説明

湯水混合栓

【課題】操作レバーが正面位置にある状態で水のみが吐出可能であり、湯の無駄使いを防止することのできる湯水混合栓を提供する。
【解決手段】固定弁体と、前記固定弁体に摺動自在に重合配置された可動弁体と、前記可動弁体を操作するレバーハンドルとを備え、前記レバーハンドルの上下回動により開口部からの湯水吐出量が、左右回動により吐出する湯水の温度が調節可能であり、前記温度調節操作に対して抵抗感を持たせる抵抗部材を有し、前記レバーハンドルの前記左右回動範囲の中央に位置する状態で前記レバーハンドルを前記上下回動により開操作したとき、前記可動弁体の開口部が前記固定弁体の前記水流入弁孔のみに連通する湯水混合水栓において、前記抵抗部材は、前記レバーハンドルが前記左右回動範囲の中央に位置する状態から前記温度調節操作における高温側に回動させる際に強い抵抗感を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンの流し台、浴室あるいは洗面台などに配置される湯水混合栓に関し、特に、ハンドルの上下回動操作、左右回動操作によって湯水の吐出量調節、温度調節を行うことのできる湯水混合栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より知られる湯水混合栓は、図7に示すように、操作レバー711が正面位置にあることが使用者に認識しやすいよう、操作レバー711を正面位置に動かした際にクリック感を持たせており、さらに操作レバー711が正面位置にあるときに水だけを吐水するよう、水バルブ流入口712cと、湯バルブ流入口712hと、を配置し、正面位置にあるときには水バルブ流入口712cのみが吐水口に連通するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の湯水混合栓において、正面位置にある操作レバー711は、湯側に向かう可動範囲が大きく、水側に向かう可動範囲が小さい。このような構成を有する混合水栓を使用した場合、可動範囲の中央位置と、クリック感を感じる位置とのズレがあり、クリック感を感じる位置で湯水が切り替わるという基準が使用者に分かりづらい。そのため、使用者がクリック位置を無視して上記水栓を使用した場合、可動範囲の中央位置に近い範囲、すなわち湯の吐水範囲に操作レバー711を位置させ、湯の無駄使いをされる虞があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、湯の無駄使いを防ぐことができる湯水混合栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の湯水混合栓は、湯流入弁孔及び水流入弁孔が開設された固定弁体と、前記固定弁体に摺動自在に重合配置され、前記湯流入弁孔からの湯と前記水流入弁孔からの水とが流入する開口部が形成された可動弁体と、前記可動弁体を操作するレバーハンドルとを備え、前記レバーハンドルの上下回動により開口部からの湯水吐出量が調節可能であり、前記レバーハンドルの左右回動により開口部から吐出する湯水の温度が調節可能であり、前記レバーハンドルによる温度調節操作に対して抵抗感を持たせる抵抗部材を有し、前記レバーハンドルの前記左右回動範囲の中央に位置する状態で前記レバーハンドルを前記上下回動により開操作したとき、前記可動弁体の開口部が前記固定弁体の前記水流入弁孔のみに連通する湯水混合水栓において、
前記抵抗部材は、前記レバーハンドルが前記左右回動範囲の中央に位置する状態から前記温度調節操作における高温側に回動させる際に強い抵抗感を生じることを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、使用者が左右可動範囲の中央と抵抗感との関係性を認識しやすくなるので、前記左右の回動範囲における他の位置での抵抗感より強い抵抗感がある位置、すなわち水のみ吐水する位置でレバーハンドルを止める可能性が高くなり、湯の無駄使いを防止することができる。
【0008】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記抵抗部材は、前記レバーハンドルの左右回動に合わせて動くボールと、前記ボールを摺動可能にガイドするガイドレールと、前記ガイドレール上に設けられ、一対の斜面を有する山形状の抵抗部と、を具備しており、前記抵抗部は、前記斜面のうち、一方の斜面と他方の斜面との間に、前記ガイドレールと平行な平行部を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、繰り返しの使用によって、抵抗部材が摩耗して山形状部分の形状変化が起こった場合であっても、平行部の端部から摩耗していくため、平行部の高さが残りやすい。そのため、繰り返しの使用があった場合においても水と湯との切替りをよりハッキリと意識させることができ、湯の無駄使いを防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記抵抗部は、前記斜面と前記平行部との間に、前記平行部から前記斜面にかけての段差を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、段差を下る際には、平行部から斜面に向かってボールが落ち込み、衝突してカチッというクリック音を発生する。これによって、湯水が切替わったことを使用者に知らせることができるため、さらに湯の無駄使いを防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記抵抗部は、前記平行部の端部より前記ガイドレールにかけて凹んだ曲面を有することを特徴とする。
【0013】
このような構成とすれば、曲面を乗越える際には、より強い抵抗感を感じさせることができ、湯水の切替りを強く意識させることができる。さらに湯水が切替わる際には、平行部から斜面に向かってボールが落ち込み、衝突してカチッというクリック音を発生する。これによって、湯水が切替わったことを使用者に知らせることができるため、さらに湯の無駄使いを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記抵抗部は、前記平行部の端部間に前記ガイドレール側に凹んだ凹部を有することを特徴とする。
【0015】
このような構成とすれば、いずれの方向にレバーハンドルを回動させても、湯水の切替わりを抵抗感とクリック音の2つで確実に使用者に伝えることができるため、より確実に湯の無駄使いを抑えることができる。
