説明

溶融状態の所定量のプラスチック材料を取り扱うための装置と方法

本発明は、少なくとも1つのプラスチック材料供給源(1)と、上面(16)と側壁(17)を備えていて所定量のプラスチック材料(3)を一時的に支持することのできるスリーブ(8)の中を滑動するロッド(11)と、製品の頭部を形成するための鋳型(6、7)と、その鋳型(6、7)と協働するマンドレル(18)とを備えていて、溶融状態の所定量のプラスチック材料(3)を鋳型の2つの部分の間で圧縮することによってプラスチック材料からなる製品を成形する装置において、この装置が、スリーブの上に所定量のプラスチック材料を堆積させる手段(1、2)を備えていて、スリーブ(8)の上面(16)と一致する平面(20)よりも上に堆積されるプラスチック材料(22)の量が、その材料(3)の全量の20%〜40%となるようにされている、ことを特徴とする装置に関する。本発明は、この装置を利用した方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料からなる製品を圧縮によって成形することに関する。製品は、溶融状態の所定量のプラスチック材料を鋳型の2つの部分の間で圧縮することによって得られる。
【0002】
本発明は、より詳細には、肩部とオリフィスを有する頭部が可撓性のある円筒形本体に接続されたプラスチック材料製チューブ(例えば歯磨きまたは化粧品のチューブ)の実現に適用される。この特別な場合には、1回の操作で、チューブの頭部が形成されると同時に本体に接合される。チューブの頭部は、溶融した所定量の材料をもとにして、金型ユニットと呼ばれる下側の道具と、可撓性のある円筒体が表面に取り付けられたマンドレルと呼ばれる上側の道具の間で形成されて圧縮されることによって実現される。材料の温度は、その材料がチューブの本体に接合する温度にされている。チューブ製造機械では、複数の鋳型が一般に不連続な(または連続な)運動をし、それぞれの鋳型がさまざまな製造プロセス(チューブ本体への装填、所定量の可撓性材料の配置、圧縮成形、冷却、鋳型からのチューブの取り出し)を経る。
【背景技術】
【0003】
このようなチューブを実現するさまざまな装置と方法が従来技術で知られている。
【0004】
例えば特許文献1と特許文献2を挙げることができる(これらの内容は、上記の方法と装置の説明に関する限り、参考として本出願に組み込まれているものとする)。
【0005】
特許文献1にはチューブを製造する装置と方法が記載されており、ここでは、所定量の環状の材料が中間支持体となるスリーブの上に堆積され、その材料を貫通してロッドが滑動できるようにされている。ロッドはバネによって高位置に維持されていて、頭部を形成するためにマンドレルが金型の中に導入されるときにはバネの力に逆らって押される。
【0006】
特許文献2では、この特許の図1に示されているように、所定量の環状のプラスチック材料が供給源からスリーブの上面とロッドの周囲に堆積される。このロッドは、肩部にオリフィスを形成するのに役立つ。供給源の出口は環状ノズルで取り囲まれているため、望む量が堆積されると、加圧空気を放出して堆積された材料を供給源から分離させることができる。スリーブに所定量の材料が堆積されると供給源を引っ込め、作り出すことになる肩部の形状をしたマンドレルを配置する。マンドレルの正面はロッドの上面と接触し、そのスリーブロッド集合体が肩部金型とネジ山金型の内部に押し込まれて頭部が形成され、チューブの端部となる。この特許の図3と図4には、頭部を形成した後、マンドレルに支持されているチューブ本体に接合するこのステップが示されている。頭部のオリフィスは、スリーブの中を長手方向に移動するロッドによって形成される。頭部を形成した後に金型の中をマンドレルを移動させるこのステップにおいて、ロッドはマンドレルによってスリーブの中を軸方向に高位置から低位置へと押される。ロッドは、低位置において、スリーブの上面を通り過ぎることによって肩部にオリフィスを形成する機能を有する。
【特許文献1】独国特許出願第10349837号
【特許文献2】米国特許第4943405号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2で遭遇する問題は、所定量のプラスチック材料をスリーブの上に一時的に配置することに関係している。プラスチック材料をスリーブの上面と側壁にどのように分配するかに応じ、成形される製品の品質が著しく向上したり低下したりする可能性がある。
【0008】
そこで本発明の目的の1つは、公知のこうした方法と装置を改良することである。
【0009】
