説明

溶融塩電池

【課題】高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造の溶融塩電池を提供する。
【解決手段】容器本体6が、平板状の正極1及び負極2が対向する方向を軸方向とする有底の筒型状(四角柱状)をなしており、容器本体6の最も面積が小さい一側面に設けた開口が、シール部材(フッ素ゴム、SBR、NBR及びオレフィン系樹脂の少なくとも1つを含むOリング、又は耐熱性の接着剤層201)を介して蓋体7で封止される。これにより、溶融塩に対するシール部材の接液面積を最小に抑えてシール性の劣化を最小限にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極、負極及び溶融塩を備える溶融塩電池に関する。
【背景技術】
【0002】
主に電力貯蔵を目的とする高エネルギー密度・高効率の畜電池として、ナトリウム硫黄電池が知られている。ナトリウム硫黄電池では、正極活物質の硫黄及び多硫化ナトリウムと負極活物質のナトリウムとの間にアルミナセラミックスからなる固体電解質を介在させ、両活物質を300℃程度の高温で溶融させて反応を維持させる。一方、近年、100℃以下の低融点の溶融塩を含む電解質をセパレータに含浸させて、正極及び負極で挟持するように構成した溶融塩電池が着目されている。
【0003】
溶融塩電池に限らず、一般的に電池は、正極及び負極を含む発電要素を外装材に収容してあり、例えば、リチウムイオン電池では、基材層、水蒸気バリア層及びヒートシール層を互いに接着させた積層体によって集電用のタブを有する発電要素を封止する構成が多く見られる。このような構成では、タブ部のシール性(密封性)の低下、及びセパレータに含まれる電解液の浸出による層間の接着の剥離(デラミネーション)がしばしば問題となる。これに対し、特許文献1では、予めタブを接着性フィルムで挟持して高周波加熱することにより、タブ部におけるシール性を良好にする技術が開示されている。また、特許文献2では、特定の接着剤を用いることにより、外装材の電解液に対する耐薬品性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−307777号公報
【特許文献2】特開2001−243928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示された技術は、室温で用いられる電池に適用されることを前提としているため、溶融塩電池が置かれる高温の環境下では、十分なシール性を発揮できるものではなかった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造の溶融塩電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融塩電池は、溶融塩を含んでなるセパレータを正極及び負極間に介装させた発電要素と、該発電要素を収容する電池容器とを備える溶融塩電池において、前記電池容器は、前記正極及び負極が対向する方向を軸方向とする有底の筒体の周面の一部が開口する容器本体、及び該容器本体の開口を封口する蓋体を有し、該蓋体及び前記容器本体間をシールする耐熱性のシール部材を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、容器本体が、正極及び負極が対向する方向を軸方向とする有底の筒形状をなしており、容器本体の周面の一部に設けた開口を、耐熱性のシール部材を介して蓋体で封口してある。
これにより、発電要素の形状を標準的なシート状にした場合は、電池容器の高さが低くなって全表面積に対する側面の面積の割合が小さく抑えられる。このため、開口の面積が相対的に小さくなって、電池容器内の溶融塩に対するシール部材の接液面積が減少する。また、シール部材が溶融塩に曝される場合であっても、シール部材が耐熱性を有するため、シール性の劣化が抑止される。
【0009】
本発明に係る溶融塩電池は、前記容器本体の周面は、複数の面からなり、該複数の面のうち面積が最小となる面が開口するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、容器本体の側面を構成する複数の面のうち、面積が最小の面に開口を設けてあるため、溶融塩に対するシール部材の接液面積が最小に抑えられる。
【0011】
本発明に係る溶融塩電池は、前記容器本体は、前記筒体の軸方向の断面が矩形状であることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、容器本体が四角柱状、即ち直方体状をなしているため、容器本体のどの側面に開口があるとしても、平面視が矩形でシート状の発電要素が電池容器内にスムーズに挿設される。
【0013】
本発明に係る溶融塩電池は、前記蓋体の周縁部は、前記容器本体の開口の周縁部に衝合させてあり、前記シール部材は、前記蓋体及び容器本体の衝合面に挟装された弾性体又は接着剤層を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、蓋体の周縁部と容器本体の周縁部とを突き合わせ、突き合わせ部にシール部材として弾性体又は接着剤層を挟み込む。
