説明

潤滑剤組成物、フッ素化合物、及びその用途

【課題】磁気記録媒体の潤滑層の材料として有用な新規な潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種類の下記一般式(1)で表される化合物を含有する潤滑剤組成物である。式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表し;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表し、tは2〜10の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性基及びパーフルオロアルキレン基を有するフッ素化合物、及びそれを含有する潤滑剤組成物に関する。さらに詳しくは、大容量記録媒体である磁気ディスク、磁気テープなどの記録媒体用の潤滑剤として有用な潤滑剤組成物に関する。また、本発明は、当該潤滑剤組成物の種々の用途に関し、具体的には、当該潤滑剤組成物を用いて形成される、膜、並びに当該膜を有する積層体、磁気記録媒体、ヘッドスライダ、及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜型の磁気記録媒体は、強磁性金属又はその合金からなる磁性層を、種々の方法(例えば、スパッタ、蒸着、無電解メッキ法等)によって非磁性基板上に形成して製造される。磁気記録媒体を実際に使用する際は、磁気ヘッドと高速で接触し、摩耗損傷を受けたり、磁気特性の劣化を起こしたりする場合がある。そのため、磁性層上に保護膜や潤滑層を設けて、耐摩耗性を向上させている。保護膜層の材料には、炭素質膜が一般的に利用されている。また潤滑層の材料には、フッ素系化合物が一般的に利用されている。
この様に、記録媒体の潤滑層は、動摩擦係数を低減し、ヘッドとの接触によって生ずる摩耗損傷や磁気特性の劣化を軽減する目的においては極めて有効であるが、一方で、特に潤滑層の膜厚が厚い場合は、潤滑層のヘッドへの付着や、潤滑剤/ヘッド間の相互作用によりヘッド浮上が不安定となりリードライト時のエラーやディスクとのクラッシュを引き起こす懸念がある。一方、潤滑層の膜厚を薄くすると、前記現象は起こり難くなるものの、潤滑層の機能、即ち、ヘッドとディスクの接触に起因する摩耗損傷や磁気特性の劣化の抑制、を達成し得ない場合がある。面記録密度を高めるためには、ヘッドの低浮上化並びにディスク回転の高速化が求められるため、潤滑層の機能を維持することは重要である。
【0003】
そこで、潤滑層に用いる潤滑剤を精選することにより、上述の問題を解消しようとする試みが種々なされている。特許文献1には、環状基、芳香環に直接結合した極性基、及びフッ素鎖を有する所定の構造のフッ素化合物、並びにそれを含有する潤滑剤組成物が開示されているが、基板との吸着力、塗布面状が、必ずしも十分ではなく、さらなる改善が求められていた。
【0004】
メソゲン構造を主鎖又は側鎖に有する重合体を利用した潤滑剤組成物及びグリース組成物も種々提案されているが(例えば、特許文献2、3)、記録媒体の潤滑層に用いられる材料としての有用性については、未だ明らかになっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248463号公報
【特許文献2】特開2006−307202号公報
【特許文献3】特開2008−195799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の潤滑剤組成物は、記録媒体の潤滑層の材料として優れているが、一方で、溶剤への溶解性、塗布面状、及び基材への吸着性能の観点では、さらなる改善の余地がある。
本発明は、潤滑剤に要求される特性、特に記録媒体用の潤滑剤として要求される特性、がより改善された、潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
本発明は、特に、溶剤への溶解性、塗布面状、及び基材への吸着性能の観点で、より改善された潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記潤滑剤組成物の種々の用途を提供することを課題とし、該組成物を用いて製造される膜、並びにそれを有する積層体、磁気記録媒体、ヘッドスライダ、及び磁気記録装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、潤滑剤をはじめとする種々の用途に有用な、新規なフッ素化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、上記課題を解決すべく種々検討した結果、環状基とパーフルオロアルキレン基との間の連結基であって極性基を有する連結基の構造が、潤滑性能に影響するとの知見を得た。すなわち、該連結基を、芳香族性環状基を含まない柔軟な構造にすることにより、上記潤滑性能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 少なくとも1種類の下記一般式(1)で表される化合物を含有する潤滑剤組成物:
【化1】

一般式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表し;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、一般式(1)中の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−を構成する、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−の結合の順番は限定されず、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−から選ばれるパーフルオロアルキレン単位と酸素原子とがランダムに分布したパーフルオロアルキレンオキシ基を意味するものとし、qが2以上の時、複数の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は互いに同一でも異なっていてもよく、またsが2以上の時、複数のn及びqはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、またtが2以上の時、複数のs及びYはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、p2が1以上の時、パーフルオロアルキレンオキシ基は分岐構造を有する。
【0009】
[2] 前記化合物の1分子あたりのフッ素含率が、37質量%以上76質量%以下である[1]の潤滑剤組成物。
[3] Xが、置換されていてもよい芳香族性環状基又は非芳香族性環状基である[1]又は[2]の潤滑剤組成物。
[4] Yの有する極性基が、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルバモイル基、スルホンアミド基、リン酸基、及びフォスフェート基からなる群より選ばれる極性基である[1]〜[3]のいずれかの潤滑剤組成物。
[5] Yの有する極性基が、水酸基である[1]〜[4]のいずれかの潤滑剤組成物。
【0010】
[6] Yが、C2〜C10のアルキレン基を含み、但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣り合わない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよく、且つアルキレン基中のいずれかの炭素原子に、又は炭素原子が窒素原子で置換されている場合は窒素原子に、直接もしくはC1〜C5のアルキレン基を介して極性基が結合している連結基である[1]〜[5]のいずれかの潤滑剤組成物。
[7] Yが、下記式で表される部分構造を含む[1]〜[6]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化2】

式中、Wは極性基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表わし;*が付記された炭素原子のいずれか、又はZが窒素原子である場合はZが、Xと直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣り合わない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して結合し;**が付記された炭素原子が、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1に結合する。
【0011】
[8] 一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(2a)又は(2b)で表される基である[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化3】

一般式(2a)及び(2b)中、mは2〜4の整数を表し、qは1〜30の整数を表し、式(2a)中のqが2以上の場合に複数存在するm、及び式(2b)中に複数存在するmは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【0012】
[9] 一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(3a)又は(3b)で表される基である[1]〜[7]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化4】

一般式(3a)及び(3b)中、vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【0013】
[10] Yが、下記式(Y1)〜(Y3)のいずれかで表される基である[1]〜[9]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化5】

式中、W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;*及び**はそれぞれ、X及び−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−Cn2n+1との結合位置を示す。
【0014】
[11] 前記少なくとも1種類の一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1a)〜(1f)のいずれかで表される化合物である[1]〜[10]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化6】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;mは2〜4の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し、qは1〜30の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、m、n及びqはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
[12] 前記少なくとも1種類の一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1g)〜(1l)のいずれかで表される化合物である[1]〜[10]のいずれかの潤滑剤組成物:
【化7】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、v、w及びnはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
[13] 磁気記録媒体用ディスクの潤滑剤として用いられる[1]〜[12]のいずれかの潤滑剤組成物。
[14] [1]〜[13]のいずれかの潤滑剤組成物からなる膜。
[15] ディップコート法、スピンコート法、又は真空蒸着法により形成されてなる[14]の膜。
[16] 少なくとも表面の一部がカーボンを主原料とする基材と、その上に[14]又は[15]の膜を有する積層体。
[17] 紫外線照射処理又は熱処理を施して基材へ密着させた[16]の積層体。
[18] 少なくとも、磁性層、及び[14]又は[15]の膜を有する磁気記録媒体。
[19] 前記磁性層と前記膜との間に、保護層を有する[18]の磁気記録媒体。
[20] 磁気ヘッドを備えたヘッドスライダであって、少なくとも一部の表面に、[14]又は[15]の膜を有するヘッドスライダ。
[21] [18]又は[19]の磁気記録媒体、及び[20]のヘッドスライダのうち、少なくとも一方を有する磁気記録装置。
【0017】
[22] 下記一般式(1)で表されるフッ素化合物:
【化8】

一般式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表し;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、一般式(1)中の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−を構成する、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−の結合の順番は限定されず、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−から選ばれるパーフルオロアルキレン単位と酸素原子とがランダムに分布したパーフルオロアルキレンオキシ基を意味するものとし、qが2以上の時、複数の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は互いに同一でも異なっていてもよく、またsが2以上の時、複数のn及びqはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、またtが2以上の時、複数のs及びYはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、p2が1以上の時、パーフルオロアルキレンオキシ基は分岐構造を有する。
【0018】
[23] 1分子あたりのフッ素含率が、37質量%以上76質量%以下である[22]のフッ素化合物。
[24] Xが、置換されていてもよい、ベンゼン、シクロヘキサン、トリアジン、イソシアヌル、ピリミジン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンよりなる群から選ばれる基である[22]又は[23]のフッ素化合物。
[25] Xが、下記式(X1)〜(X4)のいずれかの環状基である[22]〜[24]のいずれかのフッ素化合物:
【化9】

