説明

測定位置指定方法およびこれを実行する寸法計測装置

【課題】パターンの測定位置を正しく指定可能とすること。
【解決手段】本測定位置指定方法は、基板上に2回以上のタイミングでレイア構造をなして形成されたパターンを平面方向から見た場合の二次元上の寸法を測定するときにその二次元上での測定位置を指定する方法であって、実物とのパターン照合のため各タイミングごとのレイア画像を設計して記録する第1ステップと、第1ステップで記録されているレイア画像それぞれに示されるパターンの図形を1つないし複数の形状部分(部品)に構成分けすると共に、各部品に部品名称を付ける第2ステップと、パターンの測定位置を上記部品名称で指定する第3ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミクロンオーダーに微細加工される半導体集積回路やそれに付随するエッチング製品等の測定対象を撮像素子で撮像し、その撮像画像を処理して当該測定対象に2回以上のタイミングでレイアをなして形成されたパターンの寸法を計測する場合において、そのパターンの測定位置を指定する方法ならびにその方法を実行する寸法計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体製造プロセスであるエッチングプロセスにより異なるタイミングで部分的にレイヤをなして微細な線幅のパターンを生成していく場合、パターンが微細寸法であるために、それぞれのパターンの幅や間隔を位置ずれすることなく、かつ、形状寸法等を高精度に生成していく必要がある。
【0003】
このような異なるタイミングで生成されたパターンは、パターンを形成した装置の違いや、アライメント誤差等の理由により、ずれが生じている。また、パターン形成のプロセスにおいて、パターンが太ったり痩せたりして形成される場合がある。そのため、このようなパターン形成においてはパターンを撮像カメラで撮像しコンピュータ画面上で画像認識しパターンの寸法計測をしてパターンの形成状態を把握することが行われている(特許文献1)。
【0004】
従来の寸法計測の測定箇所の指定方法を説明する。
【0005】
まず、最初の基板(実物)を撮像する。この撮像画像上において基板上の測定箇所を指定する。この指定した箇所をテンプレート画像に登録する。このテンプレート画像中の測定位置を座標指示してデータ記憶する。
【0006】
次に、別の基板(別の実物)を撮像する。この別の基板の画像中から上記テンプレート画像と一致する形状の画像(一致画像)をサーチする。サーチした一致画像上の測定位置を上記記憶している測定位置の記憶データに従い指定する。しかしながら、この指定方法では別の基板のパターンが最初の基板のそれとは測定位置がずれていて、正しく指定することができない場合があった。また、パターンの設計が変更を繰替えされるような場合、測定位置の再指示に工数が多くかかる。
【特許文献1】特許第3059602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明により解決すべき課題は、パターンの測定位置を正しく指定することができるようにすることである。また、パターンの設計の変更が繰替えされても、測定位置の指定を少ない工数で実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、基板上に2回以上のタイミングでレイア構造をなして形成されたパターンの寸法を測定するときにその二次元上での測定位置を指定する方法であって、実物(実際にパターンがレイア構造で形成されている基板)とのパターン照合のためレイア画像(当該レイアにおけるパターンが形成されている画像)を設計して記録する第1ステップと、上記第1ステップで記録されているレイア画像それぞれに示されるパターンの図形を1つないし複数の形状部分(部品)に構成分けすると共に、各部品に部品名称を付ける第2ステップと、パターンの測定位置を上記部品名称で指定する第3ステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明によると、各実物それぞれのパターンが異なるタイミングで生成されたパターンが、それらのパターンを形成する装置の違い等により、ずれが生じていたり、あるいは、太ったり、痩せたりしていても、パターンの測定位置を部品名称で指定するので、パターンの測定位置を正しく指定することができる。また、パターンの設計の変更が繰替えされても、測定位置の指定を工数がかからずに容易に実施することができる。
【0010】
(2)第3ステップが、レイア画像の任意の点を相対的な画像原点とする直交二次元XY座標に定め、この座標を用いて当該部品名称に対応する形状部分の相対座標指定によりパターンの測定位置を相対指定することが好ましい。
【0011】
(3)第3ステップでは、その測定位置に対応した部品名称に基づいた論理式でパターンの測定位置を指定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンの測定位置を部品名称で指定するから、各実物それぞれのパターンが異なるタイミングで生成されたパターンが、それらのパターンを形成する装置の違い等により、ずれが生じていたり、あるいは、太ったり、痩せたりしていても、測定位置を正しく指定することができ、かつ、パターンの設計の変更が繰替えされても、測定位置の指定を少ない工数で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係る寸法測定位置指定方法を詳細に説明する。
