測定デバイス、測定装置及び測定方法
【課題】簡易な構成を有し、試料の光学測定及び電気化学測定を迅速かつ正確に行うことができる測定デバイスを提供する。
【解決手段】試料に含まれる被検物質の分析を行うための細長い測定デバイスであって、測定デバイスは、被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器を備え、第1の容器は細長い測定デバイスの一端に設けられ、第2の容器は他端に設けられる。第1の容器は、試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備える。第2の容器は、試料を供給するための第2の試料供給口と、光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備え、電極を備えていない。
【解決手段】試料に含まれる被検物質の分析を行うための細長い測定デバイスであって、測定デバイスは、被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器を備え、第1の容器は細長い測定デバイスの一端に設けられ、第2の容器は他端に設けられる。第1の容器は、試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備える。第2の容器は、試料を供給するための第2の試料供給口と、光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備え、電極を備えていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる物質の分析を行うための測定デバイス及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査分野で使用される測定機器として、主に、大規模自動化機器およびPOCT(Point Of Care Testing)機器があった。
上記大規模自動化機器は、病院の中央臨床検査部門もしくは臨床検査受託業務を中心とする会社に設置されており、多数の患者の検体を多項目にわたり検査することができるものである(例えば、特許文献1参照)。例えば、日立製7170型の大型自動化機器は最大36項目について毎時800テストの検査を完了することができる。したがって、検査の効率化に大きく貢献してきており、多くの被験者を抱える病院向きの装置であるといえる。
【0003】
一方、POCT機器とは、病院の検査室や検査センターを除く医療現場で行われる臨床検査において用いられる機器を示し、在宅医療において用いられる機器も含まれる(例えば、特許文献2〜4参照)。例えば、血糖センサ、妊娠診断薬、排卵検査薬、HbA1c・微量アルブミン測定装置(例えば、バイエル製DCA2000)等が挙げられる。これらのPOCT機器は、大規模自動化機器に比較して汎用性には乏しいが、ある病態に特異的なマーカー物質にフォーカスして、当該マーカー物質を簡易・迅速に測定することができるため、被験者のスクリーニング及びモニタリングに効果的である。また、POCT機器は、小型であるため携帯性に優れ、低コストで導入でき、さらに操作性においても特に専門性を必要とせず誰でも使用することができる。
【0004】
現在、臨床検査の測定項目は多く存在するが、尿等の体液を検体とする場合、測定方式は、主に光学測定方式と電気化学測定方式に大別される。上記従来の大規模自動化機器及びPOCT機器では、それぞれいずれかの測定方式を用いて測定が行われている。
近年、医療費の高騰や生活習慣病患者の増大が医療経済を圧迫してきており、医療費削減や生活習慣病患者増大の抑制が課題となってきている。この課題の抜本的な解決策の一つとして、根拠に基づいた医療(EBM:Evidence Based−medical)が検討されている。EBMを行うことにより、患者個々に応じて客観的に医療をマネジメントすることが可能となり、予防医療の実践により、特に生活習慣病患者数の抑制等につながることが期待されている。
【0005】
EBMの確立・実践のためには、臨床検査による検査情報は欠かせない。EBMにおける検査情報は、検査結果とそれに基づく患者へのソリューションとを含む。ここで、患者へのソリューションとは、食事管理等の生活習慣指導や薬物治療等である。すなわち、EBMにおける検査の位置づけは、医療を受けようとしている者に対する「課題の設定」と「方針の決定」である。EBMにおいて、より安心・安全で、より充実したソリューションを提供するためには、医療を受けようとしている者に対して課題を明確に提示する必要がある。そこで、臨床検査において、互いに関係のある複数の検査項目について、それぞれの検査結果を簡易・迅速に知ることが重要になってきている。
【0006】
上記のような従来の大規模自動化機器は、汎用性を有し、病態への関連性の有無にかかわらず多くの項目を検査することができる。しかしながら、装置の構成が複雑であるため、専門知識を有する者以外は操作をすることが困難であり、さらに、検査結果が得られるまでに要する時間が長く、被験者に結果をフィードバックするために要する時間が長いという問題がある。また、上記POCT機器は、操作性に優れ、簡易かつ迅速に検査を行うことができるが、特定の病態に関連するマーカーを専用とする測定機器であるため、複数の項目を検査することはできない。
【0007】
そこで、毛細管作用により試料液が流入するキャビティを備え、生化学または臨床試験に使用されるデバイスであって、試料の電気的特性を測定する電極構造と、キャビティ内に放出可能な抗体や酵素等の試薬とを有し、キャビティ内を光学的に測定できるようにキャビティの壁が透明であるデバイスが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平09−127126号公報
【特許文献2】特開平07−248310号公報
【特許文献3】特開平03−046566号公報
【特許文献4】米国特許第5141868号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4に記載のデバイスの構造では、光学測定のために用いる試薬がキャビティ内に供給された試料に溶解することにより電極構造に到達して、電極構造による電気的特性の測定に悪影響を及ぼすという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、簡易な構成を有し、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の測定デバイスは、
被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える。
【0010】
また、本発明の測定装置は、上記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記第2の容器の外部から内部に入射する入射光を出射するための光源と、
前記第2の容器の内部から外部に出射した出射光を受光するための受光部と、
前記電極に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、前記試料に含まれる前記被検物質を検出または定量するための演算部とを備える。
【0011】
また、本発明の測定方法は、
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことが可能な測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の測定デバイスは、試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、前記第1の容器には、前記第1の容器に試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、前記第2の容器には、前記第2の容器に試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える。
このような構成により、第1の容器及び第2の容器内へ試料を1回供給することにより、1つの測定デバイスを用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。第1の容器及び第2の容器を設け、第1の容器内に電極を設け、第2の容器内に光学測定のための試薬を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電極に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0014】
ここで、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられていることが好ましい。このような構成によれば、同一の試料を第1の容器及び第2の容器に供給し易いからである。
また、前記光学測定部が、前記第2の容器の外部から内部に入射光を入射させるための光入射部と、前記第2の容器の内部から外部に出射光を出射させるための光出射部とを備えることが好ましい。
このような光入射部及び光出射部は、光学的に透明な材料または可視光の吸収を実質的に有していない材料で形成されていることが好ましい。例えば、石英やガラス、あるいはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。デバイスを使い捨てにする場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0015】
また、前記電極は一対の電極であることが好ましい。このような構成によれば、例えば試料の導電率を測定することにより、試料中に含まれる塩の濃度を知ることができる。
電極の材料としては、金、白金、パラジウムあるいはそれらの合金または混合物、及びカーボンのいずれかを少なくとも含むものが好ましい。これらの材料は化学的、電気化学的に安定であり、安定した測定を実現することができる。
また、上記電極は、試料中に含まれる特定の化合物またはイオンの濃度を測定するための電極であることが好ましい。このような構成によれば、試料中の特定の化合物の濃度を知ることができる。例えば、ガラス電極などを用いるとナトリウムイオンの濃度を測定することができる。
【0016】
さらに、上記電極は、試料中に含まれる特定のイオンに感応する膜(イオン感応膜)を備えた電極であることが好ましい。このような構成によれば、試料中の特定イオンの濃度を知ることができる。
ここで、イオン感応膜は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、水素イオンなどのイオンのうちいずれかを選択的に透過させる機能を有するものを用いることができる。
【0017】
イオン感応膜を構成する化合物は、透過させたいイオンに応じて公知の化合物を用いることができる。例えば、ナトリウムイオンの場合、ビス[(12−クラウン−4)メチル]2,2−ジベンゾマロネート(Bis[(12−crown−4)methyl]2,2−dibenzomalonate)等、カリウムイオンの場合、ビス[(ベンゾル5−クラウン−5)4−メチル]ピメレート(Bis[(benzo15−crown−5)4−methyl]pimelate)等、リチウムイオンの場合、フォスフォドデシル−14−クラウン−4(phosphododecyl−14−crown−4)等、マグネシウムイオンの場合、4,13−ビス[N−(1−アダマンチル)カルバモイルアセチル]−8−テトラデシル−1,7,10,16−テトラオキサ−4,13−ジアザシクロオクタデカン(4,13−bis[N−(1−adamantyl)carbamoylacetyl]−8−tetradecyl−1,7,10,16−tetraoxa−4,13−diazacyclooctadecane)等、カルシウムイオンの場合、4,16−ビス(N−オクタデシルカルバモイル)−3−オクトブチリル−1,7,10,13,19−ペンタオクサ−4,16−ジアザシクロヘンイコサン(4,16−bis(N−octadecylcarbamoyl)−3−octbutyryl−1,7,10,13,19−pentaoxa−4,16−diazacyclohenicosane)等、塩化物イオンの場合、2,7−ジ−t−ブチル−9,9−ジメチル−4,5−ビス(N−n−ブチルチオウレイレン)キサンテン(2,7−Di−tert−butyl−9,9−dimethyl−4,5−bis(N−n−butylthioureylene)xanthene)等、アンモニウムイオンの場合、2,6,13,16,23,26−ヘキサオクサヘプタシクロ[25.4.4.47,12.417,22.01,17.07,12.017,22]トリテトラコンタン(2,6,13,16,23,26−hexaoxaheptacyclo[25.4.4.47,12.417,22.01,17.07,12.017,22]tritetracontane)等のイオン選択性を有する包接化合物を用いることができる。いずれも市販品として、例えば(株)同仁化学研究所から入手することができる。
【0018】
電極上にイオン感応膜を形成する方法としては、例えば、前記包接化合物と、可塑剤と、アニオン排除剤と、PVC等の高分子化合物とを有機溶剤に溶解し、得られた混合溶液を電極上に塗布して風乾等により乾燥させる方法がある。
【0019】
上記電極は、シリコンなどによって形成される電界効果型トランジスタ(FET)の電極であってもよい。また、電位の安定した参照電極、例えばAg/AgClや飽和カロメル電極を、一方の電極として使用したり、第三の電極として他の電極と組み合わせて使用したりすることが好ましい。
【0020】
また、電極上には酵素が担持されていることが好ましい。酵素は特定の化合物の反応を高選択的に触媒するため、試料中の特定の化合物に対して選択性の高い測定を実現することができる。酵素は測定の対象とする化合物に応じて選択性・反応性の点から従来公知の最適なものが用いられる。
酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ等を挙げることができる。これら酵素は市販品を入手することができる。
【0021】
本発明においては、酵素は試料に溶解せず、電極に固定化されていることが好ましい。このような構成によれば、試料の量にばらつきがあっても精度の良い測定が可能となる。
また、必要に応じて、酵素と電極との間の電子輸送を可能にする電子伝達体、例えばフェリ/フェロシアン化物イオン、フェロセン誘導体、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、あるいはキノン誘導体などを用いてもよい。酵素を電極に固定化する場合には、電子伝達体も併せて固定化することがより好ましい。
【0022】
また、上記電極は、第1の容器内であって、測定デバイスの外部から内部に入射した入射光及び測定デバイスの内部から外部に出射する出射光の光路とは異なる位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、電極が入射光及び出射光を遮ることがなくなり、また、第2の容器内には電極が設けられていないため、第2の容器内に供給された試料について良好な光学測定を行うことができる。
【0023】
本発明の測定デバイスは、さらに、試薬が酵素または抗体を含んでいることが好ましい。試薬は、第2の容器内に乾燥状態で備えられ、第2の容器内に試料が供給されたときに、試料に溶解するように配置されていることが好ましい。
例えば、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬の溶液を含浸させた後乾燥させることにより試薬を担持させ、その多孔性の担体を第2の容器内に設ければよい。また、第2の容器を構成する壁面に、試薬の溶液を直接塗布した後乾燥することにより試薬を配置してもよい。
【0024】
試薬としての抗体は、公知の方法により産生させることができるので、試薬を作製しやすいという点で有利である。例えば、アルブミン等の蛋白や、hCG、LH等のホルモンを抗原として、マウス・ウサギ等に免疫することにより、前記抗原に対する抗体を得ることができる。
抗体としては、アルブミン等の尿中に含まれる蛋白に対する抗体や、hCG、LH等の尿中に含まれるホルモンに対する抗体等が挙げられる。必要に応じて抗原と抗体による凝集反応を促進させるポリエチレングリコールなどの化合物を測定デバイス内の抗体近傍に共存させてもよい。
【0025】
試薬としての酵素は、特定の化合物の反応を高選択的に触媒するため、試料中の特定の化合物に対して選択性の高い測定を実現することができる。酵素は測定の対象とする化合物に応じて選択性・反応性の点から従来公知の最適なものが用いられる。
酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼあるいはその他酸化還元酵素などを挙げることができる。この場合、酵素反応の結果呈色あるいは消色する色素あるいは色素源を酵素と共存させておくと光学測定が安定する。これら酵素は市販品を入手することができる。
【0026】
また、本発明の測定装置は、上記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、前記測定デバイスの前記第2の容器に入射する入射光を出射するための光源と、前記第2の容器から出射した出射光を受光するための受光部と、前記電極に電圧を印加するための電圧印加部と、前記電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部とを備える。
ここで、上記測定デバイスは着脱可能な状態で上記測定装置に取付けられることが好ましい。また、測定デバイスは使い捨てであることが好ましい。
【0027】
また、本発明の測定装置は、前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスにおける前記第1の容器及び前記第2の容器の少なくとも一方に前記試料を吸引により供給するための吸引部をさらに備えることが好ましい。
ここで、上記測定デバイスは、第1の容器及び/又は第2の容器内に試料を吸引するための吸引口をさらに備えていることが好ましい。このような構成によれば、測定デバイス取付け部に測定デバイスの吸引口が接続されるように測定デバイスを取付けた状態で、吸引部を用いて、測定デバイスの第1の容器及び/又は第2の容器内に容易に試料を供給することができる。
【0028】
上記デバイスにおいては、第1の容器に第1の吸引口が設けられており、第2の容器に第2の吸引口が設けられていてもよい。この場合、第1の吸引口と第2の吸引口とが互いに隣接する位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、測定デバイスを単一の測定デバイス取付け部に取り付けることにより、吸引部を用いて第1の吸引口及び第2の吸引口を通してそれぞれ第1の容器及び第2の容器内に試料を同時に吸引することができる。
【0029】
吸引部は、手動によるものであっても自動によるものであってもよく、例えば、従来のシリンジ、ディスペンサー等と同様のピストン機構が挙げられる。
これらのピストン機構においてピストンを作動させる方法は、手動であっても、自動であってもよいが、自動化することが、作業者の負担を軽減することができるので好ましい。自動化する方法としては、ピストンをモーターで作動させる方法がある。モーターとしては、ステップモーター、直流モーター等がある。
【0030】
ステップモーターは入力された1パルス信号あたりに特定の回転角を回転するモーターであり、パルス数で回転角度を決定できるため、位置決めのためのエンコーダーを必要としない。即ち、入力パルス数により、ピストンの動作距離を制御することができる。
モーターの回転運動は、歯車機構と雄ネジ及び雌ネジを組み合わせた直進機構等とを用いて直進運動へ変換することにより、ピストンを作動させる。直流モーターの場合も回転運動を直進運動へ変換する方法は同様であるが、直流モーターの場合は、ピストンの動作距離を制御するために、モーターの回転位置を検出するエンコーダーが必要となる。また、リニア型のステップモーターもあり、このタイプのモーターは、モーター内に雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構が組み入れられており、入力パルス数に依存して、棒状の可動部が直進運動するように構成されている。このため、この棒に直接ピストンを連結すればよく、構成が簡単となる。
【0031】
また、例えば測定デバイスの第2の容器への試料の供給には上記吸引部を用い、第1の容器への試料の供給には毛細管現象を利用してもよい。この場合、第1の容器を構成する部材の内表面を親水性にすることが好ましい。このような構成によれば、試料を円滑、均一または迅速に第1の容器に供給することができる。
【0032】
また、本発明の測定方法は、
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程と、を含む。
【0033】
ここで、本発明の測定デバイスにおいては、前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されているのが好ましい。さらに、前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき自動的に前記工程(F)を行うことが好ましい。
