説明

湿式画像形成方法

【課題】トナーが記録材に強固に定着し、かつ印刷品質が良好な湿式画像形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の湿式画像形成方法は、記録材の表面に液体現像剤を転写するステップと、該液体現像剤が転写された記録材を加熱する第1加熱ステップとを含み、液体現像剤は、トナー粒子と、絶縁性液体と、分散剤とを含み、該分散剤は、アミド基、ピロリドン基、ウレタン基、およびイミン基からなる群から選択される1種以上の置換基を有する化合物を含み、第1加熱ステップを経た直後の記録材の温度をT1とし、フローテスターによって測定したトナー粒子の溶融温度および軟化温度をそれぞれ、TmおよびTsとすると、Ts<T1<Tmの関係を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式画像形成方法に関し、特に、複写機、プリンタ、デジタル印刷機等に用いる湿式画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおいて、液体現像剤に含まれるトナーを紙に定着させるために、紙を加熱することは従来からよく行なわれている。このように紙を加熱して液体現像剤に含まれる絶縁性液体を揮発させることにより、トナー粒子同士を凝集させて、トナー粒子を紙に定着させている。ここで、揮発性が低い絶縁性液体を用いるときには、1回の加熱では十分に絶縁性液体を揮発させることができないため、2段階に分けて紙を加熱してトナー粒子を紙に定着させている。
【0003】
たとえば特開2008−090113号公報(特許文献1)では、第1定着器および第2定着器の2つの定着器を用いて紙を2段階に加熱して液体現像剤を定着させている。特許文献1の第1定着器では、トナー軟化温度以下の温度に紙を加熱し、第2定着器では、トナー軟化温度以上で絶縁性液体の揮発温度よりも低い温度に紙を加熱している。また、液体現像剤の分散剤には、ポリエステルアミン基を有する分散剤を用いている。このように2段階で紙を加熱して液体現像剤を定着させ、しかも液体現像剤にポリエステルアミン基を有する分散剤を用いることにより、液体現像剤の定着強度を高めることができる。
【0004】
また、特開2005−338807号公報(特許文献2)でも、特許文献1と同様に、第1定着器および第2定着器の2つの定着器を用いて紙を加熱している。特許文献2では、第1定着器を通過した後の紙の温度をT1とし、第2定着器を通過した後の紙の温度をT2とし、第2定着器を通過する前の紙の温度をT3としたときに、トナーの溶融開始温度Tfbと、トナーの軟化温度Tsとの関係で、以下の数式(I)および(II)を満たすようにしてトナーを定着させている。
1>Tfb ・・・(I)
2>T3>Ts ・・・(II)
このような(I)および(II)の式を満たす温度に紙を加熱した上で、該紙にトナー粒子を定着させることにより、トナーの載り量に依存せずに、光沢度を均一に印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−090113号公報
【特許文献2】特開2005−338807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に示されるように、2段階に分けて紙を加熱すると、1段階目の紙の加熱により液体現像液中の絶縁性液体が揮発し、トナー粒子の凝集および膜化が生じる。ここで、第1段階目の加熱でトナー粒子が適度に加熱されていればよいが、トナー粒子が凝集して表面の膜化が進むと、この膜により内部に含まれる絶縁性液体が揮発しにくくなることがある。このため、2段階目の加熱によっても絶縁性液体を十分に揮発させることができず、絶縁性液体が残留して裏写りが生じる等の印刷品質に問題が生じる。
【0007】
また、1段階目の加熱により、トナー粒子が分散状態から半凝集状態に移行すると、現像剤が分散剤を介して絶縁性液体を捕捉することにより、液体現像剤の表面が半凝集状態で内部が未凝集状態になる。このような液体現像剤の状態になると、トナーと紙との定着強度が低下し、低温オフセットを引き起こしやすくなる。
【0008】
以上をまとめると、従来の湿式画像形成方法には、大きく2点の課題がある。第1の課題は、1段階目の加熱により液体現像剤の表面のみが膜化して内部の絶縁性液体が揮発されにくくなることであり、第2の課題は、絶縁性液体が揮発しないことによりトナーが凝集せず、トナー粒子が紙に定着しにくくなることである。よって、これら2点の課題を同時に解決し得る湿式画像形成方法が待ち望まれていた。
【0009】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、その目的とするところは、トナーが記録材に強固に定着し、かつ印刷品質が良好な湿式画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、記録材の加熱温度とトナー粒子の溶融温度に関し、鋭意検討を重ねることにより、本発明を完成した。すなわち、本発明の湿式画像形成方法は、記録材の表面に液体現像剤を転写するステップと、該液体現像剤が転写された記録材を加熱する第1加熱ステップとを含み、液体現像剤は、トナー粒子と、絶縁性液体と、分散剤とを含み、該分散剤は、アミド基、ピロリドン基、ウレタン基、およびイミン基からなる群から選択される1種以上の置換基を有する化合物を含み、第1加熱ステップを経た直後の記録材の温度をT1とし、フローテスターによって測定したトナー粒子の溶融温度および軟化温度をそれぞれ、TmおよびTsとすると、Ts<T1<Tmの関係を満たすことを特徴とする。
【0011】
第1加熱ステップを経た後に、さらに記録材を加熱する第2加熱ステップを含み、該第2加熱ステップを経た直後の記録材の温度T2は、Tmよりも高い温度であることが好ましい。
【0012】
液体現像剤は、トナー粒子の重量に対し、0.5質量%以上10質量%以下の分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、ピロリドン基を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の湿式画像形成方法は、上記のような構成を有することにより、トナーが記録材に強固に定着し、かつ印刷品質が良好であるという極めて優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1加熱ステップを経た後の記録材の温度T1を測定するときの概略を示す模式図である。
