説明

溶接制御システム

【課題】立体的ビード可視化に基づく溶接パラメータを調節するシステムを提供すること。
【解決手段】一実施形態では、システム(200)は、溶着ゾーン(107)に向けて配向される複数の観測点から画像を受け取るよう構成された溶接コントローラ(118)を含む。溶接コントローラ(118)はまた、画像の差分分析に基づいて、溶着に影響を及ぼすパラメータを制御するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接制御システムに関し、より具体的には、立体的ビード可視化に基づく溶接パラメータを調節するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接機設定が不適切であることに起因して、自動溶接作業中に欠陥が生じる場合がある。例えば、溶接機の出力、溶接ゾーンへの材料の送り量、及び/又はワークに対する溶接機の速度は、特定の溶接作業に合わせて適切に構成されていない場合がある。これらの不適切な設定は、不満足な溶接ビードを生じる可能性がある。例えば、溶接ビードは、適切な高さ、幅、及び/又はワークへの溶け込み深さを有していない場合がある。更に、溶接機は、溶接ゾーンの周囲のワーク材料を摩耗させて、アンダーカットとして知られる状態にする可能性がある。このような欠陥は溶接品質を劣化させ、これによって、より脆弱な接合部を生じる場合がある。更に、欠陥を補修するために、追加の時間がかかり且つ高価な仕上げ作業が実施される場合もある。従って、溶接ビード溶着を監視し、検出された欠陥を補償するよう溶接機パラメータを自動的に調整できれば、望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7107118号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、ワーク上に溶接ビードを溶着させるよう構成された溶接機を含む。システムはまた、溶接ビードに向けて配向され且つそれぞれの画像を生成するよう構成された複数のカメラを含む。更に、システムは、画像から溶接ビードの立体画像を生成し且つ立体画像に基づいて溶接ビード溶着のパラメータを調整するよう構成されたコントローラを含む。
【0006】
第2の実施形態では、システムは、溶着ゾーンに向けて配向される複数の観測点から画像を受け取るよう構成された溶接機コントローラを含む。溶接機コントローラはまた、画像の差分分析に基づいて溶着に影響を及ぼすパラメータを制御するよう構成される。
【0007】
第3の実施形態では、システムは、ワークに向けて配向され且つワーク上の溶接ゾーンのそれぞれの画像を生成するよう構成された複数のカメラを含む。システムはまた、画像に基づいて溶接ゾーンの3次元画像を生成するよう構成されたコントローラを含む。コントローラはまた、次元画像に基づいて溶接ゾーン内の溶接ビードの形成に影響を及ぼすパラメータを調整するよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の特定の実施形態による、溶接ビード可視化に基づいて溶接パラメータを調整するよう構成された立体視システムを有する自動溶接システムのブロック図。
【図2】本発明の特定の実施形態による、溶接レーザ及び光源の出力が対物レンズを介して溶接ゾーンに向けて配向される図1の自動溶接システムのブロック図。
【図3】本発明の特定の実施形態による、溶接ゾーンに向けて配向され且つ溶接ビード高さを決定するよう構成された2つのカメラの概略図。
【図4】本発明の特定の実施形態による、溶接ゾーンの裏面に向けて配向された追加のカメラ及び光源を含む、図2の自動溶接システムのブロック図。
【図5】本発明の特定の実施形態による、溶接ゾーンの立体画像に基づいて自動溶接機を作動させるための方法のフローチャート。
【図6】本発明の特定の実施形態による、溶接欠陥及び/又は溶接ビード特性を検出するための方法のフローチャート。
【図7】本発明の特定の実施形態による、溶接ビード溶着に影響を及ぼすパラメータを調整するための方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【0010】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0011】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0012】
本発明の実施形態は、溶接ゾーンを立体的に観測し、検出欠陥及び/又は溶接ビード特性に基づいて溶接パラメータを調整することにより、自動溶接システムに関連する溶接品質を向上させることができる。具体的には、自動溶接システムは、溶接ビードをワーク上に溶着するよう構成される溶接機を含むことができる。特定の実施形態では、光源は、溶接ゾーンを照明するよう構成することができる。複数のカメラを溶接ビードに配向し、溶接ビード形成の画像を出力するよう構成することができる。カメラは、出力画像から溶接ビードの立体又は3次元画像を生成するよう構成されたコントローラに通信可能に結合することができる。或いは、コントローラは、出力画像上で差分分析を実施して、溶接ビードの種々の幾何学的特性を計算するよう構成することができる。例えば、コントローラは、溶接ビードの高さ及び/又は幅を計算するよう構成することができる。更に、コントローラは、溶接ゾーンに隣接するワーク材料に対するアンダーカットを検出するよう構成することができる。特定の実施形態では、複数のカメラの第2のセットは、溶接機とは反対側にあるワークの裏面上に位置付けることができる。これらのカメラはまた、溶接ビードに配向され、コントローラに画像を出力するよう構成することができる。コントローラは、これらの画像を立体的に分析し、ワークへの溶接ビードの溶け込み深さを計算することができる。更なる実施形態では、コントローラは、画像の分光分析を実施し、溶接ビードの温度及び/又は組成を決定することができる。幾何学的形状及びスペクトルデータに基づいて、コントローラは、溶接性能を向上させ、及び/又は検出欠陥を補償するよう溶接ビード溶着のパラメータを調整することができる。例えば、コントローラは、溶接機出力、ワークに対する溶接機の速度、及び/又は溶接ゾーンへの材料の送り量を調整することができる。換言すると、コントローラは、自動溶接システムの制御を向上させるよう立体的画像に基づいたフィードバックループを構築することができる。
