説明

漏液検出装置

【課題】一対の導体を利用して、少なくとも2カ所の漏液の発生を検出することが可能な漏液検出装置を提供する。
【解決手段】漏液検出装置は、1点目の漏液発生時に電圧センサ14及び電圧センサ16から取得した電圧値Va,Vbに基づいて抵抗線30の接地側の端部である接点Paと1点目の漏液点との間の距離αを算出し、距離αの算出後、さらに電圧センサ14及び電圧センサ16からそれぞれ電圧値Va’,Vb’を取得し、抵抗線30の接地側の端部である接点Paと2点目の漏液点との間の距離βを算出し、距離βを算出後、1点目の距離αと2点目の距離βとの差が閾値以上であれば、2点目の漏液が発生したと判断して、距離βに基づいて2点目の漏液位置を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液を検出する漏液検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
漏液による損害を未然に防ぐ必要があるコンピュータルームや物品貯蔵庫などの場所には、漏液を検出する漏液検出システムが設置されることがある。
【0003】
特許文献1には、漏液検出箇所に配置される漏液センサと、漏液センサの出力から漏液を検出する漏液検出器とを備えた漏液検出システムが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された漏液検出システムにおいて、漏液センサは、絶縁被膜内に2本の導体を一定の間隔を保って収納する。絶縁被膜は、両導体それぞれの側縁で部分的に欠如しており、欠如部分から両導体が部分的に外部に露出され、それぞれの導体の露出部分が漏液検出電極となる。漏液検出器は、この電極間に交流信号を印加すると、漏液が発生した場合に電極間が漏液を介して導通し、閉回路状態となるため、印加された交流信号に応じた検出信号を検出することができ、漏液の発生を検知することができる。
【0005】
また、特許文献2には、一対の導体から成る電極線を有する検知線と、定電流電源と、電圧測定手段と、判定手段とを備え、漏液検知時に検知線の一端において電極線間に定電流電源を接続し、電圧測定手段を検知線の低圧側電極線の近端−遠端間に接続して、電圧測定手段により測定される電圧値から判定手段が漏液位置を算定する漏液検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−131176号公報
【特許文献2】特開平7−113719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、一対の導体を利用して、導体間の導通が発生したことに対応して、一カ所の漏液の発生或いは一カ所の漏洩位置を検出する漏液検出装置が知られている。
【0008】
しかしながら、従来の漏液検出装置では、一対の導体を利用して、複数箇所の漏液の発生や複数箇所の漏液位置を連続して検出することは考慮されていない。
【0009】
本発明は、一対の導体を利用して、少なくとも2カ所の漏液の発生を検出することが可能な漏液検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る漏液検出装置は、一端が所定レベルの漏液検知用電流を出力する電源部に接続され、他端が抵抗を介して接地される、配線長に比例した抵抗値を有する抵抗線と、前記抵抗の両端の電圧値を測定する第1電圧測定部と、一端が開放状態で、他端が接地され、且つ漏液発生前は前記抵抗線と絶縁状態にあり、漏液発生時に前記抵抗線と導通する検知線と、前記検知線上に配線され、1点目の漏液発生時は前記抵抗線上の1点目の漏液点と前記抵抗の接地点側の端部との間の電圧値として電圧を測定し、且つ2点目の漏液発生時は前記検知線上の1点目の漏液点と2点目の漏液点との中点と前記抵抗の接地側の端部との間の電圧値として電圧を測定する第2電圧測定部と、1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定された電圧値及び前記第2電圧測定部で測定された電圧値と、1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値とを比較することで、2点目の漏液の発生を検出する漏液検出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る漏液検出装置の一つの態様では、漏液検出部は、1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をパラメータとして前記抵抗線の他端と前記抵抗線上の1点目の漏液点との距離αを算出し、且つ1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