説明

測量データの分類方法、測量データの分類装置及び測量データを記録した記録媒体

【課題】短時間で、より精度良く地形を分類できる測量データの分類方法及び測量データを提供する。
【解決手段】真の分類結果が不明である全く新たなエリアにおいても、点群状の測量データを取得すれば、同じ地域特性に属する特徴量の閾値を用いて、サポートベクターマシンにより人手をかけることなく、迅速に建物や樹木の分類を行えることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量データの分類方法、測量データの分類装置及び測量データを記録した記録媒体に関し、特に測量データを分類する測量データの分類方法、測量データの分類装置及び分類された測量データを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地表面の3次元位置・形状を計測する手段として、航空写真測量による図化方法と、軽飛行機等から地上に向けてレーザパルス光を照射して地表面を走査し、その反射ビームにより地物(建物等の人工構造物、街路樹等の自然物等)及び地表面の三次元座標値を点データとして計測する方法が知られている。
【0003】
後者の方法では、広い範囲にわたり、地物の立体形状を高密度(例えば、1点/2m2以下)にサンプリングした3次元点データを短時間で得ることができる。
【0004】
しかし、このようにして得られたサンプルデータから個々の建物や樹木等を分類することは、人間が航空写真と見比べた上で行わなくてはならず、かなりの手間がかかっており、機械化された分類手法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−296706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対し特許文献1には、ヘリコプタにレーザ計測装置を搭載し、目的地域内を走査して、地盤及び地物のランダムな3次元点データ(サンプルデータ)Pi(x,y,z)を計測・収集した後、コンピュータを用いて、地盤からの高さを建物の閾値と比較することで建物と分類する技術が開示されている。ここで、特許文献1の技術では、3次元点データを内挿するなどしてグリッド状のメッシュデータを作成し、建物の分類を行っている。しかしながら、例えば3次元点データにおける隣接する一方の点が建物の屋上であり、他方の点が地盤である場合、メッシュ化する際に内挿で両者の中間点を求めると、両者の平均値が得られてしまうことから、実際の建物の高さを示す貴重なデータが消失する恐れがある。一方、3次元点データはノイズを多く含むため、これをそのまま機械的に処理したのでは、実際の地形と異なって分類される恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、短時間で、より精度良く地形を分類できる測量データの分類方法、測量データの分類装置及び測量データを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の測量データの分類方法は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する分類方法において、
地盤と物体の位置情報がそれぞれ既知であって、単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において、前記測量データを取得するステップと、
サンプルエリア毎に、地盤と物体が既知である前記位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、前記取得された測量データを処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めるステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、例えばランダムに測量された点群状の測量データを、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類することができるので、生の測量データを内挿してメッシュ状のデータを作成する必要がないため、その分だけ処理時間の短縮を図れる。しかるに、点群状の測量データから、どのようにして地盤と物体とを分類するかという問題がある。
【0010】
ここで、所定のエリアを撮影した航空写真と、同じエリアの測量データとを比較して、各点毎に地盤か物体かを作業者の目で判別しておけば、隣接する点に対して例えばZ座標が3m以上である点を含む物体が建物であるという特徴がわかるので、「Z値>3mであれば建物」として測量データにコンピュータ処理を施すことにより、当該エリアを含む広範なエリアにおいて地盤か物体かを迅速に分類できるとも考えられる。ところが、このような分類は万能とはいえない。なぜなら、実際の建物や樹木等の特徴は、例えば大都市、郊外、農村、臨海地域などの地域特性によって本来的に異なっており、或るエリアでは建物でないと判断される物体でも、別のエリアでは建物と判断される可能性があるからである。
【0011】
そこで、本発明においては、単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において、予めサンプルエリア内における地盤と物体とを分類し、また同じサンプルエリア内の測量データを取得し、更に例えばサポートベクターマシン(Support Vector Machine)のような学習機能のあるアルゴリズムを用いて、地盤と物体とを分類するのに適した特徴量の閾値を、例えば区分けされた地域特性毎に求めるものである。このような特徴量の閾値は、対応するサンプルエリアが含まれる地域特性を持つエリアでは汎用的に使用できる。具体的には「大都市」に区分けされた特徴量の閾値であれば、東京、大阪、名古屋等の市街地の分類に適する。即ち、地域特性に合わせて特徴量の閾値を予め決めておけば、測量データを取得した地域がいずれの地域特性に属するかを調べるだけで、人手に頼らず短時間で精度良く地盤と物体とを分類できることとなる。
【0012】
