説明

湿度センサ及びその製造方法

【課題】より簡素な構成で雰囲気の相対湿度を検出することのできる湿度センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】当該湿度センサ1は、水分を吸着することによって静電容量が変化する感湿膜23及び該感湿膜23に覆われてその静電容量の変化を検出するための櫛歯電極22a及び22bを有する感湿部24と、該感湿部24の出力信号を処理する回路素子部25と、ボンディングワイヤ31と電気的に接続されることで回路素子部25の出力信号を当該湿度センサ1外に出力するためのパッド26とを同一の半導体基板21に備えている。パッド26は、そのボンディングワイヤ31との接続部分が、パッド保護膜27によって覆われて保護されており、パッド保護膜27は、感湿膜23の形成材料と同一の材料を用いて感湿膜23と一体に形成されている。これら感湿膜23及びパッド保護膜27によって、半導体基板21の全上表面が覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当該湿度センサを取り巻く雰囲気の湿度を検出する湿度センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の湿度センサ及びその製造方法としては従来、例えば特許文献1に記載の技術のように、ディスペンサを通じて感湿膜を形成する技術が知られている。すなわち、そうした湿度センサでは、例えばセラミック基板上の同一平面に、酸化ルテニウムからなる櫛歯形状の一対の電極(櫛歯電極)が噛み合う状態で互いに離間して配されている。また、これら櫛歯電極の各端部には、例えばアルミニウムからなる略正方形のパッドがそれぞれ形成されている。そして、これらパッド及びリード端子が、ボンディングワイヤにて互いにワイヤボンディングされている。さらに、例えば環状の枠部材が櫛歯電極の全周を覆う状態で形成される、いわゆるダムが形成されている。そして、セラミック基板の枠部材内側の表面全体に感湿膜を形成するに際して、セラミック基板の枠部材内側に向けて該基板の上方からディスペンサを通じて枠部材の高さいっぱいまで感湿剤を滴下し、この滴下された感湿剤を乾燥することで、所定の厚みで均一に感湿膜を成膜している。
【特許文献1】特開2002−71612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした上記従来技術によれば、上記櫛歯電極の全周囲に枠部材を形成するため、当該湿度センサの湿度検出部分は大きくなり、ひいては、当該湿度センサの体格の大型化を招いている。こうした体格の大型化は、製造コストに大きく反映され、当該湿度センサを安価に提供することができなくなるおそれがある。
【0004】
これに対し、上記枠部材を割愛することが考えられる。しかしながら、上記枠部材を単純に割愛しただけでは、次のような不具合が生じることがある。すなわち、当該湿度センサが例えば自動車等の移動体に搭載される場合にあっては、民生用機器に搭載される場合に比べて、水分を含む雰囲気にさらされることが多いため、特にアルミニウムからなるパッドは、雰囲気に含まれる水分によって腐食されやすい。そのため、当該湿度センサを自動車に搭載する場合にあっては一般に、耐水性の材料からなる保護ゲルをこうしたパッドに塗布するとともに塗布後に熱硬化させ、パッドの水分による腐食を抑制している。ただし、保護ゲルをパッドに塗布する際、誤って感湿膜にまで保護ゲルが塗布される、あるいは、保護ゲルが、その硬化前に、感湿膜の形成された箇所まで流動し、感湿膜に付着するようなことがあると、感湿膜の性質が変化してしまい、雰囲気の湿度の検出精度に支障をきたしかねない。そのため、上述のような枠部材を割愛することは難しい。換言すれば、枠部材によるダム構造を採用せざるを得ない。したがって、湿度センサの体格の大型化という課題は依然として残り、改善の余地がある。ちなみに、上記従来技術においては、上記枠部材によって感湿膜の全周囲が囲われているため、結果的に、保護ゲルが感湿膜に付着することは低減されている。
【0005】
なお、こうした状況は、雰囲気の湿度の変化を感湿膜のインピーダンスの変化として検出する抵抗式湿度センサであれ、雰囲気の湿度の変化を一対の電極間の静電容量の変化として検出する容量式湿度センサであれ、同様に起こり得るものとなっている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、より簡素な構成で雰囲気の相対湿度を検出することのできる湿度センサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水分を吸着することによって物理量が変化する感湿膜及び該感湿膜に覆われてその物理量の変化を検出するための一対の電極を有する感湿部と、該感湿部の出力信号を処理する回路素子部と、ボンディングワイヤと電気的に接続されることで前記回路素子部の出力信号を当該湿度センサ外に出力するためのパッドとを同一基板に備え、雰囲気の湿度変化を前記物理量の変化として検出する湿度センサとして、前記パッドの前記ボンディングワイヤとの接続部分は、前記感湿膜の形成材料と同一の材料によって形成されたパッド保護膜に覆われていることとした。
