潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
【課題】環境変動が生じたときや経時においても像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤を供給することができるとともに、固形潤滑剤の寿命や総消費量を正確に求めることができる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体11に摺接する潤滑剤供給ローラ16aと、潤滑剤供給ローラ16aに摺接する固形潤滑剤16bと、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することによって像担持体11上への潤滑剤供給量を調整する可変手段45と、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命を求める算出手段48と、が設けられている。そして、算出手段48は、可変手段45によって可変された像担持体11上への潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命を補正して算出する。
【解決手段】像担持体11に摺接する潤滑剤供給ローラ16aと、潤滑剤供給ローラ16aに摺接する固形潤滑剤16bと、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することによって像担持体11上への潤滑剤供給量を調整する可変手段45と、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命を求める算出手段48と、が設けられている。そして、算出手段48は、可変手段45によって可変された像担持体11上への潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命を補正して算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、そこに設置される潤滑剤供給装置と、プロセスカートリッジと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
【0003】
詳しくは、転写工程後の感光体ドラム上に残留する未転写トナーは、感光体ドラムに当接するクリーニングブレード(クリーニング装置)によってすべて除去されるべきものである。しかし、感光体ドラムとの摩擦によってクリーニングブレードの当接部に欠け(欠損)が生じた場合には、未転写トナーが欠損したクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じてしまったり、すり抜けた未転写トナーが感光体ドラムにフィルミング(融着)してしまったりしていた。
【0004】
このような問題に対して、感光体ドラム上に潤滑剤を塗布することで、感光体ドラム上の摩擦係数が低下してクリーニングブレードの磨耗・欠損や感光体ドラムの劣化が低減されて、経時におけるクリーニング不良やフィルミングの発生を抑止することができる。
【0005】
具体的に、特許文献1において、潤滑剤塗布装置は、感光体ベルト(像担持体)に摺接するブラシローラ(潤滑剤供給ローラ)、ブラシローラに当接する固形潤滑剤、固形潤滑剤をブラシローラに向けて圧接方向に付勢する圧縮スプリング、等で構成される。そして、所定方向に回転するブラシローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、ブラシローラによって削り取られて搬送された潤滑剤が像担持体の表面に塗布(供給)される。
【0006】
一方、特許文献2には、感光体ドラム(像担持体)の総回転数から潤滑剤の消費量を算出する技術が開示されている。
また、特許文献3には、潤滑剤供給ローラ(回転ブラシ)の駆動系を、その他の駆動系から独立して設ける技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の潤滑剤供給装置は、環境変動によって像担持体に供給される潤滑剤の供給量が変化してしまったり、経時において像担持体に供給される潤滑剤の供給量が変化してしまったりするという問題があった。そして、このような不具合が生じてしまうと、潤滑剤供給装置によって像担持体上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまうことになる。
【0008】
このような問題を解決するために、環境変動が生じたときや経時において潤滑剤供給ローラの回転数を可変して潤滑剤供給量を調整する方策が考えられる。しかし、その場合、特許文献2、3の技術を応用して、固形潤滑剤の寿命や総消費量を求めようとしても、正確な固形潤滑剤の寿命や総消費量の値を算出することができなくなってしまう。そして、そのような場合には、寿命に達していない固形潤滑剤を無駄に交換してしまったり、固形潤滑剤の交換時期を逸してしまい潤滑剤供給不良が生じてしまったりすることになる。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、環境変動が生じたときや経時においても像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤を供給することができるとともに、固形潤滑剤の寿命や総消費量を正確に求めることができる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を調整する可変手段と、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラにおける総走行距離又は総駆動時間から前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を求める算出手段と、を備え、前記算出手段は、前記可変手段によって可変された前記像担持体上への潤滑剤の供給量に応じて前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を補正して算出するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって像担持体上への潤滑剤供給量を調整して、その調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラ又は像担持体の総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正している。これにより、環境変動が生じたときや経時においても像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤が供給されるとともに、固形潤滑剤の寿命や総消費量が正確に求められる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】潤滑剤ユニットを示す斜視図である。
【図4】総走行距離の増加にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図5】総走行距離と潤滑剤消費量との関係を示すグラフである。
【図6】絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図7】(A)絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(B)温度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(C)相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、である。
【図8】冬環時、連続通紙時、特殊モード時における、総走行距離の補正係数を示す表図である。
【図9】変形例としての、総走行距離の増加にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図10】変形例としての、絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図11】変形例としての、夏環時、冬環時において潤滑剤供給ローラの回転数を変動したとき、冬環時において潤滑剤供給ローラの回転数を固定したとき、における総走行距離の補正係数を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0014】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0015】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する2次転写ローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着部、28は各プロセスカートリッジ(作像部)10Y、10M、10C、10BKの現像部に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0016】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部12、現像部13(現像装置)、クリーニング部15(クリーニング装置)、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)が一体化されたものである(図2を参照できる。)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに装置本体1に対して交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0017】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0018】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0019】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ12a(帯電部12)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。図示は省略するが、レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0020】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー(不図示である。)により、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0021】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BK(黒色用作像部)の感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0022】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0023】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、潤滑剤供給装置16の位置と除電部(不図示である。)の位置とを順次通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0024】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部(不図示である。)の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0025】
ここで、2次転写ローラ18位置の記録媒体Pは、給紙部7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された転写紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達した記録媒体Pは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0026】
その後、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20に導かれる。定着部20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0027】
次に、図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
なお、図2は黒色用作像部としてのプロセスカートリッジ10BK(モノクロ用のプロセスカートリッジ)を示す構成図である。モノクロ用のプロセスカートリッジ10BKと、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cと、は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、ほぼ同じ構成部材によって構成されているため、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cの図示と説明は適宜省略する。
【0028】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電部12(帯電ローラ)と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像部13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング部15と、感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、が、ケースに一体的に収納されている。
【0029】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
図示は省略するが、感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
感光体ドラム11の導電性支持体(基層)としては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料を用いることができる。
感光体ドラム11は、駆動モータ49によって図2の時計方向に回転駆動される。
【0030】
帯電部12(帯電ローラ)は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材であって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。また、帯電部12(帯電ローラ)は、潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤が付着しないように、感光体ドラム11に対して非接触で対向するように配設されている。
そして、帯電部12には不図示の電源部から所定の電圧(帯電バイアス)が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0031】
現像部(現像装置)13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
【0032】
現像部13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
トナーは、画質向上のために、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。「円形度」は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。)を0.1〜0.5ml加えて、さらに測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理して、分散液濃度が3000〜10000個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
【0033】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法によって形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたもの等を用いることができる。
このような球形トナーを用いる場合、従来は、クリーニングブレード15aと感光体ドラム11との僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。しかし、本実施の形態では、潤滑剤供給装置16によって潤滑剤を感光体ドラム11表面に塗布して、感光体ドラム11上におけるトナー剥離性(除去性)を向上させるために、クリーニング不良の発生が抑止される。
【0034】
クリーニング部15は、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。クリーニング部15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング部15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器(不図示である。)に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング部15内に回収されることになる。ここで、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、記録媒体P(用紙)から生じる紙粉、帯電ローラ12aによる放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0035】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d、等で構成される。なお、ブレード状部材16dは、潤滑剤供給ローラ16aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側の位置で感光体ドラム11に対してカウンタ方向に当接するように構成されている。
このように構成された潤滑剤供給装置16によって、感光体ドラム11上に薄層化された潤滑剤が供給される。なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0036】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像部13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、不図示のトナー補給部によってトナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図2の紙面垂直方向である。)。
【0037】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0038】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0039】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写のトナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング部15内に回収される。
【0040】