【図2】本発明の湿式画像形成方法の第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の湿式画像形成方法の第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを模式的に示す断面図である。
【図4】記録材の表面に液体現像剤を転写するステップを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の湿式画像形成方法を図面を用いて説明する。本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表わすものではない。
【0016】
<湿式画像形成方法>
本発明の湿式画像形成方法は、記録材の表面に液体現像剤を転写するステップと、液体現像剤が転写された記録材を加熱する第1加熱ステップとを含み、液体現像剤は、トナー粒子と、絶縁性液体と、分散剤とを含み、分散剤は、アミド基、ピロリドン基、ウレタン基、およびイミン基からなる群から選択される1種以上の置換基を有する化合物を含み、該第1加熱ステップを経た直後の記録材の温度をT1とし、フローテスターによって測定したトナー粒子の溶融温度および軟化温度をそれぞれ、TmおよびTsとすると、Ts<T1<Tmを満たすことを特徴とする。上記のような分散剤を含む液体現像剤を用い、かつ第1加熱ステップを経た直後の記録材の温度T1が上述の関係式を満たすことにより、印刷品質が低下したり、オフセットが発生したりするのを抑制することができる。以下においては、本発明の湿式画像形成方法を構成する各ステップを説明する。
【0017】
<液体現像剤を転写するステップ>
本発明の湿式画像形成方法は、まず、記録材に液体現像剤を転写するステップを行なう。液体現像剤を転写する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。記録材に転写される液体現像剤の量は、ベタ画像において3g/m2以上5g/m2以下であることが好ましい。このような量で液体現像剤を転写することにより、後述する第1加熱ステップおよび第2加熱ステップにより、絶縁性液体が揮発しやすく、かつトナー粒子が記録材に定着しやすくなる。
【0018】
液体現像剤を転写するステップは、具体的にはたとえば後述する図4に示される装置を用いて行なわれる。図4に示す装置を用いた液体現像剤の転写するステップ、および液体現像剤に関しては後述する。以下においては、本発明の湿式画像形成方法に含まれる第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを説明する。
【0019】
<第1加熱ステップ>
本発明において、第1加熱ステップは、上記で液体現像剤が転写された記録材をT1の温度まで加熱する工程である。かかる第1加熱ステップでは、トナー粒子の溶融温度Tmと液体現像剤の軟化温度Tsとの関係で、Ts<T1<Tmを満たすように記録材を加熱することを特徴とする。このように溶融温度Tm未満の温度T1に記録材を加熱することにより、液体現像剤の表面が完全に膜化せずに半溶融状態となる。この半溶融状態の記録材を、後述する第2加熱ステップにてさらに加熱することにより、液体現像剤に含まれる絶縁性液体が揮発し、裏写りしにくい高品質な印刷を可能とする。第1加熱ステップを経た記録材の温度T1がTm以上であると、液体現像剤の表面が膜化して内部の絶縁性液体を揮発させることができず、絶縁性液体が印刷面に残存し、裏写りのような品質の低下が生じる。
【0020】
また、第1加熱ステップにおいて、液体現像剤の軟化温度Tsを超える温度T1に記録材を加熱することにより、記録材に定着しやすいようにトナーが溶融し、液体現像剤に含まれる絶縁性液体の揮発が進みやすくなる。これによりトナー粒子が凝集して記録材に定着しやすくすることができる。一方、第1加熱ステップを経た記録材の温度T1がTs以下であると、トナーが溶融しにくく、しかも絶縁性液体の揮発が生じにくくなる。
【0021】
ここで、上記の軟化温度Tsは、内部空癖が消失し、不均一な応力の分布をもったまま外観均一な相になる温度である。また、溶融温度Tm(T1/2と記すこともなる)は、ピストンストロークの位置をSとしたときに流出終了点Smaxと最低値Sminの差の1/2のときの温度であり、流出開始温度Tfbと軟化温度Tsとの平均によって算出される。なお、流出開始温度Tfbは、サンプルの熱膨張することによりピストンが僅かに上昇してから、該ピストンが再び降下し始めるときの温度である。
【0022】
上記TmおよびTsは、以下のようなフローテスターによって測定する。まず、液体現像剤5mlを25℃で2000rpmの回転数で20分間の遠心分離を行なう。そして、上澄み液だけを捨てて沈殿物を残す。この沈殿物にヘキサンを加えて攪拌し、20〜30秒間超音波を照射した後に、25℃で2000rpmの回転数で20分間の遠心分離を行なうことにより洗浄する。次に、上澄み液(ヘキサン)を捨てて、上記と同様に沈殿物にヘキサンを加える洗浄を3回繰り返す。このようにして得られた沈殿物を濾紙に取り出し、真空乾燥機で25℃で1時間乾燥することにより、乾燥状態のトナーサンプルを約1g準備する。このトナーサンプルを応圧機で圧力をかけることによりペーストを作製する。このようにして作製したペーストをフローテスタ(製品名:CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて、以下の条件でトナー粒子の溶融温度Tmおよび軟化温度Tsを測定する。
測定開始温度:50℃
測定終了温度:200℃
重り:0.5kg
昇温速度:5℃/min
ダイ穴径:0.5mm
ダイ穴長さ:1mm
余熱時間:60秒
また、上記の第1加熱ステップを経た後の記録材の温度T1は、第1加熱ステップを終えてから0.025秒が経過したときの記録材の温度を、デジタル放射温度センサ(製品名:サーモパイルFT−H10(株式会社キーエンス製))によって測定した値を採用するものとする。
【0023】