式中、*はYが結合可能な位置を示し、各式中の2以上の*の位置にYが結合し、Yが結合していない*の位置、又はその他の結合可能な位置に他の置換基が結合していてもよい。
【0019】
[26] 前記一般式(1)中のYが、エーテル性酸素原子、アミン性窒素原子、及びアミド結合からなる群より選ばれる原子又は原子団を少なくとも1つ有する、炭素数1〜15の直鎖状又は分枝状の2〜5価の連結基であることを特徴とする、[22]〜[25]のいずれかのフッ素化合物。
【0020】
[27] Yが、C2〜C10のアルキレン基を含み、但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(−(C=O)−)に置き換わっていてもよく、且つアルキレン基中のいずれかの炭素原子又は炭素原子が窒素原子で置換されている場合は窒素原子に、直接もしくはC1〜C5のアルキレン基を介して極性基が結合している連結基である[22]〜[26]のいずれかのフッ素化合物。
[28] Yが、下記式で表される部分構造を含む[22]〜[27]のいずれかのフッ素化合物:
【化10】

式中、Wは極性基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表わし;*が付記された炭素原子のいずれか、又はZが窒素原子である場合はZが、Xと直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して結合し;**が付記された炭素原子が、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1に結合する。
【0021】
[29] Yが、下記式(Y1)〜(Y3)で表される基である[22]〜[28]のいずれかのフッ素化合物:
【化11】

式中、W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;*及び**はそれぞれ、X及び−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1との結合位置を示す。
【0022】
[30] 一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(2a)又は(2b)で表される基である[22]〜[29]のいずれかのフッ素化合物:
【化12】

一般式(2a)及び(2b)中、mは2〜4の整数を表し、qは1〜30の整数を表し、式(2a)中のqが2以上の場合に複数存在するm、及び式(2b)中に複数存在するmは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【0023】
[31] 一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(3a)又は(3b)で表される基である[22]〜[29]のいずれかのフッ素化合物:
【化13】

一般式(3a)及び(3b)中、vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【0024】
[32] 下記一般式(1a)〜(1f)のいずれかで表されるフッ素化合物:
【化14】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;mは2〜4の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し、qは1〜30の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、m、n及びqはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
[33] 下記一般式(1g)〜(1l)のいずれかで表されるフッ素化合物:
【化15】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、v、w及びnはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[34]
下記L−1〜L−14のいずれかであるフッ素化合物:
【化16】

【化17】

【化18】

式(L-14)中、mは1〜20の整数を表し、nは1〜20の整数を表し、但し(m+n)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、潤滑剤に要求される特性、特に記録媒体用の潤滑剤として要求される特性、がより改善された、潤滑剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、特に、溶剤への溶解性、塗布面状、及び基材への吸着性能の観点で、より改善された潤滑剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記潤滑剤組成物の種々の用途、該組成物を用いて製造される、膜、並びにそれを有する積層体、磁気記録媒体、ヘッドスライダ、及び磁気記録装置を提供することができる。
また、本発明は、潤滑剤をはじめとする種々の用途に有用な、新規なフッ素化合物を提供することができる。
本発明により、潤滑層をより薄層化することが可能になり、高基板吸着性、耐摺動特性、高安定性、表面平滑性、及びヘッド移着抑制性をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
1. 潤滑剤組成物
本発明は、少なくとも一種の下記式(1)で表される化合物を含有する潤滑剤組成物に関する。下記化合物は、式中のYに水酸基等の極性基を含む。極性基は、基板(もしくはその上に形成された炭素質膜、SiO2及びZrO2等の酸化物膜、窒化物膜、ホウ化物膜等の保護膜層)に対する吸着基として作用する。例えば、公知の潤滑剤、「FOMBLIN Z-DOL」及び「FOMBLIN Z-TETRAOL」は、パーフルオロポリエーテルの両末端に極性基(水酸基)を有する。このような化合物では、両末端の吸着基が基板に吸着し、パーフルオロポリエーテル鎖がたわむため、膜厚を均一に薄膜化することが困難である。これに対し、本発明の下記式(1)で表される化合物は上記した通り、パーフルオロアルキレン(オキシ)基の片末端と環状基の間に極性基を有する。したがって、基板上でのパーフルオロアルキレン(オキシ)基の自由度が高く、環状基および極性基を基板に接触させ、パーフルオロアルキレン(オキシ)基が基板に対して直立した配向をとる。その結果、本発明の潤滑剤組成物は、均一に薄膜化することができ、潤滑性能に優れる。耐摺動特性に優れ、非吸着層が存在しなくても、耐摺動特性を保持し得る。また、本発明では、下記式(1)の化合物を利用することで、非吸着層の除去が可能であり、更なる薄膜化も実現し得る。
【0029】
また、下記一般式(1)で表される化合物には、式中のYが芳香族性環状基を有しないという特徴もある。この特徴により、Yが芳香族性環状基を有する化合物と比較して、溶剤への溶解性、塗布面状、及び基材への吸着性能の観点で、より改善された潤滑剤組成物の提供が可能となる。この特徴を有する化合物を用いることによって、上記諸特性が改善されることの詳細な機構については明らかではないが、Yが芳香族性環状基を有しないことによって、化合物の構造がより柔軟になり、その結果、例えば化合物の結晶性が失われ又は低下することが影響しているものと推察される。
【0030】
【化19】

一般式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表す。
【0031】
式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表す。該環状基の例には、芳香族環の残基(芳香族性環状基)及び非芳香族環の残基(例えば、12−アザクラウン−4及び15,18,21,24−アザクラウン等のアザクラウン環、並びにシクロヘキサン環等の非芳香族性環状基)の双方が含まれる。また、金属に配位している配位子の残基であってもよく、中心金属に配位することによってはじめて環状構造を形成する元々は鎖状の基であってもよい。即ち、本明細書では、「環状基」は、元々は鎖状等の非環状基であっても、分子が複数集合して、環状構造型の集合体または超分子または錯体を形成するのであれば、環状基の意味に含まれるものとする。前記環状基を構成する原子については特に制限はないが、少なくとも炭素原子を環構成原子として含むのが好ましい。前記環状基は、炭素原子のみを環構成原子とする環状基から選択されてもよいし、並びに炭素原子とともに、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子等のヘテロ原子を環構成原子とする環状基から選択されてもよい。基板吸着性の観点では、ヘテロ原子を環構成原子とする環状基から選択されるのが好ましく、特に、トリアジン環の残基等、窒素原子を含む環状基から選択されるのが好ましい。また、Xは、複数のヘテロ環の残基を、環状に連結してなる多環式環状基(例えば、フタロシアニン、ポリフィリン、及びコロール等)であってもよい。なお、これらの環状基については、中心金属に配位した状態であってもよい。以下に、Xの例として好ましい、ヘテロ環状基の例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下では、環状基の置換基や中心金属は取り去り、環状基の骨格のみを示すものとする。また、Yの置換位置はいずれであってもよく、下記の環状基中、置換可能な水素原子のいずれもYに置き換わっていてもよい。
【0032】
【化20】

【0033】
また、炭素原子のみを環構成原子とする芳香族性環状基の例には、ベンゼン環の残基が含まれる。また、Xとしては、多環式化合物(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ペニレン、コロネン等)の残基、又は複数のベンゼン環が環状に連結してなる環状基も好ましい。以下に、炭素原子のみを環構成原子とする芳香族性環状基の例を示すが、以下の例に限定されるものではない。なお、以下では、置換基は取り去り、環状基の骨格のみを示すものとする。また、Yの置換位置はいずれであってもよく、下記の環状基中、置換可能な水素原子のいずれもYに置き換わっていてもよい。
【0034】
【化21】

【0035】
また、非芳香性脂環状基の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。なお、以下では、置換基は取り去り、環状基の骨格のみを示すものとする。また、Yの置換位置はいずれであってもよく、下記の環状基中、置換可能な水素原子のいずれもYに置き換わっていてもよい。
【0036】
【化22】

【0037】
Xは、置換されていてもよい単環式化合物の残基であることが好ましく、ベンゼン、シクロヘキサン、トリアジン、イソシアヌル、ピリミジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンよりなる群から選ばれる基であるのが、より好ましく、例えば、以下の式(X1)〜(X4)のいずれかの環状基であるのが特に好ましい。
【0038】
【化23】

