説明

潤滑油路構造及び過給機

【課題】排油口75からの排油性を高めて、潤滑油Gによる排油口75の閉塞を十分に防止すること。
【解決手段】
軸受ハウジング3の上部に給油口61が形成され、支持ブロック5の上部に給油通路63,65が形成され、支持ブロック5の下部における前端側に排油切欠67が形成され、支持ブロック5の下部における後端側に排油通路69が形成され、軸受ハウジング3内における支持ブロック5の下方に受容室73が形成され、軸受ハウジング3の下部に排油口75が形成され、ロータ軸19の軸心に直交する断面において、排油切欠67が鉛直下方を指向し、排油通路69の通路中心69cが鉛直下方に対してロータ軸19の回転方向Dの反対側に傾斜していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用過給機等の過給機に用いられる潤滑油路構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用過給機は、内側に支持ブロックを有しかつ支持ブロックに水平方向へ延びた設置穴が貫通形成された軸受ハウジングと、支持ブロックの設置穴内に水平方向に離隔して設けられた複数のラジアル軸受と、複数のラジアル軸受に回転可能に支持されかつコンプレッサインペラとタービンインペラを一体的に連結するロータ軸とを備えている。また、車両用過給機には、ロータ軸と複数のラジアル軸受の摺動部(摺動する部位)に潤滑油を給油しかつロータ軸と複数のラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を軸受ハウジングの外側へ排油するための潤滑油路構造が用いられている(特許文献1等参照)。そして、先行技術に係る潤滑油路構造の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
軸受ハウジングには、潤滑油を取入れる給油口(油取入口)が形成されている。また、軸受ハウジングの内部には、ロータ軸と複数のラジアル軸受の摺動部に潤滑油を給油するための給油通路が形成されており、この給油通路は、給油口に連通してある。
【0004】
軸受ハウジングの支持ブロックの下部における軸方向(ロータ軸の軸方向)の一端側には、ロータ軸とコンプレッサインペラ側のラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油切欠が形成されている。また、軸受ハウジングの支持ブロックの下部における軸方向の他端側には、ロータ軸とタービンインペラ側のラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油通路が貫通形成されている。
【0005】
軸受ハウジング内における支持ブロックの下方には、ロータ軸と複数のラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を受容する受容室が形成されており、この受容室は、排油切欠及び排油通路に連通してある。また、軸受ハウジングの下部には、潤滑油を軸受ハウジングの外側へ排油可能な排油口が形成されており、この排油口は、受容室に連通してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−214094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、エンジンの高出力化の要請に伴い、ロータ軸の回転数も増大して、ロータ軸とラジアル軸受の摺動部に給油される潤滑油の流量も増大する傾向にある。一方、ロータ軸と複数のラジアル軸受の摺動部に給油される潤滑油の流量が増大すると、排油切欠から流出する潤滑油と、排油通路の出口側開口部から流出する潤滑油との干渉が増大して、排油口からの排油性(潤滑油路構造の排油性)が損なわれて、潤滑油による排油口の閉塞(詰まり)を招くおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の潤滑油路構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴は、内側に支持ブロックを有しかつ前記支持ブロックに水平方向へ延びた設置穴が貫通形成された軸受ハウジングと、前記支持ブロックの前記設置穴内に水平方向に離隔して設けられた複数のラジアル軸受と、複数の前記ラジアル軸受に回転可能に支持されかつコンプレッサインペラとタービンインペラを一体的に連結するロータ軸とを備えた過給機に用いられ、前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部(摺動する部位)に潤滑油を給油しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を前記軸受ハウジングの外側へ排油するための潤滑油路構造であって、前記軸受ハウジングに潤滑油を取入れる油取入口(給油口)が形成され、前記軸受ハウジングの内部に前記給油口に連通しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部(前記ロータ軸と前記コンプレッサインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部及び前記ロータ軸と前記タービンインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部)に潤滑油を給油するための給油通路が形成され、前記支持ブロックの下部における軸方向の一端側に前記ロータ軸