説明

測定装置

【課題】加工面と加工工具のように、対象物体面に目的物体の先端を精度良く位置決めする位置検出装置を提供する。
【解決手段】対象物体面上の所望の位置に光源光束を合焦させて、その合焦点に目的物体先端を近づけたときに生じる反射光の強度変化と反射光束の光線方向分布の変化を検出し、目的物体を対象物体面に関して高い分解能で接近させ位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定技術に関し、特に突起部先端の対象物体へ位置決めのための先端位置と先端形状の測定を簡易に高精度に行う測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工精度向上に対する要求の高まりと共に、工作物と工具の相対位置の測定についても、例えば切り始めの精密さの向上などが求められている。現在、工作物の所定の位置に工具の先端を位置決めするために、顕微鏡による工具先端の観察が行われている。更に、工具先端を原子間力顕微鏡の測定可能領域に位置決めできれば、原子間力顕微鏡で先端形状を測定することも出来ることも知られている。しかしながら、顕微鏡観察による工具位置の確認は、その分解能が不十分であることから、試行錯誤による相対位置の確定に多大の時間を要している。
【0003】
また、光線の焦点位置に工具先端を合わせることで、工具先端の位置原点を知ることも試みられている。この光線の焦点を使った位置決め法では、焦点近傍にある工具先端による光線の遮りによる光量変化を計測する方法が採られている。
【0004】
しかしながら、光束の焦点位置を用いる方法では、前記焦点位置と工作機械上の座標と工具先端の位置関係を決めることはできても、工作物の面に対する工具先端の位置は加工を開始するまではわからないという問題がある。また前記焦点に位置決めする際も、工具先端による光線の遮り量だけの計測では位置決め分解能としては十分とはいえなくなっている。
【0005】
一方、微小な隙間に入射した光線の回折像から工具先端位置を計測する方法も知られている。この回折像を計測する方法では、図4に示すように、目的物体OBと対象物体面TPとの間の微小隙間に、光源から光束PBを照射して、その回折光線による回折像を受光素子で受光することによって、例えば、正負の一次回折像の間隔と微小隙間の関係から隙間の変化を評価するものである。
【0006】
特許文献1には、この原理を用いて、レーザ光源から照射されたレーザ光を、基準プレートの端縁とバイトの端縁とで形成される所定の幅のスリットに照射することで回折光を発生させ、その回折光を光センサで受光して、光強度の差から出る明暗パターンを測定することにより、バイトの位置を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−272925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、光線の波長(例えば青紫色レーザ光では400nm)以下の隙間では光線が透過しないことから、透過光の回折パターンを適切に形成できず、微小な隙間の測定が困難であるという問題がある。又、先端が尖った凸部形状の場合、発生する回折パターンが安定しないため、隙間を測定することが困難であるという問題もある。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑み、基準の光束が目的の先端によって遮られることによる受光装置での光量変化だけでなく、基準光束内の光線方向の変化をも検出することで目的物先端の位置を高精度に検出できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明の測定装置は、小さな点状あるいは細い線状に収束する基準光束を、凸部先端を接近させる対象物体面上の位置に収束させる光源と、前記対象物体面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測する受光装置を備え、前記受光装置の出力に基づいて、前記対象物体面と前記凸部先端との距離を求めることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明の測定装置は、小さな点状あるいは細い線状に収束する基準光束を、凸部先端を押し付けた膜状面の反対側面に収束させる光源と、前記膜状面の反対側面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測する受光装置を備え、前記受光装置の出力に応じて、変形した前記膜状面の反対側面の形状を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の本発明によれば、前記受光装置が、前記対象物体面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測し、前記受光装置の出力に基づいて、精度良く前記対象物体面と前記凸部先端との距離を求めることができる。
