説明

測定装置

【課題】電圧検出部を簡易化し、かつ測定作業を簡略化する。
【解決手段】クランプ部およびクランプ部に配設された検出電極12を備えたクランプ式センサ2と、本体ユニット3とを有する電力測定装置1であって、クランプ式センサ2は、非反転入力端子が基準電圧(電圧信号V4の電圧)に規定されると共に、交流電圧V1および基準電圧の電位差Vdiに応じた電流値で測定対象電線4との間で検出電極12を介して流れる電流信号Iを検出電圧信号V2に変換して出力する電流電圧変換回路41と、検出電圧信号V2を積分して電位差Vdiに応じて振幅が変化する積分信号V3を出力する積分回路42と、積分回路42の後段に配設されて、入力した積分信号V3を電気的に絶縁して出力するフォトカプラ44と、電位差Vdiが減少するように積分信号V3に基づく信号を増幅して電圧信号V4を生成する電圧生成部54とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象電線に流れる電流と測定対象電線の交流電圧とを検出し得るクランプ式センサを備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、この種の測定装置として、下記の各特許文献に記載されている測定装置を提案している。これらの測定装置は、特に駆動回路で駆動されてその容量を変化させる可変容量回路を用いることによって測定対象電線の電圧を検出する構成を共通の基本構成としている。
【特許文献1】特開2007−147419号公報(第8−9頁、第12図)
【特許文献2】特開2007−163414号公報(第8−9頁、第7−8図)
【特許文献3】特開2007−163415号公報(第9−10頁、第10−11図)
【特許文献4】特開2007−195137号公報(第12−13頁、第15−16図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のクランプ式センサを備えた測定装置には、以下のような解決すべき課題がある。すなわち、このクランプ式センサでは、上記したように、測定対象電線の電圧を測定する電圧検出部において可変容量回路およびその駆動回路を必要とするため、電圧検出部の回路構成が複雑になって製品コストが上昇するという解決すべき課題が存在している。また、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっているため、測定に際して電圧測定プローブおよび電流測定プローブをそれぞれ測定対象電線にクランプさせる必要があり、測定作業が煩雑であるという課題も存在している。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、測定対象電線の電圧検出部を簡易化し、かつ測定作業を簡略化し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部、および当該クランプ部に配設されて当該測定対象電線の交流電圧を検出するための検出電極を備えているクランプ式センサと、測定装置本体とを有する測定装置であって、前記クランプ式センサは、第1の入力端子が基準電圧に規定されると共に、第2の入力端子が前記検出電極に直接または間接に接続されて、当該検出電極と当該第2の入力端子に接続された帰還回路とを含む経路において前記測定対象電線の前記交流電圧と当該基準電圧との電位差に応じた電流値で流れる検出電流を検出電圧信号に変換して出力する演算増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、当該積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路とを備え、前記測定装置本体は、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路を備えている。
【0006】
また、請求項2記載の測定装置は、測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部、および当該クランプ部に配設されて当該測定対象電線の交流電圧を検出するための検出電極とを備えているクランプ式センサと、測定装置本体とを有する測定装置であって、前記クランプ式センサは、前記検出電極と基準電圧の部位との間に配設されると共に前記測定対象電線の前記交流電圧と当該基準電圧との電位差に応じた電流値で流れる検出電流を電圧信号に変換する検出部、および当該電圧信号をインピーダンス変換して検出電圧信号として出力する増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、当該積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路とを備え、前記測定装置本体は、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路を備えている。
【0007】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記絶縁回路は、光絶縁素子および/またはトランスを備えて構成されている。
【0008】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の測定装置において、前記クランプ部は前記測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有して構成され、前記磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて前記電流を検出する電流検出部を備えている
【0009】
また、請求項5記載の測定装置は、請求項4記載の測定装置において、前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定されると共に前記検出電極が内部に配設された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が当該可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【0010】
また、請求項6記載の測定装置は、請求項4記載の測定装置において、前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該可動センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【0011】