【0016】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記可動弁体の開口は、前記左右回動範囲の中央に位置する状態で前記レバーハンドルを開操作したとき、前記湯流入弁孔を閉塞し、前記開口と水流入弁孔とが重なり合わさるよう、左右非対称な形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成とすれば、レバーハンドルの左右回動範囲のいずれかの位置において、使用者が無意識にレバーハンドルを上下に回動、つまり開放操作した時に、湯が混入され吐出される確率が小さく、水のみが吐出される確率が大きくなるため、使用者が意図しない湯の無駄使いを防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記凹部は、前記左右回動範囲の中央の位置に配設され、左右回動範囲の中央の位置を境に左右いずれの方向であっても、回動量が増えるに従い湯の混合量が増えることを特徴とする。
【0019】
このような構成とすれば、レバーハンドルの可動範囲中央位置を水のみ吐水する唯一の位置とし、いずれの方向からの回動によっても前記中央位置で抵抗感とクリック音とを生じさせることによって、水のみを吐水する位置を使用者に強く意識させることができ、湯の無駄使いを防止することができる。
【0020】
またさらに本発明の湯水混合水栓は、上記構成に加え、前記抵抗部材は、前記温度調節操作によって高温側に回動させる場合と、低温側に回動させる場合とのうち、高温側に移動させる場合にのみ強い抵抗感を生じることを特徴とする。
【0021】
このような構成とすれば、湯から水への切替えのときにだけ強い抵抗感を与えることができるので、湯から水への切替わりをより強く意識させ、湯の無駄使いを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、湯の無駄使いを防止することのできる湯水混合栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態である湯水混合栓を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す湯水混合栓を上方から見た一部省略平面図である。
【図3】図1に示す湯水混合栓を構成する開閉弁ユニットの垂直断面図である。
【図4】図3に示す開閉弁ユニットの分解斜視図である。
【図5】図4に示す可動弁体と固定弁体の拡大斜視図である。
【図6】図5に示す可動弁体と固定弁体とによる開閉機構を示す模式図である。
【図7】従来の湯水混合栓を示す上面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る抵抗部材の要部模式図
【図9】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る抵抗部材の要部模式図
【図10】本発明の第1実施形態の第2変形に係る抵抗部材の要部模式図
【図11】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る抵抗部材の要部模式図
【図12】本発明の第1実施形態の第4変形例に係る抵抗部材の要部模式図
【図13】本発明の第1実施形態の第5変形例に係る抵抗部材の要部模式図
【図14】本発明の第2実施形態に係る抵抗部材の要部模式図
【図15】本発明の第2実施形態に係る可動弁体と固定弁体の状態図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図6に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の湯水混合栓1は、設置面に固定された本体部8に吐水管2が左右回動可能(図1において吐水管の伸びる方向を正面とし、紙面手前側を左、奥側を右とする)に取り付けられ、本体部8の上端にレバーハンドル7が左右回動可能及び上下回動可能(本体部8の軸心方向のうち、本体部8からレバーハンドル7に向かう方向を上、レバーハンドル7から本体部8に向かう方向を下とする)に取り付けられ、本体部8の底面に給水管4及び給湯管(図示せず)が接続されている。レバーハンドル7を上下回動操作することにより吐水管2の吐水口3から吐出する水及び湯の吐出量の調節を行い、レバーハンドル7を左右回動操作することにより吐水口3から吐出する湯水の温度調節を行う。
【0026】
図2に示すように、レバーハンドル7が中央位置Cを中心に右方へ約50度及び左方へ約5度の回動範囲(水領域W)にあるときは吐水口3から水が吐出し、水領域Wより左方へ約35度の回動範囲(混合領域M)にレバーハンドル7が位置するときは吐水口3から湯水混合水が吐出し、混合領域Mより左方へ約10度の回動範囲(湯領域H)にレバーハンドル7が位置するときは吐水口3から湯が吐出する。すなわち、中央位置Cはレバーハンドル7の左右回動範囲の中央でもあり、また、ここでいう中央位置Cは設置状態におけるレバーハンドル7の正面位置と一致している。ただし、中央位置Cと正面位置とが完全に一致する必要はなく、おおまかにあった状態で設置できれば使い勝手がよい。また、本実施例において、中央位置Cはレバーハンドル7の左右回動範囲の調度中央に位置しているが、完全に中央に位置する必要はなく、略中央に位置していれば同様の効果を奏する。
【0027】
湯水混合栓1の本体部8内には図3に示すような開閉弁ユニット9が収納されている。図3(a)は開閉弁ユニット9が閉止状態にあるときを示し、図3(b)は開閉弁ユニット9が開放状態にあるときを示している。レバーハンドル7(図1参照)を上下回動させると、図3(a),(b)に示すように、開閉弁ユニット9の操作レバー13が前後傾動し、操作レバー13下端に連結された支持部材15を介して可動弁体6が固定弁体17上面の摺動平面に沿って前後摺動する。これにより、固定弁体17の水流入弁孔22、湯流入弁孔23の開閉が行われる。
【0028】
開閉弁ユニット9は、図4に示すように、ハウジング11、パッキン12、操作レバー13、レバーガイド14、支持部材15、可動弁体6、固定弁体17、パッキン18、Oリング19、底蓋20などによって形成されている。さらに、ハウジング11の上部には抵抗部材40が配設されており、抵抗部材40は、台座部41、上部材42、ボール43、外れ止め44、連結部45などによって形成されている。