と前記コンプレッサインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油切欠が形成され、前記支持ブロックの下部における前記軸方向の他端側に前記ロータ軸と前記タービンインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油通路が貫通形成され、前記軸受ハウジング内における前記支持ブロックの下方に前記排油切欠及び前記排油通路に連通しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を受容する受容室(空洞部)が形成され、前記軸受ハウジングの下部に前記受容室に連通しかつ前記潤滑油を前記軸受ハウジングの外側へ排油可能な排油口が形成され、前記ロータ軸の軸心に直交する断面において、前記排油切欠が鉛直下方を指向し、前記排油通路の通路中心線が鉛直下方に対して傾斜していることを要旨とする。
【0010】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「軸方向」とは、ロータ軸の軸方向のことをいう。また、「複数のラジアル軸受」とは、独立した複数のラジアル軸受の他に、例えばセミフローティングメタルにおける一対のラジアル軸受部等のように一体化した複数のラジアル軸受部を含む意である。
【0011】
第1の特徴によると、前記過給機の運転中に、前記給油口から潤滑油を取入れることにより、前記給油通路を経由して前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部に潤滑油を給油する。これにより、前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑して、前記ロータ軸及び複数の前記ラジアル軸受の焼き付け等を防止することができる。
【0012】
一方、前記ロータ軸及び複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油は、前記排油切欠及び前記排油通路の出口側開口部から流出して、前記受容室を経由して前記排油口から前記軸受ハウジングの外側へ排油される。
【0013】
ここで、前記ロータ軸の軸心に直交する断面において、前記排油切欠が鉛直下方を指向してあって、前記排油通路の通路中心線が鉛直下方に対して傾斜しているため、前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部に給油される潤滑油の流量が増大しても、前記排油切欠から流出する潤滑油と、前記排油通路の出口側開口部から流出する潤滑油との干渉を十分に抑制(低減)することができる。
【0014】
本発明の第2の特徴は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する過給機において、第1の特徴からなる潤滑油路構造を備えたことを要旨とする。
【0015】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部に給油される潤滑油の流量が増大しても、前記排油切欠から流出する潤滑油と、前記排油通路の出口側開口部から流出する潤滑油との干渉を十分に抑制できるため、前記排油口からの排油性(前記潤滑油路構造の排油性)を高めて、潤滑油による前記排油口の閉塞を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、図3における矢視部Iの拡大図である。
【図2】図2(a)は、図1におけるIIA-IIA線に沿った図、図2(b)は、図1におけるIIB-IIB線に沿った図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図3を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向を指し、「FR」は、後方向を指してある。
【0019】
図1及び図3に示すように、本発明の実施形態に係る車両用過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、車両用過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0020】
車両用過給機1は、軸受ハウジング3を備えており、この軸受ハウジング3は、内側に、支持ブロック5を有しており、この支持ブロック5には、前後方向(水平方向の1つ)に延びた設置穴7が貫通形成されている。なお、支持ブロック5は、軸受ハウジング3の内部の一部分を構成している。
【0021】
支持ブロック5の設置穴7内には、セミフローティングメタル9が回止めピン11を介して回転不能に設けられており、このセミフローティングメタル9は、一対のラジアル軸受部13,15を前後方向に離隔して備えている。換言すれば、支持ブロック5の設置穴7内には、一対のラジアル軸受部13,15が前後方向に離隔して設けられている。なお、セミフローティングメタル9の中間部には、通孔17が貫通形成されている。
【0022】
一対のラジアル軸受部13,15には、前後方向へ延びたロータ軸(タービン軸)19が回転可能に支持されており、このロータ軸19は、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ21と排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ23を一体的に連結するものである。また、ロータ軸19におけるコンプレッサインペラ21側には、スラストカラー25が一体的に設けられている。
