説明

潤滑剤組成物

【課題】耐熱性、耐荷重性および難燃性に優れた潤滑剤組成物を経済的に提供する。
【解決手段】フッ素油に第三リン酸カルシウムを含有させることによってフッ素系の潤滑剤組成物とする。この第三リン酸カルシウムはフッ素油を含む全組成物に対して1〜40重量%使用される。フッ素油と共に、従来使用されていたフッ素樹脂やこれを溶解させるフッ素溶剤を使用しなくて済むので、安全、容易かつ経済的にフッ素系の耐熱性、耐荷重性に優れた潤滑剤組成物を得ることができる。なお、この第三リン酸カルシウムとフッ素油を含む潤滑剤組成物に他の増ちょう剤からなる潤滑剤組成物を混合することで、一層摩擦摩耗特性に優れたものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物の改良に関し、特に耐熱性、耐荷重性に優れた潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性、耐荷重性が要求されるグリースなどの潤滑剤組成物としては、鉱油や合成油に、脂肪酸のリチウム塩を加えたリチウム石けんグリース組成物(特許文献1)や、アルミニウムコンプレックス石けんグリース組成物や、鉱油や合成油中でイソシアネートとアミンを反応させてウレア化合物とするウレアグリース組成物(特許文献2)が用いられて来た。
また、耐熱性の向上の為に、分子骨格中にフッ素原子を有するウレア化合物を用いてウレアグリース組成物を得ることも提案されているが(特許文献3)、これは、構造が特殊であり、一般に入手するのが難しいという欠点がある。
【0003】
更に耐熱性を向上させたものとして、フッ素油のパーフルオロポリエーテルを基油とし、これをフッ素樹脂で増ちょうさせたフッ素系グリース組成物が知られている(特許文献4)。このようなフッ素系グリース組成物は、150℃を越える高温下における潤滑、化学薬品と接触するような部位での潤滑、高真空下での潤滑、放射線照射下における潤滑及び各種精密機器等における耐久性が必要とされる潤滑個所等にも使用されている。
【0004】
しかしながら、上記フッ素系グリース組成物は、製造時にフッ素樹脂をフッ素溶剤中に加熱溶解させ、これを基油のフッ素油中に分散させ、更に生成されたグリース組成物中からフッ素溶剤を除去するために減圧装置によって処理すること等が必要であるため、製造コストがかかるという欠点があった。
また、上記したフッ素樹脂や、これを溶解させるフッ素溶剤も高価なものであるため、フッ素系グリース組成物の価格は更に高くなり、このため優秀な性能があるにもかかわらずその用途は大幅に限られていた。
【特許文献1】特開平5−86392号公報
【特許文献2】特開平6−330072号公報
【特許文献3】特開平11−61169号公報
【特許文献4】特開2007−154084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フッ素樹脂や、これを溶解させるフッ素溶剤を使用することなく、安全で、かつ容易にフッ素系の潤滑剤組成物を得て、低コストで耐熱性や耐荷重性に優れた高性能のフッ素系潤滑剤組成物を提供するものである。
フッ素系グリースは、耐熱性、酸化安定性に優れる反面、殆どの有機溶媒や油脂に不溶な性質を有している。このため、各種添加剤とのなじみが悪く、潤滑材料や使用条件によっては、摩耗を促進したり、錆を発生したりする場合も多い。
本発明は、苛酷な潤滑条件下で摩擦係数の低減と耐摩耗性を向上させるフッ素系潤滑剤組成物を提供するものである。
本発明は、また、防錆性能に優れたフッ素系潤滑剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、フッ素油に対して第三リン酸カルシウムを加えた場合に、極めて優れた増ちょう効果を発揮することを見出し、こうして作成したフッ素系潤滑剤組成物が、耐熱性及び耐荷重性に優れており、高温下においても長くその性能を維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はフッ素油に第三リン酸カルシウムを含有させることによってフッ素系の潤滑剤組成物とするものである。
上記第三リン酸カルシウムはフッ素油を含む全組成物に対して約1〜40質量%使用するとよい。また、この第三リン酸カルシウムは他の増ちょう作用を有するものと併用することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性、耐荷重性に優れており、高温下で長寿命な潤滑剤組成物を得ることができる。また、第三リン酸カルシウムは、フッ素樹脂や、これを溶解させるフッ素溶剤に比べて経済的であり、コスト的に有利な潤滑剤組成物を安全かつ容易に得ることができる。第三リン酸カルシウムを使用すると、一般的なフッ素グリースに比べて、原料が廉価で、しかもちょう度収率が良好である。すなわち、少ない増ちょう剤の量で所望の硬さの潤滑剤を得ることができる。
本発明の潤滑剤組成物は、用途として、一般に使用される機械、軸受等に使用可能であることは当然ながら、より苛酷な高温性が要求される潤滑条件下で優れた性能を発揮する。
例えば、自動車では、スターター、オルターネーター及び各種アクチュエーター部のエンジン周辺、プロペラシャフト、等速ジョイント(CVJ)、ホイールベアリング及びクラッチ等のパワートレイン、電動パワーステアリング(EPS)、制動装置、ボールジョイント、ドアヒンジ、ハンドル部、冷却ファンモーター等の各種部品が挙げられ、これらの用途に好適である。
さらに、パワーショベル、ブルドーザー、クレーン車等の建設機械、鉄鋼、製紙工業、林業、農業機械、化学プラント、乾燥炉、複写機等の各種高温箇所にも好適である。
