説明

湿式排煙脱硫装置

【課題】酸化用空気の気泡径を小さくし、吸収液中の亜硫酸の酸化速度を上げることにより、攪拌機一台あたりの酸化性能を向上させた湿式排煙脱硫装置を提供すること。
【解決手段】循環タンク9の攪拌機7の軸12に吸収液攪拌用のインぺラ14と酸化用空気を微細化するためのせん断器15を設け、該インぺラ14とせん断器15の間に酸化空気供給配管8の供給口8aを配置している。該供給口8aからの吸収液中への空気の供給方向が、攪拌機7の攪拌軸12方向あるいはインペラ14で押し出される液流れと同じ方向でせん断器15に向かう方向であるので押し出される酸化用空気を、せん断し気泡径を小さくするように作用する。それによって、酸化用空気の気泡径が小さくなり、気液の接触面積が大きくなり、酸化用空気による吸収液中の亜硫酸の酸化速度が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラなどの、燃焼装置から排出される排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置に係わり、特に吸収液中の亜硫酸種の酸化の高効率化に好適な湿式排煙脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の装置は、インペラの前に空気供給配管を設置し、インペラにより押し出される流体により酸化用空気を攪拌していた(特開平5−33087号公報)。しかし、この構成は、気泡径が大きいために気液の接触面積が小さく、空気中の酸素と吸収液中の亜硫酸の気液接触面積が小さく、攪拌機一台あたりの酸化性能に改良の余地があった。
【特許文献1】特開平5−33087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の従来技術は、気液の接触面積が小さく、空気中の酸素と吸収液中の亜硫酸の気液接触面積が小さく、該亜硫酸の酸化速度が遅い問題があり、攪拌機一台あたりの酸化性能に改良すべき問題点があった。
【0004】
本発明の課題は、酸化空気の気泡径を小さくし、吸収液中の亜硫酸の酸化速度を上げることにより、攪拌機一台あたりの酸化性能を向上させた湿式排煙脱硫装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、燃焼排ガス用の入口ダクトと該排ガスを脱硫処理した後の排ガスを排出する出口ダクトと吸収液を噴霧するためのスプレノズルを設けた吸収塔と、該スプレノズルから噴霧された吸収液を貯留するために、吸収塔の下部に設けた循環タンクと、該循環タンク内の吸収液をスプレノズルに吸い上げるための循環ポンプを設けた吸収液を送る循環配管とを備えた湿式脱硫排煙装置において、循環タンクに設置された攪拌機と、該撹拌機作動用の攪拌モータと、該攪拌機の攪拌軸に設けた吸収液攪拌用のインぺラと、前記攪拌軸に設けた酸化用空気を微細化するためのせん断器を設け、該吸収液攪拌用のインぺラとせん断器の間に酸化用空気供給配管の供給口を配置した湿式排煙脱硫装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、せん断器は、プロペラ、平板状あるいは棒状のせん断翼を1つ以上設けた請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置である。
【0007】
請求項3記載の発明は、酸化用空気供給配管の供給口からの吸収液中への空気の供給方向が、攪拌機の攪拌軸方向あるいは吸収液攪拌用のインペラで押し出される液流れと同じ方向でせん断器に向かう方向である請求項1又は2に記載の湿式排煙脱硫装置である。
【0008】
請求項4記載の発明は、攪拌軸を二軸構造とし、外部軸に吸収液攪拌用のインペラを設け、内部軸にせん断器を設け、外部軸と内部軸の各回転数および回転方向を独立して設定できる攪拌モータを設けた請求項1〜3のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置である。
【0009】
(作用)
