説明

溝深さ保証装置及び溝深さ保証方法

【課題】ティアライン加工溝の溝深さを精度良く保証する溝深さ保証装置及び溝深さ保証方法を提供する。
【解決手段】溝深さ保証装置20は、インストルメントパネル1に加工されるティアライン加工溝4の溝深さtを、加工刃具12の送り方向Mに複数回に渡って所定間隔をあけて測定する測定部22と、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝4の溝深さtの保証を否とする保証判定部21とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティアライン加工溝の溝深さを保証する溝深さ保証装置及び溝深さ保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のインストルメントパネルには、エアバッグが展開した際にインストルメントパネルが破断して開口するためのエアバッグ展開部予定線(以下、ティアラインと言う)が設けられている。ティアラインは、インストルメントパネルにティアライン加工溝が加工されることによって形成される。このティアライン加工溝は、エアバッグの展開性に影響を与えるため、残部の厚さ(溝深さ)の管理が重要である。
そこで、従来、加工刃具の送り方向後方に測定器を設け、加工刃具でティアライン加工溝を加工しながら、その溝深さを測定器で測定することで、溝深さを保証する方法及び装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法及び装置では、加工刃具に超音波カッターが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−138396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加工刃具に、例えばエンドミル等の切削刃具を用いることがあり、この場合、ティアライン加工溝に切粉が残留するおそれがある。
上記従来の構成では、加工刃具に超音波カッターが用いられており、ティアライン加工溝の加工の際に切粉が生じないため、切粉に対する対策は講じられていない。したがって、切粉が残ったティアライン加工溝に対し、上記従来の測定方法を適用した場合には、ティアライン加工溝が正常に加工されていても、溝深さの測定がイレギュラーであると判定され、そのインストルメントパネルが不合格品として選別されるおそれがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ティアライン加工溝の溝深さを精度良く保証する溝深さ保証装置及び溝深さ保証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定する測定部と、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とする保証判定部とを備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定する測定部と、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とする保証判定部とを備えたため、一度のイレギュラーでは溝深さの保証が否とされないので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【0006】
上記構成において、前記保証判定部は、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可としてもよい。
上記構成によれば、保証判定部は、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とするため、イレギュラーが出現しても溝深さの保証が可となるので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【0007】
また、本発明は、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定し、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とすることを特徴とする。
上記構成によれば、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定し、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、加工溝の溝深さの保証を否とするため、一度のイレギュラーでは溝深さの保証が否とされないので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【0008】