【0029】
図5に示すように、固定弁体17には水流入弁孔22、湯流入弁孔23及び混合水流出孔24が開設され、可動弁体6には、固定弁体17の水流入弁孔22、湯流入弁孔23から流入する湯水を混合水流出孔24へ流出させるための開口部5が開設されている。
固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な平面を第一平面、固定弁体17上面の摺動平面に対して平行な平面を第二平面、第二平面上でのレバーハンドル7の回動に伴い湯水の温度が上昇する方向を第一回動方向、湯水の温度が下降する方向を第二回動方向とし、以下可動弁体6と固定弁体17とについて詳細に説明する。
【0030】
可動弁体6に設けられた開口部5の平面視形状は、ひらがなの「く」に似た略く字状であり、左右非対称の形状となっている。より詳細に開口部5の形状を説明すると、ひらがなの「く」の屈曲部分を中心とした扇形に近い形をしており、その中心角は270°弱である。開口部5の扇形状における両端部は、レバーハンドル7が中央位置Cにある状態おいてそれぞれC方向の軸線よりも湯側に位置しており、特に両端部のうち水流入弁孔22及び湯流入弁孔23と重合する方の開口部5の扇形状における端部は、C方向の軸線を跨いでわずかに第一回動方向側に位置している。
止水状態(図6(L1)、(X1)、(C1)、(R1))における開口部5と固定弁体17の混合水流出孔24との形状の対比をすると、開口部5の面積は混合水流出孔24の面積よりも小さく、開口部5の全体が混合水流出孔24と重合している。また、開口部5を前記レバーハンドル7における左右回動範囲のいずれの位置に回動させても、開口部5の輪郭が混合水流出孔24の形状に沿うよう開口部5の外形が形造られている。
【0031】
固定弁体17に設けられた水流入弁孔22、湯流入弁孔23の平面視形状は、略同形でアーチ形状をしており、設置状態において、湯流入弁孔23及び水流入弁孔22の中間位置は中央位置Cより第一回動方向側に形成されている。すなわち、設置状態において、水流入弁孔22と湯流入弁孔23とは、図2におけるC方向の軸線を含む第一平面を境とした場合に非線対称の形状となっている。具体的には、水流入弁孔22及び湯流入弁孔23を第一回動方向に偏心させたり、水流入弁孔22のアーチ形状を幅広にさせることによって、湯流入弁孔23及び水流入弁孔22の中間位置が中央位置Cより第一回動方向側に形成されている。
【0032】
また、図3に示すように、開閉弁ユニット9内において、可動弁体6は固定弁体17上面に摺動自在に重合配置され、これらの部材によって開閉機構30が形成されている。前述したように、図1に示すレバーハンドル7を上下回動操作、左右回動操作すると操作レバー13が前後傾動、左右回動し、操作レバー13下端に連結された支持部材15を介して可動弁体6が前後摺動、左右回動する。これにより、固定弁体17の水流入弁孔22、湯流入弁孔23の開閉及び開度調節が行われる。
【0033】
一方、図1に示すように、ハウジング11とレバーハンドル7との間には、レバーハンドル7の左右回動時に抵抗感、いわゆるクリック感をもたらす抵抗部材40が配置されており、レバーハンドル7の操作に伴って抵抗部材40も回動する。
【0034】
以下、図1、4を用いて抵抗部材40の構成について説明する。
抵抗部材40はハウジング11に倣った形をしており、ハウジング11に嵌装される円筒形状の台座部41と、台座部41を覆う円筒形状の上部材42と、台座部及び上部材42に嵌装されたボール43と、ボール43が抜け落ち防止のため上部材42の側面を覆うよう取り付けられる円筒形状の外れ止め44と、上部材42に回動不能に固定される連結部45と、を具備している。
上部材42はレバーハンドル7と共に回動するよう、連結部45を介してレバーハンドル7に固定されている。より詳しく説明すると、レバーハンドル7の回動がスペーサ10を介して操作レバー13に伝わり、操作レバー13の回動がさらに連結部45に伝わり、連結部45に伝わった回動が、連結部材45と回動不能に固定された上部材42に伝わる。操作レバー13と一体的に回動するための構成として、連結部45には操作レバー13の形状に嵌合する嵌合孔451が備えられており、操作レバー13を嵌装した状態で上部材42に固定することでレバーハンドル7の動作を上部材42に伝える。
台座部41は上部材42の回動に対して摺動するよう装着された状態で、ハウジング11に対して回動不能に固定されている。
【0035】
台座部41の側面には、レバーハンドル7の左右回動動作に合わせてボール43を摺動可能にガイドする溝形状のガイドレール410と、ガイドレール410上に配設された山形状の抵抗部411が配設されており、抵抗部411は、水栓使用時の抵抗部材40取りつけ状態において、図2で示したレバーハンドル7の中央位置Cで抵抗感を得られるように配置される。
【0036】
例えば本実施例においては、レバーハンドル7が中央位置Cにあるときに抵抗感が得られるよう、台座部41に配設する抵抗部411や上部材42に配設するボール挿入孔421の位置を決めている。具体的には、台座部41においては中央位置Cから左右それぞれ90°回転した位置に抵抗部411を配設し、上部材42においては、レバーハンドル7が中央位置Cにある状態で、中央位置Cから左右それぞれ90°回転した位置にボール挿入孔421を配設し、レバーハンドル7が中央位置Cから第一回動方向に回動するときにボール43が抵抗部411に当たるよう構成されている。
【0037】
ガイドレール410上に設けられた山形状の抵抗部411には緩斜面411aと、緩斜面411aよりも角度が急な急斜面411bとが備えられており、レバーハンドル7を一方向に操作して抵抗部411を乗り越える場合にはボール43が緩斜面411aを登り、他方向に操作して抵抗部411を乗り越える場合には急斜面411bを登るよう、緩斜面411aと急斜面411bとが配設されている。
【0038】
ボール43は上部材42の側面に設けられたボール挿入孔421に挿入された状態で、上部材42の回動に伴い、台座部41のガイドレール410に沿って移動する。
また、ボール43がボール挿入孔421から抜け落ちないように、上部材42の側面を覆う外れ止め44が装着されている。外れ止め44は弾性変形する部材でできており、外れ止め44の装着時やボール43の移動に伴って弾性変形可能である。またこの外れ止め44は、ボール43を内側に付勢する役割をもっている。
【0039】
