説明

溶融金属の温度計測方法及び装置

【課題】溶融金属の実効放射率が変動およびランス先端の開口部へのメタルの付着などの外乱要因により入射光の光量が変動しても正確な溶融金属の温度計測ができる溶融金属の温度計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ランス先端の送酸孔部を直接観察可能な位置に計測孔(窓)6を設け、耐圧ガラスによる計測窓が形成され、計測孔(窓)部に光学分岐手段7を設置し、ランス先端から入射し計測孔に伝播した光を2分岐している。分岐された光の一方は、撮像用レンズ8およびCCDセンサ(カメラ)9により構成される撮像手段に入力され、ランス先端の送酸孔部の撮像を行い、光学分岐手段7の他方の光は、分光計測センサ13の受光部12に入射され、入射光の分光輝度計測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送酸ランスを使用した吹錬プロセスにおける溶融金属の温度計測方法及び装置に関するものであり、特に転炉、溶銑予備処理等の溶銑・溶鋼の精錬プロセスにおける、溶銑・溶鋼の温度計測方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転炉製鋼における吹錬プロセス、溶銑予備処理における鍋処理等では送酸ランスを使用し、溶銑に対して酸素ジェットを吹き付けることにより溶銑中の炭素や珪素等を酸化(燃焼)させることにより溶銑の成分調整を行うとともに、次工程処理に最適な溶銑・溶鋼温度への調整を行っている。
吹錬の最中に断続的なサンプリングによる溶銑成分および温度の計測を行うことは可能であるものの、サンプリングを頻繁に行うことはコスト面、操業効率の面から現実的ではない。このため、実際の吹錬プロセスにおいては、吹錬開始前の溶銑の成分、温度、溶銑量等と、送酸ランスからの送酸量、ランス位置、送酸時間等から吹錬中の溶銑成分、温度の推移を計算、推定し、操業終了時の溶銑成分が所定の要求される成分、温度になるように操業の制御を行い、所定の成分、温度に到達したと判断された時点で吹錬を一端中断し、この時点での測温、成分サンプリング結果から吹錬の継続の有無を判断している。
【0003】
しかしながら、吹錬条件が同一な場合でも、吹錬に伴う反応のバラツキ等により、吹錬終了時の溶銑成分、温度にはバラツキが発生し、成分・温度調整の為の再吹錬等が必要となり、操業コスト、操業効率のロスが発生している
これに対する従来の技術としては、例えば、特開昭60−61633号公報(特許文献1)および特開昭60−129628号公報(特許文献2)に開示されている技術がある。吹錬中の溶銑温度をオンラインで計測し操業を適切に制御する技術であり、炉体(炉底等)ノズル等を介して、溶銑・溶鋼から放射光を計測し、溶銑・溶鋼温度をオンラインで計測する方法である。さらに、特開昭62−226025号公報(特許文献3)では、吹錬中のランスの先端から入射する放射光を計測することにより、ランス先端の火点の温度を計測する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭60−61633号公報
【特許文献1】特開昭60−129628号公報
【特許文献1】特開昭62−226025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融金属或いは火点からの放射光を計測し、温度を計測(算出)する方法に関しては、溶融金属からの放射光を計測する際に、溶融金属の実効放射率の変動により、正確な温度を計測することは困難であるという問題がある。
【0005】
また、従来の温度計測では、ノズル(ランス)内に装入された光ファイバ等により、ノズル先端の開口(送酸孔)から入射する光を検出していたが、ランス先端の開口部へのスラグ、メタルの付着やヒュームの発生等の外乱要因により入射光の光量が変動した場合、溶銑の温度変動による変動であるのか、外乱による変動であるかを判別することが出来ない為、正確な温度を計測できないという問題がある。
【0006】
更に、従来の放射温度計測方法では、ランスやノズル内部に光ファイバを挿入、敷設し、放射光の計測を行う必要であるため、設備構造が複雑となるとともに、炉体自体へのセンサ、ファイバ等の設置が必要となる為、溶銑予備処理等において用いられる移動鍋等には適用が困難である。そして、設置したとしても、炉体の温度上昇やダクト等周辺構造物からのスラグ等の落下物により、センサ、ファイバ等の破損等が発生する確率が高く、メンテナンスも容易ではないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、溶融金属の実効放射率が変動およびランス先端の開口部へのメタルの付着などの外乱要因により入射光の光量が変動しても正確な溶融金属の温度計測ができる溶融金属の温度計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、送酸ランスを使用した吹錬プロセスにおいて、吹錬操業中に前記ランスからの送酸の一時的な停止または送酸量を減少しての吹き込み操作、あるいは酸素の吹き込みを非活性ガスまたは酸素と非活性ガスとの混合気体に切り替えて吹き込み操作を行い、該操作中に前記ランス先端から入射する放射光の輝度にもとづいて、溶融金属の温度を計測することを特徴とする溶融金属の温度計測方法である。
