説明

火災警報器又は火災検知装置

【課題】火災発生をその初期段階においてより正確に検知する火災警報器又は火災検知装置を提供する。
【解決手段】所定の監視領域内における所定の物理量の状態に基づいて火災を監視する火災警報器10であって、煙を検出する煙感知部11と、COを検出するCO感知部12と、煙感知部11にて検出された煙の変化率、又は、CO感知部12にて検出されたCOの変化率が所定の閾値を越えた場合に、火災が発生したものと判断する制御部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
所定の監視領域内における火災発生の有無を監視する火災警報器又は火災検知装置であって、特に、火災発生をその初期段階においてより正確に検知することができる火災警報器又は火災検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅火災から建物や人命を守るためには、火災発生を早期に検知して警報を発報する火災感知器の設置が有効である。この火災感知器は、火災に伴って発生する熱、煙、又は、CO等の物理量を検知し、検知された物理量が閾値以上であった場合、火災発生を報知する。このような火災感知器として、1種類の物理量のみ検知する単独式の感知器や、複数種類の物理量を検知する複合式の感知器が提案されている。
【0003】
さらに近年では、火災検知の迅速性を高めた火災感知器が提案されている。例えば、監視領域内において熱及び煙を検知し、検知された熱に基づいて煙に対する閾値を変化させる複合式の感知器が提案されている。具体的には、この火災感知器においては、検知された温度が常温を上回る場合は煙に対する閾値を低減させ、検知された温度が常温を下回る場合は煙に対する閾値を増大させる。従って、前者の場合には、煙の検出量が閾値を上回り易くなるため、火災発生を一層迅速に報知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このように閾値を変化させる火災感知器においては、監視領域の温度に基づいて煙の閾値を変更しているので、温度状態と火災の状態とが相互に対応しない環境下においては、火災の発生を迅速に検知できなかったり、誤報を生じたりする可能性があった。
【0005】
例えば、温度状態と火災の状態とが対応しない場合としては、燻焼火災が発生した場合が考えられる。すなわち、火災には、大別して、火災発生と共に炎が発生する一般火災と、火災発生初期において炎が殆ど発生しない燻焼火災がある。一般火災とは、例えば、暖房機器の転倒や故障による異常加熱に起因して発生する火災であり、火災発生初期から炎が発生し、それに伴い、熱、煙、及び、COが発生することが特徴である。一方、燻焼火災とは、例えば、布団の上に落下したタバコの灰によって布団が燻って燃える火災であり、火災発生初期においては、炎や煙が発生することは稀で主にCOが発生することが特徴である。このような燻焼火災においては、火災発生初期における熱の発生が少ないため、上述した特許文献1に記載の火災感知器においては、煙に対する閾値の設定を適切に行えない可能性があった。
【0006】
また、燻焼火災以外で、温度状態と火災の状態とが対応しない場合としては、空調機器によって監視領域内の温度が調整された場合が考えられる。この場合には、火災が発生していないにも関わらず温度が上昇するので、煙の閾値が変更されてしまい、誤報が生じ易くなる可能性があった。特に、空調機器から煙やCOが発生する場合には、これら煙やCOが火災感知器で検出されることによって、誤報の可能性が一層高まっていた。
【0007】
そこで、このような不具合を解決することを目的とした火災感知器も提案されていた。例えば、燻焼火災が発生した場合における熱、煙、及び、COの値及びその経時変化は、ガスコンロ等の燃焼機器が動作中である場合における熱、煙、及び、COの値及びその経時変化と異なるため、このような熱、煙、及び、COの値及びその経時変化に基づいて火災発生の有無を判断することによって、ガスコンロ等の燃焼機器が火災発生の判断処理に与える影響を低減することができる火災感知器も提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−312286号公報
【特許文献2】特開2004−341661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のこのような火災感知器は、ガスコンロの如き燃焼機器の動作状態を、熱、煙、又は、COの如き物理量の値及び経時変化に基づいて間接的に判定していたので、動作状態を誤って判定してしまい、依然として誤報を生じる可能性があった。例えば、監視対象領域である部屋の扉が開放されていた場合、熱、煙、又は、COの如き物理量は、扉を介して他の部屋へと拡散されてしまう。このように拡散されて薄められた所定の物理量に基づいた間接的な判断では、燃焼機器の動作状態を誤って判定してしまい、誤報を生じさせる可能性があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃焼機器の動作状態をより直接的に把握すること等により、火災発生をその初期段階においてより正確に検知することができる、火災警報器又は火災検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の火災警報器は、所定の監視領域内における所定の物理量の状態に基づいて火災を監視する火災警報器であって、所定の第一の物理量を検出する第一の検出手段と、所定の第二の物理量を検出する第二の検出手段と、前記第一の検出手段にて検出された前記第一の物理量の変化率、又は、前記第二の検出手段にて検出された前記第二の物理量の変化率が所定の閾値を越えた場合に、火災が発生したものと判断する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の火災警報器は、多階層における所定の監視領域内における所定の物理量の状態に基づいて火災を監視するため、前記多階層における二以上の階層の各々に設置された火災警報器であって、当該火災警報器が配置された階層における所定の物理量を検出する検出手段と、前記検出手段にて前記物理量が検出された場合において、当該火災警報器が設置された階層以外の階層に設置された他の火災警報器においても前記物理量が検出された場合に、火災が発生したものと判断する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の火災検知装置は、所定の監視領域内における所定の物理量の状態を監視する第一の感知器と、前記所定の監視領域内に設置された燃焼機器とに対して通信可能に接続された火災検知装置であって、前記第一の感知器の監視結果と前記燃焼機器の稼動状態を確認するための稼動情報とを受け取り、これら監視結果及び稼動情報に基づいて、前記所定の監視領域内における火災発生の有無に関する所定の制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の火災検知装置は、請求項3に記載の火災検知装置において、当該火災検知装置は、複数の前記監視領域それぞれと連通する通気経路に設置され、前記所定の物理量の状態を監視する第二の感知器と通信可能に接続されており、前記制御手段は、前記第二の感知器の監視結果を受け取り、この第二の感知器の監視結果に基づいて前記所定の監視領域内における火災発生の有無に関する所定の制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の火災検知装置は、請求項3又は4に記載の火災検知装置において、前記制御手段は、前記第一の感知器の監視結果に基づいて前記所定の物理量が第一の閾値以上であることを確認した場合、前記稼動情報に基づいて前記燃焼機器の稼動状態を確認することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の火災検知装置は、請求項5に記載の火災検知装置において、前記制御手段は、前記燃焼機器が稼働中ではないことを確認した場合、前記所定の監視領域内において火災が発生したと判断することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の火災検知装置は、請求項5に記載の火災検知装置において、前記制御手段は、前記燃焼機器が稼働中ではないことを確認し、前記第二の感知器の監視結果に基づいて前記所定の物理量が前記第二の閾値以上であることを確認した場合、前記所定の監視領域内において火災が発生したと判断することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の火災検知装置は、請求項3から7のいずれか一項に記載の火災検知装置において、前記制御部は、前記燃焼機器の稼動状態を確認するための前記稼動情報に基づいて、前記監視結果に対する所定の閾値の変更を制御することを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載の火災検知装置は、請求項4から8のいずれか一項に記載の火災検知装置において、当該火災検知装置は、前記監視領域と前記通気経路とを開閉可能に連通させる開閉蓋に対して通信可能に接続されており、前記制御手段は、前記第一の感知器の監視結果、前記第二の感知器の監視結果、又は、前記稼動情報に基づいて、前記開閉蓋の開閉を制御することを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載の火災検知装置は、請求項3から9のいずれか一項に記載の火災検知装置において、前記第一の感知器は、監視領域の煙発生の有無を感知する煙感知手段と、前記煙感知手段による煙の感知量を所定条件下で下げるように補償する補償手段とを備え、前記監視領域におけるCO発生が所定手段にて感知され、かつ、前記煙感知手段が煙発生を感知しなかった場合には、前記補償手段を無効にする制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、煙やCOの感知量が閾値を越えていない場合であっても、煙やCOの変化率が閾値を越えている場合には、火災警報を行うことができる。このため、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0022】