このような構成によれば、第1の試料供給口及び第2の試料供給口から供給された試料は、電極よりも先に試薬保持部に到達する。したがって、電極に試料が到達したことを電極からの電気信号の変化を検出することにより検知し、その検出に基づき試料に入射光を自動的に照射するようにすると、試料不足により試料中に試薬が溶解する前に誤って光学測定が行われることを防止することができる。
【0034】
また、測定デバイスにおいて、第1の容器は空気孔をさらに備えていてもよい。空気孔は、電極を挟んで第1の試料供給口とは反対側に位置する部分に設けられていることが好ましい。この構成によると、第1の容器がキャピラリ(毛細管)として機能し、試料が、毛細管現象により第1の試料供給口から電極まで供給される。そのため、第1の試料供給口を試料と接触させるだけで第1の容器内に試料を容易に供給することができる。
【0035】
また、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられており、前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき、前記工程(B)において前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を吸引することが好ましい。
このような構成によれば、電極において電気信号の変化を検出することにより、測定デバイスの第1の試料供給口及び第2の試料供給口が試料中に浸されたことを検知できるので、第2の試料供給口が試料中に浸される前に誤って試料の吸引が行われるのを防ぐことができる。
また、本発明の測定デバイスにおいて、前記第1の容器と前記第2の容器とが、前記第2の試料供給口を介して互いに連通していてもよい。このとき、前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器から前記第1の容器へ前記試料が流れることを防止する弁をさらに備えることが好ましい。
【0036】
ここで、さらに、第1の被検物質の定量結果及び第2の被検物質の定量結果のいずれか一方に基づいて、他方の定量結果を補正することが好ましい。
このようにすると、互いに関係のある複数の検査項目について測定を行うことにより、測定結果の精度を向上させることができる。
【0037】
本発明における試料としては、血清、血漿、血液、尿、間質液、あるいはリンパ液などの体液、培地の上清液等の液体の試料が挙げられる。または、上記体液中の特定の成分と反応する試薬、例えば酵素、抗体、もしくは色素などを、体液と混合したものを、試料として測定デバイスに供給してもよい。
これらのなかで、試料として尿が好ましい。試料が尿であると、非侵襲的に在宅での日常の健康管理を行うことができる。
【0038】
第1の被検物質としては、アルブミン、hCG、LH、CRP、IgG等が挙げられる。また、第2の被検物質としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、グルコース等が挙げられる。
健康管理の最初の段階で行われる尿の定性検査では、pH、比重、蛋白、糖、潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球、アスコルビン酸、アミラーゼ、食塩の12項目について検査が行われる。また、腎機能を分析するという目的では微量アルブミンが、妊娠検査・排卵検査等のマーカーとしてはhCG、LH等のホルモンがある。
【0039】
これらの検査項目を大別すると、蛋白や、微量アルブミン、hCG、LH等のホルモンは、抗原抗体反応に基づいた光学測定が適している。抗原抗体反応に基づいた光学測定としては、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫凝集法等の、抗原抗体反応に基づいて試料中に生じた濁りを測定するものが挙げられる。
一方、尿中の塩分(ナトリウムイオン、カリウムイオン)、pH、糖などは主に電気化学測定に基づいて測定される。特に尿中の糖分や塩分は、食事等の生活習慣を反映するものであり、健康管理に関するソリューションを提案するために重要な情報である。
【0040】
塩分及びpHは、抗原抗体反応に影響を与える。例えば、高塩濃度状態における抗原抗体反応は解離性が強く反応量が少なくなるため、負の測定誤差をもたらす。尿中の塩分及びpHは日内変動・日外変動・個体差があるので、生じる誤差を予測することは困難である。しかしながら、電気化学測定により塩分値やpH値を得、光学測定において種々の塩分濃度やpH値における出射光強度と抗原濃度との関係を表すデータを検量線として参照することにより、抗原濃度の測定誤差を補正することができる。
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0042】
[実施の形態1]
1.測定デバイス
以下、図面を用いて、本発明の測定デバイスの一実施の形態を詳細に説明する。ここでは、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイスの構造について図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明の測定デバイスの一実施の形態を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA−A断面図である。また、図3は、図1及び2に示す本発明の測定デバイスの分解斜視図である。
【0043】
本実施の形態の測定デバイス100は、矢印Pの方向に長さを有し、透明のポリスチレン製である第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を備えている。
第1の部材101と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間の部分が第1の容器104として機能する。そして、第1の容器104として機能する空間の一方の開放端が第1の試料供給口105として機能し、他方の開放端が第1の吸引口106として機能する。
【0044】
また、第3の部材103上には、一対の導電部が設けられている。さらに、一対の導電部上には、一対の電極201a、202aおよび一対の接続部201b、202bが第1の容器104内に露出するように、絶縁性の樹脂からなるカバー203が設けられている(図3参照)。
さらに、同様に、第2の部材102と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間の部分が第2の容器107として機能する。そして、第2の容器107として機能する空間の一方の開放端が第2の試料供給口108として機能し、他方の開放端が第2の吸引口109として機能する。
【0045】
また、第2の容器107内には、第2の部材102上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。そして、第2の試料供給口108から試薬保持部110との距離Xよりも、第1の試料供給口105から電極201a、202aまでの距離Yの方が長くなるような位置(即ち、関係式:X<Yを満たす位置)に、試薬保持部110が配置されている。
【0046】
本実施の形態の測定デバイス100における試薬保持部110は、図3に示すように、第2の部材102上であって第3の部材103と対向する面102a上に設けられている。
第2の部材102の外面は3つの面102b、102c及び102dで構成されているが、裏側に試薬保持部110が形成された第1の面102bを挟む位置にある2つの面102c、102dのうちの一方が光入射部111として機能し、他方が光出射部112として機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0047】
ここで、本実施の形態に係る測定デバイス100が使用されるときは、後述するように、測定デバイス100の一部を例えば容器内に採取された尿に浸漬した後、測定装置によって第1の吸引口106及び第2の吸引口109から尿を吸引して第1の容器104及び第2の容器107内に供給する。
したがって、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108付近には、測定デバイス100に前記試料に浸漬するための目安となる目安線115が設けられている。このような目安線115があると、測定デバイス100を試料である尿に浸す工程において、測定デバイス100を当該目安線115の部分まで前記試料に浸漬することができることとなり、確実に尿を第1の容器104及び第2の容器107内に供給することができるとともにより確実に測定を行うことができる。
【0048】
目安線115の太さや形状は目視可能な程度であれば特に制限はない。図1においては測定デバイス100の1つの側面のみに設けられているが、すべての側面にわたって目安線を設けてもよい。
このような目安線115は、例えば、測定デバイス100の表面に印刷をすることによって形成してもよく、また、溝又はリブを設けることによって形成してもよい。
【0049】
次に、本実施の形態の測定デバイス100の作製方法について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る測定デバイスの分解斜視図である。
第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103は、それぞれ透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。成型には、公知の樹脂成型技術を用いればよい。
【0050】
第1の部材101及び第2の部材102はそれぞれ凹部を有し、板状である第3の部材103を挟んで互いに組み合わされることにより、第1の容器104及び第2の容器107を一体的に構成する。
第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103の寸法は、例えば、いずれも幅(図3のA)10mm、長さ(図3のB)84mm、厚み1mmとすればよい。
また、第1の部材101及び第2の部材102の高さ(図3のC)は、例えば、いずれも6mmとすればよい。
【0051】
次に、第2の部材102の凹部の底面、即ち面102aに試薬保持部110を形成する。
例えば、光学測定のための試薬であるヒトアルブミンに対する抗体の水溶液を、マイクロシリンジなどを用いて第2の部材102の凹部の底面(面102a)に一定量滴下することにより塗布し、これを室温〜30℃程度の環境に静置して水分を蒸発させることにより、試薬を乾燥状態で担持することができる。例えば、濃度が8mg/dLの上記抗体の水溶液を用い、0.7mLの滴下量で、面積が5cm2の部分に滴下すればよい。
【0052】
塗布する試薬を含む水溶液の濃度及び量は、必要とするデバイスの特性や第2の部材102における形成位置の空間的な制限に応じて適切に選択することができる。また、第2の部材102における試薬保持部110の位置や面積は、試薬の試料に対する溶解性や光学測定部の位置などを鑑みて適宜選択することができる。
なお、ヒトアルブミンに対する抗体は従来公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトアルブミンを免疫したウサギ抗血清を、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した後、透析チューブを用いて透析することにより、抗ヒトアルブミン抗体が得られる。
【0053】
一方、第3の部材103の第1の部材101側に位置する面103a上には、一対の導電部を配置する。例えば一対の導電部と同様の形状の空隙を有するアクリル樹脂製のマスクを第3の部材103上に配置し、それを介して金をスパッタした後、マスクを除去することにより一対の導電部を形成することができる。スパッタに代えて、蒸着でも同様の手順で形成することができる。
一対の導電部の寸法は特に制限されないが、例えば、それぞれ幅2mm程度、長さ14mm程度、厚み5μm程度であればよい。電極201a、202aおよび接続部201b、202bの大きさ(長さ)を規定するために、導電部の両端が露出し、導電部の一部が覆われるように、絶縁性の樹脂からなるカバー203を貼付する。カバー203としては、例えば、幅10mm程度、長さ5mm程度、厚さ0.1mm程度の、アクリル系の接着剤が塗布されたPET製のフィルムを用いることができる。電極201a、202aの長さが、例えばそれぞれ4mm、接続部の長さが、例えばそれぞれ5mmとなるようにカバー203を配置する。
導電部、電極、接続部の材料、面積、厚さ、形状及び位置等は、必要とするデバイスの特性、光学測定系の位置などに鑑みて、適宜調整することができる。
【0054】
また、電極201a、202aの表面には、酵素であるグルコースオキシダーゼ及び電子伝達体であるオスミウム錯体を、公知の方法を用いて固定化担持する。
例えば、塩化ビスビピリジンオスミウムが配位結合したポリビニルイミダゾールの溶液をグルコースオキシダーゼの溶液と混合して電極201a、202a上に塗布し、電極201a、202a上の上記溶液へアミン架橋剤であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して混合する。1時間程度静置の後、蒸留水を用いて電極201a、202aの表面を洗浄する。
【0055】
上記のようにして得られる第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を、図3に示す破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス100を組み立てる。第1の部材101と第3の部材103との接合部分、および第2の部材102と第3の部材103との接合部分に、例えばエポキシ樹脂などの接着剤を塗布した後、各部材を張り合わせ静置し、乾燥させることにより測定デバイス100を組み立てる。
また、接着剤を使用せずに、第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を貼り合わせた後、市販の溶着機を用いて接合部分を熱または超音波によって溶着させてもよい。以上のようにして図1及び2に示す測定デバイス100を得ることができる。
【0056】
2.測定装置
次に、図面を用いて、本発明の測定装置の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る測定装置の構成について図4及び5を用いて説明する。図4は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図であり、図5は本実施の形態の測定装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施の形態の測定装置300は、測定デバイス100を取り付けるための測定デバイス取付け部301を有し、測定デバイス取付け部301には、測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の吸引口109に着脱可能に接合するためのデバイス装着口(図示せず)、並びに接続部201b、202bに電気的に接続するための端子(図示せず)を有する。また、測定結果が表示されるディスプレイである表示部302、試料吸引開始ボタン303、及び測定デバイス取外しボタン304が設けられている。
【0057】
デバイス装着口の内側には2つの凸部が設けられ、測定デバイス100を取り付ける際に凸部がそれぞれ第1の吸引口106及び第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製のリング状の封止材等を上記凸部の周囲に設け、凸部と第1の吸引口106及び第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。上記封止材は線状であってもよく、また、上記凸部そのものがテフロン(登録商標)やイソプレンゴム等の弾性を有する樹脂で構成されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、測定装置300の内部には、測定デバイス取付け部301に取り付けられた測定デバイス100の光学測定部に入射する入射光を出射するための光源407と、光学測定部から出射した出射光を受光するための受光器408と、測定デバイス100の電極201a、202aに電圧を印加するための電圧印加部402と、電極201a、202aからの電気信号を測定するための電気信号測定部405とが設けられている。
さらに測定装置300の内部には、受光器408により受光された出射光及び電気信号測定部405により測定された電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部であるCPU401と、測定デバイス100の第1の容器104及び第2の容器107内に試料を吸引するための吸引部であるピストン機構404とが設けられている。
【0059】
本実施の形態における光源407としては、例えば650nmの波長の光を出射する半導体レーザーを用いることができる。これに代えて、ライトエミッティングダイオード(LED)などを用いてもよい。
なお、本実施の形態においては免疫比濁法による測定を適用することを想定して、650nmの照射及び受光波長を選択するが、この波長は測定法や測定対象に応じて適宜選択することができる。
【0060】
本実施の形態における受光器408としては、例えばフォトダイオードを用いることができる。これに代えて、受光器408としては、フォトマルチメーター、電荷結合型素子(CCD)等を用いてもよい。
また、本実施の形態におけるピストン機構404は、ピストンをリニア型のステップモーターで作動させる構成となっている。
【0061】
さらに、測定装置300の内部には、第1の被検物質であるヒトアルブミンの濃度と受光器408により受光される出射光強度との関係を表す第1の検量線に関するデータと、第2の被検物質であるグルコースの濃度と電気信号測定部405により測定される電気信号との関係を表す第2の検量線に関するデータとが格納されている記憶部であるメモリ409が設けられている。
【0062】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイス100及び測定装置300を用いて試料中の被検物質を測定する方法を、図4及び5を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の吸引口109を、測定デバイス取付け部301内のデバイス装着口(図示せず)に接合し、測定デバイス取付け部301に測定デバイス100を取付ける。これにより、測定デバイス100の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部301内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0063】
このとき、測定装置300内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス100の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス100の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
【0064】
次に、例えば便器内に設けられた受尿容器又は紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス100を少なくとも目安線115の位置まで浸漬し、測定デバイス100の第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿に浸漬させる。
【0065】
ここで、ユーザが、少なくとも第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が尿に浸漬していることを確認し、その状態で、試料吸引開始ボタン303を押して測定装置300内に設けられた吸引手段の一部であるピストン機構404が作動させ、これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス100の第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108から第1の容器104及び第2の容器107内に、試料の液面がカバー203の位置になるように、それぞれ所定量(例えば、3mL)の尿が吸引される。
このとき、試料を吸引した時の位置にピストンを保持することにより、第1の容器104及び第2の容器107内に尿が保持され、第1の試料供給口105または第2の試料供給口108から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
【0066】
第1の容器104内に供給された尿が電極201a、202aに接触すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。