【0013】
図1は、溶接ビード可視化に基づいて溶接パラメータを調整するよう構成された立体視システムを有する自動溶接システム100のブロック図である。具体的には、自動溶接システム100は、ワーク102と溶接機104とを含む。溶接機104は、溶接ビード106をワーク102上に溶着させるよう構成することができる。ワーク102は、互いに隣接して配置された2以上の材料片(例えば、金属、プラスチック、その他)を含むことができる。特定の実施形態では、溶接機104は、溶接ゾーン107に溶加材を同時に溶着させながら、ワーク材料を加熱する。加熱及び溶加材溶着の組み合わせによって溶接ビード106を形成し、更にワークの成分元素の溶融を誘起し、これにより溶接継手を形成することができる。
【0014】
自動溶接システム100内にはあらゆる好適な溶接機104を組み込むことができる。例えば、溶接機104は、高速電子がワークに衝突する電子ビーム溶接機とすることができる。電子衝突による運動エネルギーは、溶接ゾーン107内の材料を融解するのに十分な熱を発生し、これによりワーク102の元素を共に溶融することができる。或いは、溶接機104は、ワークの2つの当接プレートに隣接して配置された回転ビットを含む摩擦攪拌溶接機とすることができる。ワーク102に対する回転ビットの摩擦により発生する熱が各プレートの材料を軟化させることができ、スピン運動によって軟化した材料を共に混合することで、溶融継手を形成する。溶接機104はまた、超音波溶接機であってもよく、超音波エネルギーによりワーク102内の材料の軟化及び周囲材料との混合を誘起して溶融継手を形成する。更なる実施形態では、溶接機104は、とりわけ、タングステン不活性ガス(TIG)溶接機、金属不活性ガス(MIG)溶接機、シールド金属アーク溶接機(SMAW)、又はフラックスコアードアーク溶接機(FCAW)などのアーク溶接機とすることができる。アーク溶接機の各タイプは、ワーク102との間で電気アークを確立する電極を利用する。アークからの熱が溶接ゾーン107内のワーク材料を融解することができ、付加的な溶加材(例えば、スチール、アルミニウム、チタン、その他)が溶着されて溶接ビード106を形成する。溶接機104はまた、酸化剤(例えば、液体酸素又は空気)の存在下で燃料(例えば、アセチレン、ブタン、プロパン、その他)を燃焼させて、溶接ゾーン107内で材料を融解し溶融継手を構築するのに十分な熱を発生させるガス溶接機とすることができる。特定の実施形態では、溶接機104は、原子水素溶接機とすることができ、ここでは、2つの電極間の電気アークによって水素分子が原子水素に分離されている。水素が再結合すると、ワーク材料を融解するのに十分な熱を放出させることができる。自動溶接システム100において利用することができる別のタイプの溶接機104は、プラズマ溶接機である。プラズマ溶接機は、電気アークによって作動ガスを加熱し、次いで高速度(例えば、音速に近付ける)でガスを放出する。高温ガスは、接触することでワーク102の材料を融解し、これにより溶融継手を構築することができる。自動溶接システム100において利用することができる別の溶接機104構成は、溶接レーザである。以下で詳細に検討するように、溶接レーザから放出される放射線は、ワーク102上に集束され、これにより構成材料を融解し溶接ビード106を形成することができる。特定の実施形態では、溶接レーザは、プラズマ、TIG又はMIGなどの別の溶接機構成と組み合わせて、レーザハイブリッド溶接機を形成することができる。このような組み合わせにより、例えば、溶け込み深さ及び/又は溶接速度を向上させることができる。
【0015】
自動溶接システム100はまた、少なくとも第1のカメラ108と第2のカメラ110とを含む。両カメラ108、110は、ワーク102上の溶接ビード106に向けて配向される。以下で詳細に検討するように、これらのカメラ108、110の位置は、溶接ゾーン107の3次元又は立体画像を得るように構成することができる。立体画像は、異なる視野からとられた2つの2次元画像を組み合わせることによって形成することができる。具体的には、各2次元画像内の基準点のロケーションを比較し、カメラ108、110に対する各基準点の深さを計算することができる。このようにして、各基準点の3次元位置を含む立体画像を作成することができる。カメラ108、110は、図示の実施形態では溶接ビードの対向する側部に位置付けられているが、代替の実施形態では、同じ側に位置付けてもよい点は理解されたい。更に、本実施形態では2つのカメラ108、110が利用されているが、代替の実施形態では、溶接ゾーン107の異なる視野を観察するために、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上など、より多くのカメラを含むことができる。加えて、カメラ108、110は、ワーク102の個々の画像を提供するよう構成されたスチルカメラ又は1秒当たり複数の画像を取り込むことが可能なビデオカメラとすることができる。例えば、カメラ108、110は、電荷結合デバイス(CCD)又は相補的金属酸化物半導体(CMOS)を利用して画像を取り込み、画像を表すデジタル信号を出力することができる。
【0016】
特定の構成において、少なくとも1つの光源112を備え、溶接ゾーン107を照明することができる。光源112は、例えば、白熱電球又は蛍光灯、1以上の発光ダイオード(LED)、或いはレーザ(ダイオードレーザ)とすることができる。特定の構成において、光源112は、溶接機104に隣接して位置付けられ、光源112が溶接ビード106と実質的に垂直であるようにされる。この構成は、各カメラ108、110に対して効果的な発光を提供し、溶接ビード106の適切に照明された画像を得ることができる。代替の実施形態は、ワーク102に近接した種々の位置に位置付けられ且つ溶接ビード106に向けて配向された複数の光源112を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、光源112は、各カメラ108、110上に配置され、溶接ゾーン107に向けて配向することができる。