また、請求項7記載の測定装置は、請求項4記載の測定装置において、前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと当該可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームおよび当該可動センサアームのいずれか一方に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の測定装置では、クランプ式センサのクランプ部で測定対象電線をクランプした状態において、測定対象電線と検出電極との間に形成されている静電容量および検出電極を介して、測定対象電線の交流電圧および基準電圧の電位差に応じた電流値で測定対象電線と電流電圧変換回路との間で流れる電流信号を電流電圧変換回路で検出電圧信号に変換し、この検出電圧信号を積分回路で積分して、検出電極の電圧と測定対象電線の交流電圧との電位差に応じて振幅が変化する積分信号を生成し、検出電圧信号および積分信号のうちの一方を絶縁回路で電気的に絶縁して出力し、電圧生成回路が上記した電位差が減少するように積分信号に基づく信号を増幅して基準電圧を生成する。
【0013】
したがって、この測定装置によれば、可変容量回路およびその駆動回路を不要とすることができるため、電圧を検出するための電流電圧変換回路等で構成される電圧検出部の回路構成を簡略化することができる。また、測定対象電線と検出電極との間に形成されている静電容量の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、測定対象電線と検出電極との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)とすることができる結果、電流電圧変換回路を構成する演算増幅器に入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電流電圧変換回路の入力インピーダンスが比較的小さいため、過電圧が印加されにくく、測定対象電線の交流電圧および基準電圧の電位差による演算増幅器が破壊される可能性を大幅に低減することができる。また、ダイオードなどによる保護回路を追加することにより、このような破壊を確実に回避することができる。さらに、この測定装置によれば、測定対象電線をクランプ可能に構成されてこの測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部に、測定対象電線の交流電圧を非接触で測定するための検出電極が配設されているため、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっている構成とは異なり、1回のクランプ操作で測定対象電線に流れる電流および測定対象電線の交流電圧を検出可能な状態とすることができる。したがって、測定作業を大幅に簡略化することができる。
【0014】
また、請求項2記載の測定装置によれば、上記の測定装置と同様にして、可変容量回路およびその駆動回路を不要とすることができるため、電圧を検出するための電流電圧変換回路等で構成される電圧検出部の回路構成を簡略化することができると共に、電流電圧変換回路の入力インピーダンスが比較的小さいため、過電圧が印加されにくく、測定対象電線の交流電圧および基準電圧の電位差による電流電圧変換回路が破壊される可能性を大幅に低減することができる。さらに、1回のクランプ操作で測定対象電線に流れる電流および測定対象電線の交流電圧を検出可能な状態とすることができるため、測定作業を大幅に簡略化することができる。
【0015】
また、請求項3記載の測定装置によれば、絶縁回路として光絶縁素子および/またはトランスを使用したことにより、電流電圧変換回路と、その後段の回路とを任意の部位で簡易に電気的に絶縁する(分離する)ことができる。また、光絶縁素子を使用した場合には、広い周波数範囲に亘って周波数特性が良好なため、広い周波数範囲に亘る測定対象体の交流電圧を精度良く測定することができる。また、トランスを絶縁回路として使用した場合には、一般的にトランスは光絶縁素子よりも高い周波数域で良好な周波数特性を有しているため、交流電圧の周波数が高い周波数に限定されているときには、トランスを使用することで、交流電圧を精度良く測定することができる。また、光絶縁素子およびトランスを並列に接続して絶縁回路を構成した場合には、低周波数域側では光絶縁素子が主として作動し、高周波数域側ではパルストランスが主として作動することにより、絶縁回路の周波数特性を広帯域化することができる結果、一層広い周波数範囲に亘る測定対象体の交流電圧を精度良く測定することができる。
【0016】
また、請求項4記載の測定装置では、測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有してクランプ部が構成され、磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて電流を検出する電流検出部を備えている。したがって、この測定装置によれば、クランプ部の磁路形成部によって漏れの少ない状態で磁束を電流検出部へ誘導できるため、電流検出部において磁束の変化に基づいて高精度で電流を検出することができる。
【0017】
また、請求項5,6,7記載の測定装置では、一端部が可動センサアームの一端部と共にセンサ本体部に回動自在に取り付けられた状態で、固定センサアームと可動センサアームとの間に押さえアームが配設されてクランプ式センサが構成されている。したがって、この測定装置によれば、固定センサアームと可動センサアームとによってクランプされた測定対象電線を押さえアームの他端部で固定センサアームおよび可動センサアームのいずれか一方に押さえ付けることができる。このため、固定センサアーム、可動センサアームおよび押さえアームのいずれかの測定対象電線が押さえ付けられる部位に検出電極を配設しておくことにより、測定対象電線を検出電極の配設位置の近傍に確実に押さえ付けることができる。このため、固定センサアームと可動センサアームと間で測定対象電線が自由に移動可能な状態で測定対象電線をクランプする構成と比較して、測定対象電線の電圧を非接触で測定するときに重要となる測定対象電線と検出電極との間に形成される静電容量の容量値の変動を低減することができ、これにより、測定対象電線の電圧を非接触で精度良く測定できる結果、電力についても高精度で測定することができる。なお、本明細書において、「非接触で測定」とは、検出電極が測定対象電線の絶縁被覆には接触するが、導体には接触しない状態で測定することを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る測定装置の最良の形態について、一例として電力測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0019】
最初に、電力測定装置1について、図面を参照して説明する。
【0020】
電力測定装置1は、図1に示すように、クランプ式センサ2および本体ユニット3を備え、測定対象電線4に流れる電流I1および測定対象電線4の交流電圧V1を非接触で測定すると共に、測定した電流I1および交流電圧V1に基づいて測定対象電線4を介して送られている電力Wを測定可能に構成されている。
【0021】
