説明

測定装置

【課題】電源電圧の低電圧化を図りつつ、抵抗値などのパラメータの測定範囲の縮小を回避する。
【解決手段】電圧測定モードのときには電池電圧Vccの中間電圧である第1中間電圧Vf1(=Vcc/2)を生成して共通端子4に出力し、抵抗測定モードのときには第1中間電圧Vf1よりも低い電圧の第2中間電圧Vf2を生成して共通端子4に出力する中間電圧生成部6と、抵抗測定モードのときには電圧測定端子2に接続されて電圧測定端子2および共通端子4間に接続された測定対象体21に直流定電流I1を供給する定電流供給部7と、電圧測定モードのときには電圧測定端子2および共通端子4間の端子間電圧を測定対象電圧Vとして測定し、抵抗測定モードのときには端子間電圧の電圧値および直流定電流I1の電流値に基づいて抵抗値Robを算出する処理部14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池などの電源から供給される電源電圧で作動して、入力される測定対象電圧、および接続される測定対象体についての抵抗値などのパラメータを測定対象体に直流電流を供給して測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置に類似する測定装置として、下記特許文献1に開示された電圧電流測定器が知られている。この電圧電流測定器は、ハンディタイプのデジタル電圧電流測定器であって、絶縁性材料で成形された筐体と、液晶表示器等から成るデジタル表示部と、測定に関する機能等を選択するための複数の押しボタンと、動作モードを選択するためのダイヤル式モード切替スイッチと、測定プローブが接続される電圧測定端子と、電流測定端子と、共通端子(COM)とを備えている。また、電流測定端子と共通端子との間に電流検出用抵抗器(抵抗値は既知)が接続されている。
【0003】
また、機器内部に配設された電気回路(A/D変換回路(ADC)、マイクロプロセッサおよび表示部など)は、機器内に配設された電池から電池電圧(直流電圧)の供給を受けて作動する。この場合、A/D変換回路は、電池電圧の供給を受けつつ、共通端子を基準として電圧測定端子に入力される直流電圧や交流電圧をデジタル値に変換して出力可能に構成されている必要がある。このため、この電圧電流測定器では、電池電圧に基づいて、A/D変換回路のアナログ入力電圧範囲の1/2の電位(通常は、電池電圧の1/2の電圧(中間電圧))をフローティング電位(電圧)として生成して、共通端子に供給(印加)すると共に、A/D変換回路に基準電圧として供給する構成を採用している。
【0004】
以上のように構成された電圧電流測定器では、電圧測定を行う場合には、電圧測定端子および共通端子に2本の測定プローブを接続すると共にモード切替スイッチを電圧測定モードに切り替えることで、両測定プローブを介して測定する電圧を入力する。入力した電圧はA/D変換回路に供給され、A/D変換回路がこの電圧をデジタル値に変換してマイクロプロセッサに送る。マクロプロセッサは、電圧測定時には、入力したデジタル値を電圧測定値として表示部に表示させる。
【0005】
また、この電圧電流測定器では、電流測定を行う場合には、電流測定端子および共通端子に2本の測定プローブを接続すると共にモード切替スイッチを電流測定モードに切り換えた状態で、測定する電流の経路に配設される。これにより、この電流の経路中に電流測定端子および共通端子を介して電流検出用抵抗器が接続されるため、電流が電流検出用抵抗器に流れることに起因して電流検出用抵抗器に発生する両端電圧が、A/D変換回路に供給される。A/D変換回路は、この両端電圧をデジタル値に変換してマイクロプロセッサに送る。マクロプロセッサは、電流測定時には、入力したデジタル値と電流検出用抵抗器の抵抗値(既知)とに基づいて電流値を算出して、表示部に表示させる。
【0006】
また、この電圧電流測定器では、単独では測定対象体の抵抗値測定を行うことはできないが、以下のようにすることで、この抵抗値を測定することも可能である。例えば、直流定電流源を別途用意して直流定電流を測定対象体に供給し、この状態において測定対象体に発生する電圧(両端電圧)を電圧電流測定器で測定すると共に、測定した電圧の電圧値を定電流の電流値で除算することにより、測定対象体の抵抗値を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−5675号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、装置単体で、電圧測定や電流測定と共に抵抗測定も実行し得るハンディタイプの測定装置も開発されており、この測定装置は、例えば、上記した電圧電流測定器内に、電池からの電池電圧で作動して直流定電流を生成する定電流回路(直流定電流回路)を配設し、電圧測定モードおよび電流測定モードのときには、定電流回路を電圧測定端子、電流測定端子および共通端子のいずれからも切り離し、抵抗測定モードのときにのみ、定電流回路を電圧測定端子に接続する構成となっている。