【0013】
更に、前記受光装置の出力に基づいて、前記凸部先端の形状を求めることもできる。
【0014】
第2の本発明によれば、前記受光装置が、前記膜状面の反対側面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測する受光装置を備え、前記受光装置の出力に応じて、精度良く変形した前記膜状面の反対側面の形状を求めることができるので、前記膜状面の変形が前記凸部先端の形状を転写したものであれば、前記凸部先端の形状を求めることができる。
【0015】
前記受光装置は、屈折率の異なる境界面での反射率と入射角度の関係を利用して入射光線の角度を測定すると好ましい。
【0016】
前記受光装置は、入射光線の平均的な方向と、入射光線の方向分布とを測定すると好ましい。
【0017】
前記受光装置は、分割フォトダイオードを利用した光電式オートコリメータの原理を採用している角度センサであると好ましい。
【0018】
前記受光装置が複数の受光部を有すると好ましい。
【0019】
本発明は、位置決めの目標となる面上の所定の点で小さな点状あるいは細い線状に収束して反射する基準光束の一部または全部が、目的の対象物体先端部によって影響を受けて光線進行方向を変えたことを検知するために、光量検出センサだけでなく、光線方向計測センサによって計測することを特徴とする。
【0020】
本発明はまた、位置決めの基準となる目標面が変形可能な薄板であり、前記目標面上の所定の点で小さな点状あるいは細い線状に収束して反射する基準光束の一部または全部が、前記目標面の裏側から押し込まれる目的の対象物体先端部によって影響を受けて光線進行方向を変えたことを検知するために、光量検出センサだけでなく、光線方向計測センサによって計測することを特徴とする。
【0021】
本発明は、前記受光装置における角度検出の原理が分割フォトダイオードを利用した光電式オートコリメータの原理を採用している角度センサであることを特徴とする。
【0022】
本発明はまた、前記受光装置における角度検出の原理が、屈折率の異なる境界面での反射率と入射角度の関係を利用する角度センサであることを特徴とする。
【0023】
本発明はまた、前記受光装置が複数の受光部からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】対象物体面に光源光束を合焦させて、その合焦点に目的物体を近づけるときの様子を示す図である。
【図2】受光部の角度センサとして屈折率の変わる境界面を利用する実施の形態を示す図である。
【図3】目的物体の先端位置と形状により薄膜上に投射されたスポットの反射光の変化を説明する図である。
【図4】目的物体と対象物体面との隙間における回折像の発生の様子を示す図である。
【図5】目的物体先端形状の変化を検出する計測装置の概略を示す図である。
【図6】スリット幅を検出する計測装置の概略を示す図である。
【図7】高屈折率から低屈折率の境界面における入射角と反射率の関係の一例を示す図である。
【図8】2次元的に光線方向角度分布を検出する角度センサの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を参照する。図1(a)は、本発明の測定装置を利用して、凸部先端の一例である工具(以下、目的物体OBとする)を、ワークの被加工面(以下、対象物体面TPとする)に接近させた状態で両者の距離を測定する状態を示す図である。図1(b)は、矢印IAで示す部位を拡大して示す図である。
【0026】
図1(a)に示すように、目的物体OBを挟んで対称的に(同じ側でも良い)、対象物体面TPに対して3次元方向に移動可能な保持具(不図示)に、レーザ等の光源LSとレンズLSとからなる光源光束発生部SBGと、受光した光の位置と強度を測定できる受光素子(CCD等)を備えた受光装置RSとが保持されている。目的物体OBは、3次元方向に移動可能な別の保持具(不図示)に保持されて、独立に移動可能となっている。光源LSから出射されたレーザ光LBは、レンズLSを介して収束光となり(小さな点状あるいは細い線状に収束し)、目的物体OBの先端が対象物体面TPに対向する位置に集光され、対象物体面TPの反射光RBは、発散光として受光部RSの受光素子に入射するようになっている。
【0027】
ここで、不図示の保持具に取り付けた目的物体OBを、図1(b)に示すように、対象物体面TPに接近させるものとする。目的物体OBが、図の実線で示す位置より対象物体面TPより遠いときは、収束光であるレーザ光LBは、目的物体OBに遮られることはなく、よって受光装置RSの受光素子に入射した反射光RBは、いわゆるガウシアン分布の光強度分布を持つ。これを初期状態とする。