【0008】
課題の欄でも記載したように、当該湿度センサが例えば自動車等の移動体に搭載される場合にあっては、民生用機器に搭載される場合に比べて、水分を含む雰囲気にさらされることが多く、特にアルミニウムから構成されることの多いパッドは、雰囲気に含まれる水分によって腐食されやすい。そのため、従来技術においては、感湿膜の形成材料とは異なる耐水性の材料からなる保護ゲルを用いてパッドを覆い、水分による腐食を抑制していた。
【0009】
その点、請求項1に記載の構成では、パッドのボンディングワイヤとの接続部分を、感湿膜の形成材料と同一の材料からなるパッド保護膜にて覆うこととしている。これにより、たとえ、パッドのボンディングワイヤとの接続部分をパッド保護膜にて覆う際に、誤って感湿膜にまでパッド保護膜が付着するようなことがあったとしても、感湿膜及びパッド保護膜は同一の材料から構成されているため、感湿膜の性質が変化するようなことは、ほとんど生じなくなる。したがって、雰囲気の湿度の検出精度に支障をきたすこともほとんどなくなる。また、こうした構成では、従来技術で採用せざるを得なかった枠部材によるダム構造が不要となるため、これを割愛することができる。そのため、湿度センサの体格の小型化を図ることができるようになる。さらに、こうした構成では、上記感湿部、上記回路素子部、及び上記パッドにかかる、基板上でのレイアウトにかかる制限が解除される。そのため、設計の自由度を向上することができるようにもなる。このように、より簡素な構成で雰囲気の相対湿度を検出することができるようになる。
【0010】
なお、そもそも感湿膜は、雰囲気に含まれる水分を吸着することによって物理量を変化させるものである。そうした性質を有する感湿膜の形成材料と同一の材料を用いて、水分による腐食を抑制すべきパッド保護膜を形成しては、水分による腐食をむしろ促進しているかのようにも思える。しかしながら、感湿膜が水分を吸着するとはいえ、吸着される水分量は実際には僅かであるため、水分による腐食を促進するという懸念は払拭されることが、発明者によって確認されている。
【0011】
また、感湿膜及びパッド保護膜を同一の材料によって形成することから、上記請求項1に記載の構成において、例えば請求項2に記載の発明のように、前記パッド保護膜が、前記感湿膜と一体に形成されている構成とするとよい。さらには、上記請求項2に記載の構成において、例えば請求項3に記載の発明のように、前記基板の全表面が、前記感湿膜及び前記パッド保護膜によって覆われている構成とすることが望ましい。こうした構成にあっては、特に上記請求項4に記載の発明のように、ディスペンサを通じて前記感湿膜及び前記パッド保護膜を形成するとよい。特に、上記請求項4の構成においては、ディスペンサを通じて前記感湿膜及び前記パッド保護膜を形成する際、これらの形成材料の粘度を調整するだけで、その膜厚を容易に制御することができる。
【0012】
一方、上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明では、水分を吸着することによって物理量が変化する感湿膜及び該感湿膜に覆われてその物理量の変化を検出するための一対の電極を有する感湿部と、該感湿部の出力信号を処理する回路素子部と、ボンディングワイヤと電気的に接続されることで前記回路素子部の出力信号を当該湿度センサ外に出力するためのパッドとを同一基板に備え、雰囲気の湿度変化を前記物理量の変化として検出する湿度センサを製造する方法として、前記感湿膜の形成材料と同一の材料によって、前記パッドの前記ボンディングワイヤとの接続部分を覆うパッド保護膜を形成することとした。
【0013】
上述したように、また、課題の欄でも記載したように、当該湿度センサが例えば自動車等の移動体に搭載される場合にあっては、民生用機器に搭載される場合に比べて、水分を含む雰囲気にさらされることが多く、特にアルミニウムから構成されることの多いパッドは、雰囲気に含まれる水分によって腐食されやすい。そのため、従来技術においては、感湿膜の形成材料とは異なる耐水性の材料からなる保護ゲルを用いてパッドを覆い、水分による腐食を抑制していた。
【0014】