【0009】
この構成の測定装置では、抵抗測定モードのときには、定電流回路から出力された直流定電流は、電圧測定端子、測定対象体および共通端子を経由してフローティング電位に流れる構成となる。また、抵抗測定に際して十分な測定精度を常に確保するには、常に規定以上の電流値の直流定電流を測定対象体に供給する必要があるが、この測定装置では、定電流回路から出力する直流定電流の電流値は、電池電圧と共通端子の電位(フローティング電位)との電位差によって制限される。このため、低い電池電圧では、この電位差も小さくなることから、測定対象体の抵抗値の測定範囲が狭まる(縮小する)ことになる。つまり、測定対象体の抵抗値が大きいときには、この測定範囲を超えるため、抵抗値の測定が困難となる。したがって、旧来の測定装置の多くでは、多数の電池を直列に接続したり、また起電圧の高い電池を使用したりして、電池から高い電池電圧(例えば6V以上)を出力する構成として、測定対象体の抵抗値の測定範囲を広げるようにしていた。
【0010】
一方、近年では、A/Dコンバータやマイクロプロセッサなどの電子デバイスの低電圧化が進み、これらの電子デバイスを作動させるのに必要な電池電圧の低電圧化が可能になると共に、測定装置のさらなる小型化・軽量化の要請もあることから、より低い電池電圧(より数の少ない電池)で動作可能な測定装置が望まれている。しかしながら、上記したように、電池電圧の低下、すなわち電源電圧の低下は、抵抗測定モードにおける電圧測定端子と共通端子との間の電位差の低下を引き起こすため、測定対象体の抵抗値の測定範囲を狭めるという課題が発生する。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、電源電圧の低電圧化を図りつつ、抵抗値などの測定対象体のパラメータの測定範囲の縮小を回避し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、電源から供給される電源電圧で作動して、電圧測定のときには電圧測定端子および共通端子間に入力される測定対象電圧の電圧値を測定し、抵抗体、コンデンサおよびダイオードのうちのいずれか1つを測定対象体として抵抗値、静電容量値および順方向電圧値のうちの1つのパラメータを測定するパラメータ測定のときにはパラメータ測定端子および前記共通端子間に接続される前記測定対象体に直流電流を供給して前記パラメータを測定する測定装置であって、前記電圧測定のときには前記電源電圧の中間電圧である第1中間電圧を生成して前記共通端子に出力し、前記パラメータ測定のときには、前記第1中間電圧よりも低い電圧の第2中間電圧を生成して前記共通端子に出力する中間電圧生成部と、前記パラメータ測定のときに、前記パラメータ測定端子を介して前記測定対象体に前記直流電流をソース電流として供給する電流供給部と、前記電圧測定のときには前記電圧測定端子および前記共通端子間の端子間電圧を前記測定対象電圧として測定し、前記パラメータ測定のときには前記パラメータ測定端子および前記共通端子間の端子間電圧の電圧値と前記直流電流の電流値とに基づいて前記パラメータを測定する処理部とを備えている。
【0013】
また、請求項2記載の測定装置は、電源から供給される電源電圧で作動して、電圧測定のときには電圧測定端子および共通端子間に入力される測定対象電圧の電圧値を測定し、抵抗体、コンデンサおよびダイオードのうちのいずれか1つを測定対象体として抵抗値、静電容量値および順方向電圧値のうちの1つのパラメータを測定するパラメータ測定のときにはパラメータ測定端子および前記共通端子間に接続される前記測定対象体に直流電流を供給して前記パラメータを測定する測定装置であって、前記電圧測定のときには前記電源電圧の中間電圧である第1中間電圧を生成して前記共通端子に出力し、前記パラメータ測定のときには、前記第1中間電圧よりも高い電圧の第2中間電圧を生成して前記共通端子に出力する中間電圧生成部と、前記パラメータ測定のときに、前記パラメータ測定端子を介して前記測定対象体に前記直流電流をシンク電流として供給する電流供給部と、前記電圧測定のときには前記電圧測定端子および前記共通端子間の端子間電圧を前記測定対象電圧として測定し、前記パラメータ測定のときには前記パラメータ測定端子および前記共通端子間の端子間電圧の電圧値と前記直流電流の電流値とに基づいて前記パラメータを測定する処理部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の測定装置では、電圧測定のときには、共通端子に対して第1中間電圧を出力し、抵抗測定のときには、共通端子に対して第1中間電圧よりも低い電圧の第2中間電圧を出力する。