その他の用途としては、ハードディスク軸受用、プラスチック潤滑用、カートリッジグリース等が挙げられるがこれらの用途にも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記フッ素油としては、パーフルオロポリエーテル、フルオロシリコーンなどを使用することができ、これらの少なくとも1種類を使用し、また適宜に混合して使用することができる。
【0009】
こうしたフッ素油としては、パーフルオロポリエーテル及びその誘導体、フルオロシリコーン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロフォスファゼン等があげられ、またこれらの混合油が挙げられる。
パーフルオロポリエーテルの種類は特に限定されるものではなく、以下に示すようなフルオロオキシアルキレン構造単位から選択される少なくとも1種から構成されるものが好ましい。
なお、下記式6、7中のXは「CF(CF−」であり、nは0〜4の整数である。
【0010】
(化1)
−(−CF2CF2O−)− (1)
(化2)
−(−CF2O−)− (2)
(化3)
−(−CF2CF(CF3)O−)− (3)
(化4)
−(−CF(CF3)O−)− (4)
(化5)
−(−CF2CF2CF2O−)− (5)
(化6)
−(−CF2CF(OX)O−)− (6)
(化7)
−(−CF(OX)O−)− (7)
【0011】
パーフルオロポリエーテルが上記フルオロオキシアルキレン構造単位の2種以上から構成されている場合は、各構造単位は連鎖に沿って統計的に分布している。そして、その末端基は、CF−,C−,C−,CFCl(CF)CF−,CFCFClCF−,CFClCF−,CFCl−,CHF−,CFCHF−等のような、1個のH及び/又はClを任意に有するフルオロアルキル基である。
【0012】
本発明のフルオロシリコーンとは、フッ素原子を含む置換基を有するフルオロシリコーンであって、潤滑剤組成物の基油として使用可能な範囲の粘度を有するものであれば、特に限定されるものではない。
フルオロシリコーンの好適に使用される具体例として、例えば、下記式(8)で示すものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
更にこのようなパーフルオロポリエーテルやフルオロシリコーンに、本発明の所期の目的を妨げない限り、他の公知の潤滑剤組成物を添加することができる。
【0013】
(化8)

【0014】
上記式8中、R1は炭素数が1〜3の炭化水素基であり、R2はメチル基,エチル基,ビニル基,フェニル基または−CH2CH2R基(R:炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基)であり、上記R2のうちの少なくとも50%は「−CH2CH2R基」である。また、nは使用可能な粘度範囲を与える範囲の数である。
【0015】
上記した第三リン酸カルシウムは、一般的には〔Ca(PO・Ca(OH)で表わされるヒドロキシアパタイト組成の化学構造を有しているものであるが、Ca(POで表されるものを使用することもできる。
本発明において下記する実施例などにおいては、〔Ca(PO・Ca(OH)を用いており、含有量もこれに基づく質量で表示している。
【0016】
上記フッ素油に第三リン酸カルシウムを加えて良く混合、混練することによって潤滑剤組成物を得ることができる。第三リン酸カルシウムを加える量が増えていくに従って、潤滑剤組成物の粘ちょう度が増していき、次第にグリース状態になる。
グリース状の潤滑剤組成物を得る場合、第三リン酸カルシウムの使用量は、潤滑剤組成物の全組成物量に対して、約1〜40質量%、好ましくは約5〜20質量%、さらに好ましくは約7〜15質量%を配合するようにすると良い。
第三リン酸カルシウムの配合量が1質量%未満の場合には通常グリースと言われているような状態にはならないが、粘ちょう度の増加は見られるので、得られた状態に適合する用途に用いることができる。また、40質量%を越える場合には潤滑剤組成物が硬くなって、滑らかなバター状とはならないのでグリースには向かないと考えられるが、その状態に合った適宜の用途に用いることができる。
【0017】
本発明の潤滑剤組成物には、上記成分に加えて、その用途に応じて防錆剤、防食剤、酸化防止剤、極圧剤、耐摩耗剤その他の添加剤を適宜に併用することができる。
上記防錆剤、防食剤としては一般に使用されるものが挙げられるが、中でも特に有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、界面活性剤、二塩基酸塩、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、チオカーバメートから選ばれる少なくとも1種を使用すると良い。
【0018】
上記有機酸誘導体のうち、好ましいものとしてコハク酸誘導体が挙げられる。
コハク酸誘導体は、下記の一般式(9)に示すものである。
【化9】

【0019】
上記一般式9中、XおよびXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくは、水素原子、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メチルプロピル基、ターシャリーブチル基である。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ドデシレン基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデシレン基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデシレン基、エイコシル基、ドコシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、テトライソプロピル基、オレイル基、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。またこれらの化合物のアミン化物でも良い。