【0014】
図1は実施の形態の寸法測定位置指定方法を実施するために用いる寸法計測装置の概略構成を示す斜視図である。図1はX軸方向、Y軸方向、Z軸方向が示されている。これら各軸は互いに直交している。これらの図を参照して、寸法計測装置2は、測定対象を撮像するための撮像装置4と、撮像装置4を制御するコンピュータ内蔵の制御装置6とから構成されている。撮像装置4と制御装置6は、相互に情報伝送可能に接続されている。
【0015】
撮像装置4は、X軸方向長手でY軸方向一定幅の平面視矩形形状の撮像基台8を備える。撮像基台8上にはX軸方向に互いに平行に延びる一対のガイドレール10が設けられている。この一対のガイドレール10に矩形平板形状の移動テーブル12がX軸方向に移動可能になっている。移動テーブル12には、図示略のエンコーダヘッドが一体的に設置されている。ガイドレール10に沿って設けられたリニアスケール14とエンコーダとによって、移動テーブル12のX軸方向の移動量を測定するリニアエンコーダが構成される。
【0016】
撮像基台8には、移動テーブル12上をY軸方向に跨ぐ形で門型の撮像架台16が架設されている。撮像架台16には図示略のカメラ移動機構にカメラ機構であるエリア型撮像素子18と高速オートフォーカス機構20とがY軸方向に移動可能に設けられている。カメラ移動機構は、制御装置6から指令されたX座標にエリア型撮像素子18と高速オートフォーカス機構20とを一体移動させる。エリア型撮像素子18は、顕微鏡のように対物レンズを有する構成となっており、2次元CCD撮像素子を備える。対物レンズの交換により撮像倍率を変更できるようになっている。
【0017】
基板22は、例えば、液晶パネル用のガラス基板であり、移動テーブル12上に複数の位置決めピン23と、複数のプッシャ26とにより位置決めされている。
【0018】
図1の寸法計測装置2は、撮像装置4の移動テーブル12と撮像架台16とを動かして基板22に対してエリア型撮像素子18をX軸方向、Y軸方向に移動させることにより、基板22上の所定箇所の画像を撮像し、その画像を制御装置6に取り込むとともに制御装置6における画像処理により基板上に形成された素子の寸法測定位置を指定し、その指定測定位置における寸法を測定することができるようになっている。
【0019】
制御装置6は、キーボードとディスプレイとを備えており、撮像装置4に対して指令を送ったり、撮像装置4のエリア型撮像素子18で撮像した画像を観察したり、撮像装置4を制御するプログラムを入力したりできるようになっている。撮像装置4を制御する寸法計測用のコンピュータプログラムは、制御装置6のコンピュータに当初からインストールさせておいてもよいし、ネットワーク経由で外部からダウンロードすることもできる。
【0020】
制御装置6には、以下に説明する測定位置指定方法を実行するためのコンピュータプログラムが搭載されている。
【0021】
図2はエリア型撮像素子18による基板22(実物)の撮影画像を示す。このような図2に示す撮影画像を複数の基板それぞれを撮影して得る。これら複数の基板それぞれ撮影画像は制御装置6に取り込まれる。図2に示す撮像画像は2回以上の異なるタイミングでパターンが形成されている画像を示す。図2の撮像画像で示すパターンは、半導体製造技術であるエッチング工程が複数回、この例では3回、実施されてサブミクロンオーダーの微細線幅を有するパターンが3つの層(レイヤ)になって形成されたものである。図2の撮影画像は実際にパターンがレイア構造をなして形成されている基板(実物)の画像である。
【0022】
図3は、図2に示す実物との照合のために設計されて記録されたレイア画像を示すものである。図3(a)〜(c)はレイア画像であり、これらレイア画像それぞれにはパターンの図形が示されている。図3(a)のレイア画像をLay1、図3(b)のレイア画像をLay2、図3(c)のレイア画像をLay3と名称付ける。これら図3(a)〜(c)それぞれのレイア画像には実物との照合のため各タイミングごとのパターン図形が示されている。これらLay1,2,3に示される図形は1つないし複数の形状部分(部品)に構成分けされる。これら各部品には部品名称が付される。
【0023】
図4にはそれら部品名称のうちの一部の部品名称例を示す。すなわち、図4において、ELE1は図3のLay2の形状部分Aに付けた部品名称であり、ELE2,ELE3は図3のLay1の形状部分B,Cそれぞれに付けた部品名称である。上記部品名称は一部の部品名称例であり、上記図3(a)〜(c)それぞれのパターンを構成する各形状部分それぞれに付けることができる。これらレイア画像それぞれに示される部品に対しては、測定位置指定に用いるための相対座標を付ける。
【0024】
図5は、Lay2に示される部品ELE1の座標を代表して示す。すなわち、図5の座標画像は四辺形であり、この四辺形の図上で左辺と上辺とが交わる左上角部を画像原点とし、上辺に沿う図中右辺方向をX相対座標、左辺下側方向をY相対座標とすると、Lay2のELE1のX,Y相対座標を求めることができる。他の部品についても同様にそれぞれX,Y相対座標を求めることができる。この画像原点は任意の位置で良く、図5のそれに限定されない。
