説明

潤滑油用未硫化カルボキシレート含有添加剤

【課題】BN保持、腐食性能、内部酸化、高温堆積物抑制、黒色スラッジ生成の抑制、熱安定性および潤滑油の他の清浄を改善するのに有用な潤滑油添加剤を提供する。
【解決手段】次の成分を含む潤滑油添加剤:(a)40%未満の炭化水素フェノール、(b)10乃至50%のアルカリ土類金属炭化水素フェネート、(c)15乃至60%のアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレート、および(d)0%乃至50%の有機希釈剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属塩の混合物(炭化水素フェネート/炭化水素サリチレート)と低減された量の未反応炭化水素フェノールとからなる、新規な潤滑油用の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、並びにそれを含む添加剤パッケージ、濃縮物および完成油組成物に関するものである。特には、本発明は、該炭化水素サリチレートが主として単芳香環炭化水素サリチレートである該混合物を含む添加剤に関する。該添加剤は、潤滑油の酸化防止性、高温堆積物抑制、BN保持、腐食抑制および黒色スラッジ抑制を改善する。また、本発明は一部では、該新規な添加剤の製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素フェネートおよび炭化水素サリチレートの製造については、当該分野ではよく知られている。
【0003】
特許文献1には、高塩基度アルカリ土類金属の硫化アルキルフェネートを基材とする清浄分散添加剤の製造が開示されている。これら添加剤は、アルキルフェノールの硫化、硫化アルキルフェノールのアルカリ土類金属塩基を用いた中和、次いで硫化アルキルフェネート中に分散したアルカリ土類金属塩基の炭酸塩化による過アルカリ化によって製造される。
【0004】
特許文献2には、硫化カルシウムアルキルサリチレートを基材とする清浄添加剤が開示されている。これら添加剤は、カリウムアルキルフェネートのカルボキシル化、塩化カルシウムによる交換、次いで石灰、カルボン酸およびアルキレングリコール又はアルキレングリコールのアルキルエーテルの存在下で、硫黄を用いて得られるカルシウムアルキルサリチレートの硫化によって製造される。
【0005】
特許文献3には、アルキルフェネートとアルキルサリチレートを基材とする過アルカリ化清浄分散添加剤が開示されている。これら添加剤は、酸と溶媒の存在下でアルカリ土類金属塩基を用いたアルキルフェノールの中和、溶媒の蒸留、カルボキシル化、グリコールと溶媒の存在下で硫黄およびアルカリ土類金属塩基による硫化および過アルカリ化、続いて炭酸塩化および濾過によって製造される。
【0006】
特許文献4には、特に新鮮な油中での泡立ち、混合性および分散性に関連した試験、および加水分解に対する安定性の試験において、これら添加剤の性能を実質的に改善することができる方法が開示されている。この方法は、カルボン酸の存在下で線状及び分枝鎖アルキルフェノール混合物のアルカリ土類金属塩基を用いた中和、アルキルフェネートの二酸化炭素の作用によるカルボキシル化、続いて硫化および過アルカリ化、次いで炭酸塩化、蒸留、濾過および大気中での脱気からなる。
【0007】
特許文献5には、アルカリ土類金属塩の混合物(アルキルフェネート/アルキルサリチレート)と未反応アルキルフェノールとからなる、未硫化のアルカリ金属を含まない清浄分散添加剤が開示されている。この添加剤は、酸化防止性、高温堆積物抑制および黒色スラッジ抑制を改善する。
【0008】
特許文献6及び特許文献7には、40%乃至60%のアルキルフェノール、10%乃至40%のアルカリ土類アルキルフェネート、および20%乃至40%のアルカリ土類単芳香環アルキルサリチレートを有する、未硫化のアルカリ金属を含まない清浄分散剤組成物、およびその製造方法が教示されている。この組成物は、単環アルキルサリチレートと二芳香環アルキルサリチレートのモル比が少なくとも8:1である限り、アルカリ土類二芳香環アルキルサリチレートを含んでいてもよい。この組成物は、アルキルフェノールの中和、得られたアルキルフェネートのカルボキシル化、およびカルボキシル化工程の生成物の濾過を含む三段法によって製造することができる。この方法により製造された清浄分散剤は、エンジン潤滑油組成物に使用して、酸化防止性、高温堆積物抑制および黒色スラッジ抑制を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3036971号明細書
【特許文献2】仏国特許第1563557号明細書
【特許文献3】仏国特許出願第2625220号明細書
【特許文献4】国際公開第WO95/25155号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第0933417号明細書
【特許文献6】米国特許第6162770号明細書
【特許文献7】米国特許第6262001号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規な潤滑油用の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、並びにそれを含む添加剤パッケージ、濃縮物および完成油組成物を提供する。該添加剤は、潤滑油の酸化防止性、高温堆積物抑制、BN保持、腐食抑制および黒色スラッジ抑制を改善する。また、本発明は一部では、該新規な添加剤の製造方法および使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルカリ土類金属塩の混合物(炭化水素フェネート/炭化水素サリチレート)と減量の未反応炭化水素フェノールとからなる、新規な潤滑油用の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、並びにそれを含む添加剤パッケージ、濃縮物および完成油組成物を提供するものである。特には、本発明は、該炭化水素サリチレートが主として単芳香環炭化水素サリチレートである該混合物を含む添加剤に関する。
【0012】
また、本発明は、炭化水素フェノールをアルカリ土類塩基を用いて、促進剤の存在下で中和して炭化水素フェネートを生成させることを含む、上記添加剤の製造方法も提供する。該促進剤は、少なくとも一種の炭素原子1乃至4個を含むカルボン酸からなることが好ましく、そして該中和工程を、アルカリ塩基の不在下で、ジアルコールの不在下でおよびモノアルコールの不在下で行うことが好ましい。中和工程の後には、中和工程で生成した炭化水素フェネートのカルボキシル化、そしてカルボキシル化工程の生成物からの出発炭化水素フェノールの分離が続く。
【0013】
炭化水素フェノール(ヒドロカルビルフェノール)は、線状及び/又は分枝鎖の炭化水素成分の混合物を含んでいてもよい。例えば、炭化水素フェノールは、完全に線状炭化水素フェノールから構成されていてもよいし、完全に分枝鎖炭化水素フェノールから構成されていてもよいし、あるいは両者の混合物から構成されていてもよい。好ましくは、炭化水素フェノールは、85%までの線状炭化水素フェノールを、分枝鎖炭化水素基が少なくとも9個の炭素原子を含む、少なくとも15%の分枝鎖炭化水素フェノールとの混合で含む。より好ましくは、炭化水素フェノールは、35%乃至85%の線状アルキルフェノールを15%乃至65%の分枝鎖アルキルフェノールとの混合で含むアルキルフェノールである。分枝鎖対線状アルキルフェノールの比は重量である。線状炭化水素基は、12乃至40個の炭素原子を含むことが好ましく、より好ましくは18乃至30個の炭素原子を含み、そして分枝鎖炭化水素フェノールが存在するならば、分枝鎖炭化水素基は少なくとも9個の炭素原子を含み、好ましくは9乃至24個の炭素原子、より好ましくは10乃至15個の炭素原子を含む。
【0014】
アルカリ土類塩基は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群より選ばれることが好ましい。
【0015】
カルボン酸は、ギ酸と酢酸の混合物であることが好ましく、より好ましくはギ酸と酢酸の重量で50/50混合物である。
【0016】
中和工程は、少なくとも200℃の温度で行うことが好ましく、より好ましくは少なくとも215℃である。反応の水を除去するために、水と共沸物を形成しうる如何なる溶媒も存在させないで、圧力を徐々に大気圧より低くする。使用する試薬の量は、下記のモル比に対応することが好ましい:
(1)アルカリ土類塩基/アルキルフェノールが0.2:1乃至0.7:1、より好ましくは0.3:1乃至0.5:1、および
(2)カルボン酸/アルキルフェノールが0.01:1乃至0.5:1、より好ましくは0.03:1乃至0.15:1。
【0017】
ある態様では、中和工程を、少なくとも240℃の温度で、そして徐々に圧力を大気圧より低くして240℃で7000Pa(70ミリバール)以下の圧力に達するようにして行う。
【0018】
中和工程で得られた炭化水素フェネートは、二酸化炭素を用いてカルボキシル化条件下で、少なくとも20モル%の出発炭化水素フェノールを炭化水素サリチレートに変換するためにカルボキシル化する。好ましくは、少なくとも22モル%の出発炭化水素フェノールを変換し、そしてこの変換を180℃と40℃の間の温度で、大気圧より上で15×105Pa(15バール)までの範囲内の圧力下で、1乃至8時間かけて起こす。
【0019】
より好ましくは、出発炭化水素フェノールはアルキルフェノールであり、そして少なくとも25モル%の出発アルキルフェノールを、二酸化炭素を用いて200℃に等しいかそれより高い温度で、4×105Pa(4バール)の圧力下で、アルキルサリチレートに変換する。
【0020】
カルボキシル化工程で生成した炭化水素サリチレートは、単芳香環炭化水素サリチレートと二芳香環炭化水素サリチレートの両方を含む。単芳香環炭化水素サリチレートと二芳香環炭化水素サリチレートのモル比は、少なくとも8:1であることが好ましい。
【0021】
次いで、カルボキシル化工程で生成した如何なる沈降物であれ除去するために、カルボキシル化工程の生成物を濾過することが好ましい。
【0022】
次に、カルボキシル化工程の生成物を、分離工程、例えば溶媒抽出、蒸留および薄膜濾過等にかけて、カルボキシル化工程の生成物から少なくとも約10%の出発炭化水素フェノールを分離する。好ましくは、少なくとも約30%乃至約55%の出発炭化水素フェノールを分離する。より好ましくは、少なくとも約45%乃至約50%の出発炭化水素フェノールをカルボキシル化工程の生成物から分離する。