クランプ式センサ2は、図1に示すように、クランプ部5およびセンサ本体部6を備えている。この場合、クランプ部5は、測定対象電線4をクランプ可能に構成されて、測定対象電線4に流れる電流I1を非接触で測定する機能を有している。また、クランプ部5は、測定対象電線4に流れる電流I1を非接触で測定するための磁気コア11a,11bと、測定対象電線4の交流電圧V1を非接触で測定するための平板状の検出電極12とが内部に配設されて構成されている。また、各磁気コア11a,11bは、本発明における磁路形成部であって、同図に示すように、クランプ部5が測定対象電線4をクランプしたときに、測定対象電線4を取り囲んで閉磁路を形成して、測定対象電線4に電流I1が流れることに起因して測定対象電線4の周囲に発生する磁束を効率よく後述の検出コイル14に誘導する。
【0022】
具体的には、クランプ部5は、一端部(同図中の右端部)がセンサ本体部6に固定されると共に、磁気コア11aおよび検出電極12が内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bおよびこの磁気コア11bに巻回された検出コイル14が内部に配設されると共に一端部(同図中の右端部)がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の他端部(同図中の左端部)に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設された押さえアーム16とを備えている。固定センサアーム13、可動センサアーム15および押さえアーム16は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料で形成されている。また、押さえアーム16は、固定センサアーム13および可動センサアーム15よりも全長が短く形成されて、固定センサアーム13および可動センサアーム15の内側領域において回動することにより、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4をその他端部で固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付ける機能を有している。
【0023】
さらに詳細に、センサ本体部6、可動センサアーム15および押さえアーム16の構造について図3,4を参照して説明する。可動センサアーム15の一端部には、可動センサアーム15とは逆方向に延出する第1操作レバー17が取り付けられて両者が一体的に構成されている。また、押さえアーム16の一端部には、押さえアーム16とは逆方向に延出する第2操作レバー18が取り付けられて両者が一体的に構成されている。この場合、第1操作レバー17および第2操作レバー18は、センサ本体部6の一の側壁(図3,4中の上側の側壁)に設けられた開口部6aに、開口部6aを閉塞するようにして配設されている。また、第2操作レバー18は、第1操作レバー17を覆った状態で配設されている。
【0024】
また、第1操作レバー17は、図3に示すように、センサ本体部6に配設されたバネ(一例として捻りコイルバネ)19によって、常時、センサ本体部6の開口部6aから突出する方向に付勢されている。この結果、第1操作レバー17が取り付けられた可動センサアーム15は、このバネ19により、固定センサアーム13方向に回動するように常時付勢されている。一方、第2操作レバー18は、図3に示すように、第1操作レバー17と第2操作レバー18との間に配設されたバネ(一例としてコイルスプリング)20によって、常時、第1操作レバー17から離反する方向(開口部6aから突出する方向)に付勢されている。この結果、第2操作レバー18が取り付けられた押さえアーム16は、このバネ20により、固定センサアーム13方向に回動するように常時付勢されている。
【0025】
検出コイル14は、本発明における電流検出部の一例であって、クランプ部5が測定対象電線4をクランプしたとき(クランプ部5が閉状態となったとき)に各磁気コア11a,11bによって測定対象電線4を取り囲むように形成される閉磁路内の磁束の変化、すなわち検出コイル14内を通過する磁束の変化を検出して、測定対象電線4に流れる電流I1の電流値に応じて振幅が変化する(一例として、電流値に比例して振幅が変化する)電流検出信号Si(図1参照)を出力する。
【0026】
センサ本体部6は、図1に示すように、ケース31、電圧測定のための電圧検出部32、および電流測定部33を備えている。ケース31は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて構成されて、その内部に配設された電圧検出部32および電流測定部33に対するガード電極としても機能する。また、ケース31は、その表面が絶縁被膜RE1で覆われている。
【0027】
電圧検出部32は、図2に示すように、電流電圧変換回路41、積分回路42、駆動回路43およびフォトカプラ44を備え、ケース31内に収容されている。これにより、電流電圧変換回路41からフォトカプラ44までがケース31に覆われた構成となっている。なお、ケース31で覆うべき部位は、電流電圧変換回路41からフォトカプラ44の一次側回路(後述する発光ダイオード)まででよい。このため、フォトカプラ44の二次側回路(後述するフォトトランジスタ)については、ケース31で覆われない構成とすることもできる。一例として、樹脂材料で一次側回路と二次側回路とが1つのパッケージに封止されて構成されたフォトカプラ44のような光絶縁素子の場合には、パッケージにおける一次側回路が含まれる部位(パッケージの発光ダイオード側の半分)がケース31の内部に位置し、二次側回路が含まれる部位(パッケージのフォトトランジスタ側の半分)がケース31の外部に突出(露出)するように、ケース31に対してフォトカプラ44を配置する。また、ケース31には開口部(孔)31aが形成され、電流電圧変換回路41は、この開口部31aを介して検出電極12と接続されている。
【0028】
電流電圧変換回路41は、一例として、図2に示すように、非反転入力端子(第1の入力端子)が抵抗41aを介してケース31に接続されると共に、反転入力端子(第2の入力端子)が検出電極12に接続され、かつ抵抗41bが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第1演算増幅器41cを備えて構成されている。この電流電圧変換回路41は、第1演算増幅器41cが後述する正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、測定対象電線4の交流電圧V1とケース31の電圧(基準電圧)との電位差Vdiに起因して、この電位差Vdiに応じた電流値で測定対象電線4と検出電極12との間(具体的には、検出電極12と抵抗41dとを含む経路)に流れる検出電流(以下、電流信号ともいう)Iを検出電圧信号V2に変換して出力する。この場合、検出電圧信号V2は、その振幅が電流信号Iの振幅に比例して変化する。
【0029】