定された電圧値及び前記第2電圧測定部で測定された電圧値、並びに1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれパラメータとして、前記抵抗線の他端と前記抵抗線上の2点目の漏液が発生したと仮定した場合の2点目の漏液点との距離βを算出し、前記距離αと前記距離βとの差分が予め定められた閾値以上の場合、2点目の漏液が発生したと判断して、2点目の漏液位置を前記距離βに基づいて外部に通知する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る漏液検出装置の一つの態様では、前記漏液検出部は、前記抵抗の抵抗値をR1、1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれVa,Vb、及び前記抵抗線の単位長あたりの抵抗値をXとした場合、前記距離αをα=R1(Vb−Va)/(X・Va)により算出し、さらに、1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれVa’,Vb’、前記電源部の出力電圧をVoとした場合、前記距離βをβ=(2Rc+(Rz−Rb)−Rx)/X、だたし、Rc=(Vb’−Va’)・R1/Va’、Rz=(Vo−Va)・R1/Va、Rb=(Vo−Va’)・R1/Va’、Rx=(Vb−Va)・R1/Vaにより算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1点目の漏液に加えて2点目の漏液が発生した場合にも当該2点目の漏液の発生を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る漏液検出装置の回路構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る漏液検出装置が備える制御部の機能ブロックを示す図である。
【図3】抵抗線と検知線とが一点において漏液が発生した場合の回路状態を示す図である。
【図4】抵抗線と検知線とが、1点目の漏液点に加えて、1点目の漏液点より電源部側において漏液により導通した場合の回路状態を示す図である。
【図5】抵抗線と検知線とが、1点目の漏液点に加えて、1点目の漏液点より抵抗線の接地側の端部側において漏液により導通した場合の回路状態を示す図である。
【図6】図4に示す回路における抵抗線及び漏液抵抗により構成される合成抵抗について説明するための図である。
【図7】図5に示す回路における抵抗線及び漏液抵抗により構成される合成抵抗について説明するための図である。
【図8】漏液発生時に漏液位置算出部が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る漏液検出装置の回路構成を示す図である。
【0017】
図1において、定電圧電流を出力する電源部20には、信号線Lの一端が接続され、所定レベルの漏液検知用電流として電圧値Voの漏液検知用電流を信号線Lを介して出力する。信号線Lには、抵抗値Rzの抵抗線30、スイッチ12、抵抗値R1の抵抗32が直列に接続されている。より具体的には、信号線Lの他端に、抵抗線30の一端が接続され、抵抗線30の他端に、スイッチ12の一端が接続され、スイッチ12の他端に抵抗32の一端が接続され、抵抗32の他端が接地されている。
【0018】
さらに、抵抗線30とスイッチ12との間の接点Paには、検知線Laの一端が接続され、検知線Laの他端は、電圧センサ14を介して接点Pbに接続され接地される。言い換えれば、電圧センサ14は、直列に接続されたスイッチ12及び抵抗32と、検知線Laを介して並列に接続され、接点Paと接点Pbとの間の電圧値Vaを検出する。
【0019】
また、検知線Lbは、漏液が発生していない場合には抵抗線30と絶縁状態にあり、検知線Lbの一端は、開放され、他端は電圧センサ16及び接点Pbを介して接地される。電圧センサ16は、抵抗線30と検知線Lbとが漏液により導通した場合、抵抗線30上の漏液点Lb1及び接点Pb間の電圧値Vbを検出する。なお、漏液検出装置を、漏液を検出する漏液検出センサと、漏液検出センサの検出内容に基づいて漏液の有無の判定或いは漏液発生時における漏液の位置の算出を行う本体制御部とにより構成する場合、図4において、信号線L、抵抗線30、検知線Lbが漏液検知センサとして機能し、制御部10、電源部20、電圧センサ14,16、検知線La、スイッチ12及び抵抗32が、本体制御部として機能する。
【0020】
制御部10は、マイクロコンピュータなどにより構成され、スイッチ12のオンオフを制御すると共に、電圧センサ14,16を介して取得した電圧値Va,Vbに基づいて漏液位置の算出を行う。
