説明

測定装置

【課題】測定装置に関するエラーログを容易に取得可能な測定装置を提供する。
【解決手段】三次元測定機(測定装置)は、被測定対象に対して相対移動可能な測定子、および測定子を移動させる移動機構を有する本体2と、本体2の移動機構の駆動を制御するモーションコントローラー3と、を備える。モーションコントローラー3は、時刻を計測するRTC31と、本体2のエラーを検出して、RTC31エラー検出時刻を取得し、検出したエラーに基づいたエラーデータと、エラー検出時刻とを関連付けたエラーログ321を生成するエラー検出部33と、エラーログが記録される記録部32と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定処理を実施する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向(例えば、XYZ軸方向)に沿って測定子を移動させ、この測定子を用いて被測定対象物を測定する、例えば三次元測定機などの測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような測定装置は、通常、測定装置を制御するためのコントローラーを備えて構成されており、このコントローラーに接続されるホストコンピューターにより実験データのデータ処理が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−21303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のような測定装置では、例えば測定動作中にエラーが発生すると、そのエラーメッセージが例えばコントローラーに接続されたディスプレイなどの表示手段に表示させたり、エラーメッセージホストコンピューターに出力して、ホストコンピューターに接続されたモニターなどの出力手段にエラーメッセーを表示させたりする。しかしながら、これらのエラーメッセージは、時間が経過すると消去されて表示されなくなるため、過去に起こったエラーの原因追及や解決までに時間がかかる。特に、エラー頻度が低い測定装置では、エラーメッセージの出力頻度も少なく、利用者がモニターの画面を注視していない場合では、エラーメッセージを見落とすおそれもあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、測定装置に関するエラーログを容易に取得可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、被測定対象に対して相対移動可能な測定子、および前記測定子を移動させる移動機構を有する本体と、前記本体の前記移動機構の駆動を制御する制御部と、を備えた測定装置であって、前記制御部は、時刻を計測するクロックと、前記本体のエラーを検出するとともに、検出した前記エラーの内容を示すエラーデータ、および前記クロックにより計測されたエラー検出時刻を関連付けたエラーログを生成するエラー検出部と、前記エラーログを記録可能な記録手段と、備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、制御部は、エラー検出部で本体のエラーが検出されると、そのエラーの内容であるエラーデータと、制御部に設けられるクロックにより取得されたエラー発生時刻とを関連付けたエラーログを生成し、記録手段に記録する。このため、例えば測定装置の作動中にエラーが発生し、そのエラーを示すメッセージを利用者が見落とした場合であっても、記録手段に記録されているエラーログを確認することで、エラー発生時刻およびエラーの内容を確認することができる。これにより、エラー原因の解明などの処理をより迅速に行うことができる。
【0008】
本発明の測定装置では、前記制御部は、当該測定装置への電源投入時に前記記録手段に記録された前記エラーログを読み出し、当該制御部に接続された出力手段に出力するログ出力部と、を備えたことが好ましい。
【0009】
この発明では、電源投入時において、記録手段に記録された本体状態データが読み出され、出力手段に出力される。このような構成では、測定装置の使用開始時に、前回測定装置の使用時に記録されたエラーログを取得することができ、これらのエラーログに基づいて、迅速に測定装置のエラー対応処理を実施することができる。
【0010】
本発明の測定装置では、前記制御部は、前記クロックにより計時される時刻に基づいて、前記移動機構の駆動開始時刻および前記移動機構の駆動終了時刻から前記移動機構の駆動時間を算出する駆動時間算出部と、前記移動機構が駆動された駆動距離を検出する駆動距離検出部と、を備え、前記駆動時間算出部は、前記駆動時間を累積した累積駆動時間データを前記記録手段に記録し、前記駆動距離検出部は、前記駆動距離を累積した累積駆動距離データを前記記録手段に記録することが好ましい。
【0011】
