、測定光束Lの一部を透過して第1撮像素子16bに入射させ、測定光束Lの他を反射してコリメータレンズ16cに入射させる光路分岐部材である。以下、第2ビームスプリッタ16aを透過した測定光束Lを、単に、「測定光束Lの透過光束」、同じく第2ビームスプリッタ16aで反射された測定光束Lを、単に、「測定光束Lの反射光束」と称する。
【0031】
第1撮像素子16bは、光電変換を行う2次元撮像素子からなり、測定光束Lの透過光束の光路上で、集光光学系13の後側焦点面と等価となる位置に撮像面が配置されている。第1撮像素子16bとしては、例えば、CCDやCMOS撮像デバイスなどを採用することができる。
このため、第1撮像素子16bによれば、ピンホール板15a上の光像と等価な光像を観察することができる。
なお、第1ビームスプリッタ14によって反射される基準光軸Oと第1撮像素子16bの撮像面との交点に位置する画素は、第1撮像素子16bの撮像面上で基準光軸Oと等価な位置であり、第1撮像素子16bの取付時に、予め求められている。以下では、この位置を第1撮像素子16b上の基準位置と称する。
第1撮像素子16bは、ケーブル19を介して表示ユニット18と電気的に接続され、撮像した画像信号を表示ユニット18に送出できるようになっている。
【0032】
コリメータレンズ16cと、光電変換を行う2次元撮像素子からなる第2撮像素子16dとは、測定光束Lの反射光束の光路上で第2ビームスプリッタ16a側からこの順に配置されている。第2撮像素子16dは、第1撮像素子16bと同様の構成を採用することができる。
コリメータレンズ16cは、その前側焦点面が、測定光束Lの反射光束の光路上で集光光学系13の焦点面と等価となる位置に配置されている。このため、測定光束Lの反射光束は、集光光学系13の後側焦点面の等価面で集光されてから発散してコリメータレンズ16cに入射し、コリメータレンズ16cよって平行光束化された状態で、第2撮像素子16dに向けて投影される。例えば、対物光学系17が進出位置にある場合には、第2撮像素子16dは、対物光学系17の瞳像が投影されることになる。
なお、第1ビームスプリッタ14および第2ビームスプリッタ16aによって反射される基準光軸Oと第2撮像素子16dの撮像面との交点に位置する画素は、第2撮像素子16dの撮像面上で基準光軸Oと等価な位置であり、第2撮像素子16dの取付時に、予め求められている。以下では、この位置を第2撮像素子16d上の基準位置と称する。
第2撮像素子16dは、ケーブル19を介して表示ユニット18と電気的に接続され、撮像した画像信号を表示ユニット18に送出できるようになっている。
【0033】
表示ユニット18は、ケーブル19を介して分光器15、第1撮像素子16b、および第2撮像素子16dから送出される分光スペクトル信号、および各画像信号に適宜の演算処理を施して、画像、グラフ、文字などからなる表示情報に変換し、これらの表示情報を表示するものである。
表示ユニット18の構成は、表示する情報の種類を選択する等の操作を行う操作部18aと、分光器15、第1撮像素子16b、および第2撮像素子16dとケーブル19により電気的に接続され、受信した信号に演算処理を施して表示情報を生成する処理部18bと、処理部18bが生成した表示情報を表示画面に表示する表示部18cとを備える。
【0034】
光源ユニット3は、透過測定と、角度可変測定と行うための平行光束である測定光束L11を発生するもので、光源3Aと、コリメート光学系3Bとを備え、被測定体保持部6に対して、Z軸負方向側かつX軸負方向側の位置に配置されている。
光源3Aは、白色光を発生するもので、光源11Aと同様な構成を採用することができる。
コリメート光学系3Bは、光源3Aで発生した光束を集光して平行光束とし、測定光束L11を形成するものである。本実施形態では、X軸に平行な軸線である光軸Oに沿って光源3AからX軸正方向に向かって、集光レンズ3a、ピンホール板3b、およびコリメータレンズ3cがこの順に配置されている。
集光レンズ3aは、光源3Aで発生した光束を集光して、ピンホール板3bを照明するレンズである。
ピンホール板3bは、近似的な点光源を構成するため、集光レンズ3aによって集光された光束の透過範囲を規制するピンホール3dを備える絞り部材である。