【0039】
式中、*はYが結合可能な位置を示し、各式中の2以上の*の位置にYが結合し、Yが結合していない*の位置、又はその他の結合可能な位置に他の置換基が結合していてもよい。
【0040】
Xで表される環状基は、1以上の置換基を有していてもよい。当該置換基の例には、水酸基等の極性基を含む種々の置換基が含まれる。環状基の環構成原子に、直接水酸基等の極性基が結合していてもよいし、また連結基を介して水酸基等の極性基が結合していてもよい。連結基の例には、炭素原子数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数1〜20の芳香族性環状基等が含まれる(但し、連結鎖中の1つの炭素原子、又は隣接していない2以上の炭素原子が、酸素、窒素、硫黄等の原子に置換されていてもよく、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい)。
Xで表される環状基に置換可能な置換基の例には、水素原子の他、以下の置換基群Tが含まれる。
置換基群T:
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った1価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた1価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0041】
なお、式(1)中、Xの置換基の例としては、水酸基等の極性基を含む置換基(水酸基等の極性基そのものも含む意味である)、フッ素原子等のハロゲン原子を含む置換基(ハロゲン原子そのものを含む意味である)、及びC1〜C5のアルコキシ基が好ましい。Xは、水酸基等の極性基を含む置換基を有するか、無置換であるのが好ましい。
また、式(1)の化合物は、2以上のXが、直接又は炭素原子等(例えば−CH2−)を介して結合した、ビス体等の多量体であってもよい。多量体の場合、それぞれの単量体の構造は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
式(1)中、Yは、少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表す。該極性基は末端に位置する1価基であっても、末端以外に位置する2価基であってもよい。基板表面に対する吸着性の観点では、極性基は末端に位置する1価基であるのが好ましい。極性基の例には、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)、メルカプト基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、アルコキシカルボニル基(−COOR;但しRはアルキル基)、カルバモイル(−CONH2)、ウレイド基(−NHCONH2)、スルホンアミド基(−SO2NH2)、リン酸基(−OP(=O)(OH)2)、スルホ酸基(−SO3H)、スルフィノ基(−S(=O)OH)スルフィド基(−S−)、ジスルフィド基(−S−S−)、スルフィニル基(−S(=O)−)、アミノカルボニル基(−NHCO−)、ウレイレン基(−NHCONH−)、イミノ基(C=NH又はC=NR(R:は置換基))、イミド基(−C(=O)NHC(=O−)、スルホンイミド基(−S(=O)2NHS(=O)2−)及びアミノスルホニル基(−NHSO2−)が含まれる。
これらの中でも、上記観点から1価の極性基が好ましく、中でも水酸基が好ましい。
【0043】
Yが表す2価以上の連結基としては、置換もしくは無置換の、イミノ基(C=NH又はC=NR(R:は置換基))、スルフィド基(S)、炭素原子数1〜20のアルキレン基(但し1つの炭素原子、又は隣接しない2以上の炭素原子が酸素、窒素、硫黄等の原子に置換されていてもよく、水素原子がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)に置換されていてもよい)、炭素原子数2〜20のアルケニレン基、炭素原子数2〜20のアルキニレン基、カルボニル基(C=O)、スルフィニル基(S=O)、スルホニル基(S(=O)2)、ホスホリル基(P=O)、酸素原子(O)、及びそれらから選択される一つ以上の組合せからなる2価以上の連結基が好ましい。
【0044】
Yの好ましい例は、エーテル性酸素原子、アミン性窒素原子、及びアミド結合からなる群より選ばれる原子又は原子団を少なくとも1つ有する、炭素数1〜15(より好ましくは1〜10)の直鎖状又は分枝状の2〜5価の連結基である。
【0045】
また、Yの例には、C2〜C10のアルキレン基を含み、但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよく、且つアルキレン基中のいずれかの炭素原子(又は炭素原子が窒素原子で置換されている場合は窒素原子)に直接もしくはC1〜C5のアルキレン基を介して極性基が結合している連結基である。例えば、アルキレン基の末端の炭素原子に、下記パーフルオロアルキレンオキシ基が結合する。
【0046】
またYの例には、下記式で表される部分構造を含む連結基が含まれる。
【0047】
【化24】

【0048】
式中、Wは極性基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表わし;*が付記された炭素原子のいずれか、又はZが窒素原子である場合はZが、Xと直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して結合し;**が付記された炭素原子が、直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1に結合する。
【0049】
また、Yの例には、下記式(Y1)〜(Y3)のいずれかで表される連結基が含まれる。
【0050】
【化25】

【0051】
式中、W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;*及び**はそれぞれ、X及び−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3、[C(CF32p4O}q−Cn2n+1との結合位置を示す。
【0052】
1及びW2がそれぞれ表す、1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基の例には、以下の基が含まれる。
【0053】
【化26】

【0054】
式中、Wは極性基を表し、*は上記式(Y1)、(Y2)及び(Y3)との結合部位を示す。
【0055】
前記式(1)中の環状基Xは、下記式で表されるパーフルオロアルキレンオキシ基をt個有する。tは2〜10の整数を表し、環状基の構造に応じて、tの好ましい範囲が変動する。通常は、2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0056】
【化27】

【0057】
式中、Yは上記連結基であり;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表す。但し、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−の結合の順番は限定されず、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−から選ばれるパーフルオロアルキレン単位と酸素原子とがランダムに分布したパーフロオロアルキレンオキシ基を意味するものとする。また、qが2以上の時、複数の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は互いに同一でも異なっていてもよく、またsが2以上の時、複数のn及びqはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、またtが2以上の時、複数のs及びYはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。また、p2が1以上、即ち(CF)を含む場合は、パーフロアルキレンオロオキシ基は分岐構造を有する。
【0058】
p1は1〜3であるのが好ましく、p2は0又は1であるのが好ましく、p3は0〜2であるのが好ましく、p3は0〜2であるのが好ましい。またqは2〜20であるのが好ましく、3〜10であるのがより好ましい。sは好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3である。
【0059】
前記パーフルオロアルキレンオキシ基の例には、下記式(2a)又は(2b)で表される基が含まれる。
【0060】
【化28】

【0061】
一般式(2a)及び(2b)中、mは2〜4の整数を表し、qは1〜30の整数を表し、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。qは3〜10であるのが好ましい。式(2a)中のqが2以上の場合の複数のm、及び式(2b)中の複数のmは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
また、前記パーフルオロアルキレンオキシ基の例には、下記式(3a)又は(3b)で表される基が含まれる。
【0063】
【化29】

【0064】
一般式(3a)及び(3b)中、wは1〜30の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり;*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。式中、(CF2O)と(CF2CF2O)の結合の順番は特に限定されない。vは1〜15であるのが好ましく、1〜10であるのがより好ましく;wは1〜15であるのが好ましく、1〜10であるのがより好ましい。また、(v+w)は2〜30であるのが好ましく、2〜20であるのがより好ましい。
【0065】
前記パーフルオロアルキレンオキシ基は、末端にパーフルオロアルキル基、−Cn2n+1を有する。パーフルオロアルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。nは1〜10の整数であり、nは2〜8であるのが好ましい。
【0066】
前記式(1)で表される化合物の1分子あたりのフッ素含率が高いほど、フッ素溶媒への溶解度が高いという観点で好ましい。1分子あたりのフッ素含率は、37〜76質量%であるのが好ましく、50〜76質量%であるのがより好ましい。
【0067】
前記一般式(1)で表される化合物の例には、以下の式(1a)〜(1f)で表される化合物が含まれる。
【0068】
【化30】

【0069】
式中の各符号の定義については、上記と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0070】
また、前記一般式(1)で表される化合物の例には、以下の式(1g)〜(1l)で表される化合物が含まれる。
【0071】
【化31】

【0072】
式中の各符号の定義については、上記と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0073】
以下に式(1)で表される化合物の具体例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。なお例示化合物に付記されたカッコ内の数値は、フッ素原子含有率を意味する。ただし、以下の式中、mは1〜20の整数を表し、nは1〜20の整数を表し、但し(m+n)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されない。
【0074】
【化32】

【0075】
【化33】

【0076】
【化34】

【0077】
【化35】

【0078】
【化36】

【0079】
【化37】

【0080】
【化38】

【0081】
前記式(1)で表される化合物の合成方法は、特に限定されず、種々の公知の方法を組合せて合成することができる。例えば、前記式(1)で表される化合物の基本的な構成要素は、中心の環状基、末端のパーフルオロアルキレンオキシ基、それらをつなぐ連結基、及び中心環状基又は連結基に存在する極性基である。極性基は、環状基を中心として、放射状に複数配されているのが、多点吸着の意味では好ましく、極性基は、環状基を末端のパーフルオロアルキレンオキシ基へとつなぐ、連結部Yに、所定の反応により、導入するのが好ましい。
末端のパーフルオロアルキレンオキシ基鎖(以下、単に「フッ素鎖」という場合がある)は、化合物の極性を大きく変化させるので、好ましくは化合物合成の最終段階に近いところで、導入するのが好ましい。
【0082】
例えば、W1が水酸基、あるいはW1中の極性基が水酸基である、前記式(1a)、(1b)、(1d)および(1e)で表される化合物は、エポシキ基を有する環状化合物と、フッ素鎖を有するアルコールあるいはアミン等を反応させることによって、連結部Yを形成させ合成することができる。また、水酸基あるいはアミノ基等を有する環状化合物(例えば、アザクラウン)と、フッ素鎖を有するエポキシ化合物を反応させることによって合成することができる。
また、前記一般式(1c)および(1f)で表される化合物のうち、環状基がトリアジンであり、k=0のものは、例えば、ハロゲン化シアヌルに、極性基とフッ素鎖を有する脂肪族アミンを反応させることによって、合成できる。この反応では、アミンとハロゲン化シアヌルの反応と、極性基とハロゲン化シアヌルの反応が競争的になる場合があるので、極性基の種類によっては、あらかじめ該極性基を保護したり、又は後から極性基を導入するのが好ましい。また、フッ素鎖は、あらかじめアミンに導入しておいても、後から導入してもよい。
【0083】
本発明に係わる式(1)の化合物を製造可能な製造方法の例には、以下のスキーム1〜3で表される製造方法が含まれる
【0084】
【化39】

