説明

潜水船

【課題】 燃料電池に容易に水素を供給することができ、また、低温で水素を含むガスを製造することができる水素製造装置を搭載した潜水船を提供する。
【解決手段】 水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池(30)と、燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置(10)と、燃料電池で発生した電気により駆動される推進装置とを少なくとも備えてなる潜水船において、水素製造装置が、有機物を含む燃料を分解して水素を含むガスを製造するものであり、隔膜(11)、隔膜の一方の面に設けた燃料極(12)、燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段(16)、隔膜の他方の面に設けた酸化極(14)、酸化極に酸化剤を供給する手段(17)、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に水素を供給するための水素製造装置を搭載した深海潜水調査船、潜水艇、潜水艦などの潜水船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、深海潜水調査船、潜水艇、潜水艦など潜水船の動力源として、静粛性・高効率性に優れている燃料電池が開発されている。燃料電池の燃料としては水素が一般的であるが、その水素をどのように供給するかが、燃料電池を用いた潜水船を開発するに当たり大きな課題となっている。
従来の潜水船では、高圧水素ガスで貯蔵し、この水素を燃料電池に供給する方式が一般的に行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方式では、ガス容器を耐圧構造としなければならず容器の質量が大きくなるが、潜水船では、重量が重くなると、それに応じた浮力材が必要になり、必然的にその浮力材を装備するため潜水船が大きくなるという問題があった。また、水素を高圧ガスで保有するため、安全性に注意をはらう必要があり、取り扱いが困難であるという問題もあった。
【特許文献1】特開平10−100990号公報
【特許文献2】特開平10−144327号公報
【特許文献3】特開平10−181685号公報
【0003】
上記の問題を解決するために、「潜水機(潜水船も含む)の動力源に用いる燃料電池等の水素供給発生装置のうち、金属水素化物(錯金属水素化物も含む)に水素発生促進剤と接触させて水素を発生させる水素発生装置において、金属水素化物若しく水素発生促進剤の少なくとも一が液状態にあり、該液状態が貯留されている容器が機内に配置され、機外の水圧にほぼ均圧させたことを特徴とする潜水機用水素発生装置。」(特許文献4参照)が開発された。この水素発生装置で使用する金属水素化物は、高圧水素ガスと比べれば、取り扱い性は良いものの、有機物を含む燃料を水素原料とするものと異なり反応性が大きく、反応前に、水素発生促進剤である水若しくはアルコールとの接触を防ぐための工夫が必要であり、また、反応の制御が難しいという問題があった。
【特許文献4】特開2002−187595号公報
【0004】
また、炭化水素燃料を改質して水素を製造する改質器を潜水機種に搭載し、改質器により製造された水素を燃料電池に供給することも公知である(例えば、特許文献4参照)。この燃料としてはメタノール、ジメチルエーテル(DME)、エタノール、天然ガス、プロパンやガソリン等が考えられるが、これらの中では改質温度の最も低いメタノール改質器の開発が最も進んでいる。
【特許文献5】特開平8−17456号公報
【0005】
現在、メタノールの改質方法としては、水蒸気改質、部分酸化改質、両者を併用した併用改質の3つが採用されている(非特許文献1参照)が、いずれの改質方法を採用しても、水素を含むガスを製造するためには、200℃以上という高温度で改質を行わなければならず、改質触媒の被毒、改質されたガス(水素を含むガス)に含まれるCOの除去、部分酸化改質や併用改質における改質されたガス中への空気中の窒素の混入等の問題があった。
【非特許文献1】「固体高分子型燃料電池の開発と実用化」第141頁〜第166頁、1999年5月28日、(株)技術情報協会発行
【0006】
さらに、電気化学的反応により水素を発生させる方法の発明(特許文献6、8参照)、電気化学的方法により発生した水素を利用した燃料電池の発明(特許文献7〜9参照)も知られている。
【特許文献6】特許第3328993号公報
【特許文献7】特許第3360349号公報
【特許文献8】米国特許第6,299,744号明細書、米国特許第6,368,492号明細書、米国特許第6,432,284号明細書、米国特許第6,533,919号明細書、米国特許公開2003/0226763号公報
【特許文献9】特開2001−297779号公報
【0007】
特許文献6には、「陽イオン交換膜の対向する両面に1対の電極を設け、一方に設けられた触媒を含む電極に、メタノールと水を少なくとも含む燃料を接触させ、前記1対の電極に電圧を印加して前記電極から電子を取出すことによって前記電極上で前記メタノールおよび水から水素イオンを発生させる反応を進行させ、発生させた前記水素イオンを、前記陽イオン交換膜の対向する1対の面の他方に設けられた電極において、電子の供給により水素分子に変換することを特徴とする、水素発生方法。」(請求項1)の発明が記載され、また、燃料用電極に燃料であるメタノールとともに水または水蒸気を供給し、外部回路を通じて、燃料用電極から電子を引き抜くように電圧を印加することにより、燃料用電極で、CH3OH+2H2O→CO2+6e-+6H+の反応を進行させ、このようにして発生した水素イオンを、陽イオン交換膜を通過させ、対向電極側で、6H++6e-→3H2により、水素を選択的に生成させることが示されており(段落[0033]〜[0038])、さらに、特許文献7には、このような方法で発生させた水素を利用する燃料電池の発明が記載されている(段落[0052]〜[0056])。
特許文献6及び7に記載された発明によれば、低温度で水素を発生させることができる(特許文献6の段落[0042]、特許文献7の段落[0080])が、水素を発生させるためには、電圧を印加する必要があり、また、水素が発生するのは燃料用電極(燃料極)の対向電極側であり、対向電極に酸化剤を供給するものではないから、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置とは明らかに異なる。
【0008】
特許文献8に記載された発明も、特許文献6及び7に記載された発明と同様に、燃料極であるアノード112で生成したプロトンが隔膜110を透過して、対極であるカソード114で水素が発生するものであるが、燃料極をアノードとし対極をカソードとして直流電源120から電圧を印加し、メタノール等の有機物燃料を電気分解するものであり、また、水素が発生するのは燃料極の対極側であり、対極に酸化剤を供給するものではないから、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置とは明らかに異なる。
【0009】
特許文献9には、燃料電池システムにおいて、水素を発生する水素発生極を設けること(請求項1)が記載されているが、「多孔質電極(燃料極)1にアルコールと水を含む液体燃料を供給し、反対側のガス拡散電極(酸化剤極)2に空気を供給し、多孔質電極1の端子とガス拡散電極2の端子との間に負荷をつなぐと、通常の燃料電池の機能を有するMEA2の正極であるガス拡散電極2から負荷を介して多孔質電極1に正の電位が印加されるような電気的つながりができる。その結果、アルコールは水と反応して炭酸ガスと水素イオンが生成し、生成した水素イオンは電解質層5を経由して、中央のガス拡散電極6で水素ガスとして発生する。ガス拡散電極6では、もう一つの電解質層7との界面で電極反応が起こり、再び水素イオンとなって電解質層7中を移動し、ガス拡散電極2に到達する。ガス拡散電極2では、空気中の酸素と反応して水が生成する。」(段落[0007])と記載されているから、燃料電池によって発生させた電気エネルギーを用いて水素発生極(ガス拡散電極6)で水素を発生させ、これを燃料電池に供給するものであり、また、水素が発生するのは燃料極の対極側であるという点では、特許文献6〜8と同じである。
【0010】
また、プロトン伝導膜(イオン伝導体)を介してアノード(電極A)とカソード(電極B)とが形成された隔膜を備えた反応装置を用いて、電圧を印加し、若しくは印加しないで、又は電気エネルギーを取り出しながら、アルコール(メタノール)を酸化する方法の発明(特許文献10及び11参照)も知られているが、いずれも、アルコールを電気化学セルを用いて酸化させるプロセス(生成物は、炭酸ジエステル、ホルマリン、蟻酸メチル、ジメトキシメタン等)に関するものであり、アルコールからみて還元物である水素を発生させるプロセスではない。
【特許文献10】特開平6−73582号公報(請求項1〜3、段落[0050])
【特許文献11】特開平6−73583号公報(請求項1、8、段落[0006]、[0019])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するものであり、燃料電池に容易に水素を供給することができ、また、低温で水素を含むガスを製造することができる水素製造装置を搭載した潜水船を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明においては、以下の手段を採用する。
(1)水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、前記燃料電池で発生した電気により駆動される推進装置とを少なくとも備えてなる潜水船において、前記水素製造装置が、有機物を含む燃料を分解して水素を含むガスを製造するものであり、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなることを特徴とする潜水船。
(2)前記水素製造装置が、水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする前記(1)の潜水船。
(3)前記水素製造装置が、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする前記(1)の潜水船。
(4)前記水素製造装置が、前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする前記(1)の潜水船。
(5)前記水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路である水素製造装置、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有する水素製造装置並びに前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有する水素製造装置の群から選ばれる2以上の水素製造装置を組み合わせて使用することを特徴とする前記(1)の潜水船。
(6)前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が200〜1000mVであることを特徴とする前記(1)の潜水船。
(7)前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が300〜800mVであることを特徴とする前記(2)の潜水船。
(8)前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が200〜600mVであることを特徴とする前記(3)の潜水船。
(9)前記水素製造装置において前記取り出す電気エネルギーを調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(3)又は(8)の潜水船。
(10)前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が300〜1000mVであることを特徴とする前記(4)の潜水船。
(11)前記水素製造装置において前記印加する電気エネルギーを調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(4)又は(10)の潜水船。
(12)前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一の潜水船。
(13)前記水素製造装置において前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一の潜水船。
(14)前記水素製造装置において前記酸化剤の濃度を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか一の潜水船。
(15)前記水素製造装置において前記有機物と水を含む燃料の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一の潜水船。
(16)前記水素製造装置において前記有機物と水を含む燃料の濃度を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか一の潜水船。
(17)前記水素製造装置の運転温度が100℃以下であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一の潜水船。
(18)前記運転温度が30〜90℃であることを特徴とする前記(17)の潜水船。
(19)前記水素製造装置の燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする前記(1)〜(18)のいずれか一の潜水船。
(20)前記アルコールがメタノールであることを特徴とする前記(19)の潜水船。
(21)前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が酸素を含む気体又は酸素であることを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか一の潜水船。
(22)前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が前記燃料電池又は他の前記水素製造装置から排出される未反応酸素を含む気体(酸素オフガス)であることを特徴とする前記(21)の潜水船。
(23)前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が過酸化水素を含む液体であることを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか一の潜水船。
(24)前記水素製造装置の隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする前記(1)〜(23)のいずれか一の潜水船。
(25)前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする前記(24)の潜水船。
(26)前記水素製造装置の燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか一の潜水船。