【0017】
ワーク102は、溶接機104に対してワーク102の移動(例えば、並進、回転、又はその両方)を行うよう構成された第1の位置決め機構114に結合することができる。同様に、カメラ108、110及び光源112と共に溶接機104は、ワーク102に対して溶接機104の移動(例えば、並進、回転、又はその両方)を行うよう構成された
第2の位置決め機構116に結合することができる。この構成により、溶接機104は、ワーク102の表面に沿って溶接ビード106を溶着させることができるようになる。以下で詳細に検討するように、溶接機104に対するワーク102の速度は、溶接ビード106の特性に影響を及ぼす可能性がある。
【0018】
溶接機104、カメラ108、110、光源112、及び位置決め機構114、116は、コントローラ118に通信可能に結合することができる。具体的には、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像を受け取り、該画像に基づいて溶接機104及び/又は位置決め機構114、116のパラメータを調整するよう構成することができる。例えば、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像を組み合わせて、溶接ゾーン107の立体又は3次元画像を形成するよう構成することができる。加えて、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像に差分分析を実施して、溶接ビード106の幾何学的特性を計算するよう構成することができる。この立体、3次元、又は差分画像は、コントローラ118が、アンダーカット、不適切なビード高さ、不適切なビード幅、及び/又は不適切な溶け込み深さなどの溶接欠陥を検出することを可能にすることができる。加えて、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像の分光分析を提供し、溶接ビード106の温度及び/又はビード組成を決定するよう構成することができる。次に、コントローラ118は、溶接機104及び/又は位置決め機構114、116のパラメータを調整し、検出した欠陥又は溶接ビード特性を補償することができる。例えば、コントローラ118は、溶接機出力及び/又は溶接ビード106への材料の送り量を調整することができる。加えて、コントローラ118は、位置決め機構114、116によるワーク102に対する溶接機の運動速度を制御することができる。検出した溶接ビード欠陥又は特性を補償するために溶接機パラメータを調整することで、溶接ビード形成の向上、より強固な溶接継手の形成、及び時間を要し且つ高価な仕上げ作業の実質的な低減又は排除を可能にすることができる。
【0019】
代替の実施形態では、システム100は、ワーク102上にコーティングを溶着するよう構成することができる。例えば、システム100は、酸素燃料火炎コーティングデバイス及び/又はプラズマコーティングデバイスを含むことができる。溶接ビード溶着と同様に、コーティングデバイスは、材料層をワーク102に施工することができる。次いで、カメラ108、110は、この層の溶着を観測することができ、同時に、コントローラ118は、例えば、検出したコーティング厚み及び/又は組成に基づいて溶着パラメータを調整する。同様に、コントローラ118は、コーティング層における空隙、ギャップ、又は欠陥を検出するよう構成することができる。この構成は、検出されたコーティング欠陥及び/又は特性を補償するよう溶着パラメータを調整することによって、溶着品質を向上させることができる。
【0020】
図2は、図1の自動溶接システム100のブロック図であり、ここでは溶接レーザ及び光源の出力が対物レンズを介して溶接ゾーン107に配向される。図示の実施形態は、溶接レーザ120、ダイクロイックミラー122、第2のミラー124、及び対物レンズ126を含む。溶接レーザ120は、ワーク102に熱を加えて、これにより成分化合物を溶接するよう構成された種々のタイプのレーザを含むことができる。例えば、溶接レーザ120は、半導体又はガスレーザを含むことができる。半導体レーザは、ネオジムドープのイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)又はネオジムドープガラス(Nd:glass)などの利得媒質を含み、光励起されて、例えばストロボ又はレーザダイオードによりレーザ光線の放出を誘起する。ガスレーザは、二酸化炭素、水素、窒素、及びヘリウムなどのシールガス状媒質を含み、電気的に励起されてレーザ放射線の放出を誘起する。特定の実施形態では、溶接レーザ120は、赤外線スペクトル(例えば、約700nmから100ミクロンの間の波長)のレーザ放射線を放出するよう構成される。このような波長は、成分元素を融解し手適切な溶融を促進するようワーク120に十分な熱を提供できるので、レーザ溶接には特に好適とすることができる。溶接レーザ120は、連続又はパルス状ビームを放出するよう構成することができる。自明であろうが、パルスレーザの出力は、パルス幅及び/又はパルス周波数を変えることにより調整することができる。
【0021】
図示のように、レーザ放射線は、ダイクロイックミラー122に向けて配向され、光源112からの光は、レーザ放射線の方向とほぼ垂直の角度でダイクロイックミラー122に向けて配向される。ダイクロイックミラー122は、第1の周波数の光を反射し、第2の周波数の光を通過させることができるように構成された反射面123を含む。例えば、ダイクロイックミラー122は、可視光を反射し、赤外放射線を通過可能に構成することができる。このような構成では、溶接レーザ120が赤外放射線を放出するよう構成され、光源112が可視光を放出するよう構成された場合には、レーザ放射線は、ダイクロイックミラー122を通過することができるが、可視光は面123により反射される。この構成において、光源112からの光と溶接レーザ120からの赤外放射線の両方は、実質的に平行な方向でダイクロイックミラー122から出て、第2のミラー124の反射面125に衝突して、対物レンズ126に向けて配向することができる。代替の実施形態では、溶接レーザ120及び光源112の位置は反転され、光源112からの光がダイクロイックミラー122を通過し、溶接レーザ120からのレーザ放射線が面123によって反射されるようにする。