上記コハク酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜300mgKOH/gのもの、好ましくは30〜200mgKOH/gのものが良い。
【0020】
上記した有機アミン誘導体には、ジエタノールアミン類、モノアルキル一級アミン、モノアルケニル一級アミン、アルキルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルケニルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルケニルジアミンなどが挙げられる。
【0021】
上記ジエタノールアミン類としては、下記の一般式(10)に示すものがある。
(化10)
10-N-(X11 (10)

上記式10中、X10は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基であり、好ましくはX10の炭素数は1〜20が、より好ましくは1〜8もしくは12〜18が良い。X11は炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基であり、好ましくはX11の炭素数が1〜8もしくは12〜18が良い。
【0022】
こうしたジエタノールアミン類としては、例えば、N−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミン、N−ココナットジエタノールアミン、N−牛脂ジエタノールアミン、N−水素化牛脂ジエタノールアミン、N−大豆ジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン類、またN−オクチルジプロパノールアミン、N−ノニルジプロパノールアミン、N−デシルジプロパノールアミン、N−ウンデシルジプロパノールアミン、N−ラウリルジプロパノールアミン、N−トリデシルジプロパノールアミン、N−ミリスチルジプロパノールアミン、N−ペンタデシルジプロパノールアミン、N−パルミチルジプロパノールアミン、N−ヘプタデシルジプロパノールアミン、N−オレイルジプロパノールアミン、N−ステアリルジプロパノールアミン、N−イソステアリルジプロパノールアミン、N−ノナデシルジプロパノールアミン、N−エイコシルジプロパノールアミン、N−ココナットジプロパノールアミン、N−牛脂ジプロパノールアミン、N−水素化牛脂ジプロパノールアミン、N−大豆ジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン類がある。
【0023】
モノアルキル一級アミン、モノアルケニル一級アミンとしては、下記の一般式(11)に示すものがある。
(化11)
N-X12 (11)

上記式11中、X12は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基である。例えば、ラウリルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン等が挙げられる。好ましくはX12の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。またX12は直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
【0024】
上記のアルキルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルケニルジアミン・ジ脂肪酸塩としては、例えば、N-アルキル(C14〜C18)トリメチレンジアミンオレイン酸塩(牛脂ジアミンオレイン酸塩)、N-アルキル(C〜C18)-1,3-ジアミノプロパン・アジピン酸塩(ココジアミンアジピン酸塩)等が挙げられる。
【0025】
上記のアルキルジアミン、アルケニルジアミンとしては、下記の一般式(12)に示すものがある。
(化12)
13-NH-X14-NH (12)

【0026】
上記一般式12中、X13は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。好ましくはX13の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。X14は炭素数1〜12のアルキレン基である。好ましくはX14の炭素数は1〜8、更に好ましくは2〜4が良い。
こうしたものとして、例えば、N−オクチル−1,2−エチレンジアミン、N−ノニル−1,2−エチレンジアミン、N−デシル−1,2−エチレンジアミン、N−ウンデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ラウリル−1,2−エチレンジアミン、N−トリデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ミリスチル−1,2−エチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−パルミチル−1,2−エチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−オレイル−1,2−エチレンジアミン、N−ステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−イソステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−ノナデシル−1,2−エチレンジアミン、N−エイコシル−1,2−エチレンジアミン、N−ココナット−1,2−エチレンジアミン、N−牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−大豆−1,2−エチレンジアミン、等のエチレンジアミン類がある。