【0009】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の溶融金属の温度計測方法において、前記放射光の輝度は、前記ランス先端を撮像する画像撮像手段で計測される画像から判別した送酸孔から入射する放射光の輝度情報から得る、または分光計測手段により計測される放射光の分光放射輝度情報から得ることを特徴とする溶融金属の温度計測方法である。
【0010】
また本発明の請求項3に係る発明は、請求項1記載の溶融金属の温度計測方法において、前記放射光の輝度は、前記ランス先端を撮像する画像撮像手段で計測される画像から判別した送酸孔から入射する放射光の状態判別を行い、分光計測手段により計測される放射光の分光放射輝度情報を補正して得ることを特徴とする溶融金属の温度計測方法である。
【0011】
また本発明の請求項4に係る発明は、請求項3記載の溶融金属の温度計測方法において、前記撮像画像中の輝度の高い部分を放射光が入射する送酸孔部に相当する部分として識別するとともに、該識別した送酸孔部に相当する部分の面積及び輝度分布から入射する放射光の光量変化を推定し、分光計測手段により計測される分光放射輝度情報の補正を行うことを特徴とする溶融金属の温度計測方法である。
【0012】
また本発明の請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の溶融金属の温度計測方法において、前記溶融金属は、溶銑または溶鋼であることを特徴とする溶融金属の温度計測方法である。
【0013】
また本発明の請求項6に係る発明は、送酸ランスを使用した吹錬プロセスにおいて、吹錬操業中に前記ランスからの送酸の一時的な停止または送酸量を減少しての吹き込み操作、あるいは酸素の吹き込みを非活性ガスまたは酸素と非活性ガスとの混合気体に切り替えて吹き込み操作を行い、該操作中に前記ランス先端から入射する放射光の輝度にもとづいて、溶融金属の温度を計測することを特徴とする溶融金属の温度計測装置である。
【0014】
また本発明の請求項7に係る発明は、請求項6記載の溶融金属の温度計測装置において、前記輝度計測手段は、前記ランス先端の送酸孔部を撮像する画像撮像手段、および/または前記送酸孔から入射する放射光を分光計測する分光計測手段であることを特徴とする溶融金属の温度計測装置である。
【0015】
また本発明の請求項8に係る発明は、請求項7記載の溶融金属の温度計測装置において、前記ランス先端の送酸孔が目視可能な開口(窓)と、放射光を前記画像撮像手段と前記分光計測手段へ分岐する光分岐手段とを有することを特徴とする溶融金属の温度計測装置である。
【0016】
また本発明の請求項9に係る発明は、請求項7または請求項8記載の溶融金属の温度計測装置において、前記分光計測手段は、透過波長可変フィルターとイメージセンサにより構成されることを特徴とする溶融金属の温度計測装置である。
【0017】
さらに本発明の請求項10に係る発明は、請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の溶融金属の温度計測装置において、前記画像撮像手段は、入力輝度レベルと、対応する画像上の輝度レベル間の変換特性を任意に調整・設定できる機能を有することを特徴とする溶融金属の温度計測装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ランス先端部へのメタル、スラグ等の付着やヒュームの発生等の外乱要因の影響を抑制し、溶融金属の温度を正確に計測することが可能となる。また、ランス上部に計測手段を設置するので、装置構成が簡易であり、ランス内部へのファイバの挿入や、炉体本体に対してのセンサ等の設置が不要であり、機器の設置、メンテナンスが容易であるという効果がある。また、送酸の一時停止・減少或いは非活性ガスへの一時的な切替えなどの操作を行うことにより温度計測が可能であるので、転炉サブランス等による消耗型のプローブを使用した測温に対して、サブランス挿入のための吹錬の中断等による操業ロスを抑制するとともに、計測に掛る消耗品(プローブ)のコストを削減できるという効果もある。さらに、ステンレス精錬等の吹錬のように非活性ガスと酸素を混合し、希釈送酸を行い、特に吹錬末期においてランスからの酸素量を減少させるプロセスにおいては、連続的な溶銑温度のモニタを可能にし、吹錬末期の制御を精密に行うことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による火点放射計測方法では、転炉精錬プロセス、溶銑予備処理プロセス(鍋吹錬)等のランスを使用した吹錬プロセスにおいて、ランス上部にランス先端の送酸孔部を撮像する手段と、送酸孔から入射する放射光を分光計測する手段を有し、ランス先端の送酸孔の前方に存在する熱放射源からの放射光を画像として撮像するとともに、送酸孔から入射する放射光の分光輝度を計測する。