ここで、図示は省略するが、装置本体1に設けられたトナー補給部は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像部13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0041】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像部13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像部13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像部13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像部13の第2搬送スクリュ23b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0042】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)の構成・動作について詳しく説明する。
図2に示すように、潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接するブラシ毛が周設された潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d(薄層化ブレード)、等で構成される。
【0043】
ケース16fは、固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する方向に移動できるように(移動を妨げないように)、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納する略箱状部材であって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に保持されている。ケース16fは、固形潤滑剤16bや保持部材16cの圧接方向(固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aを圧接する方向である。)の移動を妨げない範囲で、それらの部材16b、16cとの隙間が比較的小さく設定されていて、潤滑剤供給ローラ16aに対して固形潤滑剤16bが傾いて圧接するのをある程度防止する。
【0044】
潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)は、長さ(毛足)が0.2〜20mm(好ましくは、0.5〜10mm)の範囲のブラシ毛が基布上に植毛されたものを芯金上にスパイラル状に巻き付けたものである。
ブラシ毛の長さが20mmを超えると、経時における感光体ドラム11との繰り返し摺擦によって、ブラシ毛が所定方向に倒毛して、固形潤滑剤16bの掻取性や感光体ドラム11からのトナー除去性が低下してしまう。これに対して、ブラシ毛の長さが0.2mm未満であると、固形潤滑剤16bや感光体ドラム11に対する物理的な当接力が不足してしまう。したがって、ブラシ毛の長さは上述の範囲であることが好ましい。
【0045】
潤滑剤供給ローラ16aは、図2の時計方向に回転する感光体ドラム11に対してカウンタ方向で接触するように、駆動モータ45によって回転駆動される(図2の時計方向の回転である。)。また、潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ毛)は、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その掻き取った潤滑剤を感光体ドラム11との摺接位置まで搬送した後に、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布(供給)する。
なお、本実施の形態において、駆動モータ45は、他の駆動モータ(例えば、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータ49である。)とは独立して潤滑剤供給ローラ16aのみを回転駆動する速度可変型モータであって、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変して感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成されている。すなわち、駆動モータ45が潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することで潤滑剤供給量を調整する可変手段として機能することになるが、これについては後で詳しく説明する。
【0046】
固形潤滑剤16bの後方部には,潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために加圧機構16c、16g、16h、16jが配置されていて、保持部材16cに保持(貼着)された状態の固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢している。ここで、加圧機構(押圧装置)は、保持部材16cと、保持部材16cに回動可能に支持された1対の回動部材16gと、1対の回動部材16gに連結された引張スプリング16h(付勢部材)と、軸受16jと、で構成されている。
【0047】
本実施の形態において、固形潤滑剤16b(潤滑部材)は、主としてチッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して形成したものである。
チッ化ホウ素は放電による特性変化がほとんどないため、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11上で帯電工程や転写工程がおこなわれた後にも放電による劣化が生じにくくなる。また、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。
また、チッ化ホウ素だけからなる潤滑剤を用いてしまうと、感光体ドラム11の表面に供給された潤滑剤がドラム表面全体にいきわたらずに、ドラム表面全体に均一な潤滑剤の皮膜が形成されなくなるおそれがある。そのため、固形潤滑剤16bにチッ化ホウ素の他に脂肪酸金属塩を配合している。これにより、感光体ドラム11表面の全体にわたって潤滑剤の皮膜を効率よく形成することができて、長期にわたって高い潤滑性を維持することができる。脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等のラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩や、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウム等の物質を使用することができる。特に、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体ドラム11上での伸展性が向上して、吸湿性が低くて湿度が変化しても潤滑性が損なわれにくくなる。
また、固形潤滑剤16bに配合する材料としては、脂肪酸金属塩やチッ化ホウ素の他に、シリコーンオイル、フッ素系オイル、天然ワックス等の液状材料やガス状材料を外添剤として用いることもできる。
【0048】
ここで、このように構成された固形潤滑剤16bは、その製造方法の違いによって、圧力成形型のものと、溶融型のものと、に大別される。圧力成形型の固形潤滑剤16bは粉体状の潤滑剤をそのまま押圧成形したものであって、溶融型の固形潤滑剤16bは粉体状の潤滑剤を加熱溶融した後に冷却したものである。このようないずれの型の固形潤滑剤16bであっても、本実施の形態における潤滑剤供給装置16に設置することが可能であるが、本実施の形態では圧力成形型のものを用いている。
【0049】
固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、ブレード状部材16d(薄層化ブレード)が潤滑剤を均一化する部材として機能することになる。ブレード状部材16dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
このとき、潤滑剤供給ローラ16aにより塗布する粉体状の潤滑剤は微粉であるほど、ブレード状部材16dにより感光体ドラム11上に分子膜レベルで薄膜化される。
【0050】
図3は、潤滑剤ユニットを示す斜視図である。図3に示すように、潤滑剤ユニットは、保持部材16c、1対の回動部材16g、引張スプリング16h(付勢部材)、軸受16j等で構成された加圧機構(押圧装置)に、固形潤滑剤16bが設置されたものである。この潤滑剤ユニットは、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に対して着脱可能(交換可能)に構成されている。これによって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)における固形潤滑剤の交換作業が容易化されることになる。
【0051】
図3を参照して、固形潤滑剤16bは、保持部材16cに貼着され保持されている。具体的に、保持部材16cと固形潤滑剤16bとの間に両面テープや接着剤等が介在されて、保持部材16cは固形潤滑剤16bを貼着して保持することになる。ここで、保持部材16cは、コの字状に曲げ加工された板金であって、その両側面に軸受16jを介して回動部材16gを保持するための複数の穴部16c2が形成されている。
【0052】
ここで、保持部材16cには、幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の離れた位置に、1対の回動部材16g(押圧部材)がそれぞれ回動可能に支持されている。この1対の回動部材16gは、引張スプリング16hによる付勢力によってそれぞれ所定方向に回動して保持部材16cを介して固形潤滑剤16bを間接的に押圧して、固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに圧接させるものである。
詳しくは、回動部材16gの両側面には、回動中心となる支軸16g1(軸部)が形成されている。そして、この回動部材16gの支軸16g1が、軸受16jの内径部に挿着された状態で保持部材16cの穴部16c2に嵌合して、回動部材16gが保持部材16cに回動可能に保持されることになる。なお、2つの回動部材16cは、それぞれ、幅方向において左右対称になるように保持部材16cに設置される。
【0053】
また、1対の回動部材16gは、引張スプリング16hで連結されている。詳しくは、引張スプリング16hの両端のフック部が、それぞれ、回動部材16gの穴部に接続されている。
そして、この引張スプリング16hは、ケース16fに圧接するように1対の回動部材16gを互いに異なる方向に回動させて保持部材16cを潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向に付勢する付勢部材として機能することになる。具体的に、2つの回動部材16gは、ケース16fの内壁面に当接するカム形状部(不図示である。)が互いに近づく方向のスプリング力(付勢力)を引張スプリング16hから受ける。これにより、図3の左方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、反時計方向に回動するように付勢される。これに対して、図3の右方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、時計方向に回動するように付勢される。
【0054】
以下、本実施の形態において特徴的な、潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)の構成・動作について詳述する。
図2を参照して、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)では、潤滑剤供給ローラ16aを回転駆動する駆動モータ45が、潤滑剤供給ローラ16aの回転数(回転速度)を可変することによって潤滑剤供給ローラ16aから感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量(潤滑剤供給量)を調整する可変手段として機能する。具体的に、そのときどきにおいて、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を増加させたい場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が増加するように、制御部48によって制御される。これに対して、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を減少させたい場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が低下するように、制御部48によって制御される。これは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の増減に応じて、ほぼ比例的に、潤滑剤供給ローラ16aによって固形潤滑剤16bから削り取られる潤滑剤量が増減するためである。
【0055】
そして、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)に応じて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変するように、制御部48によって駆動モータ45(可変手段)が制御される。詳しくは、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)が所定値に達したときに、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなるように駆動モータ45が制御される。
【0056】
具体的に、図4を参照して、新品状態の潤滑剤供給ローラ16a(潤滑剤供給装置16)の駆動が開始されたときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が基準値αに設定されている。そして、この回転数αは、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離がAkm(例えば、20kmである。)に達するまでの初期の段階で維持される。そして、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離がAkmに達した後の経時の段階から、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御される。
なお、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(累積の走行距離である。)は、潤滑剤供給ローラ16aを独立して駆動する駆動モータ45の累積の駆動時間、潤滑剤供給ローラ16aの回転数、潤滑剤供給ローラ16aの外径、等に基いて制御部48の演算部で算出される。また、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離と総駆動時間とは回転数が可変される場合であっても互いに変換可能な相関のある因子であるため、図4における潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離に基いた制御を、潤滑剤供給ローラ16aの総駆動時間(駆動モータ45の累積の駆動時間である。)に基いておこなうこともできる。
【0057】
このように、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)に応じて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変しているのは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定であるときに、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)によって潤滑剤供給量が変動するためである。
図5は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定であるときの、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離と、固形潤滑剤16bの消費量(潤滑剤消費量)と、の関係を示すグラフである。固形潤滑剤16bとして圧力成形型のものを用いた場合であっても溶融型のものを用いた場合であっても、概ね、初期から経時にかけて総走行距離の増加にともない潤滑剤消費量が減少していき、最終的に潤滑剤消費量が飽和した状態になる。これは、潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが総走行距離の増加にともない低下していって、固形潤滑剤16bを削り取る能力が低下してしまうためである。また、圧力成形型の固形潤滑剤16bと溶融型の固形潤滑剤16bとで、初期的な潤滑剤消費量の変化が異なるのは、それらの硬さの違いにより初期的に潤滑剤供給ローラ16aのブラシ毛が潤滑剤表面になじむまで(削れ易くなるまで)の時間に差異が生じるためである。
【0058】
このような制御をおこなうことで、経時において潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが弱くなって、潤滑剤供給装置16から感光体ドラム11への潤滑剤供給量が低下しそうになっても、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を増加して潤滑剤供給量が低下しないようにしている。これにより、経時において、潤滑剤供給量低下にともない、クリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。
なお、本実施の形態では、固形潤滑剤16bとして圧力成形型のものを用いているため、図5の潤滑剤消費量の変動に合わせるように、図4に示すような潤滑剤供給ローラ16aの回転数の切り替えを1回のみおこなう比較的単純な制御をおこなった。
これに対して、固形潤滑剤16bとして溶解型のものを用いる場合には、図5の潤滑剤消費量の変動に合わせるように、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の切り替えを多段階でおこなうような制御をおこなうことができる(例えば、総走行距離の増加にともない回転数を増、減、増の順に可変する制御である。)。
【0059】
ここで、図2を参照して、本実施の形態において、制御部48の演算部は、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を求める算出手段としても機能する。そして、算出手段としての制御部48(演算部)は、駆動モータ45(可変手段)の回転数制御によって可変された潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を補正して算出する。そして、算出された固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)に基いて、装置本体1の表示パネル(不図示である。)に、固形潤滑剤16bの交換時期が近づいている旨の表示や、固形潤滑剤16bを交換する必要がある旨の表示がおこなわれることになる。
