説明

潤滑剤用抗酸化性向上剤および潤滑剤組成物

【課題】 基油への溶解性に優れ、それを含む潤滑剤組成物が優れた酸化安定性を達成できる抗酸化性向上剤を提供する。
【課題を解決するための手段】 長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子、例えばモリブデン原子、亜鉛原子、銅原子、ニッケル原子、鉄原子、カドミウム原子、銀原子、鉛原子、アンチモン原子、錫原子、タングステン原子およびビスマス原子等を、1分子当たりの平均でそれぞれ0.1〜100個有する数平均分子量500〜1,000,000の油溶性重合体(A)および分散剤(B)を含有する潤滑剤用抗酸化性向上剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤用抗酸化性向上剤および潤滑剤組成物に関する。詳しくは、特定の金属原子を有する油溶性重合体と分散剤を含有する潤滑剤用抗酸化性向上剤とそれを含有した潤滑剤組成物およびグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用潤滑油(エンジン油)、オートマチックトランスミッション油およびギア油などの潤滑剤は、内燃機関の高性能化、高出力化および運転条件の苛酷化などに伴い、高度な性能が要求され、さらに近年の環境問題の観点から、潤滑剤の更油間隔を延ばすロングドレイン性の向上が求められている。
【0003】
例えば、従来のエンジン油にはこうした要求性能を満たすため、摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤などの種々の添加剤を配合し、その性能向上を図っている。
潤滑剤が劣化すると、酸価の上昇、増粘などに加え、タールやワニスのほか不溶性のスラッジを生成し、これがエンジン、オートマチックトランスミッション、パワーステアリング、コンプレッサーなど装置内の汚れとして残り、トラブルの原因となる。
【0004】
また、潤滑剤のうちのグリースについては、グリースが酸化劣化すると、滴点,剪断安定性,ちょう度,離油特性等の性状が大きく変化し、軸受からグリースが漏洩し、軸受の寿命も極端に低下させる。更に、潤滑の主役をなす基油が酸化劣化すると基油の蒸発量が増加し基油分の減少,スラッジの生成,粘度の増加などによって潤滑機能が失われるのみならず、基油の酸化劣化によって生成した有機酸などによる軸受の腐食などを引き起こす。
【0005】
一般に、潤滑剤の劣化は、基油の劣化に起因するところが大きく、通常、基油に酸化防止剤を添加して熱安定性を向上させ、金属系清浄剤、無灰型分散剤を添加して高温清浄性の向上を図っている。しかしながら、更なる性能向上を図るには酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰型分散剤の添加だけでは限界がある。又、最近では、潤滑剤の熱安定性及び高温清浄性の向上のために、耐劣化性能のより高い基油、即ち、極めて高度に精製した鉱油或いは合成油を基油として用いる方法をとっているが、基油は潤滑剤の中で大部分の割合を占めるためコストの大幅な上昇につながっている。
【0006】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)が優れた性能を有することが知られており、潤滑剤に多用されている。また、特許文献1には、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステルなどの立体障害ヒドロキシフェニルカルボン酸エステルが、潤滑剤の安定剤として有用であることが記載されている。さらに、特許文献2には、基油に3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシプロピオン酸エステル、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ酢酸エステルなどの3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基置換脂肪酸エステルを添加した潤滑油組成物が開示されており、優れた酸化防止性とスラッジ生成防止性を発揮すると共に、高温条件下で長時間使用しても酸化防止性が低下し難いとしている。また、特許文献3には、所定基油に酸化防止剤を配合することにより、循環使用されるタービン油、回転式ガス圧縮機油、油圧作動油などの潤滑油が長期間の使用に耐え得るとしている。
【特許文献1】特開昭60−156644号公報
【特許文献2】特開平8−157854号公報
【特許文献3】特開平7−252489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、資源保護および環境保護の観点から、潤滑剤組成物の長寿命化は今後も重要課題のひとつであり、潤滑剤組成物のより一層の抗酸化性の向上が望まれているが、従来の酸化防止剤では高水準化する要求性能を満足させることができなくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の金属原子を有する油溶性重合体と分散剤を組み合わせて添加することにより、高温で抗酸化性向上能に優れた潤滑剤用抗酸化性向上剤が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子(M)を1分子当たりの平均でそれぞれ0.1〜100個有する数平均分子量500〜1,000,000の油溶性重合体(A)および分散剤(B)を含有する潤滑剤用抗酸化性向上剤およびそれを含有した潤滑剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑剤用抗酸化性向上剤は、基油への溶解性に優れ、それを含む潤滑剤組成物(潤滑油組成物およびグリース組成物)は抗酸化性向上効果に優れており、自動車用潤滑油組成物等に使用されると優れた酸化安定性を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、油溶性重合体における「油溶性」とは、一般的な液状石油製品に均一に溶解する性質をさすが、具体的には「100N溶剤精製鉱物油に対して0.1重量%を60℃にて均一溶解が可能」であり、かつ「25℃で24時間静置した後の析出有無を目視観察により評価した際に析出無き」ことを油溶性の定義とする。
また、本発明の潤滑剤用添加剤における「潤滑剤」とは、摩擦面を潤滑し、機械効率の向上を図るために用いられる物質の総称であり、潤滑油組成物およびグリース組成物などが含まれる。
【0011】
本発明における油溶性重合体(A)は、分子中に、長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子(M)を1分子当たりの平均でそれぞれ0.1〜100個有する数平均分子量500〜1,000,000の油溶性重合体であり、2種の(A)からなる混合物であってもよい。(M)は、好ましくは少なくともモリブデン原子、亜鉛原子、銅原子、ニッケル原子、鉄原子、カドミウム原子、銀原子、鉛原子、アンチモン原子、錫原子、タングステン原子およびビスマス原子を有することであり、さらに好ましくは、少なくともモリブデン原子および/または亜鉛原子を有すること、特に好ましくはモリブデン原子、およびモリブデン原子と亜鉛原子を有することである。
また、2種以上の(A)の混合物である場合、少なくとも1種の(A)はモリブデン原子を有していることが好ましい。その際、モリブデン原子とその他の(M)の個数の比率は特に限定されないが、抗酸化効果の観点から、好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは1/3〜10/1である。分子中におけるこれらの原子は、主鎖、側鎖および/または架橋部に存在し、好ましくは製造の容易さの観点から、側鎖および/または架橋部に存在する。
(A)中の(M)の数は、油溶性の観点から、好ましくは1分子当たり平均それぞれ0.1〜50個、さらに好ましくは1〜20個である。なお、これらの原子の1分子当たりの平均の個数は、後述の数平均分子量とこれらの原子の含有量(ICP発光分光分析による測定)から計算できる。
【0012】
本発明における油溶性重合体の数平均分子量(以下、Mnと略記)は通常500〜1,000,000、好ましくは1,500〜1,000,000、さらに好ましくは2,000〜300,000である(Mnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによる測定で、ポリスチレン標準)。
また、油溶性重合体の熱分解温度は100℃〜400℃であることが好ましい。さらに好ましくは120℃〜380℃、特に好ましくは150℃〜360℃である。熱分解温度がこの範囲内である場合、抗酸化効果に優れる点で有利である。(熱分解温度は熱分解重量測定により測定)。