【0085】
各スキームの式中、Lは式(1)中のYの一部になる連結基であり、酸素原子、アルキレン基又はそれらの組み合わせ等を表わし、kは0又は1であり、Halはハロゲン原子(例えばF、Cl、Br及びI)、Wは極性基を含む置換基であり、Rfは式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基を表し、tは式(1)中のtと同義である。
スキーム1は、環状基Xが、フェニル基等の芳香族アリール基又はシアヌル酸のトリオン体残基である式(1)の化合物の合成に適する。
スキーム2中の試薬2Aは、式(1)中のXになり得る環状化合物であって、1以上のNHを含むテトラアザシクロドデカン等の環状化合物を意味する。即ち、スキーム2は、環状基Xが、窒素原子を環構成原子として含む非芳香族系へテロ環残基である式(1)の化合物の合成に適する。
スキーム3は、環状基Xが、トリアジンの残基である式(1)の化合物の合成に適する。
【0086】
本発明の潤滑剤組成物は、式(1)で表される化合物とともに、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて他の化合物を含有していてもよい。例えば、本発明の潤滑剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、下記の化合物(a)〜(d)を含有してもよい。下記化合物(a)〜(d)から選択される2種類以上を含有していてもよい。下記化合物(a)〜(d)の添加により、本発明の潤滑剤組成物の粘度が低減され、その結果、摩擦(例えば、磁気記録媒体の場合はヘッド/メディア間の摩擦低減)のさらなる低減が図られる。
【0087】
A−CF2O(CF2CF2O)r(CF2O)sCF2−B (a)
[A及びBはそれぞれ、OHCH2−又は下式から選ばれる少なくとも1種の基を表し;rは1〜30のいずれかの数であり、sは1〜30のいずれかの数であり;
【化40】

但し、xは1〜5のいずれかの数である。]
【0088】
X−CF2O(CF2CF2O)m(CF2O)nCF2−Y (b)
[X及びYはそれぞれ、F、HO(CH2CH2O)tCH2−、HOCH2CH(OH)CH2OCH2−、HOOC−及びピペロニル基から選ばれる基を表し;mは1〜60のいずれかの数であり;nは1〜60のいずれかの数であり;tは1〜30のいずれかの数である。]
F[CF(CF3)CF2O]uCF(CF3)−X’ (c)
[X’は、F又は−COOHを表し;uは1〜60のいずれかの数である。]
F[CF2CF2CF2O]vCF2CF2CH2−Z (d)
[Zは、F、HO−及びCOOH−から選ばれる基を表し;vは1〜60のいずれかの数である。]
【0089】
前記式(a)の化合物の例としては、“Fomblin Z−dol”(Solvay Solexis社)、及び“MORESCO PHOSFAROL A20H”(松村石油研究所)等がある。前記式(b)の化合物の例としては、“Fomblin Z−03”、“Z−dol TX”、“Z−tetraol”、“Z−DIAC”、“AM2001”、“AM3001”(いずれもSolvay Solexis社)等がある。式(c)の化合物の例としては、“KRYTOX 143”、及び“157FS”(デュポン社)等がある。式(d)の化合物の例としては、“DemnumSA”、及び“DemnumSH”(いずれもダイキン工業社)等がある。
【0090】
本発明の潤滑剤組成物は、溶媒を含む塗布液として調製されてもよい。磁気記録媒体等の潤滑層用材料として利用する態様では、塗布液として調製し、該塗布液を、基板等の表面に塗布して薄層(約5〜20Å程度)を形成するのが好ましい。塗布液の調製に用いられる溶媒については特に制限はない。例えば、“Vertrel XF−UP“(三井・デュポンフロロケミカル社製)、“HFE−7100DL”(住友スリーエム社製)、“HFE−7200”(住友スリーエム社製)、“AK−225”(旭硝子製)、アセトン、2−ブタノンなどの市販品を使用することができる。塗布液中の式(1)の化合物の濃度は、形成する層の厚み、塗布量、等に応じて決定することができるが、一般的には0.001〜0.5質量%程度である。
【0091】
2.膜及び積層体
本発明は、本発明の潤滑剤組成物からなる膜にも関する。本発明の膜は、例えば、本発明の潤滑剤組成物を塗布液として調製し、基板の表面に、塗布することで形成することができる。塗布方法については特に制限はなく、従来公知の方法にて膜を形成することができる。具体的には、ディプコート法、スピンコート法、ディップスピン法、LB法等の種々の塗布法を利用することができる。また、真空蒸着法により形成することもできる。本発明の膜を、磁気記録ディスク等の磁気記録媒体の潤滑膜として、又は、磁気記録ヘッドの潤滑膜として利用する態様では、塗布面状が良好な膜を薄膜(例えば厚み約5〜20Å程度)として形成することが要求される。かかる用途には、ディップコート法、スピンコート法及び真空蒸着法を利用するのが好ましく、特にディップコート法が好ましい。
なお、塗布液の調製に用いられる溶媒については特に制限はないが、ディップコート法の場合は、上記例示した溶媒の中でも、“Vertrel XF−UP”(三井・デュポンフロロケミカル社製)、“HFE−7100DL”(住友スリーエム社製)、“HFE−7200”(住友スリーエム社製)などのフッ素系溶剤を用いて調製することが好ましい。
【0092】
本発明の膜を形成する基板について特に制限はなく、用途に応じて選択することができる。基板の一例としては、少なくとも表面の一部が、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボン主原料とする基板が挙げられる。本発明の潤滑剤組成物を、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボンを主原料とする基板の表面に塗布すると、前記式(1)の化合物は、その中心核である環状基Xを基板面に水平にして、及びその側鎖であるパーフルオロポリエーテル(PFPE)鎖を垂直になるように配向すると推測される。その結果、特に高い潤滑性能を発現することが期待される。例えば、フッ素系溶媒を用いて本発明の潤滑剤組成物(式(1)の化合物として、末端に−(OCF2CF2kOCn2n+1(但し、k+nは8以下で、且つkは6以下)を有する化合物を含有する)を塗布液として調製し、ダイヤモンドライクカーボンからなる基板表面にディップコート法により膜を形成すると、当該膜のFT−IR RASスペクトルは、1260cm-1近傍(具体的には、±5cm-1の範囲)にCF3基に帰属されるピークの強い強度が生じる。一方、同一の化合物をLB単層膜として形成し、同様にFT−IR RASスペクトルを測定すると、1260cm-1近傍(具体的には、±5cm-1の範囲)にCF3基に帰属される強い強度のピークが生じる。即ち、これらの結果から、カーボンからなる表面上に形成された膜中の式(1)の化合物の分子の状態は、LB単層膜中の状態と同等であると言うことができる。LB単層膜では、分子中の親水性あるいは極性部分は水面に向けられ、パーフルオロポリエーテル鎖の疎水性部分は空気界面側に集めて密集して膜が形成されていると考えられる。従って、カーボンからなる表面上に形成された膜中の式(1)の化合物の分子も、基板面に対してPFPE鎖が垂直に配向し、密集して膜を形成していると推測される。LB単層膜中の分子状態との同一性は、1260cm-1近傍におけるCF3基に帰属されるピークの強度が、LB単層膜の同ピークの強度の50%以上であることで確認できる。ピーク強度が等しい場合もあり得、即ち100%も可能である。
【0093】
従来のPFPE鎖を有する磁気記録媒体用の潤滑剤用化合物は、いずれも、長鎖のPFPE鎖が基板面に対して水平配向性であり、その性質が、従来の潤滑剤の性能に限界があった一因であると、本発明者は考えている。上記した通り、本発明の潤滑剤組成物は、PFPE鎖が垂直配向性となり、PFPE鎖の末端に位置する、例えばCF3基が、磁気ヘッドと接する潤滑層最上面に存在することになる。一方、基板面に対してPFPE鎖が水平配向性の従来の化合物では、潤滑層最上面に存在するのは、CF2CF2O基等のフッ化アルキレンオキシ基であり、この状態に対して、潤滑層最上面が、CF3基になっている状態のほうが、確率的に低表面エネルギー性が期待できる。
【0094】
また、上記した通り、従来、磁気ヘッドの構成成分である酸化アルミニウム(α−Al23)の存在下では、−OCF2O−が分解されてしまうという問題があった。PFPE鎖が垂直配向性ならば、−OCF2O−を磁気ヘッドから遠ざけて配することが可能である。さらに、Ausimont社製潤滑剤「FOMBLIN Z−TETRAOL」のように鎖状PFPE鎖の両末端に極性吸着性基がある場合、その極性吸着基が隣接するPFPE鎖末端の吸着基同士と相互作用すればよいが、同一分子の両末端の吸着基同士が相互作用する場合は、それらが基板面に吸着するとその膜厚は最大で鎖状PFPE鎖の半分、平均分子量を2000とすると−(CF2CF2O)10基程度の厚みとなり、草原に大木が林立したような潤滑層を生じる懸念を拭い去ることはできないし、−OCF2O−の分解やヘッドへの移着を助長することは容易に想像される。従って鎖状PFPE鎖の水平配向を前提とする、従来の潤滑技術は、一層の薄膜化の要請に対しては限界のある技術といえる。
【0095】
さらに、吸着効率の点からも鎖状PFPE鎖は最大二か所だが、PFPE鎖を三本以上分子の中心から放射状に配し、且つ中心核もしくはPFPE鎖の中心核との接合部分に吸着性基を配する構造の分子であれば、三点以上の吸着性基を持たせることは容易であり、鎖状PFPE鎖より好ましい吸着効果を期待できる。この場合、PFPE鎖を側鎖複数本に分割することで、その長さを短くできる。これは直接的に潤滑層の薄膜化に繋がることが期待される。特に、中心核を平面的な環状構造とすることにより、基板面自体が異方性場であり、平面的な環状構造すなわち円盤状構造も異方性、平面性であるため、極性基である吸着性基を円盤面近傍に有する場合、基板面に沿って水平配向するほうがエンタルピー的に安定である。一方、円盤面から放射状に伸びるPFPE鎖も撥水、撥油性であり、極性面から遠ざかる方向、即ち、基板面に垂直に伸長する傾向があることは、特に疎水性側鎖を有する円盤状分子のLB単層膜で確認されている(Kawata, K., The Chemical Record, Vol.2, pp59-80 (2002)参照)。
【0096】
以上説明した通り、前記式(1)の化合物の分子は、ダイヤモンドライクトカーボン等のカーボン材料の表面で、PFPE鎖を垂直に配向させて、密集して膜を形成することが可能である。その結果、従来の水平配向側のPFPE鎖を有する潤滑剤用化合物と比較して、潤滑性、吸着性、及び耐久性のいずれの観点でも改善されることが期待される。
【0097】
少なくとも表面の一部がカーボンを主原料とする基板上に潤滑膜を有する積層体の用途としては、後述の磁気記録媒体、及びヘッドスライダ等がある。
【0098】
以下に、一例として、磁気記録媒体の保護層上に、本発明の潤滑剤組成物からなる潤滑膜を形成する方法について説明する。
磁気記録媒体の保護層上に、潤滑膜を形成する方法の一例は、前処理工程、塗布工程、及び後処理工程の3工程を含む。
前処理工程は保護層表面の洗浄、活性化を目的としており、方法としては、特に制限はなく、例えばUV照射、プラズマ処理などが挙げられる。保護層表面が十分に清浄、活性であれば、この前処理工程は省略することも可能である。
【0099】
塗布工程は、潤滑剤組成物を前記前処理された磁気記録媒体の保護層表面に被覆して、潤滑層を形成する工程である。塗布方法としては、上記膜の形成方法の例と同様である。磁気記録媒体の潤滑膜には、塗布面状が良好な膜を薄膜(例えば厚み約5〜20Å程度)として形成することが要求される。この要求に応えるためには、ディップコート法、スピンコート法及び真空蒸着法を利用して膜を形成するのが好ましい。特に、ディップコート法によれば、潤滑剤組成物の塗布液中に基板を浸漬している間に、保護層表面に前記式(1)の化合物が吸着、且つ配向するため、特にディップコート法が望ましい。
塗布液の調製に用いられる溶媒についても、上記と同様である。塗布液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて他の化合物(例えば、他のフッ素系潤滑剤など)を添加してもよい。
【0100】
後処理工程は、潤滑剤組成物の保護層表面への吸着を促進することを目的としている。方法としては、特に制限はないが、アニール、UV照射などが好ましい。アニール条件としては、50℃〜150℃が好ましく、UV照射の場合は波長185nm、254nmの光を含むUVランプを使用するのが好ましい。
【0101】
本発明に係わる潤滑剤組成物は、上記効果とともに、本発明者らが予想しなかったことに、UV光照射を行うことにより基板吸着性がさらに高まるという性質を有し、その点でも優れている。本発明の潤滑剤組成物を利用して形成された潤滑膜は、元々基材への吸着性に優れ、そのまま利用することができるが、さらにUV照射してより優れた吸着性の潤滑膜として利用するのが好ましい。
【0102】
3.磁気記録媒体
本発明の潤滑剤組成物は、磁気記録媒体用の潤滑剤組成物として有用である。
以下、本発明の潤滑剤組成物を利用した、本発明の磁気記録媒体について説明する。
本発明の潤滑剤組成物は、磁気記録ディスク及び磁気テープ等の、磁性記録媒体の潤滑層の材料として適している。なお、本明細書において、「磁気記録媒体」とは、情報の記録、読み取りに磁気のみを使用するハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等の他、磁気と光を併用するMO等の光磁気記録媒体、及び磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体のいずれも含むものである。
本発明の磁気記録媒体の一実施形態は、磁気記録ディスクである。図1に本発明の磁気記録ディスクの一例の断面模式図を示す。なお、各層の厚みの相対的関係は、実際の磁気記録ディスクの関係と一致していない場合もある。図1に示す磁気記録ディスクは、ガラス基板1と、その上に軟磁性層2が被膜されている。さらに、その上に、非磁性中間層3、及び金属合金からなる磁気記録層4、及びダイヤモンドライクカーボン等のカーボンを堆積することで形成される保護膜層5を有する。保護膜層5の上には、本発明の潤滑剤組成物からなる潤滑層が形成されている。保護膜層5及び潤滑層6は、例えば、磁気ヘッドとディスクとが接触した際の、ディスク及びヘッドの磨耗損傷を軽減している。さらに、潤滑層6は、本発明の潤滑剤組成物からなるので、保護層への吸着性及び表面平滑性が良好であり、さらに潤滑性にも優れる。よって、ヘッド汚れが軽減されるとともに、ヘッドとの接触時の磨耗損傷も軽減され、信頼性が高い磁気記録ディスクになり得る。
【0103】
また、本発明の潤滑剤組成物は、DTM(Discrete track media)及び、BPM(Bit patterned media)の潤滑膜の形成にも有用である。本発明の潤滑剤組成物は、高粘度及び低蒸気圧性の特徴があるので、特に表面凹凸形状を埋め戻さないプロセスにおいて、凹部に余剰にたまった非吸着潤滑剤のヘッドへの移着、データ部表面への移動を低減することができる。
さらに、本発明の潤滑剤組成物はエネルギーをアシストする熱アシスト記録、マイクロ波アシスト記録の潤滑膜としても有用である。特に、本発明の潤滑剤組成物は熱耐久性に優れているため、熱アシスト磁気記録用の潤滑膜として有用である。
【0104】
4.ヘッドスライダ
本発明は、磁気ヘッドを備えたヘッドスライダであって、少なくとも一部の表面に、本発明の潤滑剤組成物からなる潤滑膜を有するヘッドスライダにも関する。磁気ヘッドの表面に潤滑膜を形成すると、ヘッドとディスクが接触した際の摩擦力を低減することができる。また、本発明の潤滑剤組成物が含有する式(1)の化合物は、基材の表面に対して、高密度に被覆できる性質を有するので、ヘッドへの汚れ付着の低減が期待される。
なお、ヘッドスライダの表面に、本発明の潤滑剤組成物からなる潤滑膜を形成する方法については、上述の、磁気記録媒体の保護層上に形成する潤滑膜を形成する方法を利用することができ、好ましい態様についても同様である。また、膜厚についても、磁気記録媒体上に形成する潤滑膜の膜厚と同程度である。
【0105】
ヘッドスライダの表面と本発明の潤滑剤組成物からなる潤滑膜との間には、保護層が形成されていてもよい。保護層は上記磁気記録媒体の保護層と同様、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボンを堆積することで形成される保護層であるのが好ましい。本発明の潤滑剤組成物が含有する式(1)の化合物の分子は、かかる材料からなる表面に対する吸着性が高く、さらに、上記した通り、PFPE鎖が垂直に配向し、密集して膜を形成することができるので、好ましい。
【0106】
本発明は、また、本発明の潤滑剤組成物からなる膜を有する磁気記録媒体、及び本発明の潤滑剤組成物からなる膜を有するヘッドスライダの少なくとも一方を有する磁気記録媒体にも関する。本発明の磁気記録装置は、潤滑剤組成物からなる膜を潤滑膜として有しているので、ヘッドへの汚れ付着の抑制効果に優れている。従って、本発明は、ヘッド汚れが顕著になる、ヘッド浮上量の小さい高記録密度の磁気記録装置の態様において、特に有効である。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に制限されるものではない。
ここでは、核磁気共鳴法をNMR、高速液体クロマトグラフィーをHPLC、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法をMALDI、飛行時間型質量分析法をTOFと記す。1H−NMRではテトラメチルシラン(TMS)を内部標準として用いて測定を行った。19F−NMRではフルオロトリクロロメタンを外部標準として用いて測定を行った。
【0108】
1.化合物の合成例
[実施例1:化合物(3)の合成]
【0109】
【化41】