ここで、図2,図6に基づいて開閉機構30の機能、作用効果などについて説明する。図6(L1)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7(図1参照)が下方回動した状態で左方回動した位置(左位置L)にあるときの開閉機構30を示し、図6(X1)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が下方回動した状態で混合領域Mと水領域Wとの境目の位置(切替位置X)にあるときの開閉機構30を示し、図6(C1)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が下方回動した状態で中央位置Cにあるときの開閉機構30を示し、図6(R1)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が下方回動した状態で右方回動した位置(右位置R)にあるときの開閉機構30を示している。
【0040】
固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が下方回動した状態にあるときに、当該レバーハンドル7を、固定弁体17上面の摺動平面に対して平行な第二平面上で、左右回動させた場合、図6(L1)(X1)(C1)(R1)に示すように、固定弁体17の混合水流出孔24と可動弁体6の開口部5との連通は維持されるが、固定弁体17の水流入弁孔22及び湯流入弁孔23は可動弁体6によって閉塞された状態に保たれるため、吐水口3(図1参照)から湯水が吐出することはない。即ち、レバーハンドル7が下方回動した状態であれば、図2に示す右位置Rから左位置Lの範囲内でレバーハンドル7を左右回動させても吐水口3(図1参照)から湯水が吐出することはない。
【0041】
一方、図6(L2)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が上方回動した状態で、固定弁体17上面の摺動平面に対して平行な第二平面上で、左方回動した位置(左位置L)にあるときの開閉機構30を示し、図6(X2)は、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上でレバーハンドル7が上方回動した状態で混合領域Mと水領域Wとの境目の位置(切替位置X)にあるときの開閉機構30を示し、図6(C2)はレバーハンドル7が、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上で上方回動した状態で中央位置Cにあるときの開閉機構30を示し、図6(R2)はレバーハンドル7が、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上で上方回動した状態で右方位置(右位置R)にあるときを示している。
【0042】
図6(L2)に示す状態では、湯流入弁孔23と開口部5とが重合する開口重合部25により吐水口3(図1参照)から湯が吐出する。図6(X2)に示す状態では、水流入弁孔22と開口部5とが重合する開口重合部(図示せず)により吐水口3から水のみが吐出する。図6(C2)に示す状態では、水流入弁孔22と開口部5とが重合する開口重合部25により吐水口3から水のみが吐出する。図6(R2)に示す状態では、水流入弁孔22と開口部5とが重合する開口重合部25により吐水口3から水のみが吐出する。
【0043】
このように、図1に示す湯水混合栓1において、中央位置C(図2参照)にあるレバーハンドル7を、固定弁体17上面の摺動平面に対して垂直な第一平面上で上方向に回動させる、つまり開放操作した場合、開閉機構30は、図6(C1)の閉止状態から図6(C2)の開放状態へ変化するが、湯流入弁孔23は閉塞されたまま、水流入弁孔22と開口部5と混合水流出孔24とが重合するので、吐水口3からは水のみが吐出される。従って、中央位置Cにあるレバーハンドル7を使用者がそのまま無意識に開放操作するようなことがあっても、湯が混入することなく、吐水口3から水のみが吐出されるため、湯の無駄使いを防止することができる。なお、開口部5の形状はく字状に限定しないので、開閉機構30が図6(C2)の状態にあるとき、混合水流出孔24が開口部5を介して水流入弁孔22のみに連通する形状であればよい。
さらに、図6(X1)の閉止状態から図6(X2)の開放状態へと変化した場合であっても、湯流入弁孔23は閉塞されたまま、水流入弁孔22と開口部5と混合水流出孔24とが重合するので、吐水口3からは水のみが吐出される。従って、止水状態で切替位置Xにあるレバーハンドル7を開放操作するようなことがあっても、湯が混入することなく、吐水口3から水のみが吐出されるため、湯の無駄使いを防止することができる。
【0044】
前述の開口部5の形状により、レバーハンドル7が、中央位置Cに係らず、レーバハンドルの左右回動範囲のいずれかの位置において、使用者が無意識に開放操作した時に、湯が混入され吐出される確率が小さく、水のみが吐出される確率が大きくなるため、使用者が意図しない湯の無駄使いを防止できる湯水混合水栓とすることができる。
【0045】
次に、先程と同様、図2、図6を用いて抵抗部材40の機能、作用・効果等について説明する。
図6(L3)は左方回動した位置(左位置L)にあるときの抵抗部材40の様子を示し、図6(X3)は混合領域Mと水領域Wとの境目の位置(切替位置X)にあるときの抵抗部材40の様子を示し、図6(C3)は、中央位置Cにあるときの抵抗部材40の様子を示し、図6(R3)は、右方回動した位置(右位置R)にあるときの抵抗部材40の様子を示している。
【0046】
抵抗部411は切替位置Xと中央位置Cとの間に配設されている。特に、中央位置Cから第一回動方向にレバーハンドル7を回動させる際に抵抗感を感じるよう配設されており、逆方向の左位置Lから中央位置Cにレバーハンドル7を回動させる際には、中央位置Cから第一回動方向にレバーハンドル7を回動させるときに比べて抵抗感を感じないように構成されている。以下この構成をより詳しく説明する。
【0047】
レバーハンドル7が中央位置Cにある場合、図6(C3)に示すように、上部材42のボール挿入孔421と台座41のガイドレール410とによって位置決めされたボール43は、ガイドレール410上の急斜面411b側付近に位置する。