積分回路42は、一例として、非反転入力端子が抵抗42aを介してケース31に接続されると共に、反転入力端子が入力抵抗42bを介して第1演算増幅器41cの出力端子に接続され、かつコンデンサ42cが帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続された第2演算増幅器42dを備えて構成されている。この積分回路42は、第2演算増幅器42dが正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動して、検出電圧信号V2を積分することにより、測定対象電線4の交流電圧V1とケース31の電圧(基準電圧)との電位差Vdiに比例して電圧値が変化する積分信号V3を生成して出力する。なお、積分回路42は、上記構成に代えて、ローパスフィルタで構成することもできる。
【0030】
駆動回路43は、フォトカプラ44と共に積分回路42の後段、つまり積分回路42と電圧生成部54との間に配置されている。また、駆動回路43は、一例としてベース端子が入力抵抗43aを介して第2演算増幅器42dの出力端子に接続され、コレクタ端子がフォトカプラ44に接続され、かつエミッタ端子が負電圧Vf−に接続されたトランジスタ(本例では一例としてNPN型のバイポーラトランジスタ)43bで構成されている。フォトカプラ44は、本発明における絶縁回路の一例である光絶縁素子に含まれるものであって、その一次側回路としての発光ダイオードは、カソード端子がトランジスタ43bのコレクタ端子に接続され、アノード端子が正電圧Vf+に接続されている。また、フォトカプラ44の二次側回路としてのフォトトランジスタは、配線W1を介して本体ユニット3の後述する抵抗53と直列に接続されている。この構成により、フォトカプラ44が駆動回路43で駆動されてリニア領域で作動することにより、積分信号V3の電圧値に応じて(ほぼ比例して)フォトカプラ44におけるフォトトランジスタの抵抗値が変化する。したがって、このフォトカプラ44が、この抵抗53と相俟って、積分回路42から入力した積分信号V3を、この積分信号V3と電気的に絶縁された新たな積分信号V3aに変換する。また、フォトカプラ44に代えて、同じ光絶縁素子である光MOS−FETを使用することもできる。この場合、光MOS−FETは、その一次側回路としての発光ダイオードが上記したフォトカプラ44の発光ダイオードと同様にしてトランジスタ43b等に接続され、その二次側回路としてのFET対が配線W1を介して本体ユニット3と接続される。
【0031】
電流測定部33は、正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動する不図示のA/D変換回路および絶縁回路(電圧検出部32と同様のフォトカプラなどで構成された回路)を備えて構成されている。この場合、A/D変換回路が、検出コイル14から出力された電流検出信号Siを入力して、測定対象電線4に流れる電流I1の電流値を示す電流データDiに変換して出力する。絶縁回路は、この電流データDiを電圧検出部32の絶縁回路と同様にして電気的に分離して本体ユニット3に出力する。後述するように正電圧Vf+および負電圧Vf−は、コンバータ52により、本体ユニット3のグランドG1、正電圧Vddおよび負電圧Vssと電気的に分離された状態で生成される。また、コンバータ52の内部グランドが、電圧生成部54から出力される電圧信号V4が印加されるケース31に接続される。したがって、この構成により、ケース31内に配設された電圧検出部32および電流測定部33は、本体ユニット3のグランドG1からフローティングされた状態で作動する。なお、電流測定部33をセンサ本体部6内に配設する構成に代えて、本体ユニット3内に配設する構成とすることもできる。この構成では、検出コイル14から出力される電流検出信号Siは、センサ本体部6を介して検出コイル14と本体ユニット3との間に敷設されたケーブル(不図示)を伝搬して電流測定部33に入力される構成となるため、センサ本体部6内に配設する構成において必要であった上記の絶縁回路を省略することが可能となる。
【0032】
本体ユニット3は、本発明における測定装置本体に相当し、図1に示すように、主電源回路51、DC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)52、電流電圧変換用の抵抗53、電圧生成部54、電圧計55、処理部56および表示部57を備えている。主電源回路51は、本体ユニット3の各構成要素54〜57を作動させるための正電圧Vddおよび負電圧Vss(グランドG1の電位を基準として生成される絶対値が同じで、互いの極性の異なる直流電圧)を出力する。コンバータ52は、一例として互いに電気的に絶縁された一次巻線および二次巻線を有する絶縁型のトランスと、このトランスの一次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、一次側に対して二次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成されている。このコンバータ52では、入力した正電圧Vddおよび負電圧Vssに基づいて駆動回路が作動して、正電圧Vddが印加された状態にあるトランスの一次巻線を駆動して二次巻線に交流電圧を誘起させる。また、直流変換部が、この交流電圧を整流して平滑する。これにより、内部基準電位(内部グランド)G2を基準として、上記電圧(正電圧Vf+および負電圧Vf−)がフローティング状態(グランドG1、正電圧Vddおよび負電圧Vssと電気的に分離された状態)で生成される。このようにして生成された正電圧Vf+および負電圧Vf−は、図2に示すように、上記の内部グランドG2がケース31に電気的に接続された状態で、クランプ式センサ2に供給される。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧として生成される。
【0033】
抵抗53は、一端が正電圧Vddに接続されると共に、他端がフォトカプラ44におけるフォトトランジスタのコレクタ端子に接続されている。これにより、抵抗53とフォトトランジスタとが正電圧Vddと負電圧Vssとの間に直列に接続された状態となる。このため、フォトトランジスタの抵抗値が積分信号V3の電圧値に応じて変化したときには、正電圧Vddおよび負電圧Vssの電位差(Vdd−Vss)が抵抗53の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで分圧されることにより、上記した積分信号V3aがフォトトランジスタのコレクタ端子に発生する。
【0034】
電圧生成部54は、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4(つまり基準電圧)を生成して、ケース31に印加する。この場合、電圧生成部54は、クランプ式センサ2のケース31、検出電極12、電流電圧変換回路41、積分回路42、駆動回路43およびフォトカプラ44と共にフィードバックループを形成して、電位差Vdiを減少させるように積分信号V3aを増幅する増幅動作を行うことにより、電圧信号V4を生成する。本例では、一例として、電圧生成部54は、交流増幅回路54a、位相補償回路54bおよび昇圧回路54cを備え、本発明における電圧生成回路を構成する。ここで、交流増幅回路54aは、積分信号V3aを入力して増幅することにより、電圧信号V4aを生成する。この場合、交流増幅回路54aは、積分信号V3aの電圧値についての絶対値の増加・減少に対応して、電圧値の絶対値が変化する電圧信号V4aを増幅動作によって生成する。位相補償回路54bは、フィードバック制御動作の安定化(発振防止)を図るため、電圧信号V4aを入力してその位相を調整して電圧信号V4bとして出力する。昇圧回路54cは、一例として昇圧トランスを用いて構成されて、電圧信号V4bを所定の倍率で昇圧することにより(極性は変えずに絶対を増加させることにより)、電圧信号V4を生成してケース31に印加する。電圧計55は、グランドG1の電位を基準として電圧信号V4を測定すると共に、その電圧値をディジタルデータに変換して電圧データDvとして外部に出力する。