【0013】
本発明における油溶性重合体としては、(M)を対イオンとして有する油溶性イオン性重合体(Ai)および(M)を錯体金属として有する油溶性錯体重合体(Ac)が挙げられる。これらのうち抗酸化効果の観点から好ましいのは(Ac)である。
【0014】
本発明における(Ac)としては、例えば、一般式(1)で表される油溶性錯体重合体が挙げられる。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(1)において、Qは油溶性錯体重合体から錯体構造を除いた重合体残基、Q’はQと同一またはアルキル基の炭素数1〜32のジアルキルアミノ基、Xは酸素原子または硫黄原子であり、複数のXは同一でも異なっていてもよく、M1、M2およびM3は錯体金属原子、Lは錯体構造のリガンド部分を示し、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表される1種以上である。
【0017】
Q’がQと同一である場合は、錯体構造はQとQ’との架橋部に存在することになり、Q’がジアルキルアミノ基である場合は、錯体構造はQの側鎖に存在することになる。
Q’がジアルキルアミノ基である場合の炭素数1〜32のアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシルおよびイソトリデシル基などが挙げられ、好ましいのはブチル、2−エチルヘキシルおよびイソトリデシル基、特に好ましいのは2−エチルヘキシルおよびイソトリデシル基であり、2個のアルキル基は同一でも異なっていてもよい。また、式中全てのQ’は同一でも異なっていてもよい。
【0018】
pおよびqは、通常0〜100、油溶性の観点から好ましくは0〜50、さらに好ましくは0〜20である。rは通常0〜50であって、油溶性の観点から好ましくは0〜40、さらに好ましくは0〜25である。p、qおよびrのうち少なくとも1つは0ではなく、pおよびqが0のときrは0.05〜50、rが0でpもしくはqの一方が0のとき残りは0.1〜100である。
【0019】
1〜M3は、長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子(M)であり、抗酸化効果から好ましくはモリブデン原子、亜鉛原子、銅原子、ニッケル原子、鉄原子、カドミウム原子、銀原子、鉛原子、アンチモン原子、錫原子、タングステン原子、ビスマス原子およびこれら2種以上の併用であり、さらに好ましくはモリブデン原子、亜鉛原子、およびモリブデン原子と亜鉛原子の併用であり、特に好ましくはモリブデン原子、およびモリブデン原子と亜鉛原子の併用である。
なお、モリブデン原子のみが1分子中に存在する場合は、qは0でありM1およびM3がモリブデン原子であり、亜鉛原子のみが1分子中に存在する場合は、pおよびrは0でありM2が亜鉛原子であり、モリブデン原子と亜鉛原子が1分子中に存在する場合は、M1およびM3がモリブデン原子であって、M2が亜鉛原子である。
【0020】
【化4】

【0021】
一般式(2)〜(4)において、Rは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基または下記一般式(5)で表される基であり、2つ以上のRは同一でも異なっていてもよい。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。
−(R1−O)n―R2 (5)
式中、R1は炭素数2〜12、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜24のアルキル基を示し、R1およびR2はそれぞれ2種以上の混合物でもよい。nは1〜20の整数を示す。
【0022】
一般式(1)〜(4)のそれぞれの式における複数のXは同一でも異なっていてもよく、1分子中のXにおける酸素原子と硫黄原子の比率は好ましくは1/10〜1/0、さらに好ましくは1/10〜10/1である。
【0023】
一般式(2)〜(4)のいずれかで表されるリガンド部分(L)のうち好ましいのは、抗酸化効果の観点から、一般式(2)で表されるリガンド部分である。
【0024】
(Ac)の製造方法は特に限定されないが、例えば、活性水素原子含有重合体(A0)、二硫化炭素および金属化合物(後述の、M1〜M3の酸化物など)の反応から得ることができ、必要により水硫化アルカリ、ジアルキルアミン、水および/または溶剤を共存させてもよい。
【0025】
(A0)としては、活性水素原子含有ビニル系重合体(A01)および活性水素原子含有開環重合系重合体(A02)、活性水素原子含有縮合系重合体(A03)が挙げられる。好ましいのは(A01)および(A02)である。
活性水素原子としては、水酸基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基、非置換アミド基、カルボキシル基およびスルホン酸基などの官能基に含まれる活性水素原子が挙げられる。
【0026】
(A01)としては、活性水素原子含有ビニル単量体(m1)を必須単量体とし、必要により他のビニル単量体(m2)を共重合させて得られる(共)重合体、並びに活性水素原子を2個以上有する連鎖移動剤(d)の存在下に(m2)のみを単独重合または(m1)と(m2)を共重合した重合体が挙げられ、(m1)および(m2)としては下記の単量体が例示される。
【0027】
(m1)活性水素原子含有ビニル単量体;
(m11)水酸基含有ビニル単量体;
(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[アルキレン基としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜6のアルキレン基、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−ブチレン基、イソブチレン基、スチレン基、α−メチルスチレン基、1,1−ジフェニルエチレン基、シクロヘキシレン基およびペンタメチレン基など。アルキレングリコール単位数は1〜50、好ましくは1〜20、具体例としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数9〜18)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノ(メタ)アクリレートなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、p−ヒドロキシスチレンおよびトリエタノールアミンジ(メタ)アクリレートなど]が挙げられる。
【0028】
(m12)1級もしくは2級アミノ基含有ビニル単量体;
(m121)1級もしくは2級アミノ基含有モノビニル単量体:
(m1211)脂肪族1級もしくは2級アミノ基含有モノビニル単量体:
アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]およびこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体[モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど]およびモノ(メタ)アリルアミンなどが挙げられる。
(m1212)芳香環含有1級もしくは2級アミノ基含有モノビニル単量体:
アミノフェニル、アミノアルキル(炭素数1〜8)フェニルおよびアミノフェニルアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート並びに(メタ)アクリルアミド[N−(4−アミノフェニル)(メタ)アクリレート、N−(4−アミノフェニル)(メタ)アクリルアミドおよびN−(4−アミノフェニルメチル)(メタ)アクリルアミドなど]、並びにこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)もしくはモノフェニル置換体[N−(4−フェニルアミノフェニル)(メタ)アクリルアミドおよびN−(4−メチルアミノフェニル)(メタ)アクリルアミドなど]が挙げられる。
【0029】
(m122)1級もしくは2級アミノ基含有ポリビニル単量体:
ジエタノールアミンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
(m13)非置換アミド基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0031】
(m14)カルボキシル基含有ビニル単量体;