【0060】
本実施の形態における潤滑剤供給装置16は経時における潤滑剤供給量の低下を軽減するために潤滑剤供給ローラ16aの回転数を適宜に可変して潤滑剤供給量の調整制御をおこなっているため、単純に潤滑剤供給ローラ16aの回転数に基いて求めた総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を算出してしまうと、その値に大きな誤差が生じてしまうことになる。具体的に、図4に示す潤滑剤供給ローラ16aの回転数の可変条件に基いて求めた総走行距離からそのまま固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を算出してしまうと、寿命が早目に(又は、総消費量が大目に)算出されてしまうため、交換時期に達していないのに固形潤滑剤16bを交換する必要がある旨の表示がおこなわれて、固形潤滑剤16bが無駄に交換されてしまう等の不具合が生じてしまう。
これに対して、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともなう潤滑剤供給量の変動を考慮して、固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)が補正されてほぼ正確に算出されるため、上述したような不具合が生じにくくなる。なお、潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともない変化する潤滑剤供給量については、図5に示す固形潤滑剤16bの潤滑剤消費の変動特性を加味して、実験やシミュレーションに基いたデータが予め制御部48の記憶部に記憶されている。
そして、このような補正計算は、本実施の形態における潤滑剤供給装置16の潤滑剤供給量制御が、総走行距離のみの1つの要素に基いておこなわれるのではなく、次に述べる環境変動等も合わせた複数の要素に基いておこなわれる場合に、特に有用になる。
【0061】
図2を参照して、本実施の形態では、固形潤滑剤16bの周囲の温湿度に対応する温湿度を検知する検知手段としての絶対湿度検知部41が設置されている。
図2を参照して、検知手段としての絶対湿度検知部41は、主として、固形潤滑剤16bの周囲の温度と同等の温度を検知する温度センサ42と、固形潤滑剤16bの周囲の相対湿度と同等の相対湿度を検知する相対湿度センサ43と、で構成されている。具体的に、絶対湿度検知部41(検知手段)は、温度センサ42と相対湿度センサ43とでそれぞれ検知された温湿度の結果を制御部48に送って、それらの温湿度から制御部48の記憶部に記憶された変換テーブルに基いて絶対湿度(水分量)を求める。なお、温度センサ42と相対湿度センサ43として、それらが一体化された既存の温湿度センサを用いることができる。
なお、このような絶対湿度検知部41(検知手段)が設置される位置としては、固形潤滑剤16bの周囲の温湿度に対応する温湿度を検知できる位置であって、感光体ドラム11に対向する位置よりも感光体ドラム11から充分に離れていて装置本体1の外部の環境を反映しやすい位置(例えば、周囲に熱源となる可動部材がなくて、周囲に熱がこもらないような空間が確保された位置である。)が好ましい。
【0062】
そして、本実施の形態では、検知手段として絶対湿度検知部41によって検知された温湿度(絶対湿度)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数が可変されて感光体ドラム11上への潤滑剤供給量が調整されるように、駆動モータ45(可変手段)が制御されることになる。
詳しくは、絶対湿度検知部41によって検出された絶対湿度が高いときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなって、その時点における潤滑剤供給量が増加するように、駆動モータ45が制御される。これに対して、絶対湿度検知部41によって検出された絶対湿度が低いときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が小さくなって、その時点における潤滑剤供給量が減少するように、駆動モータ45が制御される。
【0063】
具体的に、図6を参照して、絶対湿度として中程度の値(例えば、10〜15g/cm3である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値α(例えば、200rpmである。)になるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として低い値(例えば、10g/cm3以下である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも低い値(例えば、0.8×αである。)になるように制御部48で制御する。さらに、絶対湿度として高い値(例えば、15g/cm3以上である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
【0064】
このように、絶対湿度の高低に応じて潤滑剤供給量を増減しているのは、環境変動のうち温度や相対湿度と潤滑剤供給量との相関関係はそれほど高くなく、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係がとても高いことによるものである。
図7(A)〜(C)は、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)において、環境変動による潤滑剤供給量(潤滑剤消費率)の変化を実験により求めた結果を示すグラフである。図7(A)は絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示し、図7(B)は温度と潤滑剤供給量との関係を示し、図7(C)は相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示す。
図7の実験結果から、絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフ(1次関数)の相関係数は「0.8756」となり、温度や相対湿度に係るものと比べて「1」に近似しており、潤滑剤供給量との相関関係が極めて高いことがわかる。
特に、絶対湿度が相対湿度に比べて潤滑剤供給量との相関関係が高い理由としては、潤滑剤の含水率が低くても僅かな含水率の違いによって、固形潤滑剤16bの磨耗性(潤滑剤供給ローラ16aによる削れやすさである。)が大きく変動するためと考えられる。潤滑剤の含水率は、相対湿度ではなくて、空気中の水分量を示す絶対湿度に依存するため、相対湿度よりも絶対湿度の方が潤滑剤供給量との相関性が高くなるものと考えられる。さらに、潤滑剤供給ローラ16aのブラシ毛は、そのコシの強さが水分量に影響することから、水分量(絶対湿度)が多い場合にはブラシ毛のコシが弱くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が弱まり、水分量(絶対湿度)が少ない場合にはブラシ毛のコシが強くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が強まるため、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係が高くなるものと考えられる。
【0065】
このように装置本体1の周囲の絶対湿度に対応する絶対湿度(絶対湿度検知部41で検知された検知結果である。)の高低に応じて可変手段としての駆動モータ45を制御することで、絶対湿度が変動しても潤滑剤供給量が下限供給量(感光体ドラム11上に不足なく供給されるべき最低限の供給量である。)を下回らないことになる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。特に、本実施の形態では、絶対湿度が低いときにも潤滑剤供給量が多くならないように制御しているため、潤滑剤の過剰供給によって固形潤滑剤16bの寿命が早まってしまう不具合や、感光体ドラム11上に過剰に付着した潤滑剤によって帯電部12(帯電ローラ)等の表面が汚れてしまう不具合も軽減されることになる。
【0066】
そして、先に説明したものと同様に、制御部48(算出手段)は、駆動モータ45の回転数制御によって可変された潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を補正して算出する。すなわち、絶対湿度の変化に基いた潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともなう潤滑剤供給量の変動をも考慮して、固形潤滑剤16bの寿命や総消費量が補正されてほぼ正確に算出されることになる。
【0067】
ここで、本実施の形態において、(1)画像形成装置本体1が所定の低湿域(例えば、絶対湿度が7g/m3以下)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が所定の高湿域(例えば、絶対湿度が15g/m3以上)となる夏環境(夏場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が過不足とならないように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が過不足とならないように)、それらの値を補正して算出することができる。
【0068】
具体的に、夏環境時の使用においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が少なくなるため、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を増加させて、潤滑剤の消費量が標準環境時(通常時)に対して変動しないように制御することができる。
このような制御をおこなったとき、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時と同じであるが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は早くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの走行距離が標準環境時に比べて増加して、寿命と判断する基準値に到達するまでの時間が早くなる。そのため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも短く算出されてしまう。
したがって、図11の「夏環」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される総走行距離の進み方を遅くして、夏環境時の使用においても適正に寿命を算出することができる。
なお、環境の検知は、先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができる。
【0069】
また、冬環境時の使用においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が多くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を低減させて、潤滑剤の消費量が標準環境時(通常時)に対して変動しないように制御することができる。
このような制御をおこなったとき、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時と同じであるが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は遅くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの走行距離が標準環境時に比べて減少して、寿命と判断する基準値に到達するまでの時間が遅くなる。そのため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう。
したがって、図11の「冬環+回転数変動」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「1.2」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境時の使用においても適正に寿命を算出することができる。
【0070】
また、図11の「冬環+回転数固定」は、別の実施例を示すものである。
詳しくは、本実施の形態におけるプロセスカートリッジ10BKは、感光体ドラム11上の未転写トナーを除去するために、クリーニングブレード15aを感光体ドラム11に食込ませている。そのため、低温環境時に、プロセスカートリッジ10BKのケースに使用している材料の温度収縮などにより感光体ドラム11に対するクリーニングブレード15aの食込み量が増加して、感光体ドラム11の駆動トルクが上昇する不具合やクリーニングブレード15aが捲れる不具合などが発生する可能性があった。
このような不具合を回避するため、冬環境時において、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を標準環境時に対して減少させずに標準環境時のものと同等に固定して、潤滑剤の消費量を増加させて、感光体ドラム11の表面の摩擦係数を低下させる制御をおこなうことができる。そして、そのような制御をおこなうときに、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時に比べて増加して潤滑剤寿命は減少しているが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう。
そのため、図11の「冬環+回転数固定」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境時にて通常環境時よりも消費量を増加して使用した場合においても適正に寿命を算出することができる。
【0071】
ここで、本実施の形態では、(1)画像形成装置本体1が所定の低温域(低温高湿域)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が連続通紙にて稼動される条件と、(3)潤滑剤供給装置16による潤滑剤供給量を強制的に増加させる「特殊モード」にて稼動される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、それらの値を補正して算出する。
なお、「特殊モード」とは、出力画像上にメダカ画像が発生した場合等に、その発生を減ずるためにユーザーやサービスマンが装置本体1の操作パネル46におけるボタンを操作することで選択できるモードであって、特殊モードが選択されたときにはそのときの潤滑剤供給ローラ16aの回転数が強制的に増加されて潤滑剤供給量が増加される。
【0072】
このような制御をおこなうのは、上述した3つの条件は、潤滑剤供給量が不足しやすい条件であって、比較的頻繁に起こりうる稼動条件であるためである。
通常、潤滑剤の供給量が充分であればクリーニングブレード15aの欠損やクリーニング不良の発生やフィルミングの発生を抑制することが可能であるが、高画像面積率の画像を連続的に通紙した場合には、感光体ドラム11上にいわゆる融着が発生しやすくなってしまう。この融着は、一般的にトナーに外添される外添剤(環境、耐久変動に対する被帯電性能安定化のために外添されるシリカ等である。)がクリーニングブレード15aをすり抜けて融着の核を作り、その上にトナーが付着して生じてしまうものであり、クリーニングブレード15aへのトナー供給量が多い条件にて発生しやすくなる。例えば、印刷機市場ではポスター、カタログといった比較的画像面積率が高い印刷物を連続して1000〜10000枚程度印刷することがあり、このようなジョブを実施した場合には、融着などの画像不良が発生することがあった。しかし、このような問題に対して、感光体ドラム11の表面への潤滑剤塗布量をさらに増加することで、感光体ドラム11表面の滑り性が向上して、クリーニングブレード15aからの外添剤のすり抜けが抑制されるため、融着の発生を防止することができる。
【0073】
潤滑剤の寿命に関しては、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)に基いて判断することができる。具体的に、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)が所定値に到達した場合に、潤滑剤の寿命に到達したと判断することができる。
そして、上述した3つの条件がそれぞれ検知されたときに、その条件で稼動された感光体ドラム11の総走行距離に対して、図8に示したような補正係数が乗じられる。例えば、通常時(冬環時や連続通紙時等ではないときである。)において特殊モードが選択されたときには、特殊モードによって消費される潤滑剤量が多くなるものとして、総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して「1.45」が乗じられることになる。すなわち、特殊モードが実行されることによって、その分だけ求められる寿命が早まるような補正計算がされることになる。
なお、冬環の検知は先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができ、連続通紙や特殊モードの検知は操作パネル46に入力された情報を用いておこなうことができる。
【0074】
また、図8を参照して、本実施の形態では、上述した(1)〜(3)の3つの条件のうち複数の条件で稼動されるときに、複数の条件がそれぞれ単独でおこなわれるときに用いられる補正量を加算したものを減じて、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、制御部48(算出手段)によって補正して算出される。例えば、冬環にて連続通紙がおこなわれたとき((1)と(2)の2つの条件で稼動されたときである。)には、冬環時における補正係数「1.32」と連続通紙時における補正係数「1.24」とを単純に加算したものではなくて、それよりも小さな補正係数「1.51」を用いて補正計算がおこなわれる。
なお、画像面積率や連続通紙の検知は、制御部48に入力されたジョブ情報にて検知することができる、また、特殊モードの検知に関しては、操作パネル46に入力された情報、又は、感光体ドラム11の駆動モータ49の回転数を決定する制御部48の情報を用いておこなうことができる。
このような補正計算をおこなうのは、上述した(1)〜(3)の3つの条件のうち複数の条件が重なったときに、単純にそれぞれの条件にて潤滑剤供給量が低下した量を加算した分だけ供給量が低下するのではないためであって、それぞれ個別かつ適正な潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御をおこなうことで過不足のない潤滑剤供給量の調整ができるためである。
【0075】
なお、上述した「特殊モード」において、潤滑剤供給量を強制的に段階的又は連続的に増加できるようにすることもできる。すなわち、操作パネル46において「特殊モード」を選択する際に、潤滑剤供給量の増加量を段階的又は連続的に選択できるように構成することができる。具体的に、特殊モードの大きさ(程度)が任意に選択されると、それに応じた大きさで、そのときの潤滑剤供給ローラ16aの回転数が増加されることになる。