【0023】
ひとたび出発炭化水素フェノールがカルボキシル化工程の生成物から分離されれば、該炭化水素フェノールは有利には、再利用して本発明の方法または他の任意の方法において出発物質として使用することができる。
【0024】
分離工程は、蒸留により行うことが好ましく、より好ましくは落下フィルム蒸留または短路蒸留により、最も好ましくはこすりつけフィルム蒸発器蒸留により行う。該蒸留は、
約150℃乃至約250℃の温度および約0.1乃至約4ミリバールの圧力で行い、より好ましくは約190℃乃至約230℃および約0.5乃至約3ミリバールで、最も好ましくは約195℃乃至約225℃および約1乃至約2ミリバールの圧力で行う。
【0025】
本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤は有利には、有効粘度改善量の有機希釈剤とブレンドすることができる。好ましくは、該希釈剤が約10重量%乃至約80重量%のブレンド生成物を構成するように、充分な量の希釈剤を添加する。より好ましくは、該希釈剤は約20重量%乃至約50重量%のブレンド生成物を構成する。好適な希釈剤としては、1種または2種基油、例えば100N基油;有機溶剤、例えばペンタン、ヘプタン、ベンゼンおよびトルエン等;および他の好適な有機化合物、例えば本発明の蒸留工程から有利に再生利用できる炭化水素フェノールを挙げることができる。
【0026】
この方法により製造された未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、以下の組成を有する:
(a)40%以下の炭化水素フェノール、
(b)10%乃至50%のアルカリ土類金属炭化水素フェネート、
(c)15%乃至60%のアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレート、および
(d)0%乃至50%の有機希釈剤。
【0027】
ある態様では、未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、0乃至35%の炭化水素フェノール、好ましくは0乃至30%の炭化水素フェノール、より好ましくは0乃至20%の炭化水素フェノール、最も好ましくは0乃至15%の炭化水素フェノールを含む。
【0028】
未硫化のカルボキシレート含有添加剤はまた、アルカリ土類金属二芳香環炭化水素サリチレートも含んでいてもよいが、単芳香環炭化水素サリチレートと二芳香環炭化水素サリチレートのモル比は少なくとも8:1である。
【0029】
本発明の方法により製造された未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、エンジン潤滑油組成物に使用することができ、該組成物は主要量の潤滑油、1%乃至30%の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、および好ましくは少なくとも一種の他の添加剤を含む。使用することができる他の添加剤の例としては、金属含有清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、極圧剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、および消泡剤を挙げることができる。
【0030】
本発明の方法により製造された未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、少なくとも一種の下記成分と組み合わせてエンジン潤滑油組成物に使用したときに、特に有用であることが分かっている:フェネート、フェネート−ステアレート、サリチレート、およびカルボキシ−ステアレート。該組成物においてフェネートと未硫化のカルボキシレート含有添加剤との質量比は、1:0.035乃至1:98であることが好ましく、より好ましくは1:0.239乃至1:14であり、最も好ましくは1:0.451乃至1:7.5である。該組成物中のフェネート−ステアレートと未硫化のカルボキシレート含有添加剤の質量比は、1:0.051乃至1:126であることが好ましく、より好ましくは1:0.353乃至1:12であり、最も好ましくは1:0.667乃至1:9.7である。該組成物中のサリチレートと未硫化のカルボキシレート含有添加剤の質量比は、1:0.026乃至1:120であることが好ましく、より好ましくは1:0.178乃至1:17であり、最も好ましくは1:0.335乃至1:9.2である。サリチレートは、高過塩基性サリチレートであることが好ましい。該組成物中のカルボキシ−ステアレートと未硫化のカルボキシレート含有添加剤の質量比は、1:0.023乃至1:105であることが好ましく、より好ましくは1:0.156乃至1:15であり、最も好ましくは1:0.294乃至1:8.1である。
【0031】
また、本発明は、潤滑粘度の基油、0.1%乃至6%の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、および好ましくは少なくとも一種の他の添加剤を含む、濾過性が改善された油圧作動油組成物も提供する。
【0032】
また、本発明は、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、有機希釈剤、および好ましくは少なくとも一種の他の添加剤を含有する濃縮物も提供する。有機希釈剤は、濃縮物の20%乃至80%を構成する。使用することができる他の添加剤の例としては、金属含有清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、極圧剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、および消泡剤を挙げることができる。
【発明の効果】
【0033】
船舶用途においては、潤滑油に本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を有効量で添加することにより、潤滑油の黒色スラッジ堆積物抑制性能、高温堆積物抑制性能、粘度増加抑制性能および抗乳化性能を改善することができる。
【0034】
自動車用途においては、潤滑油に本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を有効量で添加することにより、潤滑油の高温堆積物抑制性能、腐食抑制性能および酸化防止性能を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最も広い観点では、本発明は、炭化水素フェノール、アルカリ土類金属炭化水素フェネートおよびアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートからなり、BN保持、腐食性能、内部酸化、高温堆積物抑制性能、黒色スラッジ抑制性能、熱酸化安定性および潤滑油の他の性状を改善するのに有用な、未硫化のカルボキシレート含有添加剤を提供する。
【0036】
本発明について更に詳細に述べる前に、以下の用語について定義する:
【0037】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限りは以下の意味を有する:
【0038】
「炭化水素基」は、アルキル基、またはアルケニル基を意味する。
【0039】
「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を意味する。
【0040】
「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物を意味する。
【0041】
「サリチレート」は、サリチル酸の金属塩を意味する。
【0042】
「アルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレート」は、各アルカリ土類金属塩基カチオン当り炭化水素サリチル酸アニオンが1個だけ存在する、炭化水素サリチル酸のアルカリ土類金属塩を意味する。
【0043】
「アルカリ土類金属単芳香環アルキルサリチレート」は、炭化水素基がアルキル基であるアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートを意味する。
【0044】
「アルカリ土類金属二芳香環炭化水素サリチレート」は、各アルカリ土類金属塩基カチオン当り炭化水素サリチル酸アニオンが2個存在する、炭化水素サリチル酸のアルカリ土
類金属塩を意味する。
【0045】
「アルカリ土類金属二芳香環アルキルサリチレート」は、炭化水素基がアルキル基であるアルカリ土類金属二芳香環炭化水素サリチレートを意味する。
【0046】
「炭化水素フェノール」は、1個以上の炭化水素置換基を持つフェノールを意味し、少なくとも1個の炭化水素置換基は、フェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を含む。
【0047】
「アルキルフェノール」は、1個以上のアルキル置換基を持つフェノールを意味し、少なくとも1個のアルキル置換基は、フェノールに油溶性を付与するのに充分な数の炭素原子を含む。
【0048】
「フェネート」は、フェノールの金属塩を意味する。
【0049】
「炭化水素フェネート」は、炭化水素フェノールの金属塩を意味する。
【0050】
「アルカリ土類金属炭化水素フェネート」は、炭化水素フェノールのアルカリ土類金属塩を意味する。
【0051】
「アルカリ土類金属アルキルフェネート」は、アルキルフェノールのアルカリ土類金属塩を意味する。
【0052】
「フェネート−ステアレート」は、ステアリン酸またはその無水物又は塩で処理したフェネートを意味する。
【0053】
「長鎖カルボン酸」は、平均炭素原子数が13〜28のアルキル基を持つカルボン酸を意味する。アルキル基は線状、分枝鎖またはそれらの混合物であってもよい。
【0054】
「カルボキシ−ステアレート」は、長鎖カルボン酸、その無水物又は塩で処理したアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートを意味する。
【0055】
「塩基価」または「BN」は、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。よって、BN価が高いほど生成物のアルカリ性が強く、従って保有するアルカリ度が大きいことを反映している。試料のBNは、ASTM試験番号D2896またはその他任意の同等の方法により決定することができる。