【0110】
化合物(1)223mg(0.75mmol)及び化合物(2)1.97g(2.48mmol)をガラス製反応容器に取り、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)13.7mg(0.09mmol)を加えた。100℃で2時間反応後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(3)を706mg(0.263mmol、収率35.1%)得た。
【0111】
化合物(3)の同定データ:
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.50(3H、m)、3.67(3H、t、J=8.7Hz)、3.83(6H、d、J=4.2Hz)、3.94(6H、m)、4.78(3H、m)、5.03(3H、s)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−88.8(66F、m)、−86.9(9F、s)、−77.9(6F、m)。
【0112】
[実施例2:化合物(5)の合成]
【0113】
【化42】

【0114】
化合物(4)400mg(1.36mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mL、及び化合物(2)3.57g(4.49mmol)をガラス製反応容器に取り、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)24.8mg(0.163mmol)を加え、100℃で10時間反応させた。放冷後、酢酸エチル−15wt%食塩水−FC−72(商品名、住友スリーエム社製)で分液し、FC−72層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(5)を274mg(0.102mmol、収率7.5%)得た。
【0115】
化合物(5)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=2.38(3H、d、J=3.6Hz)、3.78(6H、m)、3.90(6H、t、J=7.5Hz)、3.98(6H、d、J=4.2Hz)、4.15(3H、m)、6.11(3H、s)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−88.9(66F、m)、−87.0(9F、s)、−78.0(6F、m)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2704.2[M++Na]。
【0116】
[実施例3:化合物(8)の合成]
【0117】
【化43】