これにより、突き合わせ部を弾性体でシールした場合は、電池容器の容器本体及び蓋体が開閉自在に密閉され、保守点検が容易となる。また、突き合わせ部を接着剤でシールした場合は、容器本体及び蓋体間が強固に接合される。
【0015】
本発明に係る溶融塩電池は、前記弾性体が、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びオレフィン系樹脂の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、バイトン(登録商標)に代表される耐熱性に優れたフッ素ゴム、代表的な合成ゴムであるSBR(Styrene-butadiene rubber )、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びオレフィン系樹脂の少なくとも1つが、シール部材としての弾性体に含まれる。
これにより、溶融塩電池に要求される耐熱性が確保されると共に、溶融塩に対する耐薬品性が高まる。
【0017】
本発明に係る溶融塩電池は、前記セパレータは、前記正極及び負極が対向する方向の断面積を前記正極及び負極より大きくしてあり、前記方向と直交する方向の端部を前記正極又は負極側に折り曲げてあることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、正極及び負極が対向する方向と直交する平面で切ったときのセパレータの断面積が、正極及び負極の断面積より大きくなるようにしてあり、正極及び負極間から突出するセパレータの端部を正極(又は負極)側に折り曲げる。
これにより、正極(又は負極)の端部が負極(又は正極)側に回り込んで短絡することが防止される。また、正極(又は負極)が電池容器の内側面と接触することが防止される。
【0019】
本発明に係る溶融塩電池は、前記容器本体を前記正極又は負極の何れか一方と電気的に接続してあることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、容器本体を正極(又は負極)と電気的に接続してあるため、容器本体を溶融塩電池の正極端子(又は負極端子)とすることができる。
更に、セパレータの端部を負極(又は正極)側に折り曲げた場合は、容器本体に接続されていない負極(又は正極)と容器本体との短絡が効果的に防止される。
【0021】
本発明に係る溶融塩電池は、前記容器本体の一の内底面に沿う平板部と、前記周面の前記開口を除く部分に沿って前記平板部に周設された側板部とを備え、前記平板部、側板部及び前記容器本体の他の内底面によって前記発電要素が囲繞されるようにしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、容器本体の内底面に沿って配された平板部の周縁部において、容器本体の周面の開口を除く部分に沿うように側板部を設けてあり、容器本体の他の内底面と、前記平板部及び側板部とで、一面が開口する中空の直方体状の容器が形成されて、該容器内に発電要素が囲繞されることとなる。
これにより、前記平板部に発電要素を平置きして、前記開口から容器本体に発電要素を装入する場合は、溶融塩電池の組み立てが容易となる。
【0023】
本発明に係る溶融塩電池は、前記電池容器内の前記正極及び/又は負極側に配されており、前記発電要素を押圧する押圧部材と、該押圧部材から与圧されて前記正極及び/又は負極に押圧力を分散伝達する伝達部材とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明にあっては、電池容器内の正極及び/又は負極側に設けられた押圧部材が、同じ正極及び/又は負極側に設けられた伝達部材を与圧し、与圧された伝達部材が、押圧部材からの押圧力を分散させて発電要素に伝達させることにより、発電要素が正極及び負極側から略均等に押圧される。
これにより、正極及び負極が充放電によって厚み方向に伸縮した場合であっても、セパレータに対する正極及び負極からの押圧力が略一定に保持される。このため、正極及び負極に歪み(しわ)が生じ難く、充放電に伴う正極及び負極での反応が略均一に進行する。
更に、押圧部材を厚み方向に変形させて発電要素と共に容器本体の開口から電池容器に装入することができるため、溶融塩電池の組み立てが容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、正極及び負極が対向する方向を軸方向とする筒形状の容器本体の側面の一部に設けた開口と、該開口を封口する蓋体との間に、耐熱性のシール部材を介在させる。
これにより、発電要素の形状を標準的なシート状にした場合は、電池容器の全表面積に対する側面の面積の割合が小さく抑えられる。このため、開口の面積が相対的に小さくなって、電池容器内の溶融塩に対するシール部材の接液面積が減少する。また、シール部材が溶融塩に曝される場合であっても、シール部材が耐熱性を有するため、シール性の劣化が抑止される。