【0028】
一方、目的物体OBが、図の実線で示す位置より対象物体面TPに接近したときは、レーザ光LBの一部(図1(b)において斜線で示す部分)が目的物体OBに遮られることとなる。この遮られたレーザ光は、目的物体OBが鏡面に近ければ殆ど吸収されることなく反射する。その反射光の一部は光源LS側に戻るが、その残りは対象物体面TP上で反射したりしながら、目的物体OBの先端と対象物体面TPとの隙間、或いは目的物体OBの先端の周囲を回り込むようにして、受光装置RS側に至り、その受光素子で検出されることとなる。
【0029】
このとき、目的物体OBに遮られなかった残りのレーザ光LBは、対象物体面TPのみで反射して、受光素子RSに入射するので、受光素子から出力される信号は、両者の和に対応するものとなる。即ち、受光装置RSの受光素子に入射した反射光RBの和は、初期状態のガウシアン分布に対し、一方に偏った非対称の形状の光強度分布を持つこととなる(図1(b)の点線参照)。この光強度分布の形状は、目的物体OBの先端と対象物体面TPとの距離に応じて一義的に決定されるので、予め実験やシミュレーション等で、光強度分布の形状と、目的物体OBの先端と対象物体面TPとの距離との関係を求めておくことで、実際の距離を、光強度分布の形状から精度良く求めることができる。尚、目的物体OBや対象物体面TPの表面の反射率に応じて、反射光の光強度分布は変わりうるが、反射率をパラメータとして設定し、実際に用いる目的物体OBや対象物体面TPの反射率を適用すると良い。
【0030】
本実施の形態においては、レーザ光LBの焦点位置近傍の目的物体OBによる擾乱を、受光装置RSで観察することになるが、前記焦点を目的物体OBを位置決めする対象である対象物体面TP上に置く事、しかも、前記焦点位置を対象物体面TP上の所定の位置に置くことで、焦点近傍への前記目的物体OBの位置決めがそのまま、目標面に対する3次元的な位置決めとなるので、対象物体面TPが加工面で、目的物体OBが工具先端であれば高精度に工具先端位置を加工面の所定位置に位置決めすることが出来る。例えば、光の特性から、その波長以下の隙間を通過できないため、そのような微小な隙間を光学的に測定することは困難であるとされている。しかしながら本実施の形態によれば、目的物体OBと対象物体面TPとの距離が波長以下となった場合でも、目的物体OBの先端の周囲を回り込んで受光装置RSに到達する光は存在するので、その状態を検出することで、目的物体OBと対象物体面TPとの微小な距離を精度良く測定できる。尚、受光装置にて反射光の強度そのものを測定しても良い。
【0031】
図2は、本実施の形態の受光装置RSの一例を説明するための図であり、ここでは反射光の方向を求める。図2において、光源光束発生部SBGは同様であり、受光装置RSは、対物レンズOLと、空気とは屈折率が異なるプリズムPSと、第1の受光部RP1と、第2の受光部RP2とを有する。対象物体面TPからの反射光RBは、対物レンズOLで反射された後、プリズムPS内に入射し、境界面DSで一部の光RB1が反射され、残りの光RB2は屈折して透過する。一部の光RB1は第1の受光部RP1で検出され、残りの光RB2は第2の受光部RP2で検出される。これにより反射光線の角度分を検出する角度センサとして機能する。その原理について説明する。
【0032】
図7に、高屈折率から低屈折率の境界面における入射角と反射率の関係の一例を示す。
図7に示すように、臨界角以上の角度で境界面に入射した光は、100%反射されることとなる。この性質を利用し、図2において、方向を測定すべき拡散する反射光RBを、対物レンズOLを介してプリズムPSに入射させたとき、(図7の例では、p偏光を使うとして、ブリュースター角から臨界角までの約8度が上限で、測定範囲での角度の振れ幅を考慮するとそれより狭くなる)に変えると、その光束内のいずれの光線の前記境界面への入射角が臨界角以上になることも、ブリュースター角以下になることもない状態を実現することができる。従って、測定すべき光束の内のそれぞれの光線は、その方向に応じた反射率で分岐される。また、光束全体としての反射光量(第1の受光部RP1の信号)と透過光量(第2の受光部RP2の信号)の差から、境界面に対する光束全体の平均的な入射角を知ることができるようになる。
【0033】
