説明

炉内搬送装置及び加熱炉

【課題】 被処理物を炉内搬送装置により加熱炉における炉床の上方に設けられた固定ビームの上を順々に移動させるにあたり、ウォーキングビーム式のものに比べて、設備が非常に簡単かつ低コストになり、メンテナンス等も容易に行えるようにする。
【解決手段】 加熱炉10内に被処理物Aの搬送方向に沿った複数の固定ビーム14を炉床13の上方に設けると共に、この炉床を貫通するようにして、被処理物の搬送方向に沿った搬送案内溝17を加熱炉の幅方向に複数設け、搬送案内溝に沿って走行するカート22に、搬送案内溝を通して上方に突出されて昇降する昇降保持部22bを設け、この昇降保持部を上昇させて固定ビームに保持された被処理物を昇降保持部に保持させると共に、カートを搬送方向の所定位置まで走行させ、固定ビームに保持された被処理物を順々に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内において被処理物を搬送させる炉内搬送装置及びこのような炉内搬送装置を備えた加熱炉に関するものである。特に、炉内搬送装置により炉内において被処理物を搬送させるにあたり、被処理物をその搬送方向に沿って炉床の上方に設けられた固定ビームの上を順々に移動させて搬送させるにあたり、被処理物の搬送方向に沿って設けられた移動フレームを上下方向及び送り方向に往復移動させてウォーキング動作させ、この移動フレームにより被処理物を固定ビームの上を順々に移動させて搬送させる従来のウォーキングビーム式の炉内搬送装置に比べて、その設備が非常に簡単で、全体としてのコストを大幅に低減できると共に、メンテナンス等も容易に行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱炉等においては、鋼片、鋼板等の被処理物を炉内において順々に搬送させて連続的に処理することが行われており、このように被処理物を炉内において順々に搬送させる炉内搬送装置としては、ウォーキングビーム式のものが広く利用されている。
【0003】
ここで、ウォーキングビーム式の炉内搬送装置においては、一般に、特許文献1〜4等に示されるように、炉内に設けられた炉床の上に支持部材を介して被処理物の搬送方向に沿った固定ビームを被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して複数設けると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された支持部材に、被処理物の搬送方向に沿って炉の略全長に伸びた移動ビームを保持させるようにして、複数の移動ビームを被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して設けるようにしている。
【0004】
そして、上記のウォーキングビーム式の炉内搬送装置においては、移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に支持させ、このウォーキングビーム駆動手段により上記の移動フレームを駆動させて、移動フレームに設けられた各移動ビームを上下方向及び送り方向に往復移動させてウォーキング動作(矩形運動)させ、被処理物を各移動ビームにより固定ビームの上を順々に移動させて、被処理物を炉内において順々に移動させるようになっている。
【0005】
ここで、上記のようにウォーキングビーム駆動手段によって移動フレームに設けられた各移動ビームをウォーキング動作させる場合、このウォーキングビーム駆動手段が大型化すると共に、加熱炉等における炉床の下に上記のような移動フレームやウォーキングビーム駆動手段を設けるためには、炉床の下の掘り込み深さを大きくすることが必要になり、このような設備に多大なコストが必要になると共に、ウォーキングビーム駆動手段を駆動させるのに大きな動力が必要となり、ランニングコストも高くつくという問題があった。
【0006】
また、被処理物を加熱させる加熱炉に上記のようなウォーキングビーム式の炉内搬送装置を設けた場合、上記の各移動ビームが過剰に加熱されて変形したり、損傷したりするのを防止するため、各移動ビームを水冷させるようにしている。
【0007】
しかし、ウォーキングビーム式の炉内搬送装置においては、上記のように各移動ビームを被処理物の搬送方向に沿って炉の略全長に伸びるように設けているため、このように炉の略全長に伸びた各移動ビーム全体を水冷させるのに、大きな水冷設備が必要になると共に、水冷ロスも大きくなる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−50413号公報
【特許文献2】特開平8−199227号公報
【特許文献3】特開平10−183235号公報