そして、そのような場合には、特殊モードによる潤滑剤供給量の増加量に応じて、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、制御部48で補正算出することで、それらの値を正確に求めることができる。
【0076】
また、上述した「特殊モード」において、「特殊モード」が選択されているときであっても、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)が所定値(例えば、20kmである。)に達するまでは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の増加をおこなわないように制御することもできる。
これは、初期の段階では、潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが充分に強くて、潤滑剤供給量が低下する不具合が生じにくいことによる。そのため、上述した制御をおこなうことで、初期段階で「特殊モード」が誤って選択されて潤滑剤供給量が過多になる不具合を確実に防止することができる。
【0077】
なお、本実施の形態において、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、駆動モータ45の総駆動時間)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変制御することもできるし、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変制御することもできる。詳しくは、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)が大きくなるのにともない潤滑剤供給ローラ16aの回転数が段階的に大きくなるように,駆動モータ45(可変手段)を制御することもできる。
さらに具体的に、図9を参照して、新品状態の潤滑剤供給ローラ16a(潤滑剤供給装置16)又は感光体ドラム11の駆動が開始されたときには、図4で説明した制御と同様に、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が基準値αに設定されている。そして、この回転数αは、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA1km(例えば、10kmである。)に達するまで維持される。そして、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA1kmからA2km(例えば、150kmである。)に達するまでの間は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.1×αである。)になるように制御部48で制御される。さらに、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA2kmからA3km(例えば、225kmである。)に達するまでの間は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数がさらに高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御される。さらに、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA3kmを超えると、潤滑剤供給ローラ16aの回転数がさらに高い値(例えば、1.3×αである。)になるように制御部48で制御される。
このような制御をおこなうことで、経時においてさらに細かく潤滑剤供給量の調整をおこなうことができるため、経時における潤滑剤量低下を確実に防止することができる。
【0078】
また、本実施の形態において、検知手段としての絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなるように駆動モータ45(可変手段)を制御することもできる。
具体的に、図10を参照して、絶対湿度として低い値や中程度の値が検知された場合(所定値に達しない場合である。)には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αになるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として所定値よりも高い値が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
このような制御をおこなった場合には、図6で説明した制御をおこなった場合とは異なり、絶対湿度が低いときに潤滑剤供給量が多くなるものの、絶対湿度が高くなったときに潤滑剤供給量が下限供給量を下回らない状態を維持することができる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。
特に、図10に示すような制御をおこなった場合には、絶対湿度の変動に関らず下限供給量よりも多い潤滑剤供給量を確実に維持することができるため、帯電ハザードが生じて感光体ドラム11が劣化しやすくなる不具合を確実に抑止することができる。
【0079】
なお、本実施の形態において、駆動モータ45は、他の駆動モータ(例えば、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータ49である。)とは独立して潤滑剤供給ローラ16aのみを回転駆動する速度可変型モータであって、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変して感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成されている。すなわち、本実施の形態では、駆動モータ45が潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することで潤滑剤供給量を調整する可変手段として機能するように構成している。
これに対して、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定になるように構成して、例えば、潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力を可変するなどして、感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成することもできる。そして、そのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、本実施の形態において、(1)画像形成装置本体1が所定の低湿域(例えば絶対湿度が7g/m3以下)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が所定の高湿域(例えば絶対湿度が15g/m3以上)となる夏環境(夏場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が過不足とならないように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が過不足とならないように)、それらの値を補正して算出することもできる。
【0081】
具体的に、夏環境時においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が少なくなるが、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離は標準環境時と同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも短く算出されてしまう(潤滑剤の残量が充分に残っているときに寿命と判定してしまう)。そのため、図11に示すように、寿命を算出する感光体ドラム11又は潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を遅くして、夏環境の使用においても適正に寿命を算出することができる。
なお、環境の検知は、先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができる。
【0082】
また、冬環境時においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が多くなるが、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離は標準環境時と同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう(潤滑剤の残量が無くなって暫くした後に、寿命と判定してしまう)。そのため、図11に示すように、寿命を算出する潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「1.2」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境の使用においても適正に寿命を算出することができる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することによって感光体ドラム11(像担持体)上への潤滑剤供給量を調整して、その調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラ16aや感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)から算出される固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を補正している。これにより、環境変動が生じたときや経時においても感光体ドラム11に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して感光体ドラム11上に潤滑剤を供給することができるとともに、固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を正確に求めることができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電部12、現像部13、クリーニング部15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。これに対して、作像部における各部11、12、13、15、16をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、それぞれ単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【0085】
また、本実施の形態では、2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対して本発明を適用したが、1成分現像剤を用いる1成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、中間転写ベルト17を用いたタンデム型のカラー画像形成装置に対して本発明を適用した。これに対して、転写搬送ベルトを用いたタンデム型のカラー画像形成装置(転写搬送ベルトに対向するように並設された複数の感光体ドラム上のトナー像を、転写搬送ベルトによって搬送される記録媒体上に重ねて転写する装置である。)や、モノクロ画像形成装置等、その他の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、感光体ドラム11以外の像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(例えば、中間転写ベルト17に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置である。)に対しても当然に本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に、調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラの総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aとしてブラシ毛が周設されたブラシ状ローラを用いたが、潤滑剤供給ローラ16aとしてスポンジ状部材(弾性材料)が周設されたスポンジ状ローラを用いることもできる。そして、このような場合であっても、スポンジ状部材(弾性材料)の弾性層は経時で弾性が低下してブラシ状ローラと同様に潤滑剤供給量が低下するため、本実施の形態と同様に、調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラの総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aを駆動する駆動モータ45が、他の駆動系に対して独立して設置されている装置に対して本発明を適用した。これに対して、潤滑剤供給ローラ16aを駆動する駆動モータ45が、他の駆動系と共有化されている装置(例えば、クリーニング部15におけるクリーニングローラの駆動系と共通化されている装置である。)であっても、本実施の形態のものと同様に潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御をおこなっているものであれば、本発明を適用することができる。そして、そのような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
15 クリーニング部、
16 潤滑剤供給装置(潤滑剤供給部)、
16a 潤滑剤供給ローラ(ブラシ状ローラ)、
16b 固形潤滑剤、
41 絶対湿度検知部(検知手段)、
45 駆動モータ(可変手段)、
48 制御部(算出手段)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特開2001−305907号公報
【特許文献2】特開2007−193263号公報
【特許文献3】特開2010−210799号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、そこに設置される潤滑剤供給装置と、プロセスカートリッジと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラムや中間転写ベルト等の像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
【0003】
詳しくは、転写工程後の感光体ドラム上に残留する未転写トナーは、感光体ドラムに当接するクリーニングブレード(クリーニング装置)によってすべて除去されるべきものである。しかし、感光体ドラムとの摩擦によってクリーニングブレードの当接部に欠け(欠損)が生じた場合には、未転写トナーが欠損したクリーニングブレードと感光体ドラムとの隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じてしまったり、すり抜けた未転写トナーが感光体ドラムにフィルミング(融着)してしまったりしていた。
【0004】
このような問題に対して、感光体ドラム上に潤滑剤を塗布することで、感光体ドラム上の摩擦係数が低下してクリーニングブレードの磨耗・欠損や感光体ドラムの劣化が低減されて、経時におけるクリーニング不良やフィルミングの発生を抑止することができる。
【0005】
具体的に、特許文献1において、潤滑剤塗布装置は、感光体ベルト(像担持体)に摺接するブラシローラ(潤滑剤供給ローラ)、ブラシローラに当接する固形潤滑剤、固形潤滑剤をブラシローラに向けて圧接方向に付勢する圧縮スプリング、等で構成される。そして、所定方向に回転するブラシローラによって固形潤滑剤から潤滑剤が徐々に削り取られて、ブラシローラによって削り取られて搬送された潤滑剤が像担持体の表面に塗布(供給)される。
【0006】
一方、特許文献2には、感光体ドラム(像担持体)の総回転数から潤滑剤の消費量を算出する技術が開示されている。
また、特許文献3には、潤滑剤供給ローラ(回転ブラシ)の駆動系を、その他の駆動系から独立して設ける技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の潤滑剤供給装置は、環境変動によって像担持体に供給される潤滑剤の供給量が変化してしまったり、経時において像担持体に供給される潤滑剤の供給量が変化してしまったりするという問題があった。そして、このような不具合が生じてしまうと、潤滑剤供給装置によって像担持体上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまうことになる。
【0008】
このような問題を解決するために、環境変動が生じたときや経時において潤滑剤供給ローラの回転数を可変して潤滑剤供給量を調整する方策が考えられる。しかし、その場合、特許文献2、3の技術を応用して、固形潤滑剤の寿命や総消費量を求めようとしても、正確な固形潤滑剤の寿命や総消費量の値を算出することができなくなってしまう。そして、そのような場合には、寿命に達していない固形潤滑剤を無駄に交換してしまったり、固形潤滑剤の交換時期を逸してしまい潤滑剤供給不良が生じてしまったりすることになる。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、環境変動が生じたときや経時においても像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤を供給することができるとともに、固形潤滑剤の寿命や総消費量を正確に求めることができる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1記載の発明にかかる潤滑剤供給装置は、トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を調整する可変手段と、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラにおける総走行距離又は総駆動時間から前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を求める算出手段と、を備え、前記算出手段は、前記可変手段によって可変された前記像担持体上への潤滑剤の供給量に応じて前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を補正して算出するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって像担持体上への潤滑剤供給量を調整して、その調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラ又は像担持体の総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正している。これにより、環境変動が生じたときや経時においても像担持体に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して像担持体上に潤滑剤が供給されるとともに、固形潤滑剤の寿命や総消費量が正確に求められる、潤滑剤供給装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】潤滑剤ユニットを示す斜視図である。