【0118】
化合物(6)59mg(0.343mmol)、化合物(7)1.29g(1.51mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mLをガラス製反応容器に取り、100℃で8時間反応させた。放冷後、酢酸エチル−15wt%食塩水−FC−72で分液し、FC−72層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(8)を794mg(0.222mmol、収率64.6%)得た。
【0119】
化合物(8)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=2.00−2.99(24H、m)、3.59(8H、m)、3.88(12H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−90.1〜−87.1(100F)、−79.0〜−78.4(8F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=3580.3[M+]。
【0120】
[実施例4:化合物(10)の合成]
【0121】
【化44】

【0122】
化合物(7)1.29g(1.51mmol)のかわりに化合物(9)761mg(1.51mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、化合物(10)を519mg(0.237mmol、収率69.3%)得た。
【0123】
化合物(10)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=1.98−2.98(24H、m)、3.58(8H、m)、3.89(12H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−89.9〜−86.9(52F)、−78.8〜−78.5(8F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2189.2[M+]。
【0124】
[実施例5:化合物(12)の合成]
【0125】
【化45】

【0126】
化合物(7)1.29g(1.51mmol)のかわりに化合物(11)912mg(1.51mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、化合物(12)を610mg(0.237mmol、収率68.7%)得た。
【0127】
化合物(12)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=1.98−2.99(24H、m)、3.60(8H、m)、3.89(12H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−189.4〜−188.8(4F)、−89.8〜−87.0(32F)、−78.8〜−78.5(8F)、−77.2〜−76.7(8F)、−73.8〜−73.4(24F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2589.2[M+]。
【0128】
[実施例6:化合物(14)の合成]
【0129】
【化46】

【0130】
化合物(7)1.29g(1.51mmol)のかわりに化合物(13)1.51g(1.51mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、化合物(14)を865mg(0.207mmol、収率60.3%)得た。
【0131】
化合物(14)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=1.98−2.98(24H、m)、3.58(8H、m)、3.89(12H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−186.1〜−183.2(4F)、−121.9〜−124.7(8F)、−90.2〜−86.9(120F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=4181.7[M+]。
【0132】
[実施例7:化合物(20)の合成]
(7−1)化合物(17)の合成:
【0133】
【化47】

【0134】
化合物(15)1.50g(6.09mmol)をガラス製反応容器にとり、テトラヒドロフラン(THF)6mLおよびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)6mLに溶解させた。炭酸カリウム1.70g(12.2mmol)及び化合物(16)8.72g(9.39mmol)を加え、80℃で1時間反応させた。放冷後、酢酸エチル−水で分液した。有機層を10wt%食塩水、25wt%食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(17)を1.18g(1.17mmol、収率19.3%)得た。
【0135】
化合物(17)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=1.79(1H、t、J=5.4Hz)、3.61(2H、t、J=5.1Hz)、3.77(2H、m)、4.16(2H、t、10.2Hz)、7.73(3H、m)、8.13(1H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−88.7(22F、m)、−86.9(3F、s)、−73.3(2F、m)。
MALDI/TOF−MS:m/z=1046.9[M++Na]。
【0136】
(7−2)化合物(18)の合成:
【0137】
【化48】

【0138】
化合物(17)1.52g(1.51mmol)をガラス製反応容器にとり、アセトニトリル10mLに溶解させた。炭酸カリウム626mg(4.53mmol)およびm−トルエンチオール375mg(3.02mmol)を加え、室温で2時間反応させた。酢酸エチル−水−FC−72で分液し、FC−72層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(18)を1.12g(1.34mmol、収率88.6%)得た。
【0139】
化合物(18)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=1.49(1H、s)、2.12(1H、s)、2.90(2H、t、J=5.0Hz)、3.23(2H、t、10.5Hz)、3.64(2H、m)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−88.8(22F、m)、−86.9(3F、s)、−75.7(2F、m)。
【0140】
(7−3)化合物(20)の合成:
【0141】
【化49】

【0142】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)をガラス製反応容器にとり、テトラヒドロフラン(THF)3mLに溶解させた。氷冷下、化合物(19)41.2mg(0.223mmol)を加え、1時間攪拌した。加熱還流下で4時間反応後、THFを減圧下留去した。1,4−ジオキサン3mLを加え、加熱還流下4時間反応後、1,4−ジオキサンを減圧下留去した。ハロカーボン1.8オイル(商品名、ハロカーボン社製)2mLを加え、120℃で5時間反応させた。放冷後、FC−72−水で分液し、FC−72層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(20)を170mg(0.0656mmol、収率29.4%)得た。
【0143】
化合物(20)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.72−3.90(12H)、4.30(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−73.2〜−74.9(6F)、−87.2〜−91.1(75F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2592.3[M+]。
【0144】
[実施例8:化合物(22)の合成]
【0145】
【化50】

【0146】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(21)1.26g(1.34mmol)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(22)を194mg(0.0671mmol、収率30.1%)得た。
【0147】
化合物(22)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.71−3.90(12H)、4.31(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−189.1〜−188.7(3F)、−73.8〜−73.4(18F)、−73.1〜−74.8(6F)、−87.2〜−91.4(66F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2893.4[M+]。
【0148】
[実施例9:化合物(24)の合成]
【0149】
【化51】

【0150】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(23)1.33g(1.34mmol)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(24)を172mg(0.0564mmol、収率25.3%)得た。
【0151】
化合物(24)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.72−3.92(12H)、4.28(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−186.3〜−182.9(3F)、−125.0〜−121.7(6F)、−90.5〜−87.3(90F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=3042.9[M+]。
【0152】
[実施例10:化合物(26)の合成]
【0153】
【化52】

【0154】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(25)1.16g(1.34mmol)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(26)を123mg(0.0459mmol、収率20.6%)得た。
【0155】
化合物(26)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.62−3.93(15H)、4.30(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−72.9〜−74.9(6F)、−87.2〜−91.0(75F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2683.2[M+]。
【0156】
[実施例11:化合物(28)の合成]
【0157】
【化53】

【0158】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(27)1.16g(1.34mmol)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(28)を113mg(0.0421mmol、収率18.9%)得た。
【0159】
化合物(28)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.61−3.88(15H)、4.28(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−72.9〜−74.8(6F)、−87.0〜−91.1(75F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2683.0[M+]。
【0160】
[実施例12:化合物(31)の合成]
【0161】
【化54】

【0162】
化合物(30)29.2g(36.7mmol)およびAK−225(旭硝子社製)20mLをガラス製反応容器にとり、窒素雰囲気下、ボロントリフルオリド − エチルエーテル コンプレックス31.3mg(0.221mmol)を加えた。化合物(29)500mg(2.45mmol)とジクロロメタン20mLの混合物を、内温30℃で2時間かけて添加し、5時間反応させた。反応液を氷水にあけ、FC−72で抽出し、FC−72層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、化合物(31)を191mg(0.0735mmol、収率3.0%)得た。
【0163】
化合物(31)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=2.15(3H,dd、J=9.9、3.9Hz)3.59−3.86(12H、m)、4.58(3H、dd、J=8.4、3.6Hz)、7.13(3H,s)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−88.9〜−88.6(66F、m)、−86.9(9F、s)、−77.7〜−77.6(6F、m)。
MALDI/TOF−MS:m/z=2615.7[M++Na]。
【0164】
[実施例13:化合物(33)の合成]
【0165】
【化55】

【0166】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(32)524mg(1.34mmol)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(33)を101mg(0.0783mmol、収率35.1%)得た。
【0167】
化合物(33)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.70−3.87(12H)、4.30(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−51.7(6F)、−57.8(9F)、−77.8(6F)、−89.0(6F)、−90.3(6F)。
MALDI/TOF−MS:m/z=1291.0[M+]。
【0168】
[実施例14:化合物(35)の合成]
【0169】
【化56】

【0170】
化合物(18)1.12g(1.34mmol)のかわりに、実施例7−1、7−2と同様にして合成した化合物(34)1.50g(分子量約1000、19F−NMRより、m:n≒2:3)を用いたこと以外は、実施例7−3と同様に行い、化合物(35)を202mg得た。
【0171】
化合物(35)の同定データ
1H−NMR[CDCl3]:δ[ppm]=3.68−3.91(12H)、4.30(6H)。
19F−NMR[CDCl3]:δ[ppm]−52.2〜−50.7、−59.7〜−56.1(9F)、−78.4〜−77.0(6F)、−91.1〜−88.1。
【0172】
2.磁気記録媒体の作製と評価
[実施例15]
磁気記録媒体の作製:
図1と同様の構成のハードディスクを作製した。具体的には、以下の通りである。
ガラス基板1上に軟磁性膜2が被膜され、次に非磁性中間層3、磁気記録層4、更に保護膜層5としてカーボンを堆積した。この保護膜層5の表面上に、下記の方法で調製した塗布液を、下記の方法で塗布して、潤滑層6を形成した。
【0173】
塗布用組成物の調製:
化合物(3)をフッ素系溶剤(Vertrel、三井・デュポンフロロケミカル(株)製、もしくはHFE−7100DL 住友3M(株)製)、又はトリフルオロエタノール中に、濃度0.1質量%で溶解して、塗布液を調製した。
【0174】
【化57】

