説明

潤滑油組成物

【課題】酸化が起こり易い高温時においても動粘度、粘度指数、全酸価の変化の変動幅が少なく、何時でも同じような状態で使用可能な潤滑油組成物を得ようとする。
【解決手段】合成油及び/または鉱油の基油に、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、アミン系及び/またはフェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレートを配合して潤滑油組成物を得る。又は、合成油及び/または鉱油の基油に、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、フェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレート及び/またはアルカリ土類金属フェネートを配合した潤滑油組成物を得る。これらの潤滑油組成物は、剪断安定性が優れ、優良な酸化安定性及び熱安定性があり、高温酸化時においても動粘度及び粘度指数の変化の変動幅が少なく、ギヤ油、変速機油、内燃機関用潤滑油、油圧作動油、圧縮機油として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油に関し、特に剪断安定性、酸化安定性及び熱安定性が要求される潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油、特にギヤ油は高負荷の条件で使用されるため、これらに使用されるギヤ油は剪断安定性に優れていることが要求されている。さらに、近年は軽量化などの目的によりギヤユニットが小型されてきているため、油温の上昇がこれまで以上に見られるようになり酸化安定性や熱安定性も併せ持つ良好な潤滑油が求められている。
【0003】
これに対処するために、従来、添加剤として、ポリメタクリレート系の粘度調整剤を使用して剪断安定性を高めてきたが(特許文献1)、これだけでは、酸化安定性や熱安定性が不充分であり、なかなか満足の行く潤滑油組成物が得られないでいた。
【特許文献1】特許第2732187号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者はギヤ油の改良について種々の試験、研究を重ねてきたが、上記の如く、基油に剪断安定性の優れた粘度調整剤を配合しただけでは良好な酸化安定性及び熱安定性は得られないことが判った処より、酸化が起こり易い高温時においても動粘度及び粘度指数の変化の変動幅が少なく、何時でも同じような状態で使用可能な潤滑油組成物を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、合成油及び/または鉱油の基油に、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、フェノール系の酸化防止剤及び/またはアミン系酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレート及び/またはアルカリ土類金属フェネートを配合することによって潤滑油組成物としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の潤滑油組成物は、剪断安定性が優れ、かつ飛躍的に酸化安定性及び熱安定性の良い潤滑油組成物であり、特に、高温酸化時においても動粘度及び粘度指数の変化の変動幅が少なく、歯車などの潤滑、高い剪断安定性の維持など多様な機能がバランスよく備わっているもので、何時でも同じような状態で長く使用することができる。
また、この潤滑剤組成物はギヤ油だけでなく、AT油、MT油、CVT油等の変速機油、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油、工業用ギヤ油、油圧作動油、圧縮機油、タービン油等の工業用潤滑油にも広く有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記基油としては特に制限はなく、例えば、鉱油および合成油、これらの混合油などが使用できる。好ましいものは、粘度指数90〜160の高粘度指数の鉱油、炭化水素系合成油およびエステル系合成油である。また、基油の好ましい曇点(JIS K2269)は−5℃以下、さらに好ましくは−15℃〜−70℃である。曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。更に、基油の動粘度は100℃において好ましくは1〜14mm/sである。
ここで用いられる基油は、鉱油としては溶剤精製のものでも水素化精製のものでも、またそれらを混合したものでも良い。環分析による芳香族分(%CA)については、5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下のものがよい。
【0008】
上記合成油には、特定のワックス留分を異性化脱ろう工程及び水素化仕上げ工程を含む工程で処理した潤滑油基油を含む。これらの合成油は、粘度指数が130以上であり、環分析によるパラフィン分(%CP)が90%以上であり、かつ−35℃におけるCCS粘度が3,000mPas以下であるものが好ましい。この合成油に適切な潤滑油添加剤を選択して配合することによって、更なる高剪断安定性、高酸化安定性を有する潤滑油組成物が得られる。
【0009】
上記した末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートは共重合体であって、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有ビニル単量体を必須の構成単量体とする共重合体である。
【0010】
上記炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a)としては、具体的には、
(a1) 炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−またはiso−プロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−またはsec−ブチル(メタ)アクリレート