【0056】
特に断わらない限り、百分率は全て重量パーセントである。
【0057】
【化1】

【0058】
[潤滑添加剤組成物の製造]
A)中和工程
まず最初の工程では、炭化水素フェノールを促進剤の存在下で中和する。ある態様では、アルカリ土類金属塩基を用いて少なくとも一種のC1〜C4カルボン酸の存在下で、該炭化水素フェノールを中和する。この反応は、アルカリ塩基の不在下で、かつジアルコールまたはモノアルコールの不在下で行うことが好ましい。
【0059】
炭化水素フェノールは、100%までの線状炭化水素基、100%までの分枝鎖炭化水素基、あるいは線状と分枝鎖両方の炭化水素基を含んでいてもよい。線状炭化水素基は、存在するとすればアルキルであることが好ましく、そして線状アルキル基は炭素原子12乃至40個を含むことが好ましく、より好ましくは炭素原子18乃至30個を含む。分枝鎖炭化水素基は、存在するとすればアルキルであることが好ましく、そして炭素原子少なくとも9個を含み、好ましくは炭素原子9乃至24個、より好ましくは炭素原子10乃至15個を含む。ある態様では、炭化水素フェノールは、85%までの線状炭化水素フェノール(好ましくは、少なくとも35%の線状炭化水素フェノール)を、少なくとも15%の分枝鎖炭化水素フェノールとの混合で含む。
【0060】
少なくとも35%の長鎖線状アルキルフェノール(炭素原子数18〜30)を含むアルキルフェノールの使用は特に魅力がある、というのは、長い線状アルキル鎖が添加剤の潤滑油中での混合性や溶解性を促すからである。しかしながら、アルキルフェノール中に比較的重質な線状アルキル基が存在することは、後者を分枝鎖アルキルフェノールよりも反応しにくくし、よって、アルカリ土類金属塩基で中和をもたらすのにずっと厳しい反応条件を使用する必要がある。
【0061】
分枝鎖アルキルフェノールは、フェノールを分枝鎖オレフィン、一般にはプロピレンから発生するオレフィンと反応させることにより得ることができる。それらは一置換異性体の混合物からなり、置換基の大多数はパラ位にあり、極僅かにオルト位にあり、そしてメタ位には殆ど無い。フェノール機能に実質的に立体障害が無いことになるので、そのことはアルカリ土類金属塩基に対して相対的に反応しやすくする。
【0062】
一方、線状アルキルフェノールは、フェノールを線状オレフィン、一般にはエチレンから発生するオレフィンと反応させることにより得ることができる。それらは一置換異性体の混合物からなり、線状アルキル置換基のオルト、パラおよびメタ位の割合はもっと均一に分布している。相当な立体障害のために、ずっと近接した一般に重質なアルキル置換基の存在のためにフェノール機能が利用し難くなるので、このことはアルカリ土類金属塩基に対して反応しにくくする。勿論、パラ置換基の量を増加させ、その結果アルカリ土類金属塩基に対する相対的な反応性を高める何等かの分枝を持つアルキル置換基を、線状アルキルフェノールが含んでいてもよい。
【0063】
この工程を行うのに使用することができるアルカリ土類金属塩基としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたはストロンチウムの酸化物又は水酸化物を挙げることができ、特には酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよびそれらの混合物である。ある態様では、消石灰(水酸化カルシウム)が好ましい。
【0064】
この工程で使用される促進剤は、中和を増大させる物質なら如何なるものであってもよい。例えば、促進剤は多価アルコール、ジアルコール、モノアルコール、エチレングリコールまたは任意のカルボン酸であってもよい。好ましくは、カルボン酸を使用する。より好ましくは、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸を含むC1〜C4カルボン酸をこの工程では使用し、単独で用いても混合物で用いてもよい。酸の混合物を使用することが好ましく、最も好ましくはギ酸/酢酸混合物である。ギ酸/酢酸のモル比は、0.2:1乃至100:1であるべきで、好ましくは0.5:1と4:1の間、そして最も好ましくは1:1である。カルボン酸は、アルカリ土類金属塩基が無機試薬から有機試薬に移動するのを助長する、移動剤として作用する。
【0065】
中和操作は、少なくとも200℃で行い、好ましくは少なくとも215℃、そしてより好ましくは少なくとも240℃で行う。圧力は、反応の水を留去するために徐々に大気圧より低くする。従って、水と共沸物を形成しうる如何なる溶媒も存在させないで中和を行うべきである。好ましくは、圧力を7000Pa(70mbars)以下まで下げる。
【0066】
使用される試薬の量は、下記のモル比に対応するべきである:
(1)アルカリ土類塩基/炭化水素フェノールが0.2:1乃至0.7:1、好ましくは0.3:1乃至0.5:1、および
(2)カルボン酸/炭化水素フェノールが0.01:1乃至0.5:1、好ましくは0.03:1乃至0.15:1。
【0067】
この中和工程の最後に、得られた炭化水素フェネートを少なくとも215℃の温度で、そして5000と105Paの間(0.05と1.0バールの間)の絶対圧で、15時間を越えない期間維持することが好ましい。より好ましくは、この中和工程の最後に得られた炭化水素フェネートを、10000と20000Paの間(0.1と0.2バールの間)の絶対圧で2乃至6時間維持する。
【0068】
充分に高い温度で操作を行い、反応器の圧力を徐々に大気圧より低くするならば、この反応中に生成する水と共沸物を形成する溶媒を添加する必要無しに、中和反応は行われる。
【0069】
B)カルボキシル化工程
カルボキシル化工程は、先の中和工程で発生した反応媒体に二酸化炭素を単に吹き込むことにより行い、そして少なくとも20モル%の出発炭化水素フェノールを炭化水素サリチレートに変換する(電位差計での定量によりサリチル酸として測定)まで続ける。生成するアルキルサリチレートの如何なる脱カルボキシルも避けるために、加圧下で行わなければならない。
【0070】
好ましくは、二酸化炭素を用いて180℃と240℃の間の温度で、大気圧より上で15×105Pa(15バール)までの範囲内の圧力下で、1乃至8時間かけて、少なくとも22モル%の出発炭化水素フェノールを炭化水素サリチレートに変換する。
【0071】
一つの変形によれば、二酸化炭素を用いて200℃に等しいかそれより高い温度で、4×105Pa(4バール)の圧力下で、少なくとも25モル%の出発炭化水素フェノールを炭化水素サリチレートに変換する。
【0072】
C)濾過工程
カルボキシル化工程の生成物を有利には濾過してもよい。濾過工程の目的は、以前の工程の間に生成した可能性があり、そして潤滑油循環路に取り付けられたフィルタの目詰りを引き起こしうる沈降物、特に結晶性カルシウムカーボネートを除去することにある。
【0073】
D)分離工程
カルボキシル化工程の生成物から、少なくとも10モル%の出発炭化水素フェノールを分離する。蒸留を用いて分離を遂行することが好ましい。より好ましくは蒸留は、こすりつけフィルム蒸発器内で約150℃乃至約250℃の温度で、そして約0.1乃至約4ミリバールの圧力で行い、より好ましくは約190℃乃至約230℃、約0.5乃至約3ミリバールで、最も好ましくは約195℃乃至約225℃、約1乃至約2ミリバールの圧力で行う。少なくとも10モル%の出発炭化水素フェノールを分離する。より好ましくは、少なくとも30モル%の出発炭化水素フェノールを分離する。最も好ましくは、55モル%までの出発炭化水素フェノールを分離する。分離した炭化水素フェノールはその後、再利用して、新規な方法または他の任意の方法において出発物質として使用することができる。
【0074】
[未硫化のカルボキシレート含有添加剤]
本発明の方法により生成した、未硫化のカルボキシレート含有添加剤の特徴は、他の経路で製造されたものよりもずっと多い量のアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートと少ない量の炭化水素フェノールを含む、その興味深い組成にある。炭化水素基がアルキル基である場合には、未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、下記の組成を有する:
(a)40%以下のアルキルフェノール、
(b)10%乃至50%のアルカリ土類金属アルキルフェネート、および
(c)15%乃至60%のアルカリ土類金属単芳香環アルキルサリチレート。
【0075】
他の方法で製造されたアルカリ土類金属アルキルサリチレートと違って、この未硫化のカルボキシレート含有添加剤の組成の特徴は、アルカリ土類金属二芳香環アルキルサリチレートを少量しか含まないことにある。単芳香環アルキルサリチレートと二芳香環アルキルサリチレートのモル比は、少なくとも8:1である。
【0076】
[赤外分光法による生成物の特徴]
本発明の未硫化カルボキシレート含有添加剤を特徴付けるために、芳香環面外のC−H変角振動を使用した。
【0077】
芳香環の赤外スペクトルは、675−870cm-1領域に強い面外C−H変角振動の透過率バンドを示し、正確な振動数は置換基の数と位置に依存する。オルト−二置換化合物では、透過率バンドは735−770cm-1に生じる。パラ−二置換化合物では、透過率バンドは810−840cm-1に生じる。
【0078】
本発明に関連する参照化学構造の赤外スペクトルは、面外C−H変角振動の透過率バンドが、オルト−アルキルフェノールでは750±3cm-1、サリチル酸では760±2cm-1、そしてパラ−アルキルフェノールでは832±3cm-1に生じることを示している。
【0079】
当該分野で知られているアルカリ土類アルキルフェネートは、赤外面外C−H変角振動の透過率バンドが750±3cm-1と832±3cm-1にある。当該分野で知られているアルカリ土類アルキルサリチレートは、赤外面外C−H変角振動の透過率バンドが763±3cm-1と832±3cm-1にある。
【0080】
本発明の未硫化カルボキシレート含有添加剤は、アルキルサリチレートが存在する別の証拠はあっても、基本的に763±3cm-1に面外C−H変角振動を示さない。この際立った特徴については充分に解明されていない。しかしながら、単芳香環アルキルサリチレートの特別な構造がこの面外C−H変角振動をどうにかして妨げている、という仮説を立てることができる。この構造では、カルボン酸機能は環状構造に携わっていて、よって芳香環付近では立体障害の増大を生じて、隣接する水素原子の自由な動きを制限しているのかもしれない。この仮説は、酸性にした生成物(カルボン酸機能はもはや環状構造に携わっていなく、よって回転できる)の赤外スペクトルが、763±3cm-1に面外C−H透過率バンドを示すという事実によって支持される。