【0020】
通常のランスによる送酸を行っている状態では、ランス前方には火点が生成され、酸素と溶銑・溶鋼中の炭素、珪素等との燃焼反応(脱炭、脱珪等の反応)が発生する。この時、ランス前方には火点及び溶銑・溶鋼(及びスラグ)が存在し、それぞれからの放射光がランス先端の送酸孔から入射するが、送酸を行っている状態では、火点部の温度が非常に高い(反応に伴う発熱が大きい)ため、計測される放射光輝度は火点からの放射が支配的となる。
【0021】
本発明では、吹錬中にランスからの送酸の一時的な停止・減少或いは、非活性ガスへの切替え(或いは酸素非活性ガスとの混合)を行うことにより火点における反応を一時的に抑制するので、ランス先端の送酸孔から入射する放射光はランス前方に存在する溶銑・溶鋼からの放射光が支配的となり、ランス上方に設置した計測手段により溶銑・溶鋼からの放射光の撮像、分光輝度計測が可能となり、計測した放射光(輝度)情報から溶銑・溶鋼の温度を算出、推定することが可能となる。
【0022】
溶銑溶鋼からの分光放射光輝度Lは、(1)式に示すプランクの放射則により表される。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、εは溶鋼の放射率、λは波長、hはプランク定数、kはボルツマン定数、Cは光速、さらにC1はC2h、C2はCh/kをそれぞれ表す。
また、λT<3000μmKの場合には、(2)式に示すウイーンの公式で表すことも出来る。
【0025】
【数2】

【0026】
対象となる溶鋼の放射率が既知であれば、分光放射輝度を計測すれば温度を算出することが可能である。また、温度が既知の場合の放射光輝度を計測すれば、(3)式に示すように放射光輝度の変化から温度の変化量を算出することが可能である。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、TおよびTは温度、Lは温度Tにおける放射光輝度、Lは温度Tにおける放射光輝度をそれぞれ表す。
【0029】
計測上、溶銑・溶鋼の放射率自体が変動すると温度計測精度が悪化することが考えられるが、実際の放射光計測による温度計測では、計測条件、外乱要因等により決まる見掛けの放射率変動の影響(計測される放射光の変動)が大きい。本発明でも、一時的な送酸の停止・減少を行い、溶銑・溶鋼からの放射光を計測した場合には溶銑・溶鋼面の変動(波打ち)、溶融スラグの有無等により溶銑・溶鋼面の見掛けの放射率が変動する可能性がある。
【0030】
しかし、非活性ガスへの切替え或いは、非活性ガスとの混合による吹錬を行った場合には、ランスからのガス流(圧力)により溶鋼・溶銑表面の形状が安定した状態に変化するので、ランス先端と溶鋼・溶銑面との相対的な位置関係が定常状態に保たれるとともに、比重の軽い溶融スラグはガス流の圧力により周辺部に押しやられ、ランス(送酸孔)前方には溶鋼・溶銑のみが存在する状態となり見掛けの放射率変動を抑制し、より安定した放射光の計測を行い温度計測を実現することが出来る。
【0031】
本発明では、送酸の一時的な停止・減少或いは、非活性ガスへの切替え(或いは酸素非活性ガスとの混合)を行い、ランス先端の送酸孔に溶銑・溶鋼からの放射光が入射する状態で、ランス上部の撮像手段による送酸孔部の撮像を行うとともに、分光輝度計測手段により放射光の分光輝度の計測を行っている。
【0032】
撮像手段による送酸孔部(入射放射光)の撮像画像から入射放射光の輝度を計測し、温度を算出すること或いは入射放射光の分光放射輝度を計測し、特定波長の分光放射輝度情報或いは、複数波長の放射輝度情報を用いて、溶銑・溶鋼の温度を算出することはそれぞれ単独で実施可能である。
【0033】
撮像手段、或いは分光輝度計測手段による単独の計測では、溶銑・溶鋼の放射率変動が生じた場合や、溶銑・溶鋼温度変化以外の外的要因でランス先端の送酸孔から入射する放射光量が変動した場合、算出、推定温度の誤差を生じる可能性がある。
【0034】
このため、本発明では撮像手段及び分光輝度計測手段による計測を同時に行い、撮像手段によるランス先端部の画像上での送酸孔部分(放射光入射部分)の面積を評価することにより、ランス先端(送酸孔部)へのスラグ、メタル等の付着による送酸孔部の閉塞や、開口面積の減少の判別を行うとともに、画像上の送酸孔部の輝度分布(2次元分布)を評価することによりヒューム等の影響による入射光の減少等の放射光の送酸孔からの入射状態(入射光量の変化)を判断し、この撮像画像から判断される放射光の入射状態(入射光量の変化)の情報を用いて、分光輝度計測手段により計測した分光輝度を補正することにより、外的要因による入射光量の変動を抑制し、正確な温度の推定・計測を可能とする。
【実施例】
【0035】
本発明の実施例の構成を、図1に示す。図1は、転炉形状の炉体における実施の一例を示すが、鍋吹錬形式の溶銑予備処理等においても同様に実施可能であり、更に、他の送酸ランスを使用するプロセスにおいても適用可能である。
【0036】