【0021】
図2は、制御部10の機能ブロックを示す図である。
【0022】
図2において、制御部10は、CPU110、ROM112、RAM114、記憶装置120、及び入出力インタフェース150を備え、CPU110、ROM112、RAM114、記憶装置120、及び入出力インタフェース150は、通信バス160を介して接続される。
【0023】
CPU110は、ROM112に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM114に展開して、さらに記憶装置120に記憶された漏液の検出及び漏液の位置を算出するためのプログラム130をRAM114に展開して、プログラム130を実行し、漏液の位置を算出する。
【0024】
本実施形態において、記憶装置120は、プログラム130として漏液検出部として機能する漏液位置算出部132を記憶する。漏液位置算出部132は、入出力インタフェース150を介して電圧センサ14,16が測定した電圧値を取得し、取得した電圧値に基づいて漏液を検出するとともに漏液の位置を算出する。漏液位置の算出処理についての詳細は後述する。
【0025】
図3は、抵抗線30と検知線Lbとが、漏液点Lb1において漏液により導通した場合の回路状態を示す。即ち、抵抗線30と検知線Lbとが一点において漏液が発生した場合の回路状態を示す。
【0026】
図4は、抵抗線30と検知線Lbとが、漏液点Lb1に加えて、漏液点Lb1より電源部20側の漏液点Lb2において漏液により導通した場合の回路状態を示す。即ち、抵抗線30と検知線Lbとが二点において漏洩が発生した場合の回路状態を示す。
【0027】
図5は、抵抗線30と検知線Lbとが、漏液点Lb1に加えて、漏液点Lb1より接点Pa側の漏液点Lb2において漏液により導通した場合の回路状態を示す。
【0028】
本実施形態では、漏液検出装置が、一点目の漏液が発生した後、二点目の漏液が発生した場合に、当該二点目の漏液の検出及び当該二点目の漏液の漏液位置の算出を行う。
【0029】
まず、図3を参照して、一点目の漏液が発生した場合に、漏液位置算出部132が一点目の漏液の位置(抵抗線30の他端(接点Pa)からの距離α)を算出する原理について説明する。
【0030】
抵抗線30の抵抗値は、1メートル単位XΩ、接点Paから漏液点Lb1までの抵抗線30の抵抗値、つまり1点目の漏液位置抵抗値はRx、抵抗32の抵抗値はR1、電源部20から出力される定電圧の電流の電流値Io、漏液抵抗の抵抗値はRsとする。
【0031】
漏液抵抗値Rsに流れる電流は、抵抗32に流れる電流に比べて非常に小さいため、電流値Ioは、(1)式で求めることができる。
【0032】
Io=Va/R1 ・・・(1)
【0033】
また、抵抗値Rxは、(2)式で求めることができる。
【0034】
Rx=(Vb−Va)/Ia ・・・(2)
【0035】
よって、一点目の漏液の位置に対応する距離αは、(1),(2)式に基づいて(3)式により求めることができる。
【0036】
α=Rx/X=R1(Vb−Va)/(X×Va) ・・・(3)
【0037】
続いて、図4を参照して、2点目の漏液が1点目の漏液点Lb1より電源部20側で発生した場合に、漏液位置算出部132が2点目の漏液の位置(抵抗線30の接点Paからの距離β)を算出する原理について説明する。
【0038】
ここで、1点目の漏液発生時以降に電圧センサ14及び電圧センサ16で測定される電圧値をそれぞれVa’,Vb’、2点目の漏液抵抗の抵抗値を1点目の漏液抵抗の抵抗値と同様Rs、漏液点Lb2から漏液点Lb1までの抵抗線30の抵抗値をRy、漏液点Lb2から接点Paまでの抵抗線30の抵抗値、つまり2点目が発生した際の漏液位置抵抗値をRw、抵抗線30に流れる電流をIb(≠Io)とする。
【0039】
ここで、2点目の漏液位置抵抗値Rwは、式(4)で表すことができる。
【0040】
Rw=Ry+Rx ・・・(4)
【0041】
また、図6は、抵抗線30と1点目及び2点目の漏液抵抗値Rs,Rsを示した回路である。図6に示すように、抵抗値Ryと、漏液抵抗値Rs,Rsとは並列回路を構成する。
【0042】
さらに、抵抗値Ry及び漏液抵抗値Rs,Rsの合成抵抗値をRa、合成抵抗値Raを含む抵抗線30の全体の合成抵抗値をRb(≠Rz)とした場合、合成抵抗値Rbは、(5)式により表すことができる。
【0043】
Rb=(Rz−Ry−Rx)+Ra+Rx
=Rz−Ry+Ra ・・・(5)
【0044】
また、電圧値Va’は、(6)式により求めることができる。
【0045】
Va’=R1×Ib ・・・(6)
【0046】
さらに、合成抵抗値Raの電圧値をVcとすると、電圧値Vcは、(7)式により求めることができる。