この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また、上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部302に計時の開始が表示される。この表示の後は、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿中から引き上げてもよい。
【0067】
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
【0068】
光源407から出射して測定デバイス100の光入射部111を通して第2の容器107内に入射し、尿中を透過及び散乱し、光出射部112から出射した光を、所定時間の間(例えば、3分間)、測定装置300内に設けられた受光器408により受光する。
CPU401はメモリ409に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す第1の検量線に関するデータを読み出し、当該第1の検量線を参照することによりCPU401が受光器408により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。
得られたヒトアルブミン濃度は表示部302に表示される。表示部302にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことを知ることができる。
【0069】
一方、計時部406からの信号によって、上記電圧の印加から所定時間(例えば、1分)経過したことをCPU401が判断すると、電極201aと電極202aとの間で流れる電流等の電気信号を電気信号測定部405で測定する。CPU401はメモリ409に格納されている電気信号とグルコース(尿糖)濃度との関係を表す第2の検量線に関するデータを読み出し、それを参照することによりCPU401が測定された電気信号を尿中のグルコース濃度に換算する。
得られたグルコース濃度は表示部302に表示される。表示部302にグルコース濃度が表示されることにより、ユーザはグルコース濃度測定が完了したことを知ることができる。好ましくは、得られたグルコース濃度及びヒトアルブミン濃度は、計時部406により計時された時刻とともにメモリ409に保存される。
【0070】
最後に、ユーザが測定デバイス取外しボタン304を押すことにより、測定デバイス取外し機構410が作動して、ピストン機構404内のピストンを動かすことにより、第1の容器104及び第2の容器107内の尿が第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108から便器内や紙コップ等の容器内に排出された後、測定デバイス100が測定装置300から自動的に取り外される。
なお、このようなデバイス取外し及び試料排出の機構を測定装置に設けずに、ユーザが手動で測定デバイス100を測定デバイス取付け部301から取り外してもよい。
【0071】
得られた尿糖濃度及びヒトアルブミン濃度は、記録部411によりSDカードなどの記憶媒体に記録することができる。取り外し可能な記憶媒体に保存することにより、測定結果を測定装置300から容易に取り出すことができるので、前記記憶媒体を分析専門業者に持参もしくは郵送して、分析を依頼することができる。
また、得られた尿糖濃度及びヒトアルブミン濃度は、送信部412により測定装置300外に送信することができる。これにより、測定結果を、病院内の分析関連部門または分析関連業者等に送信し、それを前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析することができるので、測定から分析までの時間を短縮することができる。
さらにまた、前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析した結果を受信するための受信部413を備えている。これにより、分析結果を迅速にユーザにフィードバックすることができる。
【0072】
以上により第1の容器104及び第2の容器107内へ試料を1回供給することにより、1つの測定デバイス100を用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。
また、測定デバイス100の第1の容器104内に電極201a、202aを設け、第2の容器107内に試薬保持部110を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電気化学測定部に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0073】
また、第2の試料供給口108と試薬保持部110との距離よりも、第1の試料供給口105と電極201a、202aとの距離の方が長くなるような位置に、試薬保持部110が配置されており、電極に試料が到達したことを電極からの電気信号の変化を検出することにより検知し、その検出に基づき試料に入射光を自動的に照射するようにしているので、試料不足により試料中に試薬が溶解する前に誤って光学測定が行われることを防止することができる。
【0074】
以上においては、本発明の実施の形態の一例について説明したが、測定デバイス100の形状は、本発明の構成要件を満たし、かつ本発明の効果を得られるものであれば、上記実施の形態において述べたものに限定されない。
ここで、図6は上記実施の形態の測定デバイスの変形例を示す斜視図であり、図7は図6におけるB−B部分の断面図である。それぞれ図1及び2と同様の構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図6に示すように、本変形例の測定デバイス100は、内部に第1の容器104及び第2の容器107として機能する空間を有する直方体形状を有している。また、本変形例の測定デバイス100は、第1の部材101及び第2の部材102を備え、第1の部材101及び第2の部材102の側面に第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108がそれぞれ設けられている。
【0075】
[実施の形態2]
1.測定デバイス
次に、本発明の測定デバイスの実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイスの構造について図8〜10を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る測定デバイスの斜視図であり、図9は図8におけるC−C断面図である。また、図10は図8及び9に示す測定デバイス600の分解斜視図である。なお、図1〜3に示された構成要素と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0076】
本実施の形態の測定デバイス600は、透明のポリスチレン製であるカバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103を備えている。
空気孔603が設けられたカバー部材601と、スリット604が設けられたスペーサ602と、第3の部材103とを組み合わせることにより、第1の試料供給口105が開放した空間が形成される。この空間が第1の容器104として機能する。
【0077】
第3の部材103上には、一対の導電部201、202が設けられている。一対の導電部201、202のうち、第1の容器104内に露出している部分が一対の電極201a、202aとして機能し、測定デバイス600の外側に露出している部分が一対の接続部201b、202bとして機能する。第1の容器104はキャピラリ構造となっており、試料が第1の試料供給口105に接触すると、第1の容器104内の空気が空気孔603から排出され、毛細管現象により試料が第1の試料供給口105から第1の容器104内に供給される。
カバー部材601及びスペーサ602の寸法は、例えば、いずれも幅(図10のD)3mm、長さ84mm、厚み300μmとし、スリット604の幅は、例えば1mmとすればよい。
【0078】
実施の形態1と同様に、第2の部材102と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間が第2の容器107として機能する。第2の容器107として機能する空間の一方の開放端が第2の試料供給口108として機能し、他方の開放端が第2の吸引口109として機能する。
そして、第2の容器107内には、第2の部材102上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。第2の試料供給口108と試薬保持部110との距離Xよりも、第1の試料供給口105と電極201a、202aとの距離Yの方が長くなるような位置に、試薬保持部110が配置されている。第2の部材102及び第3の部材103の寸法は、実施の形態1と同じでよい。
【0079】
本実施の形態の測定デバイス600においては、試薬保持部110は、第2の部材102上であって第3の部材103と対向する面102a上に設けられている。第2の部材102の外面を構成する3つの面のうち、裏側に試薬保持部110が形成された第1の面102bを挟む位置にある2つ面102c、102dの一方が光入射部111、他方が光出射部112としてそれぞれ機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0080】
次に、本実施の形態の測定デバイス600の作製方法について図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る測定デバイスの分解斜視図である。
実施の形態1と同様に、カバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103は透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。
次に、第2の部材102の凹部の底面102aに試薬保持部110を形成する。試薬保持部110の形成方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0081】
一方、第3の部材103上には、一対の導電部201、202を形成する。第3の部材103を、カバー部材601及びスペーサ602と組み合わせたときに、スペーサ602に設けられたスリット604により形成される第1の容器104内に導電部の一部が露出するような位置に、導電部201、202を配置する。ここでは、導電部201、202をそれぞれL字状及び逆L字状とした。
導電部201、202の形成方法は、絶縁性の樹脂からなるカバーを貼付しない点以外は実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0082】
次に、第3の部材103、カバー部材601及びスリット604で構成される第1の容器104の内面は、親水性処理しておくのが好ましい。
例えば、第1の容器104の内面を構成する第3の部材103、カバー部材601及びスリット604の部分(面)の表面全体に、0.1%レシチン/トルエン溶液を0.05mL滴下し、塗布する。2〜3分間大気中に静置し、トルエン溶媒を蒸発させることにより、上記表面全体に親水性を付与することができる。
また、レシチン溶液の代わりに、エチレングリコールアルキルエーテル(TritonX−100)などの界面活性剤の水溶液を用いても、同様の親水性処理を行うことができる。
【0083】
上記のようにして得られるカバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103を、図10に記した破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス600を組み立てる。接合方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0084】
2.測定装置
次に本実施の形態の測定装置800について図11及び5を用いて説明する。図11は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図である。なお、図4に示す実施の形態1の測定装置と共通する構成には同じ符号を用い、説明を省略する。
本実施の形態の測定装置800は、測定デバイス600の第2の吸引口109側の端部に着脱可能に接合することによって測定装置800に測定デバイス600を取付けることができる。測定デバイス取付け部301はデバイス装着口(図示せず)を有し、測定結果が表示される表示部302、試料吸引開始ボタン303、及び測定デバイス取外しボタン304が設けられている。
【0085】
デバイス装着口の内側には凸部が設けられて、測定デバイス600を取り付ける際に凸部が第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、実施の形態1と同様に、例えばテフロン(登録商標)やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製の封止リングを上記凸部の周囲に設け、凸部と第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。
測定装置800の内部の構造については実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0086】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイスを用いて試料中の被検物質を測定する方法について図11及び5を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定装置800の測定デバイス取付け部301に測定デバイス600の第2の吸引口109が接合するように、測定デバイス600を取付ける。これにより、測定デバイス600の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部301内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0087】
このとき、測定装置800内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス600の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス600の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
なお、本実施の形態の場合、空気孔603が測定装置800の筐体により塞がれることがないようにしている。
【0088】
次に、便器内に設けられた受尿容器または紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス600のうち少なくとも第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を浸漬させる。このようにすると、第1の試料供給口105から、毛細管現象によって試料が第1の容器104に導入される。
この時、第1の容器104内の空気は空気孔603から排出され、同時に第1の容器104は空気孔603近傍まで試料で満たされる。本実施の形態では、第3の部材103、カバー部材601及びスリット604内面を親水処理しているので、試料は第1の容器104内へ円滑かつ均一に供給される。
【0089】
第1の容器104内に供給された尿が、電圧が印加された2つの電極201a、202aに到達すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。この検知により、CPU401は第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が試料に浸漬したと判断し、ピストン機構404を作動させる。
これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス600の第2の試料供給口108から第2の容器107内に所定量(例えば、3mL)の尿が吸引される。ピストンをその位置に保持することにより、第2の容器107内に尿が保持され、第2の試料供給口108から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
【0090】
また、この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部302に計時の開始が表示される。この表示の後は、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿中から引き上げてもよい。
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
【0091】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
以降の、受光器408により受光された出射光強度を用いたヒトアルブミン濃度測定、電気信号測定部405で測定した電気信号を用いたグルコース濃度測定の手順等は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0092】
以上により第1の容器104及び第2の容器107内へ試料を1回供給することにより、実施の形態1と同様に、1つの測定デバイス600を用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。
測定デバイス600の第1の容器104内に電極201a、202aを設け、第2の容器107内に試薬保持部110を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電気化学測定部に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0093】
また、第1の容器104をキャピラリ構造とし、毛細管現象により試料が第1の試料供給口105から第1の容器104内に供給されるようにしているので、電極201a、202aからの電気信号の変化により、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が試料に浸漬したことを検知することができる。その検知に伴い自動的にピストン機構404を作動させることにより、第2の試料供給口108が試料に接触する前に誤って試料の吸引が起るのを防ぐことができる。
また、試料吸引開始ボタン303を押す操作を省略することができるので、ユーザの作業を低減することができる。また、測定装置800は試料吸引開始ボタン303を備えていなくてもよい。
【0094】
なお、本実施の形態においては、カバー部材601の空気孔603を、金型を用いた成形によって作製したが、これに代えて、空気孔603を有していない板状のカバー部材601を成形により作製した後、空気孔603を切削や打ち抜きなどによって形成させてもよい。
また、第1の容器104内面が親水性を有するように、第3の部材103及びカバー部材601の表面、並びにスリット604の内面に対して親水性処理を施したが、これに代えて、第3の部材103、カバー部材601及びスペーサ602を、親水性を有する材料で形成してもよい。親水性を有する材料としては、例えばガラスなどを挙げることができる。
【0095】
さらに、本実施の形態では、第1の容器104を形成するために、スリット604が設けられたスペーサ602を用いたが、これに限定されない。図12は、本実施の形態の測定デバイスの変形例を示す分解斜視図である。図10と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図12に示すように、スペーサ602として、2本の矩形状(レール状)の板部材を用いてもよい。この場合、カバー部材601は空気孔603を備えていなくともよい。カバー部材601とスペーサ602と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、第1の試料供給口105と反対側の開口部が空気孔603として機能する。
【0096】
測定デバイス600の形状については、本願発明の構成要件を満たし、かつ本願発明の効果を得られるものであれば、上記実施の形態において述べたものに限定されない。図13は、本実施の形態の測定デバイスの変形例を示す斜視図であり、図14は図13におけるD−D断面図である。図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図13及び14に示すように、本変形例の測定デバイス600は、内部に第1の容器104として機能する空間を有する第1の直方体と、内部に第2の容器107として機能する空間を有する、第1の直方体よりも小さい第2の直方体とが組み合わさった形状を有している。また、本変形例の測定デバイス600は、第2の部材102、カバー部材601、スペーサ602及び第3の部材103を備え、カバー部材601及び第2の部材102の側面に第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108がそれぞれ設けられている。