コリメータレンズ3cは、ピンホール3dから出射された発散光束を平行光束とするため、焦点位置がピンホール3dの中心に一致するように配置されたレンズまたはレンズ群である。
【0035】
光路切換部4は、光源ユニット3から出射された測定光束L11の光路を、直進する光路と、光軸Oに交差する方向に進む光路とに選択的に切り換えるものである。本実施形態では、図1に示すように、光路切換部4はミラー4Aおよびミラー移動ステージ4Bを備える。
【0036】
ミラー4Aは、測定光束L11の光軸Oを反射してZ軸正方向に進む測定光束L21を形成する部材であり、本実施形態では、取付基準面に対して45°傾斜した偏向面Rを有する三角ミラーを採用し、光軸OをZ軸正方向に向かう光軸Oに反射するようにしている。
【0037】
ミラー移動ステージ4Bは、ミラー4Aの取付基準面が水平となる状態で、ミラー4AをY軸に沿う方向に移動可能に保持するものである。
本実施形態では、図4(a)、(b)に示すように、基台2A上に固定するベース4aと、ベース4a上でY軸方向に延ばして配置されたスライドガイド4bと、スライドガイド4bに沿って移動し上面にミラー4Aを保持するスライダ4cと、スライダ4cの移動位置を規制する一対のストッパ4d、4eと、スライダ4cを移動させるためスライダ4cのY軸負方向側の側面に固定された操作レバー4fとを備える。
ストッパ4dは、Y軸負方向側に配置され、図4(a)に示すように、ミラー4Aが測定光束L11の光路から完全に退避した位置でスライダ4cの側面を係止してスライダ4cの移動を規制する部材である。
ストッパ4eは、Y軸正方向側に配置され、図4(b)に示すように、ミラー4Aのミラー有効領域が測定光束L11の光路上に進出した位置でスライダ4cの側面を係止してスライダ4cの移動を規制する部材である。
【0038】
このような構成により、操作レバー4fをY軸負方向に移動してスライダ4cをストッパ4eに当接させると、測定光束L11が直進する状態となる。また、操作レバー4fをY軸負方向に移動してスライダ4cをストッパ4dに当接させると、図2に示すように、光軸O上を進む測定光束L11が偏向面Rに入射し、偏向面Rによって偏向され、光軸O上を進む測定光束L21が形成される。
【0039】
透過測定用偏向部5は、図1、5に示すように、光路切換部4によってミラー4Aが測定光束L11の光路上から退避した際に、測定光束L11をZ軸正方向側に偏向して被測定体保持部6の下方側から基準光軸O上に入射させ、被測定体保持部6上の被測定試料Wに透過させるためのものである。
本実施形態では、透過測定用偏向部5は、ミラー5A、チルトステージ5B、およびシフトステージ5Cを備える。
【0040】
ミラー5Aは、測定光束L11の光軸Oを反射してZ軸正方向に進む測定光束L12を形成する部材であり、本実施形態では、取付基準面に対して45°傾斜した偏向面Rを有する三角ミラーを採用している。
【0041】
チルトステージ5Bは、ミラー5Aを保持した状態で、ミラー5Aの偏向面Rの光軸Oに対する傾斜角を可変し、測定光束L12の光軸Oの基準光軸Oに対するチルト量を調整するものである。
チルトステージ5Bの構成は、光軸Oのチルト量の調整に必要となる角度範囲で傾動する適宜の傾動ステージを採用することができる。
シフトステージ5Cは、チルトステージ5BをX軸に沿う方向に移動可能に支持し、これにより光軸Oの基準光軸Oに対するX軸に沿う方向のシフト量を調整するものである。
シフトステージ5Cの構成は、例えば、ねじ送り機構を用いた1軸移動ステージを採用することができる。
【0042】
このような構成により、透過測定用偏向部5は、測定光束L12の光軸Oを基準光軸Oに一致させて被測定試料Wに照射し、被測定試料Wからの透過光束を集光光学系13に入射させる透過測定光学系を構成している。
また、チルトステージ5Bおよびシフトステージ5Cは、透過測定光学系において測定光束L12の光軸Oを調整する透過測定光軸調整部を構成している。
【0043】
角度可変測定用偏向部7は、図1、5に示すように、光路切換部4によってミラー4Aが測定光束L11の光路上に進出した際に形成される測定光束L21を偏向して、被測定体保持部6上の被測定試料Wの被測定面Sに対する入射角を可変し、被測定試料Wからの反射光束である測定光束L23(図3参照)を集光光学系13に入射させるためのものである。