【0047】
Vc=Ra×Ib ・・・(7)
【0048】
ここで、電圧センサ16で検出される電圧値Vb’に現れる電圧値Vcの電圧成分は、漏液抵抗値Rsで分圧されているため、電圧値Vcの1/2となる。したがって、電圧値Vb’は、(8)式により求めることができる。
【0049】
Vb’=Vc/2+(Rx+R1)×Ib ・・・(8)
【0050】
さらに、抵抗線30の漏液点Lb2及び接点Pa間の電圧値は、(6)〜(8)式より、(9)式で求められる。
【0051】
Vb’−Va’=Ra/2+RxIb ・・・(9)
【0052】
また、電圧値(Vb’−Va’)に対する抵抗値をRcとすると、(9)式を用いて、(10)式で表すことができる。
【0053】
Rc=(Vb’−Va’)/Ib=Ra/2+Rx ・・・(10)
【0054】
(10)式をRaで展開すると、(11)式で表すことができる。
【0055】
Ra=2Rc−2Rx ・・・(11)
【0056】
また、抵抗値Ryは、(5)式より、(12)式で表すことができる。
【0057】
Ry=Ra+(Rz−Rb) ・・・(12)
【0058】
よって、2点目の漏液位置抵抗値Rwは、(1)式に(11)式及び(12)式を代入することで、(13)式で表すことができる。
【0059】
Rw=2Rc+(Rz−Rb)−Rx ・・・(13)
【0060】
以上より、2点目の漏液が1点目の漏液点Lb1より電源部20側で発生した場合における2点目の漏液位置βは、(14)式で求めることができる。
【0061】
β=Rw/X=(2Rc+(Rz−Rb)−Rx)/X ・・・(14)
【0062】
以上、上記では、2点目の漏液点Lb2が1点目の漏液点Lb1より電源部20側で発生した場合の例について説明した。
【0063】
続いて、図6に示すように、2点目の漏液点Lb2が1点目の漏液点Lb1より接点Pa側で発生した場合の例について説明する。
【0064】
ここで、漏液点Lb1から漏液点Lb2までの間の抵抗線30の抵抗値をRy’とすると、2点目の漏液位置抵抗値Rwは、式(15)で表すことができる。
【0065】
Rw=Rx−Ry’ ・・・(15)
【0066】
また、図7は、抵抗線30と1点目及び2点目の漏液抵抗値Rs,Rsを示す回路である。図7に示すように、抵抗値Ry’と、漏液抵抗値Rs,Rsとは並列回路を構成する。
【0067】
さらに、抵抗値Ry’及び漏液抵抗値Rs,Rsの合成抵抗値をRa、合成抵抗値Raを含む抵抗線30の全体の合成抵抗値をRb(≠Rz)とした場合、合成抵抗値Rbは、(16)式により表すことができる。
【0068】
Rb=(Rz−Rx)+Ra+Rw ・・・(16)
【0069】
(16)式に(15)式を代入することで、抵抗値Rbは、(17)式で表すことができる。
【0070】
Rb=Rz−Ry’+Ra ・・・(17)
【0071】
また、電圧値Va’は、(18)式により求めることができる。
【0072】
Va’=R1×Ib ・・・(18)
【0073】
さらに、合成抵抗値Raの電圧値をVcとすると、電圧値Vcは、(19)式により求めることができる。
【0074】
Vc=Ra×Ib ・・・(19)
【0075】
ここで、電圧センサ16で検出される電圧値Vb’に現れる電圧値Vcの電圧成分は、漏液抵抗値Rsで分圧されているため、電圧値Vcの1/2となる。したがって、電圧値Vb’は、(20)式により求めることができる。
【0076】
Vb’=Vc/2+(Rw+R1)×Ib ・・・(20)
【0077】
さらに、抵抗線30の漏液点Lb2及び接点Pa間の電圧値は、(18)式及び(20)式より、(21)式で求められる。
【0078】
Vb’−Va’=Vc/2+RwIb ・・・(21)
【0079】
また、電圧値(Vb’−Va’)に対する抵抗値をRcとすると、(19)式及び(21)式を用いて、(22)式で表すことができる。
【0080】
Rc=(Vb’−Va’)/Ib=Ra/2+Rw ・・・(22)
【0081】
(22)式をRaで展開すると、(23)式で表すことができる。
【0082】
Ra=2Rc−2Rw ・・・(23)
【0083】
また、抵抗値Ry’は、(17)式より、(24)式で表すことができる。
【0084】
Ry’=Ra+(Rz−Rb) ・・・(24)
【0085】
よって、2点目の漏液位置抵抗値Rwは、(15)式及び(24)式に基づいて、(25)式で表すことができる。
【0086】
Rw=Rx−Ra−(Rz−Rb) ・・・(25)
【0087】
さらに、(25)式に(23)式を代入し、Rwで展開することで、Rwは、(26)式で表すことができる。
【0088】
Rw=2Rc+(Rz−Rb)−Rx ・・・(26)
【0089】