図6(C3)の状態から第一回動方向にレバーハンドル7を回動させようとすると、ボール43が急斜面411bを乗り越えようと山形状の抵抗部頂上に押し上げられていく。その際、ボール43が上部材42の側面から飛び出ようとするが、外れ止め44によって抜け落ちないように内側に付勢されている。このように、ボール43が抵抗部411頂上に登る方向への移動によって外れ止め44が弾性変形するため、外れ止め44はボール43が斜面を登る動作を妨げる抵抗となる。外れ止め44による抵抗と、急斜面411bを登るために必要な力との両方が、レバーハンドル7を中央位置Cから第一回動方向に回動させるため、つまり水だけを吐水する水領域Wから湯と水との混合領域Mに回動させるためにかかる抵抗となり、使用者に抵抗感として伝わる。さらに説明をすると、抵抗部411を乗り越える際にかかる摩擦抵抗は、ガイドレール410に沿ってボール43が摺動する際にかかる摩擦抵抗より大きいので、抵抗部411に差し掛かってから乗り越えるまでにかかる抵抗よりも、抵抗部411に差し掛かる前や、抵抗部411を乗り越えた後にかかる抵抗の方が小さい。この抵抗の差が抵抗感となって使用者に伝わる。また、この抵抗感を生じる位置が中央位置Cと一致していることによって、使用者に水領域Wと混合領域Mとの切替りを知らせ、湯の無駄使いを防止することができる。
【0048】
抵抗部411の山形状を乗り越えた後、ボールは急斜面411bよりも角度が緩やかな緩斜面411aに位置する。緩斜面411aは角度が緩やかなので、緩斜面411aの下り方向、つまり第一回動方向にレバーハンドル7が勝手に回動することはない。よって、抵抗部411より第一回動方向にレバーハンドル7を位置した状態で放置した場合であっても、第一回動方向にレバーハンドル7が勝手に移動することがないので、山形状の抵抗部411を有する混合水栓においても、湯の無駄使いを防止することができる。
また緩斜面411aでは、第一回動方向及び第二回動方向のいずれの方向であってもレバーハンドル7を回動させる抵抗が小さく、使用者は抵抗感を感じない。
【0049】
抵抗部411を跨ぐようにレバーハンドル7を第二回動方向に回動させる場合、中央位置Cから第一回動方向に回動させるときとは逆に、ボール43が急斜面411bを下る。
この場合には、外れ止め44の弾性変形による力はレバーハンドル7の回動に対して抵抗とならないため、使用者は抵抗感を受けず、抵抗部411を跨ぐようにレバーハンドル7を第一回動方向に回動させるときよりも小さな力でレバーハンドル7を回動させることができる。
上述したように、抵抗部411を跨ぐようにレバーハンドル7を第二回動方向に回動させる場合、抵抗感を受けることなく水のみ吐水する位置までレバーハンドル7を回動させることができるため、水のみ吐水する位置に到達する前にレバーハンドル7の回動を止めてしまうことが減り、より一層湯の無駄使いを防止することができる。また、とっさに水が必要となった場合や、湯を使いたくない場合、抵抗感を受けることなくスムーズに温度調整をすることができるため、安全である。仮にボール43が抵抗部411の頂上でレバーハンドル7の回動を止めてしまった場合であっても、抵抗部411の頂上は切替位置Xに配設されているため、水だけを吐水する水領域Wにあたり、湯は吐水されない。よって、湯の無駄使いを防ぐことができる。
【0050】
なお、本実施形態では、開閉弁ユニットとして固定弁体が混合水流出孔を備えたタイプを例示して説明したが、これに限定されるものではなく、可動弁体の開口部の空間を通過した湯水が通過する混合水流出通路を、固定弁体の外側に備えたタイプのものでも適用することができる。
【0051】
また、本実施形態では抵抗部411に緩斜面411aと急斜面411bとを有する構成についてのみ記載したが、抵抗部411の頂上を切替位置Xと中央位置Cとの間に配設すれば、混合領域Mから第二回動方向に抵抗部411を跨ぐ場合に411の斜面でレバーハンドル7の回動を停止しても水のみを吐水することができるので、斜面の角度が等しいものであっても、湯の無駄使いを防ぐことができ、好適である。
【0052】
次に、図8〜図13を用いて本発明の変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一の構成に関する説明は適宜省略する。
【0053】
図8〜図13は抵抗部411の形状を異ならせた要部模式図であり、例えば図8〜13において、ガイドレール410は簡単のため直線で表現されているが、実際には図4や図6で表現したように台座部41の周面と同様円筒形状である。
また、図中のX、Cは図2のときと同様、それぞれ切替位置X、中央位置Cを表現しており、レバーハンドル7を切替位置Xや中央位置Cに移動した際のボール43の位置を表している。
さらに、図中のH、M、Wも図2のときと同様、それぞれ湯領域H、混合領域M、水領域Wを表現しており、レバーハンドル7を湯領域H、混合領域M又は水領域Wに移動した際のボール43の位置を表している。
なお、図8は前述の実施形態に係る図面であり、図9〜図14に示した変形例との比較に用いる図面である。
【0054】
図8と図9とを比較すると、図9の構成を有する第1実施形態における第1変形例では、水領域W側の斜面にボール43が接した位置が中央位置Cと略一致する点では前述の実施形態と同様であるが、その他に、抵抗部材40の山形状頂上部分、すなわち、斜面と斜面の間の部分に、台座部41の円筒形状に倣いガイドレール410と平行な面を有する平行部412を備えている点で異なる。このような構成により、繰り返しの使用によって、抵抗部材40が摩耗して山形状部分の形状変化が起こった場合であっても、平行部412の端部から摩耗していくため、平行部412の高さが残りやすい。そのため、繰り返しの使用があった場合においても水領域Wと混合領域Mとの切替りをよりハッキリと意識させることができる。
【0055】
図10の第2変形例における構成によれば、混合領域M側の斜面は、平行部412の端部よりガイドレール410にかけて一定の傾きを有するよう配設された斜面である。逆に平行部412を境に水領域W側の斜面は、平行部412の端部よりガイドレール410にかけて凹んだ曲面413となっており、曲面413は前記ガイドレール410とは略垂直な垂直部を有する。このような構成によれば、図8に示す前述の実施形態と比べ、特に斜面が曲面413となっていることにより、曲面413を乗り越えて水領域Wから混合領域Mに切替わる際により強い抵抗感を感じさせることができるため、湯水の切替りを強く意識させることができ、ひいては湯の使用を強く意識させることができる。