その点、請求項5に記載の方法では、感湿膜の形成材料と同一の材料によって、パッドのボンディングワイヤとの接続部分を覆うパッド保護膜を形成することとしている。これにより、たとえ、パッドのボンディングワイヤとの接続部分をパッド保護膜にて覆う際に、誤って感湿膜にまでパッド保護膜が付着するようなことがあったとしても、感湿膜及びパッド保護膜は同一の材料から構成されているため、感湿膜の性質が変化するようなことは、ほとんど生じなくなる。したがって、雰囲気の湿度の検出精度に支障をきたすこともほとんどなくなる。また、こうした方法では、従来技術で採用されていた枠部材によるダム構造が不要となるため、これを割愛することができる。そのため、湿度センサの体格の小型化を図ることができるようになる。さらに、こうした方法では、上記感湿部、上記回路素子部、及び上記パッドにかかる、基板レイアウト上の制限が解除される。そのため、設計の自由度を向上することができるようにもなる。このように、より簡素な構成で雰囲気の相対湿度を検出することのできる湿度センサを製造することができるようになる。
【0015】
なお、感湿膜は、そもそも、雰囲気に含まれる水分を吸着することによって物理量を変化させるものである。そうした性質を有する感湿膜の形成材料と同一の材料を、水分による腐食を抑制すべきパッド保護膜に用いては、水分による腐食を、むしろ促進しているかのようにも思える。しかしながら、感湿膜が水分を吸着するとはいえ、吸着される水分量は実際には僅かであるため、水分による腐食を促進するという懸念は払拭されることが発明者によって確認されている。このことも、上述した通りである。
【0016】
また、感湿膜及びパッド保護膜を同一の材料から形成するため、上記請求項5に記載の構成において、例えば請求項6に記載の発明のように、前記パッド保護膜を、前記感湿膜と一体に形成するとよい。さらには、上記請求項6に記載の方法において、例えば請求項7に記載の発明のように、前記感湿膜及び前記パッド保護膜によって前記基板の全表面を覆うようにすることが望ましい。こうした方法にあっては、特に上記請求項8に記載の発明のように、前記感湿膜及び前記パッド保護膜を、ディスペンサを通じて形成するとよい。特に、上記請求項8の方法においては、ディスペンサを通じて前記感湿膜及び前記パッド保護膜を形成する際、これらの形成材料の粘度を調整するだけで、その膜厚を容易に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかる湿度センサ及びその製造方法の一実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、本実施の形態の湿度センサは、以下に詳述するように、パッドのボンディングワイヤとの接続部分が、感湿膜の形成材料と同一の材料によって形成されたパッド保護膜に覆われた構造となっている。また、本実施の形態の湿度センサは、雰囲気の湿度変化を櫛歯電極間の静電容量の変化として検出する容量式湿度センサとして具体化されている。
【0018】
図1は、本実施の形態の湿度センサの斜視図であり、図2は、本実施の形態の湿度センサの側面断面図である。これら図1及び図2を併せ参照して、まず、本実施の形態の湿度センサの構成について説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施の形態の湿度センサ1は、基本的に、後述する感湿部24や回路素子部25等々を有するICチップ20、及び、該ICチップ20の出力を当該湿度センサ1外へ取り出すためのリード端子30を、例えば有底角筒状に形成されたケース10内に備えている。
【0020】
このうち、ICチップ20は、図2に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板21上に、同一平面に離間して対向配置された一対の電極22a及び22bと、当該湿度センサ1を取り巻く雰囲気の湿度変化に応じて誘電率(静電容量)が変化するとともに一対の電極22a及び22b並びにこれら電極間を覆う感湿膜23とを有する感湿部24を備えている。また、ICチップ20は、感湿部24における電極22a及び22b間の静電容量の変化に基づいて雰囲気の相対湿度を検出する回路素子部25を、半導体基板21の表層部に備えている。さらに、ICチップ20は、ボンディングワイヤ31と電気的に接続されることで回路素子部25の出力信号を当該湿度センサ1外に出力するためのパッド26を、先の一対の電極22a及び22bと同様に、半導体基板21上に備えている。
【0021】
なお、一対の電極22a及び22bの形状は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、その形状として櫛歯形状を採用している。これにより、感湿部24の配置面積を小さくするとともに、一対の電極22a及び22bが互いに対向する面積を大きくすることができ、雰囲気の湿度変化に伴って変化するこれら電極間の静電容量の変化量が大きくなる。そして、ひいては、湿度センサ1の湿度検出にかかる感度が向上する。こうした容量式湿度センサの検出原理については一般的に知られているため、ここでの詳細な説明を割愛する。