カルボキシル基を1個含有するビニル単量体、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど]など;カルボキシル基を2個以上含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびアコニット酸などが挙げられる。
【0032】
(m15)スルホン酸基含有ビニル単量体;
炭素数2〜6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸など]、炭素数6〜12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α−メチルスチレンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体[2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニル単量体[3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など]、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステルなど]などが挙げられる。
(m16)リン酸エステル基含有ビニル単量体;
例えば、リン酸モノアルケニルエステル(炭素数2〜12)[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル、リン酸ドデセニルなど]、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェートなど]、ポリ(n=2〜20)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートエステルのリン酸エステルなどが挙げられる。
(m1)のうち好ましいのは(m121)および(m122)、さらに好ましいのは(m121)、特に好ましいのはアミノアルキル(メタ)アクリレート、とりわけアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0033】
なお、(m1)としては、活性水素原子が保護基で保護された誘導体を使用してもよく、重合後に保護基を外すことにより活性水素原子を再生することができる。
活性水素原子の保護基としては、例えば1級アミノ基に対して各種ケトン(ジメチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなど)を反応させて得られるケチミン基などが挙げられ、ケチミン基を重合後に加水分解することによってケトンが遊離し、1級アミノ基が再生される。
1級アミノ基とケトンとの反応は、50℃〜150℃で減圧で脱水することによって行うことができ、ケチミン基を生成する。この際、アルカリ存在化では反応がより進行しやすい。また、上記ケチミン基の加水分解は50℃〜150℃において、水を1〜50当量添加し、生成した遊離のケトンを減圧除去することにより行うことができる。
【0034】
(m1)として1級アミノ基含有単量体を使用する際には、共重合性の観点から保護基の使用が好ましい。
【0035】
他のビニル単量体(m2);
(m21)(メタ)アクリル酸エステル;
(m211)(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
アルキル基としては炭素数1〜32(好ましくは1〜24)の直鎖または分岐のアルキル基が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよび(メタ)アクリル酸テトラコシルなどが挙げられる。
【0036】
(m212)(メタ)アクリル酸アルケニルエステル;
アルケニル基としては、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸オクテニル、(メタ)アクリル酸デセニル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オレイルなどが挙げられる。
【0037】
(m213)(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリル酸エステル;
アルキレン基としては前述の(m11)で挙げた基などが挙げられる。またモノアルキルエーテルを構成するアルキル基としては炭素数が1〜20、好ましくは1〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられ、前述のアルキル基が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールにおけるアルキレングリコールの単位の数は好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
具体例としては、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数6)モノメチルエーテルモノメタクリレート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノブチルエーテルモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0038】
(m22)N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;
N−モノアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルへキシル(メタ)アクリルアミド、N−デシル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−オクタデシル(メタ)アクリルアミド、N−2−デシルテトラデシル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミドなど]、N,N−ジアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジドデシル(メタ)アクリルアミドなど]およびエチレンジ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0039】
(m23)(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸のエステル;
(メタ)アクリル酸以外の不飽和モノカルボン酸[クロトン酸など]の炭素数1〜30のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステル、ならびに不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜24のアルキルジエステル[マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチルなど]が挙げられる。
【0040】
(m24)脂肪族ビニル系炭化水素;
炭素数2〜30のアルケン[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘプテン、4-メチルペンテン−1,1−ヘキセン、ジイソブチレン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびその他のα−オレフィンなど]、炭素数4〜18のアルカジエン[好ましくは炭素数4〜5のブタジエン、イソプレン、その他1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエンなど]などが挙げられる。
【0041】
(m25)アルキルアルケニルエーテル;
炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、アルキル(メタ)アリルエーテル、アルキルプロペニルエーテルおよびアルキルイソプロペニルエーテルなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基である。具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アルキル(メタ)アリルエーテルとしては、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、n−ブチルアリルエーテルなどが挙げられる。これらのうちで好ましいものは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテルおよびエチルアリルエーテルである。
【0042】
(m26)脂肪酸ビニルエステル;