この発明では、駆動時間算出部や駆動距離検出部により、移動機構を構成する各パーツを駆動させた駆動時間やこれらのパーツの駆動距離が算出および検出され、記録手段に記録される。このため、利用者は、これらの移動機構の駆動時間や移動距離を確認することで、移動機構を構成する各パーツの使用量を容易に確認することができ、各パーツがどの程度老朽化したかを判断することができる。
【0012】
ここで、本発明の測定装置では、前記制御部は、前記累積駆動時間データの時間が予め設定された時間閾値を越えた場合、又は前記累積駆動距離データの駆動距離が予め設定された距離閾値を越えた場合、警告を促すメッセージデータを、当該制御部に接続された出力手段に出力するデータ出力部を備えたことが好ましい。
【0013】
この発明では、上記のような駆動時間データや距離データが、予め設定された時間閾値や距離閾値を越えた場合に警告を促すメッセージデータを出力する。ここで、時間閾値、および距離閾値としては、例えばパーツ毎に設定された寿命を示すデータであり、これらの閾値を越えた場合、パーツの老朽化により測定精度が低下するおそれがある。本発明では、駆動時間データや距離データがこれらの閾値を越えた場合に、例えば、パーツ交換を促す旨のメッセージや、パーツの使用量が規定量以上である旨のメッセージなどを表示させることで、パーツの寿命を利用者に知らせることができ、適切なパーツ交換の時期を報知することができる。
【0014】
本発明の測定装置では、前記記録手段には、当該測定装置により測定処理が実施された回数である測定回数データが記録され、前記制御部は、前記クロックにより計時される時刻に基づいて、前記移動機構の駆動終了時刻から予め設定された待機時間の間、前記移動機構の駆動がない場合に、前記記録手段に記録される前記測定回数データの値を増加させる測定回数更新部を備えたことが好ましい。
【0015】
この発明では、測定回数更新部は、1回の測定が終了する毎に、記録手段に記録された測定回数データを加算して更新する。したがって、利用者は、このような測定回数を確認することで、どの程度の測定を行ったかを把握することができ、各パーツがどの程度老朽化したかを判断することができる。
【0016】
また、本発明の測定装置では、前記制御部は、前記記録手段に記録された前記測定回数データの値が予め設定された測定回数閾値を越えた場合、警告を促すメッセージデータを、当該制御部に接続された出力手段に出力するデータ出力部を備えたことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、上記発明と同様に、測定回数から、各パーツの寿命を判断することができる。すなわち、各パーツにそれぞれ測定回数閾値が設定されており、測定回数がこの測定回数閾値を越えると、そのパーツは、規定の使用回数を超えたとして老朽化が進んでいるものとして判断することができる。そして、データ出力部は、このような老朽化が進んだパーツの交換を促す旨のメッセージを出力することで、パーツの寿命を利用者に知らせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、記録手段にエラーログが記録されているため、このエラーログから本体に発生したエラーの発生時刻、およびエラーの内容を迅速に確認することができ、迅速なエラー原因の解明や、エラーに対する対応処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る一実施形態の三次元測定機(測定装置)の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態のモーションコントローラーの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態のエラー監視動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態のパーツ寿命判断動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態の三次元測定機(測定装置)について、図面に基づいて説明する。
以下、本発明に係る一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態の産業機械である三次元測定機の概略構成を示す図である。
【0021】
図1において、この三次元測定機1(測定装置)は、本体2と、本体2の駆動制御を実行する本発明の制御部を構成するモーションコントローラー3(制御部)と、操作レバー等を介してモーションコントローラー3に指令を与え、本体2を手動で操作するための操作手段4と、モーションコントローラー3に所定の指令を与えるとともに、本体2上に設置されたワークの形状解析等の演算処理を実行するホストコンピューター5(出力手段)と、ホストコンピューター5に接続される入力手段61、及び表示手段62とを備える。なお、入力手段61は、三次元測定機1における測定条件等をホストコンピューター5に入力するものであり、表示手段62は、三次元測定機1による測定結果を出力するものである。
【0022】