(27)前記水素製造装置の酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(26)のいずれか一の潜水船。
(28)前記水素製造装置に前記有機物と水を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする前記(1)〜(27)のいずれか一の潜水船。
(29)前記水素製造装置に生成した前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする前記(1)〜(28)のいずれか一の潜水船。
(30)前記水素製造装置から発生した前記水素を含むガスを冷却せずに前記燃料電池に供給することを特徴とする前記(1)〜(29)のいずれか一の潜水船。
(31)前記水素製造装置の発生する熱を遮断するための断熱材が設けられていないことを特徴とする前記(1)〜(30)のいずれか一の潜水船。
【0013】
ここで、前記(2)〜(4)の潜水船に搭載する水素製造装置は、水素製造装置を構成する水素製造セルに燃料及び酸化剤を供給する手段を有しており、この手段としては、ポンプ、ブロア等を用いることができる。また、この外に、前記(3)の場合は、水素製造セルから電気エネルギーを取り出すための放電制御手段を有しており、前記(4)の場合は、水素製造セルに電気エネルギーを印加するための電解手段を有している。前記(2)の場合は、水素製造セルから電気エネルギーを取り出すための放電制御手段及び水素製造セルに電気エネルギーを印加するための電解手段を有しない開回路のものである。そして、前記(1)の潜水船に搭載する水素製造装置は、前記(2)〜(4)の潜水船に搭載する水素製造装置を包含するものである。さらに、これらの水素製造装置は、水素製造セルの電圧及び/又は水素を含むガスの発生量をモニターして、燃料及び酸化剤の供給量若しくは濃度、並びに取り出す電気エネルギー(前記(3)の場合)又は印加する電気エネルギー(前記(4)の場合)をコントロールする機能を有している。なお、水素製造装置を構成する水素製造セルの基本構成は、隔膜の一方の面に燃料極を設け、前記燃料極に燃料を供給するための構造、前記隔膜の他方の面に酸化極を設け、前記酸化極に酸化剤を供給するための構造を有したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の潜水船は、室温から100℃以下という従来の改質温度と比較して格段に低い温度で燃料を改質することができる水素製造装置を搭載しているので、起動に要する時間が短くできるだけでなく、改質器の温度を上昇させるためのエネルギーが少なくできて、起動用バッテリの小型化が可能である。また、改質装置の発生する熱を遮断するための断熱材を不要とすることもでき、水素製造装置から発生した水素を含むガスを冷却せずに燃料電池に容易に供給することができるという効果を奏する。
さらに、水素製造装置から発生した水素を含むガスにCOが含まれないので、CO除去装置が不要である。
本発明の潜水船で使用する水素製造装置は、水素製造セルに外部から電気エネルギーを供給することなく、水素を発生させることができるが、電気エネルギーを取り出す手段を有する場合であっても、外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合であっても、水素を発生させることができる。
電気エネルギーを取り出す手段を有する場合には、その電気エネルギーをポンプ、ブロア等の補機その他を動かすために使用したり、潜水船の駆動用電源の一部として利用できるため、エネルギーの有効利用の観点から効果は大きい。
外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合でも、水素製造セルに外部から少量の電気エネルギーを供給することにより、投入した電気エネルギー以上の水素を発生することができるという効果を奏する。
さらに、いずれの場合であっても、水素製造セルの電圧及び/又は水素を含むガスの発生量をモニターすることによってプロセスコントロールが可能となり、水素製造装置のコンパクト化を図ることができるので、潜水船の製造コストが低減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を例示する。
特に、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置は、基本的に新規なものであり、以下に述べるのは、あくまでも一形態にすぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
【0016】
本発明の潜水船の基本的な構成は、水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、前記燃料電池で発生した電気により駆動される推進装置と、を備えてなるものである。
図1(a)に、本発明の潜水船における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す。
【0017】
本発明の潜水船は、図1(b)に示すように、水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池(30)、燃料電池(30)に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造セル(10)、燃料電池(30)で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置(36)、発電装置全体の制御を行う制御装置(37)及び燃料ポンプ(16)、ブロア(17)等の補機類をパッケージ型燃料電池発電装置として搭載することが好ましい。
本発明の潜水船において、水素製造装置を構成する水素製造セル(10)は低温で運転するものであるから、従来の燃料改質装置の場合と異なり、制御装置(37)を水素製造セル(10)の近くに配置することが可能である。また、水素製造セル(10)の発生する熱から制御装置(37)を保護するための断熱材も不要とすることができる。
【0018】
この図では、燃料タンク(20)及び燃料調整槽(21)を潜水船に搭載しているが、これらを搭載せずに、外部から燃料(メタノール水溶液)を供給するようにしてもよいし、燃料調整槽(21)のみを潜水船に搭載してもよい。
また、水素製造セル(10)から発生した水素を含むガスは、燃料電池(30)に直接供給することもできるが、水素を含むガスを貯蔵する水素タンク(24)を設けて、水素タンク(24)から燃料電池(30)に供給することが好ましい。
さらに、水素を含むガスと未反応メタノール水溶液を分離する気液分離器(23)を設けて、未反応メタノール水溶液を水素製造セル(10)に循環させることが好ましい。それ以外に、酸素オフガスから生成水と未反応メタノール水溶液を分離する気液分離器(27)を設けてもよい。
なお、図示していないが、これら以外にバックアップ電池を設けることもできる。
【0019】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置は、図1(c)に示すように、水素製造セル(10)、及び水素製造装置を運転するための補機を有するものである。
水素製造セル(10)の構造は、隔膜(11)の一方の面に燃料極(12)を設け、燃料極(12)に有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を供給するための流路(13)を備え、かつ、隔膜(11)の他方の面に酸化極(14)を設け、酸化極(14)に酸化剤(空気)を供給するための流路(15)を備えたものである。
【0020】
水素製造装置を運転するための補機として、燃料極(12)にメタノール水溶液を供給する燃料ポンプ(16)が設けられている。燃料極における流路(13)は、燃料ポンプ(16)と流量調整弁(18)を介して導管で接続されている。
燃料(100%メタノール)は、燃料タンク(20)に貯蔵されており、そこから燃料調整槽(21)に移され、燃料調整槽(21)で水と混合され、例えば、3%程度のメタノール水溶液に調整されて燃料極(12)に供給される。
【0021】
また、同じく補機としてブロア(17)を設け、酸化極(14)に空気を直接供給することもできるが、この図においては、ブロア(17)によって燃料電池(30)に酸化剤貯蔵装置からの酸素を供給し、燃料電池(30)より排出される未反応酸素(酸素オフガス)を利用している。
ここで、燃料電池(30)の酸素極(34)から排出される酸素オフガスを水素製造セル(10)に送り込むことによって、水素製造セル(10)用のブロアが不要になる。水素製造セル(10)の酸化極における流路(15)は、ブロア(17)と流量調整弁(19)、燃料電池(30)を介して接続されている。
さらに、この酸素オフガスは燃料電池(30)の作動温度とほぼ同じ温度(約80℃)を有しているから、これにより、燃料電池(30)の熱から制御装置(37)を保護すると共に、酸素オフガスの熱を水素製造セル(10)を加温する熱源として利用することができる。
また、2以上の水素製造装置を組み合わせて使用する場合には、一方の水素製造セル(10)の酸化極(14)に供給する酸素(空気)として、他方の水素製造セル(10)から排出される酸素オフガス(排空気)を利用することができる。
【0022】
上記のような構成の水素製造装置において、電気エネルギーを燃料ポンプ(16)とブロア(17)に供給してこれを動かし、流量調整弁(18)を開放すると、燃料ポンプ(16)によってメタノール水溶液が燃料調整槽(21)から流路(13)を通り燃料極(12)に供給され、また、流量調整弁(19)を開放すると、ブロア(17)によって酸化剤貯蔵装置からの酸素が燃料電池(30)を介して流路(15)を通り酸化極(14)に供給される。
これによって、燃料極と酸化極(空気極)で後述するような反応が生じて燃料極(12)側から水素を含むガスが発生する。
【0023】
また、水素を含むガスの発生量は、水素製造セル(10)の電圧(開回路電圧又は運転電圧)をモニターする電圧調整器(22)を設けて、燃料及び酸素(空気)の供給量若しくは濃度、並びに取り出す電気エネルギー又は印加する電気エネルギーをコントロールすることにより、調整することができる。
発生した水素を含むガスは、気液分離器(23)に通して、水素を含むガスと未反応メタノール水溶液に分離され、水素を含むガスは水素タンク(24)に貯蔵される。
分離された未反応メタノール水溶液の一部又は全部は、導管(25)によって燃料調整槽(21)に戻し循環させる。場合によっては系外から水を供給するようにしてもよい。
【0024】
水素製造装置から排出された酸素オフガスには、生成水とクロスオーバー現象により燃料極から透過してきたメタノール水溶液のうち未反応のものが含まれているから、この酸素オフガスは、気液分離器(27)を通して生成水と未反応メタノール水溶液を分離し、二酸化炭素除去装置(28)によって二酸化炭素を除去した後、大気中に排出する。
分離された生成水と未反応メタノール水溶液の一部又は全部は、導管(29)によって燃料調整槽(21)に戻し循環させる。
【0025】
燃料電池(30)の水素極(32)には、水素タンク(24)に貯蔵されている水素が流量調整弁(26)を介して供給され、酸素極(34)には、ブロア(17)から酸素が流量調整弁(19)を介して供給され、水素極側では式〔1〕の反応が、酸素極側では式〔2〕の反応がそれぞれ起き、燃料電池全体としては、式〔3〕の反応が起きて、水(水蒸気)が生成し、電気(直流電力)が発生する。
2→2H++2e-・・・〔1〕
2H++2e-+(1/2)O2→H2O・・・〔2〕
2+(1/2)O2→H2O・・・〔3〕
【0026】
燃料電池(30)としては、燃料が水素であれば、どのようなものでも使用できるが、100℃以下の低温で運転が可能な固体高分子型燃料電池(PEFC)が好ましい。固体高分子型燃料電池としては、周知の単セルを複数積層した燃料電池スタックを採用することができる。1つの単セルは、ナフィオン(デュポン社の商標)といった固体高分子電解質膜(31)、それを両側から挟み込む拡散電極である水素極(32)及び酸素極(34)、さらにそれらを両側から挟み込む2枚のセパレータ等を備えている。セパレータの両面には、凹凸が形成されており、挟み込んだ水素極と酸素極との間で、単セル内ガス流路(33)、(35)を形成している。このうち、水素極との間で形成される単セル内ガス流路(33)には、供給された水素ガスが、一方、酸素極との間で形成される単セル内ガス流路(35)には、酸素が、それぞれ流れている。
【0027】
上記のように、燃料電池の酸素極(34)側では、式〔2〕に従って水蒸気(H2O)が生成するため、燃料電池から排出される酸素オフガスには、多量の水蒸気が含まれている。燃料電池(30)の酸素極(34)から排出される酸素オフガスを水素製造セル(10)に送り込まない場合には、酸素オフガスに含まれている水蒸気は、凝縮器により凝縮させ、水として回収することが好ましい。
【0028】
燃料電池(30)の発電は発熱を伴う。上記の固体高分子型燃料電池(PEFC)の場合、高分子電解質膜は含水している状態でプロトン伝導性を示すため、燃料電池の発熱に伴い高分子電解質膜が乾燥し、含水率が低下すると燃料電池の内部抵抗が増大し発電能力が低下する。したがって、高分子電解質膜の乾燥を防ぐために燃料電池を冷却し、適正運転温度(約80℃)に保持する必要がある。一方、水素製造装置は、後述する実施例に示すように、温度が高い方が水素発生効率が高くなるから、この燃料電池の発熱を熱交換手段を設けて水素製造装置の加熱に利用することが好ましい。
また、水素製造装置は低温で作動するので、昇温のためのヒータを設けることは図1(b)及び(c)に示すように不要であるが、必要に応じて設けてもよい。
【0029】
従来は、高分子電解質膜を湿潤状態に保持するため、改質ガス及び/又は反応空気を加湿してから燃料電池本体に供給していたが、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置は、有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液等)を供給する燃料極側から水素を含むガスを取り出すものであり、水素は加湿されているから、加湿器は不要とすることができる。さらに、水素製造セル(10)から発生した水素を含むガスは、従来の改質装置で製造した改質ガスのように高温ではないから、冷却せずに燃料電池(30)に供給することができる。
また、燃料電池に供給する燃料としては、水素製造セル(10)から発生した水素のみを供給する場合と水素を含むメタノール水溶液を供給する場合が考えられる。水素を含むメタノール水溶液を供給する場合には、気液分離器(23)は不要である。
【0030】
燃料電池(30)で発電した直流電力は、電力変換装置(36)に導入され、そのDC/DCコンバータで昇圧され、又はDC/ACインバータにより交流電力に変換されて出力される。また、補機用コンバータで安定化した直流電力は、燃料ポンプ(16)、ブロア(17)等の補機類の駆動電源などとして使用され、交流電力は潜水船の駆動電源として利用される。
これら一連の発電運転において、制御装置(37)は、水素製造セル(10)の電圧調整器(22)、燃料電池(30)、電力変換装置(36)、燃料ポンプ(16)、ブロア(17)等の補機類の動作を制御する。