脂肪酸としては総炭素数1〜30、好ましくは1〜24、さらに好ましくは1〜18の直鎖状または分岐状の脂肪酸が挙げられ、飽和または不飽和のいずれであってもよい。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびn−オクタン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニルなどが挙げられる。
【0043】
(m27)ビニルケトン類;
炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]が挙げられる。
【0044】
(m28)脂環基(炭素数5〜24)含有ビニルモノマー;
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン、ピネン、リモネン、インデン、シクロアルキルカルボン酸ビニルエステル[シクロヘキサン酸ビニル、シクロオクタン酸ビニル、デカヒドロナフチル酸ビニルなど]、シクロアルキルカルボン酸プロペニルエステル[ビシクロペンチル酸プロペニルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸デカヒドロナフチルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエチルなど]、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸メチル、シクロヘプチル(メタ)アクリル酸エチルなどが挙げられる。
【0045】
(m29)芳香族ビニル系炭化水素;
スチレン、置換スチレン(置換基の炭素数1〜18)[アルキル置換スチレン(好ましくはα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレンなど)、シクロアルキル置換スチレン(シクロヘキシルスチレンなど)、アリール置換スチレン(フェニルスチレンなど)、アラルキル置換スチレン(ベンジルスチレンなど)、アシル基置換スチレン(アセトキシスチレンなど)、フェノキシ基置換スチレン(フェノキシスチレンなど)など]、ジビニル置換芳香族炭化水素[好ましくはジビニルベンゼン、その他ジビニルトルエンおよびジビニルキシレンなど]、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0046】
(m210)上記以外の単量体;
ニトリル基含有単量体[(メタ)アクリロニトリルおよびシアノスチレンなど]、ニトロ基含有単量体[4−ニトロスチレンなど]およびハロゲン含有ビニル単量体[塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(モノおよびジクロルスチレン、テトラフルオロスチレンおよび塩化アリルなど)]が挙げられる。
【0047】
(m2)のうち、好ましいのは(m21)および(m22)であり、(m21)のうちさらに好ましいのは(m211)および(m211)のうちの2種以上の併用である。
【0048】
(A01)における、単量体の仕込み重量比率は、通常(m1)/(m2)=0.1〜100/99.9〜0、好ましくは0.1〜40/99.9〜60、さらに好ましくは0.1〜50/99.9〜50である。
【0049】
(A01)として最も好ましいのは、油溶性の観点から、(m2)として、(m21)および/または(m22)を含有し、(m21)+(m22)が全単量体の重量に基づいて60〜99.9重量%であるビニル重合体である。
【0050】
(A01)を製造する方法は、従来から知られているラジカル重合方法でよく、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等が挙げられる。これらのうち、好ましくは溶液重合法であり、通常、溶剤中で、開始剤存在下でラジカル重合することにより製造できる。溶剤としては、例えば高沸点溶剤として溶剤精製油、イソパラフィンを含有するおよび/または水素化分解による高粘度指数油、炭化水素系合成油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油など)、エステル系合成油、ナフテン油等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば炭化水素系溶剤(ペンタン、ヘキサン等)、芳香族系溶剤(トルエン、キシレン等)、アルコール系溶媒(イソプロピルアルコール、オクタノール、ブタノール等)、ケトン系溶媒(メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化合物開始剤からなる群より選ばれる開始剤である。
アゾ系開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミドなどが挙げられる。
過酸化物系開始剤としては無機過酸化物[例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど]、有機過酸化物[例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ラウリルパーオキシドなど]が挙げられる。
レドックス系触媒としては、アルカリ金属の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩(例えば、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウムなど)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、アスコルビン酸などの還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、有機過酸化物など酸化剤との組合せよりなるものなどが挙げられる。
また、重合には連鎖移動剤を添加してもよく、例えばメルカプタン類(n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノールなど)、チオカルボン酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸など)、2級アルコール類(イソプロパノ−ルなど)、アミン類(ジブチルアミンなど)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウなど)などが挙げられる。
連鎖移動剤のうち好ましいのは1分子中に2個以上の活性水素原子を有する連鎖移動剤(d)であり、(d)を使用することにより重合体末端に活性水素原子を導入することができるため、例えば上記の(m2)を使用しない重合体であっても活性水素原子含有重合体(A0)として用いることができる。(d)としては例えばメルカプトエタノールおよびメルカプトプロパノールなどが挙げられる。
【0051】
重合制御の方法は、断熱重合法、温度制御重合法が挙げられる。反応温度としては、好ましくは30〜140℃、さらに好ましくは50〜130℃、特に好ましくは70〜120℃である。また、熱による重合開始の方法の他に、放射線、電子線、紫外線などを照射して重合を開始させる方法を採ることもできる。好ましいものは温度制御した溶液重合法である。
さらに、共重合としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、またグラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0052】
本発明における(A0)のうち、活性水素原子含有開環重合系重合体(A02)としては重合体末端のみに活性水素原子を有する開環重合系重合体(A021)と、さらに重合体主鎖および/または側鎖にも活性水素原子を有する開環重合系重合体(A022)が挙げられる。
【0053】
(A021)としては、アルキレン基の炭素数2〜12のポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールおよびそれらの末端一級アミノ化物などが挙げられる。
また、(A022)としては、ポリエチレンイミン、ジエタノールアミンアルキレングリコール付加物(アルキレングリコールの単位数20〜50)およびポリグリシドールなどが挙げられる。
【0054】
活性水素原子含有縮合系重合体(A03)としては、両末端水酸基のポリエステル系重合体、両末端アミノ基のポリアミド系重合体、両末端アミノ基のポリウレタン系重合体および両末端水酸基のポリカーボネート系重合体などが挙げられる。
【0055】
また、(A0)のSP値(溶解性パラメーター)は8.0〜9.8であることが好ましい。さらに好ましくは、8.2〜9.7、特に好ましくは8.5〜9.5である。SP値がこの範囲内である場合、油溶性に優れる点で有利である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]によって算出される値である。