角度可変測定用偏向部7は、本実施形態では、ミラー7A、チルトステージ7B、およびシフトステージ7Cを備える。少なくともミラー7Aが被測定体保持部6よりもZ軸正方向側となる位置で、支持壁体2Bに固定されている。
【0044】
ミラー7Aは、測定光束L21の光軸Oを反射して、基準光軸Oに対して斜めに傾斜する光軸O上を進む測定光束L22を形成する部材であり、本実施形態では、取付基準面に対して45°傾斜した偏向面Rを有する三角ミラーを採用している。
図6に示すように、光軸Oに対して光軸Oのなす角2・φは(φは、偏向面Rに対する測定光束L21の入射角および出射角)、被測定試料Wに対する角度可変反射測定に必要な被測定面Sに対する入射角θ(図3(b)参照)によって異なる。本実施形態では、光軸Oと基準光軸Oとは平行であるため、φ=θとすればよい。
例えば、被測定試料Wの一例として傾斜ミラーWを用いて測定を行い、被測定面S3に対する入射角をθ=45(°)とする場合には、2・φ=90(°)とすればよい。
【0045】
チルトステージ7Bは、図7に示すように、ミラー7Aの基準取付面がZY平面に略平行となるように保持した状態から、ミラー7Aの偏向面Rの光軸Oに対する傾斜角を変えて、測定光束L22の被測定体保持部6上の被測定面Sに対する入射角θを変更するとともに、被測定面Sで反射された測定光束L23の光軸の基準光軸Oに対するチルト量を微調整するものである。
チルトステージ7Bの構成は、角度可変反射測定において変更する被測定面Sに対する入射角の範囲で傾動する適宜の傾動ステージを採用することができる。また、チルトステージ7Bは、粗動傾動機構と微動傾動機構とを備える傾動ステージであればより好ましい。この場合、測定光束L23の光軸のチルト量の微調整がより容易となる。
シフトステージ7Cは、チルトステージ7BをZ軸に沿う方向に移動可能に支持し、これにより測定光束L21に対する偏向位置を変化させ、測定光束L22の被測定面Sに対する照射位置を調整するものである。
シフトステージ7Cの構成は、例えば、ねじ送り機構を用いた1軸移動ステージを採用することができる。
【0046】
このような構成により、角度可変測定用偏向部7は、測定光束L22の被測定面Sに対する入射角を変えて測定光束L22を被測定試料Wに照射し、被測定試料Wからの反射光束を集光光学系13に入射させる角度可変反射測定光学系を構成している。
また、チルトステージ7Bおよびシフトステージ7Cは、角度可変反射測定光学系において被測定面Sからの反射光束である測定光束L23の光軸を調整する角度可変反射測定光軸調整部を構成している。
【0047】
次に、本実施形態の分光測定装置1の動作について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る測光装置による透過測定の模式的な光路図である。図8は、本発明の実施形態に係る測光装置による角度可変反射測定の模式的な光路図である。
【0048】
まず、分光測定装置1で、顕微分光反射率測定を行うには、図2に示すように、光源ユニット3からの測定光束L11の出射を停止し、顕微分光反射率測定部10と被測定体保持部6とを用いて、以下のようにして測定を行う。なお、以下では、一例として、被測定試料Wが凸レンズWであり、被測定面Sが凸レンズWの凸面である被測定面Sの場合の例で説明する。
【0049】
まず、図2に示すように、被測定体保持部6の保持台部6aに被測定面Sが上方に向いた状態で凸レンズWを保持させる。
また、レボルバ9(図1参照)を回転して、対物光学系17を基準光軸Oと同軸となる位置に進出させる。また、移動ステージ8を駆動して顕微分光反射率測定部10をZ軸方向に移動して、対物光学系17の焦点位置が被測定面S上の測定箇所に合うように、顕微分光反射率測定部10を位置調整する。
【0050】
次に、光源ユニット11の光源11Aを点灯する。これにより、ピンホール板11bのピンホール11dを透過して発散する光束がコリメータレンズ11cで平行光束化されて光軸Oの軸上光束である測定光束L11が発生する。
測定光束L11は、ハーフミラー12に到達すると一部がZ軸負方向側に反射されて基準光軸O上を進む測定光束Lが形成される。測定光束Lは、対物光学系17に入射すると対物光学系17の焦点面に集光され、凸レンズWの被測定面Sにピンホール11dの像が投影される。
【0051】