【0022】
対物レンズ126は、レーザ放射線及び可視光の両方をワーク102の溶接ゾーン107に向けて配向するよう構成することができる。対物レンズは、対象となる物体(例えば、ワーク102)に隣接して位置付けられた複合レンズ系である。自明であろうが、レンズの屈折率は、屈折光の波長に基づいて変えることができる。従って、レンズ126は、光源112からの可視光及び溶接レーザ120からの赤外放射線の両方を溶接ビード106上に集束するよう特に構成することができる。この構成は、カメラ108、110が溶接ゾーン107を観測できるように溶接ビード106を照明すること、及び構成材料を融解し適正な溶融を誘起するのに十分なエネルギーが送給されるようにワーク102にレーザ放射線を集束することの両方を行うことができる。特定の実施形態では、対物レンズ126は、レーザ放射線よりも大きな面積にわたって可視光を集束するよう構成することができる。
【0023】
自明であろうが、溶接プロセス自体は、溶接ゾーン107を照明するのに十分な光を放出することができる。しかしながら、この光の大きさに起因して、カメラ108、110は、溶接ゾーン107から直接画像を取り込むことはできない場合がある。従って、カメラ108、110は、溶接ゾーン107(すなわち、ビード106が既に形成されている場所)の後方のビード区域に向けて配向することができる。このような構成では、溶接ゾーン107からの光は、溶接ビード106を照明するのに十分ではない場合がある。従って、光源112からの光をこの領域に向けて配向し、カメラ108、110用に溶接ビード106を適切に照明することができる。このような一実施形態では、対物レンズ126は、溶接ゾーン107上にレーザ放射線を集束し、溶接ビード106の別の領域に光を集束するよう構成することができる。
【0024】
上述のように、カメラ108、110は、種々の形成の態様を監視するために、溶接ビード106に向けて配向することができる。図示のように、カメラ108とワーク102間の角度127、及びカメラ110とワーク102間の角度129は、各カメラ108、110が溶接ビード106の遮られない直接視野を有するように選択することができる。特定の実施形態では、角度127及び129は、実質的に同様の視点から溶接ビード106を観測するように実質的に同じとすることができる。代替の実施形態では、角度127及び129は、溶接ビード106の多様な視野をカメラ108、110に提供するよう異なることができる。例えば、特定の実施形態では、カメラ108は、溶接ビード106の中央に向けて配向することができ、カメラ110は、溶接ビード106とワーク102との間の交差部に向けて配向される。このような構成は、各カメラ108、110が溶接ゾーン107の異なる領域を見られるようにすることができる。角度127、129は、特定の実施形態では、およそ0°から90°、5°から80°、10°から70°、15°から60°、又は約15°から45°の範囲にわたることができる。
【0025】
更に、図示のように、カメラ108は、溶接ビード106から距離131に位置付けられ、カメラ110は、溶接ビード106から距離133に位置付けられる。特定の実施形態では、これらの距離131及び133は、実質的に同じであってもよい。代替の実施形態では、各カメラ108、110が溶接ゾーン107の異なる領域を調べるように異なる距離131、133を含むことができる。例えば、距離131は、距離133よりも小さいとすることができる。この構成において、カメラ108は、溶接ビード106の特定の領域を観測することができ、カメラ110は溶接ゾーン107全体を取り込む。同様の構成は、各カメラ108、110の焦点距離を変えることによって達成することができる。例えば、距離131及び133は、実質的に同様であってもよいが、カメラ108は、溶接ビード106の特定の領域上に集束するような大きな焦点距離を有することができる。自明であろうが、カメラ108、110は、カメラ動作を阻害する可能性がある過剰な熱に確実に曝されないように、溶接ゾーン107から十分に離れた距離に位置付けることができる。
【0026】
特定の実施形態では、カメラ108、110は、カメラレンズに入る光の大きさを低減し、及び/又は該光の周波数を制限するため、カメラレンズと溶接ゾーン107との間に位置付けられるフィルタを含むことができる。例えば、フィルタは、溶接ゾーン107から放射されるUV放射線から光検出素子(例えば、CCD又はCMOS)を保護するよう構成された紫外線(UV)フィルタリング素子を含むことができる。同様に、フィルタは、溶接レーザ120からの赤外線(IR)放射線を遮断するよう構成することができる。更に、フィルタは、カメラ108、110に入る可視光の大きさを低減するよう構成することができる。例えば、特定の実施形態では、溶接プロセスは、可視スペクトルにおいて強力電子ビームを放出することができる。このような放出は、カメラ108、110内の高感度光検出素子に過負荷をかける可能性がある。従って、フィルタにより、カメラ108、110は、溶接ゾーン107からの画像を効果的に取り込むことを可能にすることができる。
【0027】
