説明

潤滑剤供給体及び直動装置

【課題】長期的な潤滑剤保持性能を有し、潤滑剤の放出制御性に優れた潤滑剤供給体、及び長期に渡り安定した潤滑状態が維持された直動装置を提供する。
【解決手段】潤滑剤供給体23は潤滑油を含ませた合成樹脂からなり、潤滑剤供給体23の内部には、潤滑剤が内包され、潤滑剤供給体23の収縮によって前記潤滑剤を放出する感圧性マイクロカプセル30が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤供給体及びこれを備えた直動装置(ボールねじ装置やモノキャリア装置等)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直動装置として、直動案内軸受装置(リニアガイド)や、ボールねじ装置や、モノキャリア装置が提案されている。直動案内軸受装置は、案内レール及びスライダに設けた両ボール溝で構成される軌道を、転動体であるボールが負荷状態で転動することで、前記スライダが前記案内レールに沿って直線移動する装置である。一方、ボールねじ装置は、ねじ軸及びナットに設けた両ボール溝で構成される軌道を、転動体であるボールが負荷状態で転動することで、前記ナットがねじ軸に沿って直線移動する装置である。さらに、モノキャリア装置は、前記直動案内軸受装置及び前記ボールねじ装置とを複合構成した一軸アクチュエータである。これら直動案内軸受装置やボールねじ装置においては、前記軌道の終点から始点へボールを移動させる循環部を有し、この循環部と前記軌道によりボール循環経路が構成されている。
【0003】
このような直動案内装置に使用される潤滑剤供給体としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された潤滑剤供給体は、図6に示すように、潤滑剤供給体120Cは、グリースを含ませたニードルフェルトからなる潤滑剤保持体101と、この潤滑剤保持体101を支持する支持体102とから構成される。前記グリースには、少なくとも基油がカプセル全量の10質量%以上となる含有率で温感カプセルに内包されたマイクロカプセルが、グリース全量の2〜95質量%含有されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−274122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された潤滑剤供給体は、潤滑剤保持体101としてニードルフェルトを採用しているため、長期的な潤滑剤保持性能に改善の余地があった。また、特許文献1に記載された潤滑剤供給体に含まれる温感カプセルは、ある程度の熱がカプセル自体に伝わらないと、カプセルから潤滑剤が放出されないので、その放出制御性に改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、長期的な潤滑剤保持性能を有し、潤滑剤の放出制御性に優れた潤滑剤供給体を提供することにある。また、本発明の目的は、長期に渡り安定した潤滑状態が維持された直動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に係る潤滑剤供給体は、潤滑油を含ませた合成樹脂からなる潤滑剤供給体であって、
前記潤滑剤供給体の内部には、潤滑剤が内包され、前記潤滑剤供給体の収縮によって前記潤滑剤を放出する感圧性マイクロカプセルが含まれることを特徴としている。
また、本発明の請求項2に係る直動案内装置は、直線状に延びる案内部材と、この案内部材の外側に配置されて相対的に直線移動する直動部材と、両部材の対向する位置に設けた転動面で構成される軌道を負荷状態で転動する転動体と、前記軌道の終点から始点へ転動体を移動させる循環部とを有し、この循環部と前記軌道により転動体の循環経路が構成されている直動案内装置において、
前記直動部材の少なくとも一方の直動方向端部に、潤滑油を含ませた合成樹脂からなり、潤滑剤が内包され、前記潤滑剤供給体の収縮による徐放性を有する感圧性マイクロカプセルが内部に含まれる潤滑剤供給体を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期的な潤滑剤保持性能を有し、潤滑剤の放出制御性に優れた潤滑剤供給体を提供することができる。
また、本発明によれば、長期に渡り安定した潤滑状態が維持された直動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る直動装置(直動案内軸受装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る潤滑剤供給体の構成を示す正面図である。
【図3】本発明に係る直動装置(直動案内軸受装置)の一実施形態におけるスライダの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る直動装置(ボールねじ装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る直動装置(モノキャリア装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。