また、この発明によれば、煙やCOの感知量が閾値を越えていない場合であっても、他の階においも煙やCOが感知されている場合には、火災警報を行うことができる。このため、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0023】
また、この発明によれば、燃焼機器が火災検知装置に対して通信可能に接続されているため、火災検知装置は、燃焼機器の稼働状況を直接的に把握することが可能となる。そのため、火災検知装置による火災発生の判断処理において、第一の感知器の監視結果に対してこの燃焼機器から副次的に発生する所定の物理量の影響が考慮されるので、火災検知装置は、外乱の影響を受けることなく火災発生の判断を従来よりも、より正確に行うことができる。
【0024】
この発明によれば、所定の監視領域に設置された第一の感知器の監視結果及び燃焼機器の稼動状態に加え、さらに監視領域に連通する通気経路に設置された第二の感知器の監視結果に基づいて、火災検知装置による火災発生の判断処理が行われる。そのため、火災発生の判断処理が、より多くの情報に基づいて行われることとなり、火災検知装置は、火災発生の判断をより正確に行うことができる。
【0025】
この発明によれば、第一の感知器の監視結果に基づいて所定の物理量が第一の閾値以上であることが確認された場合、稼動情報に基づいて燃焼機器の稼動状態が確認される。すなわち、第一の感知器によって何らかの異常が確認されたが火災が発生したと断定できない場合、燃焼機器の稼動状態が確認され、確認された稼働状況が考慮された上で火災発生の判断処理が行われる。そのため、火災検知装置は、燃焼機器の稼働状況を考慮して、火災発生の判断をより正確に行うことができる。
【0026】
この発明によれば、監視結果に対する所定の閾値は、第一の感知器及び第二の感知器が把握できない状況、すなわち燃焼機器の稼動状態に応じて変更される。そのため、監視結果に対する所定の閾値は、適宜適正な値に変更されることとなり、火災検知装置は、火災発生の判断をより正確に行うことができる。
【0027】
この発明によれば、開閉蓋の制御によって、選択された監視領域からのみ通気経路に空気が排出され、第二の感知器は、選択された監視領域から排気された空気のみ監視する。そのため、選択されなかった監視領域の空気が選択された監視領域から排気された空気に与える影響を排除することが可能となり、火災検知装置は、火災発生の判断をより正確に行うことができる。
【0028】
この発明によれば、第一の感知器のCO感知手段がCOを感知し、煙感知手段が煙を感知しないときに、煙感知手段の煙感度補償部を無効にすることにより、第一の感知器の判定部における煙感知の感度を上げることができる。それによって、燻焼火災の初期においてわずかに発生する煙を感知できるようになり、火災検知装置は、火災の発生を素早く検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔各実施の形態の基本的概念〕
まず、本発明の各実施の形態に係る火災警報器又は火災検知装置の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る火災警報器や火災検知装置は、概略的に、監視領域内における火災を検知して警報等を行うものである。ここで、監視領域の具体的形態は任意であり、例えば、ビルや倉庫等であってもよいが、以下の各実施の形態においては、監視領域を一般家庭とした場合について説明する。また、火災警報器の種類も任意であり、例えば、煙を検出して火災警報を発する火災警報器や、メタンを検出してガス漏れ警報を発したり、COを検出して不完全燃焼警報を発したりするガス漏れ警報器を設けることができる。各実施の形態においては、煙感知部とCO感知部とを備えた複合式の火災警報器を設ける場合を例に挙げて説明する。
【0030】
このような前提において、本発明は、通常の火災環境に加えて、温度状態と火災の状態とが相互に対応しない環境下においても、火災を迅速かつ正確に検知することを目的としている。すなわち、COと煙の発生するタイミングが異なるため、火災発生の判断が難しい場合があるが、このような場合でも、各実施の形態の火災検知装置によれば、迅速かつ正確な判断をすることができる。図1は、燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。例えば、燻焼火災の場合、図1のように、火災発生初期では煙はほとんど発生せずCOのみが発生し、しばらくの間、COの発生量のみが徐々に増加し(段階1)、ある程度の時間が経過した段階で、煙の発生量が急激に増加する(段階2)という特徴がある。このような火災が発生した場合、燻焼火災が発生した可能性と燃焼機器が稼動してCOを排出している可能性とが考えられ、その判断が難しい。
【0031】
そこで、実施の形態1の火災警報器では、このようなCOと煙の発生量の変化率の違いに着目し、この変化率に基づいて火災を判断する。
【0032】
また、燻焼火災においては、煙は火源近傍を漂って拡散しないのに対して、COは火源近傍よりも上方に昇っていく。この現象を利用し、実施の形態2の火災警報器では、多層建屋の下階層でCOや煙を検知することに加えて、上階層でもCOを検知し、これら両階層での検知結果に基づいて火災を判断する。
【0033】
さらに、実施の形態3〜5においては、火災検知装置を燃焼機器とリンクさせ、燃焼機器の稼働状況を火災検知装置において適宜入手することにより、CO発生の原因が火災であるか燃焼機器の燃焼であるかを判断する。
【0034】
さらに、実施の形態3〜5の火災検知装置は、屋内に設置された換気システムを利用することにより、火災発生の判断精度を向上することができる。例えば、換気システムの通気管内にCO感知器を配置し、これを火災検知装置とリンクさせる。そして、各実施の形態の火災検知装置は、当該CO感知器、各部屋にある火災警報器、及び、各部屋の燃焼機器からの情報に基づき、火災発生の有無を判断可能とする。
【0035】
さらに、実施の形態3〜5においては、換気システムに他の機能を追加することにより、火災検知装置による火災発生の判断精度をさらに向上させている。例えば、換気システムの部屋の通気口に開閉可能な蓋を設け、これを火災検知装置とリンクさせる。そして、通気管内のCO感知器、各部屋にある火災警報器、及び、各部屋の燃焼機器からの情報に基づき、当該蓋を開閉して空気の流れを調整することにより、一層確実に火災発生の有無を判断することが可能となる。
【0036】
〔実施の形態1〕
以下に添付図面を参照して、本実施の形態1に係る火災警報器を詳細に説明する。
【0037】
(火災警報器の構成)
最初に、火災警報器の構成を説明する。図2は、本実施の形態1に係る火災警報器の屋内配置図、図3は、火災警報器の構成を機能概念的に示すブロック図である。この火災警報器10は、一般住宅等の各部屋に取付けられ、各部屋の煙やCOの如き所定の物理量の状態を常時監視するものである。この火災警報器10は、図3に示すように、煙感知部11、CO感知部12、判定部13、警報部14、送受信部15、及び、制御部16を備えて構成されている。
【0038】
ここで、煙感知部11は、部屋の煙を感知する煙感知手段であり、例えば、煙センサーを有する。また、CO感知部12は、部屋のCOを感知するCO感知手段であり、例えば、COセンサーを有する。また、判定部13は、煙感知部11とCO感知部12からの、煙とCOの感知量(所定の物理量)及び感知量の所定時間当たりの変化率、及び、あらかじめ判定部13に記憶されている各閾値に基づいて、この所定の物理量やその変化率が閾値以上か否かを判定する判定手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0039】
また、警報部14は、判定部13の判定結果に基づき、警報を発する警報手段であり、例えば、ブザーとスピーカーを有する。また、送受信部15は、判定部13にて煙が閾値以上であると判定された場合には、その旨を示す煙検出信号を他の火災警報器10に送信し、送信し、判定部13にてCOが閾値以上であると判定された場合には、その旨を示すCO検出信号を送信し、また必要に応じて他の火災警報器10からの情報を受信する送受信手段であり、例えば、無線式の場合はアンテナ、有線式の場合はコネクターを有する。また、制御部16は、火災警報器10の各部を制御するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応するものであって、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0040】
(火災検知の方法)
以下、火災警報器10が火災を検知する方法について説明する。図4は、火災警報器10の判断処理のフローチャートである。まず、各部屋の火災警報器10は、煙を感知したか否かを監視する(ステップS1)。この監視は、例えば、煙感知部11における煙の感知量が、判定部13に予め設定された所定の最小閾値を越えたか否かを判断することによって行われる。そして、煙が感知されていない場合(ステップS1、No)、火災警報器10は、COを感知したか否かを監視する(ステップS2)。この監視は、例えば、CO感知部12におけるCOの感知量が、判定部13に予め設定された所定の最小閾値を越えたか否かを判断することによって行われる。そして、COが感知されていない場合には(ステップS2、No)、ステップS1に戻って煙の監視を継続する。
【0041】
ここでステップS2においてCOが感知された場合には(ステップS2、Yes)、さらに、このCOの感知量が、火災発生を示す所定の閾値を越えたか否かを判定する(ステップS3)。そして、COの感知量が閾値を越えた場合には(ステップS3、Yes)、火災が発生したものと判断して、火災警報を行う(ステップS5)。具体的には、火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器10に火災警報を発報するようCO検出信号等を有線又は無線にて送信し、これを受けた他の火災警報器10は火災警報を発報する。