上記構成において、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可としてもよい。
上記構成によれば、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とするため、イレギュラーが出現しても溝深さの保証が可となるので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定する測定部と、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とする保証判定部とを備えたため、一度のイレギュラーでは溝深さの保証が否とされないので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
また、保証判定部は、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とすれば、イレギュラーが出現しても溝深さの保証が可となるので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【0010】
また、インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定し、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、加工溝の溝深さの保証を否とするため、一度のイレギュラーでは溝深さの保証が否とされないので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
また、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とすれば、イレギュラーが出現しても溝深さの保証が可となるので、例えばティアライン加工溝に切粉が残留していても、溝深さを精度良く保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る溝深さ保証装置を適用するインストルメントパネルを示す図であり、(A)はインストルメントパネルを示す斜視図であり、(B)は(A)の拡大図である。
【図2】ティアライン加工溝を加工する切削加工装置を示す概略構成図である。
【図3】ティアライン加工溝をインストルメントパネルの裏面側から示す図である。
【図4】図4は、レーザ変位計によって測定された溝深さの保証を示す図であり、(A)は溝深さの測定ポイントを示し、(B)は保証が可となる場合の測定ポイントと溝深さとの関係、は保証が否となる場合の測定ポイントと溝深さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る溝深さ保証装置を適用するインストルメントパネルを示す図であり、図1(A)はインストルメントパネルを示す斜視図であり、図1(B)は図1(A)の拡大図である。
インストルメントパネル1は、例えば自動車の車室前部に装備される樹脂製部材であり、助手席側に略平坦な平坦部2を備えている。平坦部2には、平坦部2の裏側に配置されるエアバッグを膨れ出させるためのティアライン3が形成されている。ティアライン3は、ティアライン加工溝4によって線状に形成された脆弱部である。ティアライン加工溝4は、インストルメントパネル1の裏面5(図1参照)から加工されており、インストルメントパネル1の外観を損なわせないようになっている。
【0013】
本実施の形態のティアライン加工溝4は、略H字状に配置された3本の加工溝4A〜4Cと、相互に平行な2本の加工溝4D,4Eとを備えて略日字状のパターン形状に形成されており、加工溝4A〜4Cは、詳細は後述するが、加工溝4D,4Eより深く加工されている。したがって、エアバッグが膨張すると、加工溝4A〜4Cにより脆弱になったティアライン3がH字状に破断して2枚の扉6が形成され、加工溝4D,4Eにより薄肉になったティアライン3がヒンジとなって扉6がインストルメントパネル1の表側に開かれることにより、インストルメントパネル1に、エアバッグがインストルメントパネル1から膨れ出るための開口部が形成される。ここで、加工溝4Aは扉6の境界線に相当し、加工溝4B,4Cは、扉6の両側端部に相当する。
【0014】
図2は、ティアライン加工溝4を加工する切削加工装置を示す概略構成図である。
切削加工装置10は、インストルメントパネル1を支持する治具としての支持台11と、この支持台11上に支持されたインストルメントパネル1にティアライン加工溝4を加工するエンドミル(切削刃具)12と、このエンドミル12をX,Y,Z方向に移動させるロボットアーム13と、切削加工装置10の動作制御を行う制御装置(保証判定部)21を備えて概略構成されている。