【図6】従来の潤滑剤供給体の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る潤滑剤供給体及び直動案内軸受装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る直動装置(直動案内軸受装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。また、図2は、本発明に係る潤滑剤供給体の構成を示す正面図である。また、図3は本発明に係る直動装置(直動案内軸受装置)の一実施形態におけるスライダの構成を示す分解斜視図である。
【0011】
<直動装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の直動装置は、案内レール10とスライダ20と、転動体としてのボール(図示せず)とを有する。スライダ20は、本体21と、エンドキャップ22と、潤滑剤供給体23と、サイドシール24とを有する。また、案内レール10のボール溝(転動面)10A,11Bと、スライダ20の図示されないボール溝(転動面)とで、ボール(図示せず)が負荷状態で転動する軌道が形成され、軌道の終点から始点へボールを移動させる循環部が、エンドキャップ22内に形成されている。エンドキャップ22とサイドシール24との間に潤滑剤供給体23が配置されている。
【0012】
<潤滑剤供給体>
[構成]
図1〜図3に示すように、潤滑剤供給体23は、エンドキャップ22と略同じ略U字状の外形をなす。潤滑剤供給体23は、後述する潤滑油を含ませた合成樹脂からなる。潤滑剤供給体23は、案内レール10の周囲に位置する部分として、案内レール10の角部のボール溝10aに対向して配置される部分23aと、案内レール10の側面のボール溝10bに対向して配置される部分23bと、案内レール10の上面10cに対向して配置される部分23cとを有する。これらの部分が全て、取り付けた際に案内レール10との間に僅かな隙間が生じるように形成されている。
【0013】
また、この潤滑剤供給体23には、案内レール10の両側部となる位置に、ボルト40を通す貫通穴23dが形成されている(図2参照)。
さらに、潤滑剤供給体23には、複数の感圧性マイクロカプセル(以下、マイクロカプセルと呼ぶ。)30が含有されている。このマイクロカプセル30には、潤滑剤が内包されており、潤滑剤供給体23の収縮によってマイクロカプセル30内の潤滑剤が放出されるようになっている。
潤滑剤供給体23にマイクロカプセル30を含有させる方法としては、成形前の潤滑剤供給体の材料に、マイクロカプセルを入れて、攪拌したものを成型することで得られる。
【0014】
[材料]
次に、潤滑剤供給体23の材料について詳細に説明する。潤滑剤供給体23は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の群から選定した合成樹脂からなる。潤滑剤供給体23に含まれる潤滑剤としては、ポリα−オレフィン油のようなパラフイン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等のいずれかを単独若しくは混合油の形で混ぜて調整した原料を、射出成形により成形したものである。潤滑剤の中には、酸化防止剤、錆止め剤、摩擦防止剤、泡消し剤、極圧剤等の各種添加剤が予め加えられてもよい。
【0015】
潤滑剤供給体23の組成比は、全質量に対してポリオレフィン系樹脂が20〜80質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、潤滑剤80〜20質量%であることがさらに好ましく、80〜50質量%であることが特に好ましい。ポリオレフイン系樹脂が20質量%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ、強度が得られ難い。また、ポリオレフイン系樹脂が80質量%を越える場合(つまり、潤滑剤が20質量%未満の場合)は、潤滑剤の供給が少なくなり、リニアガイド装置のメンテナンスフリー化が困難となる。実用的には、潤滑剤50〜80質量%(ポリオレフィン系樹脂50〜20質量%)が潤滑剤の供給が豊富であり、供給能力が長期間保てるので好適である。
【0016】
上述した合成樹脂の群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700〜5×10の範囲に及んでいる。その中で、平均分子量700〜1×10というワックス(例えば、ポリエチレンワックス)に分類されるものと、平均分子量1×10〜1×10という比較的低分子量のものと、1×10〜5×10という超高分子量のものとを、単独若しくは必要に応じて混合して用いる。比較的低分子量のものと潤滑剤の組合せによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性をもつ潤滑剤含有ポリマ部材が得られる。その中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置換えると、ワックスに分類されるものと、潤滑油との分子量が小さいために潤滑油との親和性が高くなり、結果として保油性が大きくなり、潤滑剤供給能力は低下する(それによって、より長期間に渡って潤滑剤を供給することが可能となる)。また、その反面、機械的強度は低下する。ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭化水素系の物(例えば、パラフィン系合成ワックス)であれば使用できる。それに対して、超分子量のものに置換えると、超高分子量のものと潤滑油との分子量の差が大きいため、潤滑油との親和性が低くなり、結果として、保油性が悪くなり、潤滑剤供給能力は上昇する(それにより、比較的短期間に潤滑剤が供給される)。また、機械的強度も上昇する。