(a2) 炭素数8〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、2−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート、2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、およびn−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシル(メタ)アクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート、ドバノール23[三菱化学(株)製の炭素数12/炭素数13のオキソアルコール混合物]のメタクリレート、ドバノール45[三菱化学株式会社製の炭素数13/炭素数14のオキソアルコール混合物]のメタクリレートなど、
(a3) 炭素数5〜7のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、n−ペンチル(メタ)アクリレートおよびn−ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0011】
上記(a1)〜(a3)のうちで、好ましいのは(a1)および(a2)に属する物質であり、さらに好ましくは(a2)の物質である。また、上記(a1)のうちで好ましいのは、粘度指数の観点から、アルキル基の炭素数1〜2のものである。また、上記(a2)のうち好ましいのは、基油への溶解性と低温特性の観点から、アルキル基の炭素数10〜20、さらに好ましくは炭素数12〜14のものである。
【0012】
上記した炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと共重合体を構成する水酸基含有ビニル単量体(b)は分子中に1個またはそれ以上(好ましくは1または2個)の水酸基を含有するビニル単量体である。具体例としては、
(b1) ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート:
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど、
(b2) モノ−またはジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド:
例えば、N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなど
(b3) ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、
(b4) 炭素数3〜12のアルケノール:
例えば、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど、
(b5) 炭素数4〜12のアルケンジオール:
例えば、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオールなど、
(b6) ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル: 例えば、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなど、
(b7) 水酸基含有芳香族単量体: 例えば、o−、m−またはp−ヒドロキシスチレンなど
(b8) 多価(3〜8価)アルコール:
例えば、アルカンポリオール、その分子内もしくは分子間脱水物、糖類(例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテルもしくは(メタ)アクリレート(例えば、蔗糖(メタ)アリルエーテル)など、
(b9) ポリオキシアルキレン鎖と水酸基を含有するビニル単量体:
例えば、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)もしくはポリオキシアルキレンポリオール{上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキル基の炭素数2〜4、重合度2〜100)}のモノ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アリルエーテル{例えば、ポリエチレングリコール(重合度2〜9)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2〜12)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2〜30)モノ(メタ)アリルエーテル}などが挙げられる。
【0013】
上記(b1)〜(b9)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは(b1)、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0014】
上記水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートの共重合体を構成する単量体におけるそれぞれの割合は、粘度指数の観点から以下のようになることが好ましい。
上記(a)成分の下限は、好ましくは50質量%、さらに好ましくは75質量%であり、上限は好ましくは95質量%、さらに好ましくは90質量%である。
【0015】
上記(b)の下限は、好ましくは5質量%、さらに好ましくは7質量%、特に好ましくは11質量%であり、上限は好ましくは50質量%、さらに好ましくは30質量%、特に好ましくは25質量%である。
【0016】
上記(a)として、上記した(a1)、(a2)、(a3)等を適宜に併用することができる。こうした場合、上記(a1)の下限は、好ましくは0質量%、さらに好ましくは1質量%であり、上限は好ましくは20質量%、さらに好ましくは10質量%である。
上記(a2)の下限は、好ましくは50質量%、さらに好ましくは70質量%であり、上限は95質量%、さらに好ましくは90質量%である。
また、上記(a3)の下限は、好ましくは0質量%、さらに好ましくは1質量%であり、上限は好ましくは20質量%、さらに好ましくは10質量%である。
【0017】
上記(a)+(b)の合計の下限は、好ましくは55質量%、さらに好ましくは82質量%であり、上限は好ましくは100質量%である。
【0018】
上記水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートの共重合体に上記(a)、(b)と共に他の単量体を共重合させることができ、こうした単量体として、窒素原子含有単量体(c)がある。具体的には、
(c1) ニトロ基含有単量体:例えば、4−ニトロスチレンなど、
(c2) 1〜3級アミノ基含有ビニル単量体:例えば、
(c2−1) 1級アミノ基含有ビニル単量体; 例えば、炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン、クロチルアミンなど]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレートなど]、