【0056】
(Ac)の製造に使用できる金属化合物としては、長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子を含む金属化合物が挙げられ、例えばこれらの金属の酸化物、水酸化物、酸化物の水和物およびハロゲン化物などが例示される。金属化合物のうち好ましいのは、抗酸化効果の観点から好ましくはモリブデン化合物、亜鉛化合物、銅化合物、ニッケル化合物、鉄化合物、カドミウム化合物、銀化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、錫化合物、タングステン化合物およびビスマス化合物が挙げられ、さらに好ましくは、モリブデン化合物(M0)および亜鉛化合物(Z0)である。
モリブデン化合物(M0)としては、6価のモリブデン原子を含有する化合物などが挙げられ、例えば、三酸化モリブデンおよびその水和物(MoO3・nH2O)、モリブデン酸(H2MoO4)およびその塩〔モリブデン酸アルカリ金属塩(M2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム[(NH42MoO4又は(NH46(Mo324)・4H2O]など〕、MoOCl4、MoO2Cl2、MoO2Br2、Mo22Cl6、並びに硫化モリブデン酸およびその塩(テトラチオモリブデン酸アンモニウムなど)等が挙げられる。好ましいのは、工業的に入手しやすい三酸化モリブデンおよびその水和物、モリブデン酸およびその塩、並びに硫化モリブデン酸およびその塩であり、さらに好ましいのは、三酸化モリブデンおよびその水和物並びにモリブデン酸である。
【0057】
亜鉛化合物(Z0)としては、例えば、酸化亜鉛およびその水和物(ZnO・nH2O)、並びにハロゲン化亜鉛(塩化亜鉛、臭化亜鉛など)が挙げられる。好ましいのは、工業的に入手しやすい酸化亜鉛およびその水和物並びに塩化亜鉛である。
【0058】
本発明における(Ac)の製造は、前述のように反応させることにより達成できるが、必要により、他の成分の共存下で行ってもよい。他の成分としては水硫化アルカリ、ジアルキルアミン、水、溶剤などが挙げられる。水硫化アルカリを共存させることによって(Ac)におけるXの酸素/硫黄重量比を調節できる。ジアルキルアミンを共存させることによって、一般式(1)におけるQ’をジアルキルアミノ基にすることができる。水を共存させることによって、反応率が向上できる。また、溶剤としては例えば上記溶液重合の際の溶剤が挙げられ、溶剤を共存させることによって反応工程での低粘度化による反応速度の向上できる。
【0059】
反応条件は、全ての原料を反応容器中に一括仕込みしてから所定の反応温度で反応してもよいが、金属化合物以外の原料を予め仕込んでおいて、所定の反応温度に到達してから金属化合物を徐々に添加することが好ましい。反応温度は好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは50℃〜140℃、特に好ましくは70℃〜130℃である。反応時間は好ましくは0.5時間〜24時間、さらに好ましくは1時間〜10時間、特に好ましくは1時間〜5時間である。生成物は必要により濾過や抽出などの精製を行ってもよい。
【0060】
また、(Ac)は、一般式(6)〜(8)のいずれかで表される1種以上の官能基を有する単量体(m3)を必須構成単量体とする重合体(A0’)、および金属化合物の反応から得ることができ、必要により水硫化アルカリ、水および/または溶剤を共存させてもよい。
【0061】
【化5】

【0062】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基または下記一般式(5)で表され、2つ以上のRは同一でも異なっていてもよい。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。
−(R1−O)n―R2 (5)
式中、R1は炭素数2〜12、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜24のアルキル基を示し、R1およびR2はそれぞれ2種以上の混合物でもよい。nは1〜20の整数を示す。
【0063】
(m3)としては、以下のものが挙げられる。
(m31);一般式(6)で表される官能基を有するビニル単量体
例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルジチオカルバミン酸、硫化(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルモノアルキル(炭素数1〜24)ジチオカルバミン酸などが挙げられる。
(m32);一般式(7)で表される官能基を有するビニル単量体
例えばメタクリロイルオキシエチルモノアルキル(炭素数1〜12)ジチオリン酸エステルなどが挙げられる。
(m33);一般式(8)で表される官能基を有するビニル単量体
例えばグリセリンモノ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンモノアルキレン(炭素数2〜20)グリコール(メタ)アクリル酸エステル、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸アミドなどが挙げられる。
【0064】
(A0’)は、(m3)と他の単量体の共重合体であってもよく、他の単量体としては前述の(m2)および(m11)〜(m13)の単量体が挙げられ、好ましいのは(m21)特に(m211)である。(m3)/他の単量体の重量比は通常0.1〜100/99.9〜0、好ましくは1〜50/99〜50である。
共重合体の場合の重合様式はランダム共重合、ブロック共重合またはグラフト共重合のいずれでもよく、他の単量体のみから得られた重合体に対してグラフト重合してもよい。
【0065】
(A0’)から(Ac)を製造する方法は、(A0’)を仕込んでおいてから、所定の反応温度に昇温した後、金属化合物を徐々に添加することが好ましい。
反応温度および反応時間などの条件は、前述の(Ac)の製造におけると同様の条件が好ましい。
【0066】
本発明における(Ai)としては、(M)が酸性重合体の対イオンとして存在する油溶性重合体(Ai1)および(M)の酸化物が塩基性重合体の対イオンとして存在する油溶性重合体(Ai2)が挙げられる。
【0067】
(Ai1)を構成する酸性重合体としては、酸性ビニル系重合体および酸性開環重合系重合体などが挙げられる。
酸性ビニル系重合体としては、酸性ビニル単量体(m4)とその他の単量体との共重合体が挙げられる。
(m4)としては、前述の(m14)、(m15)および(m16)、並びにそれらの硫黄置換体(2−メタクリロイルオキシエチル−ジチオカルバミン酸、ジチオメタクリル酸など)などが挙げられる。
(m4)と共重合できるその他の単量体としては前述の(m2)が挙げられ、好ましいものも同様である。(m4)と他の単量体との仕込み重量比[(m4)/他の単量体]は、通常0.01〜50/99.99〜50、好ましくは0.1〜20/99.9〜80である。
【0068】
酸性開環重合系重合体としては、重合体末端のみに酸性基を有する開環重合系重合体(例えばポリプロピレングリコールの末端カルボキシル化物、ポリブチレングリコールの末端燐酸化物など)が挙げられる。
【0069】
(Ai1)の製造は、上記の酸性重合体と炭素数1〜6の低級カルボン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸など)の金属塩(金属は上記のモリブデンなど)を混合し、低級カルボン酸を減圧除去することにより達成される。
酸性重合体と金属塩の仕込み当量比は1〜10/1〜10/1〜10が好ましい。
【0070】
(Ai2)を構成する塩基性重合体としては、塩基性ビニル系重合体および塩基性開環重合系重合体などが挙げられる。
塩基性ビニル系重合体としては、塩基性ビニル単量体(m5)とその他の単量体との共重合体が挙げられる。
(m5)としては、前述の(m12)などが挙げられる。
(m5)と共重合できるその他の単量体としては前述の(m2)が挙げられ、好ましいものも同様である。(m5)と他の単量体との仕込み重量比[(m5)/他の単量体]は、通常0.01〜50/99.99〜50、好ましくは0.1〜30/99.9〜70である。
【0071】
塩基性開環重合系重合体としては、重合体末端のみに塩基性基を有する開環重合系重合体(例えばポリプロピレングリコールの末端アミノ化物、ポリブチレングリコールの末端アミノ化物など)が挙げられる。
【0072】