より詳細には、本発明の目的の1つは、プラスチック材料をスリーブの上に満足のゆくように分配できるシステムを提案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、公知の方法よりも効率的にチューブの肩部を形成する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明は、少なくとも1つのプラスチック材料供給源と、上面と側壁を備えていて所定量のプラスチック材料を一時的に支持することのできるスリーブの中を滑動するロッドと、製品頭部を形成するための鋳型と、その鋳型と協働するマンドレルとを備えていて、溶融状態の所定量のプラスチック材料を鋳型の2つの部分の間で圧縮することによってプラスチック材料からなる製品を成形する装置に関する。本発明の装置は、スリーブの上に所定量のプラスチック材料を堆積させる手段を備えていて、スリーブの上面と一致する平面よりも上に堆積されるプラスチック材料の量が、その材料の全量の20%〜40%となるようにされている、ことを特徴とする。
【0012】
前記平面よりも上にある材料とその平面よりも下にある材料の比は、約30/70であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、一実施態様とそれに関係する図面の説明からよりよく理解できよう。
【0014】
図1は、静止状態の鋳型の下部を示している。鋳型の下部は金型ユニットと呼ばれ、チューブ頭部の外側部分を形成することになる肩部金型6と、ネジ山を鋳型から外せるよう複数の部分からなるネジ山金型7と、この装置の対称軸線上にあってこの軸線Aに沿って並進移動できるスリーブ8とを有する。スリーブ8は、行程を2つのストッパ部9と10の間に制限する第1の肩部8aを有する。
【0015】
金型ユニットは、肩部にオリフィスを形成するのに用いるオリフィス形成用ロッド11も備えている。オリフィス形成用ロッド11は下部に突起部24を備えており、スリーブ8の中を滑ることができる。オリフィス形成用ロッド11の行程は、突起部24と、スリーブの表面に設けられたストッパ部12とによって高位置が制限されている。オリフィス形成用ロッド11の行程は、止めピン13(例えば円筒形)と、スリーブの表面に設けられたストッパ部14とによって低位置も制限されている。ストッパ部14は、スリーブ8に設けられた細長い穴8bの下壁によって形成されている。止めピン13は、ロッド11に設けられた穴の中に垂直に配置(例えば押し嵌め)されていることが好ましい。この止めピンにより、ロッド11とスリーブ8の軸方向の相対的な移動を明らかに阻止することができる。この阻止は、所定量の材料が堆積された後にマンドレルがロッドの上面と接触して肩部を形成する上で特に重要である。バネを用いた公知のシステムでは、このような状態のとき、特にこの方法で圧縮成形される材料の効果により、ロッドはまだ移動することができる。そのためオリフィスが塞がったり変形したりするという欠陥が生じる。あるいはスリーブ8の外形と同じ直径のオリフィスになる。
【0016】
図1Aは図1の装置の一変形例を示しており、オリフィス形成用ロッド11の突起部24が省略され、上方ストッパ部23は、円筒形止めピン13が細長い穴8bの上壁と接触することによって実現されている。この変形例は、製造が非常に簡単であるという利点を持つ。2つのストッパ部14、23のために1つの止めピンだけを用いることで、装置の構造が単純化される。
【0017】
スリーブ8とオリフィス形成用ロッド11の相対的な移動は、オリフィス形成用ロッド11に作用するバネや空気ジャッキなどのアクチュエータ(図示せず)によって実現される。
【0018】
図2と図3には、溶融した所定量のプラスチック材料を堆積させるステップを示してある。金型6の上方に位置していてスリーブ8と同軸の分量決定ノズル1が、溶融した所定量のプラスチック材料3を形成する。分量決定ノズル1は、公知の押し出し装置(図示せず)から材料を供給される。
【0019】
図2では、アクチュエータ(図示せず)によって生じる直線状の行程を弁2が移動する。このようにすると、通路4を通過させて環状の材料3を形成し、その環状材料をスリーブ8の上面16と周辺部17に堆積させることができる。
【0020】
図3では、その後アクチュエータが弁3を逆方向に移動させる。すると出口となる通路4が閉まる。所定量のプラスチック材料は、通路5を通じてガスを吹き付けることによって切断されて分離する。
【0021】
図3に示されているように所定量のプラスチック材料3がスリーブ8の上に正しく堆積されるようにするためには、すなわち所定量のプラスチック材料3がスリーブ8の上面および周辺部17と接触するようにするためには、以下の複数の条件が合わさる必要がある。