さらに、曲面413を下り、混合領域Mから水領域Wに切替わる際には、外れ止め44からの力によって、平行部412から曲面413を有する斜面に向かってボール43が落ち込み、ボール43が台座部41に衝突してカチッというクリック音を発生する。これによって、水に切替わったことを使用者に知らせることができるため、さらに湯の無駄使いを防止することができる。
また、本変形例によれば、切替位置Xと中央位置Cとの間の斜面を曲面413としたことによって、直線状の斜面に比べて切替位置Xと中央位置Cとの間の距離を短くすることができる。この構成によって、湯水の切替わる位置とレバーハンドル7の回動範囲の中央とがより近づき、使用者に湯水の切替り位置をより強く意識させることができるため、湯水の無駄使いを防止することができる。
さらに、混合領域Mから水領域Wに切替える操作中、ボール43が切替位置Xを乗越えると、外れ止め44からの力によって、平行部412から曲面413を有する斜面に向かってボール43が垂直部で落ち込み、ボール43が台座部41に衝突してカチッというクリック音を発生する。このようにして、吐水位置が混合領域Mから水領域Wに切替ったことを、抵抗感とクリック音の2つで使用者に知らせるため、さらに確実に湯の無駄使いを抑えることができる。なお、垂直部はガイドレール410と完全に垂直である必要はなく、前述のようにボール43が垂直部で落ち込み、ボール43が台座部41に衝突してカチッというクリック音を発生するように設けられていればいよい。
また、この変形例においては、水領域Wの範囲内にのみ曲面413等のクリック音を発生させる構成を配設しているため、クリック音と水領域Wとの関連づけがされやすく、湯の無駄使いをより一層抑えることができる。
なお、本変形例における曲面413は凹んだ形状となっているが、逆に突出した曲面形状であっても抵抗感は発生する。また、突出した曲面形状に垂直部を有すれば同様にクリック音も発生する。ただし、凹んだ曲面と突出した曲面とを比較すると、突出した曲面は摩耗が進むと突出した部分が削れていくため抵抗感及びクリック音が小さくなりやすいが、本変形例のように凹んだ曲面であれば、摩耗による抵抗感及びクリック音の減少が少ないので、耐久性の面で優れている。
【0056】
また、図11の構成を用いた第1実施形態における第3変形例によれば、抵抗部411が有する両斜面の間に、平行部412から平行部412とは異なる高さにかけて略垂直な垂直部を含む段差414を設けているため、水領域Wから混合領域Mに向かってレバーハンドル7を操作している間で、段差414を下るとき、外れ止めからの力によって段差414で落ち込んだボール43が台座部41に衝突して、カチッというクリック音を発生する。本変形例では特に湯側の斜面と平行部412との間に段差414を設けた構成となっており、具体的には、混合領域M側の斜面を、平行部412より所定高さ低い位置からガイドレール410にかけて配設することで、平行部412から所定高さ低い位置に向かってボール43が落ち込む際に、ボール43と台座部41とが衝突し、カチッというクリック音が鳴り、混合領域Mに入ったことを音で知らせることができる。すなわち、本変形例によれば、水領域Wから混合領域Mに切り替わったことを、中央位置Cにおける抵抗感と段差414を越えた際に生じるクリック音の2つで確実に使用者に伝えることができる。より詳しくは、水領域Wから混合領域Mに切り替わることを抵抗感で使用者に伝え、切替位置Xを乗越えた際に、混合領域Mに確実に入ったことをクリック音で使用者に伝えることができるため、湯の無駄使いをより確実に防止することができる。なお、図11においては段差414の垂直部はガイドレール410に対して垂直に描かれているが、前述の第2変形例と同様、垂直部はガイドレール410と完全に垂直である必要はなく、前述のようにボール43が垂直部で落ち込み、ボール43が台座部41に衝突してカチッというクリック音を発生するように設けられていればいよい。
また、本実施形態における段差414は平行部412よりも低い高さから斜面が始まるよう設けられているため、段差414を乗越えるよう、混合領域M側から水領域W側に操作する際に抵抗感を生じさせる。しかし、平行部412から始まる斜面で発生する抵抗感と比べると、段差414で生じる抵抗感の方が弱い。この構成によって、高温側に操作する場合にのみ強い抵抗感を生じ、低温側に操作する場合は、413よりも平行部412からの高低差が低い為、抵抗を感じにくい。すなわち、とっさに水が必要になった場合や、湯を使いたくない場合、抵抗感を受けることなくスムーズに温度調整できる。
さらに、前述の第2実施形態と同様、斜面と斜面の間の部分にガイドレール410と平行な面を有する平行部412を備えているため、繰り返しの使用があった場合おいても水領域Wと混合領域Mとの切替りをよりハッキリと意識させることができる。
【0057】
図12の構成を用いた第1実施形態に係る第4変形例によれば、平行部412の両側に曲面413を有する斜面が配設されており、水領域W側の曲面413と平行部412との境目は切替位置Xに相当する。このような構成によれば、第一回動方向及び第二回動方向のいずれの方向にレバーハンドル7を回動させても、水領域Wと混合領域Mとの切り替わりを抵抗感とクリック音の2つで確実に使用者に伝えることができる。より詳細には、水領域Wから混合領域Mに切替える際には、まず切替位置Xを乗越える際に水領域W側の曲面413によって強い抵抗感が生じ、その後混合領域M側の曲面413においてボール43が落ち込み、台座部41と衝突してクリック音が生じる。逆に、混合領域Mから水領域Wに切り替える際には、まず混合領域M側の曲面413によって強い抵抗感が生じ、その後切替位置Xを越えたときに水領域W側の曲面413においてボール43が落ち込み、ボール43と台座部41とが衝突してクリック音が生じる。よって、抵抗部411を乗越える際には、いずれの方向にレバーハンドル7を操作した場合であっても、中央位置Cにおいて、先に操作の抵抗感が使用者に伝わり、その後クリック音が発生するため、クリック音が確認しやすく、さらに確実に湯の無駄使いを抑えることができる。
また、前述の第1実施形態における第1変形例と同様、斜面と斜面の間の部分にガイドレール410と平行な面を有する平行部412を備えているため、繰り返しの使用があった場合おいても水領域Wと混合領域Mとの切替りをよりハッキリと意識させることができる。
【0058】
次に、図13の構成を用いた第1実施形態における第5変形例について説明する。前述した構成と同様の構成についての説明は省略する。