【0035】
処理部56は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、電流測定部33から出力される電流データDiに基づいて測定対象電線4に流れる電流I1を算出する電流算出処理、電圧計55から出力される電圧データDvに基づいて測定対象電線4の交流電圧V1を算出する電圧算出処理、各データDi,Dvに基づいて測定対象電線4から供給される電力Wを算出する電力算出処理、および電流データDiに基づいて電流I1に含まれている高調波Dhiと電圧データDvに基づいて交流電圧V1に含まれている高調波Dhvとを算出する高調波算出処理を実行する。また、処理部56は、各処理で算出した電流I1、交流電圧V1、電力Wおよび各高調波Dhi,Dhvを表示部57に表やグラフの形式で表示させる。表示部57は、一例として、液晶ディスプレイなどのモニタ装置で構成されているが、プリンタなどの印字装置で構成することもできる。
【0036】
次いで、電力測定装置1による電力W等の測定動作について説明する。
【0037】
まず、測定対象電線4にクランプ式センサ2のクランプ部5をクランプさせる。この際に、クランプ式センサ2を手で掴んで、測定対象電線4にクランプ部5をクランプさせるが、指(例えば親指)を第2操作レバー18に掛ける前の状態では、図3に示すように、バネ19によって第1操作レバー17がセンサ本体部6から突出する方向に付勢され、かつバネ20によって第2操作レバー18が第1操作レバー17から離反する方向に付勢されている。このため、バネ19の付勢力により、可動センサアーム15が固定センサアーム13方向に回動して、その他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の他端部(同図中の左端部)と接触した状態となっている。また、バネ20の付勢力により、押さえアーム16も固定センサアーム13方向に回動して、その他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の内周面における中間部位と接触した状態となっている。
【0038】
このため、指を第2操作レバー18に掛けて、開口部6aから突出している第2操作レバー18および第1操作レバー17をセンサ本体部6の内部に押し込む。これにより、各バネ19,20の付勢力に抗して、可動センサアーム15および押さえアーム16が固定センサアーム13から離反する方向に回動して、クランプ部5は、図4に示す状態、すなわち、固定センサアーム13および可動センサアーム15の他端部同士が離間し、かつ固定センサアーム13と押さえアーム16とが離間して、測定対象電線4をクランプ可能な状態(開状態)に移行する。
【0039】
次いで、測定対象電線4を固定センサアーム13および可動センサアーム15間に導入し、第2操作レバー18に掛けていた指を第2操作レバー18から離す。これにより、バネ19から第1操作レバー17に加わる付勢力により、可動センサアーム15が固定センサアーム13方向に回動して、可動センサアーム15の他端部が固定センサアーム13の他端部と当接する(クランプ部5が開状態から閉状態に移行する)。また、バネ20から第2操作レバー18に加わる付勢力により、押さえアーム16が固定センサアーム13方向に回動する。この際に、固定センサアーム13および可動センサアーム15間に導入された測定対象電線4は、図1,3に示すように、押さえアーム16によって固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押し付けられる。このように、測定対象電線4を常に固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえアーム16で押し付けることができるため、固定センサアーム13と可動センサアーム15と間で測定対象電線4が自由に移動可能な状態と比較して、測定対象電線4の交流電圧V1を測定する際に重要となる測定対象電線4と検出電極12との間、具体的には測定対象電線4の芯線4aと検出電極12との間に形成される静電容量C0の容量値が大きく変動する事態が十分に回避されている。
【0040】
この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と測定対象電線4の芯線との距離に反比例して変化するが、クランプ式センサ2を測定対象電線4にクランプし終えた後は、湿度などの環境条件が一定のもとでは一定となる(変動しない)。また、静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、測定対象電線4の交流電圧V1の周波数が数百Hz程度であったとしても、測定対象電線4と検出電極12との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)となる。このため、この電力測定装置1のクランプ式センサ2では、測定対象電線4の交流電圧V1とケース31の電圧(電圧信号V4の電圧)とが大きく異なる場合(電位差Vdiが大きい場合)においても、電流電圧変換回路41を構成する第1演算増幅器41cに入力耐圧の低い安価な製品を使用することができ、この構成においても、電位差Vdiによる第1演算増幅器41cの破壊が回避されている。
【0041】
次いで、電力測定装置1の起動状態において、測定対象電線4の交流電圧V1と、ケース31の電圧(基準電圧。電圧信号V4の電圧)との電位差Vdiが増加しているとき(例えば、交流電圧V1の上昇に起因して電位差Vdiが増加しているとき)には、クランプ式センサ2の電圧検出部32では、測定対象電線4から検出電極12を介して電流電圧変換回路41に流れ込む(流入する)電流信号Iの電流量が増加する。この場合、電流電圧変換回路41は、出力している検出電圧信号V2の電圧値を低下させる。積分回路42では、この検出電圧信号V2の低下に起因して、第2演算増幅器42dの出力端子からコンデンサ42cを介して反転入力端子に向けて流れる電流が増加する。このため、積分回路42は、積分信号V3の電圧を上昇させる。また、この積分信号V3の電圧上昇に伴い、駆動回路43のトランジスタ43bが深いオン状態に移行する。これにより、フォトカプラ44では、その発光ダイオードに流れる電流が増加し、フォトトランジスタの抵抗が減少する。したがって、抵抗53の抵抗値とフォトトランジスタの抵抗値とで電位差(Vdd−Vss)が分圧されて生成される積分信号V3aは、その電圧値が低下する。