【図4】総走行距離の増加にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図5】総走行距離と潤滑剤消費量との関係を示すグラフである。
【図6】絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図7】(A)絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(B)温度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、(C)相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフと、である。
【図8】冬環時、連続通紙時、特殊モード時における、総走行距離の補正係数を示す表図である。
【図9】変形例としての、総走行距離の増加にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図10】変形例としての、絶対湿度の変化にともなう潤滑剤供給ローラの回転数の可変制御を示す表図である。
【図11】変形例としての、夏環時、冬環時において潤滑剤供給ローラの回転数を変動したとき、冬環時において潤滑剤供給ローラの回転数を固定したとき、における総走行距離の補正係数を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0014】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
本実施の形態における画像形成装置1は、複数の作像部としてのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKが中間転写ベルト17に対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0015】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、7は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を記録媒体Pに転写する2次転写ローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着部、28は各プロセスカートリッジ(作像部)10Y、10M、10C、10BKの現像部に各色のトナーを補給するためのトナー容器、を示す。
【0016】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部12、現像部13(現像装置)、クリーニング部15(クリーニング装置)、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)が一体化されたものである(図2を参照できる。)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに装置本体1に対して交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0017】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス上の原稿の画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿にて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0018】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0019】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ12a(帯電部12)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。図示は省略するが、レーザ光は、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0020】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー(不図示である。)により、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0021】
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目(中間転写ベルト17の走行方向に対して最も下流側である。)のプロセスカートリッジ10BK(黒色用作像部)の感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0022】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0023】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、潤滑剤供給装置16の位置と除電部(不図示である。)の位置とを順次通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0024】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17表面は、図中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部(不図示である。)の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。
【0025】
ここで、2次転写ローラ18位置の記録媒体Pは、給紙部7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された転写紙Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達した記録媒体Pは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0026】
その後、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20に導かれる。定着部20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0027】
次に、図2にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
なお、図2は黒色用作像部としてのプロセスカートリッジ10BK(モノクロ用のプロセスカートリッジ)を示す構成図である。モノクロ用のプロセスカートリッジ10BKと、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cと、は、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、ほぼ同じ構成部材によって構成されているため、カラー用のプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cの図示と説明は適宜省略する。
【0028】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電部12(帯電ローラ)と、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する現像部13と、感光体ドラム11上の未転写トナーを回収するクリーニング部15と、感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16と、が、ケースに一体的に収納されている。
【0029】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
図示は省略するが、感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層(表面層)が順次積層されている。
感光体ドラム11の導電性支持体(基層)としては、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料を用いることができる。
感光体ドラム11は、駆動モータ49によって図2の時計方向に回転駆動される。
【0030】
帯電部12(帯電ローラ)は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材であって、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。また、帯電部12(帯電ローラ)は、潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤が付着しないように、感光体ドラム11に対して非接触で対向するように配設されている。
そして、帯電部12には不図示の電源部から所定の電圧(帯電バイアス)が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0031】
現像部(現像装置)13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1と、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2と、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13cと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤が担持されることになる。
【0032】
現像部13内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
トナーは、画質向上のために、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。「円形度」は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。)を0.1〜0.5ml加えて、さらに測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理して、分散液濃度が3000〜10000個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。
【0033】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法によって形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたもの等を用いることができる。
このような球形トナーを用いる場合、従来は、クリーニングブレード15aと感光体ドラム11との僅かな隙間に入り込んでやがてその隙間をすり抜けてクリーニング不良が生じることがあった。しかし、本実施の形態では、潤滑剤供給装置16によって潤滑剤を感光体ドラム11表面に塗布して、感光体ドラム11上におけるトナー剥離性(除去性)を向上させるために、クリーニング不良の発生が抑止される。
【0034】
クリーニング部15は、潤滑剤供給装置16に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。クリーニング部15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a、クリーニング部15内に回収されたトナーを廃トナーとして廃トナー回収容器(不図示である。)に向けて搬送する搬送コイル15b、等が設置されている。クリーニングブレード15aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。これにより、感光体ドラム11上に付着する未転写トナー等の付着物が機械的に掻き取られてクリーニング部15内に回収されることになる。ここで、感光体ドラム11上に付着する付着物としては、未転写トナーの他に、記録媒体P(用紙)から生じる紙粉、帯電ローラ12aによる放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等がある。
【0035】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接する潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d、等で構成される。なお、ブレード状部材16dは、潤滑剤供給ローラ16aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側の位置で感光体ドラム11に対してカウンタ方向に当接するように構成されている。
このように構成された潤滑剤供給装置16によって、感光体ドラム11上に薄層化された潤滑剤が供給される。なお、潤滑剤供給装置16の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0036】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転している。現像部13内の現像剤は、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の回転によって、不図示のトナー補給部によってトナー容器28から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図2の紙面垂直方向である。)。
【0037】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、その後にドクターブレード13cの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、ドクターブレード13cの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0038】
その後、現像領域において、現像剤中のトナーが、感光体ドラム11表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーが潜像に付着する(トナー像が形成される)。
【0039】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11上に残存した未転写のトナーが、クリーニングブレード15aによってクリーニング部15内に回収される。
【0040】
ここで、図示は省略するが、装置本体1に設けられたトナー補給部は、交換自在に構成されたボトル状のトナー容器28と、トナー容器28を保持・回転駆動するとともに現像部13に新品トナーを補給するトナーホッパ部と、で構成されている。また、トナー容器28内には、新品のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかである。)が収容されている。また、トナー容器28(トナーボトル)の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
【0041】
なお、トナー容器28内の新品トナーは、現像部13内のトナー(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像部13内に適宜に補給されるものである。図示は省略するが、現像部13内のトナーの消費は、感光体ドラム11に対向する反射型フォトセンサと、現像部13の第2搬送スクリュ23b2の下方に設置された磁気センサと、によって間接的又は直接的に検知される。
【0042】
以下、本実施の形態における、潤滑剤供給装置16(潤滑剤供給部)の構成・動作について詳しく説明する。
図2に示すように、潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16b、感光体ドラム11と固形潤滑剤16bとに摺接するブラシ毛が周設された潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)、固形潤滑剤16bを保持する保持部材16c、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するケース16f、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢する回動部材16g及び引張スプリング16h(加圧機構)、潤滑剤供給ローラ16aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化するブレード状部材16d(薄層化ブレード)、等で構成される。
【0043】
ケース16fは、固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aに圧接する方向に移動できるように(移動を妨げないように)、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納する略箱状部材であって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に保持されている。ケース16fは、固形潤滑剤16bや保持部材16cの圧接方向(固形潤滑剤16bが潤滑剤供給ローラ16aを圧接する方向である。)の移動を妨げない範囲で、それらの部材16b、16cとの隙間が比較的小さく設定されていて、潤滑剤供給ローラ16aに対して固形潤滑剤16bが傾いて圧接するのをある程度防止する。
【0044】
潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ状ローラ)は、長さ(毛足)が0.2〜20mm(好ましくは、0.5〜10mm)の範囲のブラシ毛が基布上に植毛されたものを芯金上にスパイラル状に巻き付けたものである。
ブラシ毛の長さが20mmを超えると、経時における感光体ドラム11との繰り返し摺擦によって、ブラシ毛が所定方向に倒毛して、固形潤滑剤16bの掻取性や感光体ドラム11からのトナー除去性が低下してしまう。これに対して、ブラシ毛の長さが0.2mm未満であると、固形潤滑剤16bや感光体ドラム11に対する物理的な当接力が不足してしまう。したがって、ブラシ毛の長さは上述の範囲であることが好ましい。
【0045】
潤滑剤供給ローラ16aは、図2の時計方向に回転する感光体ドラム11に対してカウンタ方向で接触するように、駆動モータ45によって回転駆動される(図2の時計方向の回転である。)。また、潤滑剤供給ローラ16a(ブラシ毛)は、固形潤滑剤16bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ16aが回転することによって固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、その掻き取った潤滑剤を感光体ドラム11との摺接位置まで搬送した後に、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布(供給)する。