【0097】
[実施の形態3]
次に、本発明の測定デバイスの実施の形態3について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイス700の構造について図15〜18を用いて説明する。図15は、本実施の形態に係る測定デバイス700の斜視図であり、図16は図15におけるE−E断面図である。また、図17は本実施の形態に係る測定デバイス700の上面図であり、図18は測定デバイス700の分解斜視図である。なお、図1〜3に示された構成要素と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0098】
本実施の形態の測定デバイス700は、透明のポリスチレン製である第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を備えている。第1の部材701の外面は3つの面701a、701b、および701cで構成されている。第1の面701cには、第1の試料供給口105が設けられている。
第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を図18の破線で示す位置関係で組み合わせることで、第3の部材703がスペーサとなって2つの空間が形成される。2つの空間のうち、第1の試料供給口105と連通する空間が第1の容器104、他方の空間が第2の容器107として機能する。
第3の部材703は、四角形の板状の部材の中央部分に、第1の容器104と第2の容器107とを連通する開口部705を有する。開口部705は、実施の形態1における測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の試料供給口108としての機能を有する。また、第3の部材703の中心には、第2の容器107側において開口部705を覆うように逆流防止用の弁704が備えられており、第2の容器107から第1の容器104への逆流を防ぐことができる。
【0099】
第2の部材702の内壁面702b上には、一対の導電部201、202が設けられている。一対の導電部201、202の一部は絶縁性の樹脂からなるカバー203で覆われている。一対の導電部のうち、第1の容器104内に露出している部分が一対の電極201a、202aとして機能し、第2の容器107内に露出している部分が一対の接続部201b、202bとして機能する。
【0100】
第1の部材701、第2の部材702の寸法は、例えば、いずれも幅(図18のA)10mm、長さ(図18のB)84mm、厚み1mmとすればよい。
また、第1の部材701及び第2の部材702の高さ(図18のC)は、例えば、いずれも3.5mmとすればよい。
そして、第2の容器107内には、第2の部材702の内壁面702a上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。
【0101】
第1の部材701の外面は3つの面701a、701b及び701cで構成されているが、対向する位置にある2つの面701a、701bのうちの一方の面において、第2の容器107を囲む部分が、光入射部111として機能し、他方の面において第2の容器107を囲む部分が、光出射部112として機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0102】
次に、本実施の形態の測定デバイス700の作製方法について図18を用いて説明する。図18は、本実施の形態に係る測定デバイス700の分解斜視図である。
実施の形態1と同様に、第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703は透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。
【0103】
次に、第3の部材703の第2の容器107側の面上において、開口部705を覆うように、弁704を配置する。弁704は、天然ゴムや合成ゴムのような柔軟性を有する樹脂からなるのが好ましい。樹脂からなる弁704の周縁部の一部を第3の部材703に接着させ、残りの部分は接着しないようにして、第3の部材703の第2の容器107側の面上において、開口部705を覆うように、弁704を取り付ける。これにより、開口部705、及び弁704のうち第3の部材703と接着されていない部分を通して、第1の容器104から第2の容器107へ試料が流れる。より具体的には、第1の試料供給口105から第1の容器104中に試料が供給されると、供給された試料が下方から弁704を押し上げ、弁704の接着していない部分が上方に押し上げられて、図19に示すように弁704が変形する。これにより、矢印に示す方向に試料が流入することができ、試料が第2の容器107内に供給される。これに対して、図19中の矢印の向きと反対の方向、すなわち第2の容器107から第1の容器104へは、試料が流れない。このように、弁704は逆流防止弁として機能する。
【0104】
次に、第2の部材702の面702aに試薬保持部110を形成する。試薬保持部110の形成方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
さらに、第2の部材702の凹部の底面702bに一対の導電部201、202及びカバー203を形成する。導電部201、202及びカバー203の形成方法は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
上記のようにして得られる第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を、図18に記した破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス700を組み立てる。接合方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0105】
2.測定装置
次に本実施の形態の測定装置900について図20及び21を用いて説明する。図20は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図である。図21は、本実施の形態の測定装置の構成を示すブロック図である。なお、図4および5に示された構成と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
本実施の形態の測定装置900は、実施の形態1の測定装置における測定デバイス700の第2の吸引口109側の端部に着脱可能に接合することによって測定装置900に測定デバイス700を取付けることができる。測定デバイス取付け部901はデバイス装着口(図示せず)を有し、測定結果が表示される表示部902、及び試料吸引開始ボタン903が設けられている。
【0106】
デバイス装着口の内側には凸部が設けられて、測定デバイス700を取り付ける際に凸部が第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、実施の形態1と同様に、例えばテフロン(登録商標)やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製の封止リングを上記凸部の周囲に設け、凸部と第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。
図21に示すように、測定装置900の内部の構造は、実施の形態1の図4に示す測定装置の構成から測定デバイス取外し機構410および測定デバイス取り外しボタン304を取り除いた構成である。
【0107】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイス700及び測定装置900を用いて試料中の被検物質を測定する方法を、図20及び21を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定デバイス700の第2の吸引口109を、測定デバイス取付け部901内のデバイス装着口(図示せず)に接合し、測定デバイス取付け部901に測定デバイス700を取付ける。これにより、測定デバイス700の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部901内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0108】
このとき、測定装置900内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス700の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス700の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
【0109】
次に、例えば便器内に設けられた受尿容器又は紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス700を少なくとも目安線115の位置まで浸漬し、測定デバイス700の第1の試料供給口105を尿に浸漬させる。
【0110】
ここで、ユーザが、少なくとも第1の試料供給口105が尿に浸漬していることを確認し、その状態で、試料吸引開始ボタン903を押して測定装置900内に設けられた吸引手段の一部であるピストン機構404を作動させ、これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス700の第1の試料供給口105から第1の容器104に、尿が吸引される。
【0111】
第1の容器104内に供給された尿が電極201a、202aに接触すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。
この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また、上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部902に計時の開始が表示される。
第2の容器107内には、図19に示すような弁704の変形により生じた弁704と第3の部材703との隙間、及び開口部705を介して尿が供給される。この際、弁704により、第2の容器107に供給された尿が、第1の容器104に逆流することを防ぐ。
【0112】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から第1の所定時間(例えば、30秒)経過し、第2の容器107内に所定量の尿が供給されたことをCPU401が判断すると、CPU401はピストン機構404による尿の吸引を停止させる。
このとき、試料を吸引した時の位置にピストンを保持することにより、第1の容器104及び第2の容器107内に尿が保持され、第1の試料供給口105から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
【0113】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から第2の所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
【0114】
光源407から出射して測定デバイス700の光入射部111を通して第2の容器107内に入射し、尿中を透過及び散乱し、光出射部112から出射した光を、第3の所定時間の間(例えば、3分間)、測定装置900内に設けられた受光器408により受光する。なお、ここでは、図17および18に示すように、測定デバイス700における第1の部材701の面701bのうち第2の容器107を囲む部分を光入射部111とし、測定デバイス700における第1の部材701の面701aのうち第2の容器107を囲む部分を光出射部112とした。
CPU401はメモリ409に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す第1の検量線に関するデータを読み出し、当該第1の検量線を参照することによりCPU401が受光器408により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。
得られたヒトアルブミン濃度は表示部902に表示される。表示部902にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことを知ることができる。
【0115】
一方、計時部406からの信号によって、上記電圧の印加から所定時間(例えば、1分)経過したことをCPU401が判断すると、電極201aと電極202aとの間で流れる電流等の電気信号を電気信号測定部405で測定する。CPU401はメモリ409に格納されている電気信号とグルコース(尿糖)濃度との関係を表す第2の検量線に関するデータを読み出し、それを参照することによりCPU401が測定された電気信号を尿中のグルコース濃度に換算する。
得られたグルコース濃度は表示部902に表示される。表示部902にグルコース濃度が表示されることにより、ユーザはグルコース濃度測定が完了したことを知ることができる。好ましくは、得られたグルコース濃度及びヒトアルブミン濃度は、計時部406により計時された時刻とともにメモリ409に保存される。
最後に、ユーザが手動で測定デバイス700を測定デバイス取付け部901から取り外す。
【0116】
なお、上記実施の形態で参照した図3、図8、図10、図12、図13、図15及び図18においては、導電部201、202、電極201a、202a、接続部201b、202b、及びカバー203についてそれらの厚みは無視して示されている。また、図18においては、弁704及び試薬保持部110についてもそれらの厚みは無視して示されている。
【0117】
なお、以上の実施の形態において、光学測定のための試薬を含む水溶液を塗布、乾燥することにより試薬保持部を形成したが、これに代えて、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬の溶液を含浸させた後、乾燥または凍結乾燥させることにより試薬を担持させ、その多孔性の担体を第2の部材102の凹部の底面に貼付することによって試薬を担持する方法を用いてもよい。
また、スパッタや蒸着により電極を形成したが、これに代えて、金属のリボンを貼付する方法や、金属やカーボンを含むインクを印刷する方法などを用いることができる。これらの場合、電極とともに、各電極と測定装置との電気的接続を達成するためのリードを同時に作製してもよい。
【0118】
さらに、以上の実施の形態において、尿が2つの電極201a、202aに接触したことの検知に伴って電圧を一度遮断し、電圧を再度印加する際には電圧値を切り替えが、これに限定されない。測定に必要な電圧値を試料の供給前から印加しておけば、供給後もその電圧を継続して印加してもよい。
また、以上の実施の形態においては、尿が2つの電極201a、202aに接触したことを検知してから所定時間後に光の照射を行ったが、試料検知と同時に照射を開始してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、簡易な構成で複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことが可能な測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することができるため、医療及び医療関連の検査分野で、特に尿検体を測定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施の形態に係る測定デバイスを示す斜視図である。
【図2】同測定デバイスの図1におけるA−A断面図である。
【図3】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図4】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図5】同測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】同実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す斜視図である。
【図7】同測定デバイスの図6におけるB−B断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る測定デバイスを示す斜視図である。
【図9】同測定デバイス図8におけるC−C断面図である。
【図10】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図11】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図12】同実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す分解斜視図である。
【図13】同実施の形態に係る測定デバイスの他の変形例を示す斜視図である。
【図14】同実施の形態に係る測定デバイスの他の変形例の図13におけるD−D断面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す斜視図である。
【図16】同測定デバイスの図15におけるE−E断面図である。
【図17】同測定デバイスの上面図である。
【図18】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図19】同測定デバイスの弁が開いた状態を示す要部断面図である。
【図20】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図21】同測定装置の構成を示すブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる物質の分析を行うための測定デバイス及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、臨床検査分野で使用される測定機器として、主に、大規模自動化機器およびPOCT(Point Of Care Testing)機器があった。
上記大規模自動化機器は、病院の中央臨床検査部門もしくは臨床検査受託業務を中心とする会社に設置されており、多数の患者の検体を多項目にわたり検査することができるものである(例えば、特許文献1参照)。例えば、日立製7170型の大型自動化機器は最大36項目について毎時800テストの検査を完了することができる。したがって、検査の効率化に大きく貢献してきており、多くの被験者を抱える病院向きの装置であるといえる。
【0003】
一方、POCT機器とは、病院の検査室や検査センターを除く医療現場で行われる臨床検査において用いられる機器を示し、在宅医療において用いられる機器も含まれる(例えば、特許文献2〜4参照)。例えば、血糖センサ、妊娠診断薬、排卵検査薬、HbA1c・微量アルブミン測定装置(例えば、バイエル製DCA2000)等が挙げられる。これらのPOCT機器は、大規模自動化機器に比較して汎用性には乏しいが、ある病態に特異的なマーカー物質にフォーカスして、当該マーカー物質を簡易・迅速に測定することができるため、被験者のスクリーニング及びモニタリングに効果的である。また、POCT機器は、小型であるため携帯性に優れ、低コストで導入でき、さらに操作性においても特に専門性を必要とせず誰でも使用することができる。
【0004】
現在、臨床検査の測定項目は多く存在するが、尿等の体液を検体とする場合、測定方式は、主に光学測定方式と電気化学測定方式に大別される。上記従来の大規模自動化機器及びPOCT機器では、それぞれいずれかの測定方式を用いて測定が行われている。
近年、医療費の高騰や生活習慣病患者の増大が医療経済を圧迫してきており、医療費削減や生活習慣病患者増大の抑制が課題となってきている。この課題の抜本的な解決策の一つとして、根拠に基づいた医療(EBM:Evidence Based−medical)が検討されている。EBMを行うことにより、患者個々に応じて客観的に医療をマネジメントすることが可能となり、予防医療の実践により、特に生活習慣病患者数の抑制等につながることが期待されている。
【0005】
EBMの確立・実践のためには、臨床検査による検査情報は欠かせない。EBMにおける検査情報は、検査結果とそれに基づく患者へのソリューションとを含む。ここで、患者へのソリューションとは、食事管理等の生活習慣指導や薬物治療等である。すなわち、EBMにおける検査の位置づけは、医療を受けようとしている者に対する「課題の設定」と「方針の決定」である。EBMにおいて、より安心・安全で、より充実したソリューションを提供するためには、医療を受けようとしている者に対して課題を明確に提示する必要がある。そこで、臨床検査において、互いに関係のある複数の検査項目について、それぞれの検査結果を簡易・迅速に知ることが重要になってきている。
【0006】