図1は、第1加熱ステップを経た後の記録材の温度T1を測定するときの概略を示す模式図である。図1に示されるように、第1定着ローラ14と第1加圧ローラ15の間に液体現像剤11が転写されたA4の記録材12を、400mm/sの速度で通過させることにより記録材を加熱する。ここで、第1定着ローラ14および第1加圧ローラ15の外径は50mmであり、いずれも外径が35mmの芯金の外周面に弾性層が形成されている。かかる弾性層は、厚さ15mmのシリコーンゴム層の表面に1mmの厚みのポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)を積層したものである。第1定着ローラ14および第1加圧ローラ15はいずれも、内部にハロゲンランプのヒーター13を備えている。
【0024】
また、デジタル放射温度センサ23は、放射率が0.95であり、応答時間が0.03秒である。このデジタル放射温度センサ23を記録材の表面から35mm離した地点(図1中のD)に設置し、デジタルアンプ24と接続する。デジタル放射温度センサ23は、デジタルアンプ24が受信したデータをパソコン25で演算して記録材の温度を算出する。
【0025】
<第2加熱ステップ>
本発明において、第2加熱ステップは、上記第1加熱ステップで加熱した記録材をT2の温度まで加熱する工程であり、かかるT2は、トナー粒子の溶融温度Tmよりも高い温度であることが好ましい。このような第2加熱ステップにおいて、溶融温度Tmよりも高い温度に記録材を加熱することにより、液体現像剤に含まれる絶縁性液体を安定して揮発することができ、もってトナーが記録材に定着しやすくなる。一方、T2が溶融温度Tm以下であると、記録材の加熱が十分ではないことにより、絶縁性液体の揮発が起こりにくく、かつトナーの凝集も起こりにくくなり定着強度が低下するおそれがある。
【0026】
ここで、上記の第2加熱ステップを経た後の記録材の温度T2は、第2加熱ステップを終えてから0.025秒が経過したときの記録材の温度を、デジタル放射温度センサ(製品名:サーモパイルFT−H10(株式会社キーエンス製))によって測定した値を採用するものとする。その測定方法は、第1加熱ステップと同様であるため説明は繰り返さない。
【0027】
<接触式の湿式画像形成>
図2は、本発明の湿式画像形成方法の第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを模式的に示す断面図である。なお、以下においては、接触式で記録材を加熱する場合を例にとり説明するが、図3に示すように非接触式で記録材を加熱しても差し支えないことは言うまでもない。
【0028】
図1において、液体現像剤11が転写された記録材12は、まず、第1加熱ステップとして第1定着ローラ14および第1加圧ローラ15の間を通過することによりT1に加熱される。そして、次に、第2加熱ステップとして、第2定着ローラ16および第2加圧ローラ17の間を通過することによりT2に加熱される。このように接触式で記録材を加熱することにより、記録材を効率よく昇温することができるため、液体現像剤に含まれる絶縁性液体の揮発を効率的に行なうことができる。
【0029】
なお、第1加熱ステップおよび第2加熱ステップの前後に、必要に応じてさらに加熱手段を設けてもよい。
【0030】
ここで、第1定着ローラ14、第1加圧ローラ15、第2定着ローラ16および第2加圧ローラ17は、記録材の種類や厚み、記録材の通過速度により適宜加熱温度を決定することが好ましい。また、第1定着ローラ14は、両面通過時のオフセットを防止するために、第1加圧ローラ15よりも20〜50℃高く設定するのが一般的である。同様に、第2定着ローラ16は、第2加圧ローラ17よりも20〜50℃高く設定される。
【0031】
<非接触式の湿式画像形成>
図3は、本発明の湿式画像形成方法の第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを模式的に示す断面図である。なお、図3においては、第2加熱ステップを非接触式で加熱する場合を示しているが、第1加熱ステップを非接触式で加熱しても差し支えない。
【0032】
図3に示される湿式画像形成装置は、第2加熱ステップにおいて、熱源30を用いて熱を放射することにより記録材を加熱している。このようにして記録材を加熱するものであっても本発明の範囲を逸脱するものではない。このような方法で記録材を加熱する場合、第2加熱ステップを経た直後の記録材の温度T2は、熱源30の直下の位置から10mm離れた地点の記録材の温度を採用するものとする。図3に示される非接触式の加熱方式だけではなく、たとえばベルト式で加熱してもよいし、熱風を記録材に照射することにより記録材を加熱してもよい。
【0033】
以下においては、本発明の湿式画像形成方法に用いられる液体現像剤を説明する。
<液体現像剤>
本発明の湿式画像形成方法に用いられる液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体と分散剤とを含む。かかる液体現像剤は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえば荷電制御剤、粘度調整剤等を挙げることができる。このような液体現像剤は、電子写真方式の画像形成装置用の現像剤として有用である。
【0034】
ここで、各成分の配合割合は、たとえばトナー粒子を10〜50質量%、絶縁性液体を50〜90質量%(45〜89.99質量%)、および分散剤をトナー粒子の質量に対して0.1〜10質量%とすることができる。上記の液体現像剤の粘度は、25℃において0.1〜10000mPa・sが好ましい。10000mPa・sを超えると、絶縁性液体とトナー粒子との撹拌が困難となり、均一な液体現像剤を得にくくなるため好ましくない。以下においては、液体現像剤に含まれる各成分を説明する。
【0035】
(トナー粒子)
本発明の液体現像剤に含まれるトナー粒子は、通常絶縁性液体に相溶せず絶縁性液体中に分散された状態で存在し、少なくとも、樹脂と、該樹脂中に分散された顔料とを含むものである。かかるトナー粒子は、樹脂および顔料を含む限り、他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、たとえばワックス、荷電制御剤等を挙げることができる。