【0027】
また、N−オクチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノニル−1,3−プロピレンジアミン、N−デシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ウンデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ラウリル−1,3−プロピレンジアミン、N−トリデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ミリスチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ペンタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−イソステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノナデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−エイコシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ココナット−1,3−プロピレンジアミン、N−牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−水素化牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−大豆−1,3−プロピレンジアミン、等のプロピレンジアミン類がある。
【0028】
更に、N−オクチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノニル−1,4−ブチレンジアミン、N−デシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ウンデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ラウリル−1,4−ブチレンジアミン、N−トリデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ミリスチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−パルミチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−オレイル−1,4−ブチレンジアミン、N−ステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−イソステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノナデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−エイコシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ココナット−1,4−ブチレンジアミン、N−牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−大豆−1,4−ブチレンジアミン、等のブチレンジアミン類がある。
上記した有機アミン誘導体は、それらを適宜に組み合わせて用いることができる。
これら有機アミン誘導体としては、ジアミン、アミン塩が好ましく、ジアミンとしてヤシジアミン、アミン塩として牛脂ジアミン・ジオレイン酸塩などが特に好ましいものとして挙げられる。
【0029】
上記の硫化脂肪酸誘導体としては、動植物油或いは脂肪酸を硫化したものであって、炭素数8〜22の脂肪酸が用いられる。
硫化脂肪酸誘導体としての硫化油脂は、動植物油の硫化物を指し、例えば硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などがある。
また、硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル,硫化オレイン酸オクチル等の硫化エステル、各種鉱油に単体硫黄を溶解させた硫化鉱油などが挙げられる。
このような硫化脂肪酸誘導体しては、硫黄分を5〜30質量%を含有するものが好適である。
好ましくは、上記硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル,硫化オレイン酸オクチル等の硫化エステル、各種鉱油に単体硫黄を溶解させた硫化鉱油などが挙げられ、中でも硫化オレイン酸が特に好ましい。
【0030】
上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、特に脂肪酸エステル系の界面活性剤を用いることができる。
この脂肪酸エステル系の界面活性剤としては、例えば、グリセライド類としてグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン類としてソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖類としてしょ糖脂肪酸エステル等がある。これらに使用される脂肪酸としては、炭素数が12〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が好ましく、これらの脂肪酸を単独で若しくは混合して使用することができる。