図中、1は炉体、2は溶銑(溶鋼)、3は火点、4は送酸ランス、5は分岐管、6は計測孔(窓)、7は光学分岐手段、8は撮像用レンズ、9はCCDセンサ(カメラ)、10は集光用レンズ、11は拡散板、12は受光部、13は分光計測センサ、14はケーブル、15は信号処理装置、16は酸素ホース(配管)、および17は冷却水ホース(配管)をそれぞれ示す。
【0037】
転炉形状の炉体1の内部には、溶銑(溶鋼)2が保持され、成分調整のためにそれに向かって送酸ランス4から酸素ジェットを吹き付けると、送酸ランス4の先端に火点3が形成する。高温から送酸ランス4を守るため、循環用の冷却水ホース(配管)17が送酸ランス4に付設されている。そして、送酸ランス4の上端部にはランス内管の分岐管5が設けられており、その一方には、酸素ジェット用の酸素ホース(配管)16も付設されている。さらに、もう一方には、ランス内管(送酸管)を介してランス先端の送酸孔部を直接観察可能な位置に計測孔(窓)6を設け、耐圧ガラスによる計測窓が形成されている。そして,計測孔(窓)部に光学分岐手段7を設置し、ランス先端から入射し計測孔に伝播した光を2分岐している。本実施の形態では、光学分岐手段としてはハーフミラー(ビームスプリッタ)及びミラーにより構成される光学系を示しているが、プリズム等他の手段による分岐を使用することも可能である。
【0038】
光学分岐手段7により2分岐された光の一方は、撮像用レンズ8およびCCDセンサ(カメラ)9により構成される撮像手段に入力され、ランス先端の送酸孔部の撮像を行う。本実施例では、ランス長(先端〜計測孔間距離)約13m、内管直径約70mmのランスに対し、焦点距離400mmの撮像レンズを取付けたCCDカメラを用いることにより、ランス先端部位置で280×350mm相当程度の視野範囲を観察するものとし、先端部の送酸孔(φ25mm×4孔)が画像中央部分にくるように光学分岐手段及びカメラを設置し、撮像を行っている。
【0039】
本実施例では、CCDカメラとして、通常のCCDカメラに対してダイナミックレンジの広いCMOS−CCDセンサ(カメラ)を使用している。図2は、CMOS−CCDセンサの特性を説明する図である。従来のCCDカメラが、カメラに対する入射輝度と撮像画像中の輝度との関係が線形であるのに対して、CMOS−CCDセンサは、高輝度光入射時或いは低輝度光入射時の画像輝度への変換特性が緩やかな特性を有している。溶銑、溶鋼や火点からの放射光のように、高温、高輝度の光が入射、変動した場合でも画像輝度の飽和、画像のハレーション等を生じない為、画像上の送酸孔部を的確に識別し、入射光状態を判別することが可能である。
【0040】
本実施例では、撮像センサとして、CMOS−CCDセンサを利用したが、従来型のCCDカメラと撮像レンズの組合せにおいて、レンズ絞りの自動調整機構や、シャッタ速度の制御機構を設けることによりセンサへの入射輝度レベルの調整や、カメラ感度の調整を行い、撮像画像及び調整機構での調整量から入射光状態を判別するものとし、実質的に広い入射光範囲に対応することも可能である。
【0041】
また、光学分岐手段7の他方の光は、分光計測センサ13の受光部12に入射され、入射光の分光輝度計測を行う。分光計測センサ13に対しては、分岐手段通過後の光(ランス先端からの伝播光)を直接入力することも可能であるが、本実施例では、集光用レンズ10による光の集束及び拡散板11による光の拡散を行うことにより分光計測センサ13への入力を均一化するようにしている。
【0042】
本実施例では、分光計測センサとしては、図3に示す、LVF(Linear Variable Filter)18及びSSGC(Stainless Steel Grating Collimator)19及びイメージセンサ20により構成される小型、軽量の分光センサを使用しているが、回折格子等を使用した分光計測機器等も同様に適用可能である。本実施例で用いた分光計測センサで用いるLVF18は、透過波長特性が1次元方向に分布している板形状プリズム(フィルタ)であり、均一な光を入射すると、LVFの透過位置に応じた波長の光が得られる透過波長可変フィルターである。イメージセンサ前面のLVFに光を入射すると、イメージセンサを構成する素子には、対応する位置のLVFの波長特性に応じた光信号が入力され、イメージセンサの出力として入射光輝度の波長分布が得られる。また、SSGC19は、SUS薄板で作られたコリメータであり、波長間の干渉等の影響を低減する為、LVF18とイメージセンサ20の間に挿入している。
【0043】
分光計測センサの特性は、LVFの特性及び、イメージセンサの特性により決まり、本実施例では600〜1100nmの波長域の分光計測が可能な構成の分光センサを使用したが、測定対象等により他の構成のLVF及びラインセンサを使用し、計測波長域、計測波長分解能等を選定することも可能である。また、本実施例では、光学分岐手段7、画像撮像手段(CCDカメラ、レンズ部)及び分光計測センサ13など図1で四角で囲った部分はカバー内に収納し、粉塵等の影響を受けないようにしているが、環境に応じて更にエアパージ、冷却等を行うことも可能である。
【0044】