【0081】
従って、本発明の未硫化カルボキシレート含有添加剤の特徴は、約763±3cm-1の面外C−H変角振動と832±3cm-1の面外C−H変角振動との赤外透過率バンドの比が、0.1:1以下であることにある。
【0082】
この方法により生成した未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、硫化していないにもかかわらず、硫化生成物よりも改善された高温堆積物抑制性能を与える。この添加剤は、アルカリ金属を含まないので、例えば船用エンジン油など、アルカリ金属の存在が有害な影響を及ぼすことが証明されている用途において、清浄分散剤として用いることができる。
【0083】
[清浄剤]
上述した方法により生成した未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、清浄剤を含む他の添加剤と組み合わせたときに、内部酸化および腐食抑制性能を改善することが分かっている。
【0084】
清浄剤は、コロイド状懸濁液中に不溶性粒子を保持することで、ワニス、リング域堆積物および錆の発生を抑制するのを助長する。金属含有(または、灰分形成)清浄剤は、堆積物を抑制する清浄剤としても、酸中和剤またはさび止め添加剤としても機能し、それにより摩耗および腐食を低減し、そしてエンジン寿命を延ばす。清浄剤は一般に、長い疎水性尾と共に極性頭部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。塩は実質的に化学量論量の金属を含むことができ、その場合に、塩は通常は正塩または中性塩とみなされ、一般に全塩基価は(ASTM D2896による測定で)0乃至10である。酸化物または水酸化物などの過剰の金属化合物を二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることにより、多量の金属塩基を含ませて過塩基性清浄剤を生成させることも可能である。そのような過塩基性清浄剤の全塩基価は、約15乃至30(低過塩基性)、31乃至170(中過塩基性)、171乃至400(高過塩基性)、または400より上(超高過塩基性)であってもよい。
【0085】
使用することができる清浄剤としては、フェネート、過塩基性フェネートおよび硫化フェネート;フェネート−カルボキシレートおよび過塩基性フェネート−カルボキシレート;カルボキシ−ステアレートおよび過塩基性カルボキシ−ステアレート;並びに低、中及び高過塩基性サリチレートを挙げることができる。好適な金属としては、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムを挙げることができる。最も普通に使用される金属はカルシウムおよびマグネシウムであり、両方とも潤滑剤に使用される清浄剤中に存在していてもよい。
【0086】
[フェネートの製造]
本発明に使用することができるフェネートは一般に、フェネートの炭化水素置換基又は置換基群が好ましくは一種以上の分枝鎖又は非分枝鎖アルキル基である、炭化水素置換フェネートである。好適なアルキル基は炭素原子を4乃至50個、好ましくは9乃至28個含む。特に好適なアルキル基は、プロピレン四量体から誘導されたC12基である。炭化水素置換フェネートは一般に硫化されている。
【0087】
本発明の一つの好ましい態様によれば、希釈油、グリコールおよびハロゲン化物イオンの存在下で、グリコールは沸点が150℃以上のアルコールとの混合物の状態で存在させて、硫化アルキルフェノールをアルカリ土類塩基で中和し、アルコール、グリコール、水および沈降物を除去し、反応媒体をハロゲン化物イオンの存在下でCO2で炭酸塩化し、そして再度アルコール、グリコール、水および沈降物を除去することによって、アルカリ土類金属の過塩基性硫化アルキルフェネートを製造する。
【0088】
別の好ましい態様では、下記の工程からなる方法により過塩基性硫化炭化水素フェネートを製造する:
(a)硫化アルキルフェノールを、アルカリ土類塩基を用いて、希釈油、グリコールおよびハロゲン化物イオンの存在下で、グリコールは沸点が150℃以上のアルコールとの混合物の状態で存在させて中和する、
(b)媒体から、好ましくは蒸留によりアルコール、グリコールおよび水を除去する、
(c)媒体から、好ましくは濾過により沈降物を除去する、
(d)得られた媒体をハロゲン化物イオンの存在下でCO2で炭酸塩化する、そして
(e)媒体から、好ましくは蒸留によりアルコール、グリコールおよび水を除去する。
【0089】
上記の方法に使用できるアルカリ土類塩基としては、バリウム、ストロンチウムおよびカルシウムの酸化物及び水酸化物を挙げることができ、特には石灰である。この方法に使用できる沸点が150℃以上のアルコールとしては、エチルヘキサノール、オキソアルコール、デシルアルコール、トリデシルアルコールなどのC6〜C14のアルコール;2−ブトキシエタノール、2−ブトキシプロパノールなどのアルコキシアルコール;およびジプロピレングリコールのメチルエーテルを挙げることができる。この方法に使用できるアミンとしては、ポリアミノアルカン、好ましくはポリアミノエタン、特にはエチレンジアミン、およびアミノエーテル、特にはトリス(3−オキサ−6−アミノ−ヘキシル)アミンを挙げることができる。この方法に使用できるグリコールとしては、アルキレングリコール、特にはエチレングリコールが挙げられる。この方法に用いられるハロゲン化物イオンは好ましくは、塩化アンモニウムあるいは塩化カルシウムや塩化亜鉛などの金属塩化物の形で加えることができるCl-イオンである。
【0090】
上記方法での使用に適した希釈油としては、ナフテン系油および混合油が挙げられ、好ましくはニュートラル100油などのパラフィン系油である。使用される希釈油の量は、最終生成物の油の量が最終生成物の約25重量%乃至約65重量%、好ましくは約30重量%乃至約50重量%を占めるような量である。
【0091】
以上に概説した方法については、米国特許第4514313号にもっと詳しく記載されていて、その内容も本出願の記載内容とする。
【0092】
[フェネート−カルボキシレートの製造]
本発明に使用することができるフェネート−カルボキシレートは一般に、フェネートの炭化水素置換基又は置換基群が好ましくは一種以上の分枝鎖又は非分枝鎖アルキル基である、炭化水素置換フェネート−カルボキシレートである。好適なアルキル基は炭素原子を4乃至50個、好ましくは9乃至28個含む。特に好適なアルキル基は、プロピレン四量体から誘導されたC12基である。炭化水素置換フェネート−カルボキシレートは硫化されていてもよいし、あるいは硫化されていなくてもよい。
【0093】
過塩基性炭化水素フェネート−カルボキシレートは、過塩基化の前、間又は後に長鎖カルボン酸(好ましくは、ステアリン酸)、その無水物又は塩で処理した過塩基性炭化水素フェネートから製造する。その方法は、炭化水素フェネート、少なくとも一種の溶媒、金属水酸化物、金属塩化物水溶液、および炭素原子1乃至5個を含むアルキル多価アルコールの混合物を、過塩基化反応条件下で二酸化炭素と接触させることからなる。固体金属塩化物の代わりに金属塩化物水溶液を使用することは、生成物の粘度を低下させる。金属は、アルカリ土類金属であることが好ましく、最も好ましくはカルシウムである。アルキル多価アルコールは、エチレングリコールであることが好ましい。
【0094】
好ましい態様では、炭化水素フェネートを過塩基化し、そしてフェネートを(過塩基化の前、間又は後に)長鎖カルボン酸(好ましくは、ステアリン酸)、その無水物又は塩で処理することにより、過塩基性炭化水素フェネート−カルボキシレートを製造する。
【0095】
過塩基化工程では、炭化水素フェネート(硫化であっても未硫化であってもよい)、少なくとも一種の溶媒、金属水酸化物、金属塩化物水溶液、および炭素原子1乃至5個を含むアルキル多価アルコールからなる混合物を、過塩基化反応条件下で二酸化炭素と反応させる。過塩基化反応条件としては、250乃至375°Fの温度でほぼ大気圧が挙げられる。
【0096】
過塩基性炭化水素フェネートは、硫化アルキルフェネートであることが好ましい。金属は、アルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくはカルシウムである。アルキル多価アルコールは、エチレングリコールであることが好ましい。
【0097】
カルボキシレート処理(長鎖カルボン酸、その無水物又は塩での処理)は、過塩基化工程の前、間又は後に起こすことができる。長鎖カルボン酸、その無水物又は塩での処理を過塩基化工程との関係でいつ起こすかは、重要なことではない。
【0098】
フェネートは硫化してもよいし、あるいは硫化しなくてもよい。好ましくは、フェネートを硫化する。フェネートを硫化するならば、過塩基化より前のいつでも硫化工程を起こすことができる。より好ましくは、過塩基化工程より前でカルボキシレート処理の後にフェネートを硫化する。
【0099】
以上に概説した方法については、米国特許第5942476号に更に詳細に記載されていて、その内容も本出願の記載内容とする。
【0100】
[サリチレートの製造]
サリチレートの製造については当該分野ではよく知られている。本発明に使用することができる好ましいサリチレートとしては、多価又は一価金属、より好ましくは一価金属、最も好ましくはカルシウムの塩を含む中及び高過塩基性サリチレートを挙げることができる。本明細書で使用するとき、中過塩基性(MOB)は、TBNが約31乃至170のサリチレートを含むことを意味する。高過塩基性(HOB)は、TBNが約171乃至400のサリチレートを含むことを意味する。超高過塩基性(HHOB)は、TBNが400を越えるサリチレートを含むことを意味する。
【0101】
ある態様では、サリチレートは例えば、フェノール、オルト−アルキルフェノールまたはパラ−アルキルフェノールから出発して、アルキル化、カルボキシル化および塩形成により製造することができる。好ましく選択されるアルキル化剤は、分子に炭素原子が12個以上あるオレフィンまたはオレフィン混合物である。酸活性クレーは、フェノールおよびオルト及びパラ−アルキルフェノールのアルキル化に好適な触媒である。用いられる触媒の量は、アルキル化剤とアルキル化されるフェノールの重量の合計に関して、一般には1−10重量%であり、特には3−7重量%である。アルキル化は、100と250℃の間、特には125と225℃の間の温度で行うことができる。