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸およびオレイン酸のモノ・ジグリセライド等がある。
また、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等が挙げられる。
そして、しょ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、しょ糖パルミチン酸エステル、しょ糖ステアリン酸エステルなどがある。
【0031】
上記した二塩基酸塩としては、炭素数4〜12程度の脂肪族二塩基酸の塩があり、脂肪族二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
また、塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、銅塩、鉄塩、ジルコニウム塩、アルミニウム塩、その他希土類塩、ピペラジン塩などが挙げられる。
これらの二塩基酸塩の中で、好ましくはアルカリ金属塩、ピペラジン塩があり、例えばセバシン酸ナトリウム、スベリン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、セバシン酸ピペラジンなどがより好ましく用いられる。
【0032】
上記したベンゾトリアゾール誘導体として、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
こうしたものは、適宜に併用することができる。
【0033】
また、酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系、ホスファイト系、硫黄系、ジアルキルジチオリン酸塩等の酸化防止剤が使用可能である。
極圧剤、耐摩耗剤としては、硫化油脂、硫化オレフィン、或いは、ジチオカルバミン酸亜鉛やジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸塩等の硫黄化合物や、リン酸エステル,酸性リン酸エステル,亜リン酸エステル,酸性亜リン酸エステル,リン酸エステルのアミン塩,亜リン酸エステルのアミン塩,酸性リン酸エステルのアミン塩,酸性亜リン酸エステルのアミン塩等のリン化合物や、チオリン酸エステル、或いは、ジチオリン酸亜鉛,ジチオリン酸モリブデン等のジチオリン酸塩等の硫黄リン化合物、等々が使用可能である。
【0034】
また、本発明の潤滑剤組成物は、上記した増ちょう剤として作用している第三リン酸カルシウムと共に、他の増ちょう剤を併用(混合使用)することができる。こうした他の増ちょう剤として作用するものとしては、ウレア化合物、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルカリ金属スルフォネート、アルカリ土類金属スルフォネート、アルミニウム石けん、アルミニウム複合石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、シリカエアロゲル、ポリテトラフルオロエチレンなどがあり、これらの1種または2種以上を併せて使用することができる。
こうした他の増ちょう剤を併用することは、苛酷な潤滑条件下での摩擦係数の低減や耐摩耗性の一層の向上を図ることに有効である。
【0035】
上記した他の増ちょう剤は、第三リン酸カルシウムと一緒にフッ素油に混合して本潤滑剤組成物とすることができるし、また、フッ素油と第三リン酸カルシウムを使用して作製した潤滑剤組成物と、他の増ちょう剤とフッ素油またはフッ素油以外の基油を使用して作製した潤滑剤組成物を混合することによって本潤滑剤組成物とすることができる。
このような他の増ちょう剤を併用する場合、上記した防錆剤、防食剤、酸化防止剤、極圧剤、耐摩耗剤その他の添加剤は、他の増ちょう剤とフッ素油以外の基油を使用して作製した潤滑剤組成物中に添加して混合し、その上でフッ素油と第三リン酸カルシウムを使用して作製した潤滑剤組成物に混合すると良い場合がある。こうすると、フッ素油と混り難いような添加剤も容易に混合できるようになって有効である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(実施例1)
パーフルオロポリエーテルとして米国デュポン社製のGPL106(粘度:40℃で240mm2/s,100℃で25mm2/s)を450gとり、第三リン酸カルシウムを50g加えて室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一状態に仕上げて潤滑剤組成物を得た。第三リン酸カルシウムの含有量は10質量%である。
【0037】
(実施例2)
パーフルオロポリエーテルとして米国デュポン社製のGPL107(粘度:40℃で440mm2/s,100℃で42mm2/s)を450gとり、第三リン酸カルシウムを50g加えて室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて潤滑剤組成物を得た。第三リン酸カルシウムの含有量は10質量%である。
【0038】
(実施例3)
フルオロシリコーンとして信越化学工業株式会社製のFL−100−1000CS(粘度:25℃で1000mm2/s)を425gとり、第三リン酸カルシウムを75g加えて室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて潤滑剤組成物を得た。第三リン酸カルシウムの含有量は、15質量%である。
【0039】
(実施例4)
上記実施例2の潤滑剤組成物200gと、実施例3の潤滑剤組成物200gとを混合して潤滑剤組成物を得た。第三リン酸カルシウムの含有量は12.5質量%である。
【0040】
(実施例5〜21)