【0042】
一方、ステップS3においてCOの感知量が閾値を越えていない場合には(ステップS3、No)、このCOの感知量の所定時間当たりの変化率が、所定の閾値を越えたか否かを判断する(ステップS4)。この判断は、例えば、図示しないタイマーにて計時を行い、各時間毎のCOの感知量を図示しない記憶部に記憶させておき、所定時間毎に記憶部から前回の感知量を呼び出して、その変化量を算定することで行うことができる。そして、変化率が閾値を越えている場合には(ステップS4、Yes)、煙が感知されておらず、かつ、COの感知量が所定閾値を越えていない場合においても、燻焼火災が発生したものと判断して、火災警報を発報する(ステップS5)。
【0043】
図5は、燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。この図5に示すように、COの感知量のみに基づいて火災判定を行う場合には、この感知量がCOの閾値を越える時点t2にならなければ火災警報を発生することができない。これに対して、COの変化率を考慮する場合には、時点t0から時点t1になった時点で、これらの間におけるCOの感知量の変化率がその閾値を越えるので、時点t2よりも早い時点t1において火災警報を発することができる。このように、本実施の形態1に係る火災警報器10によれば、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0044】
再び、図4において、ステップS1で煙が感知したと判断された場合(ステップS1、Yes)、火災警報器10は、さらに、この煙の感知量が、火災発生を示す所定の閾値を越えたか否かを判定する(ステップS6)。そして、煙の感知量が閾値を越えた場合には(ステップS6、Yes)、火災が発生したものと判断して、火災警報を行う(ステップS5)。具体的には、火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器10に火災警報を発報するよう煙検出信号等を有線又は無線にて送信し、これを受けた他の火災警報器10は火災警報を発報する。
【0045】
一方、ステップS6において煙の感知量が閾値を越えていない場合には(ステップS6、No)、ステップ4と同様に、COの感知量の所定時間当たりの変化率が、所定の閾値を越えたか否かを判断する(ステップS7)。そして、COの変化率が閾値を越えている場合には(ステップS7、Yes)、煙の感知量が所定閾値を越えていない場合においても、燻焼火災が発生したものと判断して、火災警報を発報する(ステップS5)。
【0046】
ここで、図5に示すように、煙の感知量のみに基づいて火災判定を行う場合には、この感知量が煙の閾値を越える時点t3にならなければ火災警報を発生することができない。これに対して、COの変化率を考慮する場合には、時点t0から時点t1になった時点で、これらの間におけるCOの感知量の変化率がその閾値を越えるので、時点t3よりも早い時点t1において火災警報を発することができる。このように、本実施の形態1に係る火災警報器10によれば、煙やCOの感知量が閾値を越えていない場合であっても、COの変化率が閾値を越えている場合には、火災警報を行うことができる。このため、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0047】
〔実施の形態2〕
次に、本実施の形態2に係る火災警報器を詳細に説明する。この実施の形態2に係る火災警報器は、多層建屋の下階層でCOや煙を検知することに加えて、上階層でもCOを検知し、これら両階層での検知結果に基づいて火災を判断するものである。なお、特に説明なき構造及び処理については、上述した実施の形態1と同様であり、同一の構造及び処理を同一の符号を付して説明する。
【0048】
(火災警報器の構成)
最初に、火災警報器の構成を説明する。図6は、本実施の形態2に係る火災警報器の屋内配置図、図7は、火災警報器の構成を機能概念的に示すブロック図である。この火災警報器17は、図7に示すように、煙感知部11、CO感知部12、判定部13、警報部14、送受信部15、及び、制御部18を備えて構成されている。このうち、制御部18は、火災警報器17の各部を制御するもので、特許請求の範囲における制御手段に対応するものであって、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0049】
(火災検知の方法)
以下、火災警報器17が火災を検知する方法について説明する。以下では、1階に配置された火災警報器17の火災判断処理について説明し、2階に配置された火災警報器17の火災判断処理については以下の処理において「1階」と「2階」の語を相互に置換したものと同様であるのでその説明を省略する。
【0050】
図8は、火災警報器17の判断処理のフローチャートである。まず、1階の火災警報器17は、図4のステップS1と同様に、1階で(自己が)煙を感知したか否かを監視する(ステップS10)。そして、煙が感知されていない場合(ステップS10、No)、火災警報器17は、図4のステップS2と同様に、1階で(自己が)COを感知したか否かを監視する(ステップS11)。そして、COが感知されていない場合には(ステップS11、No)、ステップS10に戻って煙の監視を継続する。
【0051】
ここで、ステップS11においてCOが感知された場合には(ステップS11、Yes)、さらに、このCOの感知量が、火災発生を示す所定の閾値を越えたか否かを判定する(ステップS12)。そして、COの感知量が閾値を越えた場合には(ステップS12、Yes)、火災が発生したものと判断して、図4のステップ5と同様に、火災警報を行う(ステップS14)。
【0052】
一方、ステップS12においてCOの感知量が閾値を越えていない場合には(ステップS12、No)、さらに、2階に設置されている他の火災警報器17においてCOが感知されているか否かを判断する(ステップS13)。この判断は、例えば、2階の火災警報器17のアドレスを含んだ要求信号を各火災警報器17に送信し、この要求信号を受けた2階の火災警報器17から送信されたその時点におけるCOの感知量を受信することで、実行される。そして、2階の火災警報器17においてCOが感知されていない場合には(ステップS13、No)、火災が発生していないものと判断し、ステップS10に戻って煙の監視を継続する。
【0053】
一方、2階の火災警報器17においてCOが感知されている場合には(ステップS13、Yes)、1階において煙が感知されておらず、かつ、1階のCOの感知量が閾値を越えていない場合においても、燻焼火災によってCOが発生した結果として2階にCOが上昇したものと判断して、火災警報を行う(ステップS14)。図9は、燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。この図9に示すように、1階のCOの感知量のみに基づいて火災判定を行う場合には、この感知量がCOの閾値を越える時点t2にならなければ火災警報を発生することができず、また、1階の煙の感知量のみに基づいて火災判定を行う場合には、この感知量が煙の閾値を越える時点t3にならなければ火災警報を発生することができない。これに対して、上記処理では、1階と2階の両方でCOが感知された時点t0で火災警報を行うことができる。このように、本実施の形態2に係る火災警報器17によれば、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0054】
再び、図8において、ステップS10で煙が感知したと判断された場合(ステップS10、Yes)、火災警報器17は、さらに、この煙の感知量が、火災発生を示す所定の閾値を越えたか否かを判定する(ステップS15)。そして、煙の感知量が閾値を越えた場合には(ステップS15、Yes)、火災が発生したものと判断して、火災警報を行う(ステップS14)。
【0055】
一方、ステップS15において煙の感知量が閾値を越えていない場合には(ステップS15、No)、ステップ13と同様に、2階の火災警報器17でCOが感知されたか否かを判断する(ステップS16)。そして、2階でCOが感知された場合には(ステップS16、Yes)、煙の感知量が所定閾値を越えていない場合においても、燻焼火災が発生したものと判断して、火災警報を発報する(ステップS14)。
【0056】
このように、本実施の形態2に係る火災警報器17によれば、煙やCOの感知量が閾値を越えていない場合であっても、2階においもCOが感知されている場合には、火災警報を行うことができる。このため、燻焼火災のように火災初期において煙の発生が少ないような火災であっても早期にこれを感知して警報することができる。
【0057】
〔実施の形態3〕
以下に添付図面を参照して、本実施の形態3に係る火災検知装置を詳細に説明する。この実施の形態3に係る火災検知装置は、火災検知装置を燃焼機器とリンクさせ、燃焼機器の稼働状況を火災検知装置において適宜入手することにより、CO発生の原因が火災であるか燃焼機器の燃焼であるかを判断するものである。なお、特に説明なき構造及び処理については、上述した実施の形態1と同様であり、同一の構造及び処理を同一の符号を付して説明する。
【0058】
(火災検知システムの構成)
最初に、火災検知システムの基本構成を説明する。図10は、本実施の形態3に係る火災検知装置を備えた火災検知システムの屋内配置図であり、図11は、そのシステムブロック図である。ここで一般家庭の各部屋内には、火災検知システム1、換気システム2、及び、燃焼機器3が備えられている。
【0059】
このうち、火災検知システム1は、各部屋における火災の発生を検知するためのもので、概略的には、火災警報器4、高感度CO感知器5、及び、火災検知装置6を備えて構成されている。ただし、これら機器の詳細については後述する。