以上より、2点目の漏液位置βは、漏液点Lb2の位置が漏液点Lb1より接点Pa側にある場合も電源部20側にある場合と同様に、(27)式で表すことができる。
【0090】
β=Rw/X=(2Rc+(Rz−Rb)−Rx)/X ・・・(27)
【0091】
ここで、抵抗値Rc,Rz,Rb,Rxは、それぞれ上記の式等に基づいて以下の式により求めることができる。
【0092】
2点目の漏液発生時の電圧値(Vb’−Va’)に対する抵抗値:Rc=(Vb’−Va’)/Ib
1点目の漏液発生時の抵抗線30の両端間の抵抗値:Rz=(Vo−Va)/Io
2点目の漏液発生時の抵抗線30の両端間の抵抗値:Rb=(Vo−Va’)/Ib
1点目の漏液発生時の漏液位置抵抗値:Rx=(Vb−Va)/Io
【0093】
以上の通り、漏液位置算出部132は、1点目の漏液発生時に算出した抵抗値Rz,Rxを用いて、式(14)(式(27))に基づいて、2点目の漏液位置βを算出することができる。なお、電流値Ioは、1点目の漏液発生時における電圧値Vaと、予め求められている抵抗32の抵抗値R1とに基づいて、Va/R1により求めることができる。同様に、電流値Ibは、2点目の漏液発生時における電圧値Va’と、予め求められている抵抗32の抵抗値R1とに基づいて、Va’/R1により求めることができる。
【0094】
よって、抵抗値Rc,Rz,Rb,Rxは、それぞれ1点目の漏液発生時に電圧センサ14,16で測定される電圧値Va,Vb及び2点目の漏液発生時に電圧センサ14,16で測定される電圧値Va’,Vb’をパラメータとして以下の式により求めることができる。
【0095】
2点目の漏液発生時の電圧値(Vb’−Va’)に対する抵抗値:Rc=(Vb’−Va’)・R1/Va’ ・・・(A)
1点目の漏液発生時の抵抗線30の両端間の抵抗値:Rz=(Vo−Va)・R1/Va ・・・(B)
2点目の漏液発生時の抵抗線30の両端間の抵抗値:Rb=(Vo−Va’)・R1/Va’ ・・・(C)
1点目の漏液発生時の漏液位置抵抗値:Rx=(Vb−Va)・R1/Va ・・・(D)
【0096】
したがって、2点目の漏液点Lb2は、1点目の漏液発生時及び2点目の漏液発生時に電圧センサ14及び電圧センサ16により測定されたそれぞれの電圧値Va,Va’,Vb,Vb’をパラメータとして、算出することができる。
【0097】
図8は、漏液発生時に漏液位置算出部132が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図8において、漏液位置算出部132は、例えば、電圧センサ16において検出された電圧値Vbが予め定められた所定値以上変化した場合に、漏液発生を検知する(S100)。漏液発生の検知後、漏液位置算出部132は、スイッチ12をオンして、電圧センサ14及び電圧センサ16において電圧測定を行い、電圧センサ14及び電圧センサ16からそれぞれ1点目の漏液発生時における電圧値Va,Vbを取得し、一点目の漏液位置算出式(3)に基づいて1点目の漏液位置として、抵抗線30の接地側の端部である接点Paと1点目の漏液点Lb1との間の距離αを算出する(S102)。さらに、漏液算出部132は、式(B),(D)に基づいて抵抗値Rz,Rxを算出し、RAM114等のメモリに登録する(S104)。漏液位置算出部132は、算出した距離αに基づいて1点目の漏液位置を、例えば漏液検出装置が備える液晶ディスプレイ(不図示)に表示することで、ユーザに1点目の漏液が発生したことを通知する(S106)。
【0099】
続いて、漏液位置算出部132は、例えば1点目の漏液の検知後予め定められた期間経過後に、1点目の漏液検知時以降の電圧値として、電圧センサ14及び電圧センサ16からそれぞれ電圧値Va’,Vb’を取得し、さらに、メモリに登録された抵抗値Rz,Rxを読み出し、式(14)(式(27))に基づいて、抵抗線30の接地側の端部である接点Paと2点目の漏液が発生したと仮定した場合の2点目の漏液点Lb2との間の距離βを算出する(S108)。距離βを算出後、漏液位置算出部132は、距離αと距離βとの差が予め定められた閾値TH以上か否かを判定する(S110)。
【0100】
判定の結果、距離αと距離βとの差が閾値THより小さければ(ステップS110の判定結果が否定「N」)、2点目の漏液が発生していないと判断して、一定期間経過後に再度、2点目の漏液位置βの算出を行う。
【0101】
一方、距離αと距離βとの差が閾値TH以上あれば(ステップS110の判定結果が肯定「Y」)、漏液位置算出部132は、2点目の漏液が発生したと判断して、算出した距離βに基づいて2点目の漏液位置を、例えば漏液検出装置が備える液晶ディスプレイ(不図示)に表示することで、ユーザに2点目の漏液が発生したことを通知する(S112)。
【0102】