表3〜表12に示すように、上記実施例2の潤滑剤組成物に、下記する比較例4〜比較例12の他の増ちょう剤で形成された潤滑剤組成物を混合したものである。
【0041】
(実施例22〜30)
表13〜表14に示す各配合割合でフッ素油〔米国デュポン社製のパーフルオロポリエーテルGPL107〕と第三リン酸カルシウムに、コハク酸誘導体、牛脂ジアミン・ジオレイン酸塩、ヤシジアミン、硫化オレイン酸、ステアリン酸・オレイン酸モノ・ジグリセライド、ソルビタントリステアレート、セバシン酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、セバシン酸ナトリウムとベンゾトリアゾールの混合物を添加して混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて潤滑剤組成物を得た。
【0042】
上記使用したコハク酸誘導体はコハク酸エステル誘導体であり、以下に示すテトラプロペニルコハク酸,1,3−プロパンジオールハーフエステルで、JIS K2501法による酸価が160mgKOH/gであり、下記の式(13)、式(14)に示す化合物の混合物である。
【化13】

【化14】

【0043】
上記使用したジアミン・ジ脂肪酸塩は以下に示すものである。
ジアミン・ジ脂肪酸塩: N-アルキル(C14〜C18)トリメチレンジアミンジオレイン酸塩(牛脂ジアミンジオレイン酸塩)で、下記の式(15)で示されるもの。
(化15)
RNH(CH2)3NH2・2C1735COOH (15)
(R=C14〜C18)

また、使用したヤシジアミンは、主成分がN−ドデシル−1,3−プロピレンジアミンであるヤシジアミンで、JIS K2501法による塩基価が440mgKOH/gのもので、下記の式(16)で示される。
(化16)
R-NH-C-NH (16)
(R=ヤシアルキル)
【0044】
(比較例1)
市販のリチウム複合石けん系グリース:TEXACO社の「TEXACO STARPLEX 2」
(比較例2)
市販のアルミニウム複合石けん系グリース:MAGNA INDUSTRIAL Co.Limitedの「OMEGA57」
(比較例3)
市販のウレア系グリース:CALTEX社の「CALTEX RPM SRI OEM2」
(比較例4)
市販のクレイ系グリース:Shell Aviation Limitedの「Aero shell grease 22」(ASG−22)
(比較例5)
ポリテトラフルオロエチレンで形成した潤滑剤組成物:基油にフッ素油、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレンを用いた市販の潤滑剤組成物(FOMBLIN RT−15)。
【0045】
(比較例6)
カルシウムスルフォネートで形成した潤滑剤組成物:増ちょう剤にカルシウムスルフォネートを用いた、市販の潤滑剤組成物(商品名;カルフォレックスEPグリース)。
(比較例7)
ウレア化合物で形成した潤滑剤組成物:100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油(I)900g中で、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート0.147モル(36.88g)にオクチルアミン0.295モル(38.12g)を反応させ、次にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート0.04モル(10.08g)にラウリルアミン0.08モル(14.92g)を加えて反応させ、三本ロールミルで均一に分散処理して得た潤滑剤組成物。ウレア化合物の含有量は10質量%である。
(比較例8)
リチウム石けんで形成した潤滑剤組成物:上記精製鉱油(I)5400g中で12−ヒドロキシステアリン酸リチウム600gを溶解し、均一に分散処理して得た潤滑剤組成物。リチウム石けんの含有量は10質量%である。
(比較例9)
リチウム複合石けんで形成した潤滑剤組成物:上記精製鉱油(I)4165g中で12−ヒドロキシステアリン酸リチウム350gを水酸化リチウム50.5gと反応させた後、アゼライン酸120.65gを水酸化リチウム59.0gと反応させ、均一に分散・処理することにより得たグリース。増ちょう剤の含有量は10.4質量%である。
(比較例10)
カルシウム石けんで形成した潤滑剤組成物:上記精製鉱油(I)2700g中でステアリン酸カルシウム300gを溶解し、均一に分散・処理することにより得たグリース。増ちょう剤の含有量は10質量%である。
【0046】
(比較例11)
アルミニウム複合石けんで形成した潤滑剤組成物:上記精製鉱油(I)4272g中に安息香酸158.22gとステアリン酸334.8gを溶解し、その後市販の環状アルミニウムオキサイドプロピレート潤滑液[商品名:川研ファインケミカル(株)製アルゴマー]293.64gを加えて反応を行い、生成した石けんを均一に分散処理して得たグリース。アルミニウム複合石けんの含有量は約11質量%である。安息香酸(BA)とステアリン酸(FA)のモル比をBA/FA=1.1および安息香酸とステアリン酸に対するアルミニウム(Al)のモル比を(BA+FA)/Al=1.9とした。
(比較例12)
ナトリウムテレフタラメートで形成した潤滑剤組成物:上記精製鉱油(I)2700g中でN-オクタデシルテレフタラミン酸メチル294.54gを水酸化ナトリウム27.36gと反応させ、均一に分散・処理することにより得たグリース。増ちょう剤の含有量は10質量%である。
(比較例13)
表14に示す配合割合でフッ素油(II)〔米国デュポン社製のパーフルオロポリエーテルGPL107〕、第三リン酸カルシウムおよびカルシウムスルフォネートを室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて得た潤滑剤組成物。