【0102】
フェノールまたはオルト又はパラ−アルキルフェノールの経路で製造したアルキルフェノールは、当該分野ではよく知られた技術により、対応するアルキルサリチル酸に変換することができる。例えば、アルキルフェノールを苛性アルカリのアルコール溶液によって対応するアルキルフェネートに変換し、そして後者を約140℃、10乃至30気圧の圧力でCO2を用いて処理する。そのようにして得られたアルキルサリチレートから、例えば30%硫酸によってアルキルサリチル酸を遊離することができる。
【0103】
過塩基性サリチレートの製造では、アルキルサリチル酸を過剰量の金属化合物、例えばCa(OH)2の形のカルシウムで処理することができる。
【0104】
例えば、アルキルサリチル酸を1.6当量のCO2を導入しながら、Ca(OH)2の形の4当量のカルシウムで処理することができる。
【0105】
中及び過塩基性サリチレートの製造については、米国特許第4810398号および英国特許第1146925号、第790473号及び第786167号に更に詳細に記載されていて、その内容も本出願の記載内容とする。
【0106】
[カルボキシ−ステアレートの製造]
本発明に使用することができるカルボキシ−ステアレートは一般に、長鎖カルボン酸、その無水物又は塩で処理したアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートである。
【0107】
カルボキシ−ステアレートは、アルカリ土類金属単芳香環サリチレート、少なくとも一種の溶媒およびアルカリ土類金属水酸化物の混合物から製造する。アルコールのアルキル基の炭素原子が1乃至5個であるアルキル多価アルコールの存在下で、混合物を二酸化炭素と接触させることにより、混合物を過塩基化する。そのような使用できるアルキル多価アルコールの一種は、エチレングリコールである。
【0108】
以上に概説した方法については、米国特許第6348438号に更に詳細に記載されていて、その内容も本出願の記載内容とする。
【0109】
[潤滑粘度の基油]
そのような組成物に使用される潤滑粘度の基油は、内燃機関のクランクケースでの使用に適した粘度の鉱油であっても合成油であってもよい。クランクケース基油は通常は粘度が、0°F(−18℃)で約1300cSt乃至210°F(99℃)で3cStである。基油は、合成または天然の原料から誘導することができる。本発明で基油として使用される鉱油としては、パラフィン系、ナフテン系、および通常潤滑油組成物に使用されるその他の油を挙げることができる。合成油としては、炭化水素合成油と合成エステルの両方を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を持つアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものは、C6〜C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸と、モノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。
【0110】
鉱油と合成油のブレンドも有用である。例えば、10乃至25%の水素化1−デセン三量体と75乃至90%の150SUS(100°F)鉱油のブレンドは、優れた潤滑油基材になる。
【0111】
[その他の添加剤成分]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の幾つかの例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定するものではない:
【0112】
(1)無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル。
【0113】
(2)酸化防止剤:
(a)フェノール型酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。
(b)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミン。
(c)その他の型:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、モリブデンオキシスルフィドコハク酸イミド錯体、およびメチレンビス(ジブチル−ジチオカルバメート)。
【0114】
(3)さび止め添加剤(さび止め剤)
(a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
(b)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0115】
(4)抗乳化剤:アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0116】
(5)極圧剤(EP剤):ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アリール亜鉛、第一級アルキルおよび第二級アルキル型)、硫化油、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0117】
(6)摩擦緩和剤:脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、およびその他のエステル。
【0118】
(7)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機リンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0119】
(8)粘度指数向上剤:ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数向上剤。
【0120】
(9)流動点降下剤:ポリメチルメタクリレート。
【0121】
(10)消泡剤:アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0122】
(11)金属清浄剤:硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0123】
[潤滑油組成物]
本発明の方法により製造された未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、エンジン潤滑油組成物に清浄性を付与するゆえに有用なものである。そのような潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油と、有効量の、一般には潤滑油組成物の全重量に基づき約1重量%乃至約30重量%の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤とを含有する。
【0124】
自動車用ディーゼル及びガソリンエンジン並びに船用エンジンの用途において、潤滑油に有効量の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を添加すると、その潤滑油の清浄性が改善される。そのような組成物は往々にして、II族金属清浄剤および他の添加剤と組み合わせて使用される。
【0125】
本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を含む有効量の潤滑油で船用エンジンを潤滑にすると、黒色スラッジ堆積物の生成を抑制することができる。また、船舶用途では、その潤滑油の高温堆積物の生成の抑制性能、および抗乳化性能も改善される。
【0126】
自動車用途では、潤滑油に有効量の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を添加すると、その潤滑油の高温堆積物の生成の抑制性能、腐食抑制性能および酸化防止性能が改善される。
【0127】
ある態様では、エンジン潤滑油組成物は、下記の成分を含む:
(a)主要量の潤滑粘度の基油、
(b)1%乃至30%の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、
(c)0%乃至20%の少なくとも一種の無灰分散剤、
(d)0%乃至5%の少なくとも一種のジチオリン酸亜鉛、
(e)0%乃至10%の少なくとも一種の酸化防止剤、
(f)0%乃至1%の少なくとも一種の消泡剤、および
(g)0%乃至20%の少なくとも一種の粘度指数向上剤。
【0128】
別の態様では、エンジン潤滑油組成物は、上記の成分および0%乃至30%の金属含有清浄剤を含む。
【0129】
また別の態様では、上記成分の混合物をブレンドすることによりエンジン潤滑油組成物を製造する。その方法により製造された潤滑油組成物は、成分が相互作用しうるために、初期混合物とは若干異なる組成を有することがある。成分は、任意の順序でブレンドすることができ、また成分の組合せとしてブレンドすることもできる。
【0130】
[油圧作動油組成物]
濾過性が改善された油圧作動油組成物を形成することができ、本発明の油圧作動油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油、0.1重量%乃至6重量%の本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤、および好ましくは少なくとも一種の他の添加剤を含む。
【0131】
[添加剤濃縮物]
添加剤濃縮物も、本発明の範囲に包含される。本発明の濃縮物は、本発明の化合物又は化合物混合物を、前に開示した添加剤の少なくとも一種と一緒に含有する。一般に濃縮物は、輸送や貯蔵の間の取り扱いを容易にするのに充分な量の有機希釈剤を含む。
【0132】
濃縮物の20%乃至80%は、有機希釈剤である。濃縮物の0.5%乃至80%は、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤である。未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、単芳香環炭化水素サリチレートを含み、おそらくは炭化水素フェノールと炭化水素フェネートも含む。濃縮物の残部は他の添加剤からなる。
【0133】
使用することができる好適な有機希釈剤としては、「潤滑粘度の基油」と題した節で前述したような鉱油または合成油が挙げられる。有機希釈剤は、100℃粘度が約1乃至約20cStであることが好ましい。
