説明

溶解補助剤

【課題】従来は水に難溶乃至不溶な脂溶性有機物質の可溶化には合成界面活性剤などが用いられてきたが天然志向の消費者に好まれるものではなかった。ここでは一般食品や飲料用だけでなく化粧品更には日用品に利用できる安全な天然の溶解補助剤を提供する。
【解決手段】グネツム果実(グネツムエキス)の成分の一つである水溶性の抗酸化作用を有するグネモノシドAを有効成分とする新規な天然の溶解補助剤を共存させることにより水に難溶乃至不溶な脂溶性有機物質を溶解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性作用を有するグネモノシドAを有効成分とする脂溶性有機物質の溶解補助剤に関する。即ち、水に難溶な脂溶性有機物質を溶解させるための新規な溶解補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物は一般に水に溶け難いものが多く、水溶液とするために合成界面活性剤やシクロデキストリンなどが広く使用されている。しかしながら、難溶性有機物は、合成界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルなどと加温すると混和するが、水で希釈すると乳化するものの溶解(透明な溶液)には至らず、溶解補助剤としては好適ではない。レシチン及びサポニンなどの天然乳化剤は乳化には適するが、可溶化には好適なものではない。シクロデキストリンによる包接化は、包接体の析出をもたらすことがあり、更にシクロデキストリン分子が大きいために使用量が多くなる傾向があるので好適とはいえない。水に難溶な成分が多い香料の溶剤として揮発しにくいプロピレングリコールがよく使用されているが、近年の天然志向の消費者にとって好ましいものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題に鑑み、水に難溶な脂溶性有機物質を可溶化するために安全な天然の溶解補助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を続けた結果、グネツム果実の成分の一つであるグネモノシドAが溶解補助作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、抗酸化作用を有するグネモノシドAを有効成分とする水に難溶乃至不溶な脂溶性有機物質を溶解させるための新規な溶解補助剤に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、溶解補助剤としてグネモノシドAを共存させることにより、水に溶け難くいか或いは溶けないために液剤とすることができない脂溶性有機物質を透明(澄明)な溶液とすることができるので、幅広く飲食品として提供することができて食生活の多様性に寄与することができる上に抗酸化作用を付加でき、化粧品(化粧料)や日用品にも利用できて有用である。更に、異物の存在の検出が容易となるだけでなく冷却時の沈殿物による不具合も防止することができて商品価値の向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で言うグネモノシドAは、スチルベノイドの一種であるグネチンCにグルコースが2個グルコシド結合した配糖体であり、グネツム科の植物に認められ、グネツムグネモン(別名メリンジョ、学名Gnetum gnemon L.、英名Gnemon tree、インドネシア名Melinjo、Belinjo)の種子に豊富に含まれているので、エキスの主成分として入手が容易である。また、グネモノシドAは抗酸化作用を有し、HLB値(グリフィン法)9.2の水溶性である。
【0007】
本発明の溶解補助剤とは、水に溶け難い乃至溶けない脂溶性有機物質を可溶化する物質のことであり、可溶化した水溶液を透明(澄明)な状態にするものである。その使用量は、脂溶性有機物質に対して0.05〜20倍量(質量比)、好ましくは0.2〜10倍量である。必要ならば毒性の低いエタノールなどの水溶性溶媒を少量混合することができる。更に、必要に応じて乳化状態とすることもできる。
【0008】
本発明で言う脂溶性有機物質としては、同種のスチルベノイド、フラボノイド、カロテノイド、フェニルプロパノイド、テルペノイド、ステロイド、クマリン類、カルコン類、キサントン類、キノン類などが挙げられる。スチルベノイドとしてはグネチン類、グネモノール類、レスベラトロール、ビニフェリンなど、フラボノイドとしてはカテキン類、ダイゼイン、ケルセチンなど、カロテノイドとしてはベータカロテン、アスタキサンチン、リコペンなど、フェニルプロパノイドとしてはケイヒ酸及びカフェ酸及びそのエステル類、オイゲノール、α‐アミルシンナムアルデヒドなど、テルペノイドとしてはメントール、ファルネソール、ベータオイデスモール、タキソール、スクアレン、ギンコライド類、オレアノール酸及びそのエステル類など、クルクミノイドとしてはクルクミン類、3−(3、4−ジメトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エンなど、ステロイドとしてはシトステロールなど、クマリン類としてウンベリフェロン、イソフラキシジンなど、カルコン類としてはナリンゲニンカルコン、キサントアンゲロールなど、キサントン類としてはマンゴスチン類、キノン類としてはシコニン、エモジンなどのポリケチドなど、リグナン類としてはセサミン、マグノロールなど、置換カテコール類としてはジンゲロール、カプサイシンなど及びそれらの配糖体、更にはビタミンA、D、E、H、K及びMなどの脂溶性ビタミン類、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル、メチルβ‐ナフチルケトン、ムスクなどの合成香料及びオレンジ油、チョウジ油などの植物精油(エッセンシャルオイル)、シベット、カストリウムなどの動物性香料などの天然香料がある。