このように、図2に示すような角度検出のできる屈折率の変化する境界面DSを介して光線を受光する構造にすると、第1の受光部RP1と第2の受光部RP2の出力の和から受光部に到達する全光量がわかり、また第1の受光部RP1と第2の受光部RP2の出力の差から対物レンズOLに到達した反射光線の方向がわかる。この光線の方向は、目的物体OBの先端と対象物体面TPとの距離に応じて一義的に決定されるので、光線の方向を求めることで、目的物体OBの先端と対象物体面TPとの距離を精度良く求めることができる。光線の方向は、平均的なものだけを知るものや、方向分布を詳細に知るものまで、受光装置RPに用いる受光素子の選択によって選ぶことが出来るので、必要に応じて精細な光線方向角度情報を得ることが出来る。このような受光装置RSは、分割フォトダイオード(RP1,RP2)を利用した光電式オートコリメータの原理を採用した角度センサとして機能する。
尚、受光装置にて反射光束内光線全体の平均的方向を求めても良い。
【0034】
幾何光学的理論によれば、目的物体OBが垂直軸線に関して対称な形状であり、図の水平方向に関して合焦点(集光スポット)上にあれば、目的物体が垂直方向に沿って目標点に近づくとき、目的物体OBの表面で反射して方向変化をするレーザ光LBは、光源側と受光装置側とで対称的に生じることになる。水平方向に関して合焦点からずれているときに、目的物体OBを垂直方向に沿って合焦点に近づけると、レーザ光LBと反射光RBの一方だけが影響を受け始めることとなる。
【0035】
また別な実施の形態として、受光装置RSの光軸を目的物体OBのない状態での反射光の光軸(基準光軸と呼ぶ)に合わせるだけでなく、目的物体OBからの反射光を異なる方向にある複数の受光装置RSで受光することで、目的物体の影響を受けるために前記基準光軸上にある受光装置RSには届かない方向の光も受光することができるので、立体的な位置情報を高精度に得られることになる。
【0036】
図8に示す別な実施の形態では、2次元分岐とその後の検出分岐の様子を光束の中心光線だけで示している。図8において、対物レンズOLを通過した入射光(反射光RB)を50%透過(z方向)させ、50%反射(x方向)させるハーフプリズムHPの透過側に、xz面内で傾斜したプリズム斜面PSyを有するプリズムPS1を配置し、ビームスプリッタBSの反射側に、yz面内で傾斜したプリズム斜面PSxを有するプリズムPS2を配置している。プリズム斜面PSy、PSxは、それより屈折率の低い媒体である空気に接している角度検出境界面であり、分割前の光線の光軸回りに互いに90度回転した関係にある。
【0037】
ここで、方向を検出すべき入射光が、ビームスプリッタBSに下方より入射した後、z、x方向に分けられ、(検出分岐のための境界面を構成する)プリズムPS1,PS2にそれぞれ向かうものとする。それぞれの光は、(検出分岐のための境界面としての)プリズム斜面PSx、PSyに所定の角度で入射し、反射光と透過光に分けられる。このとき、プリズム斜面PSyの反射光は、受光装置RLD1yで検出され、プリズム斜面PSyの透過光は、受光装置RLD2yで検出される。又、プリズム斜面PSxの反射光は、受光装置RLD1xで検出され、プリズム斜面PSxの透過光は、受光装置RLD2xで検出され、それぞれ受光装置内の受光素子で光強度が電流に変換される。この後、図示されていないが、電流電圧変換回路、差動演算素子により、それぞれの斜面での反射光と透過光の差分が取られるので、これを用いて入射光束の角度を精度良く測定できる。又、この差動演算素子の出力がゼロになるように、プリズムPS1をx軸に平行な軸線回りに回転し、プリズムPS2をy軸に平行な軸線回りに回転し、光線の方向の原点を容易に定めることができる。
【0038】
図3は、膜状の面を用いて工具の先端のような凸部先端の形状を測定する実施の形態を説明するための図である。膜状の面(あるいは薄い板状の面)EBを目的物体OBの位置決め対象として用いるときは、目的物体OBの先端の位置変化を膜状の面EBの微小変形に置き換えて極小部の角度変化として検出することができるため、目的物体OBの先端を直接観察してその位置を求める場合よりも、先端の位置が高感度に検出できることが期待される。
また、光線方向角度の分布を計測する受光装置を用いれば、バイトの先端等の磨耗前後の形状変化なども、変化前後の形状も評価することが出来る。
【0039】
ここで、光源装置と受光装置は、上述した実施の形態のものを用いるものとする。図3に示すように、膜状の面EBの背面側から目的物体OBを当接させ、膜状の面EBを押し上げると、目的物体OBの先端形状が膜状の面EBの表面に転写された突出部PPが形成される。かかる変形は弾性変形であると好ましいが、塑性変形でも良い。
【0040】
かかる状態で、膜状の面EBの表面の突出部PPに、不図示の光源からのレーザ光束を集光させ、その際の膜状の面EB上の投射スポットPSの反射光の光強度分布、或いは反射光の方向分布を受光装置RSで測定することで、突出部PPの形状即ち目的物体OBの先端形状を精度良く求めることができる。