【0031】
潜水船の推進装置としては、例えば、モータと該モータの回転軸に装着された推進用プロペラからなる周知の手段を採用することができる。燃料電池で発生した直流電力は、上記のようにDC/ACインバータにより交流電力に変換され、潜水船の動力源であるモータに供給され、該モータを駆動し、該モータの回転軸に装着された推進用プロペラを回転駆動する。
なお、燃料電池で発生した電気は、前探ソナーや投光器、観測機器などへも供給される。
【0032】
また、燃料電池で発生した電気を蓄電するために、電気エネルギー貯蔵装置を設けることが好ましい。燃料電池で発生した電気は、制御装置を用いることにより、モータの負荷及び電気エネルギー貯蔵装置の蓄電量に応じて、モータ及び電気エネルギー貯蔵装置に供給される。具体的には、例えば、加速時等において、モータの負荷が大きい時には、燃料電池と電気エネルギー貯蔵装置からの電気をモータへ供給する。又減速時、制動時等においては、モータから得られる回生電力を電気エネルギー貯蔵装置に供給する。電気エネルギー貯蔵装置としては、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタ等を使用することができる。
【0033】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置における水素製造セル(10)は、上記のように、隔膜(11)と、隔膜(11)の一方の面に設けた燃料極(12)と、隔膜(11)の他方の面に設けた酸化極(14)とを基本的な構成としている。例えば、このような構成のものとして、直接メタノール型燃料電池で採用されているようなMEA(電解質/電極接合体)を採用することができる。
【0034】
MEAの作製方法は限定されるものではないが、燃料極と空気極をホットプレスによって隔膜の両面に接合する従来と同様の方法で作製することができる。
【0035】
隔膜としては、燃料電池において高分子電解質膜として使用されているプロトン導電性固体電解質膜を用いることができる。プロトン導電性固体電解質膜としては、デュポン社のナフィオン膜等のスルホン酸基を持つパーフルオロカーボンスルホン酸系膜が好ましい。
【0036】
燃料極及び酸化極(空気極)は、導電性を有し、触媒活性を有する電極であることが好ましく、例えば、ガス拡散層に、炭素粉末等からなる担体上に貴金属を担持させた触媒とPTFE樹脂等の結着剤とナフィオン溶液等のイオン導電性を付与するための物質とを含有する触媒ペーストを塗布し乾燥して作製することができる。
ガス拡散層としては、撥水処理を行ったカーボンペーパー等からなるものが好ましい。
燃料極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
空気極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
【0037】
上記のような構成の水素製造装置において、燃料極にメタノール水溶液等の有機物を含む燃料を供給し、酸化極(空気極)に空気、酸素、過酸化水素等の酸化剤を供給すると、特定の条件下で、燃料極に水素を含むガスが発生する。
【0038】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置の水素発生方法は、従来の水素製造装置の水素発生方法とは全く異なるものであり、また、現時点ではそのメカニズムを説明することは困難である。以下に現時点での推定を示すが、全く新規な反応が生じている可能性も否定はできない。
【0039】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置では後述のごとく、30〜90℃といった低温で、しかもメタノールと水を供給している燃料極側から、水素を含むガスが発生している。水素製造セルに外部から電気エネルギーを供給しない場合には、70〜80%程度の水素濃度のガスが発生し、水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加した場合には、80%以上の水素濃度のガスが発生している。しかも、そのガスの発生は両極の開回路電圧又は運転電圧に依存していることが分かっている。このような結果から水素発生のメカニズムを以下のように推定する。以下、メカニズムの説明を簡単にするため、開回路条件にて説明する。
【0040】
例えば、水素製造装置に、燃料としてメタノールを使用した場合、燃料極では、直接メタノール型燃料電池の場合と同様に、触媒により、先ずプロトンが生成すると考えられる。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-・・・・・(1)
上記(1)の反応は、触媒としてPt−Ruを使用した場合には、メタノールがPt表面に吸着し電気化学的酸化反応が以下のように逐次的に起こり表面に強く吸着した吸着化学種を生成することにより進行するといわれている(「電池便覧 第3版」平成13年2月20日、丸善(株)発行、第406頁)。
CH3OH+Pt→Pt−(CH3OH)ads
→Pt−(CH2OH)ads+H++e-
Pt−(CH2OH)ads→Pt−(CHOH)ads+H++e-
Pt−(CHOH)ads →Pt−(COH)ads+H++e-
Pt−(COH)ads →Pt−(CO)ads+H++e-
上記のPt−(CO)adsをさらに酸化するためには水から生成した吸着OHが必要とされる。
Ru+H2O→Ru−(H2O)ads
→Ru−(OH)ads +H++e-
Ru−(OH)ads +Pt−(CO)ads→Ru+Pt+CO2+H++e-
【0041】
直接メタノール型燃料電池の場合には、(1)式の反応により燃料極において生成したH+(プロトン)はプロトン導電性固体電解質膜中を移動して、酸化極において、酸化極に供給された酸素を含む気体又は酸素と以下の反応を生じる。
3/2O2+6H++6e-→3H2O・・・・・(2)
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置が、開回路の場合には、(1)式の反応により生成したe-が外部回路を通って酸化極に供給されないので、(2)式の反応が起きるためには、酸化極で別の反応が起きてe-が供給される必要がある。
【0042】
一方、直接メタノール型燃料電池では、ナフィオン等のプロトン導電性固体電解質膜を用いた場合にCH3OHが燃料極から酸化極側へ透過するクロスオーバー現象が知られており、酸化極において、以下のクロスオーバーメタノールの電解酸化反応が起きている可能性がある。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-・・・・・(3)
この(3)式の反応が起きれば、この反応により生成したe-が供給されて(2)式の反応が起きる。
【0043】
そして、(3)式の反応により生成したH+(プロトン)はプロトン導電性固体電解質膜中を移動して、燃料極において、以下の反応が起き、水素が発生する。
6H++6e-→3H2・・・・・(4)
ここで、(1)式の反応により燃料極において生成したH+とe-の酸化極への移動と、(3)式の反応により酸化極において生成したH+とe-の燃料極への移動は見かけ上打ち消されていると考えられる。
その場合には、酸化極においては、(3)式の反応により生成したH+とe-により(2)式の反応が起き、燃料極においては、上記(1)式の反応により生成したH+とe-により(4)式の反応が起きると推定される。
【0044】
燃料極上で(1)式と(4)式の反応が進行し、酸化極上で(2)式と(3)式の反応が進行すると仮定すると、トータルとして、以下の(5)式が成立することが考えられる。
2CH3OH+2H2O+3/2O2→2CO2+3H2O+3H2・・・・・(5)
この反応の理論効率は、59%(水素3モルの発熱量/メタノール2モルの発熱量)となる。
【0045】
しかし、上記の反応について、(1)式の反応の標準電極電位はE0=0.046V、(4)式の反応の標準電極電位はE0=0.0Vであり、標準状態では、両者を組み合わせた場合、(1)式の方が正極、(4)式の方が負極となるため、(1)式の反応は左辺に進行しようとし、(4)式の反応も左辺に進行しようとするため、水素は発生しない。
ここで、(1)式の反応を右辺側、(4)式の反応も右辺側に進行させるためには、(1)式を負極、(4)式を正極として機能させることが不可欠であり、燃料極の全域が等電位であると仮定すると、メタノール酸化電位を低電位側へシフトさせるか、水素発生電位を高電位側へシフトさせることが必要である。
しかしながら、燃料極が等電位でない場合には、燃料極中でメタノールと水からH+を抜く(1)式の反応とH+とe-が結合して水素を生成する(4)式の反応が同時に進行している可能性があると考えられる。
【0046】
後述する実施例のように、運転温度の高い方が、水素が発生しやすいことからみて、外部からの反応熱が供給されて、吸熱反応である(1)及び(3)式の反応が右辺に進行していることが考えられる。
メタノールに関しては、(1)及び(3)式の反応以外に、クロスオーバー現象により、燃料極から透過したメタノールが空気極触媒の表面で酸素によって酸化される以下の副反応が起きている。
CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O・・・・・(6)
この(6)式の反応は発熱反応であるから、この発熱によって(1)及び(3)式の反応の熱量が供給されるとして理解できる。
【0047】
本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(以下、「開回路条件」という。)の場合は、後述する実施例から明らかなように、酸素(空気)の供給量が少なくなり、開回路電圧が300〜800mVになると、水素が発生しているが、これは、空気極側に透過してきたメタノールが(6)式によって酸化されるのが抑制され、(3)式のH+生成反応が支配的となり、(4)式の反応によって水素が発生したものと推定される。
【0048】
本願請求項3に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(以下、「放電条件」という。)の場合も、開回路条件での水素発生メカニズムと類似のメカニズムで水素が発生しているものと考えられる。但し、開回路条件の場合と異なり、放電電流相当分のH+が燃料極から酸化極に移動することでセル全体の電気的中性条件を保つ必要があるため、燃料極では(4)式より(1)式が、酸化極では(3)式より(2)式が進行するものと考えられる。
後述する実施例から明らかなように、放電電流が大きくなり(酸化極へe-が多量に供給され)、放電電圧が200mVより低い場合には、水素は発生しないが、これは、メタノール水溶液の電気分解に必要な電圧に達していないため、水素発生が生じないものと推定される。
また、酸素(空気)が多量に供給されたり、放電電圧が600mVより高い場合にも、水素が発生しないが、これは、空気極側に透過してきたメタノールが(6)式によって酸化されるため、(3)式のH+生成反応が生じないものと推定される。
【0049】
一方、酸素(空気)の供給量が少ない場合には、放電電流が小さくなり、放電電圧(運転電圧)が200〜600mVになると、水素が発生しているが、これは、空気極側に透過してきたメタノールが(6)式によって酸化されるのが抑制され、(3)式のH+生成反応が支配的となり、(4)式の反応によって水素が発生したものと推定される。
【0050】
本願請求項4に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(以下、「充電条件」という。)の場合も、開回路条件での水素発生メカニズムと類似のメカニズムで水素が発生しているものと考えられる。但し、開回路条件の場合と異なり、電解電流相当分のH+が酸化極から燃料極に移動することでセル全体の電気的中性条件を保つ必要があるため、燃料極では(1)式より(4)式が、酸化極では(2)式より(3)式が進行するものと考えられる。
すなわち、本発明の充電条件の場合は、燃料極をカソードとし酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する(外部から燃料極にe-を供給する)ものであるから、基本的には電気分解が起きており、後述する実施例から明らかなように、印加する電気エネルギー(印加電圧)を大きくすれば、水素が多く発生しているが、これは、外部から燃料極に供給されるe-が多くなり、(3)式のメタノールの電解酸化反応及び(4)式の反応6H++6e-→3H2が促進されたためと考えられる。
【0051】
しかしながら、後述するように、エネルギー効率は、酸素(空気)の供給量が少ない、印加電圧(運転電圧)が400〜600mVという低い範囲で高くなっている。これは、この範囲では、前述のように、外部から電気エネルギーを供給しない開回路条件又は放電条件の場合でも、空気極側に透過してきたメタノールが(6)式によって酸化されるのが抑制され、(3)式のH+生成反応が支配的となり、(4)式のH+生成反応によって水素が発生していると推定されるが、充電条件の場合には、外部から電気エネルギーが印加された分に加えて、上記開回路条件又は放電条件の場合と同様に水素が発生しているためと推定される。
【0052】
ここで、セルの電位がどのような意味を持つかについて説明する。一般に電解質膜を挟んで両極にガス電極を構成したセルの電圧は、電解質内を導電するイオンの両極での化学ポテンシャルの差によって発生する。
つまり、両極における分極を無視すると、電解質にプロトン(水素イオン)導電性固体電解質膜を用いているため、観測している電圧はセルの両極での水素の化学ポテンシャル、言いかえると水素分圧の差を示している。
【0053】
本発明においては、後述する実施例のように、燃料極と酸化極との間の電圧が一定範囲にある場合に、燃料極側から水素が発生しているので、両極での水素の化学ポテンシャルの差が一定範囲になった場合に、上記(1)〜(6)式の反応が進み、水素が発生すると推定される。
【0054】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置においては、水素製造セルに外部から電気エネルギーを供給しない場合でも、外部に電気エネルギーを取り出す場合でも、また、外部から電気エネルギーを印加した場合でも、燃料極と酸化極(空気極)との間の電圧(開回路電圧又は運転電圧)を調整することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
後述する実施例から明らかなように、開回路条件の場合には、開回路電圧が300〜800mVで水素が発生しており、放電条件の場合には、放電電圧(運転電圧)が200〜600mVで水素が発生しており、充電条件の場合には、印加電圧(運転電圧)が300〜1000mV(400〜600mVでエネルギー効率は高い)で水素が発生しているから、この範囲で、開回路電圧又は運転電圧を調整することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
【0055】