上記のような従来の大規模自動化機器は、汎用性を有し、病態への関連性の有無にかかわらず多くの項目を検査することができる。しかしながら、装置の構成が複雑であるため、専門知識を有する者以外は操作をすることが困難であり、さらに、検査結果が得られるまでに要する時間が長く、被験者に結果をフィードバックするために要する時間が長いという問題がある。また、上記POCT機器は、操作性に優れ、簡易かつ迅速に検査を行うことができるが、特定の病態に関連するマーカーを専用とする測定機器であるため、複数の項目を検査することはできない。
【0007】
そこで、毛細管作用により試料液が流入するキャビティを備え、生化学または臨床試験に使用されるデバイスであって、試料の電気的特性を測定する電極構造と、キャビティ内に放出可能な抗体や酵素等の試薬とを有し、キャビティ内を光学的に測定できるようにキャビティの壁が透明であるデバイスが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平09−127126号公報
【特許文献2】特開平07−248310号公報
【特許文献3】特開平03−046566号公報
【特許文献4】米国特許第5141868号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4に記載のデバイスの構造では、光学測定のために用いる試薬がキャビティ内に供給された試料に溶解することにより電極構造に到達して、電極構造による電気的特性の測定に悪影響を及ぼすという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、簡易な構成を有し、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の測定デバイスは、
被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える。
【0010】
また、本発明の測定装置は、上記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記第2の容器の外部から内部に入射する入射光を出射するための光源と、
前記第2の容器の内部から外部に出射した出射光を受光するための受光部と、
前記電極に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、前記試料に含まれる前記被検物質を検出または定量するための演算部とを備える。
【0011】
また、本発明の測定方法は、
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことが可能な測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の測定デバイスは、試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、前記第1の容器には、前記第1の容器に試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、前記第2の容器には、前記第2の容器に試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える。
このような構成により、第1の容器及び第2の容器内へ試料を1回供給することにより、1つの測定デバイスを用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。第1の容器及び第2の容器を設け、第1の容器内に電極を設け、第2の容器内に光学測定のための試薬を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電極に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0014】
ここで、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられていることが好ましい。このような構成によれば、同一の試料を第1の容器及び第2の容器に供給し易いからである。
また、前記光学測定部が、前記第2の容器の外部から内部に入射光を入射させるための光入射部と、前記第2の容器の内部から外部に出射光を出射させるための光出射部とを備えることが好ましい。
このような光入射部及び光出射部は、光学的に透明な材料または可視光の吸収を実質的に有していない材料で形成されていることが好ましい。例えば、石英やガラス、あるいはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。デバイスを使い捨てにする場合には、コストの観点からポリスチレンが好ましい。
【0015】
また、前記電極は一対の電極であることが好ましい。このような構成によれば、例えば試料の導電率を測定することにより、試料中に含まれる塩の濃度を知ることができる。
電極の材料としては、金、白金、パラジウムあるいはそれらの合金または混合物、及びカーボンのいずれかを少なくとも含むものが好ましい。これらの材料は化学的、電気化学的に安定であり、安定した測定を実現することができる。
また、上記電極は、試料中に含まれる特定の化合物またはイオンの濃度を測定するための電極であることが好ましい。このような構成によれば、試料中の特定の化合物の濃度を知ることができる。例えば、ガラス電極などを用いるとナトリウムイオンの濃度を測定することができる。
【0016】
さらに、上記電極は、試料中に含まれる特定のイオンに感応する膜(イオン感応膜)を備えた電極であることが好ましい。このような構成によれば、試料中の特定イオンの濃度を知ることができる。
ここで、イオン感応膜は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、水素イオンなどのイオンのうちいずれかを選択的に透過させる機能を有するものを用いることができる。
【0017】
イオン感応膜を構成する化合物は、透過させたいイオンに応じて公知の化合物を用いることができる。例えば、ナトリウムイオンの場合、ビス[(12−クラウン−4)メチル]2,2−ジベンゾマロネート(Bis[(12−crown−4)methyl]2,2−dibenzomalonate)等、カリウムイオンの場合、ビス[(ベンゾル5−クラウン−5)4−メチル]ピメレート(Bis[(benzo15−crown−5)4−methyl]pimelate)等、リチウムイオンの場合、フォスフォドデシル−14−クラウン−4(phosphododecyl−14−crown−4)等、マグネシウムイオンの場合、4,13−ビス[N−(1−アダマンチル)カルバモイルアセチル]−8−テトラデシル−1,7,10,16−テトラオキサ−4,13−ジアザシクロオクタデカン(4,13−bis[N−(1−adamantyl)carbamoylacetyl]−8−tetradecyl−1,7,10,16−tetraoxa−4,13−diazacyclooctadecane)等、カルシウムイオンの場合、4,16−ビス(N−オクタデシルカルバモイル)−3−オクトブチリル−1,7,10,13,19−ペンタオクサ−4,16−ジアザシクロヘンイコサン(4,16−bis(N−octadecylcarbamoyl)−3−octbutyryl−1,7,10,13,19−pentaoxa−4,16−diazacyclohenicosane)等、塩化物イオンの場合、2,7−ジ−t−ブチル−9,9−ジメチル−4,5−ビス(N−n−ブチルチオウレイレン)キサンテン(2,7−Di−tert−butyl−9,9−dimethyl−4,5−bis(N−n−butylthioureylene)xanthene)等、アンモニウムイオンの場合、2,6,13,16,23,26−ヘキサオクサヘプタシクロ[25.4.4.47,12.417,22.01,17.07,12.017,22]トリテトラコンタン(2,6,13,16,23,26−hexaoxaheptacyclo[25.4.4.47,12.417,22.01,17.07,12.017,22]tritetracontane)等のイオン選択性を有する包接化合物を用いることができる。いずれも市販品として、例えば(株)同仁化学研究所から入手することができる。
【0018】
電極上にイオン感応膜を形成する方法としては、例えば、前記包接化合物と、可塑剤と、アニオン排除剤と、PVC等の高分子化合物とを有機溶剤に溶解し、得られた混合溶液を電極上に塗布して風乾等により乾燥させる方法がある。
【0019】
上記電極は、シリコンなどによって形成される電界効果型トランジスタ(FET)の電極であってもよい。また、電位の安定した参照電極、例えばAg/AgClや飽和カロメル電極を、一方の電極として使用したり、第三の電極として他の電極と組み合わせて使用したりすることが好ましい。
【0020】
また、電極上には酵素が担持されていることが好ましい。酵素は特定の化合物の反応を高選択的に触媒するため、試料中の特定の化合物に対して選択性の高い測定を実現することができる。酵素は測定の対象とする化合物に応じて選択性・反応性の点から従来公知の最適なものが用いられる。
酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ等を挙げることができる。これら酵素は市販品を入手することができる。
【0021】
本発明においては、酵素は試料に溶解せず、電極に固定化されていることが好ましい。このような構成によれば、試料の量にばらつきがあっても精度の良い測定が可能となる。
また、必要に応じて、酵素と電極との間の電子輸送を可能にする電子伝達体、例えばフェリ/フェロシアン化物イオン、フェロセン誘導体、ルテニウム錯体、オスミウム錯体、あるいはキノン誘導体などを用いてもよい。酵素を電極に固定化する場合には、電子伝達体も併せて固定化することがより好ましい。
【0022】
また、上記電極は、第1の容器内であって、測定デバイスの外部から内部に入射した入射光及び測定デバイスの内部から外部に出射する出射光の光路とは異なる位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、電極が入射光及び出射光を遮ることがなくなり、また、第2の容器内には電極が設けられていないため、第2の容器内に供給された試料について良好な光学測定を行うことができる。
【0023】
本発明の測定デバイスは、さらに、試薬が酵素または抗体を含んでいることが好ましい。試薬は、第2の容器内に乾燥状態で備えられ、第2の容器内に試料が供給されたときに、試料に溶解するように配置されていることが好ましい。
例えば、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬の溶液を含浸させた後乾燥させることにより試薬を担持させ、その多孔性の担体を第2の容器内に設ければよい。また、第2の容器を構成する壁面に、試薬の溶液を直接塗布した後乾燥することにより試薬を配置してもよい。
【0024】
試薬としての抗体は、公知の方法により産生させることができるので、試薬を作製しやすいという点で有利である。例えば、アルブミン等の蛋白や、hCG、LH等のホルモンを抗原として、マウス・ウサギ等に免疫することにより、前記抗原に対する抗体を得ることができる。
抗体としては、アルブミン等の尿中に含まれる蛋白に対する抗体や、hCG、LH等の尿中に含まれるホルモンに対する抗体等が挙げられる。必要に応じて抗原と抗体による凝集反応を促進させるポリエチレングリコールなどの化合物を測定デバイス内の抗体近傍に共存させてもよい。
【0025】
試薬としての酵素は、特定の化合物の反応を高選択的に触媒するため、試料中の特定の化合物に対して選択性の高い測定を実現することができる。酵素は測定の対象とする化合物に応じて選択性・反応性の点から従来公知の最適なものが用いられる。
酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼあるいはその他酸化還元酵素などを挙げることができる。この場合、酵素反応の結果呈色あるいは消色する色素あるいは色素源を酵素と共存させておくと光学測定が安定する。これら酵素は市販品を入手することができる。
【0026】
また、本発明の測定装置は、上記測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、前記測定デバイスの前記第2の容器に入射する入射光を出射するための光源と、前記第2の容器から出射した出射光を受光するための受光部と、前記電極に電圧を印加するための電圧印加部と、前記電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部とを備える。
ここで、上記測定デバイスは着脱可能な状態で上記測定装置に取付けられることが好ましい。また、測定デバイスは使い捨てであることが好ましい。
【0027】
また、本発明の測定装置は、前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスにおける前記第1の容器及び前記第2の容器の少なくとも一方に前記試料を吸引により供給するための吸引部をさらに備えることが好ましい。
ここで、上記測定デバイスは、第1の容器及び/又は第2の容器内に試料を吸引するための吸引口をさらに備えていることが好ましい。このような構成によれば、測定デバイス取付け部に測定デバイスの吸引口が接続されるように測定デバイスを取付けた状態で、吸引部を用いて、測定デバイスの第1の容器及び/又は第2の容器内に容易に試料を供給することができる。
【0028】
上記デバイスにおいては、第1の容器に第1の吸引口が設けられており、第2の容器に第2の吸引口が設けられていてもよい。この場合、第1の吸引口と第2の吸引口とが互いに隣接する位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、測定デバイスを単一の測定デバイス取付け部に取り付けることにより、吸引部を用いて第1の吸引口及び第2の吸引口を通してそれぞれ第1の容器及び第2の容器内に試料を同時に吸引することができる。
【0029】
吸引部は、手動によるものであっても自動によるものであってもよく、例えば、従来のシリンジ、ディスペンサー等と同様のピストン機構が挙げられる。
これらのピストン機構においてピストンを作動させる方法は、手動であっても、自動であってもよいが、自動化することが、作業者の負担を軽減することができるので好ましい。自動化する方法としては、ピストンをモーターで作動させる方法がある。モーターとしては、ステップモーター、直流モーター等がある。
【0030】
ステップモーターは入力された1パルス信号あたりに特定の回転角を回転するモーターであり、パルス数で回転角度を決定できるため、位置決めのためのエンコーダーを必要としない。即ち、入力パルス数により、ピストンの動作距離を制御することができる。
モーターの回転運動は、歯車機構と雄ネジ及び雌ネジを組み合わせた直進機構等とを用いて直進運動へ変換することにより、ピストンを作動させる。直流モーターの場合も回転運動を直進運動へ変換する方法は同様であるが、直流モーターの場合は、ピストンの動作距離を制御するために、モーターの回転位置を検出するエンコーダーが必要となる。また、リニア型のステップモーターもあり、このタイプのモーターは、モーター内に雄ネジと雌ネジを組み合わせた直進機構が組み入れられており、入力パルス数に依存して、棒状の可動部が直進運動するように構成されている。このため、この棒に直接ピストンを連結すればよく、構成が簡単となる。
【0031】
また、例えば測定デバイスの第2の容器への試料の供給には上記吸引部を用い、第1の容器への試料の供給には毛細管現象を利用してもよい。この場合、第1の容器を構成する部材の内表面を親水性にすることが好ましい。このような構成によれば、試料を円滑、均一または迅速に第1の容器に供給することができる。
【0032】
また、本発明の測定方法は、
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程と、を含む。
【0033】
ここで、本発明の測定デバイスにおいては、前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されているのが好ましい。さらに、前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき自動的に前記工程(F)を行うことが好ましい。
このような構成によれば、第1の試料供給口及び第2の試料供給口から供給された試料は、電極よりも先に試薬保持部に到達する。したがって、電極に試料が到達したことを電極からの電気信号の変化を検出することにより検知し、その検出に基づき試料に入射光を自動的に照射するようにすると、試料不足により試料中に試薬が溶解する前に誤って光学測定が行われることを防止することができる。
【0034】
また、測定デバイスにおいて、第1の容器は空気孔をさらに備えていてもよい。空気孔は、電極を挟んで第1の試料供給口とは反対側に位置する部分に設けられていることが好ましい。この構成によると、第1の容器がキャピラリ(毛細管)として機能し、試料が、毛細管現象により第1の試料供給口から電極まで供給される。そのため、第1の試料供給口を試料と接触させるだけで第1の容器内に試料を容易に供給することができる。
【0035】
また、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられており、前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき、前記工程(B)において前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を吸引することが好ましい。
このような構成によれば、電極において電気信号の変化を検出することにより、測定デバイスの第1の試料供給口及び第2の試料供給口が試料中に浸されたことを検知できるので、第2の試料供給口が試料中に浸される前に誤って試料の吸引が行われるのを防ぐことができる。
また、本発明の測定デバイスにおいて、前記第1の容器と前記第2の容器とが、前記第2の試料供給口を介して互いに連通していてもよい。このとき、前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器から前記第1の容器へ前記試料が流れることを防止する弁をさらに備えることが好ましい。
【0036】
ここで、さらに、第1の被検物質の定量結果及び第2の被検物質の定量結果のいずれか一方に基づいて、他方の定量結果を補正することが好ましい。
このようにすると、互いに関係のある複数の検査項目について測定を行うことにより、測定結果の精度を向上させることができる。
【0037】
本発明における試料としては、血清、血漿、血液、尿、間質液、あるいはリンパ液などの体液、培地の上清液等の液体の試料が挙げられる。または、上記体液中の特定の成分と反応する試薬、例えば酵素、抗体、もしくは色素などを、体液と混合したものを、試料として測定デバイスに供給してもよい。
これらのなかで、試料として尿が好ましい。試料が尿であると、非侵襲的に在宅での日常の健康管理を行うことができる。
【0038】
第1の被検物質としては、アルブミン、hCG、LH、CRP、IgG等が挙げられる。また、第2の被検物質としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、グルコース等が挙げられる。
健康管理の最初の段階で行われる尿の定性検査では、pH、比重、蛋白、糖、潜血、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球、アスコルビン酸、アミラーゼ、食塩の12項目について検査が行われる。また、腎機能を分析するという目的では微量アルブミンが、妊娠検査・排卵検査等のマーカーとしてはhCG、LH等のホルモンがある。
【0039】
これらの検査項目を大別すると、蛋白や、微量アルブミン、hCG、LH等のホルモンは、抗原抗体反応に基づいた光学測定が適している。抗原抗体反応に基づいた光学測定としては、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫凝集法等の、抗原抗体反応に基づいて試料中に生じた濁りを測定するものが挙げられる。
一方、尿中の塩分(ナトリウムイオン、カリウムイオン)、pH、糖などは主に電気化学測定に基づいて測定される。特に尿中の糖分や塩分は、食事等の生活習慣を反映するものであり、健康管理に関するソリューションを提案するために重要な情報である。
【0040】
塩分及びpHは、抗原抗体反応に影響を与える。例えば、高塩濃度状態における抗原抗体反応は解離性が強く反応量が少なくなるため、負の測定誤差をもたらす。尿中の塩分及びpHは日内変動・日外変動・個体差があるので、生じる誤差を予測することは困難である。しかしながら、電気化学測定により塩分値やpH値を得、光学測定において種々の塩分濃度やpH値における出射光強度と抗原濃度との関係を表すデータを検量線として参照することにより、抗原濃度の測定誤差を補正することができる。
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0042】
[実施の形態1]
1.測定デバイス