【0015】
支持台11には、インストルメントパネル1を載置する載置面11Aが設けられ、この載置面11Aには、複数の貫通孔11Bが形成されている。また、支持台11は、例えば真空ポンプ等からなるバキューム装置14を備えており、載置面11A上に載置されるインストルメントパネル1を、貫通孔11Bを介して支持台11に吸着させて確実に固定可能に構成されている。バキューム装置14は、このバキューム装置14によって発生した圧力(負圧)を検出する図示しない圧力センサを備え、圧力センサが検出した検出結果を制御装置21に出力する。また、載置面11Aには、タッチセンサ15が設けられており、インストルメントパネル1が固定されたことを検知すると、その検知結果を制御装置21に出力する。
【0016】
エンドミル12は、シャンク12Aの先端に刃部12Bを備えて構成され、ロボットアーム13に支持された回転軸16の先端部に固定されている。また、切削加工装置10には、エンドミル12の先端(刃先)位置を測定する図示しない刃先位置測定手段が設けられている。なお、刃先位置測定手段は、エンドミル12の長さを測定するように構成されてもよい。
ロボットアーム13は、回転軸16を回転自在に支持する支持アーム13Aを備え、この支持アーム13Aは、回転軸16をZ方向に移動可能に構成されている。回転軸16の先端部には、エンドミル12のシャンク12Aを取り囲むようにカバー17が設けられている。カバー17には、下面に、刃部12Bを覆うように蛇腹18が取り付けられるとともに、側面に、真空ポンプ等からなる図示しない吸引装置に接続されたホース19が取り付けられている。蛇腹18は、エンドミル12による加工時に、インストルメントパネル1の裏面5に当接する長さに形成されており、エンドミル12による加工時に出た切粉が蛇腹18、カバー17、及びホース19を介して吸引される。これらの蛇腹18、カバー17、ホース19、及び吸引装置によって集塵器が構成されている。
【0017】
エンドミル12の送り方向M後方には、エンドミル12が加工したティアライン加工溝4の溝深さtを測定するレーザ変位計(測定部)22が設けられている。レーザ変位計22は、溝深さtを、送り方向Mに複数回に渡って所定間隔を空けてを測定し、その測定結果を制御装置21に出力する。また、レーザ変位計22は、集塵器(蛇腹18)の外側に配置され、切粉が集塵された後に溝深さtを測定するように構成されており、溝深さtを比較的精度良く測定する。このレーザ変位計22は、制御装置21とともに、本実施の形態の溝深さ保証装置20を構成している。
ここで、溝深さtとは、ティアライン加工溝4の底部7からインストルメントパネル1の表面8に至る部分の残部の厚さである。
【0018】
図3は、ティアライン加工溝4をインストルメントパネル1の裏面5側から示す図である。
加工溝4A〜4Cは、エアバックの膨張によってティアライン3が破断する深さに加工され、本実施の形態では、加工溝4Aは、溝深さt(図2)が例えば約0.5mmとなるように加工され、加工溝4B,4Cは溝深さtが例えば約0.7mmとなるように加工される。また、加工溝4D,4Eは、エアバックの膨張によってティアライン3を中心に扉6が折り曲がる深さに加工され、本実施の形態では、溝深さtが例えば約1mmとなるように加工される。
【0019】
したがって、ティアライン加工溝4は、加工溝4Aと加工溝4Bとの交差部分である公差部9A、加工溝4Aと加工溝4Cとの交差部分である公差部9B、加工溝4Bと加工溝4Dとの公差部分である公差部9C、加工溝4Bと加工溝4Eとの公差部分である公差部9D、加工溝4Cと加工溝4Dとの公差部分である公差部9E、加工溝4Cと加工溝4Eとの公差部分である公差部9Fにおいて、溝深さtが変化している。なお、加工溝4A〜4Cの加工の順番は任意である。
【0020】
本実施の形態のレーザ変位計22(図2)は、公差部9A〜9Fを除く範囲において、ティアライン加工溝4の溝深さtを測定する。ここで、公差部9Aと公差部9Cとの間の範囲を測定エリアAとし、公差部9Aと公差部9Dとの間の範囲を測定エリアBとし、公差部9Cと公差部9Eとの間の範囲を測定エリアCとし、公差部9Aと公差部9Bとの間の範囲を測定エリアDとし、公差部9Dと公差部9Fとの間の範囲を測定エリアEとし、公差部9Bと公差部9Eとの間の範囲を測定エリアFとし、公差部9Bと公差部9Fとの間の範囲を測定エリアGとする。
【0021】