開回路電圧若しくは運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量(水素生成速度)は、以下の実施例に示すとおり、酸化剤(酸素を含む気体又は酸素、過酸化水素を含む液体)の供給量を調整すること、酸化剤の濃度(酸素を含む気体中の酸素濃度)を調整すること、有機物を含む燃料の供給量を調整すること、有機物を含む燃料の濃度を調整することにより調整することができる。
また、上記以外に、放電条件の場合は、外部に取り出す電気エネルギーを調整すること(外部に取り出す電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって外部に取り出す電圧を調整すること)によって、充電条件の場合は、印加する電気エネルギーを調整すること(印加する電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって印加する電圧を調整すること)によって、運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量を調整することができる。
【0056】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置においては、有機物を含む燃料を100℃以下で分解することができるから、水素製造装置の作動温度を100℃以下にすることができる。作動温度は、30〜90℃とすることが好ましい。運転温度を30〜90℃の範囲で調整することにより、以下の実施例に示すとおり、開回路電圧若しくは運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量を調整することができる。
なお、100℃以上での運転が必要であった従来の改質技術では、水は水蒸気になり、有機物を含む燃料はガス化し、このような条件下で水素を発生させても、水素を分離する手段を別途用いる必要があるため、本発明は、この点において有利である。
しかし、有機物を含む燃料を100℃以上の温度で分解すると、上記のようなデメリットはあるが、本発明は、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置を100℃を若干超える温度で作動させることを否定するものではない。
【0057】
推定される原理から考えて、有機物を含む燃料としては、プロトン導電性の隔膜を透過し、電気化学的に酸化されてプロトンを生成する液体又は気体燃料であればよく、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールなどのアルコール、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド、蟻酸などのカルボン酸、ジエチルエーテルなどのエーテルを含む液体燃料が好ましい。有機物を含む燃料は水と共に供給されるから、アルコールと水を含む溶液、その中でも、メタノールを含む水溶液が好ましい。なお、上記した燃料の一例としてのメタノールを含む水溶液は、少なくともメタノールと水を含む溶液であり、水素を含むガスを発生する領域において、その濃度は任意に選択することができる。
【0058】
酸化剤としては、気体又は液体の酸化剤を使用することができる。気体の酸化剤としては、酸素を含む気体又は酸素が好ましい。酸素を含む気体の酸素濃度は、10%以上が特に好ましい。液体の酸化剤としては、過酸化水素を含む液体が好ましい。
【0059】
本発明においては、水素製造装置に投入した燃料が該装置内で一回で消費され、水素に分解される割合は低いので、燃料の循環手段を設けて、水素への変換率を高めることが好ましい。
【0060】
本発明の潜水船に搭載する水素製造装置は、燃料極側から水素を含むガスを取り出す手段を備えており、水素を回収するものであるが、二酸化炭素も回収することが好ましい。100℃以下という低い温度で運転するものであるから、水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を、簡便な手段により設けることができる。
次に、本発明の実施例(水素製造例)を示すが、触媒、PTFE、ナフィオンの割合等、触媒層、ガス拡散層、電解質膜の厚さ等は適宜変更し得るものであり、実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
以下に、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造する場合の例を示す。
(水素製造例1−1)
実施例1(製造例1−1〜1−10)における水素製造セルは代表的な直接メタノール型燃料電池と同じ構造とした。
その水素製造セルの概略を図2に示す。
すなわち、電解質にデュポン社製プロトン導電性電解質膜(ナフィオン115)を用い、空気極にはカーボンペーパー(東レ製)を5%濃度のポリテトラフルオロエチレン分散液に浸漬したのち、360℃で焼成して撥水処理し、その片面に空気極触媒(白金担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液(アルドリッチ製)を混合して作製した空気極触媒ペーストを塗布して空気極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、空気極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は65%:15%:20%とした。このようにして作製した空気極の触媒量は白金換算で1mg/cm2であった。
【0062】
さらに同じ方法を用いてカーボンペーパーを撥水処理し、さらにその片面に燃料極触媒(白金ルテニウム担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液を混合して作製した燃料極触媒ペーストを塗布して燃料極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、燃料極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は55%:15%:30%とした。このようにして作製した燃料極の触媒量は白金−ルテニウム換算で1mg/cm2であった。
【0063】
上記、電解質膜、空気極触媒付きガス拡散層、燃料極触媒付きガス拡散層を140℃、100kg/cm2でホットプレスによって接合してMEAを作製した。このようにして作製したMEAの有効電極面積は60.8cm2であった。作製後の空気極及び燃料極の触媒層、空気極及び燃料極のガス拡散層の厚さは、それぞれ、約30μm、および170μmでほぼ同じであった。
【0064】
上記のMEAを、それぞれ、空気を流すため、および燃料を流すための流路を設け、さらに、ガスリークを防止するためにフェノール樹脂を含浸させたグラファイト製の空気極セパレータ板、燃料極セパレータ板によって挟み込み、単セルを構成した。また、燃料および空気のリークを防止するためにMEAの周辺部にはシリコンゴム製のパッキングを設けた。
【0065】
このようにして作製した水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度(運転温度)30〜70℃で、空気極側に空気を0〜400ml/分の流量、燃料極側に0.5M〜2Mのメタノール水溶液(燃料)を2〜15ml/分の流量で流し、その時の燃料極と空気極の電圧差(オープン電圧)、燃料極側で発生するガス量、ガス組成について検討を行った。
【0066】
まず、セルへのメタノール水溶液(燃料)の流量を8ml/分で一定とし、30℃、50℃、70℃の各温度で空気流量を変化させ、燃料極側から発生するガスの発生量を測定した。ガス発生量の測定には水中置換法を用いた。また、発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
【0067】
その結果を図3に示す。
これより、各温度において、空気流量を少なくすることによって、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、水素生成速度は温度が高いほど、大きいことが分かった。さらに、空気流量とセルの開回路電圧(オープン電圧)との関係を調べると、空気流量を少なくするとそれに伴って、セルの開回路電圧が低下する傾向が認められた。
【0068】
図4に図3の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧400〜600mVで水素が発生することが分かった。また、いずれの温度においても、水素生成速度のピークは450mV付近で観察された。
【0069】
次に、温度70℃、燃料流量8ml/分、空気流量120ml/分の条件でガスを発生させ、ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
その結果、発生ガス中には水素が約70%、二酸化炭素が約15%含まれていることが確認された。なお、COは検出されなかった。
【0070】
(水素製造例1−2)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、次に、セル温度70℃において、濃度1Mのメタノール水溶液(燃料)を、2、8、15ml/分の流量で、それぞれ、空気流量を変化させた時の燃料流量、空気流量と水素生成速度、セルの開回路電圧の関係を図5に示す。
これより、燃料流量の少ない方が、水素生成速度は大きいことが分かった。
【0071】
図6に図5の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存していることが分かった。また、いずれの燃料流量においても、水素製造例1−1と同様に450mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0072】
さらに、本製造例で最大の水素生成速度14.48ml/分が得られた開回路電圧442mVのときの条件(運転温度70℃、燃料濃度1M、燃料流量2ml/分、空気流量100ml/分)での発生ガス中の水素濃度を水素製造例1−1と同様にガスクロマトグラフィーによって求めたところ約70%であった。
【0073】
(水素製造例1−3)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、次に、セル温度70℃において、メタノール水溶液(燃料)を8ml/分の定流量で、燃料濃度を0.5、1、2Mと変化させた条件でそれぞれ、空気流量を変化させた時の燃料流量、空気流量と水素生成速度、セルの開回路電圧の関係を図7に示す。
これより、燃料濃度の低いほうが、水素生成速度は大きいことが分かった。
【0074】
図8に図7の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存し、300〜600mVで水素が発生することが分かった。また、いずれの燃料濃度においても、水素製造例1−1と同様に450mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0075】
(水素製造例1−4)
次に、電解質膜の厚さのガス発生量に与える影響を検討した。
水素製造例1−1〜1−3では、電解質膜にはデュポン社製ナフィオン115(厚さ130μm)を用いたが、同じくデュポン社製ナフィオン112(厚さ50μm)を用いて同様な水素製造セルを構成し、温度70℃、燃料濃度1M、燃料流量を8ml/分で、それぞれ、空気流量を変化させた時の燃料流量、空気流量と水素生成速度、セルの開回路電圧の関係を検討した。
ナフィオン115と112はその材質は同じであり、ここでは純粋に電解質膜の厚さの影響を検討したことになる。検討結果を図9に示す。
【0076】
図10に図9の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度はいずれの電解質膜でもほぼ等しいことが分かった。図より明かなように、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存しており、やはり450mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0077】
(水素製造例1−5)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度30℃、50℃、70℃、90℃で、空気極側に空気を0〜250ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時のセルの開回路電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度の検討を行った。
【0078】
空気流量と水素生成速度との関係を図11に示す。
水素製造例1−1の場合と同様に、各温度において、空気流量を少なくすることによって、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、水素生成速度は温度が高いほど、大きいことが分かった。さらに、空気流量とセルの開回路電圧との関係を調べると、空気流量を少なくするとそれに伴って、セルの開回路電圧が低下する傾向が認められた。
【0079】
図12に図11の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧300〜700mVで水素が発生することが分かった。また、30〜70℃においては、水素生成速度のピークは470〜480mV付近で観察され、90℃においては、440mV付近で観察された。
【0080】
(水素製造例1−6)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃において、燃料を、1.5、2.5、5.0、7.5、10.0ml/分の流量で、それぞれ、空気流量を変化させた時の燃料流量、空気流量と水素生成速度の関係を図13に示す。
これより、先の水素製造例1−2の70℃の結果とは異なり、燃料流量の多い方が、水素生成速度は大きい傾向が見られた。
【0081】
図14に図13の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存し、300〜700mVで水素が発生することが分かった。また、450〜500mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0082】
燃料流量を変化させたときの燃料中のメタノール消費量と水素生成速度を求め、以下の式を用いて開回路条件のエネルギー効率(なお、このエネルギー効率は、段落[0122]の計算式で算出される充電条件のエネルギー効率とは相違する。)を計算した。その結果、開回路条件のエネルギー効率は、燃料流量が5.0ml/分のとき17%、2.5ml/分のとき22%であった。
開回路条件のエネルギー効率(%)=(生成した水素の標準エンタルピー変化/消費した メタノールのエンタルピー変化)×100
【0083】
(水素製造例1−7)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃において、メタノール水溶液(燃料)を5ml/分の定流量で、燃料濃度を0.5、1、2、3Mと変化させた条件で、それぞれ、空気流量を変化させた時の空気流量と水素生成速度の関係を図15に示す。
水素生成速度のピークは、燃料濃度が低くなるにしたがって、空気流量が小さいところに観測された。