− オリフィス形成用ロッド11の上面15とスリーブ8の上面16の距離は、成形される部材(チューブ頭部)の対応する壁部の厚さよりもわずかに厚くなければならない。
− 弁2は、分量決定ノズルの開放段階にはオリフィス形成用ロッド11の上面15に非常に近いか接触せねばならない(接触することが好ましい)。
− 弁2の直径は、スリーブ8の直径に合わせて選択される。例えば直径D2=14.5mmのスリーブでは、弁の直径はD1=13mmである。分量決定ノズルの出口で材料が広がることで、その材料の下部がノズルを通過してスリーブの周辺部の上に13mmの距離にわたって存在することができ、弁は7mmの行程を実現する(図2)。分量決定ノズルが閉じられると、弁は逆の行程を移動するが、スリーブ8に対する材料の位置は変化しない。材料は短時間の空気ジェットによって分量決定ノズルから離れ、材料の上部がスリーブ8の上面に押しつけられる(図3)。最終的に、材料の約75%の高さがスリーブの周辺部に位置し、約25%がスリーブの上面よりも上に位置する。これは、材料の塊の20〜40%がスリーブの上面と一致する平面20よりも上に位置し、それに対応して80〜60%がその平面よりも下に位置することを意味する。
【0022】
本発明の場合には、材料はスリーブ8(上面16と周辺部17)の上に堆積される。したがって材料はうまく中心に位置し、道具が運動するときに移動しない。そのため成形の欠点が取り除かれることになる。ところでチューブの直径が同じでオリフィスの直径が変化する場合には、分量決定弁の直径を同じに維持することができる。なぜならスリーブ8の直径は同じに留まるからである(図4の小さなオリフィス(D5)、図5の大きなオリフィス(D6)を参照)。化粧品チューブの製造工場では、1つのラインで常に同じ直径の1種類のチューブを製造するが、オリフィスの直径は頻繁に変更される。したがって本発明により、道具の交換時間を節約することができる。なぜならこのようにすると、分量決定ノズルの直径の変更と、分量決定ノズルの新たな調整が回避されるからである。また、このようにすると、いろいろな直径のチューブを製造するのに必要な異なる直径の分量決定ノズルの数を少なくできる(例えば以前は異なる6つの分量決定ノズルが必要であった場合に、新しい方法では異なる3つの直径しか必要でなくなる)。
【0023】
図6に示した次のステップでは、金型ユニットと呼ばれていて金型6を有する鋳型の下部が分量決定ノズル1を離れてしまっており、マンドレル18が上方にあって分量決定ノズルの中心に位置している。チューブの円筒形本体19がマンドレル18の表面に取り付けられている。マンドレル18は金型6に向かって移動し、オリフィス形成用ロッド11の上面15と接触する。するとマンドレル18は、オリフィス形成用ロッド11とスリーブ8からなる集合体をスリーブ8がストッパ部10にぶつかるまで移動させる(図7参照)。この移動中に円筒形止めピン13は下方ストッパ部14と接触できるようになる。そのためマンドレル18の下面がスリーブ8の上面16とは決して接触しないことが保証される。この移動が終わると、スリーブ8の突起部8aがストッパ部10と接触する。オリフィス形成用ロッド11の上面15は常にマンドレル18と接触した状態になり、止めピン13はストッパ部14と接触しない。この構成は、オリフィス形成用ロッド11の周囲にチューブのオリフィスをうまく形成できるという利点を有する。プラスチック材料3は徐々に変形して金型ユニットとマンドレル18によって形成される隙間に満たされ、チューブ19の本体の端部に接合される。この全体は、冷却段階を通じて加圧された状態が維持される。
【0024】
図8は、図3に示したのと同じ装置、同じ構成を示しているが、材料3をスリーブ8の上に堆積させる方法だけが異なっている。
【0025】
所定量のプラスチック材料3は、スリーブ8の上面16と側壁17の両方の上に存在する。
【0026】
スリーブ8の側壁17に沿って、またはその延長線上に堆積されるプラスチック材料の量は、スリーブ8の上面16よりも上に堆積されるプラスチック材料の量よりもはるかに多い。
【0027】
しかしスリーブ8の上面16よりも上にプラスチック材料が存在していることには複数の利点がある。それは特に、材料3が所定の位置にうまく保持されることである。したがって材料3がスリーブ8に沿ってあまりに早く下がるリスクがなくなる。ここで、このリスクが特許文献1に開示されている装置に存在していることを指摘しておく。なぜならこの特許文献1では、材料全体がスリーブの側壁上に位置しているからである。
【0028】