(Ai2)の製造は、上記の塩基性重合体と(M)の酸化物および/または(M)の酸化物の軽金属またはアンモニウム塩を混合することにより達成される。
酸性重合体と(M)の酸化物との仕込み当量比は1〜10/10〜1が好ましい。
【0073】
本発明の潤滑剤用添加剤は、(A)を製造して得られたままの形態(反応生成物そのまま)で使用することが出来るが、必要により精製(例えば、溶剤の除去、触媒の除去など)されたものでもよい。
【0074】
本発明の潤滑剤用添加剤は、油溶性に優れているので各種の潤滑油組成物またはグリース組成物などの潤滑剤組成物に添加すると優れた酸化防止効果を発揮する。
【0075】
本発明の潤滑剤用抗酸化性向上剤の必須成分である分散剤(B)としては、従来から分散剤として使用されている化合物であれば特に限定されないが、下記一般式(9)〜(12)のいずれかで示される化合物(B1)、これらの誘導体(B2)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(B)のうち好ましいのは、(A)との併用による抗酸化性向上効果の観点から、一般式(9)〜(12)のいずれかで示される化合物(B1)、またはこれらのうちの2種以上の併用である。
【0076】
【化6】

【0077】
一般式(9)〜(12)において、R’は炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、mは0〜5、好ましくは1〜4の整数を示す。
アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑剤基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑剤組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。これらのアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。なお、一般式(9)および一般式(10)において、R’はポリブテニル基であることが特に好ましい。
【0078】
一般式(9)の化合物は、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドであり、一般式(10)の化合物は、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドである。
一般式(9)または(10)で示される化合物は、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物(例えばポリブテニル、ポリプロピレン、エチレンαオレフィンコポリマーなど)を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸を、さらにポリアミンと反応させることにより得ることができる。
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等の(ポリ)アルキレンポリアミンが例示できる。
【0079】
一般式(11)で示される化合物は、アルキルもしくはアルケニル置換ベンジルアミン系化合物である。
これらのベンジルアミン系化合物は、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては前述と同様のものが使用できる。
【0080】
一般式(12)で示される化合物は、アルキルもしくはアルケニル置換ポリアミン系化合物である。
これらのポリアミン系化合物は、例えばプロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやポリアミンを反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては前述と同様のものが使用できる。
【0081】
一般式(9)〜(12)のいずれかで示される化合物(B1)の誘導体(B2)としては、例えば、(B1)に残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部の中和物、アミド化物、ホウ素変性物、リン酸変性化合物、硫黄変性化合物およびこれらの併用が挙げられる。
中和物を製造するための中和剤としては、カルボン酸、リン酸、ホウ酸および硫酸などが使用できる。カルボン酸としては、炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸が挙げられる。
アミド化物の製造には、上記中和剤と同様の化合物が使用できる。
ホウ素変性物、リン酸変性化合物および硫酸変性化合物の製造に使用できる化合物としてはそれぞれリン酸、ホウ酸および硫酸が使用できる。
【0082】
本発明の潤滑剤組成物において(B)の含有量は、潤滑剤組成物の重量に基づいて、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)である。(B)の含有量が0.01%未満の場合は、高温清浄性に対する効果が少なく、一方、20%を越える場合は、潤滑剤組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
(B)の(A)に対する重量比(B)/(A)は、通常0.01〜0.7、抗酸化性向上効果の観点から、好ましくは0.02〜0.4である。
【0083】
本発明における潤滑剤用抗酸化性向上剤は、(A)、(B)の他に、さらに抗酸化性の向上ができるという観点から、公知の酸化防止剤(C)を含有していてもよく、また、基油への溶解が容易になるという観点から、希釈剤(D)を含有していてもよい。
(C)としては、チオカルバミン酸金属塩、(例えば、アルキル基の炭素数1〜4のジアルキルジチオカルバミン酸塩であって、塩としてはナトリウム塩、亜鉛塩、ニッケル塩、銅塩、鉄塩など);フェノール系化合物、(4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、および特開2002−317179号記載のヒンダードフェノール化合物);アミン系化合物、(フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリールアミン化合物など);アルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩;ノニルフェニール硫化カルシウム;油溶性フェナート及び硫化フェナート;ホスホ硫化又は硫化炭化水素;油溶性銅化合物(米国特許第4867890号に記載のもの);モリブデン含有化合物;およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。中でもチオカルバミン酸金属塩およびこれらのうちの2種以上の混合物が好ましい。(C)の含有量は潤滑剤用抗酸化性向上剤の重量に基づいて好ましくは5%以下、さらに好ましくは0.01〜2.0%である。
【0084】
(D)としては、後述の基油と同様のもの、および前述の(A)の製造法において挙げた溶剤と同様のものが使用でき、(A)の製造工程で使用した溶剤を除去せずにそのまま残しておいてもよい。希釈剤として好ましいのは後述のグループIII基油またはグループIV基油である。
(D)の含有量は、潤滑剤用抗酸化性向上剤の重量に基づいて好ましくは95%以下、さらに好ましくは1〜75%である。
【0085】
本発明の潤滑剤組成物は、上記の潤滑剤用抗酸化性向上剤および基油を含有してなる潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物の重量に基づいて0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%の重合体(A)および0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%の分散剤(B)を含有する潤滑剤組成物である。
【0086】
基油としては、従来から潤滑剤の基油として使用されている鉱物油および合成潤滑油などであれば特に限定されない。
鉱物油とは、天然の原油から分離、蒸留、精製されるものをさし、パラフィン系、ナフテン系、パラフィン−ナフテン混合系、あるいはこれらを水素化処理、溶剤精製したものが挙げられる。合成潤滑油とは化学的に合成された潤滑油であって、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジカルボン酸のアルキルエステルなどのジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ポリシリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼンなどが挙げられる。また、基油は、アメリカ石油協会では以下のようにグループ■から■に分類さ