【0084】
図16に図15の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存し、300〜700mVで水素が発生することが分かった。また、いずれの燃料濃度においても、470mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0085】
(水素製造例1−8)
水素製造例1−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、酸化ガスを流す酸化極とした)を用いて、セル温度50℃において、燃料濃度1M、燃料流量5ml/分で、酸素濃度を10、21、40、100%と変化させた条件で、それぞれ、酸化ガス流量を変化させた時の酸化ガス流量と水素生成速度の関係を図17に示す。ここで、酸素濃度21%のガスには空気を用い、酸素濃度10%のガスには空気に窒素を混合することによって調製したもの、酸素濃度40%のガスには空気に酸素(酸素濃度100%)を混合することによって調製したものを用いた。
水素生成速度のピークは、酸素濃度が高くなるにしたがって、酸化ガス流量が小さいところに観測された。
【0086】
図18に図17の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は開回路電圧に依存し、400〜800mVで水素が発生することが分かった。また、490〜530mV付近に水素生成速度のピークが観察された。
【0087】
(水素製造例1−9)
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃で、空気極側に空気を60ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を2.6ml/分の流量で流し、ガスを発生させ、200ccサンプリングして、ガス中のCO濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。その結果、サンプリングガスからはCOは検出されなかった(1ppm以下)。なお、この条件でのセルの開回路電圧は477mV、水素生成速度は約10ml/分であった。
【0088】
(水素製造例1−10)
水素製造例1−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、液体である過酸化水素を流す酸化極とした)を用いて、水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度30℃、50℃、70℃、90℃で、酸化極側に1MのH22(過酸化水素)を1〜8ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時のセルの開回路電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度の検討を行った。
【0089】
22流量と水素生成速度との関係を図19に示す。
水素製造例1−1の場合と同様に、各温度において、H22流量を少なくすると、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、水素生成速度は温度が高いほど、大きいことが分かった。さらに、H22流量とセルの開回路電圧との関係を調べると、H22流量を少なくするとそれに伴って、セルの開回路電圧が低下する傾向が認められた。
【0090】
図20に図19の結果を開回路電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧300〜600mVで水素が発生することが分かった。また、30〜50℃においては、水素生成速度のピークは500mV付近で観察され、70〜90℃においては、450mV付近で観察された。
【0091】
ここで、重要な点は、上記実施例1では水素製造セルには外部から一切電流もしくは電圧を印加することは行っておらず、単に内部インピーダンス、1GΩ以上のエレクトロメーターで開回路電圧を計測しながら、燃料及び酸化剤のみを供給している点である。
言いかえると実施例1の水素製造セルでは、燃料及び酸化剤の供給以外に外部からエネルギーを供給することなく、燃料の一部を水素に変換していることになる。
しかも、30℃〜90℃といった脅威的な低温度での改質であり、従来にない、全く新規な水素製造装置であると考えられるから、この水素製造装置を潜水船に搭載することによる効果は大きい。
【実施例2】
【0092】
以下に、本願請求項3に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(放電条件)により水素を製造する場合の例を示す。
【0093】
(水素製造例2−1)
実施例2(製造例2−1〜2−8)における電気エネルギーを取り出す手段を備えた水素製造セルの概略を図21に示す。
燃料極を負極とし空気極を正極として電気エネルギーを取り出す手段を設けた以外は、水素製造例1−1の水素製造セルと同じ構造である。
この水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度(運転温度)50℃で、空気極側に空気を10〜100ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生するガス量、ガス組成について検討を行った。また、発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
【0094】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図22に示す。
空気流量が小さくなるとともに、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0095】
図23に図22の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度(水素発生量)は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧300〜600mVでガスが発生することが分かった。また、空気流量が50〜60ml/分の場合に最も水素が発生しやすいことが分った。さらに、これより空気流量が多いと、水素が発生しにくくなり、100ml/分では、ほとんど水素は発生しなかった。
【0096】
次に、水素生成速度の大きかった、温度50℃、燃料流量5ml/分、空気流量60ml/分、電流密度8.4mA/cm2の条件でガスを発生させ、ガス中の中の水素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
その結果、発生ガス中には水素が約74%含まれ、水素生成速度は5.1ml/分であることが確認された。なお、COは検出されなかった。
【0097】
(水素製造例2−2)
水素製造例2−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度30℃で、空気極側に空気を30〜100ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。
【0098】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図24に示す。
空気流量が小さくなるとともに、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0099】
図25に図24の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧200〜540mVで水素が発生することが分かった。また、空気流量が30〜70ml/分の場合に水素が発生することが分った。空気流量が100ml/分では、水素はほとんど発生しなかった。
【0100】
(水素製造例2−3)
水素製造例2−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度70℃で、空気極側に空気を50〜200ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。
【0101】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図26に示す。
空気流量が小さくなるとともに、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0102】
図27に図26の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧200〜500mVで水素が発生することが分かった。また、空気流量が50〜100ml/分の場合に水素が発生しやすいことが分った。空気流量が150、200ml/分というように大きくなると、水素はほとんど発生しなかった。
【0103】
(水素製造例2−4)
水素製造例2−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度90℃で、空気極側に空気を50〜250ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。
【0104】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図28に示す。
空気流量が小さくなるとともに、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0105】
図29に図28の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧200〜500mVで水素が発生することが分かった。また、空気流量が50〜100ml/分の場合に水素が発生しやすいことが分った。250ml/分では、水素はほとんど発生しなかった。
【0106】
次に、水素製造例2−1〜2−4の各温度における空気流量50ml/分の場合の、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図30に、運転電圧と水素生成速度の関係を図31に示す。
これより、水素生成速度は温度に依存する傾向を示し、温度が高い方が、低い運転電圧で水素が発生し、水素発生量が多いことが分かった。
【0107】
さらに、水素製造例2−1〜2−4の各温度における空気流量100ml/分の場合の、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図32に、運転電圧と水素生成速度の関係を図33に示す。
これより、水素生成速度は温度に依存する傾向を示し、温度が高い方が、低い運転電圧で水素が発生し、水素発生量が多いことが分かった。また、空気流量が100ml/分というように大きいと、温度30℃、50℃という低い温度では、水素はほとんど発生しないことが分かった。
【0108】
(水素製造例2−5)
水素製造例2−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃で、空気極側に空気を50ml/分の流量で、燃料極側の燃料流量を、1.5、2.5、5.0、7.5、10.0ml/分と変化させた条件とし、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。
【0109】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図34に示す。
放電できる限界電流密度は、燃料流量が変化しても、大きく変化しないことが観測された。
【0110】
図35に図34の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は運転電圧に依存し、300〜500mV以上で水素が発生することが分かった。また、450〜500mV付近で水素生成速度が大きいことが観察された。
水素生成速度は、燃料流量にはあまり依存しないことがわかった。
【0111】
(水素製造例2−6)
水素製造例2−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃で、空気極側に空気を50ml/分の流量、燃料極側に燃料を5ml/分の定流量で、燃料濃度を0.5、1、2、3Mと変化させた条件とし、その時に空気極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。
【0112】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図36に示す。
燃料濃度が高くなるとともに、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0113】
図37に図36の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は運転電圧に依存し、300〜600mVで水素が発生することが分かった。
燃料濃度が1Mの場合に、水素が最もよく発生した。
【0114】
(水素製造例2−7)
水素製造例2−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、酸化ガスを流す酸化極とした)を用いて、セル温度50℃で、燃料極側に1Mの燃料濃度の燃料を5ml/分の定流量で、酸化極側に酸化ガスを14.0ml/分の流量、酸素濃度を10、21、40、100%と変化させた条件とし、その時に酸化極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と酸化極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。ここで、酸素濃度21%のガスには空気を用い、酸素濃度10%のガスには空気に窒素を混合することによって調製したもの、酸素濃度40%のガスには空気に酸素(酸素濃度100%)を混合することによって調製したものを用いた。
【0115】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図38に示す。
酸素濃度が低いと、運転電圧が低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0116】
図39に図38の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、それぞれの条件での水素生成速度は運転電圧に依存し、300〜600mVで水素が発生することが分かった。
酸素濃度が高い方が水素生成速度が大きい傾向が観測された。
【0117】
(水素製造例2−8)
水素製造例2−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、液体である過酸化水素を流す酸化極とした)を用いて、水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度30℃、50℃、70℃、90℃で、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量、酸化極側に1MのH22(過酸化水素)を2.6〜5.5ml/分の流量で流し、その時に酸化極と燃料極間を流れる電流を変化させながら、燃料極と酸化極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度について検討を行った。ここで、過酸化水素の流量は、各温度において開回路電圧がほぼ500mVとなるように調整した。