請求項1〜4記載の発明によれば 循環タンクの攪拌軸にせん断器を設置し、攪拌機の酸化空気攪拌用インペラにより押し出される流体とともに、押し出される酸化用空気を、せん断し気泡径を小さくするように作用する。それによって、酸化用空気の気泡径が小さくなり、気液の接触面積が大きくなり、酸化空気による吸収液中の亜硫酸の酸化速度が大きくなる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、攪拌機に供給する酸化空気の気泡径を小さくできるので、吸収液中の亜硫酸の酸化速度を上げる効果がある。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、せん断器のせん断翼は、プロペラ、平板状あるいは棒状のいずれか1つ以上を選択することで、攪拌用インペラによる吐出流を低下することなく、気泡を小さくし酸化速度を上げる効果がある。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、酸化空気供給配管の供給口からの吸収液中への空気の供給方向が、攪拌機の攪拌軸方向あるいは吸収液攪拌用のインペラで押し出される液流れと同じ方向でせん断器に向かう方向であるので、より酸化空気の気泡径を小さくでき、吸収液中の亜硫酸の酸化速度を上げる効果がある。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、吸収液攪拌用のインペラ14とせん断器15の各回転数および回転方向を独立して設定できるので、拡販用インペラ14とせん断器15の攪拌動力の大きさを勘案してそれぞれの回転数及び回転方向を調整することができ、より空気の気泡を小さくできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の概略を図1に示す。図1に示す湿式排煙脱硫装置は、吸収塔2と吸収塔2の下部にある吸収液循環タンク9とを備え、吸収塔2はその側壁に設けた排ガス入口ダクト1と吸収塔2内で脱硫処理された排ガスを排出する吸収塔排ガス出口ダクト3を備えている。また、吸収液循環タンク9内の吸収液10を吸収塔2内の空塔部へ吸収塔2の外部から循環供給するための循環ポンプ4を備えた吸収液循環配管5が設けられ、吸収塔2内の空塔部にある吸収液循環配管5の先端部には複数のスプレノズル6を多段に備えている。また、循環タンク9内の吸収液は攪拌機7で攪拌されるが、このとき該攪拌機7の羽根の回りに空気を供給して気泡を形成させる空気供給配管8を備えている。
【0015】
図2に攪拌機7が設置される吸収塔部分の概略図を示す。攪拌機7は攪拌モータ11と一軸構造の攪拌軸12とインペラ14とせん断用インペラ15から構成される。
【0016】
ボイラの排ガスが入口ダクト1から吸収塔2に導入されるが、吸収塔内では循環タンク9に貯留した炭酸カルシウムを含む吸収液10が、循環ポンプ4により循環配管5を通じてスプレノズル6に供給され、スプレノズル6から噴霧されている。
【0017】
そのためスプレノズル6から噴霧された吸収液10と排ガスとの気液接触が吸収塔2内で起こり、排ガス中の硫黄酸化物(SO2で代表する)が吸収される。吸収液10に吸収されたSO2は、炭酸カルシウムと反応し、亜硫酸カルシウムCa(HSO32となり、亜硫酸カルシウムCa(HSO32を含む吸収液10は循環タンク9に貯留される。
【0018】
循環タンク9内の吸収液中には空気供給配管8から空気が供給され、攪拌機7により攪拌されて気泡となり、気泡中の酸素は循環タンク9に滞留中の吸収液10に含まれる亜硫酸カルシウムと反応して硫酸カルシウムが生成される。
【0019】
撹拌機7の軸12に設けられたインペラ14は、空気供給配管8の先端の供給口8aより供給される空気を流体押し出し側に押し出す。また空気供給配管8の流体押し出し方向に流れる吸収液流れの後流側に軸12に設けられたせん断器15があるので、該せん断器15で酸化用空気をせん断し、気泡径を小さくする。
【0020】
空気供給配管8は、図2に示すように液流れと同じ方向に酸化空気を供給できるように供給口8aの向きを設定し、該供給口8aとせん断器15との距離は20cm以下に設定する。また、空気供給配管8の供給口8aの向きを、図3に示すようにせん断器15の翼の裏側(液流れ前流側)に向けて、酸化用空気を噴出してせん断用翼により気泡を切るようにして気泡径を小さくしても良い。
【0021】
さらに図4(a)、(b)に示すようにせん断器15の翼の形状を図2に示す形状とは異なるようにしても良い。
図4(a)にはせん断器15の翼は平板を用いた例を示し、図4(b)にはせん断器15の翼として、細棒と該細棒に接続し、空気供給配管8の供給口の近傍に位置する領域に該細棒に直交した突起からなる例を示す。
【0022】
図4(a)に示すせん断器15は液流れの邪魔をしないでインペラ14と同じ流速で気泡を押し出すことができる。図4(b)のせん断器15は、その近傍に空気供給口8aを配置することで、供給口8aから噴出する気泡を切断して気泡径を小さくすることができる。
【0023】
攪拌用のインペラ14と、せん断器15を独立して設けることにより、インペラ14では流体の攪拌のみを行い、酸化用空気の吸込みの影響で流体の押し出し流が低下することがなく、安定して攪拌することが可能となる。また、せん断器15により酸化用空気が微細化される。せん断器15を設置することにより、攪拌モータ11に必要な動力が大きくなるが、せん断器15の翼の周りには酸化用空気が存在することから、インペラ14を回転させるために必要な動力に比べ、小さな動力で回転させることができる。