(c2−2) 2級アミノ基含有ビニル単量体; 例えば、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[t−ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど]、ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド[4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミドなど]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミンなど]、
(c2−3) 3級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど]、3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体[N,N−ジメチルアミノスチレン、など]、
(c2−4) 含窒素複素環含有ビニル系単量体[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルチオピロリドンなど]がある。
(c3)両性ビニル単量体:
例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシ(もしくはアミノ)アルキル(炭素数1〜10)N,N−ジアルキル(炭素数1〜5)アンモニウム−N−アルキル(炭素数1〜5)カルボキシレート(もしくはサルフェート)、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、およびN−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムプロピルサルフェートなど、
(c4)ニトリル基含有単量体:例えば、(メタ)アクリロニトリルなど、がある。
【0019】
また、こうした単量体として、脂肪族炭化水素系ビニル単量体(d)がある。例えば、炭素数2〜20のアルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセンなど]、および炭素数4〜12のアルカジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなど]がある。
【0020】
更に、脂環式炭化水素系ビニル単量体(e):例えば、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、およびエチリデンビシクロヘプテンなどがある。
また、芳香族炭化水素系ビニル単量体(f):例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、および2−ビニルナフタレンなどがある。
【0021】
そして、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(g):例えば、炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニルなど]、炭素数1〜12のアルキル、アリールもしくはアルコキシアルキルのビニルエーテル[メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−ブトキシエチルエーテルなど]、および炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]がある。
【0022】
更に、不飽和ポリカルボン酸のエステル(h):例えば、不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステルが挙げられ、このうち不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜8のアルキルジエステル[ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート、ジオクチルマレエート]などがある。
また、ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体(水酸基を含まないもの)(i):例えば、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)もしくはポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキル基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]のモノアルキル(炭素数1〜18)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[例えば、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレートなど]を用いることもできる。
【0023】
そして、カルボキシル基含有ビニル単量体(j):例えば、モノカルボキシル基含有ビニル単量体、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマール酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど];2個以上のカルボキシル基を含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などを共重合用の単量体として用いることができる。
【0024】
上記した追加的な単量体(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)のうち、好ましいのは(c)であり、(c)のうちの2種以上を併用することもできる。上記(c)のうち、好ましいものは(c2)、さらに好ましいものはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0025】
この水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、下限が3,000、好ましくは5,000、さらに好ましくは8,000、特に好ましくは10,000であり、上限は500,000、好ましくは50,000、さらに好ましくは40,000、特に好ましくは35,000、とりわけ好ましくは30,000である、油溶性の共重合体である。