被測定面Sからの反射光束である測定光束Lは、対物光学系17の開口角の範囲に入射した部分が、対物光学系17によって集光されて測定光束Lとしてハーフミラー12に入射し、その一部が透過して直進して、集光光学系13に到達する。
測定光束Lは、集光光学系13を透過すると、集光光学系13の焦点面に向かって集光する収束光束である測定光束Lとして出射され、第1ビームスプリッタ14に到達する。
【0052】
第1ビームスプリッタ14では、測定光束Lの光路が、第1ビームスプリッタ14を透過する測定光束Lと、第1ビームスプリッタ14で反射される測定光束Lとに分岐される。
測定光束Lは、顕微分光反射率測定部10のZ軸に沿う方向の位置を調整することにより、測定光束Lが照射される被測定面Sと分光器15のピンホール15bとを共役の位置関係にしているため、集光されてピンホール15bの中心に入射する。
ピンホール15bに入射した光束は、凹面グレーティング15cによって回折され、ラインセンサ15dのセンサ面上の波長に対応した位置に結像される。これにより、ラインセンサ15d上の各受光部により、波長毎に強度が測定され、分光スペクトル信号が生成される。
分光スペクトル信号は、ケーブル19を介して処理部18bに送出される。
【0053】
表示ユニット18では、操作部18aからの操作入力に応じて、分光スペクトル信号に基づく表示情報が選択された場合には、例えば、分光強度のグラフ等の表示情報が表示部18cに表示される。
このようにして、顕微分光による分光スペクトルが得られる。また、予め相対反射率を測定するための基準サンプルにて同様の顕微分光測定を行って、基準分光スペクトルとして処理部18bに記憶し、処理部18bによって、凸レンズW1に対して測定された分光スペクトルを基準分光スペクトルで割る演算を行うことにより、凸レンズWの相対分光反射率を測定することができる。この測定結果は、操作部18aからの操作入力に応じて、表示部18cに表示させることができる。
このようにして、分光測定装置1を用いて顕微分光反射率測定を行うことができる。
【0054】
一方、測定光束Lは、観察部16に入射し、第2ビームスプリッタ16aによって、透過光束の光路と反射光束の光路とに光路が分岐され、それぞれの光路上で、集光光学系13の焦点面に対する等価焦点面に集光される。
【0055】
測定光束Lの透過光束の光路上では、測定光束Lの透過光束が第1撮像素子16bの像面に集光される。第1撮像素子16bの撮像面と対物光学系17の焦点面とは共役の位置関係にあるため、第1撮像素子16bは、凸レンズWの被測定面S上に投影された光像が撮像される。
第1撮像素子16bの画像信号は、ケーブル19を介して処理部18bに送出され、操作部18aからの操作入力に応じて、画像信号に対応した画像が表示部18cに表示される。
例えば、被測定試料Wの被測定面Sが基準光軸Oに対して傾斜している場合や、光源ユニット11やハーフミラー12の調整時の誤差等によって、測定光束L、L、Lの光軸が基準光軸Oに対して傾斜し、光軸チルトが発生している場合には、測定光束Lの集光位置がピンホール15bから外れる。このとき、第1撮像素子16b上でも、光軸チルトに対応して第1撮像素子16bの基準位置からの光像の位置ずれが起こるため、第1撮像素子16bによって撮像した画像を観察することで、光軸チルトの有無を観察することができる。したがって、光源ユニット11やハーフミラー12の位置が原因であれば、調整し直す等の処置が可能である。
【0056】
測定光束Lの反射光束の光路上では、測定光束Lの反射光束が集光光学系13の透過焦点面に集光された後、コリメータレンズ16cで集光されて平行光束となった状態で、第2撮像素子16dの撮像面に投影される。したがって、第2撮像素子16dの撮像面には、対物光学系17の瞳像が投影される。
このため、例えば、測定光束L、L、Lの光軸に光軸チルトが発生している場合には、第2撮像素子16dの基準位置からの光像の位置ずれ量が、第1撮像素子16b上での位置ずれ量よりも大きくなるため、第2撮像素子16dで撮像した画像を観察することで、光像の位置ずれをより高感度に観察することができる。
また、万一、対物光学系17の光軸が基準光軸Oに対して光軸シフトを起こしている場合には、第1撮像素子16bでは、光像の位置ずれを観察することができないが、第2撮像素子16dで撮像した画像によれば、光軸シフトに対応した光像の位置ずれを観察することができる。