【0042】
本体ユニット3では、電圧生成部54が、この積分信号V3aに基づいて、生成している電圧信号V4の電圧値を上昇させる。この電力測定装置1では、このようにしてフィードバックループを構成する電流電圧変換回路41、積分回路42、駆動回路43、フォトカプラ44および電圧生成部54が、測定対象電線4の交流電圧V1の上昇を検出して、電圧信号V4の電圧値を上昇させるフィードバック制御動作を実行することにより、ケース31の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。
【0043】
また、交流電圧V1の低下に起因して電位差Vdiが増加したときには、検出電極12を介して電流電圧変換回路41から測定対象電線4に流れ出る(流出する)電流信号Iの電流量が増加する。この際には、フィードバックループを構成する電流電圧変換回路41等が上記のフィードバック制御動作とは逆の動作でのフィードバック制御動作を実行して、電圧信号V4の電圧を低下させることにより、ケース31の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させる。このようにして、電力測定装置1では、ケース31の電圧(電圧信号V4の電圧)を交流電圧V1に追従させるフィードバック制御動作が短時間に実行されて、ケース31の電圧(第1演算増幅器41cのバーチャルショートにより、検出電極12の電圧でもある)が交流電圧V1に一致させられる(収束させられる)。電圧計35は、電圧信号V4の電圧値をリアルタイムで計測して、その電圧値を示す電圧データDvを出力する。また、電圧信号V4は、測定対象電線4の交流電圧V1に一旦収束した後は、フィードバックループを構成する各構成要素が上記のように動作することにより、交流電圧V1の変動に追従する。したがって、測定対象電線4の交流電圧V1を示す電圧データDvが電圧計55から連続して出力される。
【0044】
一方、クランプ式センサ2の電流測定部33は、測定対象電線4に流れる電流I1を検出コイル14を介して検出して、電流I1の電流値を示す電流データDiに変換して出力する。
【0045】
処理部56は、電圧計55から出力された電圧データDv、および電流測定部33から出力された電流データDiを入力してメモりに記憶する。次いで、処理部56は、電流算出処理、電圧算出処理、電力算出処理および高調波算出処理を順次実行して、電圧データDvに基づいて測定対象電線4の交流電圧V1を、電流データDiに基づいて測定対象電線4に流れる電流I1を、各データDi,Dvに基づいて測定対象電線4から供給される電力Wおよび高調波Dhi,Dhvをそれぞれ算出してメモリに記憶する。最後に、処理部56は、メモリに記憶されている測定結果(交流電圧V1、電流I1、電力Wおよび高調波Dhi,Dhv)を表示部57に表示させる。これにより、電力測定装置1による電力W等の測定が完了する。
【0046】
このように、この電力測定装置1では、クランプ式センサ2のクランプ部5で測定対象電線4をクランプした状態において、測定対象電線4と検出電極12との間に形成されている静電容量C0および検出電極12を介して、交流電圧V1および電圧信号V4(基準電圧)の電位差に応じた電流値で測定対象電線4と電流電圧変換回路41との間で流れる電流信号Iを電流電圧変換回路41で検出電圧信号V2に変換し、この検出電圧信号V2(具体的には、検出電圧信号V2と基準電圧との電位差に基づいて流れる電流)を積分回路42で積分して、検出電極12の電圧(ケース31の電圧)と測定対象電線4の交流電圧V1との電位差Vdiに応じて振幅が変化する積分信号V3を生成し、この積分信号V3をフォトカプラ44を用いて電気的に絶縁された積分信号V3aに変換し、この積分信号V3aに基づいて電圧生成部54が電圧信号V4を生成してケース31に印加する。
【0047】
したがって、この電力測定装置1によれば、従来の構成とは異なり、可変容量回路およびその駆動回路を不要とすることができるため、電圧検出部32の回路構成を簡略化することができる。また、測定対象電線4と検出電極12との間に形成されている静電容量C0の容量値が一般的に極めて小さい(例えば数pF〜数十pF程度)ため、測定対象電線4と検出電極12との間のインピーダンスが十分に大きな値(数MΩ)とすることができる結果、電流電圧変換回路41を構成する第1演算増幅器41cに入力耐圧の低い安価な製品を使用したとしても、電位差Vdiによる第1演算増幅器41cの破壊を回避することができる。さらに、電力測定装置1によれば、測定対象電線4をクランプ可能に構成されてこの測定対象電線4に流れる電流I1を検出するためのクランプ部5に、測定対象電線4の交流電圧V1を非接触で測定するための検出電極12が配設されているため、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっている構成とは異なり、1回のクランプ操作で測定対象電線4に流れる電流I1および測定対象電線4の交流電圧V1を検出可能な状態とすることができる。したがって、測定作業を大幅に簡略化することができる。
【0048】
また、この電力測定装置1によれば、絶縁回路としてフォトカプラ44を使用したことにより、電流電圧変換回路41と、その後段の回路とを任意の部位で簡易に電気的に絶縁する(分離する)ことができる。また、フォトカプラ44の周波数特性が広い周波数範囲に亘って良好なため、広い周波数範囲に亘る測定対象電線4の交流電圧V1を精度良く測定することができ、交流電圧V1に基づいて算出される電力Wおよび交流電圧V1に含まれている高調波についても精度良く測定することができる。なお、フォトカプラ44等の光絶縁素子に代えてトランス(例えばパルストランス)を絶縁回路として使用することもできるし、フォトカプラ44とトランスとを並列に接続して絶縁回路を構成することもできる。この構成においては、トランスの一次巻線が絶縁回路の一次側回路として機能し、二次巻線が二次側回路として機能する。この場合、前者の構成では、一般的にトランスがフォトカプラ44よりも高い周波数域で良好な周波数特性を有しているため、交流電圧V1の周波数が高い周波数に限定されているときには、トランスを使用することで、交流電圧V1および交流電圧V1に含まれている高調波を精度良く測定することができる。また、後者の構成では、低周波数域側ではフォトカプラ44が主として作動し、高周波数域側ではトランスが主として作動することにより、絶縁回路の周波数特性を広帯域化することができる結果、一層広い周波数範囲に亘る測定対象電線4の交流電圧V1、および交流電圧V1に含まれている高調波を精度良く測定することができる。電流測定部33でも、上記したように絶縁回路(フォトカプラ)を用いて電流データDiを電気的に絶縁した状態で本体ユニット3に出力するため、電圧検出部32と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