質量平均分子量が上記範囲であると良好なせん断安定性を与えることができる。なお、この質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによるものであり、ポリスチレンに換算して求めたものである。
また、上記質量平均分子量は、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量または連鎖移動剤量などにより調整することができる。
【0026】
この水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートの分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1〜2.5、さらに好ましくは1.2〜2、特に好ましくは1.5〜1.7である。分散度が小さい方が、せん断安定性が良好である。なお、Mnは、Mwと同様にして求めたものである。
【0027】
また、その溶解性パラメーターは、下限が好ましくは8.6、さらに好ましくは9.2、特に好ましくは9.3であり、上限は好ましくは11、さらに好ましくは10.5、特に好ましくは9.7である。溶解性パラメーター値が上記範囲内では、基油への溶解性がさらに良好になる。なお、この溶解性パラメーター値は、Fedors法(Polym.Eng.Sci.14(2)、152,(1974)によって算出したものである。
【0028】
更に、水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートのHLBは、0.5〜7が好ましい。HLBがこの範囲内にあると抗乳化性が特に良好である。さらに好ましくは、HLBが1〜6.5、特に好ましくは、1.5〜6である。このHLB値は、有機性無機性の概念に基づく小田法のHLB(「新・界面活性剤入門」三洋化成工業株式会社発行P128)によって算出される値である。
【0029】
また、添加剤として使用する、水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートのヒドロキシル価は10〜100、好ましくは20〜50、より好ましくは25〜35である。ヒドロキシル価の測定はJIS K3342(1961)に準拠して測定をし得られる数値で、添加剤中の水酸基の量を示す値である。
【0030】
水酸基を含有していない、一般的な従来型のポリ(メタ)アクリレートを水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートと同時に添加することも可能であり、その量は水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート:水酸基非含有ポリ(メタ)アクリレートで、100:0〜40:60の質量比で入れることも可能である。
【0031】
上記したアミン系酸化防止剤としては、例えば、芳香族アミンとして、フェニル−α−ナフチルアミン系化合物、ジアルキルジフェニルアミン系化合物が挙げられる。
このフェニル−α−ナフチルアミン系化合物としては、下記一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが好ましく用いられる。
【0032】
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。]
【0033】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、当該アルキル基は前述の通り炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のものである。このようなアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。なお、Rの炭素数が16を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、酸化防止性能が低下することがある。
【0034】
上記一般式(1)中のRがアルキル基のとき、溶解性に優れている点から、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性の点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。
【0035】
更に優れた溶解性を得るためには、Rは、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましい。また、特に好ましいのは、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基である。
【0036】
また、Rがアルキル基である場合、フェニル基の任意の位置に結合可能であるがアミノ基に対してp−位であることが好ましい。更に、アミノ基はナフチル基の任意の位置に結合可能であるが、α位であることが好ましい。
【0037】
一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンとしては、市販のものを用いても良いし、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用いて、フェニル−α−ナフチルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはフェニル−α−ナフチルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィンオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、具体的には、例えば、塩化アルミニウム,塩化亜鉛,塩化鉄等の金属ハロゲン化物、硫酸,リン酸,五酸化リン,フッ化ホウ素,酸性白土,活性白土等の酸性触媒、等を用いることができる。
【0038】
ジアルキルジフェニルアミン系化合物としては、下記一般式(2)で表されるジアルキルジフェニルアミンが好ましく用いられる。
【化2】

〔式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。〕
【0039】
及びRで表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。
これらの中でも、溶解性に優れる点から、R及びRとしては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。
【0040】