以下、図面を用いて、本発明の測定デバイスの一実施の形態を詳細に説明する。ここでは、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイスの構造について図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明の測定デバイスの一実施の形態を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA−A断面図である。また、図3は、図1及び2に示す本発明の測定デバイスの分解斜視図である。
【0043】
本実施の形態の測定デバイス100は、矢印Pの方向に長さを有し、透明のポリスチレン製である第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を備えている。
第1の部材101と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間の部分が第1の容器104として機能する。そして、第1の容器104として機能する空間の一方の開放端が第1の試料供給口105として機能し、他方の開放端が第1の吸引口106として機能する。
【0044】
また、第3の部材103上には、一対の導電部が設けられている。さらに、一対の導電部上には、一対の電極201a、202aおよび一対の接続部201b、202bが第1の容器104内に露出するように、絶縁性の樹脂からなるカバー203が設けられている(図3参照)。
さらに、同様に、第2の部材102と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間の部分が第2の容器107として機能する。そして、第2の容器107として機能する空間の一方の開放端が第2の試料供給口108として機能し、他方の開放端が第2の吸引口109として機能する。
【0045】
また、第2の容器107内には、第2の部材102上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。そして、第2の試料供給口108から試薬保持部110との距離Xよりも、第1の試料供給口105から電極201a、202aまでの距離Yの方が長くなるような位置(即ち、関係式:X<Yを満たす位置)に、試薬保持部110が配置されている。
【0046】
本実施の形態の測定デバイス100における試薬保持部110は、図3に示すように、第2の部材102上であって第3の部材103と対向する面102a上に設けられている。
第2の部材102の外面は3つの面102b、102c及び102dで構成されているが、裏側に試薬保持部110が形成された第1の面102bを挟む位置にある2つの面102c、102dのうちの一方が光入射部111として機能し、他方が光出射部112として機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0047】
ここで、本実施の形態に係る測定デバイス100が使用されるときは、後述するように、測定デバイス100の一部を例えば容器内に採取された尿に浸漬した後、測定装置によって第1の吸引口106及び第2の吸引口109から尿を吸引して第1の容器104及び第2の容器107内に供給する。
したがって、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108付近には、測定デバイス100に前記試料に浸漬するための目安となる目安線115が設けられている。このような目安線115があると、測定デバイス100を試料である尿に浸す工程において、測定デバイス100を当該目安線115の部分まで前記試料に浸漬することができることとなり、確実に尿を第1の容器104及び第2の容器107内に供給することができるとともにより確実に測定を行うことができる。
【0048】
目安線115の太さや形状は目視可能な程度であれば特に制限はない。図1においては測定デバイス100の1つの側面のみに設けられているが、すべての側面にわたって目安線を設けてもよい。
このような目安線115は、例えば、測定デバイス100の表面に印刷をすることによって形成してもよく、また、溝又はリブを設けることによって形成してもよい。
【0049】
次に、本実施の形態の測定デバイス100の作製方法について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る測定デバイスの分解斜視図である。
第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103は、それぞれ透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。成型には、公知の樹脂成型技術を用いればよい。
【0050】
第1の部材101及び第2の部材102はそれぞれ凹部を有し、板状である第3の部材103を挟んで互いに組み合わされることにより、第1の容器104及び第2の容器107を一体的に構成する。
第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103の寸法は、例えば、いずれも幅(図3のA)10mm、長さ(図3のB)84mm、厚み1mmとすればよい。
また、第1の部材101及び第2の部材102の高さ(図3のC)は、例えば、いずれも6mmとすればよい。
【0051】
次に、第2の部材102の凹部の底面、即ち面102aに試薬保持部110を形成する。
例えば、光学測定のための試薬であるヒトアルブミンに対する抗体の水溶液を、マイクロシリンジなどを用いて第2の部材102の凹部の底面(面102a)に一定量滴下することにより塗布し、これを室温〜30℃程度の環境に静置して水分を蒸発させることにより、試薬を乾燥状態で担持することができる。例えば、濃度が8mg/dLの上記抗体の水溶液を用い、0.7mLの滴下量で、面積が5cm2の部分に滴下すればよい。
【0052】
塗布する試薬を含む水溶液の濃度及び量は、必要とするデバイスの特性や第2の部材102における形成位置の空間的な制限に応じて適切に選択することができる。また、第2の部材102における試薬保持部110の位置や面積は、試薬の試料に対する溶解性や光学測定部の位置などを鑑みて適宜選択することができる。
なお、ヒトアルブミンに対する抗体は従来公知の方法により得ることができる。例えば、ヒトアルブミンを免疫したウサギ抗血清を、プロテインAカラムクロマトグラフィーにより精製した後、透析チューブを用いて透析することにより、抗ヒトアルブミン抗体が得られる。
【0053】
一方、第3の部材103の第1の部材101側に位置する面103a上には、一対の導電部を配置する。例えば一対の導電部と同様の形状の空隙を有するアクリル樹脂製のマスクを第3の部材103上に配置し、それを介して金をスパッタした後、マスクを除去することにより一対の導電部を形成することができる。スパッタに代えて、蒸着でも同様の手順で形成することができる。
一対の導電部の寸法は特に制限されないが、例えば、それぞれ幅2mm程度、長さ14mm程度、厚み5μm程度であればよい。電極201a、202aおよび接続部201b、202bの大きさ(長さ)を規定するために、導電部の両端が露出し、導電部の一部が覆われるように、絶縁性の樹脂からなるカバー203を貼付する。カバー203としては、例えば、幅10mm程度、長さ5mm程度、厚さ0.1mm程度の、アクリル系の接着剤が塗布されたPET製のフィルムを用いることができる。電極201a、202aの長さが、例えばそれぞれ4mm、接続部の長さが、例えばそれぞれ5mmとなるようにカバー203を配置する。
導電部、電極、接続部の材料、面積、厚さ、形状及び位置等は、必要とするデバイスの特性、光学測定系の位置などに鑑みて、適宜調整することができる。
【0054】
また、電極201a、202aの表面には、酵素であるグルコースオキシダーゼ及び電子伝達体であるオスミウム錯体を、公知の方法を用いて固定化担持する。
例えば、塩化ビスビピリジンオスミウムが配位結合したポリビニルイミダゾールの溶液をグルコースオキシダーゼの溶液と混合して電極201a、202a上に塗布し、電極201a、202a上の上記溶液へアミン架橋剤であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して混合する。1時間程度静置の後、蒸留水を用いて電極201a、202aの表面を洗浄する。
【0055】
上記のようにして得られる第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を、図3に示す破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス100を組み立てる。第1の部材101と第3の部材103との接合部分、および第2の部材102と第3の部材103との接合部分に、例えばエポキシ樹脂などの接着剤を塗布した後、各部材を張り合わせ静置し、乾燥させることにより測定デバイス100を組み立てる。
また、接着剤を使用せずに、第1の部材101、第2の部材102及び第3の部材103を貼り合わせた後、市販の溶着機を用いて接合部分を熱または超音波によって溶着させてもよい。以上のようにして図1及び2に示す測定デバイス100を得ることができる。
【0056】
2.測定装置
次に、図面を用いて、本発明の測定装置の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る測定装置の構成について図4及び5を用いて説明する。図4は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図であり、図5は本実施の形態の測定装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施の形態の測定装置300は、測定デバイス100を取り付けるための測定デバイス取付け部301を有し、測定デバイス取付け部301には、測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の吸引口109に着脱可能に接合するためのデバイス装着口(図示せず)、並びに接続部201b、202bに電気的に接続するための端子(図示せず)を有する。また、測定結果が表示されるディスプレイである表示部302、試料吸引開始ボタン303、及び測定デバイス取外しボタン304が設けられている。
【0057】
デバイス装着口の内側には2つの凸部が設けられ、測定デバイス100を取り付ける際に凸部がそれぞれ第1の吸引口106及び第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製のリング状の封止材等を上記凸部の周囲に設け、凸部と第1の吸引口106及び第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。上記封止材は線状であってもよく、また、上記凸部そのものがテフロン(登録商標)やイソプレンゴム等の弾性を有する樹脂で構成されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、測定装置300の内部には、測定デバイス取付け部301に取り付けられた測定デバイス100の光学測定部に入射する入射光を出射するための光源407と、光学測定部から出射した出射光を受光するための受光器408と、測定デバイス100の電極201a、202aに電圧を印加するための電圧印加部402と、電極201a、202aからの電気信号を測定するための電気信号測定部405とが設けられている。
さらに測定装置300の内部には、受光器408により受光された出射光及び電気信号測定部405により測定された電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、試料中に含まれる被検物質を検出または定量するための演算部であるCPU401と、測定デバイス100の第1の容器104及び第2の容器107内に試料を吸引するための吸引部であるピストン機構404とが設けられている。
【0059】
本実施の形態における光源407としては、例えば650nmの波長の光を出射する半導体レーザーを用いることができる。これに代えて、ライトエミッティングダイオード(LED)などを用いてもよい。
なお、本実施の形態においては免疫比濁法による測定を適用することを想定して、650nmの照射及び受光波長を選択するが、この波長は測定法や測定対象に応じて適宜選択することができる。
【0060】
本実施の形態における受光器408としては、例えばフォトダイオードを用いることができる。これに代えて、受光器408としては、フォトマルチメーター、電荷結合型素子(CCD)等を用いてもよい。
また、本実施の形態におけるピストン機構404は、ピストンをリニア型のステップモーターで作動させる構成となっている。
【0061】
さらに、測定装置300の内部には、第1の被検物質であるヒトアルブミンの濃度と受光器408により受光される出射光強度との関係を表す第1の検量線に関するデータと、第2の被検物質であるグルコースの濃度と電気信号測定部405により測定される電気信号との関係を表す第2の検量線に関するデータとが格納されている記憶部であるメモリ409が設けられている。
【0062】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイス100及び測定装置300を用いて試料中の被検物質を測定する方法を、図4及び5を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の吸引口109を、測定デバイス取付け部301内のデバイス装着口(図示せず)に接合し、測定デバイス取付け部301に測定デバイス100を取付ける。これにより、測定デバイス100の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部301内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0063】
このとき、測定装置300内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス100の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス100の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
【0064】
次に、例えば便器内に設けられた受尿容器又は紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス100を少なくとも目安線115の位置まで浸漬し、測定デバイス100の第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿に浸漬させる。
【0065】
ここで、ユーザが、少なくとも第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が尿に浸漬していることを確認し、その状態で、試料吸引開始ボタン303を押して測定装置300内に設けられた吸引手段の一部であるピストン機構404が作動させ、これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス100の第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108から第1の容器104及び第2の容器107内に、試料の液面がカバー203の位置になるように、それぞれ所定量(例えば、3mL)の尿が吸引される。
このとき、試料を吸引した時の位置にピストンを保持することにより、第1の容器104及び第2の容器107内に尿が保持され、第1の試料供給口105または第2の試料供給口108から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
【0066】
第1の容器104内に供給された尿が電極201a、202aに接触すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。
この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また、上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部302に計時の開始が表示される。この表示の後は、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿中から引き上げてもよい。
【0067】
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
【0068】
光源407から出射して測定デバイス100の光入射部111を通して第2の容器107内に入射し、尿中を透過及び散乱し、光出射部112から出射した光を、所定時間の間(例えば、3分間)、測定装置300内に設けられた受光器408により受光する。
CPU401はメモリ409に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す第1の検量線に関するデータを読み出し、当該第1の検量線を参照することによりCPU401が受光器408により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。
得られたヒトアルブミン濃度は表示部302に表示される。表示部302にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことを知ることができる。
【0069】
一方、計時部406からの信号によって、上記電圧の印加から所定時間(例えば、1分)経過したことをCPU401が判断すると、電極201aと電極202aとの間で流れる電流等の電気信号を電気信号測定部405で測定する。CPU401はメモリ409に格納されている電気信号とグルコース(尿糖)濃度との関係を表す第2の検量線に関するデータを読み出し、それを参照することによりCPU401が測定された電気信号を尿中のグルコース濃度に換算する。
得られたグルコース濃度は表示部302に表示される。表示部302にグルコース濃度が表示されることにより、ユーザはグルコース濃度測定が完了したことを知ることができる。好ましくは、得られたグルコース濃度及びヒトアルブミン濃度は、計時部406により計時された時刻とともにメモリ409に保存される。
【0070】
最後に、ユーザが測定デバイス取外しボタン304を押すことにより、測定デバイス取外し機構410が作動して、ピストン機構404内のピストンを動かすことにより、第1の容器104及び第2の容器107内の尿が第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108から便器内や紙コップ等の容器内に排出された後、測定デバイス100が測定装置300から自動的に取り外される。
なお、このようなデバイス取外し及び試料排出の機構を測定装置に設けずに、ユーザが手動で測定デバイス100を測定デバイス取付け部301から取り外してもよい。
【0071】
得られた尿糖濃度及びヒトアルブミン濃度は、記録部411によりSDカードなどの記憶媒体に記録することができる。取り外し可能な記憶媒体に保存することにより、測定結果を測定装置300から容易に取り出すことができるので、前記記憶媒体を分析専門業者に持参もしくは郵送して、分析を依頼することができる。
また、得られた尿糖濃度及びヒトアルブミン濃度は、送信部412により測定装置300外に送信することができる。これにより、測定結果を、病院内の分析関連部門または分析関連業者等に送信し、それを前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析することができるので、測定から分析までの時間を短縮することができる。
さらにまた、前記分析関連部門または分析関連業者などにおいて分析した結果を受信するための受信部413を備えている。これにより、分析結果を迅速にユーザにフィードバックすることができる。
【0072】
以上により第1の容器104及び第2の容器107内へ試料を1回供給することにより、1つの測定デバイス100を用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。
また、測定デバイス100の第1の容器104内に電極201a、202aを設け、第2の容器107内に試薬保持部110を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電気化学測定部に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0073】
また、第2の試料供給口108と試薬保持部110との距離よりも、第1の試料供給口105と電極201a、202aとの距離の方が長くなるような位置に、試薬保持部110が配置されており、電極に試料が到達したことを電極からの電気信号の変化を検出することにより検知し、その検出に基づき試料に入射光を自動的に照射するようにしているので、試料不足により試料中に試薬が溶解する前に誤って光学測定が行われることを防止することができる。
【0074】
以上においては、本発明の実施の形態の一例について説明したが、測定デバイス100の形状は、本発明の構成要件を満たし、かつ本発明の効果を得られるものであれば、上記実施の形態において述べたものに限定されない。