【0022】
一方、リード端子30は、図1及び図2に示されるように、例えば断面矩形状に形成されており、ケース10内の一端に複数(本実施の形態では7つ)、所定の間隔をもって配列され、ケース10側壁を貫通した状態でケース10に備えられている。これら複数のリード端子30は、ボンディングワイヤ31を介して、例えばアルミニウムからなるパッド26とそれぞれ電気的に接続される。そして、回路素子部25を通じて得られた雰囲気の相対湿度に関する情報は、「回路素子部25→パッド26→ボンディングワイヤ31→リード端子30」と順次伝わり、当該湿度センサ1外部へ出力される。
【0023】
ところで、当該湿度センサ1が例えば自動車等の移動体に搭載される場合にあっては、民生用機器に搭載される場合に比べて、水分を含む雰囲気にさらされることが多い。したがって、特にパッド26は、アルミニウムから形成されているため、雰囲気に含まれる水分によって腐食されやすい。そこで、本実施の形態の湿度センサ1では、図1及び図2に示されるように、パッド26は、ボンディングワイヤ31との接続部分を含めた全上表面が、感湿膜23と同一の材料からなるパッド保護膜27によって覆われている。このようにして、雰囲気中に含まれる水分によってパッド26が腐食することを抑制している。なお、本実施の形態では、図1及び図2に示されるように、パッド保護膜27は、感湿膜23と一体に所定の膜厚(例えば「5μm〜10μm」)で形成されており、半導体基板21の全表面は、こうして一体に形成された感湿膜23及びパッド保護膜27によって覆われている。
【0024】
背景技術の欄に記載したように、従来の技術においては一般に、感湿膜の形成材料とは異なる耐水性の材料からなる保護ゲルを用いてパッドを覆うことで、水分による腐食を抑制していた。保護ゲルをパッドに塗布する際、誤って感湿膜にまで保護ゲルが塗布されたり、保護ゲルが、その硬化前に、感湿膜の形成された箇所まで流動し、感湿膜に付着するようなことがあると、感湿膜の性質が変化してしまい、雰囲気の湿度の検出精度に支障をきたすことが多かった。
【0025】
しかし、本実施の形態では、そもそも、パッド保護膜27は、感湿膜23と同一の形状で、しかも、一体に形成されているため、パッド保護膜27が感湿膜23の性質を変化させるようなことはほとんど生じない。したがって、雰囲気の湿度の検出精度に支障をきたすこともほとんどない。また、こうした構成では、従来技術で採用せざるを得なかった枠部材によるダム構造が不要となるため、これを割愛することができ、湿度センサ1の体格の小型化を図ることができるようになる。さらに、こうした構成では、感湿部24、回路素子部25、及びパッド26にかかる、半導体基板21上でのレイアウトにかかる制限が解除される。そのため、設計の自由度を向上することができるようにもなる。
【0026】
なお、そもそも感湿膜23は、雰囲気に含まれる水分を吸着することによって櫛歯電極22a及び22b間の静電容量を変化させるものである。そうした性質を有する感湿膜23の形成材料と同一の材料を用いて、水分による腐食を抑制すべきパッド保護膜27を形成しては、水分による腐食をむしろ促進しているかのようにも思える。しかしながら、感湿膜23が水分を吸着するとはいえ、吸着される水分量は実際には僅かである。そのため、水分による腐食を促進するという懸念は払拭されている。
【0027】
以下、上述のように構成された湿度センサ1を製造する方法について、図3及び図4をを併せ参照して説明する。なお、図3は、本実施の形態にかかる、湿度センサの製造方法について、その製造工程を示すフローチャートであり、図4は、ディスペンス工程における感湿剤の滴下態様を模式的に示す図である。
【0028】
図3に示されるように、本実施の形態の湿度センサ1を製造するに際しては、まず、ステップS10の工程として、半導体基板21をケース10に組付ける。詳しくは、上記感湿部24、上記回路素子部25、及びパッド26が既に作製された半導体基板21を、リード端子30が既に形成されたケース10の底部の所定位置に組付ける。こうして、半導体基板21は、ケース10に機械的に固定される。
【0029】
こうしたケース組付け工程が終わると、次に、ステップS20の工程として、ワイヤボンディングが実行される。すなわち、半導体基板21上のパッド26と、リード端子30のケース10内壁から突き出した部分とを、ボンディングワイヤ31にてワイヤボンディングする。こうして、半導体基板21は、リード端子30に電気的に接続される。
【0030】