【0059】
図13の構成を用いた第1実施形態における第5実施形態によれば、抵抗部411に設けた段差は、平行部412の端部間に配設され、ボール43の形状に倣ってガイドレール410側に凹ませた曲面凹形状の凹部415であり、凹部415はガイドレール410に対して略垂直な垂直部を有する。平行部412と凹部415とは、ガイドレール410に沿って力を加えられたボール43が嵌装及び離脱可能なように、平行部412と凹部415との高さが設定されており、凹部415は中央位置Cと略一致している。すなわち、中央位置Cでは、平行部412の端部間に配設された凹部415にボール43が嵌装された状態にある。より詳細には、凹部415の混合領域M側の端は、切替位置Xに略一致しており、水領域W側の他端は、水領域Wの範囲内に配設されている。さらには、平行部412を挟む斜面のうち、混合領域M側の斜面の両端は混合領域Mの範囲に配設され、他方の斜面の両端は水領域Wの範囲に配設されている。この構成により、第一回動方向及び第二回動方向のいずれの方向にレバーハンドル7を回動させても、水領域Wと混合領域Mとの切り替わりを抵抗感とクリック音の2つで確実に使用者に伝えることができる。特に、水領域Wから混合領域Mに切替える場合には、水のみが吐水する限界位置をクリック音と抵抗感とで知らせることができるため、より確実に湯の無駄使いを抑えることができる。
さらには、凹部415の混合領域M側の端が切替位置Xに略一致しており、クリック音の発生個所が全て水領域Wの範囲内に配設されているため、クリック音が必ず水領域Wで発生することとなり、使用者がクリック音を意識することによって確実に湯の無駄使いを防止することができる。
【0060】
次に、図14及び図15の構成を用いた第2実施形態について説明する。第1実施形態で説明した構成と同様の構成については説明を省略する。
【0061】
図14及び図15の構成を用いた第2実施形態によれば、平行部412及び凹部415の構成は前述した第1実施形態における第5変形例のものと同様であるが、中央位置Cを境に左右いずれの方向であっても、回動量が増えるに従い湯の混合量が増えるよう可動弁体6及び固定弁体17が構成されている点で異なる。より詳細に説明すると、本実施形態においては、中央位置Cを境に両側5°の位置にそれぞれ1つずつ切替位置Xが配設されており、両側5°の範囲内が水領域Wとなる。そして、切替位置Xのある5°を超えて35°までの範囲が混合領域Mとなり、35°から45°までの範囲が湯領域Hとなる。このような構成によれば、前述した第1実施形態における第5変形例と同様、レバーハンドル7をいずれの方向に回動させる場合であっても、中央位置Cにおいて、まずクリック音が生じ、次に抵抗感が生じるため、水領域Wと混合領域Mとの切り替わりを抵抗感とクリック音の2つで確実に使用者に伝えることができる。よって、さらに確実に湯の無駄使いを抑えることができる。
また、前述の第1実施形態と同様、水領域Wから混合領域Mに切替える場合には、水のみが吐水する限界位置をクリック音と抵抗感とで知らせることができるため、より確実に湯の無駄使いを抑えることができる。
さらに、中央位置Cを水のみ吐水する唯一の位置とし、いずれの方向からの回動によっても中央位置Cで抵抗感とクリック音とを生じさせることによって、水のみを吐水する位置を使用者に強く意識させることができ、湯の無駄使いを防止することができる。
【0062】
図15を用いて、本実施形態を構成する可動弁体6及び固定弁体17の詳細な構成について説明する。なお、同一の構成要素については同じ数字の図示をする。
【0063】
図15は、第2実施形態における可動弁体6及び固定弁体17の状態図である。図15(a)、(b)は、吐水状態における可動弁体6及び固定弁体17の状態を表しており、図15(c)、(d)は、止水状態における可動弁体6及び固定弁体17の状態を表している。
まず、固定弁体17の構成について説明すると、固定弁体17は、弁体の中央に設けられた円形の混合水流出孔24と、混合水流出孔24の外周の大部分を囲うようアーチ形の帯形状に設けられた湯流入弁孔23と、湯流入弁孔23によって囲われていない混合水流出孔24の外周の一部に設けられ、湯流入弁孔23に挟まれるよう配設されるアーチ形の帯形状の水流入弁孔22とを備えている。また、湯流入弁孔23は固定弁体17の中心線もしくは水流入弁孔22を境に左右両側に配設されており、これによって左右いずれの方向にレバーハンドルを回動させても、回動量が増えるに従い湯の混合量を増やすことができる。
次に、可動弁体6の構成について説明すると、可動弁体6は、1つの開口部5を備えており、固定弁体17に対して回動可能に構成されている。
【0064】
可動弁体6及び固定弁体17を組合わせて動作させたときの湯水の混合に関して説明すると、図15(c)、(d)では、開口部5が湯流入弁孔23と水流入弁孔22とのいずれにも重なっていないため、湯も水も吐水されない。
そして、図15(c)の状態にあるとき、レバーハンドル7を吐水方向に操作すると、図15(c)の状態から図15(a)の状態に遷移し、吐水が開始される。このとき開口部5が水流入弁孔22のみと重なっているため、結果として水のみを吐水することとなる。このときのレバーハンドル7の位置は、中央位置Cに位置する。
そして、図15(a)の状態から図15(b)の状態に遷移させるようレバーハンドル7を操作した場合、開口部5が湯流入弁孔23にかかる直前までの間は水のみを吐水する。この位置が切替位置Xに相当する。そしてさらにレバーハンドル7を操作すると、開口部5が湯流入弁孔23とも重なり、湯水の混合領域Mに到達したことになる。そしてそのままさらに操作を続けると、図15(b)の状態に遷移し、湯のみを吐水する湯領域Hに到達する。
また、図15(b)の位置に遷移させる時と逆の向きにレバーハンドル7を操作しても、同様のことが起こる。すなわち、図15(a)の状態から図15(b)と逆の位置に遷移させるようレバーハンドル7を操作した場合、開口部5が湯流入弁孔23にかかる直前までの間は水のみを吐水し、この位置が切替位置Xに相当する。そしてさらにレバーハンドル7を操作すると、開口部5が湯流入弁孔23とも重なり、湯水の混合領域Mに到達したことになる。そしてそのままさらに操作を続けると、図15(b)と逆の(谷口追加)状態に遷移し、湯のみを吐水する湯領域Hに到達する。
【0065】