従って、高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る溶融塩電池の略示縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る溶融塩電池の容器本体及び保持体を模式的に示す斜視図である。
【図3】電池容器の一部を模式的に示す横断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る発電要素を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る溶融塩電池の容器本体を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。但し、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化するための溶融塩電池を例示するものであって、本発明は、溶融塩電池を以下の電池には特定しない。更に、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態に記載される部材に特定するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る溶融塩電池の略示縦断面図である。図中200は電池容器であり、電池容器200は、アルミニウム(以下、単にアルミという)からなり、中空の略直方体(四角柱)の一側面が開放された容器本体6と、フェノール樹脂からなり、容器本体6の一側面を封止する蓋体7とを備える。容器本体6の開放された開口の周縁部は、耐熱性の接着剤からなる接着剤層201を介して蓋体7の周縁部と衝合されており、容器本体6及び蓋体7は、接着剤層201の接着剤によって接合されている。
【0028】
電池容器200内には、矩形平板状の正極1及び負極2間にガラスクロス又はフッ素樹脂からなるセパレータ3を介装させた発電要素100が、正極1を下方に向けて収容されている。セパレータ3の端部は、正極1及び負極2と接する部分から水平方向に張り出しており、張り出した端部は、上方に向けて負極2側に折り曲げられている。負極2の蓋体7側の端部には、負極端子21が、蓋体7を貫通して外側に一部が突出するように取着されている。
【0029】
容器本体6の天壁61と負極2との間には、波板状のステンレス鋼(例えばSUS304)からなるバネ(押圧部材)4が配されている。バネ4は、ゴム等の弾性体であってもよい。バネ4は、ステンレス鋼又はアルミ合金からなる平板状の押え板(伝達部材)5を下方に付勢しており、付勢された押え板5がマイカからなる絶縁シート51を介して負極2を下方に略均等に押圧する。また、その反作用で、正極1が容器本体6の底壁62の上面から上方に略均等に押圧されるようになっている。
【0030】
正極1は、アルミからなる不織布に、バインダ(結着剤)と導電助剤と正極活物質であるNaCrO2とを含む合剤(スラリー)を充填して形成してある。正極活物質はNaCrO2に限定されない。負極2は、負極活物質である錫がメッキされたアルミ箔からなる。正極1及びセパレータ3には電解質を含浸させてあり、本実施の形態1では、電解質としてFSI(ビスフルオロスルフォニルイミド)又はTFSI(ビストリフルオロメチルスルフォニルイミド)系アニオンと、ナトリウム及び/又はカリウムのカチオンとからなる溶融塩を用いる。
【0031】
上述した構成において、図示しない外部の加熱手段により、電池容器200全体が85℃〜95℃に加熱されることにより、溶融塩が融解して充電及び放電が可能となる。充放電に伴って発電要素100が上下方向に伸縮した場合であっても、負極2から絶縁シート51を介して押え板5に伝達される上下方向の変位が、バネ4の上下方向の伸縮によって吸収されるため、正極1及び負極2に対する押圧力が略一定に保持される。溶融塩電池を組み立てる場合にも、バネ4が上下方向に伸縮するため、電池容器200内に挿設すべき部材が容器本体6の開口から容易に装入される。
【0032】
負極2は、絶縁シート51及びセパレータ3によって容器本体6から電気的に絶縁されているが、正極1は容器本体6の底壁62と当接しており、正極1と容器本体6とは電気的に導通している。従って、容器本体6及び負極端子21間で充電及び放電が行われる。尚、図1では、発電要素100、バネ4、押え板5、及び絶縁シート51が、互いに隙間を隔てて電池容器200内に収容されているかの如く示されているが、実際には、これらが上下方向に隙間なく接するように収容されている。電池要素X内においても同様に、正極1、セパレータ3、及び負極2が隙間なく接している。
【0033】
さて、発電要素100を構成する正極1、負極2及びセパレータ3は、何れも平板状であるため、容器本体6の高さ方向のサイズが、縦横のサイズと比較して必然的に小さくなり、電池容器200の全表面積に対して側面の面積が占める割合は小さい。接着剤層201の上下方向の端面のうち、電池容器200の内側にある面は、正極1及びセパレータ3から滲出した溶融塩に曝される可能性があるが、容器本体6の一側面が開放されて形成された開口が比較的小さいため、実際に溶融塩に接する部分の面積は小さく抑えられる。