本体2は、ワークの表面に当接される測定子211を先端側(−Z軸方向側)に有し、ワークを測定するためのプローブ21と、プローブ21の基端側(+Z軸方向側)を保持するとともに、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22が立設されるベース23と、を備える。
【0023】
移動機構22は、プローブ21の基端側を保持するとともに、プローブ21のスライド移動を可能とするスライド機構24と、スライド機構24を駆動することでプローブ21を移動させる駆動機構25とを備える。
【0024】
スライド機構24は、ベース23におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿って設けられるガイド231に、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるコラム241と、コラム241にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム242と、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム242上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるスライダ243と、スライダ243の内部に挿入されるとともに、スライダ243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるラム244とを備える。また、ビーム242における+X軸方向側の端部には、Z軸方向に沿って延出するサポータ245が設けられている。
【0025】
駆動機構25は、コラム241を支持するとともに、Y軸方向に沿ってスライド移動させるY軸駆動部25Yと、ビーム242上をスライドさせてスライダ243をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動部(図示略)と、スライダ243の内部をスライドさせてラム244をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動部(図示略)とを備える。
これらの駆動機構25は、それぞれ、図示略の駆動モーター(駆動源)、および駆動モーターから供給される駆動力をスライド機構24に伝達する駆動伝達機構を備えており、駆動モーターの駆動力により、コラム241、スライダ243、ラム244をスライド移動させる。
【0026】
また、本体2は、コラム241、スライダ243、及びラム244の各軸方向の位置を検出するための測定手段が設けられている。具体的には、ガイド231には、Y軸方向に沿ったY軸スケール(図示略)が設けられており、コラム241には、このY軸スケールの値を読み取るY軸スケールセンサー(図示略)が設けられている。また、ビーム242には、X軸方向に沿ったX軸スケール(図示略)が設けられており、スライダ243には、このX軸スケールの値を読み取るX軸スケールセンサー(図示略)が設けられている。さらに、ラム244には、Z軸方向に沿ったZ軸スケール(図示略)が設けられており、ラム244をZ軸方向に移動可能に保持するスライダ243内に、Z軸スケールの値を読み取るZ軸スケールセンサー(図示略)が設けられている。
【0027】
制御部としてのモーションコントローラー3は、RTC(Real Time Clock)31(クロック)と、記録部32(記録手段)と、本体2またはモーションコントローラー3に発生した動作不良(エラー)を検出するエラー検出部33と、移動機構22における駆動機構25の駆動を制御する駆動制御部34と、移動機構22の駆動時間を算出する駆動時間算出部35と、測定子211の位置を検出して、測定子211の移動量を取得する位置算出部36(駆動距離検出部)と、測定回数を更新する測定回数更新部37と、記録部32からデータを読み込み、データを出力する本発明のログ出力部としても機能するデータ出力部38と、を備える。
【0028】
RTC31は、時刻を計測するチップにより構成されている。このRTC31は、電源が未投入の状態であっても、内蔵電池から供給される電力により動作することで、常時、時間を計測する。
【0029】
ここで、記録部32は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable PROM)やフラッシュメモリなどの各種データの記録が可能な記録媒体を用いることができる。本実施形態では、記録部32としてEEPROMが用いられている。そして、この記録部32には、本体2に発生したエラーやエラー発生時刻を記録したエラーログ321、スライド機構24のコラム241やスライダ243、ラム244などの各パーツに対する駆動時間およびこれらのパーツの駆動距離をそれぞれ累積した、パーツ毎の累積駆動時間データ322および累積駆動距離データ323が記録されている。さらに、記録部32には、三次元測定機1により被測定対象10を測定した回数である測定回数データ324などが記録されている。また、記録部32には、ガイド231、コラム241、ビーム242、スライダ243、ラム244、Y軸駆動部25Y、X軸駆動部、Z軸駆動部などの移動機構22を構成する各パーツに対してそれぞれ予め設定された寿命データが記録されている。この寿命データとしては、例えば、各パーツの品質を保証する保証時間データ325(時間閾値)や保証距離データ326(距離閾値)、測定回数により測定精度の低下がない範囲を保障する保証測定回数データ327(測定回数閾値)などが記録されている。