したがって、この測定装置によれば、電源電圧を低電圧化した場合においても、パラメータ測定のときの例えば増幅部やA/D変換部などにおける正電圧側の入力電圧範囲を拡大することができるため、同一の電流値の直流電流を測定対象体に電流供給部からソース電流として供給するという条件下において、従来の測定装置よりも、測定対象体が抵抗体のときには、より大きな抵抗値の測定対象体を測定することができ(つまり、測定し得る測定対象体の抵抗値の上限(測定範囲の上限)を高めることができ)、測定対象体がコンデンサのときには、静電容量値の測定精度を高めることができ、測定対象体がダイオードのときには、順方向電圧の大きなダイオード(白色LEDなど)の順方向電圧の測定をすることができる。
【0015】
請求項2記載の測定装置では、電圧測定のときには、共通端子に対して第1中間電圧を出力し、抵抗測定のときには、共通端子に対して第1中間電圧よりも高い電圧の第2中間電圧を出力する。したがって、この測定装置によれば、電源電圧を低電圧化した場合においても、パラメータ測定のときの例えば増幅部やA/D変換部などにおける負電圧側の入力電圧範囲を拡大することができるため、同一の電流値の直流電流を測定対象体に電流供給部からシンク電流として供給するという条件下において、従来の測定装置よりも、測定対象体が抵抗体のときには、より大きな抵抗値の測定対象体を測定することができ(つまり、測定し得る測定対象体の抵抗値の上限(測定範囲の上限)を高めることができ)、測定対象体がコンデンサのときには、静電容量値の測定精度を高めることができ、測定対象体がダイオードのときには、順方向電圧の大きなダイオード(白色LEDなど)の順方向電圧の測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】測定装置1の構成図である。
【図2】測定装置1Aの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、測定装置の実施の形態について説明する。なお、測定対象体のパラメータとして、抵抗体の抵抗値を測定する例を挙げて説明する。また、このパラメータの測定に際して測定対象体を接続するパラメータ測定端子を、電圧測定端子と兼用する例を挙げて説明する。また、電源として電池を使用する例を挙げて説明する。
【0018】
測定装置1は、図1に示すように、電圧測定端子(パラメータ測定端子を兼用する)2、電流測定端子3、共通端子4、電池5、中間電圧生成部6、定電流供給部7、第1スイッチ8、電流検出抵抗9、第2スイッチ10、差動増幅部11、A/D変換部12、操作部13、処理部14および表示部15を備えている。この測定装置1は、電源としての電池5から供給される電池電圧Vccを電源電圧(作動電圧)として作動して、電圧測定モードのときには電圧測定端子2および共通端子4間に入力される測定対象電圧Vの電圧値Vobを測定し、電流測定モードのときには電流測定端子3および共通端子4間に入力される測定対象電流Iの電流値Iobを測定し、抵抗測定モード(パラメータ測定モード)のときには電圧測定端子2および共通端子4間に接続される測定対象体(本例では抵抗体)21の抵抗値Robを測定する。
【0019】
電圧測定端子2、電流測定端子3および共通端子4は、不図示の測定プローブを接続可能に構成されている。電池5は、測定装置1内に、一例として交換可能に内蔵されている。本例では、一例として、電池5は、2つの乾電池が直列に接続されて構成されて、約3Vの電池電圧Vccを出力する。
【0020】
中間電圧生成部6は、電池電圧Vccに基づいて、電池電圧Vccの中間電圧(Vcc/2)である第1中間電圧Vf1(=Vcc/2)、および第1中間電圧Vf1よりも低い電圧の第2中間電圧Vf2のうちの処理部14から出力される制御信号S1によって選択された一方の電圧をフローティング電圧Vfとして生成して共通端子4に出力する。本例では一例として、中間電圧生成部6は、分圧回路6aおよびバッファ回路6bを備えている。分圧回路6aは、一例としてスイッチを切り替えることによって分圧比を変更可能な抵抗回路で構成されて、電池電圧Vccを分圧して、電圧Vf1および電圧Vf2のうちの一方の電圧を生成する。バッファ回路6bは、電池電圧Vccで作動して、分圧回路6aから出力される電圧(電圧Vf1または電圧Vf2)を入力すると共に、1倍の増幅率で増幅してフローティング電圧Vfとして出力する。本例では、電池電圧Vccは、上記したように約3Vであるため、中間電圧生成部6は、第1中間電圧Vf1としてその半分の1.5Vを出力し、第2中間電圧Vf2として第1中間電圧Vf1よりも1V低い、0.5Vを出力するものとする。
【0021】