このような集光光学系13に入射する光束の光軸シフトは、後述する透過測定および角度可変反射測定では頻繁に起こる可能性がある。
このように、第2撮像素子16dでは、光軸チルトと光軸シフトとによる光像の位置ずれが合成された状態で観察されるため、まず、第1撮像素子16bで観察される光軸チルトを解消した後に、第2撮像素子16dの観察を行えば、光軸シフトによる光像の位置ずれを観察することができる。
【0057】
次に、分光測定装置1によって、透過測定を行う場合の動作について説明する。
例えば、図7に示すように、平行平板Wのような被測定試料Wでは、上面側の表面である被測定面Sにおける顕微分光反射率測定のみならず、平行平板Wの透過測定を行うことが必要になる場合が多い。
【0058】
分光測定装置1によって、透過測定を行うには、図7に示すように、光源ユニット11を消灯し、レボルバ9を回転して対物光学系17を基準光軸O上の光路から退避させ、光透過部9cの中心を基準光軸O上に位置させる。
次に、光源ユニット3を点灯して、光源ユニット3から測定光束L11を出射させる。
そして、図4(a)に示すように、光路切換部4の操作レバー4fをY軸負方向に移動してストッパ4dにスライダ4cを係止し、ミラー4Aを測定光束L11の光路から退避させる。
このため、図7に示すように、測定光束L11は、直進して、ミラー5Aの偏向面Rに到達して偏向され、光軸Oに沿ってZ軸正方向に進む測定光束L12が形成される。
【0059】
測定光束L12は、被測定体保持部6の開口部6bの内部を通過して平行平板Wを透過し、上記顕微分光反射率測定における測定光束Lと同様にして、ハーフミラー12、集光光学系13に順次入射して、集光光学系13により収束光束である測定光束L13として、第1ビームスプリッタ14に入射する。
このため、上記顕微分光反射率測定の測定光束L、Lに対応して、測定光束L14、L15に分岐される。
ここで、光軸Oが、基準光軸Oに一致している場合には、測定光束L14が、ピンホール15bに入射し、上記顕微分光反射率測定の測定光束Lと同様にして、分光スペクトルを測定することができ、必要に応じて相対分光透過率を測定、表示することができる。
【0060】
ところが、光源ユニット3および透過測定用偏向部5は、顕微分光反射率測定部10とは別体になっているため、例えば顕微分光反射率測定部10の移動に際して、移動ステージ8の走り誤差などによって、光源ユニット3および透過測定用偏向部5に対する基準光軸Oの位置や姿勢が変化する場合がある。
そこで、本実施形態の透過測定では、操作部18aによって、表示部18cに第1撮像素子16b、および第2撮像素子16dで撮像した画像を表示させ、測定光束L14の光軸の光軸チルトおよび光軸シフトを観察する。そして、表示部18cの表示を見ながら、チルトステージ5Bおよびシフトステージ5Cを駆動して、光軸チルトおよび光軸シフトを解消し、光軸Oを基準光軸Oに一致させる。
例えば、第1撮像素子16bの画像における光像が、第1撮像素子16bの基準位置に移動するように、チルトステージ5Bを調整して、光軸チルトを解消する。
次に、第2撮像素子16dの画像における光像が、第2撮像素子16dの基準位置に移動するように、シフトステージ5Cを調整して、光軸シフトを解消する。
この位置調整によって、第1撮像素子16b上の光像が基準位置からずれた場合には、同様の調整をさらに繰り返して、いずれの光像も基準位置に移動するまで調整を続ける。
【0061】
このような光軸調整が終了したら、分光器15による測定を開始する。
上記の光軸調整により、光軸Oは基準光軸O上に整列しているため、測定光束L14は、ピンホール15bによってけられることなく分光器15内に入射する。このため、測定光束L14の分光スペクトルを高精度に測定することができる。
また、光軸シフトが解消されているため、基準光軸O上で平行平板Wを透過した測定光束による測定が行われており、測定位置のずれによる測定誤差が抑制される。
【0062】
このようにして、透過測定による分光スペクトルが得られる。したがって、予め相対透過率を測定するために、被測定試料W等のサンプルを設置しない状態で同様の透過測定を行いその値を100%の透過率とし、基準分光スペクトルとする。その値を処理部18bに記憶し、処理部18bによって、平行平板Wに対して測定された分光スペクトルを基準分光スペクトルで割る演算を行うことにより、平行平板Wの相対分光透過率を測定することができる。この測定結果は、操作部18aからの操作入力に応じて、表示部18cに表示させることができる。