【0023】
軸受ハウジング3におけるスラストカラー25の前側には、ロータ軸19に作用する前方向(ロータ軸19の軸方向の一方側)のスラスト荷重をスラストカラー25を介して負担(支持)するスラスト軸受27が設けられている。また、軸受ハウジング3におけるスラストカラー25の後側には、ロータ軸19に作用する後方向(ロータ軸19の軸方向の他方側)のスラスト荷重をスラストカラー25を介して負担(支持)するスラスト軸受29が設けられている。
【0024】
ロータ軸19におけるコンプレッサインペラ21とスラストカラー25との間には、油切り31が一体的に設けられており、軸受ハウジング3の前側部には、環状のシールプレート33が油切り31を囲むように設けられている。また、シールプレート33の内周面と油切り31の外周面との間には、軸受ハウジング3側からコンプレッサインペラ21側への潤滑油Gの漏れ等を防止するフロントシールリング35が設けられている。更に、軸受ハウジング3の後側部には、ロータ軸19を嵌挿可能な嵌挿穴37が形成されており、軸受ハウジング3の嵌挿穴37の内周面とロータ軸19の外周面との間には、軸受ハウジング3側からタービンインペラ23側への潤滑油Gの漏れ等を防止するリアシールリング39が設けられている。
【0025】
図3に示すように、軸受ハウジング3の前側には、コンプレッサインペラ21を収容するコンプレッサハウジング41が設けられており、このコンプレッサハウジング41におけるコンプレッサインペラ21の入口側(コンプレッサハウジング41の前側)には、空気を取入れる空気取入口43が形成されている。また、コンプレッサハウジング41の内部におけるコンプレッサインペラ21の出口側には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路45が形成されている。更に、コンプレッサハウジング41の適宜位置には、圧縮された空気(圧縮空気)を排出する空気排出口47が形成されており、この空気排出口47は、コンプレッサスクロール流路45に連通してある。
【0026】
軸受ハウジング3の後側には、タービンインペラ23を収容するタービンハウジング49が設けられており、このタービンハウジング49の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口51が形成されている。また、タービンハウジング49の内部におけるタービンインペラ23の入口側には、渦巻き状のタービンスクロール流路53が形成されており、このタービンスクロール流路53は、ガス取入口51に連通してある。更に、タービンハウジング49におけるタービンインペラ23の出口側(タービンハウジング49の後側)には、排気ガスを排出するガス排出口55が形成されている。
【0027】
タービンハウジング49内におけるタービンスクロール流路53とタービンインペラ23との間には、タービンインペラ23側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズル機構57が配設されている。なお、可変ノズル機構57は、例えば特開2009−243300号公報、特開2009−243431号公報に示される公知の構成からなるものであって、可変ノズル機構57の構成の詳細については省略する。
【0028】
続いて、本発明の実施形態の要部について説明する。
【0029】
図1に示すように、車両用過給機1は、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25と一対のスラスト軸受27,29の摺動部に潤滑油Gを給油しかつこれらの摺動部を潤滑した潤滑油Gを軸受ハウジング3の外側へ排油するための潤滑油路構造59を備えている。そして、本発明の実施形態に係る潤滑油路構造59の具体的な構成は、次のようになる。
【0030】
軸受ハウジング3の上部には、潤滑油ポンプ(図示省略)の作動により潤滑油Gを取入れる給油口(油取入口)61が形成されている。また、支持ブロック5の上部(軸受ハウジング3の内部)には、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25とスラスト軸受29の摺動部に潤滑油Gを通孔17等を介して給油するための第1給油通路63が形成されており、この第1給油通路63は、給油口61に連通してある。更に、軸受ハウジング3の内部には、スラストカラー25とスラスト軸受27の摺動部に潤滑油Gを給油するための第2給油通路65が形成されており、この第2給油通路65は、給油口61に連通してある。
【0031】
支持ブロック5の下部における前端側(ロータ軸19の軸方向の一端側)には、ロータ軸19とコンプレッサインペラ21側のラジアル軸受部13の摺動部及びスラストカラー25と一対のスラスト軸受27,29の摺動部を潤滑した潤滑油Gを排油するための排油切欠67が形成されている。また、支持ブロック5の下部における後端側(ロータ軸19の軸方向の他端側)には、ロータ軸19とタービンインペラ23側のラジアル軸受部15の摺動部を潤滑した潤滑油Gを排油するための排油通路69が形成されており、この排油通路69の入口側開口部69iの大部分は、タービンインペラ23側のラジアル軸受部15に対向してある。更に、支持ブロック5の設置穴7における後端部(タービンインペラ23側の端部)には、ロータ軸19とタービンインペラ23側のラジアル軸受部15の摺動部を潤滑した潤滑油Gを一時的に貯留する環状の油溜まり71が形成されており、この油溜まり71は、排油通路69に連通してある。