【特許文献4】特開2000−335723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、炉内において被処理物を搬送させる炉内搬送装置及びこのような炉内搬送装置を備えた加熱炉において、ウォーキングビーム式の炉内搬送装置を用いた場合における上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、本発明においては、加熱炉等の炉内において、炉内搬送装置により被処理物を炉床の上方に設けられた固定ビームの上を順々に移動させて搬送させるにあたり、上記のようなウォーキングビーム式の炉内搬送装置に比べて、その設備が非常に簡単になり、全体としてのコストを大幅に低減できると共に、メンテナンス等も容易に行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る炉内搬送装置においては、上記のような課題を解決するため、炉床の上方に被処理物の搬送方向に沿った固定ビームが被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して複数設けられると共に、被処理物の搬送方向に沿って上記の炉床を貫通する搬送案内溝が被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して複数設けられ、上記の炉床の下において上記の搬送案内溝に沿って被処理物の搬送方向に走行するカートに、上記の搬送案内溝を通して上方に突出されて昇降する昇降保持部が設けられてなる炉内搬送装置であって、カートに設けられた上記の昇降保持部を上昇させて、上記の固定ビームに保持された被処理物をこの昇降保持部に保持させると共に、上記のカートを走行させて昇降保持部に保持された被処理物を固定ビームの所定位置まで搬送させるようにした。
【0012】
このようにすると、従来のウォーキングビーム式の炉内搬送装置のように、被処理物の搬送方向に沿って炉の略全長に伸びた複数の移動ビームを保持させる移動フレームを被処理物の搬送方向に沿って炉床の下方に設けると共に、この移動フレームを移動させて各移動ビームを上下方向及び送り方向に往復移動させてウォーキング動作させる大型のウォーキングビーム駆動手段を設ける必要がなくなる。
【0013】
また、上記のように被処理物をカートに設けられた昇降保持部に保持させるため、ウォーキングビーム式の炉内搬送装置のように、炉の略全長に伸びた複数の移動ビームを設ける必要もなくなり、炉内の構造が簡素化される。
【0014】
ここで、この炉内搬送装置においても、被処理物を保持する上記の昇降保持部が炉内において過剰に加熱されて、変形したり、損傷したりするのを防止するため、この昇降保持部を冷却させる冷却手段を設けることが好ましい。
【0015】
また、上記のようにカートに設けられた昇降保持部を上昇させて、固定ビームに保持された被処理物をこの昇降保持部に保持させ、上記のカートを走行させて昇降保持部に保持された被処理物を固定ビームの所定位置まで搬送させるにあたっては、上記のカートを各搬送案内溝に対応して被処理物の搬送方向と交差する方向に複数設けるようにすることができる。また、被処理物の搬送方向に所要間隔を介して上記のカートを複数設けるようにすることもできる。
【0016】
そして、本発明に係る加熱炉においては、被処理物を炉内において順々に搬送させて連続的に加熱するにあたり、上記のような炉内搬送装置を用いるようにした。
【0017】
また、本発明に係る加熱炉においては、被処理物を加熱炉内に搬入させる加熱炉の搬入部側に上記の搬送案内溝と対応するようにして搬入側壁面案内溝を設け、この搬入側壁面案内溝を通して、上記のカートを搬入部側における加熱炉の外部に導くようにすることができる。このようにすると、カートを搬入部側における加熱炉の外部に導いて、カートの補修や交換を行うことができる。
【0018】
さらに、被処理物を加熱炉内に搬入させる搬入部に上記の搬送案内溝及び搬入側壁面案内溝と対応するようにして搬入用案内溝を設け、この搬入用案内溝を通してカートに設けられた上記の昇降保持部を上昇させて、搬入部における被処理物をこの昇降保持部に保持させ、この搬入用案内溝及び搬入側壁面案内溝を通して上記の昇降保持部に保持された被処理物を加熱炉内に搬入させるようにすることができる。このようにすると、通常は別設備として設置される被処理物の搬入装置が不要になる。
【0019】
また、本発明に係る加熱炉においては、被処理物を加熱炉外に搬出させる加熱炉の搬出部側に上記の搬送案内溝と対応するようにして搬出側壁面案内溝を設け、この搬出側壁面案内溝を通して、上記のカートを搬出部側における加熱炉の外部に導くようにすることができる。このようにすると、カートを搬出部側における加熱炉の外部に導いて、カートの補修や交換を行うことができる。
【0020】