以上で、透過測定が終了する。
【0063】
次に、分光測定装置1によって、角度可変反射測定を行う場合の動作について説明する。
例えば、図8に示すように、傾斜ミラーWのような被測定試料Wでは、使用時の光線入射角は、0°ではないため、反射率の角度依存性を測定するために角度可変反射測定を行うことが必要になる場合が多い。
【0064】
分光測定装置1によって、角度可変反射測定を行うには、図8に示すように、光源ユニット11を消灯し、レボルバ9を回転して対物光学系17を基準光軸O上の光路から退避させ、光透過部9cの中心を基準光軸O上に位置させる。
また、保持台部6a上に、傾斜ミラーWを保持し、チルトステージ6A、シフトステージ6Bを調整して、被測定面Sの被測定位置が基準光軸Oを通り、基準光軸Oと角度θをなして交差するように調整する。
次に、光源ユニット3を点灯して、光源ユニット3から測定光束L11を出射させる。
そして、図4(b)に示すように、光路切換部4の操作レバー4fをY軸正方向に押し移動してストッパ4eにスライダ4cを係止し、ミラー4Aを測定光束L11の光路上に進出させる。
このため、図8に示すように、測定光束L11は、ミラー4Aの偏向面Rに到達して偏向され、光軸Oに沿ってZ軸正方向に進む測定光束L21が形成される。
【0065】
測定光束L21は、角度可変測定用偏向部7のミラー7Aに到達し、偏向面Rによって、光軸Oに対して角度2・φ=2・θをなす方向に偏向され、傾斜ミラーWに入射角θで入射する。
測定光束L21は、傾斜ミラーWの被測定面Sにおいて、出射角θで反射されて測定光束L22として、光軸Oに沿って進む。
【0066】
測定光束L22は、被測定体保持部6の開口部6bの内部を通過して平行平板Wを透過し、上記顕微分光反射率測定における測定光束Lと同様にして、ハーフミラー12、集光光学系13に順次入射して、集光光学系13により収束光束である測定光束L23として、第1ビームスプリッタ14に入射する。
このため、上記顕微分光反射率測定の測定光束L、Lに対応して、測定光束L24、L25に分岐される。
ここで、光軸Oが、基準光軸Oに一致している場合には、測定光束L14が、ピンホール15bに入射し、上記顕微分光反射率測定の測定光束Lと同様にして、分光スペクトルを測定することができ、必要に応じて相対分光反射率を測定、表示することができる。
【0067】
ところが、光源ユニット3、光路切換部4、角度可変測定用偏向部7は、顕微分光反射率測定部10とは別体になっているため、例えば顕微分光反射率測定部10の移動に際して、移動ステージ8の走り誤差などによって、光源ユニット3および透過測定用偏向部5に対する基準光軸Oの位置や姿勢が変化する場合がある。また、光路切換部4の切換に際して、ミラー4Aの位置や姿勢がばらつく場合がある。
また、角度可変測定用偏向部7におけるミラー7Aの位置や傾斜角の設定誤差があると、測定光束L22の被測定面Sに対する入射角や、入射位置がずれてしまい、所望の入射角、入射位置での測定が行えないおそれがある。
【0068】
そこで、本実施形態の角度可変反射測定では、上記透過測定と同様にして、測定光束L24の光軸チルトおよび光軸シフトを観察する。そして、チルトステージ5Bおよびシフトステージ5Cを駆動して、光軸チルトおよび光軸シフトを解消し、光軸Oを基準光軸Oに一致させる。
【0069】
このような光軸調整が終了したら、分光器15による測定を開始する。
上記の光軸調整により、光軸Oは基準光軸O上に整列しているため、測定光束L24は、ピンホール15bによってけられることなく分光器15内に入射する。このため、測定光束L24の分光スペクトルを高精度に測定することができる。
また、光軸シフトが解消されているため、被測定面S上での測定位置のずれによる測定誤差が抑制される。
【0070】
このようにして、被測定面S3に入射角θで入射した反射測定による分光スペクトルが得られる。したがって、予め相対反射率を測定するための基準サンプルにて同様の反射測定を行って、基準分光スペクトルとして処理部18bに記憶し、処理部18bによって、傾斜ミラーWに対して測定された分光スペクトルを基準分光スペクトルで割る演算を行うことにより、傾斜ミラーWの相対分光反射率を測定することができる。この測定結果は、操作部18aからの操作入力に応じて、表示部18cに表示させることができる。