ここで、X座標及びY座標は、経線と緯線とで構成される面内における互いに直交するX方向及びY方向における座標をいい、Z座標とは鉛直方向の座標をいう。更に、「物体」とは、少なくとも「建物」、「樹木」を含み、これらが地盤と区別して分類されると好ましい。又、「地域特性」とは、地盤に立設する物体の密度、形状等に応じて区分けされる地域ごとの特性であり、区分けされる地域としては、例えば「大都市」、「地方都市」、「農村」、「臨界地区」などがある。人口又は人口密度に応じて、地域特性を区分けしても良い。但し、「地形」というときは、地上の地形のみならず、海底の地形も含む。更に、「地盤と物体とを分類するのに適した特徴量の閾値」とは、真の分類結果に対して80%以上(好ましくは90%以上)の確率で分類される特徴量の閾値とする。「測量データ」とは、点群状のデータの他、格子状に並んだデータも含み、航空レーザ、地上レーザ、航空写真、衛星画像などから得られるデータ全てを含み、そこから得られる成果としては、地形表層モデル(DSM)や、等高線地図などがある。
【0013】
請求項2に記載の測量データの分類方法は、請求項1に記載の発明において、前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、分類を所望するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする。ここで、「分類を所望するエリア」とは、複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において、前記測量データをそれぞれ取得した場合、前記区分けされた地域特性に対応するいずれかのエリアであると好ましい。
【0014】
請求項3に記載の測量データの分類方法は、請求項1又は2に記載の発明において、前記地盤と前記物体とは、合計して2以上に分類されることを特徴とする。「合計して2以上に分類する」とは、地盤を2以上(例えば道路、草地、空き地(土)、堤防(土手)、川(水面)など)に分類しても良く、物体を2以上に分類しても良いことを示す。
【0015】
請求項4に記載の測量データの分類方法は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する分類方法において、
地盤と物体の位置情報が既知である所定のサンプルエリアにおいて、前記測量データを取得するステップと、
前記サンプルエリアにおける地盤と物体が既知である前記位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、前記取得された測量データを処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めるステップと、
前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、分類を所望するエリアが広範である場合、その一部のエリアをサンプルエリアとして地盤と物体の位置情報を得ておけば、当該エリアに適した特徴量の閾値が求まるので、これに基づき広範なエリアにおける測量データの分類を、短時間で精度良く行うことができる。又、前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおいても同様に分類できる。尚、「サンプルエリアを含むエリア」とは、サンプルエリアと少なくとも一部が重なっていれば良い。又、「サンプルエリアの類似した特徴量」とは、特徴量の数がMで或る場合のM次元の特徴空間におけるユークリッド距離が近い場合をいう。
【0017】
請求項6に記載の測量データの分類方法は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記特徴量とは、前記点のZ座標の値、隣り合う前記点間のZ座標の値の差、隣り合う前記点間の傾斜値、前記点の色情報(可視光以外を含む)の少なくとも1つであることを特徴とする。隣り合う点とは、任意の点に対し、後述するN近傍の点も含む。「可視光以外の色情報」としては、近赤外・紫外線・ガンマ線・X線などの色情報がある。
【0018】
請求項7に記載の測量データの分類方法は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記測量データは、位置及び姿勢が既知の飛行体から地表面に向けてパルスレーザビームを照射して、前記地表面からの反射ビームを入射することにより得られ、前記特徴量は、前記反射ビームの強度、前記反射ビームのパルス数、前記反射ビームのパルス番号のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の測量データの分類方法は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記特徴量は、任意の点と隣接点との間のZ座標値の差、任意の点と隣接する2点とで形成される三角形の傾斜のうち少なくとも1つであることを特徴とする。ここで、「隣接」とは、ランダム点群を不定形三角網(TIN:triangulated irregular network)で繋いだ線分としての隣接関係を意味する。従って、「隣接点」とは、任意の点に最も近い点のみならず、N近傍(Nは2以上の整数)の点を含む。例えば1近傍とは、任意の点と、それに最も近い点であり、2近傍とは、最も近い点の外側に位置する点であり、N近傍とは、任意の点からN−1番目に近い点の外側に位置する点である。尚、点群の属性になりえるものであればなんでも特徴量として利用できる。
【0020】
請求項9に記載の測量データの分類方法は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記アルゴリズムはサポートベクターマシンであることを特徴とする。但し、学習機能があるアルゴリズムであれば、サポートベクターマシンに限られない。尚、サポートベクターマシンについては、以下のURLでアクセスできるサイトを通じて利用できる。
http://www.csie.ntu.edu.tw/~cjlin/libsvm/
【0021】
請求項10に記載の測量データは、請求項1〜9のいずれかに記載の測量データの分類方法によりクラス分類されたことを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の測量データの分類装置は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する測量データの分類装置であって、