れている。
グループI基油は90%未満の飽和油(ASTM D2007)および/または硫黄含量(ASTM D2622、D4294、D4927またはD3120)が0.03%以上、粘度指数が80以上120未満。
グループII基油は90%以上の飽和油(ASTM D2007)および硫黄含量が0.03%以下、粘度指数が80以上120未満。
グループIII基油は90%以上の飽和油(ASTM D2007)および硫黄含量が0.03%以下、粘度指数が120以上。
グループIV基油はポリアルファオレフィン(PAO)。
グループV基油はグループI〜IV以外。エステルなど。
【0087】
本発明の潤滑剤組成物に用いられる基油は、好ましくは曇点(JIS K2269)が−5℃以下、さらに好ましくは−15℃〜−70℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。また、基油の動粘度は100℃において好ましくは1〜10mm2/secのものが好ましい。
【0088】
本発明における潤滑剤組成物に用いられる基油は、グループIII基油またはグループIV基油を基油の重量に基づき好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは10〜100%、特に50〜100%含有していることが好ましい。
【0089】
本発明の潤滑剤組成物は、さらに他の添加剤(E)を含有してもよい。
(E)としては、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄剤、摩擦摩耗調整剤、摩擦改質剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤および腐食防止剤などが挙げられる。
粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート系およびポリオレフィン系の粘度指数向上剤などが挙げらる。
流動点降下剤としては、ポリメタクリレート系およびエチレンビニルアセテート系の流動点降下剤などが挙げられる。
清浄剤としては、スルフォネート系、サリシレート系、フェネート系およびナフテネート系などのCaやMg塩、並びに炭酸カルシウムなどが挙げられる。
粘度指数向上剤、流動点降下剤または清浄剤のそれぞれの添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて好ましくは20%以下、さらに好ましくは0.1〜10%である。
摩擦摩耗調整剤としては、モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメイトおよびジンクジアルキルジチオフォスフェートなどが挙げられ、その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜3%である。
摩擦改質剤としては、長鎖脂肪酸系(オレイン酸など)、長鎖脂肪酸エステル(オレイン酸エステルなど)、長鎖アミン系(オレイルアミンなど)、および長鎖アミド(オレアミドなど)が挙げられ、その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜1%である。
極圧剤としては、硫黄リン系、硫黄系、リン系およびクロル系の極圧剤などが挙げられ、
その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常20%以下、好ましくは0.1〜10%である。
消泡剤としては、シリコーン油、金属石けん、脂肪酸エステルおよびリン酸エステルなどが挙げられ、その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常1000ppm以下、好ましくは10〜700ppmである。
抗乳化剤としては、4級アンモニウム塩、硫酸化油およびリン酸エステルなどが挙げられ、その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常3%以下、好ましくは0〜1%である。
腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールおよび1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカルバメートなどが挙げられ、その添加量は潤滑剤組成物の重量に基づいて通常3%以下、好ましくは0〜2%である。
【0090】
(E)の合計の添加量は、潤滑剤組成物の重量に基づいて、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0091】
本発明の潤滑剤組成物は、抗酸化性向上効果の他、粘度指数向上効果、流動点降下効果などの性能にも優れており、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用など)、変速機油[ギア油(工業用、自動車用)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、トロイダルCVT油、ベルトCVT油)]、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、トラクション油、グリースなどに幅広く好適に用いることができる。好ましくはエンジン油、ギア油およびグリースへの使用であり、省燃費性に優れるうえ耐久性においても効果的である。
【0092】
本発明のグリース組成物は、基油、増稠剤および上記の潤滑剤用抗酸化性向上剤を含有してなるグリース組成物であり、グリース組成物の重量に基づいて0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%の重合体(A)および0.01〜30%、好ましくは01〜20%の分散剤(B)を含有する。
【0093】
基油としては、前述の基油と同様のもの、および前述の(A)の製造法において挙げた溶剤と同様のものが使用でき、(A)の製造工程で使用した溶剤を除去せずにそのまま残しておいてもよい。基油として好ましいのは、前述のグループIII基油またはグループIV基油である。
増稠剤としては、炭素数2〜32の脂肪酸金属塩等が挙げられる。脂肪酸金属塩を構成する炭素数2〜32の脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸および12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が挙げられ、金属塩としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウム等のアルカリ金属の塩、並びに、バリウム、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の塩が挙げられる。
グリース組成物における基油、増稠剤および潤滑剤用添加剤の重量比(基油/増稠剤/潤滑剤用抗酸化性向上剤)は、好ましくは0.1〜90/0.1〜90/0.1〜50である。
【0094】
[実施例]
以下に、実施例および製造例について説明するが、本発明はこれに限定するものではない。なお、部は重量部を表す。
【0095】
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5質量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
(熱分解重量測定による熱分解温度の測定法)
装置 :熱重量測定装置 TGA−50(株式会社島津製作所)
測定温度 :0〜600℃、10℃/min
試料重量 :10mg
(ICP発光分光分析による金属原子含量の測定法)
装置 :SEQUENTIAL PLASMA SPECTROMETER
ICPS−8000(株式会社島津製作所)
希釈溶剤 :キシレン
【0096】
製造例1
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、メタクリル酸エステル系ランダム共重合体(2−アミノエチルメタクリレート/メタクリル酸2−デシルテトラデシル=15/85重量比、Mn=4,000、SP値=9.1、分解温度=360℃)120部を仕込み、滴下ロートに二硫化炭素80部を仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後、反応容器を30℃に保ったまま30分かけて二硫化炭素を滴下した。その後、反応容器に三酸化モリブデン25部を仕込んで、反応容器内を100℃に昇温した。もう一つの滴下ロートに水44部を仕込み、1時間かけて滴下した。さらに1時間撹拌した後、ヘキサンで抽出し、温度100℃、圧力20mmHgで減圧乾燥して重合体(E1)200部を得た。重合体(E1)は油溶性であり、Mn=8,000、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で2個のモリブデン原子を有していた。