また、R又はRとしては、更に優れた溶解性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましい。更に、最も好ましくは、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基である。
【0041】
なお、R又はRの一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での酸化防止性が低下することがある。
【0042】
又はRで示されるアルキル基は、それぞれフェニル基の任意の位置に結合可能であるが、アミノ基に対してp−位であることが好ましく、すなわち一般式(2)で表されるジアルキルジフェニルアミンはp,p’−ジアルキルジフェニルアミンであることが好ましい。
【0043】
一般式(2)で表されるジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。合成物は、フリーデル・クラフツ触媒を用い、ジフェニルアミンと炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物との反応、あるいはジフェニルアミンと炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとの反応を行うことにより容易に合成することができる。フリーデル・クラフツ触媒としては、上記フェニル−α−ナフチルアミン系化合物の説明において例示した金属ハロゲン化物や酸性触媒等を用いるとよい。
【0044】
上記一般式(1)、(2)で表される芳香族アミンは1種を単独で用いても良いし、構造の異なる2種以上の混合物を用いても良いが、高温での酸化防止性をより長期にわたって維持するために、一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンと一般式(2)で表されるジアルキルジフェニルアミンとを併用することが好ましい。この場合の混合比は任意であるが、質量比で1/10〜10/1の範囲にあることが好ましい。
これらアミン系酸化防止剤の含量は好ましくは0.01質量%〜5質量%、より好ましくは0.05質量%〜2質量%である。0.01質量%より少ないと効果が得られず、また5質量%より多く含んでもそれ以上の効果が得られない。
【0045】
潤滑油組成物に配合する上記したフェノール系酸化防止剤には、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用することもできる。
これらフェノール系酸化防止剤の含量は好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.05〜2質量%である。0.01質量%より少ないと効果がなくまた5質量%より多く含んでもそれ以上の効果は見られない。
【0046】
また、この潤滑油組成物に配合されるものとして、アルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属ナフテネートなどがある。このアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。これらは単独で、あるいは二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの物質は、通常、金属清浄剤として知られているものである。
通常、カルシウム又はマグネシウムのスルフォネート、フェネート、サリシレートが好ましく用いられる。なお、これらの塩基価および含有量は適応する潤滑油の種類、目的によって任意に選ぶことができるが、通常、好ましくは、塩基価は過塩素酸法で0〜500mgKOH/gであり、その含有量は好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
【0047】
上記合成油及び/または鉱油の基油と末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートとに配合する、酸化防止剤と金属清浄剤との組み合わせには適合性が見られることが判った。基油と、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、アミン系酸化防止剤及び/またはフェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレートの配合組合せは良好である。また、基油と、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、フェノール系酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレート及び/またはアルカリ土類金属フェネートの配合組合せも良好である。
【実施例】
【0048】
表1に示す実施例及び比較例を作成するために、下記の材料を用意した。
1.基油A:100℃の動粘度が4.2mm/s、粘度指数が120のパラフィン系水素化精製鉱油(ASTM−D3238による環分析結果、%C=78、%C=22、%C=0)
2.基油B:100℃の動粘度が5.10mm2/s、粘度指数が149のAPI基油分類によりグループ3に分類されるフィシャートロプシュ合成のGTL(ガス・ツウ・リキッド)/XHVI-5.2
3.末端に水酸基を付加したポリメタクリレート−1(OH−PMA1):水酸基価49mgKOH/gであり、質量平均分子量が約30000で、(a)が83質量%(b)が17質量%のものである。(なお、今回使用した添加剤は鉱油に希釈されているからポリマーとしては約50%含有されている。)
4.末端に水酸基を付加したポリメタクリレート−2(OH−PMA2):水酸基価47mgKOH/gであり、重量平均分子量が約16000で、(a)が83.5質量%(b)が16.5質量%のものである。(なお、今回使用した添加剤は鉱油に希釈されているからポリマーとしては約50%含有されている。)
5.アミン系酸化防止剤(A1):ジアルキルジフェニルアミンでアルキル基がオクチル基とブチル基のもの
6.アミン系酸化防止剤(A2):フェニル−ナフチルアミンでアルキル基がオクチル基のもの
7.フェノール系酸化防止剤(P):オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
8.カルシウム(Ca)スルフォネート:塩基価;約400mgKOH/g
9.カルシウム(Ca)サリシレート:塩基価;約160mgKOH/g
10.カルシウム(Ca)フェネート:塩基価;約250mgKOH/g
【0049】
(実施例1)