ここで、図6は上記実施の形態の測定デバイスの変形例を示す斜視図であり、図7は図6におけるB−B部分の断面図である。それぞれ図1及び2と同様の構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図6に示すように、本変形例の測定デバイス100は、内部に第1の容器104及び第2の容器107として機能する空間を有する直方体形状を有している。また、本変形例の測定デバイス100は、第1の部材101及び第2の部材102を備え、第1の部材101及び第2の部材102の側面に第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108がそれぞれ設けられている。
【0075】
[実施の形態2]
1.測定デバイス
次に、本発明の測定デバイスの実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイスの構造について図8〜10を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る測定デバイスの斜視図であり、図9は図8におけるC−C断面図である。また、図10は図8及び9に示す測定デバイス600の分解斜視図である。なお、図1〜3に示された構成要素と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0076】
本実施の形態の測定デバイス600は、透明のポリスチレン製であるカバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103を備えている。
空気孔603が設けられたカバー部材601と、スリット604が設けられたスペーサ602と、第3の部材103とを組み合わせることにより、第1の試料供給口105が開放した空間が形成される。この空間が第1の容器104として機能する。
【0077】
第3の部材103上には、一対の導電部201、202が設けられている。一対の導電部201、202のうち、第1の容器104内に露出している部分が一対の電極201a、202aとして機能し、測定デバイス600の外側に露出している部分が一対の接続部201b、202bとして機能する。第1の容器104はキャピラリ構造となっており、試料が第1の試料供給口105に接触すると、第1の容器104内の空気が空気孔603から排出され、毛細管現象により試料が第1の試料供給口105から第1の容器104内に供給される。
カバー部材601及びスペーサ602の寸法は、例えば、いずれも幅(図10のD)3mm、長さ84mm、厚み300μmとし、スリット604の幅は、例えば1mmとすればよい。
【0078】
実施の形態1と同様に、第2の部材102と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、その空間が第2の容器107として機能する。第2の容器107として機能する空間の一方の開放端が第2の試料供給口108として機能し、他方の開放端が第2の吸引口109として機能する。
そして、第2の容器107内には、第2の部材102上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。第2の試料供給口108と試薬保持部110との距離Xよりも、第1の試料供給口105と電極201a、202aとの距離Yの方が長くなるような位置に、試薬保持部110が配置されている。第2の部材102及び第3の部材103の寸法は、実施の形態1と同じでよい。
【0079】
本実施の形態の測定デバイス600においては、試薬保持部110は、第2の部材102上であって第3の部材103と対向する面102a上に設けられている。第2の部材102の外面を構成する3つの面のうち、裏側に試薬保持部110が形成された第1の面102bを挟む位置にある2つ面102c、102dの一方が光入射部111、他方が光出射部112としてそれぞれ機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0080】
次に、本実施の形態の測定デバイス600の作製方法について図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る測定デバイスの分解斜視図である。
実施の形態1と同様に、カバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103は透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。
次に、第2の部材102の凹部の底面102aに試薬保持部110を形成する。試薬保持部110の形成方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0081】
一方、第3の部材103上には、一対の導電部201、202を形成する。第3の部材103を、カバー部材601及びスペーサ602と組み合わせたときに、スペーサ602に設けられたスリット604により形成される第1の容器104内に導電部の一部が露出するような位置に、導電部201、202を配置する。ここでは、導電部201、202をそれぞれL字状及び逆L字状とした。
導電部201、202の形成方法は、絶縁性の樹脂からなるカバーを貼付しない点以外は実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0082】
次に、第3の部材103、カバー部材601及びスリット604で構成される第1の容器104の内面は、親水性処理しておくのが好ましい。
例えば、第1の容器104の内面を構成する第3の部材103、カバー部材601及びスリット604の部分(面)の表面全体に、0.1%レシチン/トルエン溶液を0.05mL滴下し、塗布する。2〜3分間大気中に静置し、トルエン溶媒を蒸発させることにより、上記表面全体に親水性を付与することができる。
また、レシチン溶液の代わりに、エチレングリコールアルキルエーテル(TritonX−100)などの界面活性剤の水溶液を用いても、同様の親水性処理を行うことができる。
【0083】
上記のようにして得られるカバー部材601、スペーサ602、第2の部材102及び第3の部材103を、図10に記した破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス600を組み立てる。接合方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0084】
2.測定装置
次に本実施の形態の測定装置800について図11及び5を用いて説明する。図11は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図である。なお、図4に示す実施の形態1の測定装置と共通する構成には同じ符号を用い、説明を省略する。
本実施の形態の測定装置800は、測定デバイス600の第2の吸引口109側の端部に着脱可能に接合することによって測定装置800に測定デバイス600を取付けることができる。測定デバイス取付け部301はデバイス装着口(図示せず)を有し、測定結果が表示される表示部302、試料吸引開始ボタン303、及び測定デバイス取外しボタン304が設けられている。
【0085】
デバイス装着口の内側には凸部が設けられて、測定デバイス600を取り付ける際に凸部が第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、実施の形態1と同様に、例えばテフロン(登録商標)やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製の封止リングを上記凸部の周囲に設け、凸部と第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。
測定装置800の内部の構造については実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0086】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイスを用いて試料中の被検物質を測定する方法について図11及び5を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定装置800の測定デバイス取付け部301に測定デバイス600の第2の吸引口109が接合するように、測定デバイス600を取付ける。これにより、測定デバイス600の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部301内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0087】
このとき、測定装置800内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス600の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス600の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
なお、本実施の形態の場合、空気孔603が測定装置800の筐体により塞がれることがないようにしている。
【0088】
次に、便器内に設けられた受尿容器または紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス600のうち少なくとも第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を浸漬させる。このようにすると、第1の試料供給口105から、毛細管現象によって試料が第1の容器104に導入される。
この時、第1の容器104内の空気は空気孔603から排出され、同時に第1の容器104は空気孔603近傍まで試料で満たされる。本実施の形態では、第3の部材103、カバー部材601及びスリット604内面を親水処理しているので、試料は第1の容器104内へ円滑かつ均一に供給される。
【0089】
第1の容器104内に供給された尿が、電圧が印加された2つの電極201a、202aに到達すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。この検知により、CPU401は第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が試料に浸漬したと判断し、ピストン機構404を作動させる。
これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス600の第2の試料供給口108から第2の容器107内に所定量(例えば、3mL)の尿が吸引される。ピストンをその位置に保持することにより、第2の容器107内に尿が保持され、第2の試料供給口108から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
【0090】
また、この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部302に計時の開始が表示される。この表示の後は、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108を尿中から引き上げてもよい。
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
【0091】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
以降の、受光器408により受光された出射光強度を用いたヒトアルブミン濃度測定、電気信号測定部405で測定した電気信号を用いたグルコース濃度測定の手順等は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0092】
以上により第1の容器104及び第2の容器107内へ試料を1回供給することにより、実施の形態1と同様に、1つの測定デバイス600を用いて、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことが可能である。
測定デバイス600の第1の容器104内に電極201a、202aを設け、第2の容器107内に試薬保持部110を設けることにより、光学測定に必要な試薬が電気化学測定部に拡散し、電気化学測定に影響を及ぼすことがないので、複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことができる。
【0093】
また、第1の容器104をキャピラリ構造とし、毛細管現象により試料が第1の試料供給口105から第1の容器104内に供給されるようにしているので、電極201a、202aからの電気信号の変化により、第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108が試料に浸漬したことを検知することができる。その検知に伴い自動的にピストン機構404を作動させることにより、第2の試料供給口108が試料に接触する前に誤って試料の吸引が起るのを防ぐことができる。
また、試料吸引開始ボタン303を押す操作を省略することができるので、ユーザの作業を低減することができる。また、測定装置800は試料吸引開始ボタン303を備えていなくてもよい。
【0094】
なお、本実施の形態においては、カバー部材601の空気孔603を、金型を用いた成形によって作製したが、これに代えて、空気孔603を有していない板状のカバー部材601を成形により作製した後、空気孔603を切削や打ち抜きなどによって形成させてもよい。
また、第1の容器104内面が親水性を有するように、第3の部材103及びカバー部材601の表面、並びにスリット604の内面に対して親水性処理を施したが、これに代えて、第3の部材103、カバー部材601及びスペーサ602を、親水性を有する材料で形成してもよい。親水性を有する材料としては、例えばガラスなどを挙げることができる。
【0095】
さらに、本実施の形態では、第1の容器104を形成するために、スリット604が設けられたスペーサ602を用いたが、これに限定されない。図12は、本実施の形態の測定デバイスの変形例を示す分解斜視図である。図10と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図12に示すように、スペーサ602として、2本の矩形状(レール状)の板部材を用いてもよい。この場合、カバー部材601は空気孔603を備えていなくともよい。カバー部材601とスペーサ602と第3の部材103とを組み合わせることにより、両端が開放した空間が形成され、第1の試料供給口105と反対側の開口部が空気孔603として機能する。
【0096】
測定デバイス600の形状については、本願発明の構成要件を満たし、かつ本願発明の効果を得られるものであれば、上記実施の形態において述べたものに限定されない。図13は、本実施の形態の測定デバイスの変形例を示す斜視図であり、図14は図13におけるD−D断面図である。図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図13及び14に示すように、本変形例の測定デバイス600は、内部に第1の容器104として機能する空間を有する第1の直方体と、内部に第2の容器107として機能する空間を有する、第1の直方体よりも小さい第2の直方体とが組み合わさった形状を有している。また、本変形例の測定デバイス600は、第2の部材102、カバー部材601、スペーサ602及び第3の部材103を備え、カバー部材601及び第2の部材102の側面に第1の試料供給口105及び第2の試料供給口108がそれぞれ設けられている。
【0097】
[実施の形態3]
次に、本発明の測定デバイスの実施の形態3について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に、試料が尿で、第1の被検物質がヒトアルブミンであり、第2の被検物質がグルコースである場合について説明する。
まず、本実施の形態に係る測定デバイス700の構造について図15〜18を用いて説明する。図15は、本実施の形態に係る測定デバイス700の斜視図であり、図16は図15におけるE−E断面図である。また、図17は本実施の形態に係る測定デバイス700の上面図であり、図18は測定デバイス700の分解斜視図である。なお、図1〜3に示された構成要素と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0098】
本実施の形態の測定デバイス700は、透明のポリスチレン製である第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を備えている。第1の部材701の外面は3つの面701a、701b、および701cで構成されている。第1の面701cには、第1の試料供給口105が設けられている。
第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を図18の破線で示す位置関係で組み合わせることで、第3の部材703がスペーサとなって2つの空間が形成される。2つの空間のうち、第1の試料供給口105と連通する空間が第1の容器104、他方の空間が第2の容器107として機能する。
第3の部材703は、四角形の板状の部材の中央部分に、第1の容器104と第2の容器107とを連通する開口部705を有する。開口部705は、実施の形態1における測定デバイス100の第1の吸引口106及び第2の試料供給口108としての機能を有する。また、第3の部材703の中心には、第2の容器107側において開口部705を覆うように逆流防止用の弁704が備えられており、第2の容器107から第1の容器104への逆流を防ぐことができる。
【0099】
第2の部材702の内壁面702b上には、一対の導電部201、202が設けられている。一対の導電部201、202の一部は絶縁性の樹脂からなるカバー203で覆われている。一対の導電部のうち、第1の容器104内に露出している部分が一対の電極201a、202aとして機能し、第2の容器107内に露出している部分が一対の接続部201b、202bとして機能する。
【0100】
第1の部材701、第2の部材702の寸法は、例えば、いずれも幅(図18のA)10mm、長さ(図18のB)84mm、厚み1mmとすればよい。
また、第1の部材701及び第2の部材702の高さ(図18のC)は、例えば、いずれも3.5mmとすればよい。
そして、第2の容器107内には、第2の部材702の内壁面702a上に、光学測定のための試薬を保持する試薬保持部110が設けられている。
【0101】
第1の部材701の外面は3つの面701a、701b及び701cで構成されているが、対向する位置にある2つの面701a、701bのうちの一方の面において、第2の容器107を囲む部分が、光入射部111として機能し、他方の面において第2の容器107を囲む部分が、光出射部112として機能する。光入射部111と光出射部112とが本発明の光学測定部に相当する。
【0102】
次に、本実施の形態の測定デバイス700の作製方法について図18を用いて説明する。図18は、本実施の形態に係る測定デバイス700の分解斜視図である。
実施の形態1と同様に、第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703は透明のポリスチレン製であり、金型を用いた成形によって得ることができる。
【0103】
次に、第3の部材703の第2の容器107側の面上において、開口部705を覆うように、弁704を配置する。弁704は、天然ゴムや合成ゴムのような柔軟性を有する樹脂からなるのが好ましい。樹脂からなる弁704の周縁部の一部を第3の部材703に接着させ、残りの部分は接着しないようにして、第3の部材703の第2の容器107側の面上において、開口部705を覆うように、弁704を取り付ける。これにより、開口部705、及び弁704のうち第3の部材703と接着されていない部分を通して、第1の容器104から第2の容器107へ試料が流れる。より具体的には、第1の試料供給口105から第1の容器104中に試料が供給されると、供給された試料が下方から弁704を押し上げ、弁704の接着していない部分が上方に押し上げられて、図19に示すように弁704が変形する。これにより、矢印に示す方向に試料が流入することができ、試料が第2の容器107内に供給される。これに対して、図19中の矢印の向きと反対の方向、すなわち第2の容器107から第1の容器104へは、試料が流れない。このように、弁704は逆流防止弁として機能する。
【0104】
次に、第2の部材702の面702aに試薬保持部110を形成する。試薬保持部110の形成方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
さらに、第2の部材702の凹部の底面702bに一対の導電部201、202及びカバー203を形成する。導電部201、202及びカバー203の形成方法は、実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