【0060】
(換気システムの構成)
また、換気システム2は、各部屋の空気を一箇所に集めて屋外へ排出し、また屋外の空気を各部屋へ吸気するための換気手段である。この換気システム2は、通気管21、通気口22、及び、通気口23を備えて構成されている。ここで、通気管21は、各部屋と屋外とを連通する通気管路であり、例えば、屋内の天井等の空間に設けられ、通気口22及び通気口23とつながっている。この通気管21は、特許請求の範囲における通気経路に対応する。また、通気口22は、各部屋の空気を通気管21へ通す開口部であり、例えば、各部屋の天井近くの壁に設けられている。この通気口22には、例えば、強制的に空気を通気管21へ排出する排気扇24が設けられている。また、通気口23は、各部屋から集められた空気をまとめて屋外へ排出する開口部であり、例えば、外壁に設けられている。この通気口23には、例えば、強制的に空気を屋外へ排出する排気扇25が設けられている。
【0061】
(燃焼機器の構成)
また、図11において、燃焼機器3は、煙やCOの排出源となりうる任意の機器であり、特許請求の範囲における燃焼機器に対応する。この燃焼機器3は、各部屋の全部又は任意の一部へ備え付けられるもので、例えば、暖房機器や調理機器、より具体的には、ガスコンロ、ガスヒーター、石油ヒーター等が相当する。この燃焼機器3は、図11に示すように、燃焼部31、送受信部32、及び、制御部33を備えて構成されている。ここで、燃焼部31は、石油やガスを燃焼する燃焼手段であり、例えば、バーナーを有する。また、送受信部32は、燃焼機器3の稼動状態を火災検知装置6へ送信し、火災検知装置6からの問合わせを受信する送受信手段であり、例えば、無線式の場合はアンテナ、有線式の場合はコネクターを有する。また、制御部33は、燃焼機器3の各部を制御する制御手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0062】
(火災警報器の構成)
次に、上述した火災検知システム1の火災警報器4、高感度CO感知器5、及び、火災検知装置6の詳細について説明する。図10において、火災警報器4は、各部屋の煙やCOの如き所定の物理量の状態を常時監視するもので、特許請求の範囲における第一の感知器に対応する。この火災警報器4は、図11に示すように、煙感知部41、CO感知部42、判定部43、警報部44、送受信部45、及び、制御部46を備えて構成されている。ここで、煙感知部41は、部屋の煙を感知する煙感知手段であり、例えば、煙センサーを有する。また、CO感知部42は、部屋のCOを感知するCO感知手段であり、例えば、COセンサーを有する。また、判定部43は、煙感知部41とCO感知部42からの、煙とCOの感知量(所定の物理量)、及び、あらかじめ判定部43に記憶されている閾値に基づいて、この所定の物理量が閾値以上か否かを判定する判定手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。この閾値は、特許請求の範囲における第一の閾値に対応する。
【0063】
また、警報部44は、判定部43の判定結果に基づき、警報を発する警報手段であり、例えば、ブザーとスピーカーを有する。また、送受信部45は、判定部43にて煙が閾値以上であると判定された場合には、その旨を示す煙検出信号と当該火災警報器4に予め割り当てられたアドレス番号とを送信し、判定部43にてCOが閾値以上であると判定された場合には、その旨を示すCO検出信号とアドレス番号とを送信し、また必要に応じて火災検知装置6からの情報を受信する送受信手段であり、例えば、無線式の場合はアンテナ、有線式の場合はコネクターを有する。また、制御部46は、火災警報器4の各部を制御する制御手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0064】
(高感度CO感知器の構成)
また、図10において、高感度CO感知器5は、各部屋から排気された空気のCOの状態を集中的に常時監視するために、通気口23の近傍へ設けられたものであり、特許請求の範囲における第二の感知器に対応する。この高感度CO感知器5は、図11に示すように、高感度CO感知部51、判定部52、警報部53、送受信部54、及び、制御部55を備えて構成されている。ここで、高感度CO感知部51は、部屋のCOを高感度で感知(火災警報器4のCO感知部42が感知不可能な低濃度のCOを感知)する高感度CO感知手段であり、例えば、高感度COセンサーを有する。また、判定部52は、高感度CO感知部51からのCOの感知量(所定の物理量)とあらかじめ判定部52に記憶されている閾値とに基づいて、この所定の物理量が閾値以上か否かを判定する判定手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。この閾値は、特許請求の範囲における第二の閾値に対応する。
【0065】
また、警報部53は、判定部52の判定結果に基づき、警報を発する警報手段であり、例えば、ブザーとスピーカーを有する。また、送受信部54は、判定部52にてCOが閾値以上であると判定された場合には、その旨を示すCO検出信号を送信し、また必要に応じて火災検知装置6からの情報を受信する送受信手段であり、例えば、無線式の場合はアンテナ、有線式の場合はコネクターを有する。また、制御部55は、高感度CO感知器5の各部を制御する制御手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。
【0066】
(火災検知装置の構成)
また、図10において、火災検知装置6は、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5からの情報に基づき、火災発生の判断を行い、状況に応じてこれらの機器へ指示を行うものであり、特許請求の範囲における火災検知装置に対応する。この火災検知装置6は、例えば、居間などの人が集まる部屋に備え付けられており、図11に示すように、判定処理部61、警報部62、送受信部63、及び、制御部64を備えて構成されている。ここで、判定処理部61は、燃焼機器3からの稼動情報、火災警報器4からの判定結果情報、及び、高感度CO感知器5からの判定結果情報から所定の判定を行い、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5に対して所定の処理を行う判定処理手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。この判定処理部61は、特許請求の範囲における制御手段に対応する。
【0067】
また、警報部62は、制御部64からの指示に基づき、警報を発する警報手段であり、例えば、ブザーとスピーカーを有する。また、送受信部63は、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5へ様々な情報を送信し、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5から様々な情報を受信する送受信手段であり、例えば、無線式の場合はアンテナ、有線式の場合はコネクターを有する。また、制御部64は、火災検知装置6の各部を制御する制御手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。この制御部64は、火災警報器4から煙検出信号又はCO検出信号とアドレス番号とを受信した場合には、所定のアドレステーブルを参照することで、この発報信号を送信した火災警報器4を特定する。
【0068】
(火災検知の方法)
以下、火災検知装置6が火災を検知する方法について説明する。火災検知装置6は、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5の状況に応じて、複数の検知状態(モード)に移行する。特に、火災検知装置6が、火災警報器4からの判定結果情報及び高感度CO感知器5からの判定結果情報より、「煙の発生を認識せず」、「COの発生のみを認識した」場合に、その検知状態(モード)を移行して警戒度を変化させることにより、迅速に火災発生の有無の判断を行う。
【0069】
図12は、火災検知装置6の判断処理のフローチャートである。まず初期状態において、火災検知装置6はいわゆる通常モードの状態にある。
【0070】
この通常モードの状態にある火災検知装置6は、各部屋へ備え付けられた火災警報器4での煙感知の有無を最優先に判断する(ステップS101)。ここで、各部屋へ備え付けられた火災警報器4の少なくとも一つが煙を感知した場合(ステップS101、Yes。すなわち、火災警報器4から煙検出信号が送信された場合)、火災検知装置6は第一の処理を行う(ステップS104)。
【0071】
次に、各部屋へ備え付けられた火災警報器4の一つが、煙を感知しないが(ステップS101、No)、COを感知した場合(ステップS102、Yes。すなわち、火災警報器4からCO検出信号が送信された場合)、火災検知装置6は第二の処理を行う(ステップS105)。
【0072】
あるいは、各部屋へ備え付けられた火災警報器4の一つが、煙とCOを感知しないが(ステップS101及びS102、No)、通気口23の近傍へ設けられた高感度CO感知器5がCOを感知した場合(ステップS103、Yes。すなわち、高感度CO感知器5からCO検出信号が送信された場合)、火災検知装置6は第三の処理を行う(ステップS106)。以下、第一の処理、第二の処理、及び、第三の処理について詳しく説明する。
【0073】
(第一の処理)
まず、第一の処理(ステップS104)について説明する。この処理においては、火災警報器4の少なくとも一つが煙を感知していることから、CO感知の有無に関わらず、火災が発生したものと判断できる。このため、火災検知装置6は、火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信し、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。