【0009】
脂溶性有機物質の可溶化方法は,特に制限されず,一般的方法によって実施することができる。脂溶性有機物質が固体又は液体に関わらず本発明の溶解補助剤と混合してから若しくはそれらを別々に水及び水溶液(必要とする配合剤を含有する)に加え,一般的撹拌機,ホモミキサー,超音波ホモジナイザーなどにより容易に混合溶解(可溶化)して水溶液とすることができる。必要に応じて定法に従って濾過及び滅菌することができる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0011】
実施例1
グネツム種子から製造されたウンピン(油で揚げていない)の破砕物2kgを70%エタノール10Lに5日間浸漬後、濾過し、濾液を減圧濃縮して淡黄色シロップ状のメリンジョエキス160gを得た。本エキスのグネモノシドA含量は24%であった。
【0012】
実施例2
実施例1で製造したメリンジョエキス100gを水に溶解してポーラスポリマーカラムに付し、30%エタノールで分離溶出させた液を減圧濃縮乾固して淡褐色無定形個体のグネモノシドAを23g得た。
【0013】
実施例3
実施例2で製造したグネモノシドA1部と難水溶性のグネチンC0.5部の混合粉砕物を水10部に加熱溶解後、冷却して黄色を帯びた澄明なグネチンC水溶液を得た。
【0014】
実施例4
実施例2で製造したグネモノシドA1部を水100部に溶かし、難水溶性のグネチンCの微粉末2部を加え、ホモミキサーで十分混合して淡黄色のグネチンC乳濁液を得た。本乳濁液に撹拌しながらエタノール1部及び水100部を加えて淡黄色の透明なグネチンC水溶液を得た。
【0015】
実施例5
実施例1で製造したメリンジョエキス1部とぶどうレスベラトロール0.2部の加熱混合シロップを撹拌しながら水100部に加えて黄色を帯びた澄明なレスベラトロール水溶液を得た。
【0016】
実施例6
実施例1で製造したメリンジョエキス1部と茶カテキン0.2部の混合物を撹拌しながら水100部に加えて黄褐色を帯びた透明な茶カテキン水溶液を得た。
【0017】
実施例7
実施例2で製造したグネモノシドA1部を水100部に溶解した加温水溶液に撹拌しながらキサントアンゲロールなどを含有するアシタバカルコン0.12部を加えて溶解後、冷却して淡黄色の透明なアシタバカルコン水溶液を得た。
【0018】
実施例8
実施例1で製造したメリンジョエキス1部と3−(3、4−ジメトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エン含有バングレエキス0.2部の混合物を撹拌しながら水100部に加えて淡黄色の透明なバングレエキス水溶液を得た。
【0019】
実施例9
実施例1で製造したメリンジョエキス1部と大豆イソフラボンのゲニステイン0.1部の混合物を撹拌しながら水100部に加えて淡黄色の透明な大豆イソフラボン水溶液を得た。
【0020】
実施例10
実施例1で製造したメリンジョエキス1部とイソ吉草酸エチル0.1部の混合物を撹拌しながら水10部に加えて淡黄色の透明な水性香料を得た。
【0021】
実施例11
実施例1で製造したメリンジョエキス1部とゲラにオール0.02部の混合物を撹拌しながら水10部に加えて淡黄色の透明な水性香料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によると、水に難溶乃至不溶な脂溶性有機物質を、抗酸化性を有するグネモノシドAの利用により可溶化して透明な飲料とすることができるだけでなく種々の食品及び化粧品更には日用品にも利用できて多様な消費者の要望に応えることが可能となり、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グネモノシドAを有効成分とすることを特徴とする脂溶性有機物質の溶解補助剤
【請求項2】
前記グネモノシドAがグネツム由来のスチルベノイドであることを特徴とする請求項1記載の溶解補助剤
【請求項3】
前記グネモノシドAがグネツムエキスの主成分であることを特徴とする請求項1記載の溶解補助剤
【請求項4】
前記脂溶性有機物質がレスベラトロール、茶カテキン、アシタバカルコン、大豆イソフラボン及び3−(3、4−ジメトキシフェニル)−4−[(E)−3、4−ジメトキシスチリル]シクロヘキサ−1−エンであることを特徴とする請求項1記載の溶解補助剤

【公開番号】特開2011−161374(P2011−161374A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27083(P2010−27083)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(391012040)株式会社ホソダSHC (14)
【Fターム(参考)】