以上のように、2種類の実施形態について、変形例も交えて説明をしてきたが、本発明は上述した構成に限ったもののみならず、上述の実施形態及び変形例を、本発明の効果をもたらす範囲内では自由に組合わせて利用することができるものである。
【0066】
例えば本実施形態の、水流入弁孔22と湯流入弁孔23の帯形状の幅は一様でなくてもよく繋がっていればよい。例えば湯流入弁孔23については、図15において混合水流出孔24の左右に位置する部位の幅に対し、下方に位置する部位の幅は狭くすることができる。こうすることで、固定弁体17をより小さく構成することが可能となる。
【0067】
また、第2実施形態のうち、特に中央位置Cを境に左右いずれの方向であっても、回動量が増えるに従い湯の混合量が増えるよう可動弁体6及び固定弁体17が構成されている点について別の観点から見れば、後述のようにも言える。
例えば水栓の近くに食器洗濯機等の設置された現場において、レバーハンドル7の回動範囲と重なる位置にレバーハンドル7の回動操作を阻害するものがあった場合、先行文献1のような従来技術では可動範囲の右側から左側に回動させるに従い温度が上昇するよう構成されているため、回動操作が阻害された範囲の温度の吐水ができなくなってしまうという問題があった。しかし、第2実施形態の構成のように、中央位置Cを境に左右いずれの方向であっても、回動量が増えるに従い湯の混合量が増えるよう可動弁体6及び固定弁体17が構成されているような水栓であれば、上述のような問題を解決することができ、レバーハンドル7の回動範囲と重なる位置にレバーハンドル7の回動操作を阻害するものがあった場合であっても広い範囲で温度調節が可能な水栓を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の湯水混合栓は、キッチンの流し台、浴室あるいは洗面台などに配置される給水給湯機材として一般住宅や飲食店の厨房などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 湯水混合栓
2 吐水管
3 吐水口
4 給水管
5 開口部
6 可動弁体
7 レバーハンドル
8 本体部
9 開閉弁ユニット
10 スペーサ
11 ハウジング
12,18,21 パッキン
13 操作レバー
14 レバーガイド
15 支持部材
17 固定弁体
19 Oリング
20 底蓋
30 開閉機構
31 水栓本体
22 水流入弁孔
23 湯流入弁孔
24 混合水流出孔
40 抵抗部材
41 台座部
42 上部材
43 ボール
44 外れ止め
45 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯流入弁孔及び水流入弁孔が開設された固定弁体と、
前記固定弁体に摺動自在に重合配置され、前記湯流入弁孔からの湯と前記水流入弁孔からの水とが流入する開口部が形成された可動弁体と、
前記可動弁体を操作するレバーハンドルとを備え、
前記レバーハンドルの上下回動により開口部からの湯水吐出量が調節可能であり、
前記レバーハンドルの左右回動により開口部から吐出する湯水の温度が調節可能であり、
前記レバーハンドルによる温度調節操作に対して抵抗感を持たせる抵抗部材を有し、
前記レバーハンドルの前記左右回動範囲の中央に位置する状態で前記レバーハンドルを前記上下回動により開操作したとき、前記可動弁体の開口部が前記固定弁体の前記水流入弁孔のみに連通する湯水混合水栓において、
前記抵抗部材は、前記レバーハンドルが前記左右回動範囲の中央に位置する状態から前記温度調節操作における高温側に回動させる際に抵抗感を生じることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1に記載された湯水混合水栓において、
前記抵抗部材は、前記レバーハンドルの左右回動に合わせて動くボールと、
前記ボールを摺動可能にガイドするガイドレールと、
前記ガイドレール上に設けられ、一対の斜面を有する山形状の抵抗部と、を具備しており、
前記抵抗部は、前記斜面のうち、一方の斜面と他方の斜面との間に、前記ガイドレールと平行な平行部を備えることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項2に記載された湯水混合水栓において、
前記抵抗部は、前記斜面と前記平行部との間に、前記平行部から前記斜面にかけての段差を有することを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された湯水混合水栓において、
前記抵抗部は、前記平行部の端部より前記ガイドレールにかけて凹んだ曲面を有することを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項5】
請求項2に記載された湯水混合水栓において、
前記抵抗部は、前記平行部の端部間に前記ガイドレール側に凹んだ凹部を有することを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載された湯水混合水栓において、
前記可動弁体の開口は、前記回動範囲の中央に位置する状態で前記レバーハンドルを開操作したとき、前記湯流入弁孔を閉塞し、前記開口と水流入弁孔とが重なり合わさるよう、左右非対称な形状に形成されていることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項7】
請求項5に記載された湯水混合水栓において、
前記凹部は、前記左右回動範囲の中央の位置に配設され、
前記左右回動範囲の中央の位置を境に左右いずれの方向であっても、回動量が増えるに従い湯の混合量が増えることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項8】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載された湯水混合水栓において、
前記抵抗部材は、前記温度調節操作によって高温側に回動させる場合と、低温側に回動させる場合とのうち、高温側に移動させる場合にのみ強い抵抗感を生じることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−2346(P2012−2346A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171609(P2010−171609)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】