カメラ108、110は、画像を電気的に取り込み、取り込んだ画像をコントローラ118に送信するよう構成される。コントローラ118は、立体又は3次元画像を形成することにより、又は取り込んだ画像に対し差分分析を実施することによって画像を分析することができる。次に、コントローラ118は、分析に基づいてビード高さ(h)及び/又はビード幅(w)を決定することができる。ビード高さ(h)は、ベースライン位置に対する溶接ビード106の高さである。例えば、図示のように、ベースライン位置は、カメラ108、110に面するワーク102の面である。従って、ビード高さ(h)は、ワーク面に対するビード106の高さとして定義することができる。ビード幅(w)は、ビード形成の方向(例えば、ワーク102の面に沿った)に垂直な溶接ビード106の幅である。以下で詳細に検討するように、種々のパラメータ(例えば、溶接機出力、フィルタ送り量)は、ビード高さ(h)及び/又はビード幅(w)に影響を及ぼすことができる。コントローラ118は、所望のビード高さ(h)及び/又はビード幅(w)を設定するために、溶接機104及び/又は位置決め機構114、116のパラメータを調整するよう構成することができる。立体視覚化に基づくビード高さ(h)及び/又はビード幅(w)のフィードバック制御を設けることによって、ビード形成を向上させ、仕上げ作業を実質的に低減又は排除することができる。
【0028】
本発明の実施形態では2つのカメラ108、110が例示されているが、1つのカメラを用いて2つの異なる視野からの画像を取り込み、立体画像を作成することができ、或いは、コントローラ118に画像の差分分析を実施させることができる。例えば、特定の実施形態では、2つの光ファイバーケーブルが、異なる観測点にて溶接ビード106に近接して位置付けられたレンズに延びることができる。これらの光ファイバーケーブルは、各観測点からの画像をカメラに提供するようマルチプレクサに結合することができる。具体的には、各光ファイバーケーブルからの画像は、空間又は時間的に多重化することができる。例えば、カメラが空間的に画像を多重化するよう構成される場合、各光ファイバーケーブルは、カメラ画像検知デバイス(例えば、CCD又はCMOS)の異なる部分に画像を投影することができる。この構成において、1つの観測点からの画像は、画像検知デバイスの上側部分に向けて配向することができ、他の観測点からの画像は、画像検知デバイスの下側部分に向けて配向することができる。結果として、画像検知デバイスは、各画像を低解像度でスキャンすることができる。換言すると、スキャン解像度は、溶接ビード106に関して高解像度スキャンよりも少ない情報をコントローラ118に提供する。従って、空間多重化信号の数は、コントローラ118が溶接欠陥及び/又は溶接ビード特性を識別するのに十分な最小解像度に制限することができる。或いは、光ファイバーケーブルによって提供される画像は、時間的に多重化することができる。例えば、カメラ(例えば、ビデオカメラ)は、画像検知デバイスの全解像度を用いて各観測点からの画像を交互にスキャンすることができる。この技術を用いると、画像検知デバイスの最大解像度を利用することができるが、スキャン周波数は、スキャンされる観測点の数に比例して低減される可能性がある。例えば、2つの観測点がスキャンされ、カメラのフレームレートが毎秒200フレームである場合、カメラは、毎秒100フレームでしか各観測点から画像をスキャンすることができない。従って、時間的に多重化された信号の数は、所望のスキャン周波数によって制限される可能性がある。
【0029】
図3は、溶接ゾーン107に向けて配向され且つ溶接ビード高さ(h)を決定するよう構成された2つのカメラ108、110の概略図である。上述のように、コントローラ118がビード高さ(h)を計算することができる1つの方法は、各カメラ108、110からの画像の差分分析によるものである。図示のように、カメラ108がレンズ128を含み、カメラ110がレンズ130を含む。レンズ128は、カメラ108の光検知素子132から距離(f)を離れて位置付けられる。同様に、レンズ130は、カメラ110の光検知素子134から距離(f)を離れて位置付けられる。自明であろうが、距離(f)は、レンズ128及び130の焦点距離に相当する。各カメラ108、110の焦点距離(f)は、本発明の実施形態では同じであるが、代替の実施形態では、カメラ108、110の焦点距離(f)は変えることができる。
【0030】
各カメラ108、110は、距離(d)だけ離れ、且つワーク102から距離Rに位置付けられる。これらの距離は、各カメラ108、110が同じ視野から溶接ビード106を見ることができるように特に構成することができる。溶接ビード106から放出される(例えば、光源112からの反射光を介して)光は、レンズ128及びレンズ130を通過し、光検知素子132、134上にそれぞれ投影される。例えば、溶接ビード高さ(h)の点から放出される光線135及び溶接ビード106のベースの点から放出される光線137は、各レンズ128及び130を通過し、光検知素子132及び134に衝突することができる。素子132への光線135及び光線137の投影点間の距離は、距離Lとして表される。同様に、素子134への光線135及び光線137の投影点間の距離は、距離Rとして表される。LとRとの間の長さの差違並びに溶接システム100の幾何学的形状に基づいて、溶接ビード高さ(h)を計算することができる。具体的には、溶接ビード高さ(h)は、次式に従って算出することができる。
【0031】
【数1】

自明であろうが、代替の実施形態では、カメラ108、110の位置及び向きは変えることができる。このような変更により、溶接ビード高さ(h)と距離L及びRとの間の関係が修正される場合がある。しかしながら、特定の構成に関係なく、溶接ビード高さ(h)は、溶接ビード106に近接し且つこれに配向された様々な位置に置かれたカメラ108、110からの画像の差分分析に基づいて計算することができる点は理解されたい。測定溶接ビード高さ(h)に基づき、コントローラ118は、ビード高さ(h)が設定された範囲に確実に対応するように特定の溶接パラメータを調整することができる。このようにして、適正な溶接ビード形成が達成され、これにより継手強度を向上させ、仕上げ作業を実質的に低減又は排除することができる。
【0032】
