説明

溶融スラグ回収用容器及び溶融スラグの回収方法

【課題】廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグの回収作業の効率及び経済性を高める。
【解決手段】溶融スラグ回収用容器30として第1容器32及び第2容器34を具備する。第2容器34を第1容器32内に設置した状態で、第2容器34内に溶融スラグ50を注入し、固化させる。固化した溶融スラグ50は第2容器34と一体に第1容器32から取り出し、廃棄等の処分をする。第1容器32は、第2容器34が破損する等して溶融スラグ50が流出したときのフェールセーフ手段として繰返し使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ、有害廃棄物、産業廃棄物等をプラズマ溶融炉等により溶融することにより生成された溶融スラグを回収して廃棄処理するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような各種廃棄物を溶融処理する手段として、当該廃棄物を適当な溶融炉内に入れてプラズマアーク、誘導加熱、燃焼加熱等の方法により溶融させ、これにより生じた溶融スラグを前記溶融炉内から専用の溶融スラグ回収用容器内に注ぎ込んで固化させ、これを廃棄または再利用する技術が知られている。この技術は、例えば特許文献1に記載されるように、溶融炉内に溜まる溶融スラグが一定量に達する度に当該溶融炉を傾斜させてそのスラグ排出部から排出させる、所謂バッチ式の溶融処理に好適である。また、溶融スラグの排出が連続的であってもスラグの搬出及びハンドリングがバッチ式であれば適用が可能である。
【0003】
ここで、前記溶融スラグ回収用容器内に注入されて固化した溶融スラグを回収する方法は、次の2つに大別される。
【0004】
A)前記溶融スラグ回収用容器を前記溶融スラグと一体に回収して廃棄し、または再利用する。
【0005】
B)前記溶融スラグ回収用容器の内側面を上方に向かうに従って拡径するテーパー状にし、この容器内で溶融スラグが固化した後に容器全体を倒置させるか、あるいは、当該溶融スラグの固化の際に吊上用金具を仕込んで当該固化により当該溶融スラグと吊上用金具とを一体化し、この吊上用金具を利用して前記容器内から固化した溶融スラグを吊り上げる。
【特許文献1】特開2002−5424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記A)の方法では、溶融スラグの回収の度に溶融スラグ回収用容器の交換を行わなければならない。しかも、この溶融スラグ回収用容器では、その底壁や側壁が破れて溶融スラグが漏れるのを確実に防ぐ必要があり、また、同容器の入口部分を廃棄物溶融炉のスラグ排出部に連結できるように強度を確保する必要があることから、容器全体をある程度重厚で高価なものにせざるを得ず、このような構造の溶融スラグ回収用容器を溶融スラグの回収のために交換するのは経済上好ましくない。また、容器自体の重量が大きく、その取扱いも容易でない。
【0007】
一方、前記B)の方法では、溶融スラグ回収用容器全体を倒置させたり、容器内の所定位置に前記吊上用金具を仕込んだりするのに特別な設備や手間が必要となる。また、容器内側面をテーパー状にしても当該容器から簡単に溶融スラグを抜き取り得るとは限らず、実際には容器内側面に剥離層を形成する等の特殊処理を施しておかなければならない不便がある。また、前記溶融スラグ回収用容器には高温の溶融スラグが繰返し接触して固化し、かつ、その回収用容器内から取り出される溶融スラグと当該容器の内周面との間が強く擦れるため、当該容器は傷みやすく、寿命が短い。その寿命がくればA)と同じく当該容器を交換する必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグの回収作業の効率及び経済性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを回収するための溶融スラグ回収用容器であって、上方に開口する有底の第1容器と、この第1容器の内側に挿脱可能に設置され、上方に開口する第2容器とを備え、前記第2容器内に溶融スラグが注入されて当該溶融スラグが固化した状態で、この固化した溶融スラグと前記第2容器とが一体に前記第1容器から取出し可能となるように構成されているものである。
【0010】