また、この電力測定装置1では、測定対象電線4を取り囲む閉磁路を形成する磁気コア11a,11bを有してクランプ部5が構成され、磁気コア11a,11b(閉磁路)を通過する磁束の変化に基づいて電流I1を検出する検出コイル14を備えている。したがって、この電力測定装置1によれば、クランプ部5の磁気コア11a,11bによって漏れの少ない状態で磁束を検出コイル14へ誘導できるため、検出コイル14において磁束の変化に基づいて高精度で電流を検出することができる。
【0050】
また、この電力測定装置1では、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられた状態で、固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に押さえアーム16が配設されている。したがって、この電力測定装置1によれば、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を押さえアーム16の他端部で固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付けることができる。このため、固定センサアーム13と可動センサアーム15と間で測定対象電線4が自由に移動可能な状態で測定対象電線4をクランプする構成と比較して、測定対象電線4の交流電圧V1を非接触で測定するときに重要となる測定対象電線4(具体的には測定対象電線4の芯線4a)と検出電極12との間に形成される静電容量C0の容量値の変動を低減することができ、これにより、測定対象電線4の交流電圧V1を非接触で精度良く測定できる結果、電力Wについても高精度で測定することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記したクランプ式センサ2では、検出コイル14を磁気コア11bに巻回して可動センサアーム15内に配設しているが、磁気コア11aに巻回して固定センサアーム13内に配設することもできる。また、一対のセンサアームのうちの一方を固定センサアーム13としてセンサ本体部6に固定する構成としたが、図示はしないが、一対のセンサアームの双方を可動センサアーム15と同様の構成の可動センサアームとすることもできる。また、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に検出電極12が内部に配設された固定センサアーム13と、一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15とを備えた例について説明したが、図示はしないが、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に磁気コア11aが内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bおよび検出電極12が内部に配設されると共に一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設され、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を他端部で可動センサアーム15における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアーム16とを備えてクランプ部5を構成することもできる。また、各磁気コア11a,11bによって測定対象電線4を取り囲むように形成される閉磁路内の磁束の変化を検出コイル14で検出する構成に代えて、ホール素子などの磁電変換素子を本発明における電流検出部の一部として使用して検出する構成とすることもできる。また、磁気コア11a,11bを使用せずに、検出コイル14を空芯コイルとして構成して、両センサアーム13,15内に配設する構成とすることもできる。
【0052】
また、検出電極12を固定センサアーム13および可動センサアーム15のいずれか一方に配設する例について説明したが、図示はしないが、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に磁気コア11aが内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bが内部に配設されると共に一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、検出電極12が内部に配設されると共に一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設され、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を他端部で固定センサアーム13および可動センサアーム15のいずれか一方に押さえ付ける押さえアーム16とを備えてクランプ部5を構成することもできる。
【0053】
また、上記のクランプ式センサ2では、測定対象電線4のクランプおよび開放を容易に行えるようにするため、分割された2つの磁気コア11a,11bを用いて、クランプ部5を閉状態から開状態へ、また開状態から閉状態へ移行可能な構成としたが、2つの分割された磁気コア11a,11bに代えて、図5に示すクランプ式センサ2Aのように、1つのトロイダル型の磁気コア91を使用して本発明における磁路形成部としてのクランプ部5Aを構成してもよいし、図6に示すクランプ式センサ2Bのように、一部にギャップが存在する磁気コア92(例えばU字状のコア)を使用して本発明における磁路形成部としてのクランプ部5Bを構成することもできる。なお、クランプ式センサ2と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
また、例えば、フォトカプラ44をその駆動回路43と共に積分回路42の後段に配置して、積分信号V3をこの積分信号V3と電気的に絶縁された積分信号V3aに変換する構成を採用した例について上記したが、フォトカプラ44をその駆動回路43と共に積分回路42の前段、すなわち、電流電圧変換回路41と積分回路42との間に配置して、検出電圧信号V2をこの検出電圧信号V2と電気的に絶縁された新たな検出電圧信号に変換して積分回路42に出力する構成を採用することもできる。この場合、積分回路42を構成する第2演算増幅器42dについては、その非反転入力端子が抵抗42aを介してケース31に接続される構成に代えて、非反転入力端子が抵抗42aを介して本体ユニット3側の所定電位に接続される構成とする。また、第2演算増幅器42dの電源については、正電圧Vddおよび負電圧Vssを用いる構成とする。また、前述したようにケース31で覆うべき部位は、電流電圧変換回路41からフォトカプラ44の一次側回路、つまり絶縁回路の一次側回路までの回路となる。このため、絶縁回路の位置を上記のように変更した場合には、絶縁回路の配置に応じてケース31で覆うべき回路(ケース31内に収容すべき回路)が変わることになる。例えば、フォトカプラ44をその駆動回路43と共に積分回路42の前段に配置する構成では、電流電圧変換回路41、駆動回路43およびフォトカプラ44の一次側回路をケース31で覆う構成とする。