制御装置21は、図2に示すように、ロボットアーム13の移動制御、バキューム装置14の発停制御、バキューム装置14の負圧検出制御、タッチセンサ15の検知制御、支持アーム13Aによる回転軸16のZ方向移動制御、回転軸16の回転制御、刃先位置測定手段の測定制御、吸引装置の発停制御、及びレーザ変位計22の溝深さ測定制御を行う。また、制御装置21には、ティアライン加工溝4のパターン形状、溝深さt、及び測定エリア等が記憶されている。
また、切削加工装置10には、制御装置21が出力する情報を表示するモニタ23が設けられている。
【0022】
切削加工装置10により、インストルメントパネル1の裏面5にティアライン加工溝4を加工する際には、制御装置21は、まず、バキューム装置14を駆動し、インストルメントパネル1を支持台11に固定する。バキューム装置14は、駆動されると、圧力センサが検出した負圧を制御装置21に出力する。
タッチセンサ15からインストルメントパネル1の検知結果が出力され、かつ、バキューム装置14から出力される負圧が所定負圧以下になると、制御装置21は、ロボットアーム13をX,Y,Z方向に移動させて、ティアライン加工溝4の開始位置に配置する。このときのエンドミル12のZ方向位置を初期位置とする。
【0023】
そして、制御装置21は、刃先位置測定手段によって、エンドミル12の刃先位置を測定し、この測定結果と、記憶された溝深さtに基づきエンドミル12のストローク(追い込み深さ)を算出する。ここで、ストロークとは、エンドミル12が初期位置から、これから加工を行うティアライン加工溝4の底部7にエンドミル12の刃先が接する位置まで移動する距離を言う。
次いで、制御装置21は、回転軸16によりエンドミル12を回転させながら、算出したストローク分だけ、支持アーム13Aによって回転軸16をZ方向(厚さ方向)に移動させるとともに、ティアライン加工溝4のパターン形状に沿って、ロボットアーム13をX,Y方向に移動させて、ティアライン加工溝4を加工する。このとき、制御装置21は、吸引装置を駆動し、エンドミル12の加工によって生じた切粉を集塵する。
【0024】
ここで、エンドミル12が加工したティアライン加工溝4の溝深さtが小さ過ぎると、インストルメントパネル1の美観が損なわれたり、インストルメントパネル1の強度が著しく低下したりする場合がある。一方、エンドミル12が加工したティアライン加工溝4の溝深さtが大き過ぎると、扉6(図1)の開閉性が著しく低下する場合がある。このため、溝深さtの管理が重要となる。
【0025】
制御装置21は、ティアライン加工溝4の加工中、エンドミル12のストロークを記録しており、ストロークが適切な範囲から外れると、溝深さtの保証を否と判定する。また、制御装置21は、タッチセンサ15から検知結果が出力されない場合、あるいは、バキューム装置14から出力される負圧が所定負圧を超える場合にも、溝深さtの保証を否と判定する。すなわち、ストロークが適切な範囲であり、タッチセンサ15から検知結果が出力され、バキューム装置14から出力される負圧が所定負圧以内の場合に、溝深さtの保証が可と判定される。
【0026】
このように、溝深さtは、タッチセンサ15の検知結果、バキューム装置14の検出結果、及び、ストロークの記録によって保証されている。これらのタッチセンサ15の検知結果、バキューム装置14の検出結果、及び、ストロークの記録による溝深さtの保証を第1溝深さ保証とする。なお、制御装置21は、第1溝深さ保証による保証の可否をモニタ23に表示させてもよい。
しかしながら、ストロークの記録による溝深さtの保証では、切削加工装置10の寸法公差や測定公差が偏ると、ティアライン加工溝4が正常に加工されていても、溝深さtの保証が否とされる場合がある。また、ストロークの記録による溝深さtの保証では、エンドミル12の磨耗や折損等が生じたことによる未加工部を検知できないおそれがある。
【0027】
そこで、本実施の形態の制御装置21は、レーザ変位計22が測定したティアライン加工溝4の溝深さtを監視することにより、溝深さtをさらに保証している。すなわち、制御装置21は、測定エリアA〜G(図3)内のティアライン加工溝4については、エンドミル12にティアライン加工溝4を加工させながら、同時にレーザ変位計22に溝深さtを測定させ、その溝深さtの数値を判別することで、保証の可否を判定する。このレーザ変位計22を用いた溝深さtの保証を第2溝深さ保証とする。なお、制御装置21は、測定エリアA〜G以外のティアライン加工溝4については、レーザ変位計22による測定を行わない。
本実施の形態では、レーザ変位計22をエンドミル12の送り方向M後方に設けることにより、ティアライン加工溝4の加工と同時に、溝深さtを保証できるので、ティアライン加工溝4の加工と保証とを別々に行う場合に比べ、ティアライン3を形成するためのサイクルタイムを短縮できる。
【0028】
次に、図4を参照し、第2溝深さ保証について説明する。