また本発明は、前記溶融スラグ回収用容器を用いて、廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを回収して廃棄処理するための方法であって、前記溶融スラグ回収用容器の第1容器内に第2容器を設置する工程と、この第1容器内に設置された状態の第2容器内に前記廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを注入する工程と、この溶融スラグが固化した状態で当該溶融スラグと前記第2容器とを一体に前記第1容器から取り出す工程とを含むものである。
【0011】
以上の構成によれば、第1容器内に設置された第2容器内に溶融スラグを注入し、この第2容器内で固化した溶融スラグを当該第2容器と一体に前記第1容器内から取り出すようにしているので、従来のように溶融スラグ回収用容器内から溶融スラグのみを取り出す方法に比べて容易に溶融スラグを回収することができる。
【0012】
しかも、前記第2容器が破れる等して当該第2容器から溶融スラグが流出したとしても、この第2容器は前記第1容器内に設置されているので前記溶融スラグが容器外部に流出するのを阻止することができる。このように、第2容器に破損等が生じた場合のフェールセーフを確実にすることができることから、第2容器の設計に際して安全率を下げることが可能であり、その結果、第2容器の薄肉、軽量化を図ることができ、これにより、第2容器の低廉化及び取扱いの容易化を果たすことができる。
【0013】
例えば、少なくとも前記第2容器を金属製とすることにより、同容器に特殊な非金属耐火材料を用いる場合に比べて容器全体の低廉化が可能になる。
【0014】
また、前記第2容器が前記第1容器の側壁よりも薄肉の側壁を有するものとすれば、前記第2容器の軽量化及び低廉化を促進する一方で、前記第1容器の肉厚を確保することにより、これら第1容器及び第2容器を含む溶融スラグ回収容器全体でのフェールセーフ機能を高めることができる。
【0015】
また、前記第2容器が上下に開口する筒状をなし、その下側開口が前記第1容器の底部により塞がれるように構成すれば、第2容器の底壁を省略することにより、当該第2容器の低廉化及び軽量化をさらに促進することができる。しかも、この第2容器が前記第1容器内に設置された状態で当該第2容器の下側開口が当該第1容器の底部により塞がれるため、当該第2容器が有底でなくても当該第2容器の内側に不都合なく溶融スラグを注入することができる。
【0016】
このような第2容器は例えば管材を所定軸長で切断することにより形成することが可能であり、これにより当該第2容器の量産化を図ることができる。
【0017】
また、前記第2容器の底部が、当該第2容器の底壁上に耐熱性のある粒子層が敷設されることにより形成され、この粒子層に前記第2容器の下端部が上から差し込まれた状態で当該第2容器が前記第1容器内に立直状態で保持されるようにすれば、前記粒子層を利用して第1容器内に第2容器を立直状態で保持することができるとともに、この第2容器の下から溶融スラグが漏れるのを有効に抑止できる。しかも、前記第1容器内から第2容器を取り出す際には、固化した溶融スラグと、第1容器底部の粒子層との分離性も向上させることができる。
【0018】
また、前記第1容器は第2容器よりも厚肉で高強度とすることができるので、この第1容器の上端部に前記廃棄物溶融炉のスラグ排出部と連結される連結部を設けて、この連結部が前記スラグ排出部に連結されている廃棄物の溶融処理装置を構築することが可能になる。この装置によれば、廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを確実に溶融スラグ回収用容器内に導入することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、溶融スラグ回収用容器として第1容器及びこの第1容器内に設置される第2容器を具備し、第2容器内に廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを注入して当該第2容器のみを前記溶融スラグとともに廃棄等することにより、当該溶融スラグを安価な構成で効率よく回収することができ、その回収作業の効率及び経済性を高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図3(a)(b)は、本発明に係る溶融スラグ回収用容器が適用可能な廃棄物溶融炉の一例を示したものである。図示の溶融炉は、負圧下で廃棄物を溶融処理することが可能なバッチ式の溶融炉であり、炉本体10と、この炉本体10の前部及び後部をそれぞれ下から支持する前側支持部12及び後側支持部14とを備えている。