なお、本実施の形態において、駆動モータ45は、他の駆動モータ(例えば、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータ49である。)とは独立して潤滑剤供給ローラ16aのみを回転駆動する速度可変型モータであって、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変して感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成されている。すなわち、駆動モータ45が潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することで潤滑剤供給量を調整する可変手段として機能することになるが、これについては後で詳しく説明する。
【0046】
固形潤滑剤16bの後方部には,潤滑剤供給ローラ16aと固形潤滑剤16bとの接触ムラをなくすために加圧機構16c、16g、16h、16jが配置されていて、保持部材16cに保持(貼着)された状態の固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに向けて付勢している。ここで、加圧機構(押圧装置)は、保持部材16cと、保持部材16cに回動可能に支持された1対の回動部材16gと、1対の回動部材16gに連結された引張スプリング16h(付勢部材)と、軸受16jと、で構成されている。
【0047】
本実施の形態において、固形潤滑剤16b(潤滑部材)は、主としてチッ化ホウ素と脂肪酸金属塩とを配合して形成したものである。
チッ化ホウ素は放電による特性変化がほとんどないため、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11上で帯電工程や転写工程がおこなわれた後にも放電による劣化が生じにくくなる。また、チッ化ホウ素を配合した固形潤滑剤16bを用いることで、感光体ドラム11が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。
また、チッ化ホウ素だけからなる潤滑剤を用いてしまうと、感光体ドラム11の表面に供給された潤滑剤がドラム表面全体にいきわたらずに、ドラム表面全体に均一な潤滑剤の皮膜が形成されなくなるおそれがある。そのため、固形潤滑剤16bにチッ化ホウ素の他に脂肪酸金属塩を配合している。これにより、感光体ドラム11表面の全体にわたって潤滑剤の皮膜を効率よく形成することができて、長期にわたって高い潤滑性を維持することができる。脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等のラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩や、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウム等の物質を使用することができる。特に、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛を用いた場合には、感光体ドラム11上での伸展性が向上して、吸湿性が低くて湿度が変化しても潤滑性が損なわれにくくなる。
また、固形潤滑剤16bに配合する材料としては、脂肪酸金属塩やチッ化ホウ素の他に、シリコーンオイル、フッ素系オイル、天然ワックス等の液状材料やガス状材料を外添剤として用いることもできる。
【0048】
ここで、このように構成された固形潤滑剤16bは、その製造方法の違いによって、圧力成形型のものと、溶融型のものと、に大別される。圧力成形型の固形潤滑剤16bは粉体状の潤滑剤をそのまま押圧成形したものであって、溶融型の固形潤滑剤16bは粉体状の潤滑剤を加熱溶融した後に冷却したものである。このようないずれの型の固形潤滑剤16bであっても、本実施の形態における潤滑剤供給装置16に設置することが可能であるが、本実施の形態では圧力成形型のものを用いている。
【0049】
固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、ブレード状部材16d(薄層化ブレード)が潤滑剤を均一化する部材として機能することになる。ブレード状部材16dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
このとき、潤滑剤供給ローラ16aにより塗布する粉体状の潤滑剤は微粉であるほど、ブレード状部材16dにより感光体ドラム11上に分子膜レベルで薄膜化される。
【0050】
図3は、潤滑剤ユニットを示す斜視図である。図3に示すように、潤滑剤ユニットは、保持部材16c、1対の回動部材16g、引張スプリング16h(付勢部材)、軸受16j等で構成された加圧機構(押圧装置)に、固形潤滑剤16bが設置されたものである。この潤滑剤ユニットは、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)に対して着脱可能(交換可能)に構成されている。これによって、潤滑剤供給装置16(プロセスカートリッジ10BK)における固形潤滑剤の交換作業が容易化されることになる。
【0051】
図3を参照して、固形潤滑剤16bは、保持部材16cに貼着され保持されている。具体的に、保持部材16cと固形潤滑剤16bとの間に両面テープや接着剤等が介在されて、保持部材16cは固形潤滑剤16bを貼着して保持することになる。ここで、保持部材16cは、コの字状に曲げ加工された板金であって、その両側面に軸受16jを介して回動部材16gを保持するための複数の穴部16c2が形成されている。
【0052】
ここで、保持部材16cには、幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の離れた位置に、1対の回動部材16g(押圧部材)がそれぞれ回動可能に支持されている。この1対の回動部材16gは、引張スプリング16hによる付勢力によってそれぞれ所定方向に回動して保持部材16cを介して固形潤滑剤16bを間接的に押圧して、固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16aに圧接させるものである。
詳しくは、回動部材16gの両側面には、回動中心となる支軸16g1(軸部)が形成されている。そして、この回動部材16gの支軸16g1が、軸受16jの内径部に挿着された状態で保持部材16cの穴部16c2に嵌合して、回動部材16gが保持部材16cに回動可能に保持されることになる。なお、2つの回動部材16cは、それぞれ、幅方向において左右対称になるように保持部材16cに設置される。
【0053】
また、1対の回動部材16gは、引張スプリング16hで連結されている。詳しくは、引張スプリング16hの両端のフック部が、それぞれ、回動部材16gの穴部に接続されている。
そして、この引張スプリング16hは、ケース16fに圧接するように1対の回動部材16gを互いに異なる方向に回動させて保持部材16cを潤滑剤供給ローラ16aに近づく方向に付勢する付勢部材として機能することになる。具体的に、2つの回動部材16gは、ケース16fの内壁面に当接するカム形状部(不図示である。)が互いに近づく方向のスプリング力(付勢力)を引張スプリング16hから受ける。これにより、図3の左方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、反時計方向に回動するように付勢される。これに対して、図3の右方の回動部材16gは、支軸16g1を回動中心として、時計方向に回動するように付勢される。
【0054】
以下、本実施の形態において特徴的な、潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)の構成・動作について詳述する。
図2を参照して、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)では、潤滑剤供給ローラ16aを回転駆動する駆動モータ45が、潤滑剤供給ローラ16aの回転数(回転速度)を可変することによって潤滑剤供給ローラ16aから感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量(潤滑剤供給量)を調整する可変手段として機能する。具体的に、そのときどきにおいて、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を増加させたい場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が増加するように、制御部48によって制御される。これに対して、感光体ドラム11上への潤滑剤供給量を減少させたい場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が低下するように、制御部48によって制御される。これは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の増減に応じて、ほぼ比例的に、潤滑剤供給ローラ16aによって固形潤滑剤16bから削り取られる潤滑剤量が増減するためである。
【0055】
そして、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)に応じて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変するように、制御部48によって駆動モータ45(可変手段)が制御される。詳しくは、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)が所定値に達したときに、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなるように駆動モータ45が制御される。
【0056】
具体的に、図4を参照して、新品状態の潤滑剤供給ローラ16a(潤滑剤供給装置16)の駆動が開始されたときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が基準値αに設定されている。そして、この回転数αは、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離がAkm(例えば、20kmである。)に達するまでの初期の段階で維持される。そして、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離がAkmに達した後の経時の段階から、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御される。
なお、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(累積の走行距離である。)は、潤滑剤供給ローラ16aを独立して駆動する駆動モータ45の累積の駆動時間、潤滑剤供給ローラ16aの回転数、潤滑剤供給ローラ16aの外径、等に基いて制御部48の演算部で算出される。また、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離と総駆動時間とは回転数が可変される場合であっても互いに変換可能な相関のある因子であるため、図4における潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離に基いた制御を、潤滑剤供給ローラ16aの総駆動時間(駆動モータ45の累積の駆動時間である。)に基いておこなうこともできる。
【0057】
このように、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)に応じて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変しているのは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定であるときに、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、総駆動時間)によって潤滑剤供給量が変動するためである。
図5は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定であるときの、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離と、固形潤滑剤16bの消費量(潤滑剤消費量)と、の関係を示すグラフである。固形潤滑剤16bとして圧力成形型のものを用いた場合であっても溶融型のものを用いた場合であっても、概ね、初期から経時にかけて総走行距離の増加にともない潤滑剤消費量が減少していき、最終的に潤滑剤消費量が飽和した状態になる。これは、潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが総走行距離の増加にともない低下していって、固形潤滑剤16bを削り取る能力が低下してしまうためである。また、圧力成形型の固形潤滑剤16bと溶融型の固形潤滑剤16bとで、初期的な潤滑剤消費量の変化が異なるのは、それらの硬さの違いにより初期的に潤滑剤供給ローラ16aのブラシ毛が潤滑剤表面になじむまで(削れ易くなるまで)の時間に差異が生じるためである。
【0058】
このような制御をおこなうことで、経時において潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが弱くなって、潤滑剤供給装置16から感光体ドラム11への潤滑剤供給量が低下しそうになっても、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を増加して潤滑剤供給量が低下しないようにしている。これにより、経時において、潤滑剤供給量低下にともない、クリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。
なお、本実施の形態では、固形潤滑剤16bとして圧力成形型のものを用いているため、図5の潤滑剤消費量の変動に合わせるように、図4に示すような潤滑剤供給ローラ16aの回転数の切り替えを1回のみおこなう比較的単純な制御をおこなった。
これに対して、固形潤滑剤16bとして溶解型のものを用いる場合には、図5の潤滑剤消費量の変動に合わせるように、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の切り替えを多段階でおこなうような制御をおこなうことができる(例えば、総走行距離の増加にともない回転数を増、減、増の順に可変する制御である。)。
【0059】
ここで、図2を参照して、本実施の形態において、制御部48の演算部は、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を求める算出手段としても機能する。そして、算出手段としての制御部48(演算部)は、駆動モータ45(可変手段)の回転数制御によって可変された潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を補正して算出する。そして、算出された固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)に基いて、装置本体1の表示パネル(不図示である。)に、固形潤滑剤16bの交換時期が近づいている旨の表示や、固形潤滑剤16bを交換する必要がある旨の表示がおこなわれることになる。
【0060】
本実施の形態における潤滑剤供給装置16は経時における潤滑剤供給量の低下を軽減するために潤滑剤供給ローラ16aの回転数を適宜に可変して潤滑剤供給量の調整制御をおこなっているため、単純に潤滑剤供給ローラ16aの回転数に基いて求めた総走行距離から固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を算出してしまうと、その値に大きな誤差が生じてしまうことになる。具体的に、図4に示す潤滑剤供給ローラ16aの回転数の可変条件に基いて求めた総走行距離からそのまま固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)を算出してしまうと、寿命が早目に(又は、総消費量が大目に)算出されてしまうため、交換時期に達していないのに固形潤滑剤16bを交換する必要がある旨の表示がおこなわれて、固形潤滑剤16bが無駄に交換されてしまう等の不具合が生じてしまう。
これに対して、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともなう潤滑剤供給量の変動を考慮して、固形潤滑剤16bの寿命(又は、総消費量)が補正されてほぼ正確に算出されるため、上述したような不具合が生じにくくなる。なお、潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともない変化する潤滑剤供給量については、図5に示す固形潤滑剤16bの潤滑剤消費の変動特性を加味して、実験やシミュレーションに基いたデータが予め制御部48の記憶部に記憶されている。
そして、このような補正計算は、本実施の形態における潤滑剤供給装置16の潤滑剤供給量制御が、総走行距離のみの1つの要素に基いておこなわれるのではなく、次に述べる環境変動等も合わせた複数の要素に基いておこなわれる場合に、特に有用になる。
【0061】
図2を参照して、本実施の形態では、固形潤滑剤16bの周囲の温湿度に対応する温湿度を検知する検知手段としての絶対湿度検知部41が設置されている。
図2を参照して、検知手段としての絶対湿度検知部41は、主として、固形潤滑剤16bの周囲の温度と同等の温度を検知する温度センサ42と、固形潤滑剤16bの周囲の相対湿度と同等の相対湿度を検知する相対湿度センサ43と、で構成されている。具体的に、絶対湿度検知部41(検知手段)は、温度センサ42と相対湿度センサ43とでそれぞれ検知された温湿度の結果を制御部48に送って、それらの温湿度から制御部48の記憶部に記憶された変換テーブルに基いて絶対湿度(水分量)を求める。なお、温度センサ42と相対湿度センサ43として、それらが一体化された既存の温湿度センサを用いることができる。
なお、このような絶対湿度検知部41(検知手段)が設置される位置としては、固形潤滑剤16bの周囲の温湿度に対応する温湿度を検知できる位置であって、感光体ドラム11に対向する位置よりも感光体ドラム11から充分に離れていて装置本体1の外部の環境を反映しやすい位置(例えば、周囲に熱源となる可動部材がなくて、周囲に熱がこもらないような空間が確保された位置である。)が好ましい。
【0062】
そして、本実施の形態では、検知手段として絶対湿度検知部41によって検知された温湿度(絶対湿度)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数が可変されて感光体ドラム11上への潤滑剤供給量が調整されるように、駆動モータ45(可変手段)が制御されることになる。
詳しくは、絶対湿度検知部41によって検出された絶対湿度が高いときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなって、その時点における潤滑剤供給量が増加するように、駆動モータ45が制御される。これに対して、絶対湿度検知部41によって検出された絶対湿度が低いときには、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が小さくなって、その時点における潤滑剤供給量が減少するように、駆動モータ45が制御される。