地盤と物体の位置情報に基づいて、単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において取得された測量データを、サンプルエリア毎に、学習機能のあるアルゴリズムにより処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求め、地盤と物体の位置情報が未知の測量データにおいて地盤と物体とを分類することを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の測量データを記録した記録媒体は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データにおいて、地盤と、地盤上に設置された物体とが分類された測量データであって、
単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において取得されたサンプル測量データを、サンプルエリア毎に既知である地盤と物体の位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めることにより、地盤と物体とを分類した測量データを記録したことを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の測量データの分類装置は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する測量データの分類装置であって、
地盤と物体の位置情報が既知である所定のサンプルエリアにおいて取得された前記測量データと、前記サンプルエリアにおける地盤と物体が既知である前記位置情報とに基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求める手段と、
前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする。
【0025】
請求項14に記載の測量データを記録した記録媒体は、各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データにおいて、地盤と、地盤上に設置された物体とが分類された測量データであって、
所定のサンプルエリアにおいて取得されたサンプル測量データを、前記サンプルエリアにおいて既知である地盤と物体の位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより処理することにより、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値が求められるようになっており、前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおける、地盤と物体とを分類された測量データを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、短時間で、より精度良く地形を分類できる測量データの分類方法、測量データの分類装置及び測量データを記録した記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】点群状の測量データを取得する手法を示す図であり、(a)はヘリコプタからパルスビームが出射される状態を示し、(b)は反射ビームの強度及び回数を示す図である。
【図2】本実施の形態にかかる分類方法を説明する図である。
【図3】点群状のデータの一部を示す図である。
【図4】本発明者らが行った分類に用いたオリジナルエリアA1と、その一部を切り出したサンプルエリアA2,A3とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、地球表面(例えば、地表面)に関する点群状の測量データとしてのレーザ3次元計測について説明する。図1を参照して、飛行体であるヘリコプタHLには、不図示の航空機搭載型レーザスキャナ、GPS受信機、及びジャイロスコープが搭載されている。レーザスキャナ、GPS受信機、及びジャイロスコープについては、例えば特許第3935078号に記載されているので詳細な構成は省略する。
【0029】
レーザ3次元計測では、ヘリコプタHL搭載のレーザスキャナから地上(地表面)GNに向けてパルスレーザビームを照射して、地表面GNからの反射パルスをパルスリターンとして受光し、パルスレーザビームの照射時刻とパルスリターンの受光時刻との時間差に応じて地表面GNまでの距離を計測して距離データを得る。このパルスレーザビームの照射は予め規定された時間間隔で行われる結果、地表面は離散的な点として規定されることになる。この際、レーザスキャナのスキャンミラーの回転は1軸(ヘリコプタHLの飛行方向に直交する)であり、飛行方向がもう一つの走査軸となって、面的にデータが取得されることになる。そして、ジャイロスコープは1パルス毎にレーザ照射角度をミラー回転角及びその傾き角度に基づいて求める。
【0030】
さらに、別に地上において、レーザスキャナ(地上据え置き型レーザスキャナ)を用いて地表面のデータを取得する。このレーザスキャナではスキャンミラーの回転軸は2軸で放射状にしかも面的にデータが得られることになる。
【0031】
一方、GPS衛星ST1及び地上に設けられたGPS基準局ST2からのGPS電波に応じて基準点測量が行われる。つまり、ヘリコプタHLの空間位置及び姿勢は、GPS受信機及びジャイロスコープによって計測される。その後、レーザ3次元計測によって得られたデータ(スキャンポイントデータ)と基準点測量とによって得られたデータとに基づいてスキャンポイントデータを測地座標データへ変換してランダム点群状の測量データを得る。つまり、1パルス毎に地表面におけるレーザビーム反射点のX,Y,Z(高さ:H)座標を求めることができる
【0032】