上記のようにして得られる第1の部材701、第2の部材702及び第3の部材703を、図18に記した破線で示す位置関係をもって接合し、測定デバイス700を組み立てる。接合方法は実施の形態1と同じであるため省略する。
【0105】
2.測定装置
次に本実施の形態の測定装置900について図20及び21を用いて説明する。図20は、本実施の形態の測定装置を示す斜視図である。図21は、本実施の形態の測定装置の構成を示すブロック図である。なお、図4および5に示された構成と共通する構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
本実施の形態の測定装置900は、実施の形態1の測定装置における測定デバイス700の第2の吸引口109側の端部に着脱可能に接合することによって測定装置900に測定デバイス700を取付けることができる。測定デバイス取付け部901はデバイス装着口(図示せず)を有し、測定結果が表示される表示部902、及び試料吸引開始ボタン903が設けられている。
【0106】
デバイス装着口の内側には凸部が設けられて、測定デバイス700を取り付ける際に凸部が第2の吸引口109に挿入される。このとき、接合部における空気の漏れが発生しないよう、実施の形態1と同様に、例えばテフロン(登録商標)やイソプレンゴムなどの弾性を有する樹脂製の封止リングを上記凸部の周囲に設け、凸部と第2の吸引口109との密着性を高めることが好ましい。
図21に示すように、測定装置900の内部の構造は、実施の形態1の図4に示す測定装置の構成から測定デバイス取外し機構410および測定デバイス取り外しボタン304を取り除いた構成である。
【0107】
3.測定方法
次に、本実施の形態の測定デバイス700及び測定装置900を用いて試料中の被検物質を測定する方法を、図20及び21を参照しながら説明する。以下に、試料として尿を用いた例について述べる。
まず、測定デバイス700の第2の吸引口109を、測定デバイス取付け部901内のデバイス装着口(図示せず)に接合し、測定デバイス取付け部901に測定デバイス700を取付ける。これにより、測定デバイス700の2つの電極201a、202aに電気的に導通するように、接続部201b、202bと測定デバイス取付け部901内部に設けられた2つの端子とがそれぞれ接触する。
【0108】
このとき、測定装置900内に設けられたマイクロスイッチからなる測定デバイス挿入検知スイッチ(図示せず)が作動して、制御部として機能するCPU401が測定デバイス700の挿入を検知し、電圧印加部402により測定デバイス700の2つの電極201a、202a間に電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.2Vとなる電圧)が印加される。
【0109】
次に、例えば便器内に設けられた受尿容器又は紙コップ等の運搬可能な容器内に採取された尿に、測定デバイス700を少なくとも目安線115の位置まで浸漬し、測定デバイス700の第1の試料供給口105を尿に浸漬させる。
【0110】
ここで、ユーザが、少なくとも第1の試料供給口105が尿に浸漬していることを確認し、その状態で、試料吸引開始ボタン903を押して測定装置900内に設けられた吸引手段の一部であるピストン機構404を作動させ、これにより、ピストン機構404内のピストンが動き、測定デバイス700の第1の試料供給口105から第1の容器104に、尿が吸引される。
【0111】
第1の容器104内に供給された尿が電極201a、202aに接触すると、両電極間に電流が流れるため、それに起因する電気信号の変化を電気信号測定部405が検知する。
この検知に伴い、CPU401が計時部406であるタイマーによる計時を開始させる。また、上記検知に伴い、CPU401が電圧印加部402による電圧の印加を遮断する。タイマーによる計時が開始されると、表示部902に計時の開始が表示される。
第2の容器107内には、図19に示すような弁704の変形により生じた弁704と第3の部材703との隙間、及び開口部705を介して尿が供給される。この際、弁704により、第2の容器107に供給された尿が、第1の容器104に逆流することを防ぐ。
【0112】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から第1の所定時間(例えば、30秒)経過し、第2の容器107内に所定量の尿が供給されたことをCPU401が判断すると、CPU401はピストン機構404による尿の吸引を停止させる。
このとき、試料を吸引した時の位置にピストンを保持することにより、第1の容器104及び第2の容器107内に尿が保持され、第1の試料供給口105から漏れ出したり、ピストン機構404内部に吸引されたりすることがない。
第2の容器107内に供給された尿は、試薬保持部110に担持された乾燥状態の試薬である抗ヒトアルブミン抗体を溶解し、尿中の抗原であるヒトアルブミンと抗ヒトアルブミン抗体との免疫反応が進行する。
【0113】
次に、計時部406からの信号によって、電極201a、202aへの尿の到達から第2の所定時間(例えば、2分)経過したことをCPU401が判断すると、CPU401は光源407による光照射及び電圧印加部402による電圧(例えば、電極201aが電極202aに比べて+0.5Vとなる電圧)の印加を実行させる。
【0114】
光源407から出射して測定デバイス700の光入射部111を通して第2の容器107内に入射し、尿中を透過及び散乱し、光出射部112から出射した光を、第3の所定時間の間(例えば、3分間)、測定装置900内に設けられた受光器408により受光する。なお、ここでは、図17および18に示すように、測定デバイス700における第1の部材701の面701bのうち第2の容器107を囲む部分を光入射部111とし、測定デバイス700における第1の部材701の面701aのうち第2の容器107を囲む部分を光出射部112とした。
CPU401はメモリ409に格納されている出射光強度とヒトアルブミン濃度との関係を表す第1の検量線に関するデータを読み出し、当該第1の検量線を参照することによりCPU401が受光器408により受光された出射光強度をヒトアルブミン濃度に換算する。
得られたヒトアルブミン濃度は表示部902に表示される。表示部902にヒトアルブミンが表示されることにより、ユーザはヒトアルブミン濃度測定が完了したことを知ることができる。
【0115】
一方、計時部406からの信号によって、上記電圧の印加から所定時間(例えば、1分)経過したことをCPU401が判断すると、電極201aと電極202aとの間で流れる電流等の電気信号を電気信号測定部405で測定する。CPU401はメモリ409に格納されている電気信号とグルコース(尿糖)濃度との関係を表す第2の検量線に関するデータを読み出し、それを参照することによりCPU401が測定された電気信号を尿中のグルコース濃度に換算する。
得られたグルコース濃度は表示部902に表示される。表示部902にグルコース濃度が表示されることにより、ユーザはグルコース濃度測定が完了したことを知ることができる。好ましくは、得られたグルコース濃度及びヒトアルブミン濃度は、計時部406により計時された時刻とともにメモリ409に保存される。
最後に、ユーザが手動で測定デバイス700を測定デバイス取付け部901から取り外す。
【0116】
なお、上記実施の形態で参照した図3、図8、図10、図12、図13、図15及び図18においては、導電部201、202、電極201a、202a、接続部201b、202b、及びカバー203についてそれらの厚みは無視して示されている。また、図18においては、弁704及び試薬保持部110についてもそれらの厚みは無視して示されている。
【0117】
なお、以上の実施の形態において、光学測定のための試薬を含む水溶液を塗布、乾燥することにより試薬保持部を形成したが、これに代えて、ガラス繊維や濾紙等からなる多孔性の担体に試薬の溶液を含浸させた後、乾燥または凍結乾燥させることにより試薬を担持させ、その多孔性の担体を第2の部材102の凹部の底面に貼付することによって試薬を担持する方法を用いてもよい。
また、スパッタや蒸着により電極を形成したが、これに代えて、金属のリボンを貼付する方法や、金属やカーボンを含むインクを印刷する方法などを用いることができる。これらの場合、電極とともに、各電極と測定装置との電気的接続を達成するためのリードを同時に作製してもよい。
【0118】
さらに、以上の実施の形態において、尿が2つの電極201a、202aに接触したことの検知に伴って電圧を一度遮断し、電圧を再度印加する際には電圧値を切り替えが、これに限定されない。測定に必要な電圧値を試料の供給前から印加しておけば、供給後もその電圧を継続して印加してもよい。
また、以上の実施の形態においては、尿が2つの電極201a、202aに接触したことを検知してから所定時間後に光の照射を行ったが、試料検知と同時に照射を開始してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、試料の光学測定及び電気化学測定を行うことにより、簡易な構成で複数の測定項目について迅速かつ正確に測定を行うことが可能な測定デバイス、測定装置及び測定方法を提供することができるため、医療及び医療関連の検査分野で、特に尿検体を測定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施の形態に係る測定デバイスを示す斜視図である。
【図2】同測定デバイスの図1におけるA−A断面図である。
【図3】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図4】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図5】同測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】同実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す斜視図である。
【図7】同測定デバイスの図6におけるB−B断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る測定デバイスを示す斜視図である。
【図9】同測定デバイス図8におけるC−C断面図である。
【図10】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図11】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図12】同実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す分解斜視図である。
【図13】同実施の形態に係る測定デバイスの他の変形例を示す斜視図である。
【図14】同実施の形態に係る測定デバイスの他の変形例の図13におけるD−D断面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る測定デバイスの変形例を示す斜視図である。
【図16】同測定デバイスの図15におけるE−E断面図である。
【図17】同測定デバイスの上面図である。
【図18】同測定デバイスの分解斜視図である。
【図19】同測定デバイスの弁が開いた状態を示す要部断面図である。
【図20】同実施の形態に係る測定装置を示す斜視図である。
【図21】同測定装置の構成を示すブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備え、
前記第2の容器は、電極を備えていない、
試料に含まれる被検物質の分析を行うための測定デバイス。
【請求項2】
前記光学測定部が、前記第2の容器の外部から内部に入射光を入射させるための光入射部と、前記第2の容器の内部から外部に出射光を出射させるための光出射部とを備える、請求項1記載の測定デバイス。
【請求項3】
前記電極が一対の電極である、請求項1または2に記載の測定デバイス。
【請求項4】
前記電極上に酵素が担持されている、請求項1記載の測定デバイス。
【請求項5】
前記試薬が酵素または抗体を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項6】
前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されている、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項7】
前記第1の容器は空気孔をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項8】
請求項3に記載の測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記第2の容器の外部から内部に入射する入射光を出射するための光源と、
前記第2の容器の内部から外部に出射した出射光を受光するための受光部と、
前記一対の電極に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記一対の電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、前記試料に含まれる前記被検物質を検出または定量するための演算部とを備える、
試料に含まれる被検物質の分析を行うための測定装置。
【請求項9】
前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスにおける前記第1の容器及び前記第2の容器の少なくとも一方に前記試料を吸引により供給するための吸引部をさらに備える、請求項8記載の測定装置。
【請求項10】
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程と、
を含む測定方法。
【請求項11】
前記測定デバイスにおいて、
前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されており、
前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、
前記検出に基づき自動的に前記工程(F)を行う、請求項10記載の測定方法。
【請求項12】
前記測定デバイスにおいて、
前記第1の容器は空気孔をさらに備え、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられており、
前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき、前記工程(B)において前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器の内部に前記試料を吸引する、請求項10記載の測定方法。
【請求項13】
前記第1の容器と前記第2の容器とが、前記第2の試料供給口を介して互いに連通している、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項14】
前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器から前記第1の容器へ前記試料が流れることを防止する弁をさらに備える、請求項13に記載の測定デバイス。
【請求項1】
被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備え、
前記第2の容器は、電極を備えていない、
試料に含まれる被検物質の分析を行うための測定デバイス。
【請求項2】
前記光学測定部が、前記第2の容器の外部から内部に入射光を入射させるための光入射部と、前記第2の容器の内部から外部に出射光を出射させるための光出射部とを備える、請求項1記載の測定デバイス。
【請求項3】
前記電極が一対の電極である、請求項1または2に記載の測定デバイス。
【請求項4】
前記電極上に酵素が担持されている、請求項1記載の測定デバイス。
【請求項5】
前記試薬が酵素または抗体を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項6】
前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されている、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項7】
前記第1の容器は空気孔をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項8】
請求項3に記載の測定デバイスを取付けるための測定デバイス取付け部と、
前記第2の容器の外部から内部に入射する入射光を出射するための光源と、
前記第2の容器の内部から外部に出射した出射光を受光するための受光部と、
前記一対の電極に電圧を印加するための電圧印加部と、
前記一対の電極からの電気信号を測定するための電気信号測定部と、
前記受光部により受光された前記出射光及び前記電気信号測定部により測定された前記電気信号のうちの少なくとも一方に基づき、前記試料に含まれる前記被検物質を検出または定量するための演算部とを備える、
試料に含まれる被検物質の分析を行うための測定装置。
【請求項9】
前記測定デバイス取付け部に取付けられた前記測定デバイスにおける前記第1の容器及び前記第2の容器の少なくとも一方に前記試料を吸引により供給するための吸引部をさらに備える、請求項8記載の測定装置。
【請求項10】
第1の被検物質及び第2の被検物質を含む試料を保持するための第1の容器及び第2の容器、並びに前記第2の容器内に保持された前記試料の光学測定を行うための光学測定部を備え、
前記第1の容器は、前記第1の容器に前記試料を供給するための第1の試料供給口と、電極とを備え、
前記第2の容器は、前記第2の容器に前記試料を供給するための第2の試料供給口と、前記光学測定のための試薬を保持するための試薬保持部とを備える、測定デバイスを用いる、試料に含まれる第1の被検物質及び第2の被検物質の測定方法であって、
(A)前記試料に浸された前記第1の試料供給口を通して前記第1の容器内に前記試料を供給する工程と、
(B)前記試料に浸された前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器内に前記試料を供給する工程と、
(C)前記電極に電圧を印加する工程と、
(D)前記電極からの電気信号を測定する工程と、
(E)前記工程(D)において測定された前記電気信号に基づいて前記第2の被検物質を検出または定量する工程と、
(F)前記第2の容器内に保持された前記試料に前記光学測定部を通して入射光を照射する工程と、
(G)前記入射光の照射に起因して前記第2の容器の内部から外部に前記光学測定部を通して出射した出射光を測定する工程と、
(H)前記工程(G)において測定された前記出射光に基づいて前記第1の被検物質を検出または定量する工程と、
を含む測定方法。
【請求項11】
前記測定デバイスにおいて、
前記第2の試料供給口から前記試薬保持部までの距離Xと、前記第1の試料供給口から前記電極までの距離Yとが、関係式:X<Yを満たすように、前記試薬保持部と前記電極とが配置されており、
前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、
前記検出に基づき自動的に前記工程(F)を行う、請求項10記載の測定方法。
【請求項12】
前記測定デバイスにおいて、
前記第1の容器は空気孔をさらに備え、前記第1の試料供給口と前記第2の試料供給口とが互いに隣接する位置に設けられており、
前記工程(D)において前記電気信号の変化を検出し、前記検出に基づき、前記工程(B)において前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器の内部に前記試料を吸引する、請求項10記載の測定方法。
【請求項13】
前記第1の容器と前記第2の容器とが、前記第2の試料供給口を介して互いに連通している、請求項1〜5のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項14】
前記第2の試料供給口を通して前記第2の容器から前記第1の容器へ前記試料が流れることを防止する弁をさらに備える、請求項13に記載の測定デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−47703(P2009−47703A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254776(P2008−254776)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2007−542591(P2007−542591)の分割
【原出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2007−542591(P2007−542591)の分割
【原出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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