【0063】
具体的に、図6を参照して、絶対湿度として中程度の値(例えば、10〜15g/cm3である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値α(例えば、200rpmである。)になるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として低い値(例えば、10g/cm3以下である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも低い値(例えば、0.8×αである。)になるように制御部48で制御する。さらに、絶対湿度として高い値(例えば、15g/cm3以上である。)が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
【0064】
このように、絶対湿度の高低に応じて潤滑剤供給量を増減しているのは、環境変動のうち温度や相対湿度と潤滑剤供給量との相関関係はそれほど高くなく、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係がとても高いことによるものである。
図7(A)〜(C)は、本実施の形態における潤滑剤供給装置16(画像形成装置1)において、環境変動による潤滑剤供給量(潤滑剤消費率)の変化を実験により求めた結果を示すグラフである。図7(A)は絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示し、図7(B)は温度と潤滑剤供給量との関係を示し、図7(C)は相対湿度と潤滑剤供給量との関係を示す。
図7の実験結果から、絶対湿度と潤滑剤供給量との関係を示すグラフ(1次関数)の相関係数は「0.8756」となり、温度や相対湿度に係るものと比べて「1」に近似しており、潤滑剤供給量との相関関係が極めて高いことがわかる。
特に、絶対湿度が相対湿度に比べて潤滑剤供給量との相関関係が高い理由としては、潤滑剤の含水率が低くても僅かな含水率の違いによって、固形潤滑剤16bの磨耗性(潤滑剤供給ローラ16aによる削れやすさである。)が大きく変動するためと考えられる。潤滑剤の含水率は、相対湿度ではなくて、空気中の水分量を示す絶対湿度に依存するため、相対湿度よりも絶対湿度の方が潤滑剤供給量との相関性が高くなるものと考えられる。さらに、潤滑剤供給ローラ16aのブラシ毛は、そのコシの強さが水分量に影響することから、水分量(絶対湿度)が多い場合にはブラシ毛のコシが弱くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が弱まり、水分量(絶対湿度)が少ない場合にはブラシ毛のコシが強くなるのにともない感光体ドラム11上への潤滑剤の供給力(塗布力)が強まるため、絶対湿度と潤滑剤供給量との相関関係が高くなるものと考えられる。
【0065】
このように装置本体1の周囲の絶対湿度に対応する絶対湿度(絶対湿度検知部41で検知された検知結果である。)の高低に応じて可変手段としての駆動モータ45を制御することで、絶対湿度が変動しても潤滑剤供給量が下限供給量(感光体ドラム11上に不足なく供給されるべき最低限の供給量である。)を下回らないことになる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。特に、本実施の形態では、絶対湿度が低いときにも潤滑剤供給量が多くならないように制御しているため、潤滑剤の過剰供給によって固形潤滑剤16bの寿命が早まってしまう不具合や、感光体ドラム11上に過剰に付着した潤滑剤によって帯電部12(帯電ローラ)等の表面が汚れてしまう不具合も軽減されることになる。
【0066】
そして、先に説明したものと同様に、制御部48(算出手段)は、駆動モータ45の回転数制御によって可変された潤滑剤供給量に応じて固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を補正して算出する。すなわち、絶対湿度の変化に基いた潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御にともなう潤滑剤供給量の変動をも考慮して、固形潤滑剤16bの寿命や総消費量が補正されてほぼ正確に算出されることになる。
【0067】
ここで、本実施の形態において、(1)画像形成装置本体1が所定の低湿域(例えば、絶対湿度が7g/m3以下)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が所定の高湿域(例えば、絶対湿度が15g/m3以上)となる夏環境(夏場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が過不足とならないように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が過不足とならないように)、それらの値を補正して算出することができる。
【0068】
具体的に、夏環境時の使用においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が少なくなるため、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を増加させて、潤滑剤の消費量が標準環境時(通常時)に対して変動しないように制御することができる。
このような制御をおこなったとき、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時と同じであるが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は早くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの走行距離が標準環境時に比べて増加して、寿命と判断する基準値に到達するまでの時間が早くなる。そのため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも短く算出されてしまう。
したがって、図11の「夏環」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される総走行距離の進み方を遅くして、夏環境時の使用においても適正に寿命を算出することができる。
なお、環境の検知は、先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができる。
【0069】
また、冬環境時の使用においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が多くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を低減させて、潤滑剤の消費量が標準環境時(通常時)に対して変動しないように制御することができる。
このような制御をおこなったとき、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時と同じであるが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は遅くなるため、潤滑剤供給ローラ16aの走行距離が標準環境時に比べて減少して、寿命と判断する基準値に到達するまでの時間が遅くなる。そのため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう。
したがって、図11の「冬環+回転数変動」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「1.2」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境時の使用においても適正に寿命を算出することができる。
【0070】
また、図11の「冬環+回転数固定」は、別の実施例を示すものである。
詳しくは、本実施の形態におけるプロセスカートリッジ10BKは、感光体ドラム11上の未転写トナーを除去するために、クリーニングブレード15aを感光体ドラム11に食込ませている。そのため、低温環境時に、プロセスカートリッジ10BKのケースに使用している材料の温度収縮などにより感光体ドラム11に対するクリーニングブレード15aの食込み量が増加して、感光体ドラム11の駆動トルクが上昇する不具合やクリーニングブレード15aが捲れる不具合などが発生する可能性があった。
このような不具合を回避するため、冬環境時において、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を標準環境時に対して減少させずに標準環境時のものと同等に固定して、潤滑剤の消費量を増加させて、感光体ドラム11の表面の摩擦係数を低下させる制御をおこなうことができる。そして、そのような制御をおこなうときに、潤滑剤の寿命を潤滑剤供給ローラ16aの回転数を元に算出すると、潤滑剤の消費量は標準環境時に比べて増加して潤滑剤寿命は減少しているが、潤滑剤供給ローラ16aの回転数は同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう。
そのため、図11の「冬環+回転数固定」に示すように、寿命を算出するための潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境時にて通常環境時よりも消費量を増加して使用した場合においても適正に寿命を算出することができる。
【0071】
ここで、本実施の形態では、(1)画像形成装置本体1が所定の低温域(低温高湿域)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が連続通紙にて稼動される条件と、(3)潤滑剤供給装置16による潤滑剤供給量を強制的に増加させる「特殊モード」にて稼動される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、それらの値を補正して算出する。
なお、「特殊モード」とは、出力画像上にメダカ画像が発生した場合等に、その発生を減ずるためにユーザーやサービスマンが装置本体1の操作パネル46におけるボタンを操作することで選択できるモードであって、特殊モードが選択されたときにはそのときの潤滑剤供給ローラ16aの回転数が強制的に増加されて潤滑剤供給量が増加される。
【0072】
このような制御をおこなうのは、上述した3つの条件は、潤滑剤供給量が不足しやすい条件であって、比較的頻繁に起こりうる稼動条件であるためである。
通常、潤滑剤の供給量が充分であればクリーニングブレード15aの欠損やクリーニング不良の発生やフィルミングの発生を抑制することが可能であるが、高画像面積率の画像を連続的に通紙した場合には、感光体ドラム11上にいわゆる融着が発生しやすくなってしまう。この融着は、一般的にトナーに外添される外添剤(環境、耐久変動に対する被帯電性能安定化のために外添されるシリカ等である。)がクリーニングブレード15aをすり抜けて融着の核を作り、その上にトナーが付着して生じてしまうものであり、クリーニングブレード15aへのトナー供給量が多い条件にて発生しやすくなる。例えば、印刷機市場ではポスター、カタログといった比較的画像面積率が高い印刷物を連続して1000〜10000枚程度印刷することがあり、このようなジョブを実施した場合には、融着などの画像不良が発生することがあった。しかし、このような問題に対して、感光体ドラム11の表面への潤滑剤塗布量をさらに増加することで、感光体ドラム11表面の滑り性が向上して、クリーニングブレード15aからの外添剤のすり抜けが抑制されるため、融着の発生を防止することができる。
【0073】
潤滑剤の寿命に関しては、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)に基いて判断することができる。具体的に、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)が所定値に到達した場合に、潤滑剤の寿命に到達したと判断することができる。
そして、上述した3つの条件がそれぞれ検知されたときに、その条件で稼動された感光体ドラム11の総走行距離に対して、図8に示したような補正係数が乗じられる。例えば、通常時(冬環時や連続通紙時等ではないときである。)において特殊モードが選択されたときには、特殊モードによって消費される潤滑剤量が多くなるものとして、総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して「1.45」が乗じられることになる。すなわち、特殊モードが実行されることによって、その分だけ求められる寿命が早まるような補正計算がされることになる。
なお、冬環の検知は先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができ、連続通紙や特殊モードの検知は操作パネル46に入力された情報を用いておこなうことができる。
【0074】
また、図8を参照して、本実施の形態では、上述した(1)〜(3)の3つの条件のうち複数の条件で稼動されるときに、複数の条件がそれぞれ単独でおこなわれるときに用いられる補正量を加算したものを減じて、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、制御部48(算出手段)によって補正して算出される。例えば、冬環にて連続通紙がおこなわれたとき((1)と(2)の2つの条件で稼動されたときである。)には、冬環時における補正係数「1.32」と連続通紙時における補正係数「1.24」とを単純に加算したものではなくて、それよりも小さな補正係数「1.51」を用いて補正計算がおこなわれる。
なお、画像面積率や連続通紙の検知は、制御部48に入力されたジョブ情報にて検知することができる、また、特殊モードの検知に関しては、操作パネル46に入力された情報、又は、感光体ドラム11の駆動モータ49の回転数を決定する制御部48の情報を用いておこなうことができる。
このような補正計算をおこなうのは、上述した(1)〜(3)の3つの条件のうち複数の条件が重なったときに、単純にそれぞれの条件にて潤滑剤供給量が低下した量を加算した分だけ供給量が低下するのではないためであって、それぞれ個別かつ適正な潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御をおこなうことで過不足のない潤滑剤供給量の調整ができるためである。
【0075】
なお、上述した「特殊モード」において、潤滑剤供給量を強制的に段階的又は連続的に増加できるようにすることもできる。すなわち、操作パネル46において「特殊モード」を選択する際に、潤滑剤供給量の増加量を段階的又は連続的に選択できるように構成することができる。具体的に、特殊モードの大きさ(程度)が任意に選択されると、それに応じた大きさで、そのときの潤滑剤供給ローラ16aの回転数が増加されることになる。
そして、そのような場合には、特殊モードによる潤滑剤供給量の増加量に応じて、固形潤滑剤16bの寿命が早まるように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が増加するように)、制御部48で補正算出することで、それらの値を正確に求めることができる。
【0076】
また、上述した「特殊モード」において、「特殊モード」が選択されているときであっても、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)が所定値(例えば、20kmである。)に達するまでは、潤滑剤供給ローラ16aの回転数の増加をおこなわないように制御することもできる。
これは、初期の段階では、潤滑剤供給ローラ16aにおけるブラシ毛のコシが充分に強くて、潤滑剤供給量が低下する不具合が生じにくいことによる。そのため、上述した制御をおこなうことで、初期段階で「特殊モード」が誤って選択されて潤滑剤供給量が過多になる不具合を確実に防止することができる。
【0077】
なお、本実施の形態において、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離(又は、駆動モータ45の総駆動時間)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変制御することもできるし、感光体ドラム11の総走行距離(又は、駆動モータ49の総駆動時間)に基いて潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変制御することもできる。詳しくは、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)が大きくなるのにともない潤滑剤供給ローラ16aの回転数が段階的に大きくなるように,駆動モータ45(可変手段)を制御することもできる。
さらに具体的に、図9を参照して、新品状態の潤滑剤供給ローラ16a(潤滑剤供給装置16)又は感光体ドラム11の駆動が開始されたときには、図4で説明した制御と同様に、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が基準値αに設定されている。そして、この回転数αは、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA1km(例えば、10kmである。)に達するまで維持される。そして、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA1kmからA2km(例えば、150kmである。)に達するまでの間は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.1×αである。)になるように制御部48で制御される。さらに、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA2kmからA3km(例えば、225kmである。)に達するまでの間は、潤滑剤供給ローラ16aの回転数がさらに高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御される。さらに、潤滑剤供給ローラ16a又は感光体ドラム11の総走行距離がA3kmを超えると、潤滑剤供給ローラ16aの回転数がさらに高い値(例えば、1.3×αである。)になるように制御部48で制御される。
このような制御をおこなうことで、経時においてさらに細かく潤滑剤供給量の調整をおこなうことができるため、経時における潤滑剤量低下を確実に防止することができる。
【0078】
また、本実施の形態において、検知手段としての絶対湿度検知部41によって検知された絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ潤滑剤供給ローラ16aの回転数が大きくなるように駆動モータ45(可変手段)を制御することもできる。
具体的に、図10を参照して、絶対湿度として低い値や中程度の値が検知された場合(所定値に達しない場合である。)には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αになるように制御部48で制御する。これに対して、絶対湿度として所定値よりも高い値が検知された場合には、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が標準値αよりも高い値(例えば、1.2×αである。)になるように制御部48で制御する。