さらに、被処理物を加熱炉外に搬出させる搬出部に上記の搬送案内溝及び搬出側壁面案内溝と対応するようにして搬出用案内溝を設け、カートにおける昇降保持部に保持された被処理物を、上記の搬出側壁面案内溝及びこの搬出用案内溝を通して加熱炉外に搬出させるようにすることができる。このようにすると、通常は別設備として設置される被処理物の搬出装置が不要になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明における炉内搬送装置においては、上記のように炉床の下において被処理物の搬送方向に走行するカートに搬送案内溝を通して上方に突出されて昇降する昇降保持部を設け、この昇降保持部を上昇させて、固定ビームに保持された被処理物をこの昇降保持部に保持させると共に、カートを走行させて昇降保持部に保持された被処理物を固定ビームの所定位置まで移動させて、被処理物を炉内において順々に搬送させるようにしたため、従来のウォーキングビーム式の炉内搬送装置のように、炉床の下方に、複数の移動ビームを保持させる移動フレームや、この移動フレームを駆動させて各移動ビームをウォーキング動作させるウォーキングビーム駆動手段のような大型の装置を設ける必要がなくなる。
【0022】
この結果、本発明における炉内搬送装置を使用すると、加熱炉等における炉床の下の掘り込み深さを小さくすることができ、設備に要するコストが大きく低減されると共にランニングコストも少なくすみ、さらに掘り込んだ床面にはカート用のレールを敷設しただけの構造となるため、広い空間を確保することができ、メンテナンス等も容易に行えるようになる。
【0023】
また、本発明における炉内搬送装置においては、カートに設けられた昇降保持部に被処理物を保持させた状態で、カートを走行させて昇降保持部に保持された被処理物を固定ビームの所定位置まで搬送させるようにするため、昇降保持部は被処理物を保持できる程度の長さであればよく、従来のウォーキングビーム式の炉内搬送装置における移動ビームのように、被処理物の搬送方向に沿って炉の略全長に伸びるように設ける必要がなくなると共に、このような昇降保持部を冷却させる場合、上記の移動ビームのように大きな水冷設備が必要になったり、水冷ロスが大きくなったりすることもなくなる。
【0024】
また、本発明における加熱炉において、前記のように搬送案内溝と対応するようにして搬入側壁面案内溝や搬出側壁面案内溝を設けると、この搬入側壁面案内溝や搬出側壁面案内溝を通して上記のカートを加熱炉の外に導くことができるようになり、加熱炉を停止させて冷却させなくても、カートのメンテナンスや交換等が簡単に行えるようになる。
【0025】
さらに、前記のように被処理物を加熱炉内に搬入させる搬入部や、被処理物を加熱炉外に搬出させる搬出部に、搬入用案内溝や搬出用案内溝を設けると、通常は別設備として設置される被処理物の搬入装置や搬出装置が不要になり、設備が簡略化されて、コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る炉内搬送装置を設けた加熱炉の長手方向に沿った概略縦断面説明図である。
【図2】同実施形態に係る炉内搬送装置を設けた加熱炉の幅方向に沿った概略縦断面説明図である。
【図3】同実施形態に係る炉内搬送装置を設けた加熱炉の長手方向に沿った概略横断面説明図である。
【図4】上記の実施形態における加熱炉において、カートに設けられた昇降保持部を上昇させて、固定ビームの上に保持された被処理物をこの昇降保持部の上に保持させた状態を示した部分説明図である。
【図5】上記の実施形態における加熱炉において、被処理物を昇降保持部の上に保持させた状態で、被処理物の搬送方向にカートを所定位置まで移動させた状態を示した部分説明図である。
【図6】上記の実施形態における加熱炉において、所定位置まで移動されたカートにおける昇降保持部を下降させて、被処理物を所定位置における固定ビームの上に保持させた状態を示した部分説明図である。
【図7】上記の実施形態における加熱炉において、カートを被処理物の搬送方向と逆方向に移動させて、カートを次に搬送させる被処理物の位置まで導いた状態を示した部分説明図である。
【図8】上記の実施形態における加熱炉において、炉内搬送装置におけるカートを被処理物の搬送方向に所要間隔を介して2つ設けた加熱炉の長手方向に沿った概略縦断面説明図である。
【図9】上記の実施形態における加熱炉において、炉内搬送装置におけるカートを被処理物の搬送方向に所要間隔を介して3つ設け、加熱処理する前の被処理物を加熱炉に搬入させる搬入部側に、炉床における搬送案内溝と対応するようにして搬入側壁面案内溝及び搬入用案内溝を設けると共に、加熱処理された被処理物を加熱炉から搬出させる搬出部側に、上記の搬送案内溝と対応するようにして搬出側壁面案内溝及び搬出用案内溝を設けた加熱炉の長手方向に沿った概略横断面説明図である。
【図10】図9に示した実施形態における加熱炉の長手方向に沿った概略縦断面説明図である。