【0036】
上記のトナー粒子は、液体現像剤100重量部に対し、10〜50重量部を含むことが好ましい。10重量部未満であると、トナー粒子が液体現像剤中で沈降し、長期保管時の安定性が低下するという問題がある。しかも、10重量部未満であると、トナー粒子の含有量が少ないため、多量の液体現像剤を供給しなければ必要な画像濃度を得ることができない。このため、定着時に乾燥させる絶縁性液体の量が多くなりすぎて環境への負荷が大きくなり好ましくない。一方、50質量部を超えると、液体現像剤の粘度が高くなり過ぎることにより、液体現像剤を製造しにくく、しかも取り扱いにくいという欠点がある。
【0037】
ここで、樹脂と顔料との配合割合は、たとえば樹脂に対し、8〜50質量%の顔料を含むことが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。8質量%未満であると、顔料濃度が不十分となり、所望の濃さを得ることができず、50質量%を超えると、顔料が樹脂に分散しにくくなったり、結着成分が少なくなるため、必要な定着強度が得られなくなったりする。
【0038】
トナー粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、高画質の画像を得ることを目的として、0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは1〜4μm、さらに好ましくは1〜3μmとすることが好適である。これらの粒径は、従来用いられていた粉体状現像剤(乾式現像剤)のトナー粒子の粒径に比べて小さく、本発明の特徴の一つとなるものである。このような粒径のトナー粒子を用いることにより、現像性が良好で、かつ画像品質が高いものを印刷することができる。0.1μm未満であると、現像性が大きく低下し、5μmを超えると、画像品質が低下する。なお、本発明でいう粒径とは、平均粒径を意味し、各種の粒度分布計により体積平均粒径として特定することができる。
【0039】
本発明のトナー粒子を構成する樹脂は、熱可塑性のものであれば特に限定することなく用いることができる。このような樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体(特にエチレン系共重合体)、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等を挙げることができる。
【0040】
また、本発明で用いる樹脂は、酸価が10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましく、さらに好ましくは30mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である。酸化が高いほど記録材との定着性に優れたものとなる。酸価が10mgKOH/g未満ではトナー粒子と記録材との接着性が小さく定着性が悪化する場合がある。一方、100mgKOH/gを超えると、トナー粒子が硬くなりすぎ定着エネルギーが多大に必要となる場合がある。
【0041】
上記のトナー粒子を構成する樹脂は、重量平均分子量(Mw)が5000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは7000以上30000以下である。重量平均分子量が5000未満では顔料との均一分散が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が200000を超えると、記録媒体への定着時に要するエネルギが大きくなり好ましくない場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0042】
また、本発明に用いる樹脂は、熱可塑性を示し、40℃以上85℃以下のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。ガラス転移点が40℃未満の場合、保管安定性が悪化する場合があり、85℃を超えると、画像を定着させるエネルギが著しく増加し経済的に不利であるばかりか画像形成装置の各部に熱的ダメージを与えやすく、また定着温度が低い場合には画像の光沢が低下する場合がある。より好ましいガラス転移点は、55℃以上75℃以下である。
【0043】
<顔料>
本発明のトナー粒子に含まれる顔料は、上記の樹脂中に分散されており、所望の色調を得るために添加されるものである。このような顔料の粒径は、0.5μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。顔料の粒径が0.5μmを超えると画像の色彩値がずれ、所望の色彩が得られない場合がある。また、顔料の粒径の下限値は特に限定されない。
【0044】
樹脂に対する好適な顔料の濃度は、顔料の粒径および色種によって異なる。顔料の粒径を小さくするほど、顔料の濃度を低くしても、所望の濃さの画質を得ることができる。また、色種に関し、たとえばシアン顔料は、樹脂に対する顔料の濃度が10〜40質量%であることが好ましく、マゼンダ顔料は、樹脂に対する顔料の濃度が15〜50質量%であることが好ましく、イエロー顔料は、樹脂に対する顔料の濃度が8〜30質量%であることが好ましい。
【0045】
上記の顔料は、樹脂に分散されて、その二次粒径が50nm以上300nm以下になることが好ましい。300nmを超えると、一定の付着量でも十分着色力、隠ぺい力、および定着後の透明性を得にくい傾向がある。また、顔料の分散性を上げるために、顔料の表面を塩基性または酸性に処理した顔料誘導体を用いてもよい。このような顔料は、上記樹脂100質量部に対して10〜40質量部含まれることが好ましい。顔料の含有量が10質量部未満では、必要な画像濃度を得ることができず、40質量部を超えると、トナー粒子中に占める樹脂の含有量が少なくなるため十分な定着強度を得ることができなくなる。より好ましい含有量は、10〜25質量部、さらに好ましくは12〜20質量部である。
【0046】
上記のトナー粒子を構成する顔料としては、従来公知のものを特に限定することなく使用することができる。顔料としては、有機顔料を用いることができ、該有機顔料としては、フタロシアニン系、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ系等のアゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ペリノン系、チオインジゴ系、イソインドリン系等を挙げることができる。