【0032】
軸受ハウジング3内における支持ブロック5の下方には、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25と一対のスラスト軸受27,29の摺動部を潤滑した潤滑油Gを受容する受容室(空洞部)73が形成されており、この受容室73は、排油切欠67及び排油通路69に連通してある。また、軸受ハウジング3の下部には、潤滑油Gを軸受ハウジング3の外側へ排油する排油口75が形成されており、この排油口75は、受容室73に連通してある。なお、排油口75から排油された潤滑油Gは、潤滑油タンク(図示省略)に一旦回収されて、再び潤滑油ポンプの作動により給油口61から軸受ハウジング3の内部に取入れられるようになっている。
【0033】
図2(a)に示すように、ロータ軸19の軸心に直交する断面において、排油切欠67は、鉛直下方を指向している。また、図1に示すように、ロータ軸19の軸心を含む断面において、排油通路69の通路中心(通路中心線)69cは、入口側開口部69iを出口側開口部69eよりもタービンインペラ23側に寄せるように鉛直下方に対して傾斜している。そして、図2(b)に示すように、ロータ軸19の軸心に直交する断面において、排油通路69の通路中心69cは、鉛直下方に対してロータ軸19の回転方向Dの反対側に傾斜している。
【0034】
ここで、ロータ軸19の軸心に直交する断面における排油通路69の通路中心69cの鉛直下方に対する傾斜角θは、30〜60度、好ましくは、40〜50度に設定されている。傾斜角θが30度以上に設定されるようにしたのは、30度未満に設定されていると、排油通路69の出口側開口部69eから流出する潤滑油Gが排油切欠67から流出する潤滑油Gに干渉し易くなるからである。一方、傾斜角θが60度以下に設定されるようにしたのは、60度を越えて設定されていると、排油通路69内における潤滑油Gの通過性(排油性)が低下するおそれがあるからである。
【0035】
なお、ロータ軸19の軸心に直交する断面において、排油通路69の通路中心69cが鉛直下方に対してロータ軸19の回転方向Dの反対側に傾斜する代わりに、鉛直下方に対してロータ軸19の回転方向D側に傾斜しても構わない。
【0036】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
ガス取入口51から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路53を経由してタービンインペラ23の入口側から出口側(排気ガスの流れ方向から見て上流側から下流側)へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸19及びコンプレッサインペラ21をタービンインペラ23と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口43から取入れた空気を圧縮して、コンプレッサスクロール流路45を経由して空気排出口47から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる(車両用過給機1の通常の運転動作)。
【0038】
車両用過給機1の運転中に、潤滑油ポンプの作動により給油口61から潤滑油Gを取入れることにより、第1給油通路63を経由してロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25とスラスト軸受29の摺動部に潤滑油Gを給油すると共に、第2給油通路65を経由してスラストカラー25とスラスト軸受27の摺動部に潤滑油Gを給油する。これにより、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25とスラスト軸受37,29の摺動部を潤滑して、ロータ軸19とラジアル軸受部13,15等の焼き付け等を防止することができる。
【0039】
一方、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25とスラスト軸受37,29の摺動部を潤滑した潤滑油Gは、排油切欠67及び排油通路69の出口側開口部69eから流出して、受容室73を経由して排油口75から軸受ハウジング3の外側(潤滑油タンク)へ排油される。
【0040】
ここで、ロータ軸19の軸心に直交する断面において、排油切欠67は、鉛直下方を指向してあって、排油通路69の通路中心69cは、鉛直下方に対してロータ軸19の回転方向Dの反対側に傾斜しているため、ロータ軸19と一対のラジアル軸受部13,15の摺動部及びスラストカラー25とスラスト軸受37,29の摺動部に給油される潤滑油Gの流量が増大しても、排油切欠67から流出する潤滑油Gと、排油通路69の出口側開口部69eから流出する潤滑油Gとの干渉を十分に抑制(低減)することができる。
【0041】
従って、本発明の実施形態によれば、排油口75からの排油性(潤滑油路構造59の排油性)を高めて、潤滑油Gによる排油口75の閉塞(詰まり)を十分に防止することができ、軸受ハウジング3側からコンプレッサインペラ21側への潤滑油Gの漏れ及び軸受ハウジング3側からタービンインペラ23側への潤滑油Gの漏れ等をフロントシールリング35及びリアシールリング39からの潤滑油の漏れを極力なくすことができる。
【0042】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【実施例】
【0043】