【0030】
エラー検出部33は、本体の状態を監視し、本体2に発生した動作不良(エラー)を検出する。また、エラー検出部33は、エラーを検出すると、そのエラーの発生時刻をRTC31から取得する。そして、エラー検出部33は、検出したエラーの種別に対して予め設定されたエラーナンバーおよびエラーが発生した測定子211の位置座標を含むエラーデータと、そのエラーが検出されたエラー発生時刻とを関連付けたエラーログ321を生成し、記録部32に記録する。したがって、記録部32には、エラー検出部33によりエラーが検出される度に、エラーログ321が蓄積される。
【0031】
駆動制御部34は、操作手段4が操作された際に入力される駆動指令信号や、ホストコンピューター5から入力される駆動指令信号に基づいて、駆動機構25を駆動させる制御をする。
【0032】
駆動時間算出部35は、駆動制御部34の制御により駆動された移動機構22の各パーツの駆動時間を算出する。具体的には、駆動時間算出部35は、RTC31を監視し、駆動機構25の動作開始時の時刻、および駆動機構25の動作終了時の時刻に基づいて、駆動機構25の駆動時間を算出する。例えば、コラム241を移動させる場合では、駆動機構25は、Y軸駆動部25Yを制御して、コラム241をガイド231に沿ってスライド移動させるが、この場合、駆動制御部34は、Y軸駆動部25Yへの駆動制御の開始時刻および終了時刻からその駆動時間を算出し、Y軸駆動部25Y、コラム241およびガイド231など、移動機構22のY軸方向への移動に関連するパーツの駆動時間とする。そして、駆動時間算出部35は、記録部32にすでに記録されている累積駆動時間データ322の時間に、算出した駆動時間を加算して累積駆動時間データ322を更新する。
【0033】
位置算出部36は、XYZ軸方向に対してそれぞれ設けられたスケールセンサーから、コラム241、スライダ243、およびラム244のXYZ軸方向への移動距離、すなわち測定子211の座標位置を検出する。この検出された座標位置は被測定対象の測定位置結果となり、ホストコンピューター5に出力される。
また、位置算出部36は、コラム241、スライダ243、およびラム244の各移動距離を、記録部32に記録されているコラム241、スライダ243、およびラム244の各累積駆動距離データ323の距離に加算して、累積駆動距離データ323を更新する。
【0034】
測定回数更新部37は、駆動制御部34により移動機構22が駆動された後、予め設定された待機時間が経過する間に、駆動制御部34による移動機構22の駆動がない場合に、1回の測定が終了したと判断する。そして、測定回数更新部37は、1回の測定が終了したと判断すると、記録部32に記録される測定回数データ324の値に「1」を加算する。
【0035】
データ出力部38は、三次元測定機1に電源が供給された際に、記録部32に記録されたエラーログ321を読み出し、ホストコンピューター5に出力する。ホストコンピューター5は、エラーログ321を受信すると、表示手段62にこのエラーログ321を表示させる。これにより、利用者は、三次元測定機1を起動した際に、前回駆動時において発生したエラーを確認することが可能となる。
また、データ出力部38は、記録部32に記録された累積駆動時間データ322、累積駆動距離データ323、測定回数データ324を参照し、これらの値と、記録部32に記録されている保証時間データ325、保証距離データ326、および保証測定回数データ327とを比較する。そして、データ出力部38は、各パーツにおける累積駆動時間データ322に記録される時間が、各パーツに対してそれぞれ設定された保証時間データ325に記録される時間以上となった場合、又は各パーツにおける累積駆動距離データ323に記録される駆動距離が、各パーツに対してそれぞれ設定された保証距離データ326に記録される駆動距離以上となった場合に、ホストコンピューター5に対して、そのパーツの交換を促すメッセージデータを出力する。また、測定回数データ324に記録される測定回数値と、各パーツに対する保証測定回数データ327とを比較し、保証測定回数データ327の値が、測定回数データ324の値以下となる場合、その保証測定回数データ327に対応したパーツは老朽化が進んでいると判断し、ホストコンピューター5にパーツの交換を促すメッセージデータを出力する。これにより、ホストコンピューター5は、メッセージデータを表示手段62に表示させ、利用者にパーツの交換を促すことが可能となる。
【0036】
〔三次元測定機のエラー処理動作〕