ここで、地盤GNや建物BD(但し、縁以外の場所)にパルスビームが入射すると、一度の反射しか生じない為、反射ビームは1パルスPLのみとなる。一方、樹木TR(建物BDの縁も同じ)などに入射したパルスビームは、茂った葉で反射した反射ビームPL1と、葉の隙間を通過して地表で反射した反射ビームPL2とが時間差をおいて受光されるので、反射ビームは複数パルス(ここでは2パルスPL1,PL2)となる。ここで、1パルスの出射に対して反射ビームが1パルスのみの場合、総反射パルス数Niは1とする。又、1パルスの出射に対して反射ビームがn(n>2)パルスの場合、総反射パルス数はnであり、時間差をおいて受光される反射パルスに連番(1,2、・・・n)を付与する。総反射パルス数Niが1であれば、n=1である。
【0033】
更に、出射光と入射光の光強度の差をとることで、反射強度を求めることができる。この反射強度Iを256段階に分類する。
【0034】
以上により、測量データの各点は、6次元のデータ(X、Y、Z、Ni、n、I)を持つこととなる。ここで、Z、Ni、n、Iを特徴量という。
【0035】
次に、図2を参照して、取得された点群状の測量データから、地盤と、建物や樹木を分類する手法について説明する。ここで、サポートベクターマシンを用いて行う処理(図2で点線で示す工程)については、パソコンPC上で行うことができる。即ち、パソコンPCが測量データの分類装置を構成する。一方、分類された測量データは、CD、DVD、FD等の記録媒体に記録して保存できる。まず、測量データを分類する前処理として、サンプル学習(図2の(1))を行う。より具体的には、例えば「大都市」、「地方都市」、「農村」、「臨界地区」などの代表的な地域を選び、一例として500m×500mのサンプルエリアを設定した上で、図1に示すようにして測量データを得る(ステップS1)。これをサンプル測量データともいう。地域特性の区分けは、細かい方が好ましい。
【0036】
次に、同じサンプルエリアの航空写真や衛星から撮影した写真等を見ながら、作業者が測量データを地盤、建物、樹木等に分類する(ステップS2)。この作業により、サンプルエリアにおける点群状の測量データ中、X座標、Y座標が一致する点が、地盤、建物、樹木等に明確に分類されるので、言い換えれば、サンプルエリア内では地盤、建物、樹木等の位置情報が既知になったといえる。尚、地盤、建物、樹木等の位置情報は、地図情報や地上で得られる情報を用いても良い。
【0037】
更に、この分類結果を真の分類として、測量データをサポートベクターマシン(SVM)で処理することにより、建物、樹木の分類結果が最も高くなるように、特徴量の閾値を決定する(ステップS3,S4)。一例として、各点において、Z座標が3m以上、総パルス数が1,反射強度が150以上を「建物」と分類する場合があるが、これに限られず、サポートベクターマシンは最適な特徴量の閾値を決定する。又、建物の分類精度と、樹木の分類精度が異なっていた場合など、分類の用途に応じて選択すればよい。
【0038】
このようにして特徴量の閾値が学習により決定されれば、同じ地域特性に属するエリアにおいては、同じ学習結果を用いて分類を行うことができる(図2の(2))。即ち、真の分類結果が不明である(地盤と物体の位置情報が未知の)全く新たなエリアにおいても、点群状の測量データを取得すれば、同じ地域特性に属する特徴量の閾値を用いて、サポートベクターマシンにより人手をかけることなく、迅速に建物や樹木の分類を行えることとなる(ステップS5,S6)。
【0039】
尚、学習結果が単一である場合でも、本発明の適用は可能である。例えば、分類を行いたい広範なエリアの一部もしくは特徴量が近似したエリアをサンプルエリアとして、作業者が真の分類結果を求めて、上記のような学習を行えば、サンプルエリア以外について真の分類結果を必要とすることなく、サポートベクターマシンにより人手をかけることなく、迅速に建物や樹木の分類を行えることとなる(ステップS5,S6)。
【0040】
尚、特徴量は、上記の例に限られない。例えば図3に示すように、点群状の測量データにおける任意の点P0の周囲に、点P1〜P6が存在する(ここでは1近傍の例を示すが、2近傍、3近傍、・・・N近傍のデータを用いても良い)場合、点P0の特徴量として、上述したものの他、点P0と点P1〜P6とのZ座標値の差の平均、そのZ座標値の差の最大範囲、点P0及び点P1〜P6のうち隣接する2点とで形成される不定形三角形の平均傾斜角度、その不定形三角形の傾斜角度の最大範囲も用いることができる。かかる場合、任意の点P0は、最大10次元の変数を持つデータとなる。
【0041】
図4は、本発明者らが行った分類に用いたオリジナルエリアA1と、その一部を切り出したサンプルエリアA2,A3とを示す図である。又、以下の表1は、サンプルエリアA2,A3に基づいてサポートベクターマシンにより学習を行った結果得られた特徴量の閾値に基づいて、オリジナルエリアA1全体の分類結果を示す図である。尚、オリジナルエリアA1全体の分類結果の精度は、同じエリアの写真を見ながら作業者が分類した真の分類結果と比較して行った。
【0042】
【表1】

【0043】
表1によれば、サンプルエリアA2を用いて学習を行うと、オリジナルエリアA1全体について、地盤は92%、建物は91%の精度で分類できることがわかった。一方、サンプルエリアA3を用いて学習を行うと、オリジナルエリアA1全体について、地盤は95%と建物は87%の精度で分類できることがわかった。
【0044】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
A1 オリジナルエリア
A2 サンプルエリア
A3 サンプルエリア
BD 建物
GN 地盤
HL ヘリコプタ
ST1 GPS衛星
ST2 GPS基準局
TR 樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する分類方法において、
地盤と物体の位置情報がそれぞれ既知であって、単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において、前記測量データを取得するステップと、
サンプルエリア毎に、地盤と物体が既知である前記位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、前記取得された測量データを処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めるステップと、を有することを特徴とする測量データの分類方法。
【請求項2】