図4は、溶接ゾーン107の裏面に向けて配向された追加カメラ及び少なくとも1つの光源を含む、図2の自動溶接システム100のブロック図である。具体的には、本実施形態は、カメラ108からワーク102の実質的に反対側に位置付けられたカメラ138と、カメラ110からワーク102の実質的に反対側に位置付けられたカメラ140とを含む。両方のカメラ138、140は、溶接ビード106の裏面に向けて配向される。加えて、本実施形態は、対物レンズ126からワーク102の実質的に反対側に位置付けられ、且つワーク102に実質的に垂直に光を投影するよう構成された光源142を含む。光源112と同様に、光源142は、例えば、白熱電球又は蛍光灯、1以上のLED、及び/又はダイオードレーザなど、あらゆる好適な光発生機構を含むことができる。光源142は、ビード106を観測するのにカメラ138、140用に十分な輝度で溶接ビード106の裏面が照明されるように、位置付けることができる。
【0033】
カメラ138、140は、ビード106の裏面上に位置付けられるので、ビード高さ(h)及びビード幅(w)を観測することはできない。しかしながら、カメラ138、140は、溶け込み深さPを示す画像を生成するよう構成することができる。自明であろうが、溶接強度は、ワーク102を通る溶接ビード106の溶け込みの達成に依存することができる。従って、ワーク102の裏面上にカメラ138、140を位置付けることによって、コントローラ118は、溶接ゾーン107の立体又は3次元画像の差分分析又は生成に基づいて、溶け込み深さPを計算できるようにすることができる。例えば、コントローラ118は、溶接ビード高さ(h)の計算に関して上述した方法と類似の計算を実施することができる。具体的には、コントローラ118は、カメラ138、140からの画像の差分分析を実施し、カメラ138、140に面するワーク102の面と溶接ビード106との間の距離Nを計算することができる。次に、溶け込み深さPは、ワーク102の厚みTから距離Nを差し引くことにより計算することができる。このようにして、コントローラ118は、適正な溶け込み深さPが確実に得られるように溶接パラメータを調整することができる。
【0034】
加えて、図4は、カメラ108、110により観測することができるワーク102内へのアンダーカット136を示している。アンダーカット136は、溶接ゾーン107に隣接するワーク102の材料が摩耗した状態である。具体的には、過剰なワーク材料が融解して溶接ビード106内に流れることに起因して、ワーク102に対する不適切な溶接機出力及び/又は溶接機104の不適切な速度がアンダーカット136を生じる可能性がある。アンダーカット136はワーク102の強度を低下させるので、アンダーカット136状態が存在する場合には、高価で時間を要する補修作業が実施される場合があり、これにより製造コストが増大する。結果として、立体視覚化に基づく溶接パラメータ(例えば、溶接機出力及び/又は溶接機の速度)の自動制御は、アンダーカット136が実質的に低減又は排除され、従って、製造コストを低減することができる。
【0035】
図5は、溶接ゾーン107の立体画像に基づいて自動溶接システム100を作動させる方法143のフローチャートである。最初に、ブロック144で示すように、溶接ゾーン107の画像が複数のカメラから取り込まれる。上記で検討したように、このステップは、空間又は時間マルチプレクサを介して複数の光ファイバーケーブルに結合された単一のカメラにより取り込まれる画像を含むことができる。次いで、ブロック146で示すように、立体的、3次元、又は微分画像が生成される。例えば、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像の差分分析を実施することによって、上述の計算に基づいた溶接ビード高さ(h)を計算することができる。或いは、コントローラ118は、溶接ゾーン107の立体又は3次元画像を生成し、溶接ビード高さ(h)、ビード幅(w)及び/又は溶け込み深さPなどの特性を計算するよう構成することができる。
【0036】
次に、ブロック148で示すように、溶接欠陥及び/又は溶接ビード特性を検出することができる。例えば、コントローラ118は、溶接ビード高さ(h)の所望の範囲を含むことができる。コントローラ118は、溶接ビード高さ(h)を監視し、計算値を所望の範囲と比較することができる。計算した溶接ビード高さ(h)が設定範囲外にある場合、溶接欠陥を検出することができる。溶接ビード幅(w)及び/又は溶け込み深さPについての同様の範囲をコントローラ118に入力することができる。次に、コントローラ118は、計算した溶接ビード幅(w)及び/又は溶け込み深さPを設定した範囲と比較し、溶接欠陥を検出することができる。
【0037】
コントローラ118はまた、溶接ビード106に基づいて分光分析を実施し、温度及び組成を決定するよう構成することができる。具体的には、自明であろうが、構成原子内の電子が励起されて基底状態に戻ると、あらゆる化学元素は、様々なスペクトル放射線を放出する。特定の溶接技術(例えば、アーク溶接、ガス溶接、レーザハイブリッド溶接、その他)は、ワーク102及び/又は溶加材の原子内の電子を励起するために十分なエネルギーを溶接ゾーン107に提供することができる。溶接ゾーン107のスペクトル放出を観測することによって、溶接ビード106の組成を求めることができる。例えば、コントローラ118は、カメラ108、110からの画像の分光分析を実施し、一連の輝線を生成することができる。次に、コントローラ118は、輝線を既知の化学元素の保存された輝線と比較し、これにより溶接ゾーン107内にどの元素が存在するかを判断することができる。例えば、特定の実施形態では、溶加材を溶接ビード106に添加し、ワーク102の構成部品間の溶融を向上させることができる。溶加材は、ワークとは異なる化学元素を含むことができる。このような構成において、コントローラ118は、溶接ビード106を構成する原子の分光分析に基づいて、溶接ビード106内に溶着された溶加材の量を検出することができる。この構成において、コントローラ118は、溶加材の適切な量が溶接ビード106に添加されているかどうかを判断することができる。
【0038】