【0025】
以上において、各レイア画像それぞれのパターンにおいては、平面方向に対して垂直な方向に互いに重なる部分が存在している。これは図2の実物のパターンを構成するレイア構造が重なっており、これに対応して設計されて記録されているレイア画像それぞれのパターンも平面方向に垂直な方向に重ねたときに重なり部分が存在する。
【0026】
このような重なり部分のあるパターンに対して、その重なり部分や重ならない部分の測定位置を指定する場合を図6を参照して説明する。図6は、Lay1,Lay2,Lay3を重ねた図を示す。この測定位置は、一例として、図6中、円で囲む部分で黒でカタカナの「エ」の字に示される部分である。この測定位置部分は、Lay2のELE1において、Lay1のELE2,ELE3と重ならない部分である。したがって、この測定位置の指定は、部品名称で(ELE2orELE3)xorELE1の論理式で演算することができる。orは論理和、xorは排他的論理和である。上記論理式は、一例であり、この論理式は、レイア画像に示す図形同士の重なり状態等により設定することができる。他のLay1,Lay2,Lay3における重なり部分や重ならない部分についての測定位置の指定も同様にそれぞれに応じた論理式で指定することができる。
【0027】
以上説明した実施の形態においては、別の基板のパターンが最初の基板のパターンとは測定位置がずれていても、部品名称で指定するので、パターンの測定位置を正しく指定することができる。また、パターンの設計の変更が繰替えされても、測定位置の指定を工数がかからずに容易に実施することができる。
【0028】
さらに、各レイア画像それぞれのパターンに平面方向に対して垂直な方向で互いに重なる部分が存在する場合においても、その重なる部分に対応する複数の部品について重なる部分や重ならない部分を測定位置に指定するときは、その測定位置に対応した部品名称に基づいた論理式でパターンの測定位置を指定するので、各実物それぞれのパターンが異なるタイミングで生成されたパターンが、それらのパターンを形成する装置の違い等により、ずれが生じていたり、あるいは、太ったり、痩せたりしていても、パターンの測定位置を正しく指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施の形態に用いる寸法計測装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は図1の寸法計測装置のエリア型撮像素子で撮影した実物の撮影画像を示す図である。
【図3】図3は実物との照合のための各レイア画像を示す図である。
【図4】図4は図3のレイア画像に示される図形を複数の形状部分で部品化した場合の一部の部品を示す図である。
【図5】図5は図4の部品の座標画像上での相対座標を求める場合の座標画像を示す図である。
【図6】図6は複数のレイア画像を重ねた図である。
【符号の説明】
【0030】
2 寸法計測装置
4 撮像装置
6 制御装置
8 撮像基台
10 ガイドレール
12 移動テーブル
14 リニアスケール
16 撮像架台
18 エリア型撮像素子
22 基板
Lay1,Lay2,Lay3 レイア画像
ELE1,ELE2,ELE3 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に2回以上のタイミングでレイア構造をなして形成されたパターンの寸法を測定するときにその二次元上での測定位置を指定する方法であって、
実物(実際にパターンがレイア構造で形成されている基板)とのパターン照合のためレイア画像(当該レイアにおけるパターンが形成されている画像)を設計して記録する第1ステップと、
上記第1ステップで記録されているレイア画像それぞれに示されるパターンの図形を1つないし複数の形状部分(部品)に構成分けすると共に、各部品に部品名称を付ける第2ステップと、
パターンの測定位置を上記部品名称で指定する第3ステップと、
を含むことを特徴とする測定位置指定方法。
【請求項2】
第3ステップが、レイア画像の任意の点を相対的な画像原点とする直交二次元XY座標に定め、この座標を用いて当該部品名称に対応する形状部分の相対座標指定によりパターンの測定位置を相対指定することを特徴とする請求項1に記載の測定位置指定方法。
【請求項3】
第3ステップでは、その測定位置に対応した部品名称に基づいた論理式でパターンの測定位置を指定する、ことを特徴とする請求項1に記載の測定位置指定方法。
【請求項4】
上記請求項1ないし3のいずれかに記載の測定位置指定方法の各ステップを実行するコンピュータプログラムを搭載してあることを特徴とする寸法計測装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−232677(P2007−232677A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57531(P2006−57531)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】