図4は、レーザ変位計22(図2)によって測定された溝深さtの保証を示す図であり、図4(A)は測定エリアDにおける溝深さtの測定ポイントを示し、図4(B)は保証が可となる場合の測定ポイントと溝深さtとの関係、図4(C)は保証が否となる場合の測定ポイントと溝深さtとの関係を示す図である。なお、図4(B)及び図4(C)では、横軸に図4(A)の測定ポイントが示され、縦軸に溝深さtが示されている。また、図4では、測定エリアDが例に図示されているが、他の測定エリアA〜C,E〜Fについても、数値は異なるものの、測定エリアDと同様であるので、図示を省略する。
【0029】
図4(A)を参照し、ティアライン加工溝4の溝深さtは、上述したように、送り方向Mに複数回に渡って所定間隔Sを空けて測定される。溝深さtは、測定のサンプル数が多くなるほど精度良く保証されるので、間隔Sは短いほど好ましい。本実施の形態の間隔Sは、ロボットアーム13(図2)の移動速度や制御装置21(図2)の処理能力等に基づき、例えば約2mmに設定されている。
ここで、図4(A)では、測定エリアD内における溝深さtの測定場所が、送り方向Mに測定する順に、測定ポイントP1〜P10として示されている。
【0030】
制御装置21は、測定された溝深さtが所定の管理数値幅Vに入っているか否かを判別する。管理数値幅Vは、所望とする溝深さt(例えば加工溝4Aは0.5mm)を基準に、インストルメントパネル1(図1)の美観や強度、扉6の開閉性等の条件を満たす範囲に設定される。
図4(B)に示すように、溝深さtが管理数値幅Vに入っている場合(測定ポイントP1〜P5)、制御装置21は、その溝深さtの保証を可とする。一方、溝深さtが管理数値幅Vに入っていない場合(測定ポイントP6)、その測定結果をイレギュラーとするとともに、レーザ変位計22に測定を継続させる。
【0031】
連続的なイレギュラーが所定回数未満の場合には、制御装置21は、イレギュラーが切粉によるものであると判断し、溝深さtの保証を可と判定する。ここで、所定回数は、ティアライン加工溝4に切粉が残留していることを示す回数であり、レーザ変位計22が計測する間隔S(2mm)に基づき設定される。本実施の形態では、所定回数は、例えば3回に設定されており、これにより、約6mm(約2mm×3回)未満の範囲で生じたイレギュラーが切粉によるものであるとして許容される。なお、切粉は、ティアライン加工溝4の縁に形成されるばりも含む物とする。図4(B)では、イレギュラーが1回(測定ポイントP6)だけ出現しており、所定回数(3回)未満なので、溝深さtの保証が可となる。したがって、イレギュラーが出現しても溝深さtの保証が可となる。
【0032】
一方、図4(C)に示すように、イレギュラーが連続して所定回数(3回)以上生じた場合(測定ポイントP6〜P10)には、制御装置21は、イレギュラーが切粉によるものではなく、例えばエンドミル12の磨耗や折損等によるものであると判断し、溝深さtの保証を否と判定する。したがって、一度のイレギュラーでは溝深さtの保証が否とされないが、イレギュラーが連続して所定回数以上出現すると、溝深さtの保証が否となる。
【0033】
また、制御装置21は、隣接する2つの測定エリアを跨いでも、溝深さtの保証を判定できる。例えば、制御装置21は、測定エリアD内の最後の測定においてイレギュラーが出現しても、レーザ変位計22に次の測定エリア、例えば測定エリアB(図3)で測定を継続させ、隣接する2つの測定エリアD,Bでのイレギュラーが連続して所定回数以上生じない場合には、イレギュラーが切粉によるものであると判断し、溝深さtの保証を可と判定する。一方、隣接する2つの測定エリアD,Bでのイレギュラーが連続して所定回数以上になった場合には、制御装置21は、イレギュラーが切粉によるものではなく、例えばエンドミル12の磨耗や折損等が発生したと判断し、溝深さtの保証を否と判定する。
【0034】
このように、制御装置21は、イレギュラーが出現しても、連続的なイレギュラーが所定回数未満の場合には、イレギュラーが切粉によるものであると判断して溝深さtの保証を可とし、連続的なイレギュラーが所定回数以上の場合には、エンドミル12の磨耗や折損等が発生したと判断して溝深さtの保証を否とするため、ティアライン加工溝4に切粉が残留していても、溝深さtを精度良く保証できる。これに加え、公差の偏りやエンドミル12の磨耗や折損等による測定エラーも抑制できる。
【0035】
また、ティアライン加工溝4の溝深さtに対し、タッチセンサ15の検知結果、バキューム装置14の検出結果、及び、ストロークの記録による第1溝深さ保証を行うとともに、レーザ変位計22を用いた第2溝深さ保証を行うことで、溝深さtをより確実に保証できる。