送酸ランスからの送酸条件を変化させた場合に、ランス上方で計測される画像輝度の変化例を、図4に示す。ランスからの送酸を酸素から不活性ガス(窒素)に切替えることにより、ランス先端部の火点での反応が抑制(停止)すると、送酸時に計測される火点からの放射光輝度に対して計測される輝度レベルが減少し、溶銑・溶鋼からの輝度を安定し計測することが可能となる。同時にサブランスによる溶銑温度の計測を行った結果も表示しているが、送酸により次第に上昇していた溶銑温度が、窒素に切り替えることにより下降しているのが見て取れる。実際の操業においては、吹錬末期に不活性ガスへの切替え或いは送酸の一時停止・減少を行う時間を短時間にすることにより、操業効率を落とすことなく、溶銑・溶鋼の温度を計測し、吹錬の終了タイミングを制御することが可能となる。
【0045】
撮像された画像は、画像(ビデオ)信号としてケーブル14を介して、信号処理装置15に入力される。信号処理装置上では入力画像に関して、画像処理を行うことにより、温度の算出や送酸孔部から入射する放射光の変動の算出、検出を行う。本実施例により撮像した画像例を、図5に示す。明るい部分は、ランス先端の4つの送酸孔からの入射光を表している。図5(a)は通常の画像を示し、図5(b)は左上の送酸孔がメタル、スラグ等の付着した時の画像(左上の明部が小さくなっている)を示している。
【0046】
図6は、画像撮像手段により温度を算出する場合の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。図に基づき、信号処理手順を以下に説明する。先ず、実際の計測に先立って、撮像画像の情報から実際の送酸孔部から入射する放射光輝度の情報を得るための校正、基準計測を行う。Step01では、撮像画像から実際の送酸孔部から入射する放射光輝度の情報を得るため、画像撮像手段(CCDカメラ)を用い予め、校正炉や模擬光源等の放射光輝度を任意に調整できる放射光源を使用し、実際にCCDカメラに入射する放射光輝度の変化と、撮像画像上の輝度情報変化との対比を記録し、入射輝度−画像輝度の関係を把握しておく。
【0047】
次にStep02では、実際に撮像手段をランスに取付けた状態で、溶銑、溶鋼からの放射光を撮像し、その時の実際の溶銑、溶鋼温度を測定し、温度算出の基準となる入射光輝度と温度との関係を記録しておく。これらの校正、基準計測データを用いれば、画像輝度から入射光輝度を算出し、その入射光輝度から溶銑・溶鋼の温度を算出することが可能となる。
【0048】
これらStep01および02の校正、基準計測作業はランスへの設置条件やランス自体の形状等の計測条件や、画像撮像手段の設定(絞り、シャッタ速度、フィルタ等の変更)による画像撮像条件が変化しない限り一度実施すればよい。
【0049】
実際の計測においては、ランスに設置した画像撮像手段による撮像を繰り返し行い、温度計測(算出)(図6の右側の処理)を行う。そして、実際の処理としては、先ず撮像された画像上の送酸孔部の輝度算出を行う。この時、撮像画像上の送酸後部の位置が固定されていれば当該個所の輝度を画像情報から読み取ればよいが、実際には振動等の影響により画像上の送酸孔部の位置に変動が発生する場合があるので、画像上の送酸孔部の抽出を行う。
【0050】
図6のStep03で示す撮像した元画像の2値化を行うことにより、相対的に輝度の高い送酸後部のみが明部となる画像を作成する。この画像上の明部の位置が送酸孔部であり、元画像上の同一位置の画像情報を抽出することにより送酸孔部の画像上の輝度を算出することができる。この2値化を行う場合の基準値は、あらかじめ適切な値を設定するか、撮像画像の輝度分布、最大輝度値、最小輝度値等の情報から算出する。
【0051】
また、送酸孔部の輝度算出においては、送酸後部が画像上では一定の面積を有しており、送酸孔部内での画像輝度のばらつきも存在することから、送酸後部に相当する範囲の画像輝度データの平均の算出、あるいは最大値検出等を行い、送酸孔部の画像輝度の代表値を決定する(Step04)。
【0052】
次に、校正、基準計測により記録された画像輝度−入射輝度の関係から、送酸孔部の輝度の代表値を換算し、送酸後部から入射する放射光輝度を算出する(Step05)。
【0053】
次に、校正、基準計測により予め記録した入射光輝度−溶鋼温度の対比データを用いて溶鋼温度の算出を行う(Step06)。
【0054】
ここで、予め記録した際の溶鋼温度をT0、入射光輝度をL0とし、計測した画像からの換算を行った結果得られた入射光輝度をL1とすると温度T1は、先に上げた(3)式で算出される。ここでは、校正、基準計測時と実際の計測時の溶銑・溶鋼の放射率は同一であり、さらに計測条件、画像撮像条件は同一であり、見掛けの放射率も同一であるものとしている。画像撮像手段を用いた温度計測では、連続して撮像される画像毎に送酸孔部の輝度算出、温度算出を行うことにより連続した温度計測を行うことができる。図7に、上記一連の処理手順で得られる画像の一例を示す。図7(a)は、処理前の元画像を、(b)は、2値化処理をした画像を、(c)は、送酸孔部を抽出した画像をそれぞれ示している。
【0055】