【0034】
以上のように本実施の形態1によれば、容器本体が、平板状の正極及び負極が対向する方向を軸方向とする有底の筒型状(四角柱状)をなしており、容器本体の一側面、即ち周面の一部に設けた開口が、耐熱性の接着剤層を介して蓋体で封口される。
これにより、電池容器の高さが低くなって全表面積に対する側面の面積の割合が小さく抑えられるため、開口の面積が相対的に小さくなって、電池容器内の溶融塩に対する接着剤層の接液面積が減少する。また、接着剤層の接着剤が耐熱性を有するため、シール性の劣化が抑止される。
従って、高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造にすることが可能となり、更に、容器本体及び蓋体間を強固に接合することが可能となる。
【0035】
また、容器本体が四角柱状、即ち直方体状をなしているため、容器本体の側面に設けられた開口を用いて、平面視が矩形でシート状の発電要素を電池容器内にスムーズに挿設することが可能となる。
【0036】
更にまた、セパレータの平面視の面積が、正極及び負極の面積より大きくなっており、正極及び負極間から突出するセパレータの端部が負極側に折り曲げられる。
従って、負極の端部が正極側に回り込んで短絡したり、電池容器の内側面と接触したりするのを防止することが可能となる。
【0037】
更にまた、容器本体を正極と電気的に接続してあるため、容器本体を溶融塩電池の正極端子とすることが可能となる。この場合にもセパレータの折り曲げ効果により、負極と容器本体との短絡を防止することが可能となる。
【0038】
更にまた、バネ及び押え板によって、発電要素が正極及び負極側から略均等に押圧され、押圧力が略一定に保持される。
従って、充放電に伴う正極及び負極での反応を略均一に進行させることが可能となる上に、バネを厚み方向に変形させて発電要素の挿設を容易にすることが可能となる。
【0039】
尚、本実施の形態1にあっては、フェノール樹脂からなる蓋体7を耐熱性の接着剤で容器本体6に接合したが、これに限定されるものではなく、例えばアルミの蓋体と容器本体6とをアルミナペーストで接合するようにしてもよい。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態1が、電池容器200内に収容される部材をそのまま電池容器200内に挿設する形態であるのに対し、実施の形態2は、電池容器内に収容される部材を保持体に載置して挿設する形態である。
図2は、本発明の実施の形態2に係る溶融塩電池の容器本体及び保持体を模式的に示す斜視図である。図2は、蓋体を外し、保持体8を引き出した例を示してある。図中200aは電池容器であり、電池容器200aは、アルミからなり、中空の略直方体(四角柱)の一側面が開放された容器本体6aと、フェノール樹脂からなり、容器本体6aの一側面を封止する蓋体7とを備える。
【0041】
容器本体6aの開放された開口60の周縁部は、後述するOリング202を介して蓋体7の周縁部と衝合されるようになっている。容器本体6a及び蓋体7夫々の衝合面には、Oリング202を挟装するためのリング溝66及び76が周設されている。蓋体7には、負極端子21を挿通させるための挿通孔71が形成されており、該挿通孔71内には、図示しない耐熱性のシール部材が配されている。
尚、開口60は、該開口60をシールするOリング202のサイズを最小化するために、容器本体6aの4つの側面のうち面積が小さい2面のうちの1つを開放して設けてある。
【0042】
保持体8は、図1に示す発電要素100と、バネ4、押え板5及び絶縁シート51とを保持して電池容器200a内に挿設するためのものである。保持体8は、容器本体6aの底壁62の上面に沿う平板部82と、容器本体6aの開口60を除く周面63,64,65の内側に沿って平板部82に周設された側板部83,84,85とを備える。平板部82には、開口60の一部に沿って他の側板部を設けてもよい。保持体8には、正極1を下方に、負極端子21を開口60側に向けた発電要素100と、負極2を下方に押圧するためのバネ4、押え板5及び絶縁シート51(夫々図1参照)とが載置される。これにより、発電要素100は、平板部82、側板部83,84,85、及び容器本体6aの天壁61によって囲繞される。
【0043】
上述した構成において、溶融塩電池を組み立てる場合、発電要素100と、バネ4、押え板5及び絶縁シート51とを載置した保持体8を、側板部84から先に開口60に挿通させて、容器本体6aに装入する。その後、Oリング202をリング溝66に嵌装し、発電要素100から突出した負極端子21を蓋体7の挿通孔71に挿通させつつ、蓋体7と容器本体6aとを衝合させる。
【0044】
次に、蓋体7を容器本体6aに固定する方法について説明する。