驚くべきことに、スリーブ8の上面と一致する平面よりも上と下にそれぞれ位置する領域にプラスチック材料をある方法で分配すると、成形される製品の品質が向上することが確認された。より詳細には、平面20よりも上にあるプラスチック材料22の量が材料3の全量の20〜40%であり、それに対応して平面20よりも下にあるプラスチック材料21の量が材料3の全量の80〜60%であるとき、成形された製品の品質が向上する。上方の質量/下方の質量の比は、約30/70であることが好ましい。
【0029】
本発明が上に示した実施例に限定されないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】鋳型の下部である金型ユニットを示している。
【図1A】図1の実施態様の一変形例である。
【図2】鋳型の下部に所定量のプラスチック材料を形成するために開いている分量決定ノズルを示している。
【図3】閉じた分量決定ノズルと、鋳型の下部に配置された材料を示している。
【図4】図3に対応しているが、小さな直径のオリフィス形成用ロッドになっている。
【図5】図3に対応しているが、大きな直径のオリフィス形成用ロッドになっている。
【図6】圧縮段階の開始時期におけるマンドレルと金型ユニットを示している。
【図7】圧縮段階の終了時期を示している。
【図8】所定量の材料をスリーブの上に堆積させる方法を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の所定量のプラスチック材料(3)を鋳型の2つの部分の間で圧縮することによってプラスチック材料からなる製品を成形する装置であって、
少なくとも1つのプラスチック材料供給源(1)と、
所定量のプラスチック材料(3)を一時的に支持することが可能であって上面(16)および側壁(17)を有するスリーブ(8)の中を滑動するロッド(11)と、
製品の頭部を形成するための鋳型(6、7)と、
その鋳型(6、7)と協働するマンドレル(18)と、を備える、
ものにおいて、
前記スリーブ(8)の上に前記所定量のプラスチック材料を堆積させる手段(1、2)を具備し、
前記スリーブ(8)の上面(16)と一致する平面(20)よりも上に堆積されるプラスチック材料(22)の量が、その材料(3)の全量の20%〜40%となるようにされている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記平面(20)よりも上にある材料(22)とその平面(20)よりも下にある材料(21)の比が、約30/70である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置と、前記スリーブ(8)の自由端の上に一時的に堆積された所定量のプラスチック材料(3)とからなる集合体であって、
平面(20)よりも上に堆積されるプラスチック材料(22)の量が、その材料(3)の全量の20%〜40%である、
ことを特徴とする集合体。
【請求項4】
前記平面(20)よりも上にある材料(22)とその平面(20)よりも下にある材料(21)の比が、約30/70である、ことを特徴とする請求項3に記載の集合体。
【請求項5】
請求項1または2に記載した装置を用いて所定量のプラスチック材料(3)を成形する方法であって、その材料(3)を、前記スリーブ(8)の上面(16)と一致する平面(20)よりも上に堆積されるプラスチック材料(22)の量が、その材料(3)の全量の20%〜40%であるようにして前記上面(16)と前記側壁(17)の上に堆積させる、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記平面(20)よりも上にある材料(22)と、その平面(20)よりも下にある材料(21)の比が、約30/70である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図1.A】
image rotate

【図1.B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−535246(P2009−535246A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508575(P2009−508575)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051513
【国際公開番号】WO2007/125481
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508053821)エイサパック ホールディング ソシエテ アノニム (16)
【Fターム(参考)】