【0175】
潤滑層6の形成:
保護層5の表面に、調製した塗布液をディップコーター(Intevac San Jose Technology製 Mini Luber)を用い、浸漬速度:5mm/sec、浸漬時間:60sec、及び引き上げ速度:1mm/secの条件で塗布し、続いて紫外線照射装置(センエンジニアリング製 PL16−110D)を用いて窒素雰囲気下で5分間、紫外線処理することで、潤滑層6を形成して試験用磁気ディスクを得た。
【0176】
[実施例16]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(5)とした以外は同様にして実施例16の試験用磁気ディスクを得た。
【0177】
【化58】

【0178】
[実施例17]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を、下記化合物(8)とし、濃度0.01質量%で溶解した以外は、同様にして実施例17の試験用磁気ディスクを得た。
【0179】
【化59】

【0180】
[実施例18]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を、下記化合物(10)とし、濃度0.01質量%で溶解した以外は、同様にして実施例18の試験用磁気ディスクを得た。
【0181】
【化60】

【0182】
[実施例19]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を、下記化合物(12)とし、濃度0.01質量%で溶解した以外は、同様にして実施例19の試験用磁気ディスクを得た。
【0183】
【化61】

【0184】
[実施例20]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を、下記化合物(14)とし、濃度0.01質量%で溶解した以外は、同様にして実施例20の試験用磁気ディスクを得た。
【0185】
【化62】

【0186】
[実施例21]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(20)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例21の試験用磁気ディスクを得た。
【0187】
【化63】

【0188】
[実施例22]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(22)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例22の試験用磁気ディスクを得た。
【0189】
【化64】

【0190】
[実施例23]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(24)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例23の試験用磁気ディスクを得た。
【0191】
【化65】

【0192】
[実施例24]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(26)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例24の試験用磁気ディスクを得た。
【0193】
【化66】

【0194】
[実施例25]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(28)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例25の試験用磁気ディスクを得た。
【0195】
【化67】

【0196】
[実施例26]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(31)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例26試験用磁気ディスクを得た。
【0197】
【化68】

【0198】
[実施例27]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(33)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例27の試験用磁気ディスクを得た。
【0199】
【化69】

【0200】
[実施例28]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(35)とし、濃度0.05質量%で溶解した以外は同様にして実施例28の試験用磁気ディスクを得た。
【0201】
【化70】

【0202】
[比較例1]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(36)とし、濃度0.2質量%で溶解した以外は同様にして比較例1の試験用磁気ディスクを得た。
【0203】
【化71】

【0204】
[比較例2]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(37)とし、濃度0.2質量%で溶解した以外は同様にして比較例2の試験用磁気ディスクを得た。
【0205】
【化72】

【0206】
[比較例3]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(38)とし、濃度0.2質量%で溶解した以外は同様にして比較例3の試験用磁気ディスクを得た。
【0207】
【化73】

【0208】
[比較例4]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(39)とし、濃度0.2質量%で溶解した以外は同様にして比較例4の試験用磁気ディスクを得た。
【0209】
【化74】

【0210】
[比較例5]
実施例15の作製方法において、化合物(3)を下記化合物(40)とし、濃度0.2質量%で溶解した以外は同様にして比較例5の試験用磁気ディスクを得た。
【0211】
【化75】

【0212】
評価:
・平均膜厚の評価
平均膜厚はヘッド/ディスク間のスペーシング低減の観点から薄膜であるほど良いとされるが、1Å以下のものは潤滑層の被覆が十分でないと判断できる。各試験用磁気ディスクの潤滑剤塗布面に対し潤滑膜の平均膜厚をHDI製SRAによって測定し、下記基準により四段階で官能評価した。
◎:超薄膜(1〜10Å)
○:薄膜(10〜20Å)
△:厚膜(20Å以上)
×:膜無し(1Å以下)
【0213】
・塗布面状の評価
誤認識やヘッド衝突等を低減すべく、磁気ディスクの表面は平滑であるほど良いとされている。各試験用磁気ディスクの潤滑剤塗布面に対し、視認、レーザー表面検査装置(HDI Insutrumentation Inc.製 SRA−10,000)、AFM(Veeco製 Demension 3100 AFM)によって表面粗さを観測し、下記基準により三段階で官能評価した。
◎:レーザー検査、AFMでも表面ムラが無い。
○:視認ではムラが無い。レーザー検査、AFMでは小さな凹凸が観察される。
△:視認でもムラが観察される。
【0214】
・吸着性能
各試験用磁気ディスクについて、紫外線照射処理の前後においてフッ素系溶剤(Vertrel、三井・デュポンフロロケミカル(株)製 もしくは HFE−7100DL 住友3M(株)製 )もしくはトリフルオロエタノールにディップコーター(Intevac San Jose Technology製 Mini Luber)を用い、浸漬速度:5mm/sec、浸漬時間:60sec、及び引き上げ速度:1mm/secの条件にて浸漬・洗浄を行なった後、前述の平均膜厚の評価と同様の方法にて膜厚評価を行なった。
◎:吸着良好(2.0Å以上)
○:吸着可能1.0〜2.0Å)
△:吸着不足(0.5〜1.0Å)
×:吸着不可(0.5Å未満)
【0215】
・ヘッド浮上安定性の評価
まず各試験用磁気ディスクをスピンスタンドで回転させ、読取ヘッドを浮上させる。続いてディスク半径20mmにヘッドを固定し、常温常圧にて1週間定点浮上させた。続いてテスト後のヘッドを観察し、光学顕微鏡にてヘッドに移着した潤滑剤を下記基準により四段階で官能評価した。使用した評価装置はクボタコンプス製HDF tester、ヘッドはフェムトスライダである。
◎:潤滑剤のヘッドへの移着が全くなく、ヘッドはきれいな状態である。
○:潤滑剤のヘッドへの異着が一部あるが、ヘッドには10μmサイズ以下の汚れが3箇所以内である。
△:潤滑剤のヘッドへの移着があり、ヘッドには10μmサイズ以上の汚れがあるか、または10μmサイズ以下の汚れが4箇所以上ある。但し、ヘッドは浮上可能である。
×:ヘッド全面に潤滑剤の移着があり、ヘッド/ディスクが定常的に接触し、ヘッドの浮上も不可能である。
【0216】
上記測定結果及び評価結果を、下記表にまとめる。
【0217】
【表1】

【0218】
これらの磁気ディスクのそれぞれについて、日本分光(株)製の全真空FT−IR分光器「FT−IR6400」の試料室にRAS装置を設置し、IRスペクトルを測定した。
その結果、実施例1〜4の試験用磁気ディスクはいずれも、1255cm-1〜1270cm-1にCF3伸縮振動に帰属される鋭いピークを示すことが確認された。この結果は、上記例示化合物が、保護層面上でPFPE鎖が、層面に対して垂直に配向していることを示唆している。
【0219】
4.ヘッドスライダの作製と評価
[実施例29]
ヘッドスライダの作製:
化合物(5)をフッ素系溶剤(Vertrel、三井・デュポンフロロケミカル(株)製、もしくはHFE−7100DL 住友3M(株)製)、又はトリフルオロエタノール中に、濃度0.1質量%で溶解して、塗布液を調製した。
【0220】
【化76】

【0221】
この塗布液を、フェムトスライダにディップコート法により塗布した。具体的には、前記塗布液に1分間浸漬し、引き上げ速度1mm/secで塗布した。続いて、紫外線照射装置(センエンジニアリング製 PL16−110D)を用いて窒素雰囲気下で5分間、紫外線処理することで、潤滑層6を形成して試験用磁気ディスクを得た。 その後、フッ素系溶剤の「Vertrel」(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)に1分間浸漬して洗浄した。この様にして、潤滑膜を有する試験用ヘッドスライダを作製した。
【0222】
[実施例30]
実施例29の作製方法において、化合物(5)を下記化合物(20)とし、濃度を0.05質量%で溶解した以外は、同様にして実施例30の試験用ヘッドスライダを作製した。
【0223】
【化77】

【0224】
[比較例6]
実施例29の作製方法において、化合物(5)を下記化合物(36)とし、濃度を0.2質量%で溶解した以外は、同様にして比較例6の試験用ヘッドスライダを作製した。
【0225】
【化78】

【0226】
[比較例7]
実施例29の作製方法において、化合物(5)を下記化合物(40)とし、濃度を0.2質量%で溶解した以外は、同様にして比較例7の試験用ヘッドスライダを作製した。
【0227】
【化79】

【0228】
評価:
減圧スピンスタンドに、「Z−Tetraol」を塗布して潤滑膜を形成した、2.5インチの磁気メディアを、5400PRMで回転させ、実施例29及び30、比較例6及び7のそれぞれのスライダーを、ランプロードさせて、半径位置22mmにシークさせた。安定浮上したところから、チャンバーを減圧しフライングハイトが減少しメディアとコンタクトする瞬間を、AEセンサーで検知したところで、大気圧に戻していきフライハイトを上昇させた。
接触をAEが検知した圧力をTDP(touch down pressure)、圧力を戻してAEが安定した圧力をTOP(take off pressure)と呼び、これらの圧力が小さいほどヘッドディスククリアランスが大きいことを意味する。接触時の摩擦力をヘッドピボット部に設置されたFriction gaugeによって測定した。この作業を3回繰り返し、平均値を算出した。
接触後のヘッドを、顕微鏡により観察し、ヘッド上への潤滑剤付着を観察し、以下の基準で評価した。
ヘッド汚れ評価基準
◎:潤滑剤のヘッドへの移着が全くなく、ヘッドはきれいな状態である。
○:潤滑剤のヘッドへの移着が一部あるが、ヘッドには10μmサイズ以下の汚れが3箇所以内ある。
△:潤滑剤のヘッドへの移着があり、ヘッドには10μmサイズ以上の汚れがあるか、又は10μmサイズ以下の汚れが4箇所以上ある。但し、ヘッドは再浮上可能である。
×:ヘッド全面に潤滑剤の移着があり、ヘッドの再浮上も不可能である。
結果を下記表に示す。
【0229】
【表2】