図3は、電池容器200aの一部を模式的に示す横断面図である。蓋体7は、前側の端面に、水平面内で回動可能に軸支されたレバー77を備える。また、容器本体6aは、前側の周面63に突設された係合部67を備える。容器本体6a及び蓋体7のリング溝66,76にOリング202を挟装し、レバー77を反時計方向に回動させて係合部67に係合させることにより、容器本体6aに蓋体7が固定されるようになっている。
【0045】
Oリング202は、耐熱性及び耐薬品性に優れたバイトン(フッ素ゴム)からなるが、これに限定されず、例えば、合成ゴムのSBR又はNBRでもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂であってもよい。
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
以上のように本実施の形態2によれば、容器本体の一側面、即ち周面の一部に設けた開口が、耐熱性に優れたOリングを介して蓋体で封口されるため、シール性の劣化が抑止される。
従って、高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造にすることが可能となる。
【0047】
また、容器本体の側面を構成する複数の面のうち、面積が最小の面に開口を設けてあるため、溶融塩に対するシール部材の接液面積を最小に抑えてシール性の劣化を最小限にすることが可能となる。
【0048】
更にまた、蓋体の周縁部と容器本体の周縁部との突き合わせ部にシール部材としてOリングを挟装し、蓋体が備えるレバーを容器本体の係合部に係合させて蓋体を容器本体に固定する。
従って、電池容器の容器本体及び蓋体が開閉自在に密閉されるため、保守点検を容易にすることが可能となる。
【0049】
更にまた、Oリングの材料が、フッ素ゴム、SBR、NBR及びオレフィン系樹脂の少なくとも1つからなるため、シール部材について、溶融塩電池に要求される耐熱性が確保されると共に、溶融塩に対する耐薬品性を高めることが可能となる。
【0050】
更にまた、容器本体の底壁に沿って配された平板部の周縁部において、容器本体の周面の開口を除く部位に沿うように側板部を周設して保持体としてあり、電池容器の天壁と保持体とで、発電要素が囲繞されている。
従って、保持体に発電要素を平置きして、開口から容器本体に発電要素を装入することにより、溶融塩電池の組み立てを容易にすることが可能となる。
【0051】
尚、実施の形態1及び2にあっては、バネ4と押え板5とを負極2側に備えているが、これらを正極1側に備えてもよいし、両極側に備えるようにしてもよい。
【0052】
(実施の形態3)
実施の形態1が、容器本体6を正極1と電気的に接続する形態であるのに対し、実施の形態3は、容器本体を正極及び負極と電気的に絶縁する形態である。
図4は、本発明の実施の形態3に係る発電要素を模式的に示す斜視図である。図中100aは発電要素であり、発電要素100aは、正極集電体11及び正極材12を有する正極1aと、矩形平板状の負極2aとの間に、ガラスクロス又はフッ素樹脂からなるセパレータ3aを介装させてなる。負極2aの上面には、波板状のステンレス鋼からなるバネ4aが載置される。バネ4aの波板の向きは、図4に示す向きから水平に90度回転させた向きであってもよい。
【0053】
正極1aは、中空の略直方体の上面及び一側面が開放されており、アルミからなる正極集電体11と、アルミからなる不織布にバインダと導電助剤と正極活物質であるNaCrO2とを含む合剤を充填して形成してあり、正極集電体11に填装された正極材12とを有する。正極集電体11の開放された一側面側の端部には、正極端子13が突設されている。負極2aは、負極活物質である錫がメッキされたアルミ板からなる。負極2aの前記一側面側の端部には、負極端子21が突設されている。正極材12及びセパレータ3aには溶融塩を含浸させてある。
【0054】
次に、上述した発電要素100a及びバネ4aが挿設される電池容器について説明する。
図5は、本発明の実施の形態3に係る溶融塩電池の容器本体を模式的に示す斜視図である。図5は、蓋体を外した例を示してある。図中200bは電池容器であり、電池容器200bは、アルミからなり、中空の略直方体(四角柱)の一側面が開放された容器本体6bと、フェノール樹脂からなり、容器本体6bの一側面を封止する蓋体7aとを備える。
【0055】
容器本体6bの開放された開口60の周縁部は、耐熱性の接着剤からなる接着剤層201を介して蓋体7aの周縁部と衝合され、容器本体6及び蓋体7が、接着剤層201の接着剤で接合されるようになっている。容器本体6bの内側は、フッ素コートによって絶縁処理が施されている。蓋体7aには、負極端子21及び正極端子13の夫々を挿通させるための挿通孔71,72が形成されており、該挿通孔71,72内には、図示しない耐熱性のシール部材が配されている。
【0056】
上述した構成において、溶融塩電池を組み立てる場合、発電要素100aにバネ4aを載置して容器本体6bの開口60から装入する。この場合、バネ4aが上下方向に伸縮するため、発電要素100a及びバネ4aが容器本体6bの開口60から容易に装入される。その後、負極端子21及び正極端子13の夫々を挿通孔71,72に挿通させつつ、蓋体7aと容器本体6bとを接着剤層201を介して衝合させる。発電要素100a及びバネ4aが電池容器200b内に挿設された後は、バネ4aが負極2aを下方に押圧するが、負極2a自体が剛性を有しているため、負極2aからセパレータ3a及び正極1aに伝達される押圧力が略均等となる。