【0055】
また、電流電圧変換回路41は上記の構成に代えて、図7や図8に示す構成を採用して実現することもできる。なお、図1に示す構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。各図に示す電流電圧変換回路41では、検出電極12とケース31(基準電圧の部位)との間に抵抗41d(検出部)が配置されている。これにより、この抵抗41dで電流信号Iを電圧V5に変換することができ、図7では、この電圧V5(抵抗41dの両端間に発生する電圧)をバッファ(倍率が1倍の増幅器)として機能する第1演算増幅器41c(増幅器)が検出電圧信号V2として出力する。また、図8では、抵抗41dによって電流信号Iから変換された電圧V5を、抵抗41eが追加されて非反転増幅器として機能する第1演算増幅器41c(増幅器)が検出電圧信号V2として出力する。したがって、図7,8に示す構成においても、図1に示す構成を採用した電力測定装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
また、本発明の測定装置を電力測定装置1に適用した例について上記したが、電流I1および交流電圧V1のみを測定する電流電圧測定装置としてもよいし、高調波Dhi,Dhvのみを測定する高調波測定装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】電力測定装置1の構成図である。
【図2】電力測定装置1のクランプ式センサ2および本体ユニット3の回路図である。
【図3】クランプ式センサ2の構造を説明するための一部切欠き正面図である(閉状態(クランプ状態))。
【図4】クランプ式センサ2の構造を説明するための正面図である(開状態(非クランプ状態))。
【図5】クランプ式センサ2Aの構造を説明するための正面図である。
【図6】クランプ式センサ2Bの構造を説明するための正面図である。
【図7】電流電圧変換回路41の他の構成を示す電圧検出部32の回路図である。
【図8】電流電圧変換回路41の他の構成を示す電圧検出部32の回路図である。
【符号の説明】
【0058】
1 電力測定装置
2,2A,2B クランプ式センサ
3 本体ユニット
4 測定対象電線
5,5A,5B クランプ部
6 センサ本体部
11a,11b,91,92 磁気コア
12 検出電極
13 固定センサアーム
15 可動センサアーム
16 押さえアーム
41 電流電圧変換回路
42 積分回路
44 フォトカプラ
54 電圧生成部
I1 電流
V1 交流電圧
V2 検出電圧信号
V3,V3a 積分信号
Vdi 電位差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部、および当該クランプ部に配設されて当該測定対象電線の交流電圧を検出するための検出電極を備えているクランプ式センサと、測定装置本体とを有する測定装置であって、
前記クランプ式センサは、第1の入力端子が基準電圧に規定されると共に、第2の入力端子が前記検出電極に直接または間接に接続されて、当該検出電極と当該第2の入力端子に接続された帰還回路とを含む経路において前記測定対象電線の前記交流電圧と当該基準電圧との電位差に応じた電流値で流れる検出電流を検出電圧信号に変換して出力する演算増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、当該積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路とを備え、
前記測定装置本体は、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路を備えている測定装置。
【請求項2】
測定対象電線をクランプ可能に構成されると共に当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部、および当該クランプ部に配設されて当該測定対象電線の交流電圧を検出するための検出電極とを備えているクランプ式センサと、測定装置本体とを有する測定装置であって、
前記クランプ式センサは、前記検出電極と基準電圧の部位との間に配設されると共に前記測定対象電線の前記交流電圧と当該基準電圧との電位差に応じた電流値で流れる検出電流を電圧信号に変換する検出部、および当該電圧信号をインピーダンス変換して検出電圧信号として出力する増幅器を有する電流電圧変換回路と、前記検出電圧信号を積分して前記電位差に応じて振幅が変化する積分信号を出力する積分回路と、当該積分回路の前段または後段に配設されて、前記検出電圧信号および前記積分信号のうちの一方を入力すると共に電気的に絶縁して出力する絶縁回路とを備え、
前記測定装置本体は、前記電位差が減少するように前記積分信号に基づく信号を増幅して前記基準電圧を生成する電圧生成回路を備えている測定装置。
【請求項3】
前記絶縁回路は、光絶縁素子および/またはトランスを備えて構成されている請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記クランプ部は前記測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有して構成され、
前記磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて前記電流を検出する電流検出部を備えている請求項1から3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定されると共に前記検出電極が内部に配設された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が当該可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該可動センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項4記載の測定装置。
【請求項7】
前記クランプ式センサは、前記電流電圧変換回路、前記積分回路および前記絶縁回路が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと当該可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームおよび当該可動センサアームのいずれか一方に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項4記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−25653(P2010−25653A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185534(P2008−185534)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】