【0230】
上記表に示す結果から、本発明の潤滑剤組成物からなる膜を有するヘッドスライダは、低摩擦性であり、且つヘッド汚れが少ないことが確認できた。
【符号の説明】
【0231】
1 基板
2 軟磁性層
3 中間層
4 磁気記録層
5 保護層
6 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の下記一般式(1)で表される化合物を含有する潤滑剤組成物:
【化1】

一般式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表し;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、一般式(1)中の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−を構成する、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−の結合の順番は限定されず、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−から選ばれるパーフルオロアルキレン単位と酸素原子とがランダムに分布したパーフルオロアルキレンオキシ基を意味するものとし、qが2以上の時、複数の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は互いに同一でも異なっていてもよく、またsが2以上の時、複数のn及びqはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、またtが2以上の時、複数のs及びYはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、p2が1以上の時、パーフルオロアルキレンオキシ基は分岐構造を有する。
【請求項2】
前記化合物の1分子あたりのフッ素含率が、37質量%以上76質量%以下である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
Xが、置換されていてもよい芳香族性環状基又は非芳香族性環状基である請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
Yの有する極性基が、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルバモイル基、スルホンアミド基、リン酸基、及びフォスフェート基からなる群より選ばれる極性基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
Yの有する極性基が、水酸基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
Yが、C2〜C10のアルキレン基を含み、但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣り合わない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよく、且つアルキレン基中のいずれかの炭素原子に、又は炭素原子が窒素原子で置換されている場合は窒素原子に、直接もしくはC1〜C5のアルキレン基を介して極性基が結合している連結基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
Yが、下記式で表される部分構造を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化2】

式中、Wは極性基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表わし;*が付記された炭素原子のいずれか、又はZが窒素原子である場合はZが、Xと直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣り合わない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して結合し;**が付記された炭素原子が、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1に結合する。
【請求項8】
Yが、下記式(Y1)〜(Y3)のいずれかで表される基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化3】

式中、W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;*及び**はそれぞれ、X及び−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1との結合位置を示す。
【請求項9】
一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(2a)又は(2b)で表される基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化4】

一般式(2a)及び(2b)中、mは2〜4の整数を表し、qは1〜30の整数を表し、式(2a)中のqが2以上の場合に複数存在するm、及び式(2b)中に複数存在するmは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【請求項10】
一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(3a)又は(3b)で表される基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化5】

一般式(3a)及び(3b)中、vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1a)〜(1f)のいずれかで表される化合物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化6】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;mは2〜4の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し、qは1〜30の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、m、n及びqはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項12】
前記少なくとも1種類の一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1g)〜(1l)のいずれかで表される化合物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物:
【化7】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、v、w及びnはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項13】
磁気記録媒体用ディスクの潤滑剤として用いられる請求項1〜12のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の潤滑剤組成物からなる膜。
【請求項15】
ディップコート法、スピンコート法、又は真空蒸着法により形成されてなる請求項14に記載の膜。
【請求項16】
少なくとも表面の一部がカーボンを主原料とする基材と、その上に請求項14又は15に記載の膜を有する積層体。
【請求項17】
紫外線照射処理又は熱処理を施して基材へ密着させたことを特徴とする請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
少なくとも、磁性層、及び請求項14又は15に記載の膜を有する磁気記録媒体。
【請求項19】
前記磁性層と前記膜との間に、保護層を有する請求項18に記載の磁気記録媒体。
【請求項20】
磁気ヘッドを備えたヘッドスライダであって、少なくとも一部の表面に、請求項14又は15に記載の膜を有するヘッドスライダ。
【請求項21】
請求項18又は19に記載の磁気記録媒体、及び請求項20に記載のヘッドスライダのうち、少なくとも一方を有する磁気記録装置。
【請求項22】
下記一般式(1)で表されるフッ素化合物:
【化8】

一般式(1)中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;Yは少なくとも一つの極性基を有し、且つ芳香族性環状基を有しない、2価以上の連結基を表し;p1は1〜4の整数を表し、p2、p3およびp4はそれぞれ0〜4の整数を表し、qは0〜30の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、sは1〜4の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、一般式(1)中の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−を構成する、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−の結合の順番は限定されず、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は、−(CF2p1−、−(CF)p2−、−[CF(CF3)]p3−、及び−[C(CF32p4−から選ばれるパーフルオロアルキレン単位と酸素原子とがランダムに分布したパーフルオロアルキレンオキシ基を意味するものとし、qが2以上の時、複数の−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}−は互いに同一でも異なっていてもよく、またsが2以上の時、複数のn及びqはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、またtが2以上の時、複数のs及びYはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、p2が1以上の時、パーフルオロアルキレンオキシ基は分岐構造を有する。
【請求項23】
1分子あたりのフッ素含率が、37質量%以上76質量%以下である請求項22に記載のフッ素化合物。
【請求項24】
Xが、置換されていてもよい、ベンゼン、シクロヘキサン、トリアジン、イソシアヌル、ピリミジン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンよりなる群から選ばれる基である請求項22又は23に記載のフッ素化合物。
【請求項25】
Xが、下記式(X1)〜(X4)のいずれかの環状基である請求項22〜24のいずれか1項に記載のフッ素化合物:
【化9】

式中、*はYが結合可能な位置を示し、各式中の2以上の*の位置にYが結合し、Yが結合していない*の位置、又はその他の結合可能な位置に他の置換基が結合していてもよい。
【請求項26】
前記一般式(1)中のYが、エーテル性酸素原子、アミン性窒素原子、及びアミド結合からなる群より選ばれる原子又は原子団を少なくとも1つ有する、炭素数1〜15の直鎖状又は分枝状の2〜5価の連結基であることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか1項に記載のフッ素化合物。
【請求項27】
Yが、C2〜C10のアルキレン基を含み、但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(−(C=O)−)に置き換わっていてもよく、且つアルキレン基中のいずれかの炭素原子又は炭素原子が窒素原子で置換されている場合は窒素原子に、直接もしくはC1〜C5のアルキレン基を介して極性基が結合している連結基である請求項22〜26のいずれか1項に記載のフッ素化合物。
【請求項28】
Yが、下記式で表される部分構造を含む請求項22〜27のいずれか1項に記載のフッ素化合物:
【化10】

式中、Wは極性基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表わし;*が付記された炭素原子のいずれか、又はZが窒素原子である場合はZが、Xと直接又はC1〜C8のアルキレン基(但しアルキレン基中の1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はカルボニル基(C=O)に置き換わっていてもよい)を介して結合し;**が付記された炭素原子が、−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1に結合する。
【請求項29】
Yが、下記式(Y1)〜(Y3)のいずれかで表される基である請求項22〜28のいずれか1項に記載のフッ素化合物:
【化11】

式中、W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;*及び**はそれぞれ、X及び−{(CF2p1(CF)p2[CF(CF3)]p3[C(CF32p4O}q−Cn2n+1との結合位置を示す。
【請求項30】
一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(2a)又は(2b)で表される基である請求項22〜29のいずれか1項に記載のフッ素化合物:
【化12】

一般式(2a)及び(2b)中、mは2〜4の整数を表し、qは1〜30の整数を表し、式(2a)中のqが2以上の場合に複数存在するm、及び式(2b)中に複数存在するmは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【請求項31】
一般式(1)中のパーフルオロアルキレンオキシ基が、下記式(3a)又は(3b)で表される基である請求項22〜29のいずれか1項に記載のフッ素化合物:
【化13】

一般式(3a)及び(3b)中、vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、*はYとの結合位置を、**はCn2n+1との結合位置を示す。
【請求項32】
下記一般式(1a)〜(1f)のいずれかで表されるフッ素化合物:
【化14】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;mは2〜4の整数を表し、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し、qは1〜30の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、m、n及びqはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項33】
下記一般式(1g)〜(1l)のいずれかで表されるフッ素化合物:
【化15】

式中、Xは置換されていてもよい環状基を表し;W1及びW2はそれぞれ、極性基を、又は1以上の極性基と、1以上のメチレン基(CH2)、1以上のメチン基(CH)、1以上の4級炭素原子、又はこれらの2以上の組み合わせてなる基とからなる極性基を有する基を表わし;kは0又は1であり;L1〜L3はそれぞれ、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、又は−C(=O)−を表わし;Zは酸素原子又はNHを表わし;vは1〜20の整数を表し、wは1〜20の整数を表し、但し(v+w)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されず、nは1〜10の整数を表し、tは2〜10の整数を表し;但し、各式中に複数存在するL1〜L3、k、W1、W2、Z、v、w及びnはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項34】
下記L−1〜L−14のいずれかであるフッ素化合物:
【化16】

【化17】

【化18】

式(L-14)中、mは1〜20の整数を表し、nは1〜20の整数を表し、但し(m+n)は1〜30の整数であり、且つ(CF2O)と(CF2CF2O)との結合の順番は限定されない。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184339(P2012−184339A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48763(P2011−48763)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】