【0134】
[添加剤パッケージの組成例]
以下は、各種の用途で使用することができる添加剤パッケージの代表的な組成例である。これらの代表的な組成例には、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤が用いられる。未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、単芳香環炭化水素サリチレートを含み、おそらくは炭化水素フェノールと炭化水素フェネートも含んでいる。未硫化のカルボキシレート含有添加剤は、所望とする最終生成物のBNに応じて、他の金属含有清浄剤と一緒に使用してもよいし、あるいは該清浄剤無しで使用してもよい。下記の百分率は、プロセス油も希釈油も一切含まないが、所望のBNを達成するのに充分な量の金属含有清浄剤を含む(別の種類の金属清浄剤を含む)、活性成分の量に基づいている。これらの組成例は本発明を説明するために記されるのであって、本発明を限定するものではない。
【0135】
I)船用ディーゼルエンジン油
1)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 65%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
潤滑粘度の油 30%
2)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 65%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 5%
潤滑粘度の油 30%
3)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 60%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 5%
潤滑粘度の油 30%
4)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 65%
フェノール型酸化防止剤 10%
潤滑粘度の油 25%
5)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 55%
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤 15%
潤滑粘度の油 30%
6)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 65%
フェノール型酸化防止剤 5%
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤 5%
潤滑粘度の油 25%
7)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 60%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
フェノール型酸化防止剤 5%
潤滑粘度の油 30%
8)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 60%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 5%
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤 10%
潤滑粘度の油 25%
9)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 55%
他の添加剤 25%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛
アルケニルコハク酸エステル無灰分散剤
フェノール型酸化防止剤
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤
潤滑粘度の油 30%
【0136】
II)自動車用エンジン油
1)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 25%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 35%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 10%
潤滑粘度の油 30%
2)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 40%
第二級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
ジチオカルバメート型酸化防止剤 5%
潤滑粘度の油 30%
3)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 35%
第二級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
フェノール型酸化防止剤 5%
潤滑粘度の油 35%
4)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 30%
第二級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
ジチオカルバメート型耐摩耗剤 5%
潤滑粘度の油 40%
5)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
コハク酸イミド無灰分散剤 30%
第二級アルキルジチオリン酸亜鉛 5%
モリブデン含有耐摩耗剤 5%
潤滑粘度の油 40%
6)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤 30%
他の添加剤 10%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛
第二級アルキルジチオリン酸亜鉛
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤
ジチオカルバメート型耐摩耗剤
潤滑粘度の油 40%
7)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 60%
他の添加剤 10%
フェノール型酸化防止剤
アルキル化ジフェニルアミン型酸化防止剤
ジチオカルバメート型耐摩耗剤
抗乳化剤
ホウ素含有摩擦緩和剤
潤滑粘度の油 30%
【0137】
III)油圧作動油
1)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 50%
他の添加剤 25%
フェノール型酸化防止剤
リン含有極圧剤
トリアゾール型腐食防止剤
抗乳化剤
非イオン性さび止め剤
潤滑粘度の油 5%
2)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 10%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 40%
他の添加剤 47%
フェノール型酸化防止剤
硫黄含有極圧剤
トリアゾール型腐食防止剤
抗乳化剤
非イオン性さび止め剤
潤滑粘度の油 3%
3)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 10%
リン含有極圧剤 40%
フェノール型酸化防止剤 15%
他の添加剤 25%
ジフェニルアミン型酸化防止剤
硫黄含有極圧剤
トリアゾール型腐食防止剤
抗乳化剤
非イオン性さび止め剤
潤滑粘度の油 10%
4)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 20%
リン含有極圧剤 30%
他の添加剤 45%
ジフェニルアミン型酸化防止剤
硫黄含有極圧剤
トリアゾール型腐食防止剤
抗乳化剤
非イオン性さび止め剤
潤滑粘度の油 5%
【0138】
IV)変速機作動液
1)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 35%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 20%
ポリオール型摩擦緩和剤 20%
硫黄含有極圧剤 5%
潤滑粘度の油 20%
2)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 40%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 15%
アミド型摩擦緩和剤 15%
硫黄含有極圧剤 5%
潤滑粘度の油 25%
3)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 30%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 20%
他の添加剤 30%
アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤
アミド型摩擦緩和剤
エステル型摩擦緩和剤
リン・硫黄含有極圧剤
潤滑粘度の油 20%
4)未硫化のカルボキシレート含有添加剤 35%
第一級アルキルジチオリン酸亜鉛 15%
他の添加剤 25%
ポリオール型摩擦緩和剤
アミド型摩擦緩和剤
リン・硫黄含有極圧剤
潤滑粘度の油 25%
【実施例】
【0139】
本発明について下記の実施例により更に説明するが、これら実施例は特に有利な方法の態様を示すものである。なお、実施例は本発明を説明するために記されるのであって、それによって本発明が限定されるものではない。
【0140】
[実施例1]
(新規な未硫化のカルボキシレート含有添加剤の製造)
米国特許第6162770号に記載の方法に従って中間生成物を製造した。該方法をここに再現する:
【0141】
A)中和
分子質量が270の分枝鎖ドデシルフェノール(DDP)875g(すなわち3.24モル)、および分子質量が約390の線状アルキルフェノール875g(すなわち2.24モル)を、上部に断熱ビグルー精留塔がある4リットル四つ口ガラス製反応器に充填した。パラ対オルトアルキルフェノールの異性体モル再分配は次の通りであった:
DDP:パラ89%およびオルト5.5%
線状アルキルフェノール:パラ39%およびオルト53%。
【0142】