定電流供給部7は、電流供給部の一例であって、電池電圧Vccで作動すると共に処理部14によって制御されて、予め規定された電流値の直流定電流I1を生成してソース電流として出力する。定電流供給部7から出力された直流定電流I1は、第1スイッチ8を介して電圧測定端子2に出力される。なお、定電流供給部7は、予め規定された複数の抵抗測定レンジに対応して、複数の電流値の直流定電流I1を生成するが、本例では、発明の理解を容易にするため、1つの測定レンジの場合について説明する。第1スイッチ8は、オン・オフスイッチで構成されると共に処理部14によって制御されて、定電流供給部7と電圧測定端子2とを、接続状態および非接続状態(切り離し状態)のいずれか一方に移行させる。
【0022】
電流検出抵抗9は、予め規定された抵抗値に規定されて、電流測定端子3と共通端子4との間に接続されている。第2スイッチ10は、一例として、1回路2接点のスイッチで構成されて、電圧測定端子2および電流測定端子3と、差動増幅部11における一方の入力端子との間に配設されている。また、第2スイッチ10は、処理部14によって制御されて、電圧測定端子2および電流測定端子3のうちのいずれか一方を差動増幅部11の一方の入力端子に選択的に接続する。
【0023】
差動増幅部11は、増幅部の一例であって、電池電圧Vccで作動する。また、差動増幅部11は、他方の入力端子が共通端子4に接続されることにより、第2スイッチ10によって電圧測定端子2が一方の入力端子に接続されたときには、電圧測定端子2および共通端子4間に入力される電圧(電圧測定端子2および共通端子4間の端子間電圧)を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。一方、差動増幅部11は、第2スイッチ10によって電流測定端子3が一方の入力端子に接続されたときには、電流測定端子3と共通端子4との間に接続された電流検出抵抗9の両端間に発生する両端電圧(電流測定端子3および共通端子4間の端子間電圧)を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。
【0024】
A/D変換部12は、電池電圧Vccで作動して、入力した増幅電圧V2をデジタルデータDv(増幅電圧V2の瞬時値を示すデータ)に変換して出力する。操作部13は、一例としてロータリースイッチおよびコード生成回路(いずれも図示せず)を備えると共に電池電圧Vccで作動して、ロータリースイッチの操作によって選択された電圧測定モード、抵抗測定モードおよび電流測定モードのうちの1つの測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。
【0025】
処理部14は、一例として、電池電圧Vccで作動するCPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備え、操作部13から出力されるモードデータDmで示される測定モードに応じて、中間電圧生成部6、定電流供給部7、第1スイッチ8および第2スイッチ10に対する制御処理、およびA/D変換部12からのデジタルデータDvに基づく測定処理を実行する。一例として、処理部14は、中間電圧生成部6に対しては、制御信号S1を出力することにより、第1中間電圧Vf1および第2中間電圧Vf2のうちのいずれか一方をフローティング電圧Vfとして出力させる。また、処理部14は、測定処理において算出した測定値Ddを表示部15に表示させる表示処理を実行する。表示部15は、電池電圧Vccで作動する表示装置(一例としてLCD)で構成されて、測定値Ddを画面上に表示する。
【0026】
次に、測定装置1の動作について、図1を参照して説明する。
【0027】
まず、操作部13のロータリースイッチが操作されて、電圧測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この電圧測定モードでは、電圧測定端子2および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
【0028】
測定装置1では、電圧測定モードが選択されると、操作部13が、電圧測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
【0029】
この制御処理では、処理部14は、第1スイッチ8に対する制御を実行して、第1スイッチ8をオフ状態に移行させることにより、電圧測定端子2と定電流供給部7とを切り離す。また、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電圧測定端子2を接続する。また、処理部14は、中間電圧生成部6に対する制御を実行して、第1中間電圧Vf1をフローティング電圧Vfとして出力させる。これにより、制御処理が完了する。
【0030】