【0021】
炉本体10は、前記特許文献1に記載されている炉体と同様、耐火物によって内張りされた筐体16と、この筐体16内に導入される廃棄物を溶融させるための図略のプラズマトーチとを有している。この炉本体10の前端部(図3(a)(b)では左端部)には、スラグ排出部18が設けられ、このスラグ排出部18に、後述の溶融スラグ回収用容器30と連結される蛇腹状の配管20が連結されている。
【0022】
前記前側支持部12は、前記炉本体10の前側下端部を水平方向のピン22を支点として回動可能となるように支持する。
【0023】
前記後側支持部14は、支柱24と油圧シリンダ26とを有している。
【0024】
支柱24は、前記炉本体10の後端部(図3(a)(b)では右端部)を下から支持する位置に立設されている。
【0025】
油圧シリンダ26は、前記炉本体10を図3(a)に示す水平姿勢(通常使用姿勢)と同図(b)に示す前傾姿勢(スラグ排出姿勢)とに切換えるためのものである。この油圧シリンダ26のへッド側端部は水平方向のピン27を支点として回動可能となるように基台側(地盤側)に連結され、ロッド側端部は同じく水平方向のピン28を支点として回動可能となるように前記炉本体10の後部に連結されている。そして、この油圧シリンダ26が収縮しているときは前記炉本体10の後端部が前記支柱24の上端に当接して炉本体10が図3(a)に示す水平姿勢に支持される一方、前記油圧シリンダ26が伸張すると前記炉本体10の後端部が浮上して同図(b)に示す前傾姿勢に切換えられるようになっている。
【0026】
前記炉本体10の底壁は、前記スラグ排出部18の手前側となる位置に堰部17を有し、この堰部17の最上位置よりも下方の範囲内で炉本体10内に溶融スラグ50を溜めることが可能となっている。前記スラグ排出部18は、前記堰17とつながる位置に案内壁19を有しており、炉本体10が前記前傾姿勢にあるときに前記堰17から溢れる溶融スラグ50が前記案内壁19を伝って流下するようになっている。
【0027】
次に、この装置において用いられる溶融スラグ回収用容器30の具体的構造を図1及び図2を参照しながら説明する。
【0028】
図示の溶融スラグ回収用容器30は、第1容器32と、この第1容器32の内側に設置される第2容器34とを備えている。
【0029】
前記第1容器32は、上方に開口する有底構造となっている。具体的には、円板状の底壁32aと、この底壁32aの周縁から上方に延びる円筒状の周壁(側壁)32bとを一体に有している。
【0030】
さらに、前記周壁32bの上端からは径方向外側にフランジ部32cが突出している。
このフランジ部32cは、前記配管20に締結可能な連結部を構成するもので、このフランジ部32cには複数のボルト挿通孔33が設けられている。各ボルト挿通孔33は前記フランジ部32cを厚み方向(上下方向)に貫通し、これらボルト挿通孔33内にそれぞれ前記フランジ部32cと配管20とを締結するための締結用ボルトが挿通可能となっている。
【0031】
前記底壁32a上には粒子層36が敷設されている。この粒子層36は、前記底壁32aとともに第1容器32の底部を構成するもので、当該底壁32a上に砂やセラミックス等の耐熱性のある粒子を所定厚みだけ敷き詰めることにより形成されている。
【0032】
この第1容器32の肉厚は、十分な強度が確保できる程度まで厚く設定されている。具体的には、仮に同容器32内に高温の溶融スラグが充満しても破損等を確実に回避できるように十分な安全率が与えられており、かつ、前記フランジ部32cを前記配管20に連結するのに支障のない強度が確保できるように設定されている。この肉厚についての具体的な寸法は適宜設定可能であるが、一般に、鋼材を用いる場合には約10mmまたはそれ以上の寸法に設定することが好ましい。
【0033】
前記第2容器34は、金属製で上下に開口する薄肉の円筒状をなしている。図例では、この第2容器34として、長尺鋼管を適当な軸長で切断したものが用いられている。
【0034】