溶接品質は、ワーク102上に溶接ビード106が溶着される温度により影響を受けることができるので、コントローラ118は、スペクトル放出に基づいて溶接ゾーン107の温度を判断するよう構成することができる。具体的には、溶接ゾーン107内の成分元素を求めて、種々の周波数での放出の強度を観測することによって、溶接ゾーン107の温度を計算することができる。次に、コントローラ118は、温度が設定範囲から逸脱しているかどうかを判断することができる。
【0039】
ブロック150で示すように、溶接ビード106の溶接欠陥又は特性の検出に基づいて、溶接ビード溶着に影響を及ぼすパラメータを調整することができる。例えば、溶接機104の出力を調整することができ、溶接機104がワーク102に対して移動する速度を調整することができ、及び/又は溶加材の送り量を調整することができる。このようにして、適正な溶接ビード106を形成することができ、従って、溶接品質を向上させ、仕上げ作業に関連する時間及び費用を低減することができる。
【0040】
図6は、図5のブロック148で示すように、溶接欠陥及び/又は溶接ビード特性を検出するための方法148のフローチャートである。ブロック152で示すように、溶接ビード高さ(h)が求められる。上述のように、このステップは、複数のカメラからの画像の差分分析を実施することを含むことができる。或いは、コントローラ118は、カメラ画像から立体的又は3次元画像を生成し、ビード高さ(h)を含む、溶接ビード106の幾何特性を求めることができる。次に、ブロック154で示すように、ビード幅(w)を求めることができる。ビード高さ(h)の計算と同様に、コントローラ118は、生成した立体又は3次元画像或いはカメラ画像の差分分析に基づいてビード幅(w)を求めることができる。更に、ブロック156で示すように、ワーク102へのアンダーカット136を検出することができる。上述のように、アンダーカット136は、溶接プロセス中にワーク材料が摩耗する状態である。アンダーカット136は、周囲材料の強度が低下する場合があるので、不満足な溶接継手を生じる可能性がある。アンダーカット136の位置に基づいて、1以上のカメラにより状態を観測することができる。1つのカメラによる観測により、コントローラ118は状態を検出することが可能になり、2以上のカメラによる観測によって、コントローラ118は、溶接ビード高さ(h)についての計算と同様にアンダーカット深さの計算に基づいて、アンダーカット136の程度を検出可能にすることができる。
【0041】
ブロック158で示すように、溶接ビード温度を求めることができる。温度を光学的に求める1つの方法は、溶接ビード106の高温金属から種々の放出周波数の強度を監視することである。自明であろうが、溶接ビード106の前縁は、金属の溶融プールを含むことができる。この液体金属は、溶接ゾーン107の高温領域を表すことができる。従って、溶融プールは、分光分析のために最大強度の放出を可能にすることができる。自明であろうが、温度は、検出スペクトル放出に基づいて決定することができる。特定の実施形態では、コントローラ118は、溶接プール及び/又は溶接ビード106の平均温度を求めるよう構成することができる。或いは、コントローラ118は、ステップ146で生成された立体又は3次元画像の分光分析に基づいて溶接ゾーン107の3次元温度分布を計算することができる。
【0042】
ブロック160で示すように、溶接ビード組成を求めることができる。上記で検討したように、このステップは、放射スペクトルを分析して、溶接ゾーン107内の個々の元素を識別することを含むことができる。特定の実施形態では、溶加材は、ワーク102では見られない比較的少量の特定元素を含むことができる。例えば、ワーク102がアルミニウムから構成される場合、実質的にアルミニウムの溶加材を利用して、溶接継手を強化することができる。しかしながら、溶加材は、とりわけ、少量(例えば、5%、4%、3%、2%、1%、0.05%、又は0.01%未満)のシリコン、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、チタン、又はベリリウムを包含することができる。従って、コントローラ118は、これらの元素の量を検出し、溶接ビード106中に存在する溶加材の量を求めるよう構成することができる。例えば、特定のアルミニウム溶加材は、約0.1%銅を含むことができる。溶加材中に存在する銅の量は、コントローラ118に入力することができる。次に、コントローラ118は、溶接ゾーン107からの画像の分光分析を実施し、溶接ビード106内に存在する銅の割合を求めることができる。溶加材の所望の量に基づいて、コントローラ118は、溶接ビード106中の銅の割合が所望の量と一致するかどうかを判断することができる。自明であろうが、コントローラ118は、アルミニウム又は他のワーク材料について溶接ビード106内の他の元素の割合を検出するよう構成することができる。更に、コントローラ118は、ステップ146で生成された立体又は3次元画像の分光分析に基づいて溶接ゾーン107の3次元組成分布を計算するよう構成することができる。
【0043】
最後に、ブロック162で示すように、溶接ビード溶け込み深さPを求めることができる。上記で検討したように、溶け込み深さPは、溶接機104からワーク102の裏面上に位置付けられたカメラ138、140により生成される立体又は3次元画像の様々な画像分析に基づいて計算することができる。適正な溶け込み深さPを確保することにより、溶接接続部の強度を強化することができる。
【0044】