【0047】
また、上記の顔料の一例として、オルトアニリンブラック、トルイジンオレンジ、パーマネントカーミンFB、ファーストイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントイエロー、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、アルカリブルーRトナー、ファーストイエロー10G、オルトニトロアニリンオレンジ、トルイジンレッド等を挙げることができる。
【0048】
<絶縁性液体>
本発明の液体現像剤に含まれる絶縁性液体は、常温で不揮発性であり、電気的に絶縁性を示すものが好ましく、たとえば誘電率が3以下の低誘電率のものが好適である。この範囲の抵抗値を有すれば、通常静電潜像を乱すことがないためである。さらに、このような絶縁性液体は、臭気および毒性がないものが好ましい。
【0049】
このような絶縁性液体としては、たとえば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、シリコンオイル、動植物油、鉱物油等を挙げることができる。特に、臭気、無害性、コストの観点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。より具体的には、松村石油研究所社製のモレスコホワイトP40(商品名)、同P60(商品名)、同P120(商品名)、アイソパー(商品名、エクソン化学社製)、シェルゾール71(商品名、シェル石油化学社製)、IPソルベント1620(商品名、出光石油化学社製)、IPソルベント2028(商品名、出光石油化学社製)等を挙げることができる。
【0050】
<分散剤>
本発明の液体現像剤に含まれる分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定的に分散させる作用を有するものであり、このため、通常はトナー粒子の表面部に存在(吸着)している。このような分散剤は、液体現像剤中に溶解するものであってもよいし、分散するものであってもよいが、アミド基、ピロリドン基、ウレタン基、およびイミン基からなる群から選択される1種以上の置換基を有する化合物を含むことを特徴とする。
【0051】
これらの官能基を有する分散剤を含む液体現像剤を用いることにより、トナー粒子が分散剤を介して絶縁性液体を捕捉することになるため、液体現像剤11の表面および内部を均一に半凝集状態とすることができる。これにより液体現像剤11の表面のみのトナー粒子が凝集して膜化するのを防止することができる。その結果、分散剤が捕捉する絶縁性液体を安定して揮発することができ、オフセットを発生しにくくすることができる。上記の分散剤としては、トナー粒子を安定に分散させるものである限り特に限定されるものではなく、たとえば界面活性剤、高分子分散剤等を用いてもよい。
【0052】
上記のアミド基を有する化合物としては、「製品名:Disperbyk−109(アルキロールアミノアマイド)BYK Chemie社製」を好適に用いることができる。また、ウレタン基を有する化合物は、酸やアルコール基をイソシアネートで反応させることによって得ることができ、たとえばアクリル酸やメタクリル酸やHEMA等を用い、末端をイソシアネートで反応させることによって形成することができる。
【0053】
上記の分散剤が、絶縁性液体と均一に分散されるためには、分散剤の分子内に長鎖のアルキル基を有することが好ましい。かかる分散剤は、トナー粒子の質量に対し、0.5質量%〜10質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%添加することである。分散剤の添加量が0.5質量%未満であると、トナー粒子の分散性が低下するため好ましくなく、10質量%を超えると、分散剤が絶縁性液体を捕捉することになるため、トナーが定着しにくくなる。
【0054】
このような分散剤として塩基性の高分子分散剤を用いることが好ましく、その塩基性基としてピロリドン基を有する高分子分散剤を用いることが特に好ましい。これは、恐らくトナー粒子を構成する上述のビニル系共重合体樹脂の酸価が高くなるために塩基性の高分子分散剤を用いることにより、これら両者の相互作用によりトナー粒子の良好な分散性が長期間に亘り安定化されるためではないかと考えられる。なお、本発明の塩基性の高分子分散剤とは、塩基性基を有する高分子分散剤をいい、重量平均分子量が3000〜10000程度のものをいう。
【0055】
このような塩基性の高分子分散剤としては、上記ピロリドン基をはじめ、たとえば芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基、ヘテロ環窒素含有基、ヘテロ環酸素含有基、ヘテロ環硫黄含有基等を有する高分子分散剤を挙げることができる。また、ピロリドン基としては、たとえばN−ビニルピロリドン基を挙げることができ、N−ビニルピロリドン基を有する塩基性の高分子分散剤としては、たとえばN−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたはアルキレン化合物とのランダム共重合体またはグラフト共重合体等を挙げることができる。ここで、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルがアルキルエステルである場合、そのアルキル基の炭素数は10〜20程度であることが好ましい。これらの市販品を例示すると、たとえば「Antaron V−216」、「Antaron V−220」(いずれも商品名、GAF/ISP Chemicals社製)等を挙げることができる。また、上記アルキレン化合物のアルキル基の炭素数は10〜30程度が好ましい。長鎖アルキル基を有するポリビニルピロリドンとしては、「W−660」(商品名、GAF/ISP Chemicals社製)を挙げることができる。
【0056】
<液体現像剤の調整方法>