分光計測センサにより分光放射光輝度から温度を算出する際にも、基本的には同様の手順で行う。図8は、分光計測センサを用いた温度計測の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。分光計測センサによる温度計測においても、実際の分光輝度計測結果とセンサ出力との関係を把握するため、校正・基準計測を行う。
【0056】
分光計測センサでは入射光輝度だけでなく、センサに入射する光量によりセンサ出力が変化するため、実際の計測時と同様に、ランスに分光センサを設置した状態で計測を行う必要がある。これは、ランスの形状(ランス内径、送酸孔形状・寸法)等により送酸後部から入射し、分光計測センサに入射する光量が変化するためである。実際のランスに取り付けての校正・基準計測が困難な場合には、同等の形状、寸法を有する模擬ランス等を用いて計測を行う。
【0057】
Step11では先ず、入射光輝度と分光センサによる計測出力との対比を計測・記録するためランス先端部に分光放射特性が既知の光源(放射率が1の校正炉等が望ましい)を設置し、光源の分光放射特性と実際の分光計測センサの出力を計測・記録する。計測は光源の放射輝度を変化させ数点で行い(校正炉を使用する場合には温度を変化させる)、入射光輝度の変化に対する分光計測センサの出力特性を記録する。
【0058】
Step12では、Step11と同様に実際のランス(或いは模擬ランス)に設置した状態で温度が既知の溶銑、溶鋼からの放射光の計測・記録を行う。Step11で校正炉を使用して分光センサの特性データを収集した場合には、Step12で計測を行った溶銑・溶鋼の温度に相当する特性データとの比較を行うことにより溶銑、溶鋼の放射率を算出することができる。ここで、溶銑・溶鋼の温度をTとし、温度Tでの校正炉を使用した際の分光センサによる計測輝度をI0(λ)とし、実際の温度Tの溶銑・溶鋼殻の放射光を計測した際の計測輝度をI1(λ)とすると、両者の比から溶銑、溶鋼の放射率(実際には光の伝播経路の影響等を含めた見掛けの放射率)が算出できる。
【0059】
Step13では、Step11とStep12で得られたデータから、溶銑・溶鋼の放射光を計測した場合の温度分光センサ出力の関係を求める。ここで、実際の温度計測において特定波長(単波長又は複数波)のデータを利用して温度の算出を行う場合は、特定波長での関係のみを求めればよい。
【0060】
実際の温度計測を以下に説明する。Step14において、実際の吹錬途中の送酸切替時に溶銑、溶鋼からの放射光を分光計測センサで計測する。
【0061】
Step15においては、計測したデータ中の特定波長の分光センサ出力(分光輝度計測データ)を抽出する。最後にStep16において、求めた温度、放射光輝度の関係から溶銑・溶鋼の温度を算出する。温度の算出においては、特定の単波長の分光放射光輝度の計測データから温度を算出することができるが、複数波長(2点)における分光輝度の計測データの比を算出することにより放射率の変動の影響を抑制することも可能である。
また、分光計測センサにより計測される分光スペクトルの形状から、入射光の変動の影響を抑制し、温度を算出することも可能である。
【0062】
画像撮像手段のみを用いた計測においては、撮像画像情報から、入射光輝度(温度)を算出するが、一般に画像撮像手段では、入射光の大きな変化に対してダイナミックレンジが十分に確保できず、画像上で輝度飽和を生じ、温度が正確に計測できない場合を生じる可能性がある。また、分光計測センサのみを用いた計測は画像撮像手段に対してダイナミックレンジは確保できるが、分光計測センサではセンサに入射する全光量を計測するため、ランス先端部にスラグ等が付着し、送酸孔の閉塞等が生じた場合、実際の入射光輝度が変化(減少)したのか、送酸孔の閉塞に伴う入射光量の変化(減少)による変化であるかの判別ができず、正確な温度計測ができない可能性がある。
【0063】
そこで、画像撮像手段と分光計測手段を組合せて計測を行うことにより、上記問題を解決し安定して温度計測を行う方法について述べる。ここでは、画像撮像手段では送酸孔部から入射する溶銑、溶鋼からの放射光状態(放射光の入射量)の検出を行う。
【0064】
撮像画像上では、送酸孔部はランス前方の溶銑、溶鋼から入射する放射光により高輝度領域となるので、信号処理装置では、撮像画像中の高輝度部(送酸孔部)を抽出し、送酸孔部の画像上の面積を算出・評価する。計測時に送酸孔部にメタル・スラグ等が付着し、送酸孔部の断面積が減少し入射光量が減少した場合には、信号処理装置では、画像上の送酸孔部の面積から、入射光量の減少量を推定算出する。
【0065】
付着がない場合の画像上の送酸孔面積をS0、付着があった場合の送酸孔面積をS1とすると、(4)式の係数Kを求めることにより、入射光量が減少していると推定される。
【0066】
K=S1/S0 ・・・・・・・・・・(4)
分光計測センサにより計測した分光放射輝度には、入射光量の減少に伴う変動(減少)が発生するが、信号処理装置では、分光放射輝度の変動が、溶銑・溶鋼の温度変動による放射輝度の変化では無く、外乱要因(ランス先端への付着)によるものと判断し、推定・算出した入射輝度の減少量をもとに分光放射輝度の計測データの補正を行う。
【0067】