【0074】
(第二の処理)
次に、図12の第二の処理(ステップS105)について説明する。図13は、第二の処理における火災検知装置6の判断処理のフローチャートである。第二の処理が開始した段階で、火災検知装置6は、通常モードから準警戒モードへ移行する。これは、各部屋へ備え付けられた火災警報器4の一つが、煙を感知しないがCOを感知している場合、燻焼火災が発生した可能性と、当該部屋の中にある燃焼機器3が稼動してCOを排出している可能性とが考えられるため、直ちに警報は行わずに、さらに警戒度を高めて火災有無を厳密に識別するためである。
【0075】
このため、火災検知装置6は、各部屋にある燃焼機器3から稼動情報を受信し、燃焼機器3が稼動しているかどうかを確認する(ステップS201)。ここで、燃焼機器3が稼動している場合(ステップS201、Yes)、火災検知装置6は、準警戒モードのままステップS209へ移行する。一方、燃焼機器3が稼動していない場合(ステップS201、No)、火災検知装置6は、燻焼火災が発生した可能性が高いと判断して準警戒モードから警戒モードへ移行し、次のステップS202へ進む。
【0076】
まず、準警戒モードから警戒モードへ移行した場合について説明する。このステップS202で、火災検知装置6は、通気口23の近傍へ設けられた高感度CO感知器5から判定結果情報を受信し、高感度CO感知器5があらかじめ判定部52に記憶されている閾値A以上のCOを感知したかどうかを確認する。ここで、高感度CO感知器5が閾値A以上のCOを感知した場合(ステップS202、Yes)、火災検知装置6は、火災が発生したと判断し火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS208)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。一方、高感度CO感知器5が閾値A以上のCOを感知しなかった場合(ステップS202、No)、火災検知装置6は、COを感知した火災警報器4に、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるよう指示を送信する(ステップS203)。ここで、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるのは、燻焼火災の初期における微量の煙発生の有無を判断するためである。
【0077】
よって、次のステップS204で、火災検知装置6は、再び、COを感知した火災警報器4から判定結果情報を受信し、当該火災警報器4が煙を感知したかどうかを確認する。ここで、当該火災警報器4が煙を感知した場合(ステップS204、Yes)、火災検知装置6は、火災が発生したと判断し火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS208)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。一方、火災警報器4が煙を感知しなかった場合(ステップS204、No)、火災検知装置6は、所定時間T1待機する(ステップS205)。ここで、火災検知装置6が所定時間T1待機するのは、火災警報器4のCO感知部42が誤作動した可能性を考慮して、一定時間経過後に再度、CO感知をするためである。
【0078】
よって、次のステップS206で、火災検知装置6は、再び、COを感知した火災警報器4から判定結果情報を受信し、当該火災警報器4がまだCOを感知しているかどうかを確認する。ここで、当該火災警報器4がまだCOを感知している場合(ステップS206、Yes)、火災検知装置6は、ステップS202に戻り、以後ステップS205までのプロセスを繰り返す。一方、当該火災警報器4がCOを感知しなかった場合(ステップS206、No)、火災検知装置6は、火災は発生していないと判断する。そして、火災検知装置6は、COを感知した火災警報器4に、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を元に戻すよう指示を送信する(ステップS207)。その後、火災検知装置6は、第二の処理を終了して通常モードに復帰する。
【0079】
次に、ステップS201で、燃焼機器3が稼動していると火災検知装置6が判断した場合について説明する(ステップS201、Yes)。この場合、火災検知装置6は、高感度CO感知器5に、判定部52に記憶されている閾値Aを閾値Bに変更(閾値A<閾値B)するよう指示を送信する(ステップS209)。ここで、判定部52に記憶されている閾値を上げるのは、燃焼機器3が通常排出するCO量より多いCO量(閾値B以上)が感知されれば、火災が発生したと判断可能だからである。すなわち、本実施の形態において、概念的に、閾値Aは、自然環境下で発生し得るCO量<閾値A≦燃焼機器3が通常排出するCO量のように設定され、閾値Bは、燃焼機器3が通常排出するCO量<閾値Bのように設定される。ただし、これら閾値Aや閾値Bの具体的な値は、部屋の広さや燃焼機器3の種別やCO排出量等を考慮して任意に設定することができる。
【0080】
よって、次のステップS210で、火災検知装置6は、再び、高感度CO感知器5から判定結果情報を受信し、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知したかどうかを確認する。ここで、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知した場合(ステップS210、Yes)、火災検知装置6は、火災が発生したと判断し火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS208)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。一方、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知しなかった場合(ステップS210、No)、火災検知装置6は、火災は発生していないと判断する。そして、火災検知装置6は、高感度CO感知器5に、判定部52に記憶されている閾値Bを閾値Aに戻すよう指示を送信する(ステップS211)。その後、火災検知装置6は、第二の処理を終了して通常モードに復帰する。
【0081】
このように、本実施の形態3に係る火災検知装置によれば、部屋の火災警報器が最初にCOのみ感知した場合でも、部屋にある燃焼機器の稼動状況と、通気口の近傍へ設けられた高感度CO感知器のCO検知とにより、火災の発生を判断することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態3に係る火災検知装置によれば、さらに、COを感知した部屋の火災警報器の煙感知判定部の閾値を下げることにより、火災の発生を素早く判断することが可能となる。
【0083】
(第三の処理)
次に、図12の第三の処理(ステップS106)について説明する。図14は、第三の処理における火災検知装置6の判断処理のフローチャートである。第三の処理が開始した段階で、火災検知装置6は、通常モードから警戒モードへ移行する。これは、各部屋へ備え付けられた火災警報器4は煙とCOのいずれも感知していないが、通気口23の近傍へ設けられた高感度CO感知器5がCOを感知しているので、火災が発生していてもその火災が発生している部屋の扉や窓が開いている等の何らかの理由により、当該部屋へ備え付けられた火災警報器4が煙とCOを感知していない可能性があるからである。
【0084】
まず、ステップS301で、火災検知装置6は、各部屋にある燃焼機器3から稼動情報を受信し、燃焼機器3が稼動しているかどうかを確認する。ここで、燃焼機器3が稼動している場合(ステップS301、Yes)、高感度CO感知器5にて感知されたCOは燃焼機器3から排出されたものであって火災ではない可能性が高いので、状況をさらに確認するため、火災検知装置6は、警戒モードのままステップS306へ移行する。一方、燃焼機器3が稼動していない場合(ステップS301、No)、高感度CO感知器5にて感知されたCOは燃焼機器3から排出されたものではなく火災によるものである可能性が高いので、火災検知装置6は、場所は特定できないが、火災が発生したと判断し火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS302)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。
【0085】
さらに、次のステップS303で、火災検知装置6は、全ての部屋の火災警報器4に、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるよう指示を送信する。ここで、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるのは、微量の煙を感知可能とすることで、火災が発生した部屋を特定するためである。
【0086】
よって、次のステップS304で、特定の部屋の火災警報器4が煙を感知した場合は、その部屋で火災が発生したと判断し、改めてその情報を加えた火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に、改めてその情報を加えた火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS305)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4はその旨の火災警報を発報する。
【0087】
また、ステップS301で、燃焼機器3が稼動していると火災検知装置6が判断した場合(ステップS301、Yes)、火災検知装置6は、高感度CO感知器5に、判定部52に記憶されている閾値Aを閾値Bに変更(閾値A<閾値B)するよう指示を送信する(ステップS306)。ここで、判定部52に記憶されている閾値を上げるのは、燃焼機器3が通常排出するCO量より多いCO量(閾値B以上)が感知されれば、火災が発生したと判断可能だからである。