他の入射角θでも測定を行う場合には、チルトステージ6Aにより傾斜ミラーW3の被測定面S3の傾斜角を変化させ、チルトステージ7Bおよびシフトステージ7Cによって、ミラー7Aの位置および姿勢を再設定して、上記と同様な測定を行う。
以上で、角度可変反射測定が終了する。
【0071】
以上に説明したように、分光測定装置1は、基準光軸Oに沿ってピンホール15bから入射する光束を測光する測光部である分光器15を有し、被測定試料Wからの光束を集光光学系13によって集光してピンホール15bに入射させて測光を行う測光装置である。
そして、分光測定装置1では、被測定体保持部6に被測定試料Wを保持させた状態で、顕微分光反射率測定、透過測定、および角度可変反射測定を行うことができる。
その際、観察部16、表示ユニット18を備えることにより、分光器15に入射する測定光束の基準光軸Oに対する光軸チルトおよび光軸シフトを観察し、表示することができる。
さらに、被測定体保持部6には被測定試料Wの位置姿勢の調整機構としてチルトステージ6Aおよびシフトステージ6Bが、透過測定用偏向部5にはミラー5Aの位置姿勢の調整機構としてチルトステージ5Bおよびシフトステージ5Cが、角度可変測定用偏向部7にはミラー7Aの位置姿勢の調整機構としてチルトステージ7Bおよびシフトステージ7Cが、それぞれ備えられているため、各測定において観察部16での観察結果に基づいて光軸チルトや光軸シフトを解消する光軸調整を行うことができる。
したがって、光軸チルトや光軸シフトによって、分光器15への入射光束がけられることなく各測定を行うことができるため、高精度の測定を行うことができる。
本発明は、入射開口が小さいため、光軸チルトや光軸シフトによって入射光束のけられが発生しやすい場合に特に好適である。
【0072】
また、本実施形態の分光測定装置1によれば、各測定における被測定試料Wは、いずれも被測定体保持部6に保持するため、1つの被測定試料Wに対して複数種類の測定を行う場合に、被測定試料Wを取り外して移動することなく、他の測定に移ることができるため、複数種類の測定を続けて行う場合に、測定効率を向上することができる。
【0073】
また、本実施形態の分光測定装置1によれば、光路切換部4を備えることにより、光源ユニット3を透過測定と、角度可変反射測定とに共通利用することができる。このため、各測定において、別々の光源ユニットを用いる場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0074】
なお、上記の説明では、光源ユニット3を透過測定と、角度可変反射測定とに共通利用する場合の例で説明したが、透過測定と角度可変反射測定とで、別々の光源ユニットを用いてもよい。この場合、光路切換部4は削除することができ、光路切換部4の切換に際する光軸チルトや光軸シフトが発生しにくくなる。
【0075】
また、上記の説明では、透過測定光軸調整部、角度可変反射測定光軸調整部は、それぞれ透過測定光学系、角度可変反射測定光学系の位置や姿勢を変更して光軸調整を行う場合の例で説明したが、透過測定光学系、角度可変反射測定光学系に入射する測定光束を発生する光源部の位置や姿勢を変更する機構を採用してもよい。
【0076】
また、上記の説明では、透過測定および角度可変反射測定では、平行光束を被測定体に入射する場合の例で説明したが、透過測定光学系および角度可変反射測定光学系は、適宜集光レンズを備えることにより、被測定体上に収束光束を入射して透過測定、反射測定を行う構成としてもよい。
【0077】
また、上記の説明では、測光部の入射開口がピンホールで構成される場合の例で説明したが、入射開口は、ピンホールには限定されず、例えばスリットなどでもよい。
【0078】
また、上記の説明では、角度可変反射測定光学系および角度可変反射測定光軸調整部を備えることにより、透過測定とともに角度可変反射測定も行えるようにした例で説明したが、角度可変反射測定は要しない光学素子を測定することが多い場合には、角度可変反射測定光学系、角度可変反射測定光軸調整部、および光路切換部を削除した構成としてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 分光測定装置(測光部)