この第2容器34は、前記第1容器32の内径よりも小さい外径を有し、この第1容器32と同軸となる位置に配される。具体的には、この第2容器34の下端部が前記底壁32aに到達するまで当該下端部を前記粒子層36に上から差し込むことによって、当該第2容器34が立直姿勢で保持され、かつ、この第2容器34の下端開口が前記粒子層36で塞がれた状態を形成することが可能となっている。また、この第2容器34の上端部には吊上げ用の金具またはロープを通すための貫通孔38が設けられている。
【0035】
この第2容器34の肉厚は、前記第1容器32の肉厚よりも小さい肉厚であって、当該第2容器34内に溶融スラグ50が注入されても当該溶融スラグ50を保持できるだけの強度を確保できる肉厚(例えば鋼材を用いる場合には2〜5mm程度)に設定されている。また、この第2容器34の軸長は、図例では、当該第2容器34が前記第1容器32の底壁32a上に設置された状態で当該第2容器34の上端が前記第1容器32の上端以下となるように設定されている。
【0036】
前記配管20は、伸縮可能な蛇腹状の本体部40と、この本体部40の両端に固着されるフランジ42,44とを有している。
【0037】
一方、前記炉本体10におけるスラグ排出部18の出口部分には前記案内壁19を取り巻くようにフランジ部46が形成されている。そして、このフランジ部46に前記配管20の一方のフランジ44が連結され、他方のフランジ42は前記第1容器32のフランジ部32cに締結可能とされている。
【0038】
そして、当該フランジ42とフランジ部32cとが締結された状態で、前記炉本体10が前記図3(b)に示す前傾姿勢まで傾く際に、前記案内壁19を伝って流下する溶融スラグ50が前記第2容器34の略中央位置に注入されるように、当該案内壁19の位置が設定されている。
【0039】
次に、この廃棄物溶融装置の作用及び前記溶融スラグ回収用容器の使用要領を順を追って説明する。
【0040】
1)初期段階では、図3(a)に示すように後側支持部14の油圧シリンダ26を収縮させて炉本体10を水平姿勢にしておく。
【0041】
2)溶融スラグ回収用容器30において、その第1容器32内の所定位置に第2容器34を設置し、当該第1容器32のフランジ部32cを配管20のフランジ42に締結する。これにより、溶融スラグ回収用容器30内が前記配管20を介して前記炉本体10のスラグ排出部18に連結された状態となる。この段階で、前記スラグ排出部18に設けられた案内壁19の先端部は前記第2容器34の略中央位置に指向した状態となる。
【0042】
3)前記炉本体10に設けられた図略の容器投入口から廃棄物を封入した廃棄物容器(例えばドラム缶)を炉本体10内に投入する。この廃棄物容器は、内部の廃棄物とともに、図略のプラズマトーチから発せられる高温のプラズマによって溶融処理され、液状の溶融スラグ50となる。この溶融時に発生する排ガスは、炉本体10に設けられた図略の排ガス出口から炉外に排出される。
【0043】
4)3)の要領で廃棄物及びその容器の溶融を続けるうち、炉内に溜まる溶融スラグ50の液面が予め設定された高さ位置(堰部17の最上端よりも低い位置)に達した時点で、次の廃棄物容器の投入を一旦止める。
【0044】
5)後側支持部14の油圧シリンダ26を所定の速度で伸張させて炉本体10の後部を押し上げることにより、前記配管20の蛇腹状本体部40の収縮を伴いながら前記炉本体10を徐々に傾けて図3(b)に示すような前傾姿勢にする。これにより、炉本体10内に発生した溶融スラグ50は、堰部17から溢れて案内壁19の上面を伝い、配管20内を通って溶融スラグ回収用容器30の第2容器34の略中央位置に所定量だけ注ぎ込まれる。
【0045】
このとき、前記第2容器34の下端開口は粒子層36によって塞がれているため、この第2容器34内には図1に示すように不都合なく溶融スラグ50が溜められる。また、万が一、第2容器34が破れる等して当該第2容器34から溶融スラグが流出しても、この第2容器34は第1容器32内に収容されているため、前記溶融スラグ50が溶融スラグ回収用容器30の外部に流出することは確実に防がれる。
【0046】
6)前記溶融スラグの注入完了後、前記油圧シリンダ26を再び収縮させて図3(a)に示す水平姿勢に戻す。
【0047】
7)前記第2容器34内に溜められた溶融スラグ50がある程度冷却した後、フランジ部32cとフランジ42とを切り離して第1容器32内を開ける。
【0048】