なお、制御装置21は、第2溝深さ保証による保証の可否をモニタ23(図2)に表示させてもよい。これにより、第1溝深さ保証及び第2溝深さ保証による保証の可否がモニタ23に表示されることとなり、溝深さtを精度良く保証できる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、インストルメントパネル1に加工されるティアライン加工溝4の溝深さtを、エンドミル12の送り方向Mに複数回に渡って所定間隔Sをあけて測定するレーザ変位計22と、測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝4の溝深さtの保証を否とする制御装置21とを備えたため、一度のイレギュラーでは溝深さtの保証が否とされないので、例えばティアライン加工溝4に切粉が残留していても、溝深さtを精度良く保証できる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、制御装置21は、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とするため、イレギュラーが出現しても溝深さtの保証が可となるので、例えばティアライン加工溝4に切粉が残留していても、溝深さtを精度良く保証できる。
【0038】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、切削刃具をエンドミルとして説明したが、切削刃具は、切粉を生じる刃具であれば、これに限定されるものではない。
【0039】
また、上記実施の形態では、ティアライン加工溝4の底部7からインストルメントパネル1の表面8に至る部分の残部の厚さである溝深さtを測定する測定器を用いたが、インストルメントパネル1の裏面5からティアライン加工溝4の底部7に至る加工深さを測定する測定器を用いてもよい。この場合、加工深さの数値を監視してもよいし、インストルメントパネル1の厚さから加工深さを差し引くことで溝深さを算出し、算出した溝深さを監視してもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、ティアライン加工溝4のパターン形状は、略H字状の脆弱部(加工溝4A〜4C)と、相互に平行な2本の薄肉部(加工溝4D,4E)とを備えた略日字状であったが、これに限定されるものではない。また、ティアライン加工溝4の溝深さtも、インストルメントパネル1の美観や強度、扉6の開閉性の条件を満たす範囲で、任意に変更可能である。
また、上記実施の形態では、ティアライン加工溝4は、インストルメントパネル1の裏面5に加工されるものとして説明したが、ティアライン加工溝4は、インストルメントパネル1の表面8に加工されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 インストルメントパネル
3 ティアライン
4 ティアライン加工溝
4A〜4E 加工溝
10 切削加工装置
12 エンドミル(加工刃具)
20 溝深さ保証装置
21 制御装置(保証判定部)
22 レーザ変位計(測定部)
t 溝深さ
M 送り方向
S 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定する測定部と、
測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とする保証判定部とを備えたことを特徴とする溝深さ保証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溝深さ保証装置において、
前記保証判定部は、イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とすることを特徴とする溝深さ保証装置。
【請求項3】
インストルメントパネルに加工されるティアライン加工溝の溝深さを、加工刃具の送り方向に複数回に渡って所定間隔をあけて測定し、
測定時のイレギュラーが所定回数以上、連続的に出現した場合に、ティアライン加工溝の溝深さの保証を否とすることを特徴とする溝深さ保証方法。
【請求項4】
請求項3に記載の溝深さ保証方法において、
イレギュラーが連続的に出現しても、それが所定回数未満の場合には保証を可とすることを特徴とする溝深さ保証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167826(P2011−167826A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36107(P2010−36107)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】