まず、トナー粒子を構成する樹脂は、従来公知のラジカル重合方法により製造することができる。すなわち、用いる原料モノマーの種類に応じて異なるものの、一般的には50〜300℃の温度範囲で行なうことができる。また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を任意に選択したり、反応容器内圧力を常圧または減圧にする等、任意の条件を採用することができる。
【0057】
液体現像剤の調製は、従来公知の技法に基づいて行なうことができる。たとえば、加圧ニーダ、ロールミル、3本ロール等の混練機を用いて、樹脂と顔料とを所定の配合比で溶融混練し、樹脂中に顔料を均一に分散させることにより顔料−樹脂分散体を得る。
【0058】
続いて、上記で得られた顔料−樹脂分散体を冷却し、冷却後これをたとえばジェットミルによって粗粉砕する。引き続き、粗粉砕された顔料−樹脂分散体(これを「粗粉砕トナー」ともいう)をさらに所望の粒径となるまで微粉砕する。そして、たとえば風力分級機などで分級することにより、所定の粒径の着色トナーを得る。
【0059】
上記で用いることができる粉砕方法としては、省エネルギで所望の粒径まで粉砕できる方法であれば特に限定されるものではなく、乾式粉砕法、湿式粉砕法等の他、オイル中での造粒法、無極性溶媒中で造粒した後に、溶媒をオイルに置換する方法等を用いても差し支えない。
【0060】
たとえば、カッターミルにより粗粉砕トナーを得、引き続き乾式粉砕法としてジェットミルを用いて、粗粉砕トナーを所望の粒径となるまでさらに粉砕することによりトナー粒子を得る。そして、このトナー粒子を絶縁性オイルおよび分散剤と混合する。そして、この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させることにより、液体現像剤を調製することができる。
【0061】
一方、湿式粉砕法を採用する場合は、たとえば上記で得られた粗粉砕トナー、絶縁性オイル、および分散剤を混合し、サンドミルを用いてこの混合物を粉砕することによりトナー粒子を所望の粒径とし、液体現像剤を調製することができる。
【0062】
<画像形成装置>
以下においては、記録材の表面に液体現像剤を転写する画像形成装置を説明する。図4は、記録材の表面に液体現像剤を転写するステップを示す模式的な断面図である。なお、図4の装置では、画像形成に関わる構成要素を示し、画像形成に直接関係しない記録材の給紙、搬送、排紙に関する構成要素は簡略的に示している。
【0063】
図4に示される画像形成装置10は、像担持体としての感光体ドラム1、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写体としての中間転写ローラ5、およびクリーニング装置6、二次転写ローラ7を備える。
【0064】
カラー現像の方式、中間転写の有無などは任意に設定することができ、それに合わせた任意の配置構成をとることができる。たとえば、上記の中間転写ローラ5に代えて、中間転写ベルトを用いることもできるし、また2台以上の湿式現像装置4を配置して、カラー画像を形成できるようにしてもよい。
【0065】
上記の感光体ドラム1は、その表面に感光体層(図示せず)が形成された円筒形状であって、図1における矢印A方向に回転するものであり、記録材9が400mm/secで動くように回転する。そして、感光体ドラム1の回転方向に沿って、感光体ドラム1の外周に、クリーニング装置6、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、および中間転写ローラ5がこの順に配置されている。
【0066】
ここで、帯電装置2によって感光体ドラム1の表面を所定の電位に帯電させることができ、露光装置3によって感光体ドラム1の表面に光を照射し、照射された領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。そして、感光体ドラム1上に形成された潜像を湿式現像装置4により現像する。すなわち、感光体ドラム1の現像領域に液体現像剤を搬送し、その液体現像剤に含まれるトナーを感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー画像を形成する。
【0067】
このような湿式現像装置4は、表面に液体現像剤の薄層を担持し、像担持体である感光体ドラム1上の潜像を現像するための現像ローラ41と、該現像ローラ41に当接して、その表面に液量調整された液体現像剤を転移させる搬送ローラ42と、該搬送ローラ42に当接して、その表面に現像剤槽44内の液体現像剤8を供給する供給ローラ43とを備える。
【0068】
現像のプロセスでは、電源(図示せず)を用いてトナーと同極性の現像バイアス電圧を湿式現像装置4の現像ローラ41に印加する。同じくトナーと同極性の感光体ドラム1上の潜像の電位とのバランスで電界の大小差が形成され、潜像に従って現像剤中のトナーが感光体ドラム1に静電吸着され、感光体ドラム1上の潜像が現像される。
【0069】
中間転写ローラ5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら矢印B方向に回転する。中間転写ローラ5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写ローラ5への一次転写が行なわれる。一次転写では、電源(図示せず)を用いてトナーと逆極性の転写バイアス電圧を中間転写ローラ5に印加する。
【0070】
これにより一次転写位置における中間転写ローラ5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写ローラ5に静電吸着されることにより中間転写ローラ5上に転写される。トナー像が中間転写ローラ5に転写されると、感光体ドラム1上の残存トナーはクリーニング装置6によって除去される。中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とは、記録材9を挟んで対向するように配置されており、記録材9を介して接触回転する。これら中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とのニップ部で、中間転写ローラ5から記録材9への二次転写が行なわれる。
【0071】