撹拌器を始動させ、反応混合物を65℃に加熱し、そしてその温度で消石灰Ca(OH)2158グラム(すなわち2.135モル)、およびギ酸と酢酸の混合物(重量で50/50)19gを添加した。
【0143】
反応媒体を更に120℃まで加熱し続け、その温度で反応器を窒素雰囲気下に置き、次いで165℃まで加熱した後、窒素の導入を止めた。この温度で水の蒸留を始めた。
【0144】
温度を240℃に上げ、圧力を徐々に大気圧より低くして5000Pa(50ミリバール)の絶対圧を得た。
【0145】
反応混合物を先の条件下で5時間維持した。反応混合物を180℃まで冷却した後、窒素雰囲気下で減圧を切り、そして分析のために試料を採取した。得られた留出物の全量は約120cm3であり、下層では分離が起こった(66cm3が水であった)。
【0146】
B)カルボキシル化
工程(A)で得られた生成物を3.6リットルオートクレーブに移して、180℃に加熱した。
【0147】
この温度で二酸化炭素(CO2)を用いて反応器の掃去を始め、10分間続けた。この段階で使用したCO2の量は20グラム程度であった。
【0148】
温度を200℃に上げた後、極小さな漏れを残してオートクレーブを閉め、そしてCO2の導入を続けて、3.5×105Pa(3.5バール)の圧力を200℃で5時間維持した。導入したCO2の量は50グラム程度であった。オートクレーブを165℃まで冷却した後、圧力を大気圧まで戻し、そして反応器を窒素でパージした。
【0149】
濾過前に、生成物を全量で1912グラム回収した。次いで、生成物を濾過した。
【0150】
上記の方法を6000ガロンの反応器に拡大して使用して、中間生成物を製造した。次いで、中間生成物を以降に概説する更なる蒸留工程にかけた。
【0151】
6000ガロンのバッチの中間生成物の分析結果は、下記の通りであった:
TBN 116mgKOH/gm
カルシウム 4.1重量%
サリチル酸指数(SAI) 40mgKOH/gm
【0152】
SAIは、清浄分散剤中に生じたアルキルサリチレートの量の測定値である。その測定値は、ジエチルエーテルの存在下で強酸(塩酸)により生成物を酸性にした後、有機画分の電位差滴定(滴定剤として、テトラn−ブチルアンモニウム水酸化物を使用した)により求めた。結果は、生成物グラム当りの等価mgKOH(塩基価単位)で表した。
【0153】
蒸留:
中間生成物を、表面積が0.39m2のこすりつけフィルム蒸発器(WFE)に、70kg/hrの速度で供給した。WFEは、内部冷却器と熱油ジャケットの付いた移動式分離器を有した。ジャケットの熱油温度は約250℃であった。WFE内の圧力は1.3ミリバールであった。WFEへの供給物温度は135℃であった。WFEを出る最終生成物温度は222℃であった。100N基油で希釈する前に、生成物を100℃以下に冷却した。WFEへの供給物のほぼ47.5%(重量)を留出物として収集した。収集される留出物の量は、WFEへの供給物の10重量%乃至約55重量%まで変化しうる。次いで、蒸留のレベルに応じて、扱いやすい粘度とするのに充分な量の有機希釈剤を蒸留した生成物に加える。留出物として収集される供給物の重量パーセントが増加するにつれて、扱いやすい粘度にするために蒸留した生成物に添加するのに要する希釈剤の量も増加する。
【0154】
蒸留した生成物の分析結果は、下記の通りであった:
TBN 174mgKOH/gm
Ca 6.09重量%
サリチル酸指数(SAI) 58
100℃粘度 705cSt
油分(物質収支で) 21.5重量%
【0155】
サリチレート構造が熱的に不安定であることは、当該分野ではよく知られている。蒸留した物質が供給原料と同じようなサリチル酸指数対カルシウム比であったので、供給物を比較的高温にさらしたにもかかわらず、サリチレート構造の分解は起こらなかった。WFE内での滞留時間が比較的短かったので分解が起こらなかった。
【0156】
留出物の外観は、中和工程で導入した出発炭化水素フェノールの外観と同じように透明で僅かに黄色がかっていた。留出物のTBN量は事実上0であり、蒸留工程への供給原料が留出物に全く持ち越されなかったことを示した。留出物をガスクロマトグラフィーにより分析して、およそ61%の分枝鎖炭化水素フェノール、39%の線状炭化水素フェノール、および6%の100N基油を含むことが分かった。
【0157】
[実施例2]
実施例1に従って製造した予備蒸留生成物を、上記のWFEで種々の条件下で蒸留した。表1に、他の蒸留条件での代表的な結果を示す。
【0158】
表 1
───────────────────────────────
1 2
───────────────────────────────
WFE条件:
供給速度(kg/hr) 122 86
圧力(ミリバール) 1.44 1.5
熱油温度(℃) 235 254
───────────────────────────────
蒸発器を出た生成物温度(℃) 205 222
───────────────────────────────
留出物の量(重量%)1 30 43
───────────────────────────────
最終生成物中の油(重量%) 0 14.5
───────────────────────────────
生成物分析結果
TBN(mgKOH/gm) 166 174
Ca(重量%) 5.92 6.2
SAI(mgKOH/gm) 57 59
100℃粘度(cSt) 226 575
───────────────────────────────
留出物の組成
分枝鎖アルキルフェノール(重量%) 76 64
線状アルキルフェノール(重量%) 15 27
100N基油(重量%) 9 9
───────────────────────────────
1:WFE供給速度に基づく
【0159】
[実施例3]
下記の変更以外は実施例1を繰り返した:
a)WFEの表面積は0.78m2であった
b)WFEへの供給速度は約135kg/hrであった
c)最終蒸留生成物を約36重量%の100N油で希釈して、扱いやすい粘度の生成物を生成させた。
【0160】
実施例1と同様にして、蒸発器への供給物の約46%(重量に基づき)を留出物として収集した。
【0161】
この生成物の分析結果は、下記の通りである:
TBN 138mgKOH/gm
カルシウム 4.96重量%
SAI 47mgKOH/gm
【0162】
実施例3の生成物約15gmについて、ソックスレット抽出装置(溶剤ペンタン)とラテックス薄膜コンドームを用いて、約24時間かけて透析を行い、透析液画分(薄膜を通過した物質)と残留物画分(ラテックス薄膜バッグ内に残った物質)とを得た。
【0163】
透析操作の透析液画分から、シリカゲルクロマトグラフィー(2個のシリカゲル・カートリッジ−ウォーターズ・パート番号051900で0.2−0.25gm)を使用して、まずヘキサン12mLを用いて画分1を得た後、カートリッジを逆にして80:20酢酸エチル:エタノール12mLでフラッシして画分2を得て、2つの画分に分離した。画分1は希釈油から構成され、画分2は遊離アルキルフェノールから構成されていた。
【0164】
クロマトグラフィーによる分離操作で得られた画分2を、超臨界クロマトグラフィー(SFC)を用いて分析して、存在する分枝鎖アルキルフェノールと線状アルキルフェノールの量を求めた。分枝鎖及び線状アルキルフェノールの既知混合物の検量線を用いて、定量化を行った。
【0165】
ジエチルエーテルの存在下で強酸(塩酸)により生成物を酸性にした後、有機画分の電位差滴定(滴定剤として、テトラn−ブチルアンモニウム水酸化物を用いた)をして、透析の残留物画分について%SAを求めた。この方法は、アルキルサリチル酸と残存するアルキルフェノール(非カルボキシル化アルキルフェネート)とを、分離して定量化するものである。結果は、生成物グラム当りの等価mgKOH(塩基価単位)で表した。次いで、%SAを下記式を用いることにより決定した:
%SA = 100*(アルキルサリチル酸/
(アルキルフェノール+アルキルサリチル酸))
【0166】
旧式のX線分光法により、残留物の%Caを求めた。
【0167】
透析結果は、下記の通りである:
透析液 出発試料重量の51.1重量%
残留物 出発試料重量の48.9重量%
透析液組成:
ドデシルフェノール 1.0重量%
線状アルキルフェノール 26.7重量%
100N基油 72.3重量%
残留物組成:
カルシウム 9.3重量%
TBN 259mgKOH/gm
SAI 78mgKOH/gm
%SA 50
【0168】
実施例3で製造した生成物の下記の組成を、透析液画分と残留物画分の組成から算出した:
全アルキルフェノール分 14.1重量%
油 36.9重量%
単芳香環アルキルサリチレート 24.5重量%
カルシウムアルキルフェネート 24.5重量%
【0169】
(性能試験方法)
以下の節では、これら実施例に関連した性能試験法について述べる。
【0170】
(内部酸化(MIP−48))
改良IP−48試験(またはMIP−48試験)は、内部油酸化試験である。IP−48試験は、イギリス石油協会の試験法48であり、そして「石油及び関連製品の標準分析試験法およびイギリス規格2000部、2000年、方法IP−1−324、第1巻」、イギリス石油協会(ロンドン)の代理としてジョン・ウィリー・アンド・サンズ(株)(チセスター、ニューヨーク、バインハイム、ブリスベン、シンガポール、トロント)により出版、に見い出すことができる。該試験では、高温に保った潤滑剤試料中に空気を吹き込む。試験終了時の試料の粘度を、全く同一の組成であるが窒素を吹き込んだ参照試料の粘度と比較した。正味の粘度増加(パーセント増加として表示)は、潤滑剤の酸化安定性の指標である。粘度増加が小さいほど良い。
【0171】
(腐食抑制(ASTM D6594−01))
これは、135℃でのディーゼルエンジン油の腐食性を評価するための標準試験法である。この試験法は、各種の金属、特にカム従動子や軸受に通常用いられる鉛及び銅合金を、ディーゼルエンジン潤滑剤が腐食する傾向を決定するために、潤滑剤を試験するのに使用されている。銅、鉛、スズおよびリン青銅の四つの金属試料を測定量のエンジン油に浸漬する。高温の油に一定時間空気を吹き付けた。試験を終えた時点で、腐食と腐食生成物を検出するために銅試料および疲労した油それぞれを調べた。
【0172】
(性能利点を示す実施例)
以下の実施例により、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤を含む潤滑油組成物が実証する性能利点について説明する。
【0173】
[実施例4]
(船用エンジン油性能)