次に、上述したような三次元測定機1におけるログ記録動作について、図面に基づいて説明する。図3は、本実施形態の三次元測定機1のエラー処理動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、三次元測定機1により被測定対象10に対して測定を実施する場合には、まず三次元測定機1の本体2およびモーションコントローラー3にそれぞれに電力を供給する(ステップS1)。
この電源供給により、モーションコントローラー3に電力が供給されると、モーションコントローラー3のデータ出力部38は、記録部32に記録されているエラーログ321があるか否かを判断する(ステップS2)。
このステップS2において、記録部32に、前回三次元測定機1を作動させた際に記録されたエラーログ321が記録されている場合、データ出力部38は、これらのエラーログ321を読み出し、ホストコンピューター5に出力する(ステップS3)。ホストコンピューター5は、エラーログ321が入力されると、表示手段62に入力されたエラーログ321を一覧表示させ、利用者に前回作動時において発生したエラーを報知する。
【0037】
ステップS3の後、およびステップS2においてエラーログ321が記録されていないと判断された場合、エラー検出部33は、エラー監視処理を実施し(ステップS4)、本体2にエラーが発生したか否かを判断する(ステップS5)。ここで、エラーが発生していない場合は、エラー検出部33は、三次元測定機1の作動中、エラー監視処理を継続して実施する。
また、ステップS5において、本体2にエラーが発生し、エラー検出部33においてエラーが検出された場合、モーションコントローラー3の駆動制御部34は、本体2の移動機構22の駆動を停止させ、エラー検出部33は、発生したエラーの種類に対応するエラーナンバーをホストコンピューター5に出力する(ステップS6)。これにより、ホストコンピューター5の表示手段62には、発生したエラーの種類に対応するエラーナンバーが表示される。ここで、この表示手段62に表示されるエラーナンバーは、一定時間経過後に表示が消去される。
【0038】
また、エラー検出部33は、RTC31から、エラーが発生したエラー発生時刻を取得する(ステップS7)。そして、エラー検出部33は、エラーナンバーおよびエラーが発生した測定子211の位置座標を有するエラーデータを生成し、このエラーデータと、ステップS7にて取得したエラー発生時刻とを関連付けたエラーログ321を生成して記録部32に記録する(ステップS8)。
【0039】
この後、モーションコントローラー3は、三次元測定機1の処理を継続するかを判断し(ステップS9)、例えば、利用者により電源がOFFにされたり、測定処理を終了する旨の指令コマンドが入力されたりした場合、エラー監視処理を終了させる。また、電源がOFFにされない場合や、上記のような測定処理を停止させる指令コマンドが入力されない場合は、処理が継続されると判断し、ステップS4のエラー検出部33によるエラー監視処理を継続する。
【0040】
〔三次元測定機のパーツ寿命判断動作〕
次に、上記三次元測定機1における移動機構22の各パーツの交換時期を報知するためのパーツ寿命判断動作について、図面に基づいて説明する。図4は、パーツ寿命判断動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、本体2の測定子211を移動させて被測定対象10の形状測定を実施するためには、利用者がホストコンピューター5や操作手段4を操作して、モーションコントローラー3に駆動指令コマンドを入力する(ステップS11)。これにより、モーションコントローラー3の駆動制御部34は、本体2の移動機構22の駆動機構25に駆動制御信号を出力し、移動機構22を駆動させる。この時、駆動時間算出部35は、駆動制御部34が駆動制御信号を出力したタイミングで、RTC31から駆動開始時刻を取得する(ステップS12)。
そして、駆動制御部34の制御により、本体2の移動機構22が駆動されることで(ステップS13)、測定子211が被測定対象10に接触し、被測定対象の形状測定が実施される。一連の測定動作が終了し、駆動制御部34からの駆動制御信号の出力が停止すると、駆動時間算出部35は、RTC31から駆動終了時刻を取得する(ステップS14)。
【0041】
この後、移動機構22の駆動時間および駆動距離を算出する(ステップS15)。
具体的には、駆動時間算出部35は、ステップS12およびステップS14で取得した駆動開始時刻および駆動終了時刻の差を算出して、駆動時間を算出する。
また、位置算出部36は、各軸(XYZ)のスケールセンサーから測定子211の座標位置を取得して、ホストコンピューター5に測定結果として出力する。さらに、位置算出部36は、例えば、移動機構22の駆動前の測定子211の位置座標から、被測定対象10の測定位置での測定子211の位置座標の差分を求めることで、移動機構22を構成する各パーツが、X,Y,Zの各軸方向に移動した駆動距離を算出する。例えば、移動機構22の駆動前において、測定子211が(x、y、z)に位置し、被測定対象10の測定時に測定子211が(x、y、z)に位置した場合、コラム241の駆動距離を(y−y)、スライダ243の駆動距離を(x−x)、ラム244の駆動距離を(z−z)として算出する。