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、両測定プローブ間に測定対象電圧Vが入力されると、差動増幅部11は、電圧測定端子2および第2スイッチ10と、共通端子4とを介してこの測定対象電圧Vを入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。この測定対象電圧Vが直流電圧のときには、差動増幅部11における一方の入力端子の電位は、フローティング電圧Vfが印加(供給)されている他方の入力端子の電位(共通端子4の電位)に対して常に正電圧側において変動する。一方、この測定対象電圧Vが交流電圧のときには、差動増幅部11における一方の入力端子の電位は、フローティング電圧Vfが印加(供給)されている他方の入力端子の電位(共通端子4の電位)を基準として、正電圧側(フローティング電圧Vfよりも高電圧側)および負電圧側(フローティング電圧Vfよりも低電圧側)において同じ電圧幅で変動する。
【0031】
本例の電圧測定モードでは、上記したようにフローティング電圧Vfが電池電圧Vcc(3V)の1/2の電圧(1.5V)に規定されているため、差動増幅部11での正電圧側および負電圧側の各入力電圧範囲が同一となるように規定されている。これにより、差動増幅部11は、測定対象電圧Vが直流電圧のときには、正電圧側の入力電圧範囲内である限りにおいて、測定対象電圧Vを歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。また、差動増幅部11は、測定対象電圧Vが交流電圧のときには、この測定対象電圧Vに対する入力電圧範囲を最大にした状態で、測定対象電圧Vを歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。
【0032】
A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部14に出力する。測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期で入力すると共に、デジタルデータDvを入力する都度、このデジタルデータDvに基づいて測定対象電圧Vの電圧値Vob(電圧測定端子2および共通端子4間の端子間電圧)を算出する。また、処理部14は、電圧値Vobを算出する都度、表示処理を実行して、算出した電圧値Vobを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象電圧Vの電圧値Vobが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象電圧Vの測定が可能となる。
【0033】
次に、操作部13のロータリースイッチが操作されて、電流測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この電流測定モードでは、電流測定端子3および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
【0034】
測定装置1では、電流測定モードが選択されると、操作部13が、電流測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
【0035】
この制御処理では、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電流測定端子3を接続するという制御を除く他の制御については、上記した電圧測定モードの制御処理と同様の制御を各構成要素に対して実行する。
【0036】
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、測定装置1が、両測定プローブを介して、測定対象電流Iの電流経路に接続されたときには、電流測定端子3および共通端子4間に接続された電流検出抵抗9に測定対象電流Iが流れることにより、電流検出抵抗9の両端間に両端電圧(電流測定端子3および共通端子4間の端子間電圧でもある)が発生する。差動増幅部11は、この両端電圧を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。この場合、フローティング電圧Vfとしての第1中間電圧Vf1が共通端子4に供給されているため、測定対象電流Iが交流電流のときであっても、差動増幅部11は、上記した測定対象電圧Vが交流電圧であるときと同様にして、交流の両端電圧を、歪ませることなく増幅して増幅電圧V2として出力する。
【0037】