以上、本実施形態によれば、2点目の漏液が発生した場合に、1点目の漏液発生時及び2点目の漏液発生時に電圧センサ14及び電圧センサ16により測定されたそれぞれの電圧値Va,Va’,Vb,Vb’をパラメータとして抵抗線30の接点Paと2点目の漏液点Lb2との間の距離βを算出し、距離βに基づいて2点目の漏液位置を通知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、2点目の漏液が発生した場合に当該2点目の漏液を検出することができるので、漏液の発生を検出する漏液検出装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
L 信号線
Lb 検知線
10 制御部
12 スイッチ
14,16 電圧センサ
20 電源部
30 抵抗線
32 抵抗
110 CPU
112 ROM
114 RAM
120 記憶装置
130 プログラム
132 漏液位置算出部(漏液検出部)
150 入出力インタフェース
160 通信バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が所定レベルの漏液検知用電流を出力する電源部に接続され、他端が抵抗を介して接地される、配線長に比例した抵抗値を有する抵抗線と、
前記抵抗の両端の電圧値を測定する第1電圧測定部と、
一端が開放状態で、他端が接地され、且つ漏液発生前は前記抵抗線と絶縁状態にあり、漏液発生時に前記抵抗線と導通する検知線と、
前記検知線上に配線され、1点目の漏液発生時は前記抵抗線上の1点目の漏液点と前記抵抗の接地点側の端部との間の電圧値として電圧を測定し、且つ2点目の漏液発生時は前記検知線上の1点目の漏液点と2点目の漏液点との中点と前記抵抗の接地側の端部との間の電圧値として電圧を測定する第2電圧測定部と、
1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定された電圧値及び前記第2電圧測定部で測定された電圧値と、1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値とを比較することで、2点目の漏液の発生を検出する漏液検出部と、
を備えることを特徴とする漏液検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の漏液検出装置において、
前記漏液検出部は、
1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をパラメータとして前記抵抗線の他端と前記抵抗線上の1点目の漏液点との距離αを算出し、且つ1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定された電圧値及び前記第2電圧測定部で測定された電圧値、並びに1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれパラメータとして、前記抵抗線の他端と前記抵抗線上の2点目の漏液が発生したと仮定した場合の2点目の漏液点との距離βを算出し、前記距離αと前記距離βとの差分が予め定められた閾値以上の場合、2点目の漏液が発生したと判断して、2点目の漏液位置を前記距離βに基づいて外部に通知する、
ことを特徴とする漏液検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の漏液検出装置において、
前記漏液検出部は、
前記抵抗の抵抗値をR1、1点目の漏液発生時に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれVa,Vb、及び前記抵抗線の単位長あたりの抵抗値をXとした場合、前記距離αを
α=R1(Vb−Va)/(X・Va)
により算出し、
さらに、1点目の漏液発生時以降に前記第1電圧測定部で測定される電圧値及び前記第2電圧測定部で測定される電圧値をそれぞれVa’,Vb’、前記電源部の出力電圧をVoとした場合、前記距離βを
β=(2Rc+(Rz−Rb)−Rx)/X
ただし、
Rc=(Vb’−Va’)・R1/Va’
Rz=(Vo−Va)・R1/Va
Rb=(Vo−Va’)・R1/Va’
Rx=(Vb−Va)・R1/Va
により算出することを特徴とする漏液検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210438(P2010−210438A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57063(P2009−57063)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】