このような制御をおこなった場合には、図6で説明した制御をおこなった場合とは異なり、絶対湿度が低いときに潤滑剤供給量が多くなるものの、絶対湿度が高くなったときに潤滑剤供給量が下限供給量を下回らない状態を維持することができる。すなわち、環境変動が生じても潤滑剤供給装置16によって感光体ドラム11上に供給される潤滑剤が不足してクリーニングブレードの欠損やクリーニング不良やフィルミング等が発生してしまう不具合が軽減される。
特に、図10に示すような制御をおこなった場合には、絶対湿度の変動に関らず下限供給量よりも多い潤滑剤供給量を確実に維持することができるため、帯電ハザードが生じて感光体ドラム11が劣化しやすくなる不具合を確実に抑止することができる。
【0079】
なお、本実施の形態において、駆動モータ45は、他の駆動モータ(例えば、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータ49である。)とは独立して潤滑剤供給ローラ16aのみを回転駆動する速度可変型モータであって、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変して感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成されている。すなわち、本実施の形態では、駆動モータ45が潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することで潤滑剤供給量を調整する可変手段として機能するように構成している。
これに対して、潤滑剤供給ローラ16aの回転数が一定になるように構成して、例えば、潤滑剤供給ローラ16aに対する固形潤滑剤16bの圧接力を可変するなどして、感光体ドラム11上に供給する潤滑剤の量を調整できるように構成することもできる。そして、そのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、本実施の形態において、(1)画像形成装置本体1が所定の低湿域(例えば絶対湿度が7g/m3以下)となる冬環境(冬場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、(2)画像形成装置本体1が所定の高湿域(例えば絶対湿度が15g/m3以上)となる夏環境(夏場のオフィス環境を想定したものである。)にて稼働される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、制御部48(算出手段)は、固形潤滑剤16bの寿命が過不足とならないように(又は、固形潤滑剤16bの総消費量が過不足とならないように)、それらの値を補正して算出することもできる。
【0081】
具体的に、夏環境時においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が少なくなるが、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離は標準環境時と同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも短く算出されてしまう(潤滑剤の残量が充分に残っているときに寿命と判定してしまう)。そのため、図11に示すように、寿命を算出する感光体ドラム11又は潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「0.8」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を遅くして、夏環境の使用においても適正に寿命を算出することができる。
なお、環境の検知は、先に説明した絶対湿度検知部41を用いておこなうことができる。
【0082】
また、冬環境時においては、環境変動によって消費される潤滑剤量が多くなるが、潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離は標準環境時と同じであるため、潤滑剤寿命は本来の寿命よりも長く算出されてしまう(潤滑剤の残量が無くなって暫くした後に、寿命と判定してしまう)。そのため、図11に示すように、寿命を算出する潤滑剤供給ローラ16aの総走行距離における基準カウント値「1.0」に対して補正係数「1.2」を乗ずることで、算出される走行距離の進み方を早くして、冬環境の使用においても適正に寿命を算出することができる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、潤滑剤供給ローラ16aの回転数を可変することによって感光体ドラム11(像担持体)上への潤滑剤供給量を調整して、その調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラ16aや感光体ドラム11の総走行距離(又は、総駆動時間)から算出される固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を補正している。これにより、環境変動が生じたときや経時においても感光体ドラム11に供給する潤滑剤が不足することなく、常に安定して感光体ドラム11上に潤滑剤を供給することができるとともに、固形潤滑剤16bの寿命や総消費量を正確に求めることができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電部12、現像部13、クリーニング部15、潤滑剤供給装置16である。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。これに対して、作像部における各部11、12、13、15、16をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、それぞれ単体で装置本体1に交換自在に設置されるように構成することもできる。このような場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【0085】
また、本実施の形態では、2成分現像剤を用いる2成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対して本発明を適用したが、1成分現像剤を用いる1成分現像方式の現像部13が搭載された画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、中間転写ベルト17を用いたタンデム型のカラー画像形成装置に対して本発明を適用した。これに対して、転写搬送ベルトを用いたタンデム型のカラー画像形成装置(転写搬送ベルトに対向するように並設された複数の感光体ドラム上のトナー像を、転写搬送ベルトによって搬送される記録媒体上に重ねて転写する装置である。)や、モノクロ画像形成装置等、その他の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置16に対して本発明を適用したが、感光体ドラム11以外の像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(例えば、中間転写ベルト17に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置である。)に対しても当然に本発明を適用することができる。そして、このような場合であっても、本実施の形態と同様に、調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラの総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aとしてブラシ毛が周設されたブラシ状ローラを用いたが、潤滑剤供給ローラ16aとしてスポンジ状部材(弾性材料)が周設されたスポンジ状ローラを用いることもできる。そして、このような場合であっても、スポンジ状部材(弾性材料)の弾性層は経時で弾性が低下してブラシ状ローラと同様に潤滑剤供給量が低下するため、本実施の形態と同様に、調整された潤滑剤供給量に応じて潤滑剤供給ローラの総走行距離や総駆動時間から算出される固形潤滑剤の寿命や総消費量を補正することで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、潤滑剤供給ローラ16aを駆動する駆動モータ45が、他の駆動系に対して独立して設置されている装置に対して本発明を適用した。これに対して、潤滑剤供給ローラ16aを駆動する駆動モータ45が、他の駆動系と共有化されている装置(例えば、クリーニング部15におけるクリーニングローラの駆動系と共通化されている装置である。)であっても、本実施の形態のものと同様に潤滑剤供給ローラ16aの回転数制御をおこなっているものであれば、本発明を適用することができる。そして、そのような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
11 感光体ドラム(像担持体)、
15 クリーニング部、
16 潤滑剤供給装置(潤滑剤供給部)、
16a 潤滑剤供給ローラ(ブラシ状ローラ)、
16b 固形潤滑剤、
41 絶対湿度検知部(検知手段)、
45 駆動モータ(可変手段)、
48 制御部(算出手段)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特開2001−305907号公報
【特許文献2】特開2007−193263号公報
【特許文献3】特開2010−210799号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、
前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を調整する可変手段と、
前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラにおける総走行距離又は総駆動時間から前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を求める算出手段と、
を備え、
前記算出手段は、前記可変手段によって可変された前記像担持体上への潤滑剤の供給量に応じて前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を補正して算出することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間に応じて前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が所定値に達したときに、前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御されることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が大きくなるのにともない前記潤滑剤供給ローラの回転数が段階的に大きくなるように制御されることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
絶対湿度を検知する検知手段を備え、
前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度に応じて前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項6】
前記可変手段は、前記絶対湿度が高いときには前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御され、前記絶対湿度が低いときには前記潤滑剤供給ローラの回転数が小さくなるように制御されることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項7】
前記可変手段は、前記絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御されることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項8】
前記算出手段は、画像形成装置本体が所定の低温域となる冬環境にて稼働される条件と、画像形成装置本体が連続通紙にて稼動される条件と、当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に増加させる特殊モードにて稼動される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項9】
前記算出手段は、前記3つの条件のうち複数の条件で稼動されるときに、前記複数の条件がそれぞれ単独でおこなわれるときに用いられる補正量を加算したものを減じて、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項8に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項10】
当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に段階的又は連続的に増加させる特殊モードが選択できるように構成され、
前記可変手段は、前記特殊モードによる前記潤滑剤供給量の増加量に応じて、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項11】
前記可変手段は、当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に増加させる特殊モードが選択されているときであっても、前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が所定値に達するまでは、前記潤滑剤供給ローラの回転数の増加をおこなわないように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項12】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
トナー像が担持される像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
所定方向に回転するとともに、前記像担持体に摺接する潤滑剤供給ローラと、
前記潤滑剤供給ローラに摺接する固形潤滑剤と、
前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することによって前記像担持体上に供給する潤滑剤の量を調整する可変手段と、
前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラにおける総走行距離又は総駆動時間から前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を求める算出手段と、
を備え、
前記算出手段は、前記可変手段によって可変された前記像担持体上への潤滑剤の供給量に応じて前記固形潤滑剤の寿命又は総消費量を補正して算出することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間に応じて前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が所定値に達したときに、前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御されることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記可変手段は、前記像担持体又は前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が大きくなるのにともない前記潤滑剤供給ローラの回転数が段階的に大きくなるように制御されることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
絶対湿度を検知する検知手段を備え、
前記可変手段は、前記検知手段によって検知された絶対湿度に応じて前記潤滑剤供給ローラの回転数を可変することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項6】
前記可変手段は、前記絶対湿度が高いときには前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御され、前記絶対湿度が低いときには前記潤滑剤供給ローラの回転数が小さくなるように制御されることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項7】
前記可変手段は、前記絶対湿度が所定値よりも高いときにのみ前記潤滑剤供給ローラの回転数が大きくなるように制御されることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項8】
前記算出手段は、画像形成装置本体が所定の低温域となる冬環境にて稼働される条件と、画像形成装置本体が連続通紙にて稼動される条件と、当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に増加させる特殊モードにて稼動される条件と、のうちいずれかの条件で稼動されるときに、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項9】
前記算出手段は、前記3つの条件のうち複数の条件で稼動されるときに、前記複数の条件がそれぞれ単独でおこなわれるときに用いられる補正量を加算したものを減じて、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項8に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項10】
当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に段階的又は連続的に増加させる特殊モードが選択できるように構成され、
前記可変手段は、前記特殊モードによる前記潤滑剤供給量の増加量に応じて、前記固形潤滑剤の寿命が早まるように、又は、前記固形潤滑剤の総消費量が増加するように、補正して算出することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項11】
前記可変手段は、当該潤滑剤供給装置による潤滑剤供給量を強制的に増加させる特殊モードが選択されているときであっても、前記潤滑剤供給ローラの総走行距離又は総駆動時間が所定値に達するまでは、前記潤滑剤供給ローラの回転数の増加をおこなわないように制御されることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の潤滑剤供給装置。
【請求項12】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の潤滑剤供給装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−20232(P2013−20232A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106498(P2012−106498)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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