A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部14に出力する。測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期で入力すると共に、デジタルデータDvを入力する都度、このデジタルデータDvおよび電流検出抵抗9の抵抗値(既知)に基づいて測定対象電流Iの電流値Iobを算出する。また、処理部14は、電流値Iobを算出する都度、表示処理を実行して、算出した電流値Iobを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象電流Iの電流値Iobが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象電流Iの測定が可能となる。
【0038】
次に、操作部13のロータリースイッチが操作されて、抵抗測定モードが選択された場合の測定装置1の動作について説明する。なお、この抵抗測定モードでは、電圧測定端子2および共通端子4に測定プローブ(不図示)がそれぞれ接続されているものとする。
【0039】
測定装置1では、抵抗測定モードが選択されると、操作部13が、抵抗測定モードを示すモードデータDmを処理部14に出力する。処理部14は、このモードデータDmを入力したときには、まず、制御処理を実行する。
【0040】
この制御処理では、処理部14は、第1スイッチ8に対する制御を実行して、第1スイッチ8をオン状態に移行させることにより、電圧測定端子2と定電流供給部7とを接続する。また、処理部14は、第2スイッチ10に対する制御を実行して、差動増幅部11の一方の入力端子に電圧測定端子2を接続する。また、処理部14は、中間電圧生成部6に対する制御を実行して、中間電圧生成部6内のスイッチをオン状態に移行させることで、第2中間電圧Vf2をフローティング電圧Vfとして出力させる。また、処理部14は、定電流供給部7に対する制御を実行して、直流定電流I1を生成して出力可能な状態に移行させる。これにより、制御処理が完了する。
【0041】
次いで、処理部14は、測定処理を開始する。この状態において、両測定プローブ間に測定対象体21が接続されると、定電流供給部7から、第1スイッチ8、電圧測定端子2、測定対象体21および共通端子4を介して第2中間電圧Vf2に至る電流経路が形成される。これにより、定電流供給部7によるこの電流経路への直流定電流I1の出力(供給)が開始されるため、測定対象体21の両端間、すなわち電圧測定端子2および共通端子4間に、測定対象体21の抵抗値Robに直流定電流I1の電流値を乗算して得られる電圧が発生する。
【0042】
本例では、第1中間電圧Vf1(本例では1.5V)よりも低い第2中間電圧Vf2(本例では0.5V)がフローティング電圧Vfとして共通端子4に印加されていることから、第1中間電圧Vf1をフローティング電圧Vfとして共通端子4に印加する従来の構成と比較して、差動増幅部11における正電圧側の入力電圧範囲が拡大されている(本例では、1Vだけ拡大されている)。したがって、この測定装置1では、同一の電流値の直流定電流I1を測定対象体21に供給するという条件の下で、従来の測定装置よりも、より大きな抵抗値の測定対象体21を測定可能となっている。
【0043】
差動増幅部11は、この電圧測定端子2および共通端子4間に発生する端子間電圧を入力電圧V1として入力すると共に増幅して、増幅電圧V2として出力する。A/D変換部12は、この増幅電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部14に出力する。
【0044】
測定処理を開始している処理部14は、このデジタルデータDvを所定の周期で入力すると共に、デジタルデータDvを入力する都度、このデジタルデータDvおよび直流定電流I1の電流値(既知)に基づいて測定対象体21の抵抗値Robを算出する。また、処理部14は、抵抗値Robを算出する都度、表示処理を実行して、算出した抵抗値Robを表示部15に測定値Ddとして更新しつつ表示させる。これにより、測定対象体21の抵抗値Robが表示部15に測定値Ddとして表示されるため、測定装置1を使用した測定対象体21の抵抗測定が可能となる。
【0045】
このように、この測定装置1では、電圧測定モードおよび電流測定モードのときには、共通端子4に対して第1中間電圧Vf1を出力(印加)し、抵抗測定モードのときには、共通端子4に対して第1中間電圧Vf1よりも低い電圧の第2中間電圧Vf2を出力(印加)する。
【0046】
したがって、この測定装置1によれば、電源電圧としての電池電圧Vccを低電圧化した場合においても、抵抗測定モードのときの差動増幅部11における正電圧側の入力電圧範囲を拡大することができるため、同一の電流値の直流定電流I1を測定対象体21に供給するという条件下において、従来の測定装置よりも、より大きな抵抗値Robの測定対象体21を測定することができる(つまり、測定し得る測定対象体21の抵抗値の上限(測定範囲の上限)を高めることができる)。
【0047】