8)前記溶融スラグ50が固化した後、第2容器34の上端に設けられている貫通孔38に吊上げ用の金具あるいはロープを通し、当該金具等を用いて第2容器34及びその内側で固化している溶融スラグ50を一体に第1容器32内から吊り上げ、そのまま搬送して廃棄等の処分をする。ここで、前記第2容器34は第1容器32よりも薄肉で安価かつ軽量であるため、経済的であり、取扱いも容易となる。さらに、第2容器34内で冷却されたスラグは第2容器34に比べて脆性が高く、逆に薄肉の第2容器34は前記スラグに比して靭性に富むので、この第2容器34の外部からその直径方向に圧縮力を加えることにより当該第2容器34は破壊せずにその内部のスラグのみを圧壊または粉砕して前記第2容器34から取り出すといったことも可能である。これにより、前記第2容器34の再利用が可能になり、経済性がさらに高められる。
【0049】
9)次に、新しい第2容器34を前記第1容器32内にセットし、以下、2)〜9)の操作を繰り返す。従って、第2容器34は溶融スラグ50の廃棄の度に交換される一方、第1容器32は繰返し使用されることになる。
【0050】
なお、本発明は以上示した実施の形態に限られず、例えば次のような実施の形態をとることも可能である。
【0051】
・前記第2容器34は有底であってもよい。その場合は第1容器32の底壁32a上に粒子層36を敷設しなくても溶融スラグ50の貯留が可能である。ただし、第2容器34を図示のような上下に開口する筒状とすれば、当該第2容器34の軽量化、低廉化を促進することができ、例えば管材を切断して第2容器34を量産するといったことも可能になる。
【0052】
・前記第2容器34の側壁は前記第1容器32の側壁の肉厚と略同等の肉厚を有するものであってもよい。ただし、図示のように第2容器34の側壁を第1容器32の側壁よりも薄肉とすることにより、当該第2容器34の軽量化、低廉化を促進する一方で、前記第1容器32の肉厚を確保することにより、これら第1容器32及び第2容器34を含む溶融スラグ回収容器全体でのフェールセーフ機能を高めることが可能になる。
【0053】
・本発明では、廃棄物溶融炉における加熱手段を問わず、前記のプラズマアークによる加熱の他、誘導加熱、燃焼加熱等の方法により廃棄物を溶融する装置にも適用することが可能である。また、廃棄物溶融炉から溶融スラグ回収用容器の第2容器に溶融スラグを注入する手段についても、図3(a)(b)に示すように炉本体10を傾斜させるものに限らず、例えば炉本体10の底部に排出口及びその開閉手段を設け、この排出口の直下に前記溶融スラグ回収用容器の第2容器をセットして、溶融スラグ排出時に前記排出口を開くようにしてもよい。
【実施例1】
【0054】
前記図1〜図3に示した廃棄物溶融装置において、炉本体10にはプラズマトーチを具備するプラズマ溶融炉を適用するとともに、都市ごみ、有害廃棄物、産業廃棄物といった各種廃棄物をドラム缶内に詰め、前記プラズマ溶融炉内に投入して溶融させ、スラグ化する。
【0055】
一方、溶融スラグ回収用容器30の第1容器32及び第2容器34はともに鋼製とする。第1容器32の寸法は、その底壁32a、側壁32b、及びフランジ部32cの肉厚を10mmとし、高さ寸法及び内径をともに700mmとする。この第1容器32の肉厚(10mm)は、高温の溶融スラグとの接触による破損を防ぐための最小寸法に十分な安全率を乗じた寸法であり、かつ、フランジ部32cを形成するのに十分な強度が得られる寸法である。
【0056】
この第1容器32の底壁32a上には砂を敷き詰めて厚さ50mmの粒子層36を形成する。
【0057】
第2容器34については、外径600mmで肉厚が5mmの長尺鋼管を軸長680mmに切断することにより量産を行う。この第2容器34の肉厚(5mm)は、高温の溶融スラグとの接触による破損を防ぐための最小寸法に前記第1容器32の安全率よりも低い安全率を乗じた寸法である。
【0058】
この第2容器34を前記第1容器32内に両容器32,34が同軸となる位置で装入し、当該第2容器34の下端部をその端面が底壁32aの上面に到達するまで前記粒子層36に差し込むことにより、当該粒子層36が当該第2容器34を立直姿勢に保持する状態にする。
【0059】
そして、上述した手順4)〜9)により第2容器34内で溶融スラグ50を固化させ、この溶融スラグ50を第2容器34と一体に回収して廃棄処理する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る溶融スラグ回収用容器の断面正面図である。