【0042】
そして、駆動時間算出部35は、算出した駆動時間を、記録部32に記録されている各パーツに対する累積駆動時間データ322に加算し、位置算出部36は、算出した駆動距離を各パーツに対する累積駆動距離データ323に加算する(ステップS16)。
なお、ここでは、例えば測定子211がXYZの各軸方向に対して同時に移動する構成であり、同一駆動時間としたが、例えばY軸方向にのみ測定子211が移動する場合では、駆動時間算出部35は、移動機構22のうち、Y軸方向の駆動に関与するパーツである例えばコラム241やガイド231、Y軸駆動部25Yに対する累積駆動時間データ322のみを更新する。同様に、Y軸方向に沿う駆動時間、X軸方向に沿う駆動時間、Z軸方向に沿う駆動時間がそれぞれ異なる場合は、各軸に対する駆動時間を算出し、各軸の駆動に関与する各パーツの累積駆動時間データ322に、算出した駆動時間を加算する。
さらに、測定子211がY軸方向に移動した時間、X軸方向に移動した時間、Z軸方向に移動した時間をそれぞれ算出してもよい。この場合、例えばY軸方向に移動した時間は、コラム241、ガイド231、およびY軸駆動部25Y等の移動機構22のY軸方向への駆動に関与するパーツへの駆動時間となるので、これらのY軸方向への駆動に関与する各パーツの累積駆動時間データ322に、算出した駆動時間を加算する処理をしてもよい。X軸方向、Z軸方向に対しても同様であり、各軸への駆動時間を、各軸への駆動に関与するパーツの累積駆動時間データ322に加算してもよい。
【0043】
また、測定回数更新部37は、ステップS14の駆動終了時刻の取得の後、RTC31で計時される時刻を監視し、予め設定された待機時間が経過して1回の測定が終了したか否かを判断する(ステップS17)。すなわち、ステップS14の駆動時間終了時刻から、待機時間が経過するまでの間に、モーションコントローラー3に新たな駆動指令コマンドが入力された場合、測定が継続していると判断し、入力された駆動指令コマンドに基づいて、ステップS12〜ステップS16の処理を実施する。
一方、ステップS14の駆動時間終了時刻から、待機時間が経過するまでの間に、モーションコントローラー3に新たな駆動指令コマンドが入力されなかった場合、1回の測定が完了したと判断し、記録部32に記録される測定回数データ324に「1」を加算する(ステップS18)。
【0044】
この後、モーションコントローラー3は、パーツの寿命を判断する処理を実施する。具体的には、データ出力部38は、記録部32に記録された各パーツに対する累積駆動時間データ322の中に、保証時間データ325以上となるデータがあるか、または、各パーツに対する累積駆動距離データ323の中に、保証距離データ326以上となるデータがあるかを判断する(ステップS19)。
ここで、データ出力部38は、全ての累積駆動時間データ322が、対応する保証時間データ325未満であり、全ての累積駆動距離データ323が、対応する保証距離データ326未満であると判断した場合、さらに、各パーツに対応する保証測定回数データ327の中に、測定回数データ324より小さいものがあるか否かを判断する(ステップS20)。
そして、データ出力部38は、ステップS19で、累積駆動時間データ322が、保証時間データ325以上となるパーツがあると判断した場合、または累積駆動距離データ323が保証距離データ326以上となるパーツがあると判断した場合、さらに、ステップS20で、保証測定回数データ327が測定回数データ324以下となるパーツがある場合は、そのパーツの老朽化が進んでいると判断し、対応するパーツを交換する旨の警告メッセージデータを出力手段であるホストコンピューター5に出力する(ステップS21)。これにより、ホストコンピューター5の表示手段62には、老朽化が進んでいるパーツが表示されるとともに、そのパーツ交換を促すメッセージが報知される。
【0045】
一方、ステップS19、S20で、パーツの老朽化がないと判断された場合は、モーションコントローラー3は、測定処理を継続するか否かを判断する(ステップS22)。そして、例えば、利用者により電源がOFFにされたり、測定処理を終了する旨の指令コマンドが入力されたりした場合、測定処理を終了させる。また、電源がOFFにされない場合や、上記のような測定処理を停止させる指令コマンドが入力されない場合は、処理が継続されると判断し、三次元測定機1を駆動指令コマンドの入力を待つ待機状態にし、ステップS11に戻る。
【0046】