また、測定可能な測定対象体21の抵抗値の上限を高めずに、従来の測定装置と同一とするときには、定電流供給部7から測定対象体21に供給する直流定電流I1の電流値を大きくすることができるため、抵抗測定時のSN比を向上させることができる結果、抵抗値の測定精度を向上させることができる。また、処理部14において、入力したデジタルデータDvに対するフィルタリング処理を実行しているときには、このSN比の向上に伴い、フィルタリング処理を簡易な処理で済ますことができ、これによってフィルタリング処理に要する時間を短縮することができる結果、抵抗値Robの測定時間を短縮することができる。
【0048】
なお、上記の測定装置1では、処理部14が、操作部13から出力されるモードデータDmに基づいて制御処理を実行することにより、第1スイッチ8および第2スイッチ10に対する切替、並びに中間電圧生成部6に対する各中間電圧Vf1,Vf2の切替を実行する構成を採用しているが、操作部13が、ロータリースイッチの切替位置に基づいて、第1スイッチ8および第2スイッチ10に対して、これらの状態を切り替えるための制御信号を出力すると共に、中間電圧生成部6に対して、各中間電圧Vf1,Vf2を切り替えるための制御信号を出力する構成を採用することもできる。
【0049】
また、測定対象体21としての抵抗体の抵抗値Robをパラメータとして測定する例について説明したが、測定対象体21は抵抗体に限定されず、コンデンサおよびダイオードを測定対象体とすることもできる。この場合、コンデンサを測定対象体21としたときには、処理部14は、パラメータ測定モード(容量測定モード)において、コンデンサに直流定電流I1を供給したときの一定時間後の入力電圧V1の変化量を測定し、この電圧の変化量、この一定時間の時間長、および直流定電流I1の電流値に基づいて、コンデンサについてのパラメータである静電容量値を測定(算出)する。また、ダイオードを測定対象体21としたときには、処理部14は、パラメータ測定モード(順方向電圧測定モード)において、ダイオードに直流定電流I1を供給したときの順方向電圧(入力電圧V1)を測定する。このようにコンデンサやダイオードを測定対象体21としたときにも、正電圧側の入力電圧範囲を拡大することができるため、コンデンサについては、電圧の変化量を大きくすることが可能となって、静電容量値の測定精度を高めることができ、ダイオードについては、順方向電圧の大きなダイオード(白色LEDなど)の順方向電圧の測定をすることができる。
【0050】
また、上記の測定装置1では、電源として電池5を使用しているが、電圧値が一定の電圧を作動電圧として出力し得るものであれば、電池5に限定されず、種々の電源を使用することができる。
【0051】
また、上記の測定装置1では、中間電圧生成部6が、第1中間電圧Vf1よりも低い第2中間電圧Vf2をフローティング電圧Vfとして共通端子4に印加すると共に、定電流供給部7が、電圧測定端子2を介して測定対象体21に直流定電流I1をソース電流として供給する(流し込む)構成を採用して、差動増幅部11における正電圧側の入力電圧範囲を拡大しているが、この構成に代えて、中間電圧生成部6が、第1中間電圧Vf1よりも高い第2中間電圧Vf2をフローティング電圧Vfとして共通端子4に印加すると共に、定電流供給部7が、電圧測定端子2を介して測定対象体21に直流定電流I1をシンク電流として供給する(吸い出す。図1での矢印の向きと逆向きに直流定電流I1を流す)構成を採用することもできる。この構成では、差動増幅部11における負電圧側の入力電圧範囲を拡大することができ、正電圧側の入力電圧範囲を拡大する上記の構成と同様にして、測定対象体21が抵抗体のときには、より大きな抵抗値の測定を可能とし、コンデンサについては、静電容量値の測定精度を高めることを可能とし、ダイオードについては、順方向電圧の大きなダイオードの順方向電圧の測定を可能とすることができる。また、測定した電圧に基づいて、ダイオードの極性を測定することもできる。
【0052】
また、上記の測定装置1では、電圧測定モード、電流測定モード、およびパラメータ測定モード(抵抗測定モードや容量測定モードや順方向電圧測定モード)の3つの測定モードから任意の1つを選択して測定し得る構成を採用しているが、電流測定モードを省いて(つまり、電流測定に必要な電流測定端子3および電流検出抵抗9を省いて)、電圧測定モードおよび抵抗測定モードの2つの測定モードのうちの任意の一方を選択して測定する構成とすることもできる。また、上記の測定装置1では、定電流供給部7を備え、抵抗測定モードにおいて測定対象体21に測定レンジに対応した直流定電流I1を供給する構成を採用しているが、定電流供給部7に代えて、測定対象体21に供給している直流電流の電流値をリアルタイムで測定して処理部14に出力する電流供給部を使用する構成を採用することもできる。この構成においては、処理部14は、デジタルデータDvおよび電流供給部において測定される直流電流の電流値に基づいて測定対象体21の抵抗値Robを算出する。