次に、ステップS30及びステップS40の工程として、ディスペンサ40を用いて、ワイヤボンディングされた半導体基板21上表面に、感湿膜23及びパッド保護膜27が形成される。
【0031】
詳しくは、ステップS30の工程として、まず、適宜の設備において、感湿膜23及びパッド保護膜27の形成材料である感湿剤(例えばポリイミド)の粘度が調整される。感湿剤は、例えば「−20℃」以下といった温度で保管されており、感湿膜23等を形成する際には常温(例えば「20℃」)に昇温される。しかし、常温における感湿剤の粘度は高く、ディスペンサ40を通じて感湿膜23及びパッド保護膜27を形成することが難しい。また、形成することができたとしても長時間を要する。そのため、感湿剤の粘度を下げる必要がある。そこで、本実施の形態では、ディスペンサ40を通じて半導体基板21上に垂らされるまでの時間、垂らされた後に半導体基板21上で広がる速度、硬化(イミド化)された後の膜厚等々を考慮した上で、感湿剤を所定の粘度に調整する。こうした感湿剤の粘度の調整に際しては、例えばNMP(N−メチルピロドン)等の溶剤を希釈剤として、上記所定の粘度に応じた所定の割合をもって、感湿剤に混合する。なお、このとき、希釈剤の混合に併せて、あるいは、希釈剤の混合に替えて、これら溶剤の温度を制御することによって粘度を調整することとしてもよい。要は、ディスペンサ40を通じて感湿膜23等を半導体基板21上表面に形成することができれば、その粘度調整態様は任意である。
【0032】
こうして感湿剤の粘度が調整されると、続くステップS40の工程として、ディスペンサ40を通じて、半導体基板21上の所定の位置から所定量の感湿剤が1度に垂らされる。このときの滴下態様を図4に示す。同図4に示されるように、ディスペンサ40は、半導体基板21の略中央の上方、すなわち、半導体基板21の櫛歯電極21a及び21bが形成された部分とパッド26が形成された部分との間の上方から、半導体基板21上表面に向けて、感湿剤を所定量だけ1度で垂らす。こうして滴下された感湿剤は、流動性を有しているため、半導体基板21上で図4に示す態様で広がり、最終的には、先の図2に示される態様で、半導体基板21全上表面を覆うこととなる。なお、こうした感湿剤の滴下量は、半導体基板21の櫛歯電極21a及び21b上、及び、半導体基板21のパッド26上において、所定の膜厚(例えば「5μm〜10μm」)が得られるように設定されている。
【0033】
続くステップS50の工程として、キュア工程が実行される。先のステップS30及びステップS40の工程を通じて半導体基板21に滴下された感湿剤には、希釈剤として使用したNMPが混合されている。こうした希釈剤を除去すべく、適宜の設備において、例えば、およそ350℃の温度で12時間、半導体基板21を熱する。これにより、希釈剤が感湿剤から除去されるとともにキュアすることで、硬化(イミド化)される。すなわち、半導体基板21上に滴下された感湿剤は、感湿膜23及びパッド保護膜27となる。
【0034】
このように、感湿膜23及びパッド保護膜27が半導体基板21上に形成されると、続くステップS60において、ケース10には、図示しないカバーが組みつけられる。すなわち、有底角筒状のケース10(図1)の開口に対し、ケース10内外に空気を流通させるためのメッシュ(図示略)が配設されたカバーを組付ける。こうして、当該湿度センサ1が製造される。
【0035】
なお、本発明にかかる、湿度センサ及びその製造方法は、上記実施の形態にて例示した構成及び方法に限られるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0036】
上記実施の形態では、上記ディスペンス工程(図3のステップS40)として、ディスペンサ40を通じて、半導体基板21の略中央の上方から、半導体基板21上表面に向けて、感湿剤を所定量だけ1度で垂らしていた。こうしたディスペンサ40による滴下態様はこれに限られない。他に、図4に対応する図として図5に示されるように、ディスペンサ40を通じて、半導体基板21上の所定の位置から、所定量だけ、複数回(例えば2回)に分けて、感湿剤を垂らすこととしてもよい。すなわち、ディスペンサ40は、半導体基板21上表面の櫛歯電極21a及び21bが形成された部分の上方から半導体基板21上表面に向けて、感湿剤を所定量だけ1度滴下する。その滴下後、半導体基板21上表面のパッド26が形成された部分の上方まで移動し、感湿剤を所定量だけ1度滴下する。こうして滴下された感湿剤は、流動性を有しているため、半導体基板21上表面で広がる。また、この場合、先の図2に示されるような、感湿剤が半導体基板21全上表面を覆うほど、ディスペンサ40を通じて感湿剤を滴下しなくともよい。すなわち、少なくとも、半導体基板21上表面の櫛歯電極21a及び21b上、及び、半導体基板21上表面のパッド26上において、所定の厚さ(例えば「5μm〜10μm」)の膜厚が得られる量の感湿剤を、ディスペンサ40を通じて滴下すればよい。