[本実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施形態の三次元測定機1では、測定子211、および測定子211を三軸方向に移動可能な移動機構22を備える本体2と、本体2の駆動を制御するモーションコントローラー3とを備えている。そして、モーションコントローラー3には、RTC31と、エラー検出部33と、記録部32とが設けられ、エラー検出部33は、本体2のエラーを検出すると、検出したエラーに対するエラーデータと、RTC31で計時されたエラー発生時刻とを関連付けたエラーログ321を記録部32に記録する。
このため、モーションコントローラー3にエラーログ321を記録することができるため、エラー発生時のメッセージ表示時に、その表示されたメッセージを見落とした場合であっても、記録部32からエラーログ321を取得することができる。したがって、エラー発見が容易となり、迅速のエラー発見に伴い、三次元測定機1のメンテナンスも適切に行うことができる。
【0047】
また、記録部32に記録されたエラーログ321は、三次元測定機1の本体2やモーションコントローラー3への電源ON時に、データ出力部38により読み出され、ホストコンピューター5などの出力手段に出力される。これにより、三次元測定機1の起動時に毎回、前回作動時に発生したエラーを確認することができ、エラーの早期発見をより良好に支援することができる。
【0048】
さらに、モーションコントローラー3の駆動時間算出部35および位置算出部36は、移動機構22の駆動時間および駆動距離をそれぞれ算出し、記録部32に記録された累計駆動時間データおよび累計駆動距離データに加算して更新する。
三次元測定機1には、記録部32が設けられているので、この記録部32に上記のような累計駆動時間データ322や累計駆動距離データ323を記録することで、利用者は、移動機構22を構成する各パーツの使用状況や各パーツがどの程度老朽化しているかを確認することができ、パーツ交換時期を適切に判断することができる。
【0049】
ここで、記録部には、移動機構22の各パーツに対して、どの程度の使用時間に耐えられるかを示す保証時間データ325や、どの程度の使用距離に耐えられるかを示す保証距離データ326が記録されており、データ出力部38は、各パーツに対する累計駆動時間データ322と、対応するパーツの保証時間データ325とを比較して、累計駆動時間データ322の時間が大きい場合、または、各パーツに対する累計駆動距離データ323と、対応するパーツの保証距離データ326とを比較して、累計駆動距離データ323の距離が大きい場合に、そのパーツの老朽化が進んでいる旨の警告メッセージデータを出力手段であるホストコンピューター5に出力する。このため、利用者が記録部32に記録された累計駆動時間データ322や累計駆動距離データ323を取得しなくても、これらのデータの値が各パーツの交換時期を示す保証時間データ325や保証距離データ326の値となった際に自動で警告メッセージを出力することができ、利用者に適切にパーツ交換時期を報知することができる。
【0050】
また、モーションコントローラー3の測定回数更新部37は、移動機構22の駆動終了時刻から所定の待機時間が経過するまでの間、新たに駆動指令コマンドが入力されなかった場合に、一連の測定処理が完了したと判断し、記録部32に記録される測定回数データ324に「1」を加算して更新する。
このため、利用者はこの測定回数データを参照することで、三次元測定機1により測定を行った回数を確認することができ、測定回数による各パーツの使用状況を把握することができる。
【0051】
そして、記録部には、移動機構22の各パーツに対して、どの程度の測定回数に耐えられるかを示す保証測定回数データ327が記録されており、データ出力部38は、測定回数データ324と、各パーツの保証測定回数データ327とを比較して、保証測定回数データ327の数値が測定回数データ324以下となるパーツを、老朽化したパーツとして判断し、警告メッセージを出力する。これにより、利用者が記録部32に記録された測定回数データ324や、保証測定回数データ327を確認しなくても、測定回数データ324の値が各パーツの交換時期を示す保証測定回数データ327の値よりも大きくなる場合に、自動で警告メッセージを出力することができ、利用者に適切にパーツ交換時期を報知することができる。
【0052】
〔変形例〕
なお、本発明は、上述した一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、上記実施形態では、累積駆動時間データ322は、駆動時間が算出される度に加算され、移動機構のトータル駆動時間を示すデータとして記録されているが、例えば、記録部32に、駆動時刻と駆動時間とが蓄積された駆動時間データとしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、出力手段としてホストコンピューター5を例示し、エラーログ321をホストコンピューター5に出力することで、ホストコンピューター5に接続された表示手段62に、エラーログ321や、パーツの老朽化を知らせる警告メッセージなどが表示される例を示したが、出力手段として、モーションコントローラー3に直接接続されるモニターや、モーションコントローラー3の一部に設けられる小型ディスプレイなどであってもよい。さらに、出力手段としては、音声によりエラーログやパーツ交換を知らせるスピーカー、紙面等に印字することにより、エラーログやパーツ交換を知らせるプリンター機器などであってもよい。