3 光源ユニット(光源部、第2の光源ユニット)
4 光路切換部
4A ミラー
4B ミラー移動ステージ
5 透過測定用偏向部(透過測定光学系)
5A ミラー
5B チルトステージ(透過測定光軸調整部)
5C シフトステージ(透過測定光軸調整部)
6 被測定体保持部
6A チルトステージ(調整ステージ)
6B シフトステージ(調整ステージ)
6a 保持台部(保持台)
6b 開口部
7 角度可変測定用偏向部(角度可変反射測定光学系)
7A ミラー
7B チルトステージ(角度可変反射測定光軸調整部)
7C シフトステージ(角度可変反射測定光軸調整部)
8 移動ステージ
9 レボルバ
9b 対物鏡筒
9c 光透過部
10 顕微分光反射率測定部
11 光源ユニット(光源部、第1の光源ユニット)
13 集光光学系
14 ビームスプリッタ
15 分光器(測光部)
15b ピンホール(入射開口)
15c 凹面グレーティング(回折格子)
15d ラインセンサ(複数の受光部を有する受光素子)
16 観察部
16b 第1撮像素子
16d 第2撮像素子
17 対物光学系
18 表示ユニット
、L、L、L、L、L、L、L、L11、L12、L13、L14、L15、L21、L22、L23、L24、L25 測定光束
基準光軸
、O、O、O、O、O 光軸
、R、R 偏向面
S、S、S、S 被測定面
W 被測定試料(被測定体)
凸レンズ(被測定体)
平行平板(被測定体)
傾斜ミラー(被測定体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準光軸に沿って入射開口から入射する光束を測光する測光部を有し、被測定体からの光束を集光して前記入射開口に入射させて測光を行う測光装置であって、
前記被測定体の有効領域よりも大径の開口部を有し、前記被測定体を保持する保持台と、
該保持台の姿勢を調整する調整ステージと、
前記入射開口に焦点面を合わせて前記基準光軸に同軸に配置された集光光学系と、
平行光束である測定光束を発生する光源部と、
前記基準光軸に対し進退可能に設けられ、前記基準光軸上に進出した際に、前記測定光束を前記被測定体に収束光束として照射するとともに前記被測定体での反射光束を集光して、前記集光光学系に入射させる対物光学系と、
前記測定光束を前記被測定体に照射し、該被測定体からの透過光束を前記集光光学系に入射させる透過測定光学系と、
前記被測定体からの前記透過光束の光軸を調整する透過測定光軸調整部と、
前記集光光学系を透過して前記入射開口に向かう光束の光軸の前記基準光軸に対するずれを観察する観察部と、
を備え、
前記反射光束を測定する際は前記調整ステージにより前記保持台により前記反射光束の光軸を調整し、前記透過光束を測定する際は前記透過測定光軸調整部により前記透過光束の光軸を調整する
ことを特徴とする測光装置。
【請求項2】
前記測定光束の入射角を変えて前記被測定体に照射し、該被測定体からの反射光束を前記集光光学系に入射させる角度可変反射測定光学系と、
前記被測定体からの前記反射光束の光軸を調整する角度可変反射測定光軸調整部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の測光装置。
【請求項3】
前記光源部は、
前記対物光学系に前記測定光束を入射する第1の光源ユニットと、
前記透過測定光学系または前記角度可変反射測定光学系に前記測定光束を入射する第2の光源ユニットと、を備え、
該第2の光源ユニットと、前記透過測定光学系および前記角度可変反射測定光学系との間に、前記第2の光源ユニットから出射される前記測定光束の光路を切り換える光路切換部が設けられた
ことを特徴とする請求項2に記載の測光装置。
【請求項4】
前記測光部は、
前記入射開口から入射する光束を回折する回折格子と、
該回折格子による回折光を受光する複数の受光部を有する受光素子と、
を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−198118(P2012−198118A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62739(P2011−62739)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】