分光計測センサによる計測輝度をI0とすると、入射光量の減少を補正した値I1(送酸孔部への付着がない場合の計測輝度の推定値)は、(5)式で表される。
【0068】
I1=I0/K ・・・・・・・・・・(5)
また、実際の撮像画像では、ヒューム等の影響により送酸孔部の輝度には空間分布があり、更に分布が時間的に変動している。分光計測センサによる計測では、送酸孔より入射する放射光の積算値を計測するので、ヒューム等の影響による輝度変動の影響を受けることになる。
【0069】
本実施例では、信号処理装置において、撮像画像上の送酸孔部の輝度分布から送酸孔部の入射輝度の平均値及び最大値を算出する。この時、送酸孔部における入射光に空間分布がなければ、入射輝度の平均値と最大値は同様の変化パターンを示すが、ヒューム等の影響により空間分布が発生した場合には、最大値の変動に対して、平均値の変動が大きくなる(輝度の低下量が大きくなる)ことから、入射輝度の平均値及び最大値の変動情報からヒュームの影響による平均値の変動量を推定算出し、分光計測手段による分光放射輝度の補正を行う。
【0070】
ヒュームの影響がなく、かつ送酸孔部の輝度分布がない場合には、送酸孔部のをIm0、送酸孔部の平均輝度をIa0とすると最大輝度と平均輝度の比R0(=Ia0/Im0)は、ほぼ1となる。計測中にヒューム等の影響による入射光量の減少が発生した場合、例えば、送酸孔面積の1/4の部分はヒュームの影響を受けず、送酸孔部の残りの部分の入射光輝度がヒュームの影響で1/2になったものとすると、送酸孔部の画像輝度の平均値Ia1は、ヒュームの影響を受けない部分の輝度(=最大輝度部分)をIm1とすると、(6)式で表される。
【0071】
Ia1=Im1×1/4+Im1×1/2×3/4=Im1×3/8・・(6)
実際のヒュームの影響による入射光量の減少は複雑な分布となるので、計測画像上の送酸孔部の最大輝度Im1と平均輝度Ia1の比R1(=Ia1/Im1)を計算し、この値を元に分光計測センサの計測輝度の補正を行う。
【0072】
また、本実施例に示したような多孔ランスの場合、各送酸孔からの入射光は均等ではなく、各送酸孔方向での反応状態、外乱による入射光の減衰により変動するため、分光計測手段による分光放射輝度もその影響を受け変動する。本実施例では、撮像画像上の各送酸孔部の画像輝度により各送酸孔からの入射光輝度レベルを比較し、送酸孔面積が正常であっても輝度が変動している送酸孔を特定し、それに伴う入射光全体の輝度変動量を推定し、分光放射輝度を補正することも可能である。
【0073】
図9は、画像撮像手段及び分光計測センサを組み合わせた温度計測の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。先ず、画像中の最大輝度と最小輝度の比を求め(Step21)、あらかじめ設定した基準値との比較を行う(Step22)。最大輝度値が基準値より小さい場合、或いは最小輝度値が基準値より大きい場合には、正常な火点放射光が撮像されていないものと判断し、処理を終える(Step29)。
【0074】
次に、2値化処理により画像中の高輝度部分すなわち送酸孔部の抽出を行う(Step23)。ここで、例えば、2値化処理による抽出を行う際の基準値は、あらかじめ定めておくか、画像中の最大輝度及び最小輝度等を考慮して決定する。
【0075】
次に、2値化等により抽出された送酸孔に相当する部分の画像上での面積の算出及び、送酸孔部を構成する画像画素毎の輝度を算出する(Step24)。この時、画像中に複数の高輝度部分が存在する場合には、高輝度部分の位置、大きさから送酸孔であるかどうかを判断する。判断基準としては、あらかじめ確認可能な画像上の送酸孔の想定位置及び想定面積(あるいは、前回処理時の送酸孔の位置及び面積)に最も近いものを送酸孔として判断する。
【0076】
次に、送酸孔部の画像上の面積をあらかじめ設定した基準値と比較し(Step25)、基準値に対して面積が小さい場合は、補正情報-1として(計測面積/基準面積)を計算する(Step26)。ここで、基準値に対して面積が大きい場合には、画像の一時的な変動等が発生しているものとして、補正値の算出は行わず処理を終える(Step29)。
【0077】
次に、抽出判断した送酸孔部分関して、輝度の最大値、最小値、平均値、分散を計算する(Step27)。送酸孔からの入射光は、溶鋼からの放射が均一であり、伝播経路も均質であれば、画像上の輝度のバラツキは少ないと考えられるが、伝播経路における飛散物、ヒューム等の影響により減衰が発生すると画像上の送酸孔部の輝度に分布が生じる。このとき、平均値と最大値の比率或いは、輝度の分散を補正情報-2として記録する(Step28)。
【0078】
図9の信号処理手順により得られた補正情報-1、2を利用し、分光計測手段により計測した分光放射光輝度の情報を補正し、温度算出を行う。本実施例では、画像処理として、図6、図9に示す様な処理を行ったが、同等の結果が得られるのであれば処理の手順等は異なっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例の構成を示す図である。
【図2】CMOS−CCDセンサの特性を説明する図である。