【0088】
よって、次のステップS307で、火災検知装置6は、再び、高感度CO感知器5から判定結果情報を受信し、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知したかどうかを確認する。ここで、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知した場合(ステップS307、Yes)、火災検知装置6は、場所は特定できないが、火災が発生したと判断し火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS308)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4は火災警報を発報する。
【0089】
次のステップS309で、火災検知装置6は、全ての部屋の火災警報器4に、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるよう指示を送信する。ここで、判定部43に記憶されている煙感知の閾値を下げるのは、微量の煙を感知可能とすることで、火災が発生した部屋を特定するためである。
【0090】
よって、次のステップS310で、特定の部屋の火災警報器4が煙を感知した場合は、その部屋で火災が発生したと判断し、改めてその情報を加えた火災警報を発報するとともに、全ての部屋の火災警報器4に、改めてその情報を加えた火災警報を発報するよう指示を送信する(ステップS311)。そして、火災検知装置6からの指示を受信した全ての部屋の火災警報器4はその旨の火災警報を発報する。
【0091】
また、ステップS307で、高感度CO感知器5が閾値B以上のCOを感知しなかった場合(ステップS307、No)、火災は発生していないと判断する。そして、火災検知装置6は、高感度CO感知器5に、判定部52に記憶されている閾値Bを閾値Aに戻すよう指示を送信する(ステップS312)。その後、火災検知装置6は、第三の処理を終了して通常モードに復帰する。
【0092】
このように、本実施の形態3に係る火災検知装置によれば、通気口の近傍へ設けられた高感度CO感知器が最初にCOを感知した場合でも、部屋にある燃焼機器の稼動状況により、火災の発生を判断することが可能となる。
【0093】
また、本実施の形態3に係る火災検知装置によれば、さらに、部屋の火災警報器の煙感知判定部の閾値を下げることにより、火災が発生した部屋を特定することが可能となる。
【0094】
〔実施の形態4〕
以下に添付図面を参照して、本実施の形態4に係る火災検知装置を詳細に説明する。本実施の形態4に係る火災検知装置は、通気口を開閉する開閉蓋を制御する。この制御により、選択された部屋からのみ空気が排気されることとなり、高感度CO感知器は、選択された部屋から排気された空気のみを監視する。なお、特に説明なき構造及び処理については、上述した実施の形態3と同様であり、同一の構造及び処理を同一の符号を付して説明する。
【0095】
(火災検知システムの構成)
最初に、火災検知システムの基本構成を説明する。図15は、本実施の形態4に係る火災検知装置を備えた火災検知システムの屋内配置図であり、図16は、そのシステムブロック図である。ここで、一般家庭の各部屋内には、火災検知システム7、換気システム8、及び、燃焼機器3が備えられている。
【0096】
このうち、火災検知システム7は、各部屋における火災の発生を検知するためのもので、概略的には、火災警報器4、高感度CO感知器5、及び、火災検知装置9を備えて構成されている。ただし、火災検知装置9の詳細については後述する。
【0097】
(換気システムの構成)
また、換気システム8は、各部屋の空気を一箇所に集めて屋外へ排出し、その代わりに屋外の空気を各部屋へ吸気するための換気手段である。この換気システム8は、通気管21、通気口22、通気口23、及び、開閉蓋86を備えて構成されている。
【0098】
このうち、開閉蓋86は、火災検知装置9の制御に基づいて、通気口22を開閉する通気口開閉手段であり、特許請求の範囲における開閉蓋に対応する。この開閉蓋86は、例えばモータ等の駆動手段によって駆動され、この駆動手段は、有線又は無線によって火災検知装置9と通信可能に接続されている。
【0099】
(火災検知装置の構成)
次に、上述した火災検知システム7の火災検知装置9の詳細について説明する。この火災検知装置9は、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5からの情報に基づき、火災発生の判断を行い、状況に応じて各機器へ指示を行うものであり、特許請求の範囲における火災検知装置に対応する。この火災検知装置9は、例えば、居間などの人が集まる部屋に備え付けられており、図16に示すように、判定処理部91、警報部62、送受信部63、及び、制御部64を備えて構成されている。ここで、判定処理部91は、燃焼機器3からの稼動情報、火災警報器4からの判定結果情報、及び、高感度CO感知器5からの判定結果情報から所定の判定を行い、燃焼機器3、火災警報器4、及び、高感度CO感知器5に対して所定の処理を行う判定処理手段であり、例えば、IC及びこのIC上で実行されるプログラムを有する。さらに、判定処理部91は、燃焼機器3からの稼動情報、火災警報器4からの煙検出信号やCO検出信号、及び、高感度CO感知器5からのCO検出信号に基づいて所定の判定を行い、開閉蓋86の開閉を制御する開閉制御手段である。具体的には、判定処理部91は、有線又は無線を介し、開閉蓋86を駆動する駆動手段を制御する。ここで、判定処理部91は、特許請求の範囲における制御手段に対応する。
【0100】
(火災検知の方法)
以下、火災検知装置9が火災を検知する方法について説明する。この実施の形態4においては、実施の形態3の図12に示した処理と同様に、第一の処理、第二の処理、及び、第三の処理が行われる。ただし、第一の処理については、上述した実施の形態3と同一であるためその説明を省略し、第二の処理及び第三の処理については実施の形態3と異なる部分についてのみ説明する。
【0101】
(第二の処理)
まず、第二の処理について説明する。図17は、第二の処理における火災検知装置9の判断処理のフローチャートである。この第二の処理は、火災警報器4によってCOのみが検知された場合に行われる処理である。第二の処理が開始した段階で、火災検知装置9は、通常モードから準警戒モードへ移行する。これは、各部屋へ備え付けられた火災警報器4の一つが、煙を感知しないがCOを感知した場合、燻焼火災が発生した可能性や、当該部屋の中にある燃焼機器3が稼動してCOを排出している可能性等が考えられるからである。この準警戒モードにおいて、火災検知装置9は、まず各開閉蓋86の開閉を制御し、それによって、当該火災警報器4によってCOが感知された部屋以外の部屋の通気口22が閉鎖される(ステップS401)。例えば、寝室においてCOのみが感知された場合、火災検知装置9は、各開閉蓋86の開閉を制御し、その結果、寝室以外の部屋の通気口22が閉鎖される。これにより、COが感知された部屋の空気のみ通気口22から取り込まれ、通気口23から排気される。したがって、この通気口23に設けられた高感度CO感知器5は、COが感知された部屋から排気された空気のみ監視することとなる。
【0102】
次に、ステップS402で、火災検知装置9は、各部屋にある燃焼機器3から稼動情報を受信し、燃焼機器3が稼動しているかどうかを確認する。ここで、燃焼機器3が稼動していない場合(ステップS402、No)、火災検知装置9は、燻焼火災が発生した可能性が高いと判断して準警戒モードから警戒モードへ移行し、ステップS403からステップS409を実行する。ここで、ステップS403からステップS409は、実施の形態3における図13のステップS202からステップS208までと同じである。
【0103】
一方、燃焼機器3が稼動している場合(ステップS402、Yes)、火災検知装置9は、準警戒モードのままステップS410に移行し、所定時間T2待機する(ステップS410)。ここで、所定時間T2待機するのは、COが感知された部屋に設けられた通気口22から取り込まれた空気が通気口23から排出されるまで、一定時間かかるためである。そして、所定時間T2経過後、火災検知装置9は、火災警報器4がCOを感知した部屋で、燃焼機器3が稼動しているかどうかを確認する(ステップS411)。燃焼機器3が稼動していない場合(ステップS411、No)、火災検知装置9は、燻焼火災が発生した可能性が高いと判断して準警戒モードから警戒モードへ移行し、ステップS412からステップS417を実行する。ここで、ステップS412からステップS417は、実施の形態3における図13のステップS202からステップS207までと同じである。
【0104】
一方、燃焼機器3が稼動している場合(ステップS411、Yes)、火災検知装置9は、準警戒モードのままステップS418からステップS420を実行する。ここで、ステップS418からステップS420は、実施の形態3における図13のステップS209からステップS211までと同じである。以上が、火災検知装置9による第二の処理の説明である。
【0105】
このように、本実施の形態4に係る火災検知装置によれば、開閉蓋の制御によって、COが感知された部屋の空気のみ通気口から排気される。そのため、高感度CO感知器が監視する空気から、COが感知された部屋以外において発生したCOの影響が排除され、より正確に火災発生の有無を判断できる。
【0106】
(第三の処理)
次いで、第三の処理について説明する。図18は、第三の処理における火災検知装置9の判断処理のフローチャートである。この第三の処理は、火災警報器4によってCO及び煙の両方が検知されなかった場合に行われる処理である。第三の処理が開始した段階で、火災検知装置9は、通常モードから準警戒モードへ移行する。これは、各部屋へ備え付けられた火災警報器4は煙とCOのいずれも感知していないが、通気口23の近傍へ設けられた高感度CO感知器5がCOを感知しているので、火災が発生していても火災が発生している部屋の扉や窓が開いている等の何らかの理由により、当該部屋へ備え付けられた火災警報器4が煙とCOを感知していない可能性があるからである。