【0118】
この試験における、取り出した電流密度と運転電圧の関係を図40に示す。
温度が70〜90℃では、運転電圧の低下と電流密度の増加の関係はほぼ同じであったが、温度が30℃と低くなると、運転電圧が急激に低下し、放電できる限界電流密度の低下が観察された。
【0119】
図41に図40の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧300〜500mVで水素が発生することが分かった。また、温度が90℃の場合に最も水素が発生しやすく、温度が低いと、運転電圧を高くしないと水素は発生しないことが観察された。
【0120】
ここで、重要な点は、上記実施例2では水素製造セルから外部に電流を取り出していることである。言いかえると実施例2の水素製造セルでは、外部に電気エネルギーを取り出しながら、燃料の一部を水素に変換していることになる。しかも、30〜90℃といった脅威的な低温度での改質であり、従来にない、全く新規な水素製造装置であると考えられるから、この水素製造装置を潜水船に搭載することによる効果は大きい。
【実施例3】
【0121】
以下に、本願請求項4に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(充電条件)により水素を製造する場合の例を示す。
【0122】
(水素製造例3−1)
実施例3(製造例3−1〜3−8)における外部から電気エネルギーを印加する手段を備えてなる水素製造セルの概略を図42に示す。
燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を設けた以外は、水素製造例1−1と同じ構造である。
この水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度(運転温度)50℃で、空気極側に空気を10〜80ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に外部から直流電源を用いて空気極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生するガス量、ガス組成について検討を行った。なお、投入した電気エネルギーに対する生成した水素の化学エネルギーの比を充電条件のエネルギー効率とした。また、発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
充電条件のエネルギー効率(以下、「エネルギー効率」という。)は以下の計算式により算出した。
計算式
エネルギー効率(%)=(H2燃焼熱/印加した電気エネルギー)*100
1分間の生成したH2燃焼熱(kJ)=(H2生成速度ml/分/24.47/1000)*286kJ/mol[HHV]
1分間に印加した電気エネルギー(kJ)=[電圧mV/1000*電流A*60sec]Wsec/1000
ここで、念のために記載するが、本発明の目的は、投入した電気エネルギー以上の化学エネルギーを有する水素ガスを得ようというものであり、決して熱力学の教えるところのエネルギー保存則を無視するものではない。全体として見ると、有機物燃料の一部が酸化されるため、投入した電気エネルギーに有機物燃料の酸化によって消費された化学エネルギーを含めると100%以下になる。本発明では、従来の水電解による水素製造との違いを明確にするため、投入した電気エネルギーに対する生成した水素の化学エネルギーの比をエネルギー効率として記述する。
【0123】
この試験における、印加した電流密度と水素発生速度の関係を図43に示す。
電流密度40mA/cm2以下の条件で水素発生効率(水素発生の電気量効率)100%以上の領域(図43において水素発生効率が100%の線を破線で示してある)があり、この領域で運転を行えば、投入電気エネルギー以上の水素が得られることが分った。
【0124】
図44に図43の結果を運転電圧と水素生成速度の関係として整理した。
これより、水素生成速度(水素発生量)は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、600mV以上では水素発生速度はほぼ一定となること、空気流量が少ない方が水素生成速度が大きい(水素が発生しやすい)ことが分った。
【0125】
印加した電流密度と運転電圧の関係を図45に示す。
図43で認められた水素発生効率100%以上の領域はいずれも図45の600mV以下の運転電圧であった。
【0126】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図46に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧600mV以下で、空気流量30〜50ml/分の場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0127】
次に、エネルギー効率が高かった(1050%)、温度50℃、燃料流量5ml/分、空気流量50ml/分、電流密度4.8mA/cm2の条件でガスを発生させ、ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。その結果、発生ガス中には水素が約86%含まれ、水素生成速度は7.8ml/分であることが確認された。なお、COは検出されなかった。
【0128】
(水素製造例3−2)
水素製造例3−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度30℃で、空気極側に空気を10〜70ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に外部から直流電源を用いて空気極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
【0129】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図47に、運転電圧と水素生成速度の関係を図48に示す。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、空気流量が少ない方が水素が発生しやすいこと、空気流量10ml/分の場合には、600mV以上で水素生成速度はほぼ一定となるが、空気流量30ml/分の場合には、800mV以上で増加の傾向を示し、これよりさらに空気流量が多い場合には、運転電圧が高くないと水素が発生しないことが分った。
【0130】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図49に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧600mV以下で、空気流量30ml/分の場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0131】
(水素製造例3−3)
セル温度を70℃とした以外は、水素製造例3−2と同じ条件で試験を実施し、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
【0132】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図50に、運転電圧と水素生成速度の関係を図51に示す。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、空気流量が少ない方が水素が発生しやすいこと、空気流量10ml/分の場合には、600mV以上で水素生成速度はほぼ一定となるが、空気流量30ml/分の場合には、800mV以上で増加の傾向を示し、これよりさらに空気流量が多い場合には、運転電圧が高くないと水素が発生しないことが分った。
【0133】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図52に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧600mV以下で、空気流量10〜30ml/分の場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0134】
(水素製造例3−4)
水素製造例3−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度90℃で、空気極側に空気を10〜200ml/分の流量、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量で流し、その時に外部から直流電源を用いて空気極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
【0135】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図53に、運転電圧と水素生成速度の関係を図54に示す。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧300mV以上で水素が発生し、空気流量が少ない方が水素が発生しやすいこと、空気流量10ml/分の場合には、500mV以上で水素生成速度はほぼ一定となるが、空気流量50〜100ml/分の場合には、800mV以上で増加の傾向を示し、空気流量200ml/分の場合には、800mV以上でないと水素が発生しないことが分った。
【0136】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図55に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧500mV以下で、空気流量50ml/分の場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0137】
次に、水素製造例3−1〜3−4の各温度における空気流量50ml/分の場合の、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図56に、運転電圧と水素生成速度の関係を図57に示す。
これより、水素生成速度は温度に依存する傾向を示し、運転温度が高い方が、低い運転電圧で水素が発生し、水素生成速度も大きいことが分かった。
【0138】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図58に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、600mV以下で、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0139】
(水素製造例3−5)
水素製造例3−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃で、空気極側に空気を50ml/分の流量で、燃料極側の燃料流量を、1.5、2.5、5.0、7.5、10.0ml/分と変化させた条件とし、その時に外部から直流電源を用いて空気極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
【0140】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図59に、運転電圧と水素生成速度の関係を図60に示す。
水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、燃料流量が多い方が水素が発生しやすく、いずれの燃料流量の場合でも、水素生成速度は800mV以上で増加する傾向が観測された。
【0141】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図61に示す。
いずれの燃料流量の場合も、運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧600mV以下で、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0142】
(水素製造例3−6)
水素製造例3−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃で、空気極側に空気を50ml/分の流量、燃料極側に燃料を5ml/分の定流量で、燃料濃度を0.5、1、2、3Mと変化させた条件とし、その時に外部から直流電源を用いて空気極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と空気極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
【0143】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図62に、運転電圧と水素生成速度の関係を図63に示す。
これより、いずれの燃料濃度においても、0.02A/cm2以上の領域では、印加した電流密度と水素生成速度はほぼ比例することが分かった。
また、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、燃料濃度が高い方が低い運転電圧でも水素が発生しやすく、燃料濃度が2M、3Mの場合には、400〜500mVで急激に水素生成速度が大きくなること、燃料濃度が1Mの場合には、400〜800mVで水素生成速度はほぼ一定であるが、800mV以上で増加の傾向を示し、これよりさらに燃料濃度が低い場合には、運転電圧が高くないと水素が発生しないことが分った。
【0144】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図64に示す。
燃料濃度が0.5Mの場合を除いて、運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧600mV以下で、燃料濃度が1、2、3Mの場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。なお、燃料濃度が0.5Mの場合は、低電圧の領域で水素発生がないため、エネルギー効率の挙動は、他の条件の場合と全く異なるものとなった。
【0145】
(水素製造例3−7)
水素製造例3−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、酸化ガスを流す酸化極とした)を用いて、セル温度50℃で、燃料極側に濃度1Mの燃料を5ml/分の定流量で、酸化極側に酸化ガスを14.0ml/分の流量、酸素濃度を10、21、40、100%と変化させた条件とし、その時に外部から直流電源を用いて酸化極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と酸化極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。ここで、酸素濃度21%のガスには空気を用い、酸素濃度10%のガスには空気に窒素を混合することによって調製したもの、酸素濃度40%のガスには空気に酸素(酸素濃度100%)を混合することによって調製したものを用いた。