【0017】
射出成形性、機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性のバランスを考慮すると、潤滑剤供給体23における合成樹脂(ポリマ)の組成比は、ワックスに分類されるもの0〜5質量%、比較的低分子量のもの5〜48質量%、超高分子量のもの2〜10質量%であって、かつ3つの樹脂分の合計が20〜50質量%(残りが潤滑剤80〜50質量%)となるような範囲が好適である。
【0018】
リニアガイド装置の長期メンテナンスフリー化を達成するために、スライダ20の端面に配設される潤滑剤供給体23は、スライダ20の一方若しくは両方の端面に少なくとも2枚以上配設し、その中の少なくとも1枚の潤滑剤供給体23にワックスを含有させたものを使用してもよい。ワックスを含有させた潤滑剤供給体23を使用することで潤滑剤供給期間が長くなり、潤滑油補給等のメンテナンスを長期間省略することが可能になる。
【0019】
[その他の材料]
潤滑剤供給体23の機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂に、以下のような熱可塑性及び熱硬化性樹脂を添加したものでもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独又は混合して用いてもよい。
【0020】
[添加剤等]
さらに、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とをより均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加え合ってもよい。
また、機械的強度を向上させるために、充填剤を添加してもよい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、あるいはガラス繊維やアスベスト、金属繊維等の無機繊維類及びこれ等を布状に編組したもの、また有機化合物では、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維やポリエステル繊維等を添加してもよい。
【0021】
さらに、ポリオレフイン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N’−ジフェニル−P−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三−ブチル−5’−メチル−フェニール)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0022】
以上の全ての添加剤(ポリオレフィン+油以外)の添加量としては、添加剤全体として、成形原料全重量の20質量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
なお、スライダ20の端面に配設した潤滑剤供給体23の外側に、さらに、ニトリルゴムなどのゴム材料と芯金を一体化したシール装置を設けてもよい。潤滑剤供給体23から供給される潤滑剤は、直動案内軸受装置自体の潤滑に使われる他、シール装置のゴムリップ部の潤滑にも使われ、ゴムリップ部の磨耗を低減しシール性を維持することにも作用する。
【0023】
[潤滑油]
潤滑剤供給体23に含まれる潤滑油は、従来と同じ、基油(基油又は基油と添加剤)、増ちょう剤、各種添加剤(極圧剤、酸化防止剤等)で構成される。
[マイクロカプセル]
マイクロカプセル30には、鉱油、合成油などからなる基油(基油又は基油と添加剤)が内包されている。なお、マイクロカプセル30に含まれる潤滑油は、潤滑剤供給体23に含まれる潤滑油全量の10〜60質量%が好ましい。マイクロカプセル30に含まれる潤滑油が、潤滑剤供給体23に含まれる潤滑油全量の10質量%未満であると、マイクロカプセルが少なく、マイクロカプセルによる潤滑剤放出の効果が低いという問題が生じ、60質量%を超えると潤滑剤供給体を形成しにくいという問題が生じる。
また、マイクロカプセル30の粒径は、一次粒径で1〜1000μmであることが好ましい。
【0024】
[潤滑剤供給体の設置]
このようにして、マイクロカプセル30が内部に形成された潤滑剤供給体23は、図2に示すように、エンドキャップ22とサイドシール24との間に配置され、サイドシール24の外側から入れたボルト40を用いて、サイドシール24及びエンドキャップ22とともに本体21に取り付けられる。
【0025】
手順としては、まず、案内レール10、本体21、エンドキャップ22、及びボール(図示せず)により、案内レール10と本体21及びエンドキャップ22とで形成されたボール循環経路に、ボールを入れた状態とする。次に、この状態で、エンドキャップ22の外側に潤滑剤供給体23とサイドシール24を配置して、ボルト40を、サイドシール24の取り付け穴24a、潤滑剤供給体23の取り付け穴23、及びエンドキャップ22の取り付け穴22aに通して、その先端を本体21の雌ねじに螺合する。
【0026】
このようにして、潤滑剤供給体23とサイドシール24のシール部が、案内レール10と接触状態で取り付けられる。そして、潤滑剤供給体23から、案内レール10のボール溝10a,10bと上面10cに潤滑油が供給される。そして、潤滑剤供給体23自体に含まれる潤滑油が長期間放出された結果、潤滑剤供給体23が収縮することにより、潤滑剤供給体23内のマイクロカプセル30が押しつぶされ、マイクロカプセル30内から潤滑油が供給される。