【0107】
まず、火災検知装置9は、燃焼機器3が稼動しているかどうかを確認し(ステップS501)、燃焼機器3が稼動していない場合(ステップS501、No)、火災検知装置9は、ステップS502からステップS505を実行する。ここで、ステップS502からステップS505は、実施の形態3における図14のステップS302からステップS305までと同じである。
【0108】
一方、燃焼機器3が稼動している場合(ステップS501、Yes)、火災検知装置9は、開閉蓋86の開閉を制御し、燃焼機器3が稼動している部屋の通気口22が閉鎖される(ステップS506)。そして、火災検知装置9は、所定時間T2待機する(ステップS507)。ここで、開閉蓋86の制御が行われてから、火災検知装置9が所定時間待機するのは、通気口22から取り込まれた空気が通気口23から排出されるまで、一定時間かかるためである。そして、所定時間T2経過後、ステップS508からステップS514を実行する。ここで、ステップS508からステップS514は、実施の形態3における図14のステップS306からステップS312までと同じである。
【0109】
このように、本実施の形態4に係る火災検知装置によれば、開閉蓋の制御によって、燃焼機器が稼動している部屋の空気は通気口から排気されない。そのため、高感度CO感知器が監視する空気から、燃焼機器の影響が排除され、より正確に火災発生の有無を判断できる。
【0110】
〔実施の形態5〕
次に、上述した実施の形態3に係る火災検知装置において、各部屋の火災警報器の判定部における煙感知の感度を上げる具体的な方法について、以下説明する。
【0111】
本実施の形態5に係る火災検知装置の構成は、上述した実施の形態3とほぼ同様であり、同一の構成を同一の符号を付して説明する。火災検知システム1は、火災警報器4、高感度CO感知器5、及び、火災検知装置6を備えて構成されている。また、火災警報器4は、部屋の煙とCOの状態を常時監視するために、各部屋へ備え付けられている。この火災警報器4は、煙感知部41、CO感知部42、判定部43、警報部44、送受信部45、及び、制御部46を備えて構成されている。
【0112】
(煙感知部の構成)
図19は、煙感知部41の構成を示したブロック図である。煙感知部41は、発光LED41a、受光LED41b、発光駆動部41c、増幅部41d、LED制御部41e、信号処理部41fを備えて構成されている。ここで、発光LED41aは光を発光し、その光が煙チャンバー(図示せず)内に流入した煙により乱反射し、受光LED41bがその反射光を受光する。また、発光駆動部41cは、発光LED41aが発光するよう電圧を加え、増幅部41dは、受光LED41bが受光した光を出力信号に変換し増幅する。また、LED制御部41eは、発光LED41a、受光LED41b、発光駆動部41c、及び、増幅部41dを制御する。また、信号処理部41fは、増幅部41dから送られた信号に様々な処理を加えるが、その回路中に感度補償部41gを有している。
【0113】
(感度補償部)
ここで、感度補償部41gは、増幅部41dが増幅した出力信号の値を、所定の条件に応じて変換する回路であり、この感度補償部41gは、火災検知装置6の判定処理部61により、その機能が有効あるいは無効になるように制御される。以下、感度補償部41gについて詳しく説明する。図20は、判定部43が信号処理部41fから受け取る出力信号の経時的変化を示した図である。通常、信号処理部41fから判定部43へ送られる出力信号が判定部43の煙感知閾値を越えた場合(出力信号1の場合)は、判定部43は煙を感知したと判断する。
【0114】
しかし、発光LED41aが発光した光を受光LED41bが受光する際に、チャンバー内に流入した煙ではなく、チャンバー内に堆積した埃により乱反射した反射光を受光する場合がある。この場合、受光LED41bの受光レベルが変動し、信号処理部41fが増幅部41dから受け取る出力信号も変動するため、その対策として、感度補償部41gは、その出力信号に補正を加え当該変動分を除去する。例えば、図20の出力信号2のように、信号処理部41fが増幅部41dから受け取る出力信号が少しずつ増加する場合には、感度補償部41gがその増加分を差し引いて出力信号2を出力信号2’へ補正した後、判定部43へ送信する。
【0115】
しかしながら、このような感度補償が、燻焼火災環境下においては悪影響を及ぼす可能性があった。すなわち、燻焼火災では、前述したように、発生初期では煙はほとんど発生せず、ある程度の時間が経過した段階で煙の発生量が急激に増加するという特徴がある。このように燻焼火災の初期において煙が緩慢に増加した場合、これを埃の堆積による受光量の増加と判断して、感度補償を行ってしまったのでは、煙を正確に検知できないため、火災警報器4がその火災を検知することが困難になる。
【0116】
この問題を解決するため、本実施の形態5においては、所定の条件を満たす場合には火災警報器4の感度補償部41gを無効にし、火災警報器4の判定部43における煙感知の感度を上げることにより、火災、とりわけ、燻焼火災の発生を迅速かつ確実に判断する。以下に、具体的な処理方法を説明する。
【0117】
(火災検知の方法)
この実施の形態5においては、実施の形態3の図12に示した処理と同様に、第一の処理、第二の処理、及び、第三の処理が行われる。ここでは、特に、第二の処理の場合について代表して説明する。また、第二の処理についても、実施の形態3と異なる部分についてのみ説明する。
【0118】
(第二の処理)
図21は、実施の形態5の第二の処理における火災検知装置6の判断処理のフローチャートである。第二の処理が開始した段階で、火災検知装置6は、通常モードから準警戒モードへ移行する。ここで、ステップS601からステップS603は、実施の形態3における図13のステップS201からステップS203までと同じである。
【0119】
次のステップS604で、火災検知装置6は、COを感知した火災警報器4に、煙感知部41の信号処理部41f内の感度補償部41gを無効にするよう指示を送信する。このように、感度補償部41gを無効にすることにより、判定部43に送信される煙の量は、実際に煙感知部41が感知した量になるので、判定部43に記憶されている煙感知閾値との差が減少し、判定部43に記憶されている煙感知閾値を下げるのと同様の効果となり、判定部における煙感知の感度を上げることができる。
【0120】
次のステップS605からステップS608は、実施の形態3における図13のステップS204からステップS207までと同じであり、以下、説明を省略する。
【0121】
次のステップS609で、火災が発生していないと判断できるので初期状態に復帰させるため、火災検知装置6は、COを感知した火災警報器4に、煙感知部41の信号処理部41f内の感度補償部41gを有効にするよう指示を送信する。
【0122】
その後のステップS610からステップS613は、実施の形態3における図13のステップS208からステップS211までと同じであり、以下、説明を省略する。
【0123】
このように、本実施の形態5に係る火災検知装置によれば、さらに、COを感知した部屋の火災警報器の煙感度補償部を無効にすることにより、火災警報器の判定部における煙感知の感度を上げ、火災初期にはCOを発生するが煙をあまり発生しない燻焼火災のような火災の発生を素早く検知することが可能となる。
【0124】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0125】
(本発明の適用分野について)
本発明の適用対象は、上述したような一般家庭には限られず、燃焼機器を屋内で使用するビル、倉庫等のあらゆる建物に適用可能である。
【0126】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、火災検知装置が全ての燃焼機器と接続しておらず、一部の燃焼機器からの燃焼情報を受信できなくても、他の燃焼機器の燃焼情報から判断して警戒モードに移行できる限り本発明の課題が達成されている。
【0127】
(制御について)
また、各実施例において示した制御部や制御部内の各処理ブロックは、実際には、CPU及びこのCPUにて読み出され実行されるコンピュータプログラムとして構成することができ、あるいは、ハードワイヤードロジックにて構成することができる。また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。この他、前記文書中や図面中で示した処理手順、又は、制御手順については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0128】
(感知量の変化率)
実施の形態1においては、COの感知量の変化率に基づいて火災判断を行っているが、煙の感知量の変化率に基づいて判断を行ってもよい。また、COや煙の感知量が閾値を越えていない場合にのみ変化率を参照するのではなく、COや煙の感知量が閾値を越えている場合において、さらに変化率が所定閾値を越えている場合にのみ警報を行うようにすることで、警報精度を高めてもよい。
【0129】
(多階層における検知)
また、実施の形態2においては、1階の火災警報器において、2階の火災警報器の感知結果を参照しているが、1階や2階に限定されず、任意の上下階層間において感知結果を相互参照することができる。また、CO以外に煙の上昇がある場合には、他の階における煙の感知結果を参照してもよい。また、COや煙の感知量が閾値を越えていない場合にのみ他の階の感知結果を参照するのではなく、COや煙の感知量が閾値を越えている場合において、さらに他の階でCOや煙が感知されている場合にのみ警報を行うようにすることで、警報精度を高めてもよい。
【0130】
(火災検知システム)