【0146】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図65に、運転電圧と水素生成速度の関係を図66に示す。
これより、いずれの酸素濃度においても、0.03A/cm2以上の領域では、印加した電流密度と水素生成速度はほぼ比例することが分かった。
また、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧400mV以上で水素が発生し、酸素濃度が高い方が低い運転電圧でも水素が発生しやすく、400〜800mVで水素生成速度はほぼ一定であるが、800mV以上で増加の傾向を示した。
【0147】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図67に示す。
印加電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、印加電圧600mV以下で、酸素濃度が高い場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0148】
(水素製造例3−8)
水素製造例3−1と同じ水素製造セル(但し、空気極は、液体である過酸化水素を流す酸化極とした)を用いて、水素製造セルを熱風循環型の電気炉内に設置し、セル温度30℃、50℃、70℃、90℃で、燃料極側に1Mのメタノール水溶液(燃料)を5ml/分の流量、酸化極側に1MのH22(過酸化水素)を2.6〜5.5ml/分の流量で流し、その時に外部から直流電源を用いて酸化極と燃料極間に流れる電流を変化させながら、燃料極と酸化極の運転電圧、燃料極側で発生する水素の生成速度、エネルギー効率について検討を行った。
ここで、過酸化水素の流量は、各温度において開回路電圧がほぼ500mVとなるように調整した。
【0149】
この試験における、印加した電流密度と水素生成速度の関係を図68に、運転電圧と水素生成速度の関係を図69に示す。
これより、水素生成速度は運転電圧に依存する傾向を示し、運転電圧500mV以上で水素が発生し、800mV以上で増加の傾向を示し、運転温度が高い方が水素が発生しやすいことが分かった。
【0150】
また、運転電圧とエネルギー効率の関係を図70に示す。
運転電圧が1000mV付近でも、エネルギー効率は100%以上であり、特に、運転電圧800mV以下で、温度90℃の場合に、エネルギー効率が高いことが分かった。
【0151】
ここで、重要な点は、上記実施例3では水素製造セルに外部から印加した電流以上の水素を取り出していることである。言いかえると実施例3の水素製造セルでは、投入した電気エネルギー以上のエネルギーの水素を製造していることになる。しかも、30〜90℃といった脅威的な低温度での改質であり、従来にない、全く新規な水素製造装置であると考えられるから、この水素製造装置を潜水船に搭載することによる効果は大きい。
【0152】
以下の実施例においては、メタノール以外の燃料を使用して、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置により水素を製造する例を示す。
【実施例4】
【0153】
燃料としてエタノールを使用して、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造した。
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度80℃において、燃料極側に、濃度1Mのエタノール水溶液を5ml/分の流量で流し、空気極側に、空気を65ml/分の流量で流し、セルの開回路電圧、燃料極側から発生するガスの生成速度を測定した。発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
結果を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
表1に示されるように、開回路電圧478mVで、水素の発生することが確認されたが、水素生成速度は小さかった。
【実施例5】
【0156】
燃料としてエチレングリコールを使用して、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造した。
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度80℃において、燃料極側に、濃度1Mのエチレングリコール水溶液を5ml/分の流量で流し、空気極側に、空気を105ml/分の流量で流し、セルの開回路電圧、燃料極側から発生するガスの生成速度を測定した。発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
表2に示されるように、開回路電圧474mVで、水素の発生することが確認された。水素生成速度は、燃料がエタノール水溶液の場合と比較すると大きかったが、メタノール水溶液の場合と比較するとかなり小さい。
【実施例6】
【0159】
燃料として2−プロパノールを使用して、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造した。
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度80℃において、燃料極側に、濃度1Mの2−プロパノール水溶液を5ml/分の流量で流し、空気極側に、空気を35ml/分の流量で流し、セルの開回路電圧、燃料極側から発生するガスの生成速度を測定した。発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
結果を表3に示す。
【0160】
【表3】

【0161】
表3に示されるように、開回路電圧514mVで、水素の発生することが確認された。水素生成速度は、燃料がエタノール水溶液、エチレングリコール水溶液の場合と比較すると大きく、最もメタノール水溶液の場合に近かった。特に、発生ガス中の水素濃度が極めて高かった。
【実施例7】
【0162】
燃料としてジエチルエーテルを使用して、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造した。
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度80℃において、燃料極側に、濃度1Mのジエチルエーテル水溶液を5ml/分の流量で流し、空気極側に、空気を20ml/分の流量で流し、セルの開回路電圧、燃料極側から発生するガスの生成速度を測定した。発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
結果を表4に示す。
【0163】
【表4】

【0164】
表4に示されるように、開回路電圧565mVで、水素の発生することが確認された。燃料としてアルコールを用いた場合と比較して、発生ガス中の水素濃度が小さく、水素生成速度も小さかった。
【実施例8】
【0165】
燃料としてホルムアルデヒド、蟻酸を使用して、本願請求項2に係る発明の潜水船に搭載する水素製造装置(開回路条件)により水素を製造した。
水素製造例1−1と同じ水素製造セルを用いて、セル温度50℃において、燃料極側に、それぞれ、濃度1Mのホルムアルデヒド水溶液、濃度1Mの蟻酸水溶液を、5ml/分の流量で流し、空気極側に、空気を0〜100ml/分の流量で流し、セルの開回路電圧、燃料極側から発生するガスの生成速度を測定した。発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
結果を、メタノールを使用した場合とともに、図71及び図72に示す。
【0166】
図71に示されるように、ホルムアルデヒド、蟻酸の場合にも、メタノールと同様に、空気流量を少なくすることによって、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。また、水素生成速度は、メタノールが最も大きく、ホルムアルデヒド、蟻酸の順であり、さらに、この順に、空気流量を少なくしないと、水素が発生しないことが分かった。
【0167】
図72より、ホルムアルデヒド、蟻酸の場合にも、メタノールと同様に、水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧200〜800mVで水素が発生することが分かった。また、蟻酸の場合には、メタノール、ホルムアルデヒドより開回路電圧が低い状態で水素が発生しており、水素生成速度のピークも、メタノール、ホルムアルデヒドが、500mV程度であるのに対し、蟻酸の場合には、低い開回路電圧(350mV程度)で観察された。
【0168】
以上のように、本発明の潜水船に搭載する水素製造装置は、有機物を含む燃料を100℃以下で分解して水素を含むガスを製造することができるものであるから、潜水船に搭載したままで、燃料電池に容易に水素を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1(a)】本発明の潜水船における燃料電池システムのシステムフローの一例を示す図である。
【図1(b)】本発明の潜水船に搭載するパッケージ型燃料電池発電装置の構成の一例を示す概略図である。
【図1(c)】本発明の潜水船に搭載する水素製造装置と燃料電池の関係を示す概略図である。
【図2】実施例1における水素製造セル(外部から電気エネルギーを供給しないもの)の概略図である。
【図3】異なる温度(30〜70℃)における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係を示す図である(水素製造例1−1)。
【図4】異なる温度(30〜70℃)におけるオープン電圧と水素生成速度との関係を示す図である(水素製造例1−1)。
【図5】異なる燃料流量における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係(温度70℃)を示す図である(水素製造例1−2)。
【図6】異なる燃料流量におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(温度70℃)を示す図である(水素製造例1−2)。
【図7】異なる燃料濃度における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係(温度70℃)を示す図である(水素製造例1−3)。
【図8】異なる燃料濃度におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(温度70℃)を示す図である(水素製造例1−3)。
【図9】厚さの異なる電解質膜における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係を示す図である(水素製造例1−4)。
【図10】厚さの異なる電解質膜におけるオープン電圧と水素生成速度との関係を示す図である(水素製造例1−4)。
【図11】異なる温度(30〜90℃)における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係を示す図である(水素製造例1−5)。
【図12】異なる温度(30〜90℃)におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(酸化剤:空気)を示す図である(水素製造例1−5)。
【図13】異なる燃料流量における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−6)。
【図14】異なる燃料流量におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−6)。
【図15】異なる燃料濃度における空気流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−7)。
【図16】異なる燃料濃度におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−7)。
【図17】異なる酸素濃度における酸化ガス流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−8)。
【図18】異なる酸素濃度におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(温度50℃)を示す図である(水素製造例1−8)。
【図19】異なる温度(30〜90℃)におけるH22流量と水素生成速度及びオープン電圧との関係を示す図である(水素製造例1−10)。
【図20】異なる温度(30〜90℃)におけるオープン電圧と水素生成速度との関係(酸化剤:H22)を示す図である(水素製造例1−10)。
【図21】実施例2における水素製造セル(電気エネルギーを取り出す手段を備えたもの)の概略図である。
【図22】異なる空気流量における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−1)。
【図23】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−1)。
【図24】異なる空気流量における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度30℃)を示す図である(水素製造例2−2)。
【図25】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度30℃)を示す図である(水素製造例2−2)。
【図26】異なる空気流量における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度70℃)を示す図である(水素製造例2−3)。
【図27】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度70℃)を示す図である(水素製造例2−3)。
【図28】異なる空気流量における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度90℃)を示す図である(水素製造例2−4)。
【図29】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度90℃)を示す図である(水素製造例2−4)。
【図30】異なる温度における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:空気流量50ml/分)を示す図である。
【図31】異なる温度における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:空気流量50ml/分)を示す図である。
【図32】異なる温度における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:空気流量100ml/分)を示す図である。
【図33】異なる温度における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:空気流量100ml/分)を示す図である。