(比較例14)
表14に示す配合割合でフッ素油(II)、第三リン酸カルシウムおよび亜鉛スルフォネートを室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて得た潤滑剤組成物。
(比較例15)
表14に示す配合割合でフッ素油(II)、第三リン酸カルシウムおよびナフテン酸亜鉛を室温で混練した後、三本ロールミルで処理し、均一に仕上げて得た潤滑剤組成物。
【0047】
(試験)
実施例1〜30、比較例1〜15の潤滑剤組成物について、ちょう度、耐熱性、高温軸受寿命、耐荷重性、摩擦係数、耐摩耗性、軸受防錆などに関する試験を適宜に行って、評価した。
(1)ちょう度:JIS K2220(ASTM D1403)に規定するグリースの性状のちょう度について、1/4スケール混和器により、混和ちょう度(25℃、60W)を測定した。また、不混和ちょう度(25℃、0W)を測定した。
(2)加熱後ちょう度:JIS K2220(ASTM D1403)の1/4スケール混和器に試料を詰め、表面を平らにカットして、200℃で24時間加熱した。その後、試料の外観変化を観察しながら室温に放冷して、25℃の温度で上記不混和ちょう度(0W)を測定した。
また、試料の硬さ変化率を次式で求めた。
硬さ変化率(%)=〔(P2−P1)/P2〕×100
1=試験後の不混和ちょう度
2=試験前の不混和ちょう度
(3)薄膜蒸発量:JIS K2246の湿潤試験方法に規定する厚さ(1.0〜2.0mm)×縦60mm×横80mm寸法の試験片の片面の中央面積部分(50×70mm)に試料を1.0±0.1g塗布し、200℃×24時間の加熱試験を行い、試験後の試料の状態を観察し、また試料の蒸発量(滅失量)を質量%で求めた。
(4)高温軸受寿命試験:ASTM D3336に従い、軸受寿命試験を行い、200℃における軸受寿命時間(hours)を求めた。
(5)耐荷重性:ASTM D2596に従い、下記の条件で四球式試験を行い、融着荷重(WL;Weld Load,kgf)に至るまで50kgf,63kgf,80kgf,100kgf,126kgf,160kgf,200kgf,250kgf,315kgf,400kgf,500kgf,600kgfの各荷重下でのボールの摩耗痕径(mm)を求めた。
条件:回転数; 1770±60rpm
時 間; 10秒
温 度; 室温
【0048】
(6)ファレックス摩擦摩耗試験:下記条件により試験開始から15分後の摩擦係数と試験片(ピン)の表面粗さ(μm)を求めた(IP241/65準拠)。
条件:回転数; 290rpm、
荷 重; 90.7kg(200ポンド)、
温 度; 室温、
時 間; 15分、
試料量; 試験片に試料を約1グラム塗布
(7)防錆試験結果:ASTM D1743−73に基づき、下記条件で軸受防錆試験を行った。
条件:温 度; 52℃、
時 間; 48時間、
相対湿度;100%
【0049】
(結果)
実施例1〜30について、試験の結果を試料の組成と共に表1、表3〜表14に記載した。
比較例1〜15について、試験の結果を表2、表4〜表12、表14に記載した。
【0050】
(考察)
表1に示すように実施例1〜4の潤滑剤組成物は、200℃の高温で24時間加熱しても硬さ変化率が5.8%以下で小さく、薄膜蒸発量も22質量%以下と少ない。
一方、表2に示すように比較例1〜3の市販の高温用グリースでは、200℃の高温で24時間加熱すると溶融し、容器外へ流出して硬さ変化を測定することができなかった。また、薄膜蒸発量は60質量%以上が蒸発し、溶融後固化した状態が観察される。
また、実施例1〜4のものは高温軸受寿命試験において何れも200時間以上の軸受寿命があり、四球式EP試験で融着荷重(WL)が実施例1で400kgf、実施例2で500kgf、実施例3で315kgf、実施例4で600kgfと高く、融着荷重に至るまでの各荷重下におけるボールの摩耗痕径(mm)も小さくて、潤滑性が良好である。実施例1〜4のものは全体として耐熱性、耐摩耗性及び耐荷重性に優れ、かつ高温で長寿命を有する潤滑剤組成物であることが判る。
他方、比較例1〜3のものは軸受寿命試験において20時間、60時間の軸受寿命であり、四球式耐荷重(EP)試験で融着荷重(WL)が比較例1で315kgf、比較例2で250kg、比較例3で126kgfと低く、融着荷重(WL)に至る迄の各荷重下におけるボールの摩耗痕径(mm)が大きく、潤滑性能が不足していることが分かる。
【0051】
また、表3〜表12に示される実施例5〜実施例21は、実施例2のグリースに実施例3又は比較例4〜比較例12の他の増ちょう剤から形成したグリースの配合量を変えてそれぞれ混合したものである。実施例5は、実施例2と実施例3を9:1で混合したものであり、耐摩耗性がやや低いが許容限度内であり、摩擦係数は両者より良くなっている。実施例6は、実施例2と比較例4を9:1で混合したもので、両者単独より摩擦係数や耐摩耗性において優れている。実施例7と実施例8は、実施例2と比較例5を9:1と1:9で混合したもので、両者単独より摩擦係数や耐摩耗性において良好である。実施例9と実施例10は、実施例2と比較例6を9:1と1:9で混合したもので、両者単独より各々摩擦係数や耐摩耗性において良好である。実施例11は、実施例2と比較例7を9:1で混合したもので、両者単独より摩擦係数や耐摩耗性において優れている。実施例12と実施例13は、実施例2と比較例8を9:1と5:5で混合したもので、両者単独より各々摩擦係数や耐摩耗性において良好である。実施例14は、実施例2と比較例9を9:1で混合したもので、両者単独より摩擦係数において同等または良好であり、耐摩耗性において優れている。実施例15と実施例16は、実施例2と比較例10を9:1と5:5で混合したもので、両者単独より各々摩擦係数や耐摩耗性において良好である。実施例17、実施例18及び実施例19は、実施例2と比較例11を9:1、5:5及び1:9で混合したもので、両者単独より摩擦係数において同等または良好であり、耐摩耗性において実施例19は実施例2よりもやや低いが許容範囲内であり良好な結果となっている。実施例20と実施例21は、実施例2と比較例12を9:1と5:5で混合したもので、実施例21は、耐摩耗性において実施例2よりもやや低いが許容範囲内であり、その他はいずれも両者単独より良好な結果が得られている。