【0097】
製造例2
メタクリル酸エステル系ランダム共重合体を2−アミノエチルメタクリレート/メタクリル酸2−デシルテトラデシル=30/70重量比(Mn=4,000、SP値=9.4、分解温度=360℃)120部とする以外は製造例1と同様にして、重合体(E2)200部を得た。重合体(E2)は油溶性であり、Mn=8,500、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で3個のモリブデン原子を有していた。
【0098】
製造例3
メタクリル酸エステル系ランダム共重合体を2−アミノエチルメタクリレート/メタクリル酸テトラデシル=10/90重量比(Mn=4,000、SP値=9.2、分解温度=360℃)120部とする以外は製造例1と同様にして、重合体(E3)200部を得た。重合体(E3)は油溶性であり、Mn=7,500、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で2個のモリブデン原子を有していた。
【0099】
製造例4
メタクリル酸エステル系ランダム共重合体を2−アミノエチルメタクリレート/メタクリル酸2−デシルテトラデシル=15/85重量比、Mn=10,000、SP値=9.1、分解温度=360℃)120部とする以外は製造例1と同様にして、重合体(E4)200部を得た。重合体(E4)は油溶性であり、Mn=25,000、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で5個のモリブデン原子を有していた。
【0100】
製造例5
メタクリル酸エステル系ランダム共重合体を2−アミノエチルメタクリレート/アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸ドデシル=20/40/40重量比、Mn=3,000、SP値=9.5、分解温度=360℃)120部とする以外は製造例1と同様にして、重合体(E5)200部を得た。重合体(E5)は油溶性であり、Mn=6,000、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で1個のモリブデン原子を有していた。
【0101】
実施例6
三酸化モリブデン25部を三酸化モリブデン17部、酸化亜鉛5部とする以外は製造例2と同様にして、重合体(E6)200部を得た。重合体(E6)は油溶性であり、Mn=8,000、分解温度=350℃であり、1分子当たりの平均で1個のモリブデン原子および1個の亜鉛原子を有していた。
【0102】
比較品1
市販の4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)を比較品1の抗酸化剤(H1)とした。
【0103】
市販のポリブテニルコハク酸イミドを本発明の分散剤Aとした。
本評価の基油としては、YUBASE4(SK Corp.製)を用いた。
【0104】
実施例1〜6、比較例1
<潤滑剤組成物の製造と酸化試験>
表1のとおり配合し潤滑剤組成物を得て、酸化試験に供した。結果を表2に示す。表2より、比較例の潤滑剤組成物と比較して実施例の潤滑剤組成物は酸化試験後の100℃での動粘度の増加が小さく、酸化安定性に優れていることがわかる。
【0105】
(酸化試験方法)
方法 :JIS K2514
測定温度 :165.5℃
攪拌回転数 :1300rpm
触媒 :鉄および銅板
装置 :ISOT
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の抗酸化性向上剤を添加した潤滑剤組成物は、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用など)、変速機油[ギア油(工業用、自動車用)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、トロイダルCVT油、ベルトCVT油)]、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、トラクション油、作動油、グリースなどに幅広く好適に用いることができる。特にエンジン油、ギア油、グリースへの使用は、耐久性に優れメンテナンスフリーを大幅に延長でき、地球環境保護においても効果的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長周期型周期表第4〜7周期の6〜15族に属する原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子(M)を1分子当たりの平均でそれぞれ0.1〜100個有する数平均分子量500〜1,000,000の油溶性重合体(A)および分散剤(B)を含有する潤滑剤用抗酸化性向上剤。
【請求項2】
(M)がモリブデン原子、亜鉛原子、銅原子、ニッケル原子、鉄原子、カドミウム原子、銀原子、鉛原子、アンチモン原子、錫原子、タングステン原子およびビスマス原子のいずれか1種以上である請求項1記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤。
【請求項3】
(A)が(M)のカチオンを対イオンとして有する油溶性イオン性重合体(Ai)又は(M)を錯体金属原子として有する油溶性錯体重合体(Ac)である請求項1または2記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤。
【請求項4】
(Ac)が、一般式(1)で表される油溶性錯体重合体である請求項4記載の潤滑剤組成物。
【化1】

[式中、Qは油溶性錯体重合体から錯体構造を除いた重合体残基、Q’はQと同一またはアルキル基の炭素数1〜32のジアルキルアミノ基、Xは酸素原子または硫黄原子であり、複数のXは同一でも異なっていてもよく、M1、M2およびM3はそれぞれ錯体金属原子、Lは錯体構造のリガンド部分を示し、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表される1種以上であり、pおよびqはそれぞれ0〜100、rは0〜50であって、p、qおよびrのうち少なくとも1つは0ではなく、pおよびqが0のときrは0.05〜50、rが0でpもしくはqの一方が0のとき残りは0.1〜100である。
【化2】

式中、Rは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基または下記一般式(5)で表される基であり、2つ以上のRは同一でも異なっていてもよい。Xは酸素原子または硫黄原子を示し、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
−(R1−O)n―R2 (5)
式中、R1は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜24のアルキル基を示し、R1およびR2はそれぞれ2種以上の混合物でもよい。nは1〜20の整数を示す。]
【請求項5】
分散剤(B)がコハク酸イミド、ベンジルアミンおよびポリアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜4のいずれか記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤。
【請求項6】
さらに酸化防止剤(C)を含有してなる請求項1〜5のいずれか記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤。
【請求項7】
基油および請求項1〜6のいずれか記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤を含有してなる潤滑剤組成物であり、潤滑剤組成物の重量に基づいて0.01〜30重量%の重合体(A)および0.01〜30重量%の分散剤(B)を含有する潤滑剤組成物。
【請求項8】
基油、増稠剤および請求項1〜6のいずれか記載の潤滑剤用抗酸化性向上剤を含有してなるグリース組成物であり、グリース組成物の重量に基づいて0.01〜30重量%の重合体(A)および0.01〜30重量%の分散剤(B)を含有するグリース組成物。

【公開番号】特開2007−77260(P2007−77260A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266595(P2005−266595)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】