【0041】
尚、目的物体OBの先端を膜状の面EBに近づけながら受光装置での測定を行うと、裏面に接した瞬間から膜状の面EBが変形し始め、それが合焦点からの反射光束の光線方向分布などに現れるので、目的物体OBを膜の裏面に極めて高い位置分解能で接触させることが出来る。合焦点に関する面方向の2次元位置についても、反射光束の光線方向分布の対称性から確認できることになる。
【0042】
図5は、光源と受光装置とが一体となった先端形状計測装置の概略を示す図であり、予め定めた位置に目的物体OBの先端を置いた状態を示している。光源及び受光装置RSは上述した実施の形態と同様である。ここで、目的物体OBの先端形状によって、その表面で反射するレーザ光LBの反射光の向きが変わり、受光装置RSで求める光線方向分布や光強度分布が変化する。形状そのものを定量的に測定するときの精度は高くなくても、工具などが使用と共に磨耗変形するときには、使用中に、その先端を図5の先端形状計測装置の測定場所に、同じ位置に同じ姿勢で置くと、先端の磨耗の進行が光線方向分布と光強度分布の計測から判定できる。
【0043】
図6に、スリット幅を測定する計測装置の概略を示す。光源及び受光装置RSは上述した実施の形態と同様である。同様に、スリットSTの幅によって、スリットST内で反射するレーザ光LBの反射光の向きが変わり、受光装置RSで求める光線方向分布や光強度分布が変化する。図6に示すように、光線方向分布と光強度分布を同時に計測する装置では、スリットSTの幅の測定も従来行われている光束の強度のみの計測や回折像の計測よりも高い精度の測定が可能になる。
【符号の説明】
【0044】
OB 目的物体
TP 対象物体面
SBG 光源光束発生部
SL 光源
SB 光源光束
SOA 光源光束光軸
RS 受光装置
ROA 受光装置光軸
OL 対物レンズ
DS 角度検出境界面
RP1,RP2 受光部
EB 薄い板、膜
PS 投射スポット
DB 回折光束
ID 回折強度分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小さな点状あるいは細い線状に収束する基準光束を、凸部先端を接近させる対象物体面上の位置に収束させる光源と、前記対象物体面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測する受光装置を備え、前記受光装置の出力に基づいて、前記対象物体面と前記凸部先端との距離を求めることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記受光装置の出力に基づいて、前記凸部先端の形状を求めることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
小さな点状あるいは細い線状に収束する基準光束を、凸部先端を押し付けた膜状面の反対側面に収束させる光源と、前記膜状面の反対側面からの反射光束を受光して、前記反射光束の光線方向分布、光束内光線全体の平均的方向、光束の強度および強度分布の少なくとも一つの量を計測する受光装置を備え、前記受光装置の出力に応じて、変形した前記膜状面の反対側面の形状を求めることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
前記受光装置は、屈折率の異なる境界面での反射率と入射角度の関係を利用して入射光線の角度を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記受光装置は、入射光線の平均的な方向と、入射光線の方向分布とを測定することを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記受光装置は、分割フォトダイオードを利用した光電式オートコリメータの原理を採用している角度センサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
前記受光装置が複数の受光部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57693(P2013−57693A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286552(P2012−286552)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−314274(P2008−314274)の分割
【原出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(597122518)
【出願人】(508364369)
【出願人】(591238981)
【Fターム(参考)】