記録材9は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ矢印C方向に搬送される。二次転写においては、二次転写ローラ7に、トナーと逆極性の転写バイアス電圧を電源(図示せず)から印加することにより、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間に電界が形成される。この電界により中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間を通過した記録材9に中間転写ローラ5上のトナー画像が静電吸着されて、記録材9上に液体現像剤が転写される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、樹脂Iおよび樹脂IIを合成し、かかる樹脂Iおよび樹脂IIを用いて液体現像剤A〜Fを配合した。実施例1〜7および比較例1〜4では、上記のようにして配合した液体現像剤A〜Fを用いて湿式現像を行なった。以下においては、この順序で実施例1〜7および比較例1〜4を説明する。
【0073】
<樹脂の合成>
(樹脂Iの合成)
まず、還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(多価アルコール)を1600重量部と、テレフタル酸を550重量部と、トリメリット酸を340重量部とを投入した。次に、これらを攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度に昇温することにより脱水重縮合または脱アルコール重縮合を行なった。
【0074】
次に、樹脂の酸価または反応溶液の粘度が所定の値になったところで、反応系の温度を100℃以下に冷却することにより、重縮合を停止し、熱可塑性ポリエステル樹脂(樹脂I)を得た。得られた樹脂Iは、Mw=7500、Mn=2700、Tg=65.3℃、酸価=64.0mgKOH/gであった。
【0075】
(樹脂IIの合成)
上記の樹脂Iの製造に用いた原料成分のうちのトリメリット酸をテレフタル酸に変えたことが異なる他は、樹脂Iの合成と同様の方法により樹脂IIを合成した。すなわち、樹脂IIでは、テレフタル酸を合計で890重量部混入することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂(樹脂II)を得た。得られた樹脂IIは、Mw=4800、Mn=2000、Tg=50.3℃、酸価=15.0mgKOH/gであった。
【0076】
<液体現像剤の作製>
(液体現像剤Aの作製)
まず、樹脂Iを100重量部と、銅フタロシアニンブルーを15重量部とをヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。そして、さらに二軸押出混練機で溶融混合し、混合物を冷却した。次に、溶融混合した混合粉末を粗粉砕し、ジェット粉砕機にて平均粒径6μmに微粉砕した。
【0077】
次に、得られた微粉砕の混合粉末を同方向回転二軸押出し機を用いて、二軸ロール内の加熱温度を150℃として溶融混練を行なった。その後、溶融混練した粉末を冷却し、粗粉砕することにより粗粉砕トナーを得た。この粗粉砕トナーを34重量部と、塩基性高分子分散剤としてAntaron V−216(GAF/ISP Chemicals社製)を0.2重量部(トナーに対して0.5質量%)と、流動パラフィンを100重量部(引火点86℃、IPソルベント2028(出光石油化学社製)と、ジルコニアビーズ100重量部とを混合し、サンドミルにて120時間撹拌することにより、液体現像剤を作製した。このようにして得られた液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.3μmであった。
【0078】
(液体現像剤Bの作製)
上記の液体現像剤Aに対し、ポリエステル樹脂Iをポリエステル樹脂IIに変更したこと、および塩基性高分子分散剤の配合量を0.2重量部から1.7重量部(トナーに対して5質量%)に変更したことが異なる他は、上記の液体現像剤Aと同様の方法により液体現像剤Bを作製した。このようにして作製した液体現像剤に含まれるトナー粒子の体積平均粒径は2.7μmであった。
【0079】
(液体現像剤Cの作製)
上記の液体現像剤Bに対し、塩基性高分子分散剤をアミド系の分散剤であるDisperbyk−109(ビックケミージャパン株式会社製)に変更し、さらのその配合量を1重量部(トナーに対して2.9質量%)に変えたことが異なる他は、上記の液体現像剤Bと同様の方法により液体現像剤Cを作製した。
【0080】
(液体現像剤Dの作製)
上記の液体現像剤Bに対し、塩基性高分子分散剤の配合量を3.4重量部(トナーに対して10質量%)に変えたことが異なる他は、上記の液体現像剤Bと同様の方法により液体現像剤Dを作製した。
【0081】
(液体現像剤Eの作製)
上記の液体現像剤Bに対し、塩基性高分子分散剤の配合量を4重量部(トナーに対して12重量%)に変えたことが異なる他は、上記の液体現像剤Bと同様の方法により液体現像剤Dを作製した。
【0082】
(液体現像剤Fの作製)
上記の液体現像剤Bに対し、塩基性高分子分散剤をポリエステルアミン(製品名:ソルスパーズ13940(ゼネカ社製))に変更し、さらのその配合量を3重量部(トナーに対して8.8質量%)に変えたことが異なる他は、上記の液体現像剤Bと同様の方法により液体現像剤Fを作製した。
【0083】
<溶融温度Tmおよび軟化温度Tsの測定>
上記で作製した液体現像剤A〜Fをそれぞれ5ml測りとり、25℃で2000rpmの回転数で20分間の遠心分離を行なった。そして、上澄み液だけを捨てて沈殿物を残す。この沈殿物にヘキサンを加えて攪拌し、20〜30秒間超音波を照射した後に、25℃で2000rpmの回転数で20分間の遠心分離を行なうことにより洗浄した。
【0084】
次に、上澄み液(ヘキサン)を捨てて、上記と同様に沈殿物にヘキサンを加える洗浄を3回繰り返した。このようにして得られた沈殿物を濾紙に取り出し、真空乾燥機で25℃で1時間乾燥することにより、乾燥状態のトナーサンプルを約1g準備した。このトナーサンプルを応圧機で圧力をかけることによりペーストを作製した。
【0085】
このようにして作製したペーストをフローテスタ(製品名:CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて、以下の条件でトナー粒子の溶融温度Tmおよび軟化温度Tsを測定した。その結果を表1および表2の「Ts」および「Tm」の欄に示す。