前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、分類を所望するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする請求項1に記載の測量データの分類方法。
【請求項3】
前記地盤と前記物体とは、合計して2以上に分類されることを特徴とする請求項1又は2に記載の測量データの分類方法。
【請求項4】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する分類方法において、
地盤と物体の位置情報が既知である所定のサンプルエリアにおいて、前記測量データを取得するステップと、
前記サンプルエリアにおける地盤と物体が既知である前記位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、前記取得された測量データを処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めるステップと、
前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする測量データの分類方法。
【請求項5】
前記地盤と前記物体とは、合計して2以上に分類されることを特徴とする請求項4に記載の測量データの分類方法。
【請求項6】
前記特徴量とは、前記点のZ座標の値、隣り合う前記点間のZ座標の値の差、隣り合う前記点間の傾斜値、前記点の色情報(可視光以外を含む)の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測量データの分類方法。
【請求項7】
前記測量データは、位置及び姿勢が既知の飛行体から地表面に向けてパルスレーザビームを照射して、前記地表面からの反射ビームを入射することにより得られ、前記特徴量は、前記反射ビームの強度、前記反射ビームのパルス数、前記反射ビームのパルス番号のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の測量データの分類方法。
【請求項8】
前記特徴量は、任意の点と隣接点との間のZ座標値の差、任意の点と隣接する2点とで形成される三角形の傾斜のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の測量データの分類方法。
【請求項9】
前記アルゴリズムはサポートベクターマシンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の測量データの分類方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の測量データの分類方法により分類されたことを特徴とする測量データを記録した記録媒体。
【請求項11】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する測量データの分類装置であって、
地盤と物体の位置情報に基づいて、単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において取得された測量データを、サンプルエリア毎に、学習機能のあるアルゴリズムにより処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求め、地盤と物体の位置情報が未知の測量データにおいて地盤と物体とを分類することを特徴とする測量データの分類装置。
【請求項12】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データにおいて、地盤と、地盤上に設置された物体とが分類された測量データであって、
単数のサンプルエリア又は複数に区分けされた地域特性が異なるサンプルエリアの各々において取得されたサンプル測量データを、サンプルエリア毎に既知である地盤と物体の位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより処理して、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求めることにより、地盤と物体とを分類した測量データを記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項13】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データを用いて、地盤と、地盤上に設置された物体とを分類する測量データの分類装置であって、
地盤と物体の位置情報が既知である所定のサンプルエリアにおいて取得された前記測量データと、前記サンプルエリアにおける地盤と物体が既知である前記位置情報とに基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値を求める手段と、
前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおいて取得された前記測量データに基づき、地盤と物体とを分類することを特徴とする測量データの分類装置。
【請求項14】
各点が少なくともX座標とY座標、及び特徴量を有する測量データにおいて、地盤と、地盤上に設置された物体とが分類された測量データであって、
所定のサンプルエリアにおいて取得されたサンプル測量データを、前記サンプルエリアにおいて既知である地盤と物体の位置情報に基づいて、学習機能のあるアルゴリズムにより処理することにより、地盤と物体とを分類するのに適した前記特徴量の閾値が求められるようになっており、前記特徴量の閾値が求められたアルゴリズムを用いて、前記サンプルエリアを含む又は前記サンプルエリアの類似した特徴量を有するエリアにおける、地盤と物体とを分類された測量データを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−169845(P2011−169845A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35818(P2010−35818)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】