【図3】分光計測センサの構成、機能を示す図である。
【図4】計測した放射光輝度の計測結果の一例を示す図である。
【図5】撮像した、ランス先端送酸孔部画像の一例を示す図である。
【図6】温度を算出する場合の信号処理手順の一例を示すフローチャートを示す図である。
【図7】図6の一連の処理手順で得られる画像の一例を示す図である。
【図8】分光計測センサを用いた温度計測の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】画像撮像手段及び分光計測センサを組み合わせた温度計測の信号処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 炉体
2 溶銑(溶鋼)
3 火点
4 送酸ランス
5 分岐管
6 計測孔(窓)
7 光学分岐手段
8 撮像用レンズ
9 CCDセンサ(カメラ)
10 集光用レンズ
11 拡散板
12 受光部
13 分光計測センサ
14 ケーブル
15 信号処理装置
16 酸素ホース(配管)
17 冷却水ホース(配管)
18 LVF(Linear Variable Filter)
19 SSGC(Stainless Steel Grating Collimator)
20 イメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送酸ランスを使用した吹錬プロセスにおいて、吹錬操業中に前記ランスからの送酸の一時的な停止または送酸量を減少しての吹き込み操作、あるいは酸素の吹き込みを非活性ガスまたは酸素と非活性ガスとの混合気体に切り替えて吹き込み操作を行い、該操作中に前記ランス先端から入射する放射光の輝度にもとづいて、溶融金属の温度を計測することを特徴とする溶融金属の温度計測方法。
【請求項2】
請求項1記載の溶融金属の温度計測方法において、前記放射光の輝度は、前記ランス先端を撮像する画像撮像手段で計測される画像から判別した送酸孔から入射する放射光の輝度情報から得る、または分光計測手段により計測される放射光の分光放射輝度情報から得ることを特徴とする溶融金属の温度計測方法。
【請求項3】
請求項1記載の溶融金属の温度計測方法において、前記放射光の輝度は、前記ランス先端を撮像する画像撮像手段で計測される画像から判別した送酸孔から入射する放射光の状態判別を行い、分光計測手段により計測される放射光の分光放射輝度情報を補正して得ることを特徴とする溶融金属の温度計測方法。
【請求項4】
請求項3記載の溶融金属の温度計測方法において、前記撮像画像中の輝度の高い部分を放射光が入射する送酸孔部に相当する部分として識別するとともに、該識別した送酸孔部に相当する部分の面積及び輝度分布から入射する放射光の光量変化を推定し、分光計測手段により計測される分光放射輝度情報の補正を行うことを特徴とする溶融金属の温度計測方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の溶融金属の温度計測方法において、前記溶融金属は、溶銑または溶鋼であることを特徴とする溶融金属の温度計測方法。
【請求項6】
送酸ランスを使用した吹錬プロセスにおいて、吹錬操業中に前記ランスからの送酸の一時的な停止または送酸量を減少しての吹き込み操作、あるいは酸素の吹き込みを非活性ガスまたは酸素と非活性ガスとの混合気体に切り替えて吹き込み操作を行い、該操作中に前記ランス先端から入射する放射光の輝度にもとづいて、溶融金属の温度を計測することを特徴とする溶融金属の温度計測装置。
【請求項7】
請求項6記載の溶融金属の温度計測装置において、前記輝度計測手段は、前記ランス先端の送酸孔部を撮像する画像撮像手段、および/または前記送酸孔から入射する放射光を分光計測する分光計測手段であることを特徴とする溶融金属の温度計測装置。
【請求項8】
請求項7記載の溶融金属の温度計測装置において、前記ランス先端の送酸孔が目視可能な開口(窓)と、放射光を前記画像撮像手段と前記分光計測手段へ分岐する光分岐手段とを有することを特徴とする溶融金属の温度計測装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の溶融金属の温度計測装置において、前記分光計測手段は、透過波長可変フィルターとイメージセンサにより構成されることを特徴とする溶融金属の温度計測装置。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の溶融金属の温度計測装置において、前記画像撮像手段は、入力輝度レベルと、対応する画像上の輝度レベル間の変換特性を任意に調整・設定できる機能を有することを特徴とする溶融金属の温度計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−126062(P2006−126062A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316272(P2004−316272)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】