【0024】
このため、せん断器15を設けることにより、攪拌機7の一台あたりの攪拌動力は増加するが、亜硫酸の酸化能力が向上することで、循環タンク9に設置する攪拌機7の員数を低減することが可能となる。これにより、装置全体での攪拌動力及びコストの低減が可能となる。
【0025】
本発明の他の実施例を図5に示す。本実施例の攪拌機7は、攪拌モータ11と外部軸12と内部軸13からなる二軸構造の攪拌軸の外部軸12に設けられたインペラ14と内部軸13に設けられたせん断用インペラ15から構成される。
【0026】
この場合は、攪拌モータ11により回転する外部軸12と内部軸13の回転方向と回転数をそれぞれ、異なる設定とすることもできる。
外部軸12のインペラ14の回転数は一定とし、内部軸13のせん断器15の回転数は、外部軸12の回転数に対して回転比が1〜5の範囲で変化し得るように設定し、回転方向は互いに逆方向とする場合は、内部軸13の外部軸12の回転数に対する回転比は2が望ましい。これは、内部軸13の回転比を大きくするほど気泡径が小さくなるが、前記回転比が2以上では、気泡径の低下が小さくなるのに対し、攪拌モータ11の消費動力が増加するためでる。
【0027】
上記設定により、せん断器15による噴出空気の気泡の微細効果が向上し、撹拌機1台あたりの酸化性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
攪拌機一台あたりで処理する空気量を増加し、一台での酸化性能を向上させることで、攪拌機台数を低減しコスト低減を図ることができ、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例になる湿式排煙脱硫装置の概略側面図である。
【図2】図1における循環タンク内の吸収液攪拌用の撹拌機部の拡大図である。
【図3】図1の循環タンク内の空気供給配管の供給口を流体の流れと同じ方向に空気が供給できる構造とした図である。
【図4】図2のせん断器の翼の形状を示す図である。
【図5】撹拌軸を2軸とした撹拌機の図である。
【符号の説明】
【0030】
1 入口ダクト 2 吸収塔
3 出口ダクト 4 循環ポンプ
5 循環配管 6 スプレノズル
7 撹拌機 8 空気供給配管
8a 空気供給口 9 循環タンク
10 吸収液 11 撹拌モータ
12 外部軸 13 内部軸
14 インペラ 15 せん断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス用の入口ダクトと該排ガスを脱硫処理した後の排ガスを排出する出口ダクトと吸収液を噴霧するためのスプレノズルを設けた吸収塔と、
該スプレノズルから噴霧された吸収液を貯留するために、吸収塔の下部に設けた循環タンクと、
該循環タンク内の吸収液をスプレノズルに吸い上げるための循環ポンプを設けた吸収液を送る循環配管と、
を備えた湿式脱硫排煙装置において
循環タンクに設置された攪拌機と、該撹拌機作動用の攪拌モータと、該攪拌機の攪拌軸に設けた吸収液攪拌用のインぺラと、前記攪拌軸に設けた酸化用空気を微細化するためのせん断器を設け、該吸収液攪拌用のインぺラとせん断器の間に酸化用空気供給配管の供給口を配置したことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
【請求項2】
せん断器は、プロペラ、平板状あるいは棒状のせん断翼を1つ以上設けたことを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置。
【請求項3】
酸化用空気供給配管の供給口からの吸収液中への空気の供給方向が、攪拌機の攪拌軸方向あるいは吸収液攪拌用のインペラで押し出される液流れと同じ方向でせん断器に向かう方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の湿式排煙脱硫装置。
【請求項4】
攪拌軸を二軸構造とし、外部軸に吸収液攪拌用のインペラを設け、内部軸にせん断器を設け、外部軸と内部軸の各回転数および回転方向を独立して設定できる攪拌モータを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−68161(P2008−68161A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246744(P2006−246744)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】