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0057】
以上のように本実施の形態3によれば、正極及び負極を容器本体から電気的に絶縁し、正極端子及び負極端子をベークライトからなる蓋体の挿通孔に挿通させてある。また、容器本体の一側面、即ち周面の一部に設けた開口が、耐熱性の接着剤層を介して蓋体で封口される。
従って、容器本体と正極を電気的に導通させない形態においても、高温の環境下におけるシール性の劣化の影響を受け難いシール構造にすることが可能となる。
【0058】
尚、本実施の形態3にあっては、蓋体7aと容器本体6bとを接着剤層201の接着剤によって接合したが、これに限定されるものではなく、実施の形態2と同様に、蓋体7aと容器本体6bとをOリング202でシールするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
100、100a 発電要素
200、200a、200b 電池容器
201 接着剤層(シール部材)
202 Oリング(弾性体、シール部材)
1、1a 正極
2、2a 負極
3、3a セパレータ
4、4a バネ(押圧部材)
5 押え板(伝達部材)
6、6a、6b 容器本体
60 開口
63、64、65 周面
7、7a 蓋体
8 保持体
82 平板部
83、84、85 側板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩を含んでなるセパレータを正極及び負極間に介装させた発電要素と、該発電要素を収容する電池容器とを備える溶融塩電池において、
前記電池容器は、前記正極及び負極が対向する方向を軸方向とする有底の筒体の周面の一部が開口する容器本体、及び該容器本体の開口を封口する蓋体を有し、
該蓋体及び前記容器本体間をシールする耐熱性のシール部材を備えること
を特徴とする溶融塩電池。
【請求項2】
前記容器本体の周面は、複数の面からなり、該複数の面のうち面積が最小となる面が開口するようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の溶融塩電池。
【請求項3】
前記容器本体は、前記筒体の軸方向の断面が矩形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融塩電池。
【請求項4】
前記蓋体の周縁部は、前記容器本体の開口の周縁部に衝合させてあり、
前記シール部材は、前記蓋体及び容器本体の衝合面に挟装された弾性体又は接着剤層を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の溶融塩電池。
【請求項5】
前記弾性体が、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びオレフィン系樹脂の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の溶融塩電池。
【請求項6】
前記セパレータは、前記正極及び負極が対向する方向の断面積を前記正極及び負極より大きくしてあり、前記方向と直交する方向の端部を前記正極又は負極側に折り曲げてあることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の溶融塩電池。
【請求項7】
前記容器本体を前記正極又は負極の何れか一方と電気的に接続してあることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の溶融塩電池。
【請求項8】
前記容器本体の一の内底面に沿う平板部と、
前記周面の前記開口を除く部分に沿って前記平板部に周設された側板部とを備え、
前記平板部、側板部及び前記容器本体の他の内底面によって前記発電要素が囲繞されるようにしてあること
を特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の溶融塩電池。
【請求項9】
前記電池容器内の前記正極及び/又は負極側に配されており、前記発電要素を押圧する押圧部材と、
該押圧部材から与圧されて前記正極及び/又は負極に押圧力を分散伝達する伝達部材と
を備えることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の溶融塩電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−228176(P2011−228176A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98124(P2010−98124)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】