【0052】
そして、表13、表14にはフッ素油、第三リン酸カルシウムからなるグリースに、コハク酸誘導体、牛脂ジアミン・ジオレイン酸、ヤシジアミン、硫化オレイン酸、ステアリン酸・オレイン酸モノ・ジグリセライド、ソルビタントリステアレート、セバシン酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、セバシン酸ナトリウムとベンゾトリアゾールを併用したものなどを添加したもの(実施例22〜30)、及びカルシウムスルフォネート、亜鉛スルフォネート、ナフテン酸亜鉛を添加したもの(比較例13〜15)の効果を検討した結果を示しているが、実施例22〜30のものは、錆の発生が見られず防錆効果が高いことがわかる。それに対して、一般に知られている防錆剤である、カルシウムスルフォネート、亜鉛スルフォネート、ナフテン酸亜鉛では比較例13〜15に示すように錆の発生が見られ、防錆効果が得られないことが判る。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

【0066】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素油と、第三リン酸カルシウムを含有する潤滑剤組成物。
【請求項2】
フッ素油を含む全組成物に対して1〜40質量%の第三リン酸カルシウムを含む請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
上記フッ素油は、パーフルオロポリエーテル又はフルオロシリコーンの少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
ウレア化合物、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルカリ金属スルフォネート、アルカリ土類金属スルフォネート、アルミニウム石けん、アルミニウム複合石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、シリカエアロゲル、ポリテトラフルオロエチレンの増ちょう作用を有するものの少なくともいずれかが更に含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、界面活性剤、二塩基酸塩、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、チオカーバメートの中から選ばれる少なくとも1種が更に含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
上記有機酸誘導体がコハク酸誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
上記有機アミン誘導体がモノアミン、ジアミン或いはアミン塩であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
上記ジアミンがヤシジアミンであることを特徴とする請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
上記アミン塩が牛脂ジアミン・ジオレイン酸塩であることを特徴とする請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
上記硫化脂肪酸誘導体が硫化オレイン酸であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
上記界面活性剤が、グリセライド類、ソルビタン類又はしょ糖類であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
上記グリセライド類がステアリン酸・オレイン酸モノ・ジグリセライドであることを特徴とする請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
上記ソルビタン類がソルビタンステアレートであることを特徴とする請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
上記二塩基酸塩が、アルカリ金属塩或いはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
上記二塩基酸のアルカリ金属塩がセバシン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項14に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
上記ベンゾトリアゾール誘導体がベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤組成物。

【公開番号】特開2009−227958(P2009−227958A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217576(P2008−217576)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】