表1に示す配合に基づき、基油(A)217.50部(質量部、以下同じ)に、末端にリン酸エステルを付加したポリメタクリレート(OH−PMA2)30.00部、アミン系酸化防止剤(A2)1.25部、Caサリシレート1.25部を加えてよく攪拌混合して潤滑油組成物を得た。
【0050】
(実施例2〜5)
表1に示す配合に基づき、実施例1に準じて各潤滑油組成物を得た。
(比較例1〜3)
表2に示す配合に基づき、実施例1に準じて各潤滑油組成物を得た。
【0051】
(酸化性能試験)
作成した実施例及び比較例の潤滑油組成物について、酸化性能試験を行った。
酸化性能試験は、JIS K2514に規定する内燃機関用潤滑油酸化安定度試験(ISOT)に準拠した試験法を用いて、165.5℃で60時間の加熱試験を行い、試験の前後における「試験前の新油」、「試験後の油」につき下記項目について測定した。
1.100℃動粘度
2.40℃動粘度
3.粘度指数(VI)
4.酸価(AN)(単位:mgKOH/g)
5.塩基価(BN)(単位:mgKOH/g)
また、「試験後の油」について更に下記項目について数値を求め、判定をした。
6.100℃動粘度増加率(%)
7.100℃動粘度増加率の判定
〔判定基準〕 5.0%未満は、「○」
5.0%以上は、「×」
8.酸価(AN)増加量
9.酸価(AN)増加量の判定
〔判定基準〕 1.0未満は、「○」
1.0以上は、「×」
【0052】
(結果)
上記試験の結果を表3、4に示す。
(考察)
表3に示すように、実施例1〜5のものは、試験の前後における100℃動粘度の変化が少なく、100℃動粘度増加率が−0.5〜2.3%と低くて、「○」の判定が得られている。また、40℃動粘度の上昇も2〜4%程度と少なく、粘度指数(VI)も実施例5において約6%低下した他は殆ど変化しておらず、酸価(AN)は実施例1及び4において若干低下しており、実施例3及び5ではやや上昇しているが酸価増加量はそれほど多くなく、各実施例共に増加量の判定も良好である。更に塩基価(BN)は試験前において0.67〜0.83程度の数値を示しているが、試験後においてその減少率は、実施例1が40%で少なく、実施例2,3,4が次に多く、実施例5が85%と多いが、比較例3の95%に比べて各実施例のものはいずれも少なくなっている。このように、各実施例のものは、充分な熱酸化安定性が得られており、全体に良好な結果を示している。
一方、比較例1、2のものでは、潤滑油組成物の試験前の新油の状態においてすでに沈殿物が見られ、潤滑油として使用することができないことが判った。従って、以降の酸化性能試験は行わなかった。比較例3のものは、100℃動粘度増加率が9.7%と大きく、判定は「×」であり、40℃動粘度も21%増加している。また、酸価増加量が3.98と大きく、その判定は「×」となっている。更に塩基価(BN)は試験前において0.64であったものが、試験後に約95%減少している。このように、比較例1〜3のものは、何れも良好な結果が得られていない。
このことから、実施例1〜5に示すような、基油に、末端に水酸基を付加したポリメタクリレートと、アミン系及び/またはフェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレートを配合した組成物や、また、基油に、末端に水酸基を付加したポリメタクリレートと、フェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレート及び/またはアルカリ土類金属フェネートを配合した組成物の各組み合わせは良好であることが判る。
その一方で、比較例1,2のように、基油に、末端に水酸基を付加したポリメタクリレートと、アミン系及び/またはフェノール系酸化防止剤と、アルカリ土類金属スルフォネートとを組み合わせたもの、また、比較例3のように、基油に、末端に水酸基を付加したポリメタクリレートと、アミン系酸化防止剤と、アルカリ土類金属フェネートとを組み合わせたものはいずれも好ましくないことが判る。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成油及び/または鉱油の基油に、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、アミン系及び/またはフェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレートを配合した潤滑油組成物。
【請求項2】
合成油及び/または鉱油の基油に、末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートと、フェノール系の酸化防止剤と、アルカリ土類金属サリシレート及び/またはアルカリ土類金属フェネートを配合した潤滑油組成物。
【請求項3】
上記末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートは、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、分子中に1個以上の水酸基を有する水酸基含有ビニル単量体を含む共重合体である請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
上記末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートは、上記炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが50〜95質量%と、分子中に1個以上の水酸基を有する水酸基含有ビニル単量体が5〜50質量%の共重合体である請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
上記末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量が3,000〜500,000である請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
上記末端に水酸基を付加したポリ(メタ)アクリレートの分散度(Mw/Mn)は1〜2.5、溶解性パラメーターは8.6〜11、HLB値は0.5〜7、ヒドロキシル価は10〜100である請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑油組成物。


【公開番号】特開2009−179695(P2009−179695A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19045(P2008−19045)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】