【0037】
上記実施の形態では、感湿膜23及びパッド保護膜27をディスペンサ40を通じて形成していたが、これに限られない。要は、半導体基板21の全上表面を覆うように、感湿膜23及びパッド保護膜27を同一の形成材料から形成することができれば、その形成方法はディスペンサ40に限らず、任意である。また、そうした感湿膜23及びパッド保護膜27も、半導体基板21の全上表面を覆わなくともよく、感湿膜23及びパッド保護膜27も一体に形成されていなくともよい。要は、半導体基板21上表面の櫛歯電極22a及び22bが形成された部分を覆うように感湿膜23が形成されているとともに、半導体基板21上表面のパッド26が形成された部分を覆うようにパッド保護膜27が形成されていれば、所期の目的を達成することはできる。
【0038】
上記実施の形態では、雰囲気の湿度変化を櫛歯電極22a及び22b間の静電容量の変化として検出する容量式湿度センサとして実現していたが、検出原理はこれに限られない。他にも、雰囲気の湿度の変化を感湿膜23のインピーダンスの変化として検出する抵抗式湿度センサとしてこれを実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる湿度センサの一実施の形態の斜視図。
【図2】同実施の形態の湿度センサの側面断面図。
【図3】本実施の形態にかかる湿度センサの製造方法について、その製造工程を示すフローチャート。
【図4】同実施の形態のディスペンス工程における感湿剤の滴下態様を模式的に示す図。
【図5】変形例のディスペンス工程における感湿剤の滴下態様を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0040】
1…湿度センサ、10…ケース、20…ICチップ、21…半導体基板、22a、22b…櫛歯型電極(一対の電極)、23…感湿膜、24…感湿部、25…回路素子部、26…パッド、27…パッド保護膜、30…リード端子、31…ボンディングワイヤ、40…ディスペンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸着することによって物理量が変化する感湿膜及び該感湿膜に覆われてその物理量の変化を検出するための一対の電極を有する感湿部と、該感湿部の出力信号を処理する回路素子部と、ボンディングワイヤと電気的に接続されることで前記回路素子部の出力信号を当該湿度センサ外に出力するためのパッドとを同一基板に備え、雰囲気の湿度変化を前記物理量の変化として検出する湿度センサであって、
前記パッドの前記ボンディングワイヤとの接続部分は、前記感湿膜の形成材料と同一の材料によって形成されたパッド保護膜に覆われていることを特徴とする湿度センサ。
【請求項2】
前記パッド保護膜は、前記感湿膜と一体に形成されている請求項1に記載の湿度センサ。
【請求項3】
前記基板の全表面は、前記感湿膜及び前記パッド保護膜によって覆われている請求項2に記載の湿度センサ。
【請求項4】
前記感湿膜及び前記パッド保護膜は、ディスペンサを通じて形成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿度センサ。
【請求項5】
水分を吸着することによって物理量が変化する感湿膜及び該感湿膜に覆われてその物理量の変化を検出するための一対の電極を有する感湿部と、該感湿部の出力信号を処理する回路素子部と、ボンディングワイヤと電気的に接続されることで前記回路素子部の出力信号を当該湿度センサ外に出力するためのパッドとを同一基板に備え、雰囲気の湿度変化を前記物理量の変化として検出する湿度センサを製造する方法であって、
前記感湿膜の形成材料と同一の材料によって、前記パッドの前記ボンディングワイヤとの接続部分を覆うパッド保護膜を形成することを特徴とする湿度センサの製造方法。
【請求項6】
前記パッド保護膜を、前記感湿膜と一体に形成する請求項5に記載の湿度センサの製造方法。
【請求項7】
前記感湿膜及び前記パッド保護膜によって前記基板の全表面を覆う請求項6に記載の湿度センサの製造方法。
【請求項8】
前記感湿膜及び前記パッド保護膜を、ディスペンサを通じて形成する請求項5〜7のいずれか一項に記載の湿度センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−107166(P2008−107166A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289162(P2006−289162)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】