火災検知システムは、高感度CO感知器の代わりに、他の高感度感知器を備えてもよい。例えば、煙を高感度で感知する高感度煙感知器を備えてもよい。あるいは、換気システムに設置するCO感知器の感度があまり問題にならない場合には、高感度CO感知器に代えて通常感度のCO感知器を用いてもよい。あるいは、換気システムには、CO感知器に代えて煙感知器を設けてもよい。また、煙やCOではなく、熱により火災を検出する感知器を用いてもよい。
【0131】
(通気口)
通気口は、屋外とつながっていなくてもよい。例えば、屋内の汚れた空気を一箇所に集めて浄化後、再び、屋内へ戻してもよい。この場合、高感度CO感知器は、屋内の汚れた空気が集まる場所の近傍に設けられることがより好ましい。また、通気口は、一箇所だけでなく数箇所に設けられていてもよい。この場合、高感度CO感知器は、全ての通気口の近傍に設けられていればよい。
【0132】
(火災検知装置)
火災警報器と高感度CO感知器が判定部の機能を備えず、代わりに、火災検知装置が判定部の機能を備えてもよい。この場合、火災検知装置は、火災警報器と高感度CO感知器とが監視する所定の物理量をそのまま受け取り、あらかじめ判定部に記憶されている閾値に基づいて、この所定の物理量が閾値以上か否かを判定してもよい。
【0133】
また、火災検知装置の判定処理部が、燃焼機器が作動していると判断した場合、燃焼機器の作動を停止させる機能を備えてもよい。この場合、判定処理部は燃焼機器の作動停止後に、再び火災警報器からの判定結果情報と高感度CO感知器からの判定結果情報とを受け取り、所定の判定と処理を行ってもよい。
【0134】
(開閉蓋の制御について)
実施の形態4において、判定処理部91は、火災警報器4の監視結果及び燃焼機器3からの稼動情報に基づいて、開閉蓋86の開閉を制御しているが、これに限らず、判定処理部91は、高感度CO感知器5の監視結果に基づいて、開閉蓋86の開閉を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
この発明は、初期火災、特に、燻焼火災を検知する火災検知装置に適用でき、火災警報器や火災検知装置の検知精度をあげることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る火災警報器の屋内配置図である。
【図3】火災警報器の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図4】火災警報器の判断処理のフローチャートである。
【図5】燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る火災警報器の屋内配置図である。
【図7】火災警報器の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図8】火災警報器の判断処理のフローチャートである。
【図9】燻焼火災の場合における煙とCOの発生量の推移を示した概念図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る火災検知装置を備えた火災検知システムの屋内配置図である。
【図11】実施の形態3に係る火災検知装置を備えた火災検知システムのブロック図である。
【図12】火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【図13】実施の形態3の第二の処理における火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【図14】実施の形態3の第三の処理における火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態4に係る火災検知装置を備えた火災検知システムの屋内配置図である。
【図16】実施の形態4に係る火災検知装置を備えた火災検知システムのブロック図である。
【図17】実施の形態4の第二の処理における火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【図18】実施の形態4の第三の処理における火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態5に係る煙感知部の構成を示したブロック図である。
【図20】判定部が信号処理部から受け取る出力信号の経時的変化を示した図である。
【図21】実施の形態5の第二の処理における火災検知装置の判断処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
1 火災検知システム
2 換気システム
4、10、17 火災警報器
11、41 煙感知部
12、42 CO感知部
13、43、52 判定部
14、44、53、62 警報部
15、32、45、54、63 送受信部
16、18、33、46、55、64 制御部
21 通気管
22 通気口
23 通気口
24 排気扇
25 排気扇
3 燃焼機器
31 燃焼部
41a 発光LED
41b 受光LED
41c 発光駆動部
41d 増幅部41
41e LED制御部
41f 信号処理部
41g 感度補償回路
5 高感度CO感知器
51 高感度CO感知部
6 火災検知装置
61 判定処理部
7 火災検知システム
8 換気システム
86 開閉蓋
9 火災検知装置
91 判定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視領域内における所定の物理量の状態に基づいて火災を監視する火災警報器であって、
所定の第一の物理量を検出する第一の検出手段と、
所定の第二の物理量を検出する第二の検出手段と、
前記第一の検出手段にて検出された前記第一の物理量の変化率、又は、前記第二の検出手段にて検出された前記第二の物理量の変化率が所定の閾値を越えた場合に、火災が発生したものと判断する制御手段と、
を備えたことを特徴とする火災警報器。
【請求項2】
多階層における所定の監視領域内における所定の物理量の状態に基づいて火災を監視するため、前記多階層における二以上の階層の各々に設置された火災警報器であって、
当該火災警報器が配置された階層における所定の物理量を検出する検出手段と、
前記検出手段にて前記物理量が検出された場合において、当該火災警報器が設置された階層以外の階層に設置された他の火災警報器においても前記物理量が検出された場合に、火災が発生したものと判断する制御手段と、
を備えたことを特徴とする火災警報器。
【請求項3】
所定の監視領域内における所定の物理量の状態を監視する第一の感知器と、前記所定の監視領域内に設置された燃焼機器とに対して通信可能に接続された火災検知装置であって、
前記第一の感知器の監視結果と前記燃焼機器の稼動状態を確認するための稼動情報とを受け取り、これら監視結果及び稼動情報に基づいて、前記所定の監視領域内における火災発生の有無に関する所定の制御を行う制御手段を備えたこと、
を特徴とする火災検知装置。
【請求項4】
当該火災検知装置は、複数の前記監視領域それぞれと連通する通気経路に設置され、前記所定の物理量の状態を監視する第二の感知器と通信可能に接続されており、
前記制御手段は、前記第二の感知器の監視結果を受け取り、この第二の感知器の監視結果に基づいて前記所定の監視領域内における火災発生の有無に関する所定の制御を行うこと、
を特徴とする請求項3に記載の火災検知装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第一の感知器の監視結果に基づいて前記所定の物理量が第一の閾値以上であることを確認した場合、前記稼動情報に基づいて前記燃焼機器の稼動状態を確認すること、
を特徴とする請求項3又は4に記載の火災検知装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記燃焼機器が稼働中ではないことを確認した場合、前記所定の監視領域内において火災が発生したと判断すること、
を特徴とする請求項5に記載の火災検知装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記燃焼機器が稼働中ではないことを確認し、前記第二の感知器の監視結果に基づいて前記所定の物理量が第二の閾値以上であることを確認した場合、前記所定の監視領域内において火災が発生したと判断すること、
を特徴とする請求項5に記載の火災検知装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記燃焼機器の稼動状態を確認するための前記稼動情報に基づいて、前記監視結果に対する所定の閾値の変更を制御すること、
を特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載の火災検知装置。
【請求項9】
当該火災検知装置は、前記監視領域と前記通気経路とを開閉可能に連通させる開閉蓋に対して通信可能に接続されており、
前記制御手段は、前記第一の感知器の監視結果、前記第二の感知器の監視結果、又は、前記稼動情報に基づいて、前記開閉蓋の開閉を制御すること、
を特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の火災検知装置。
【請求項10】
前記第一の感知器は、監視領域の煙発生の有無を感知する煙感知手段と、前記煙感知手段による煙の感知量を所定条件下で下げるように補償する補償手段とを備え、
前記監視領域におけるCO発生が所定手段にて感知され、かつ、前記煙感知手段が煙発生を感知しなかった場合には、前記補償手段を無効にする制御手段を備えたこと、
を特徴とする請求項3から9のいずれか一項に記載の火災検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−277138(P2006−277138A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93081(P2005−93081)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】