【0027】
特に、潤滑剤供給体23の案内レール10に近い部分は潤滑剤の供給量が多いため、潤滑剤供給体23に直接含まれる潤滑剤の減りが早く、潤滑剤供給体23自体の収縮も早い。すなわち、潤滑剤供給体23に含まれるマイクロカプセル30はほぼ全てが一度に割れるわけではない。その結果、潤滑剤の減りが早い部分(例えば、案内レール10に近い部分)のマイクロカプセル30が早い時期に割れ、潤滑剤がマイクロカプセル30から逐次供給されるため、潤滑剤の供給が絶えず供給される。従って、このようなマイクロカプセル30を含まず、潤滑油を含ませた潤滑剤供給体を取り付けた場合と比較して、長期に渡り安定した潤滑状態が維持される。
【0028】
このように、本発明では、潤滑剤供給体から放出された潤滑剤の分だけ潤滑剤が収縮し、それによってマイクロカプセルが割れてその中の潤滑剤が補充される。本発明の構成は、環境温度が低温のときには潤滑剤の供給が十分でなく、環境温度が高温のときには潤滑剤の放出が必要以上に促進され、枯渇する可能性があるという従来の問題を解決するものである。その結果、環境温度に影響されることなく、潤滑剤供給体内に充分な潤滑剤を保持でき、長期に渡り安定した潤滑状態が維持される直動案内軸受装置を提供することができる。
【0029】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の潤滑剤供給体を直動案内軸受装置に適用した直動装置について説明したが、本発明に係る直動装置としては、本発明の潤滑剤供給体をボールねじ装置に適用しても同様の効果を奏する。
図4は、本発明に係る直動装置(ボールねじ装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。図4に示すように、ボールねじ装置は、表面に複数のボール(図示せず)が転動する螺旋状のねじ溝51が形成されたロッド状のねじ軸50と、このねじ軸50が螺合して貫通するナット60とを有する。そして、このナット60の端面には、ねじ軸50とナット60との隙間をシールし、かつこの隙間部分に潤滑油を供給するために、本発明の潤滑剤供給体23が取り付けられている。
このように、本発明の潤滑剤供給体23を備えたボールねじ装置によれば、潤滑剤の放出制御性に優れた潤滑剤供給体23を用いているので、長期に渡り安定した潤滑状態が維持された直動装置を提供することができる。
【0030】
また、本発明に係る直動装置としては、本発明の潤滑剤供給体をモノキャリア装置に適用しても同様の効果を奏する。図5は、本発明に係る直動装置(モノキャリア装置)の一実施形態における構成を示す斜視図である。図5に示すように、モノキャリア装置は、リニアガイド機構と送りねじ機構とを有する。リニアガイド機構は、断面がU字状に形成された案内レール70と、案内レール70のU字状の凹部内に配置されたスライダ80と、案内レール70とスライダ80の間に配置された複数個の転動体Bとで構成される。そして、案内レール70及びスライダ80の互いに対向する位置に配置された転動面で構成される転動通路を転動体Bが負荷転動する。
【0031】
一方、送りねじ機構は、スライダ80内に案内レール70と平行に形成された雌ねじ穴81と、雌ねじ穴81を貫通するねじ軸90とを備えてなる。そして、ねじ軸90の作動により、当該送りねじ機構と前記リニアガイド機構を介して、スライダ80が案内レール70に対して相対的に直線運動する。
そして、スライダ80の端面には、雌ねじ穴81とねじ軸90との隙間をシールし、かつこの隙間部分に潤滑油を供給するために、本発明の潤滑剤供給体23が取り付けられている。
このように、本発明の潤滑剤供給体23を備えたモノキャリア装置によれば、潤滑剤の放出制御性に優れた潤滑剤供給体23を用いているので、長期に渡り安定した潤滑状態が維持された直動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 案内レール
20 スライダ(直動部材)
23 潤滑剤供給体
30 マイクロカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を含ませた合成樹脂からなる潤滑剤供給体であって、
前記潤滑剤供給体の内部には、潤滑剤が内包され、前記潤滑剤供給体の収縮によって前記潤滑剤を放出する感圧性マイクロカプセルが含まれることを特徴とする潤滑剤供給体。
【請求項2】
直線状に延びる案内部材と、この案内部材の外側に配置されて相対的に直線移動する直動部材と、両部材の対向する位置に設けた転動面で構成される軌道を負荷状態で転動する転動体と、前記軌道の終点から始点へ転動体を移動させる循環部とを有し、この循環部と前記軌道により転動体の循環経路が構成されている直動装置において、
前記直動部材の少なくとも一方の直動方向端部に請求項1に記載の潤滑剤供給体を設けたことを特徴とする直動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219837(P2012−219837A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83069(P2011−83069)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】