【図2】前記溶融スラグ回収用容器の平面図である。
【図3】(a)は前記溶融スラグ回収用容器が用いられる廃棄物溶融装置の炉本体が水平姿勢にある状態を示す正面図、(b)は同炉本体が前傾姿勢にある状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 炉本体
18 スラグ排出部
20 配管
30 溶融スラグ回収用容器
32 第1容器
32a 底壁
32b 側壁
32c フランジ部
33 ボルト挿通孔
34 第2容器
36 粒子層
50 溶融スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを回収するための溶融スラグ回収用容器であって、上方に開口する有底の第1容器と、この第1容器の内側に挿脱可能に設置され、上方に開口する第2容器とを備え、この第2容器内に溶融スラグが注入されて当該溶融スラグが固化した状態で、この固化した溶融スラグと前記第2容器とが一体に前記第1容器から取出し可能となるように当該第1容器内に前記第2容器が配置されることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項2】
請求項1記載の溶融スラグ回収用容器において、少なくとも前記第2容器が金属製であることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項3】
請求項1または2記載の溶融スラグ回収用容器において、前記第2容器は前記第1容器の側壁よりも薄肉の側壁を有することを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の溶融スラグ回収用容器において、前記第2容器は上下に開口する筒状をなし、その下側開口が前記第1容器の底部により塞がれるように構成されていることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項5】
請求項4記載の溶融スラグ回収用容器において、前記第2容器は管材を所定軸長で切断することにより形成されたものであることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項6】
請求項4または5記載の溶融スラグ回収用容器において、前記第2容器の底部は、当該第2容器の底壁上に耐熱性のある粒子層が敷設されることにより形成され、この粒子層に前記第2容器の下端部が上から差し込まれることにより当該第2容器が前記第1容器内に立直状態で保持されることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の溶融スラグ回収用容器において、前記第1容器の上端部に前記廃棄物溶融炉のスラグ排出部と連結される連結部が設けられていることを特徴とする溶融スラグ回収用容器。
【請求項8】
投入された廃棄物を溶融してスラグ排出部から排出する廃棄物溶融炉と、請求項6記載の溶融スラグ回収用容器とを備え、この溶融スラグ回収用容器の連結部が前記スラグ排出部に連結されていることを特徴とする廃棄物の溶融処理装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の溶融スラグ回収用容器を用いて、廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを回収して廃棄処理するための方法であって、前記溶融スラグ回収用容器の第1容器内に第2容器を設置する工程と、この第1容器内に設置された状態の第2容器内に前記廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを注入する工程と、この溶融スラグが固化した状態で当該溶融スラグと前記第2容器とを一体に前記第1容器から取り出す工程とを含むことを特徴とする廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−322053(P2007−322053A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151880(P2006−151880)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】