【0053】
また、上記の測定装置1では、電圧測定端子2がパラメータ測定端子を兼用する構成を採用しているが、図2に示す測定装置1Aのように、パラメータ測定端子2Aを電圧測定端子2と別個に備える構成を採用することもできる。この測定装置1Aでは、定電流供給部7は、電圧測定端子2に代えて、パラメータ測定端子2Aに接続される。また、このようにパラメータ測定端子2Aを専用に設けたことにより、第1スイッチ8を省いた構成となっている。また、第2スイッチ10Aは、1回路3接点のスイッチで構成されて、パラメータ測定端子2A、電圧測定端子2および電流測定端子3と、差動増幅部11における一方の入力端子との間に配設されている。また、第2スイッチ10Aは、処理部14によって制御されて、パラメータ測定端子2A、電圧測定端子2および電流測定端子3のうちのいずれか1つを差動増幅部11の一方の入力端子に選択的に接続する。なお、測定装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
この測定装置1Aにおいても、上記したように作動する中間電圧生成部6および定電流供給部7を測定装置1と同様に備えたことにより、上記した測定装置1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 測定装置
2 電圧測定端子
2A パラメータ測定端子
3 電流測定端子
4 共通端子
5 電池
6 中間電圧生成部
7 定電流供給部
11 差動増幅部
12 A/D変換部
14 処理部
21 測定対象体
Dv デジタルデータ
I1 直流定電流
Rob 抵抗値
V1 入力電圧
V2 増幅電圧
Vcc 電池電圧
Vf フローティング電圧
Vf1 第1中間電圧
Vf2 第2中間電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電源電圧で作動して、電圧測定のときには電圧測定端子および共通端子間に入力される測定対象電圧の電圧値を測定し、抵抗体、コンデンサおよびダイオードのうちのいずれか1つを測定対象体として抵抗値、静電容量値および順方向電圧値のうちの1つのパラメータを測定するパラメータ測定のときにはパラメータ測定端子および前記共通端子間に接続される前記測定対象体に直流電流を供給して前記パラメータを測定する測定装置であって、
前記電圧測定のときには前記電源電圧の中間電圧である第1中間電圧を生成して前記共通端子に出力し、前記パラメータ測定のときには、前記第1中間電圧よりも低い電圧の第2中間電圧を生成して前記共通端子に出力する中間電圧生成部と、
前記パラメータ測定のときに、前記パラメータ測定端子を介して前記測定対象体に前記直流電流をソース電流として供給する電流供給部と、
前記電圧測定のときには前記電圧測定端子および前記共通端子間の端子間電圧を前記測定対象電圧として測定し、前記パラメータ測定のときには前記パラメータ測定端子および前記共通端子間の端子間電圧の電圧値と前記直流電流の電流値とに基づいて前記パラメータを測定する処理部とを備えている測定装置。
【請求項2】
電源から供給される電源電圧で作動して、電圧測定のときには電圧測定端子および共通端子間に入力される測定対象電圧の電圧値を測定し、抵抗体、コンデンサおよびダイオードのうちのいずれか1つを測定対象体として抵抗値、静電容量値および順方向電圧値のうちの1つのパラメータを測定するパラメータ測定のときにはパラメータ測定端子および前記共通端子間に接続される前記測定対象体に直流電流を供給して前記パラメータを測定する測定装置であって、
前記電圧測定のときには前記電源電圧の中間電圧である第1中間電圧を生成して前記共通端子に出力し、前記パラメータ測定のときには、前記第1中間電圧よりも高い電圧の第2中間電圧を生成して前記共通端子に出力する中間電圧生成部と、
前記パラメータ測定のときに、前記パラメータ測定端子を介して前記測定対象体に前記直流電流をシンク電流として供給する電流供給部と、
前記電圧測定のときには前記電圧測定端子および前記共通端子間の端子間電圧を前記測定対象電圧として測定し、前記パラメータ測定のときには前記パラメータ測定端子および前記共通端子間の端子間電圧の電圧値と前記直流電流の電流値とに基づいて前記パラメータを測定する処理部とを備えている測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−173158(P2012−173158A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35945(P2011−35945)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】