測定開始温度:50℃
測定終了温度:200℃
重り:0.5kg
昇温速度:5℃/min
ダイ穴径:0.5mm
ダイ穴長さ:1mm
余熱時間:60秒
【0086】
【表1】

【0087】
<実施例1〜7および比較例1〜4>
実施例1〜7および比較例1〜4では、まず、記録材としては、OKトップコート128g紙(王子製紙株式会社製)、またはボンアイボリー360g紙(王子製紙株式会社製)を用いた。この記録材上に液体現像剤A〜Fをトナー粒子の量が固形分換算で3g/m2となるようにベタ画像を載せた。そして、図2に示す接触式の加熱装置によって第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを行なった。第1加熱ステップでは、以下の表2の「T1」の欄に示す温度に記録材を昇温し、第2加熱ステップでは、以下の表2の「T2」の欄に示す温度に記録材を昇温した。このようにして加熱することにより、液体現像剤に含まれる絶縁性液体を揮発し、もって記録材上に液体現像剤を定着させた。
【0088】
【表2】

【0089】
<定着強度>
各実施例および各比較例において、記録材に定着させた液体現像剤の定着強度を以下のようにして評価した。まず、長さ約50mmの画像面に幅20mmのテープ(製品名:スコッチメンディングテープ 810(3M社製))を貼り、指でテープ面を押圧した。その後、テープを剥がして紙(製品名:CF−80ペーパー(コニカミノルタ製))に貼り換えた。
【0090】
次に、トナーが付着していない部分の紙のIDをID測定機(製品名:スペクトロアイLT(X−Rite社製))により測定し、ゼロ校正した。そして、トナーが付着した部分のIDを同ID測定機により測定した。このようにして得られたIDを以下の評価基準に基づいて4段階で評価し、その評価結果を表2の「定着強度」の欄に示した。なお、IDが小さいほどテープにトナーが付着しておらず、紙への定着強度が高いことを示す。
A:IDが0.02未満
B:IDが0.02以上0.05未満
C:IDが0.05以上0.1未満
D:IDが0.1以上
<残液量>
第2加熱ステップを行なった直後の紙の重量をW1とし、定着工程を終えた紙を常温で1時間真空乾燥した後の紙の重量をW2とした。また、リファレンスとして、画像を印刷していない紙に対し、定着工程を行なった直後の紙の重量をW3とし、定着工程を終えた紙を常温で1時間真空乾燥した後の紙の重量をW4とした。そして、以下の式によって残液量を測定した。
残液量=(W1−W2)−(W3−W4
このようにして算出された残液量を以下の評価基準に基づいて3段階で評価し、その評価結果を表2の「残液量」の欄に示した。なお、残液量が多いほど裏写りが生じやすくなり、印刷性能が悪いことを意味する。2g/m2以上の残液量であると、裏写りが顕著に発生しやすかった。
A:残液量が1.5g/m2未満
B:残液量が1.5g/m2以上2g/m2未満
C:残液量が2g/m2以上
<オフセット>
各実施例および各比較例において、第1加熱ステップおよび第2加熱ステップを経た後に、白紙のCF−80紙を通過させることにより、紙の汚れの有無を目視で確認した。そして、紙にローラの汚れが付着した場合にはオフセットが生じたものとして「B」と評価し、紙に汚れが付着しなかった場合には、オフセットが生じなかったものとして「A」と評価し、それぞれ表2の「オフセット」の欄に示した。
【0091】
表2に示される結果から明らかなように、実施例1〜7のように、Ts<T1<Tmを満たすように記録材を加熱することにより、裏写りが生じる等のように印刷品質の低下することなく、記録材にトナーを強固に定着することができる。これに対し、比較例2〜4のように、上記のTs<T1<Tmを満たさない場合は、トナーの紙への定着強度が十分ではなかったり、絶縁性液体の残液量が多かったりして、印刷品質が優れたものとはいえなかった。
【0092】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 感光体ドラム、2 帯電装置、3 露光装置、4 湿式現像装置、5 中間転写ローラ、6 クリーニング装置、7 二次転写ローラ、8 液体現像剤、9 記録材、10 画像形成装置、11 液体現像剤、12 記録材、13 ヒーター、14 第1定着ローラ、15 第1加圧ローラ、16 第2定着ローラ、17 第2加圧ローラ、23 デジタル放射温度センサ、24 デジタルアンプ、25 パソコン、30 熱源、41 現像ローラ、42 搬送ローラ、43 供給ローラ、44 現像剤槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材の表面に液体現像剤を転写するステップと、
前記液体現像剤が転写された前記記録材を加熱する第1加熱ステップとを含み、
前記液体現像剤は、トナー粒子と、絶縁性液体と、分散剤とを含み、
前記分散剤は、アミド基、ピロリドン基、ウレタン基、およびイミン基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する化合物を含み、
前記第1加熱ステップを経た直後の記録材の温度をT1とし、フローテスターによって測定した前記トナー粒子の溶融温度および軟化温度をそれぞれ、TmおよびTsとすると、Ts<T1<Tmの関係を満たす、湿式画像形成方法。
【請求項2】
前記第1加熱ステップを経た後に、さらに前記記録材を加熱する第2加熱ステップを含み、
前記第2加熱ステップを経た直後の記録材の温度T2は、前記Tmよりも高い温度である、請求項1に記載の湿式画像形成方法。
【請求項3】
前記液体現像剤は、前記トナー粒子の質量に対し、0.5質量%以上10質量%以下の前記分散剤を含む、請求項1または2に記載の湿式画像形成方法。
【請求項4】
前記分散剤は、ピロリドン基を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−230238(P2012−230238A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98235(P2011−98235)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】