【0054】
上記実施形態では、各パーツに対する累積駆動時間データ322、累積駆動距離データ323をそれぞれ記録部32に記録したが、例えば、Y軸、X軸、Z軸の各軸方向に測定子を移動させた移動開始時刻、移動が完了した移動終了時刻、およびこれらの移動開始時刻から移動終了時刻までの間に、測定子211が移動された距離をそれぞれ記録するものであってもよい。このような場合でも、これらのデータから、累積駆動時間データ322や累積駆動距離データ323を得ることは容易であり、各パーツをどの程度駆動させたかを判断することが可能となり、パーツ交換時期を適切に判断することができる。
【0055】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、測定処理を実施する測定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1…三次元測定機(測定装置)、2…本体、3…モーションコントローラー(制御部)、22…移動機構、31…RTC(クロック)、32…記録部(記録手段)、33…エラー検出部、35…駆動時間算出部、36…位置算出部(駆動距離検出部)、37…測定回数更新部、38…データ出力部(ログ出力部)、211…測定子、321…エラーログ、322…累積駆動時間データ、323…累積駆動距離データ、324…測定回数データ、325…保証時間データ(時間閾値)、326…保証距離データ(距離閾値)、327…保証測定回数データ(測定回数閾値)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象に対して相対移動可能な測定子、および前記測定子を移動させる移動機構を有する本体と、前記本体の前記移動機構の駆動を制御する制御部と、を備えた測定装置であって、
前記制御部は、
時刻を計測するクロックと、
前記本体のエラーを検出するとともに、検出した前記エラーの内容を示すエラーデータ、および前記クロックにより計測されたエラー検出時刻を関連付けたエラーログを生成するエラー検出部と、
前記エラーログを記録可能な記録手段と、を備えた
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記制御部は、当該測定装置への電源投入時に前記記録手段に記録された前記エラーログを読み出し、当該制御部に接続された出力手段に出力するログ出力部を備えた
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定装置において、
前記制御部は、前記クロックにより計時される時刻に基づいて、前記移動機構の駆動開始時刻および前記移動機構の駆動終了時刻から前記移動機構の駆動時間を算出する駆動時間算出部と、
前記移動機構が駆動された駆動距離を検出する駆動距離検出部と、を備え、
前記駆動時間算出部は、前記駆動時間を累積した累積駆動時間データを前記記録手段に記録し、
前記駆動距離検出部は、前記駆動距離を累積した累積駆動距離データを前記記録手段に記録する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置において、
前記制御部は、
前記累積駆動時間データの時間が予め設定された時間閾値を越えた場合、又は前記累積駆動距離データの駆動距離が予め設定された距離閾値を越えた場合、警告を促すメッセージデータを、当該制御部に接続された出力手段に出力するデータ出力部を備えた
ことをと特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定装置において、
前記記録手段には、当該測定装置により測定処理が実施された回数である測定回数データが記録され、
前記制御部は、前記クロックにより計時される時刻に基づいて、前記移動機構の駆動終了時刻から予め設定された待機時間の間、前記移動機構の駆動がない場合に、前記記録手段に記録される前記測定回数データの値を増加させる測定回数更新部を備えた
ことを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置において、
前記制御部は、前記記録手段に記録された前記測定回数データの値が予め設定された測定回数閾値を越えた場合、警告を促すメッセージデータを、当該制御部に接続された出力手段に出力するデータ出力部を備えた
ことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78214(P2012−78214A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223902(P2010−223902)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】