図7は、図5のブロック150に示すように、溶接ビード溶着に影響を及ぼすパラメータを調整する方法150のフローチャートである。最初に、ブロック164で示されるように、溶接機104の出力を調整することができる。出力は、溶接ゾーン107に加えられる熱に比例することができる。例えば、アーク溶接に関しては、出力は、ワーク102の構成要素を溶融するのに使用されるアークの温度に影響を与えることができる。同様に、溶接レーザ出力を調整し、ビーム強度を変えることができる。例えば、上記で検討したように、レーザ出力は、パルス溶接レーザの周波数及び/又はパルス幅を変えることによって修正することができる。過剰な溶接機出力がアンダーカット136を生じる場合がある。具体的には、過剰な出力によって、ワーク材料の付加的な融解を引き起こし、これにより溶接ビード106に隣接する空隙が構築される場合がある。出力が低下すると、アンダーカット136状態を実質的に低減又は排除することができる。従って、コントローラ118は、アンダーカット136が検出された場合に溶接機出力を低下させるよう構成することができる。同様に、コントローラ118が、溶融プール又は溶接ビード106の温度が所望の範囲外にあると判断した場合、コントローラ118は、出力を調整し補償することができる。
【0045】
ブロック166で示すように、ワーク102に対する溶接機104の速度は、調整することができる。具体的には、溶接ビード高さ(h)、ビード幅(w)、及び溶け込み深さPは、溶接機速度に反比例することができる。例えば、溶接機速度が増大すると、溶接ビード高さ(h)、溶接ビード幅(w)、及び/又は溶け込み深さPは減少することができる。従って、コントローラ118は、位置決め機構114及び/又は116の移動速度を調整し、溶接ビード高さ(h)、溶接ビード幅(w)、及び/又は溶け込み深さPを所望の範囲内に設定するよう構成することができる。
【0046】
最後に、ブロック168で示すように、溶接ゾーン107への溶加材の送り量を調整することができる。例えば、ビード高さ(h)が設定範囲よりも小さいと、コントローラ118が判定した場合、コントローラ118は、溶接ゾーン107への溶加材の送り量を増大させることができる。逆に、溶接ビード幅(w)が設定範囲よりも大きいと、コントローラ118が判定した場合、コントローラ118は、溶接ゾーン107への溶加材の送り量を減少させることができる。換言すると、ビード高さ(h)及びビード幅(w)の両方は、材料の送り量に比例することができる。従って、コントローラ118は、送り量を調整し、これらの検出状態を補償することができる。同様に、溶加材の送り量は、溶け込み深さPに影響を与えることができる。例えば、不十分な送り量は、不完全な継手溶け込みを生じる可能性がある。従って、コントローラ118は、溶け込み深さPが所望量よりも少ない場合に、送り量を増大させるよう構成することができる。加えて、上記で検討したように、コントローラ118は、溶接ビード組成の分光分析に基づいて溶接ビード106内の溶加材の量を監視するよう構成することができる。特定の実施形態では、溶加材の所望の量をコントローラ118に入力することができる。次に、コントローラ118は、溶加材送り量を調整し、溶加材の所望の量を溶接ビード106に提供することができる。溶接ゾーン107の立体可視化に基づいて、溶接機出力、溶接機速度、及び/又は送り量を調整することによって、コントローラ118は、強化した溶接ビード形成を可能にし、これにより継手強度の増大、及び仕上げ作業の実質的低減又は排除を実現することができる。
【0047】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(102)上に溶接ビード(106)を溶着させるよう構成された溶接機(104)と、
前記溶接ビード(106)に向けて配向され且つ各々複数の画像を生成するよう構成された複数のカメラ(108、110)と、
前記複数の画像から前記溶接ビード(106)の立体画像を生成し、前記立体画像に基づいて溶接ビード溶着のパラメータを調整するよう構成されたコントローラ(118)と
を備えるシステム(100)。
【請求項2】
前記溶接ビード(106)に向けて配向された光源(112)を更に備える、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記溶接機(104)が溶接レーザ(120)を備える、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記溶接レーザ(120)からのレーザ放射線及び前記光源(112)からの光を前記溶接ビード(106)上に集束するよう構成された対物レンズ(126)を更に備える、請求項3記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記溶接機(104)が、電子ビーム溶接機、摩擦攪拌溶接機、超音波溶接機、アーク溶接機、ガス溶接機、レーザハイブリッド溶接機、原子状水素溶接機、金属不活性ガス溶接機、タングステン不活性ガス溶接機、プラズマ溶接機、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記コントローラ(118)が、前記立体画像に基づいて、前記溶接ビード(106)の高さ、前記溶接ビード(106)の幅、又はこれらの組み合わせを計算するよう構成される、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記コントローラ(118)が、前記立体画像に基づいて、前記ワーク(102)へのアンダーカット(136)を検出するよう構成される、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記溶接ビード溶着のパラメータが前記溶接機(104)の出力を含む、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記溶接ビード溶着のパラメータが、前記溶接ビード(106)への溶加材の送り量を含む、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記溶接ビード溶着のパラメータが、前記ワーク(102)に対する前記溶接機(104)の速度を含む、請求項1記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−5550(P2011−5550A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143259(P2010−143259)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】