本発明の実施形態に係る車両用過給機(本発明の実施形態に係る潤滑油路構造を備えた車両用過給機)を発明品として試作し、ロータ軸の軸心に直交する断面において排油通路の通路中心が鉛直下方を指向している点のみが異なる車両用過給機(図示省略)を比較品として試作した。そして、発明品及び比較品について潤滑油挙動観察試験を行ったところ、次のような結果を得ることができた。即ち、比較品については、ロータ軸の回転数18000rpm、潤滑油の給油量1.59L/minの場合に潤滑油による排油口の閉塞が生じて、軸受ハウジング内に潤滑油が充満したのに対して、発明品については、ロータ軸の回転数18000rpm、潤滑油の給油量1.61L/minの場合でも、潤滑油による排油口の閉塞が見られなかった。
【符号の説明】
【0044】
G 潤滑油
1 車両用過給機
3 軸受ハウジング
5 支持ブロック
7 設置穴
9 セミフローティングメタル
13 ラジアル軸受部
15 ラジアル軸受部
17 通孔
19 ロータ軸
21 コンプレッサインペラ
23 タービンインペラ
25 スラストカラー
27 スラスト軸受
29 スラスト軸受
35 フロントシールリング
39 リアシールリング
59 潤滑油路構造
61 給油口
63 第1給油通路
65 第2給油通路
67 排油切欠
69 排油通路
69c 排油通路の通路中心
69e 排油通路の出口側開口部
69i 排油通路の入口側開口部
73 受容室
75 排油口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に支持ブロックを有しかつ前記支持ブロックに水平方向へ延びた設置穴が貫通形成された軸受ハウジングと、前記支持ブロックの前記設置穴内に水平方向に離隔して設けられた複数のラジアル軸受と、複数の前記ラジアル軸受に回転可能に支持されかつコンプレッサインペラとタービンインペラを一体的に連結するロータ軸とを備えた過給機に用いられ、
前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部に潤滑油を給油しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を前記軸受ハウジングの外側へ排油するための潤滑油路構造であって、
前記軸受ハウジングに潤滑油を取入れる給油口が形成され、前記軸受ハウジングの内部に前記給油口に連通しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部に潤滑油を給油するための給油通路が形成され、前記支持ブロックの下部における前記ロータ軸の軸方向の一端側に前記ロータ軸と前記コンプレッサインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油切欠が形成され、前記支持ブロックの下部における前記ロータ軸の軸方向の他端側に前記ロータ軸と前記タービンインペラ側の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を排油するための排油通路が貫通形成され、前記軸受ハウジング内における前記支持ブロックの下方に前記排油切欠及び前記排油通路に連通しかつ前記ロータ軸と複数の前記ラジアル軸受の摺動部を潤滑した潤滑油を受容する受容室が形成され、前記軸受ハウジングの下部に前記受容室に連通しかつ前記潤滑油を前記軸受ハウジングの外側へ排油可能な排油口が形成され、
前記ロータ軸の軸心に直交する断面において、前記排油切欠が鉛直下方を指向し、前記排油通路の通路中心線が鉛直下方に対して傾斜していることを特徴とする潤滑油路構造。
【請求項2】
前記ロータ軸の軸心に直交する断面における前記排油通路の通路中心線の鉛直下方に対する傾斜角が30〜60度に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油路構造。
【請求項3】
前記ロータ軸の軸心に直交する断面において、前記排油通路の通路中心線が鉛直下方に対して前記ロータ軸の回転方向の反対側に傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の潤滑油路構造。
【請求項4】
前記ロータ軸の軸心を含む断面において、前記給油通路の通路中心線が前記給油通路の入口側開口部を出口側開口部よりも前記タービンインペラ側に寄せるように鉛直下方に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の潤滑油路構造。
【請求項5】
前記支持ブロックの前記設置穴における前記タービンインペラ側の端部に前記排油通路に連通しかつ潤滑油を一時的に貯留する環状の油溜まりが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の潤滑油路構造。
【請求項6】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する過給機において、
請求項1から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の潤滑油路構造を備えたことを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−237254(P2012−237254A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107315(P2011−107315)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】