【図34】異なる燃料流量における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−5)。
【図35】異なる燃料流量における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−5)。
【図36】異なる燃料濃度における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−6)。
【図37】異なる燃料濃度における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−6)。
【図38】異なる酸素濃度における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−7)。
【図39】異なる酸素濃度における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:温度50℃)を示す図である(水素製造例2−7)。
【図40】異なる温度における取り出した電流密度と運転電圧との関係(放電:酸化剤H22)を示す図である(水素製造例2−8)。
【図41】異なる温度における運転電圧と水素生成速度との関係(放電:酸化剤H22)を示す図である(水素製造例2−8)。
【図42】実施例3における水素製造セル(外部から電気エネルギーを印加する手段を備えたもの)の概略図である。
【図43】異なる空気流量における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−1)。
【図44】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−1)。
【図45】異なる空気流量における印加した電流密度と運転電圧との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−1)。
【図46】異なる空気流量における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−1)。
【図47】異なる空気流量における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度30℃)を示す図である(水素製造例3−2)。
【図48】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度30℃)を示す図である(水素製造例3−2)。
【図49】異なる空気流量における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度30℃)を示す図である(水素製造例3−2)。
【図50】異なる空気流量における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度70℃)を示す図である(水素製造例3−3)。
【図51】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度70℃)を示す図である(水素製造例3−3)。
【図52】異なる空気流量における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度70℃)を示す図である(水素製造例3−3)。
【図53】異なる空気流量における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度90℃)を示す図である(水素製造例3−4)。
【図54】異なる空気流量における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度90℃)を示す図である(水素製造例3−4)。
【図55】異なる空気流量における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度90℃)を示す図である(水素製造例3−4)。
【図56】異なる温度における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:空気流量50ml/分)を示す図である。
【図57】異なる温度における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:空気流量50ml/分)を示す図である。
【図58】異なる温度における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:空気流量50ml/分)を示す図である。
【図59】異なる燃料流量における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−5)。
【図60】異なる燃料流量における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−5)。
【図61】異なる燃料流量における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−5)。
【図62】異なる燃料濃度における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−6)。
【図63】異なる燃料濃度における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−6)。
【図64】異なる燃料濃度における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−6)。
【図65】異なる酸素濃度における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−7)。
【図66】異なる酸素濃度における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−7)。
【図67】異なる酸素濃度における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:温度50℃)を示す図である(水素製造例3−7)。
【図68】異なる温度における印加した電流密度と水素生成速度との関係(充電:酸化剤H22)を示す図である(水素製造例3−8)。
【図69】異なる温度における運転電圧と水素生成速度との関係(充電:酸化剤H22)を示す図である(水素製造例3−8)。
【図70】異なる温度における運転電圧とエネルギー効率の関係(充電:酸化剤H22)を示す図である(水素製造例3−8)。
【図71】空気流量と水素生成速度との関係(開回路:温度50℃)を示す図である(実施例8)。
【図72】オープン電圧と水素生成速度との関係(開回路:温度50℃)を示す図である(実施例8)。
【符号の説明】
【0170】
10 水素製造セル
11 隔膜
12 燃料極
13 有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を燃料極12に供給するための流路
14 酸化極(空気極)
15 酸化剤(空気)を酸化極(空気極)14に供給するための流路
16 燃料ポンプ
17 ブロア
18 燃料流量調整弁
19 空気流量調整弁
20 燃料タンク
21 燃料調整槽
22 電圧調整器
23 気液分離器(水素を含むガスと未反応メタノール水溶液を分離)
24 水素タンク
25 未反応メタノール水溶液を燃料調整槽21に戻すための導管
26 水素流量調整弁
27 気液分離器(酸素オフガスから生成水と未反応メタノール水溶液を分離)
28 二酸化炭素除去装置
29 未反応メタノール水溶液を燃料調整槽21に戻すための導管
30 燃料電池
31 固体高分子電解質膜
32 水素極
33 水素を水素極32に供給するための流路
34 酸素極
35 酸素を酸素極34に供給するための流路
36 燃料電池30で発電した直流電力を所定の電力に変換する電力変換装置
37 発電装置全体の制御を行う制御装置
38 パッケージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸化剤を供給して発電を行う燃料電池と、前記燃料電池に供給するための水素を含むガスを製造する水素製造装置と、前記燃料電池で発生した電気により駆動される推進装置とを少なくとも備えてなる潜水船において、前記水素製造装置が、有機物を含む燃料を分解して水素を含むガスを製造するものであり、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなることを特徴とする潜水船。
【請求項2】
前記水素製造装置が、水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする請求項1に記載の潜水船。
【請求項3】
前記水素製造装置が、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする請求項1に記載の潜水船。
【請求項4】
前記水素製造装置が、前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の潜水船。
【請求項5】
前記水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路である水素製造装置、前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有する水素製造装置並びに前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有する水素製造装置の群から選ばれる2以上の水素製造装置を組み合わせて使用することを特徴とする請求項1に記載の潜水船。
【請求項6】
前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が200〜1000mVであることを特徴とする請求項1に記載の潜水船。
【請求項7】
前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が300〜800mVであることを特徴とする請求項2に記載の潜水船。
【請求項8】
前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が200〜600mVであることを特徴とする請求項3に記載の潜水船。
【請求項9】
前記水素製造装置において前記取り出す電気エネルギーを調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項3又は8に記載の潜水船。
【請求項10】
前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が300〜1000mVであることを特徴とする請求項4に記載の潜水船。
【請求項11】
前記水素製造装置において前記印加する電気エネルギーを調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項4又は10に記載の潜水船。
【請求項12】
前記水素製造装置において前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項13】
前記水素製造装置において前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項14】
前記水素製造装置において前記酸化剤の濃度を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項15】
前記水素製造装置において前記有機物と水を含む燃料の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項16】
前記水素製造装置において前記有機物と水を含む燃料の濃度を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項17】
前記水素製造装置の運転温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項18】
前記運転温度が30〜90℃であることを特徴とする請求項17に記載の潜水船。
【請求項19】
前記水素製造装置の燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項20】
前記アルコールがメタノールであることを特徴とする請求項19に記載の潜水船。
【請求項21】
前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が酸素を含む気体又は酸素であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項22】
前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が前記燃料電池又は他の前記水素製造装置から排出される未反応酸素を含む気体であることを特徴とする請求項21に記載の潜水船。
【請求項23】
前記水素製造装置の酸化極に供給する前記酸化剤が過酸化水素を含む液体であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項24】
前記水素製造装置の隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項25】
前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする請求項24に記載の潜水船。
【請求項26】
前記水素製造装置の燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項27】
前記水素製造装置の酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜26のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項28】
前記水素製造装置に前記有機物と水を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする請求項1〜27のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項29】
前記水素製造装置に前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする請求項1〜28のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項30】
前記水素製造装置から発生した前記水素を含むガスを冷却せずに前記燃料電池に供給することを特徴とする請求項1〜29のいずれか一項に記載の潜水船。
【請求項31】
前記水素製造装置の発生する熱を遮断するための断熱材が設けられていないことを特徴とする請求項1〜30のいずれか一項に記載の潜水船。


【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【公開番号】特開2006−179447(P2006−179447A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96957(P2005−96957)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】