この実施例で使用した潤滑油配合物は、船用筒形ピストンエンジンでの使用を意図した潤滑剤用に生み出され、下記の組成を有した:
【0174】
配合物1
フェネート−ステアレート 6.04%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
市販の清浄分散剤 14.72%
配合物1A
フェネート−ステアレート 6.04%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
実施例1に従って製造した未硫化の
カルボキシレート含有添加剤 10.17%
配合物2
フェネート 7.22%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
市販の清浄分散剤 16.83%
配合物2A
フェネート 7.22%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
実施例1に従って製造した未硫化の
カルボキシレート含有添加剤 11.05%
配合物3
HOBサリチレート 8.93%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
MOBサリチレート 8.88%
配合物3A
HOBサリチレート 8.93%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
実施例1に従って製造した未硫化の
カルボキシレート含有添加剤 8.72%
配合物4A
カルボキシ−ステアレート 8.83%
ジチオリン酸亜鉛 0.64%
消泡剤 0.04%
実施例1に従って製造した未硫化の
カルボキシレート含有添加剤 8.72%
【0175】
完成油におけるこれら濃縮添加剤の処理比は、完成潤滑剤に対してASTM D2896による40mgKOH/gのBNを保証するべく調整した。
【0176】
(内部酸化試験の結果)
────────────────────────────────────
配合物 配合物 配合物 配合物 配合物 配合物 配合物
1 1A 2 2A 3 3A 4A
────────────────────────────────────
MIP−48 39 17 45 25 24 22 20
結果
────────────────────────────────────
【0177】
MIP−48内部酸化試験の結果は、同一配合物で同一BNレベルで試験した場合に、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤が、市販の清浄分散剤に比べて、驚くほど良好な粘度増加抑制(VIC)を示すことを明らかにしている。
【0178】
[実施例5]
(自動車性能)
この実施例で用いた潤滑油配合物は、低排出量ディーゼルエンジンでの使用を意図した低排出量ディーゼル潤滑剤(LEDL)用に設計され、下記の組成を有した:
【0179】
【表1】

【0180】
各配合物について、本発明の未硫化のカルボキシレート含有添加剤と市販のサリチレートとで腐食性能の比較を行った。硫黄、リン及び灰分レベルの範囲に渡る各事例で、本発明のカルボキシレート含有添加剤は、優れた腐食抑制性能を発揮した。
【0181】
本発明について特定の態様に関連して記載したが、本出願は、添付した特許請求の真意および範囲から逸脱することなく、当該分野の熟練者によってなされうるそれら各種の変更や置換を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む潤滑油添加剤:
(a)40%未満の炭化水素フェノール、
(b)10乃至50%のアルカリ土類金属炭化水素フェネート、
(c)15乃至60%のアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレート、および
(d)0%乃至50%の有機希釈剤。
【請求項2】
更に、アルカリ土類金属二芳香環炭化水素サリチレートを含み、そしてアルカリ土類金属単芳香環炭化水素サリチレートとアルカリ土類金属二芳香環炭化水素サリチレートとのモル比が、少なくとも8:1である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
下記の成分を含有する潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の基油、および
(b)1%乃至30%の請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項4】
更に少なくとも一種の下記成分を含有する請求項3に記載の潤滑油組成物:
(a)無灰分散剤、
(b)酸化防止剤、
(c)さび止め添加剤、
(d)抗乳化剤、
(e)極圧添加剤、
(f)摩擦緩和剤、
(g)多機能添加剤
(h)粘度指数向上剤、
(i)流動点降下剤、
(j)消泡剤、および
(k)金属含有清浄剤。
【請求項5】
主要量の潤滑粘度の基油、および0.1%乃至6.0%の請求項1に記載の潤滑油添加剤を含む油圧作動油組成物。
【請求項6】
下記の成分を含有する濃縮物:
(a)20乃至80%の有機希釈剤、および
(b)請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項7】
請求項1に記載の潤滑油添加剤を含有し、そして更に下記の成分の少なくとも一種を含有する添加剤パッケージ:
(a)金属含有清浄剤、
(b)無灰分散剤、
(c)酸化防止剤、
(d)さび止め添加剤、
(e)抗乳化剤、
(f)極圧添加剤、
(g)摩擦緩和剤、
(h)多機能添加剤、
(i)粘度指数向上剤、
(j)流動点降下剤、および
(k)消泡剤。
【請求項8】
請求項1に記載の潤滑油添加剤、および下記の成分の少なくとも一種を含有する潤滑油添加剤組成物:
(a)フェネート、
(b)フェネート−ステアレート、
(c)サリチレート、および
(d)カルボキシ−ステアレート。
【請求項9】
フェネートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.035乃至1:98である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
フェネートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.239乃至1:14である請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
フェネートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.451乃至1:7.5である請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
フェネート−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.051乃至1:126である請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
フェネート−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.353乃至1:18である請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
フェネート−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.667乃至1:9.7である請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
該サリチレートが中過塩基性サリチレートである請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
該サリチレートが高過塩基性サリチレートである請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
サリチレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.026乃至1:120である請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
サリチレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.178乃至1:17である請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
サリチレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.335乃至1:9.2である請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
カルボキシ−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.023乃至1:105である請求項8に記載の組成物。
【請求項21】
カルボキシ−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.156乃至1:15である請求項8に記載の組成物。
【請求項22】
カルボキシ−ステアレートと該潤滑油添加剤との質量比が1:0.294乃至1:8.1である請求項8に記載の組成物。
【請求項23】
内燃機関の防食を改善する方法であって、請求項3に記載の潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させることからなる方法。
【請求項24】
潤滑油組成物の粘度増加抑制を改善する方法であって、有効粘度増加抑制量の請求項1に記載の潤滑油添加剤を、該潤滑油組成物に添加することからなる方法。

【公開番号】特開2011−231339(P2011−231339A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184059(P2011−184059)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【分割の表示】特願2004−152393(P2004−152393)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(501381217)シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】