【図11】上記の実施形態における加熱炉において、炉内搬送装置におけるカートを被処理物の搬送方向に所要間隔を介して3つ設け、加熱処理する前の被処理物を加熱炉に搬入させる搬入部側に、炉床における搬送案内溝と対応するようにして搬入側壁面案内溝を設けると共に、加熱処理された被処理物を加熱炉から搬出させる搬出部側に、上記の搬送案内溝と対応するようにして搬出側壁面案内溝を設けて、カートを加熱炉の外部に導いた状態を示した概略縦断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態に係る炉内搬送装置及びこの炉内搬送装置を設けた加熱炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る炉内搬送装置及び加熱炉は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0028】
この実施形態の加熱炉10においては、図1〜図3に示すように、その側壁11に複数の燃焼装置12を設けると共に、その炉床13の上に被処理物Aの搬送方向に所要間隔を介して支持部材14aを立設させ、これらの支持部材14aの上に被処理物Aの搬送方向に沿った固定ビーム14を設けるようにして、このような固定ビーム14を被処理物Aの搬送方向と直交する加熱炉10の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0029】
ここで、この実施形態の加熱炉10において、被処理物Aを順々に加熱処理するにあたっては、加熱炉10の搬入口15に設けられた搬入扉15aを開け、搬入部1における加熱処理する前の被処理物Aをこの搬入口15を通して加熱炉10内に搬入させ、この被処理物Aを上記の固定ビーム14の上に保持させるようにする。
【0030】
次いで、このように固定ビーム14の上に保持された被処理物Aを上記の燃焼装置12により加熱炉10内において加熱させると共に、固定ビーム14の上に保持された被処理物Aを後述する炉内搬送装置20により上記の固定ビーム14の上において搬送方向下流側に順々に搬送させて加熱処理する。
【0031】
そして、この加熱炉10の搬出口16に設けられた搬出扉16aを開け、上記のように加熱処理された被処理物Aを、この搬出口16を通して加熱炉10外の搬出部2に搬出させるようにする。
【0032】
ここで、この実施形態の加熱炉10において、固定ビーム14の上に保持された被処理物Aを、炉内送装置20により固定ビーム14の上において搬送方向下流側に順々に搬送させるにあたっては、加熱炉10の炉床13を貫通するようにして被処理物Aの搬送方向に沿った搬送案内溝17を、上記の固定ビーム14と重ならない位置において、被処理物Aの搬送方向と直交する加熱炉10の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0033】
また、上記の炉内搬送装置20においては、上記の炉床13の下方における床面G上に、被処理物Aの搬送方向に沿った案内レール21を各搬送案内溝17と対応するようにして複数敷設し、各案内レール21の上に自走するカート22を設けると共に、各案内レール21の上に設けられた各カート22の上に、それぞれ対応する搬送案内溝17を通して上方に突出されると共に昇降装置22aにより昇降される昇降保持部22bを設けている。
【0034】
そして、上記の炉内搬送装置20において、固定ビーム14の上に保持された被処理物Aを、固定ビーム14の上において搬送方向下流側に順々に搬送させるにあたっては、図4に示すように、各カート22における昇降装置22aにより昇降保持部22bを固定ビーム14よりも上方の位置まで上昇させて、固定ビーム14の上に保持された被処理物Aをこの昇降保持部22bの上に保持させるようにする。
【0035】
次いで、このように被処理物Aを昇降保持部22bに保持させた状態で、図5に示すように、上記のカート22を案内レール21に沿って被処理物Aの搬送方向に所定位置まで移動させ、昇降保持部22bに保持させた被処理物Aを固定ビーム14の所定の位置まで搬送させる。
【0036】
その後、図6に示すように、被処理物Aを保持している上記の昇降保持部22bを、上記の昇降装置22aによって固定ビーム14より下方に位置する元の位置まで下降させ、この昇降保持部22bに保持されていた被処理物Aを元の位置から搬送方向下流側における固定ビーム14の上に保持させるようにする。
【0037】
そして、上記のように被処理物Aを昇降保持部22bから固定ビーム14の上に保持させた後は、上記のカート22を案内レール21に沿って被処理物Aの搬送方向と逆方向に移動させ、図7に示すように、カート22を次に搬送させる被処理物Aの位置まで導くようにする。その後は、上記のような操作を何度も繰り返して、固定ビーム14の上に保持された各被処理物Aを、固定ビーム14の上において搬送方向下流側に順々に搬送させるようにする。
【0038】
また、この実施形態においては、上記の昇降保持部22bが加熱炉10内において過剰に加熱されて、変形したり、損傷したりするのを防止するため冷却させるようにしている。例えば、この昇降保持部22bとして、パイプを逆溝型状に折り曲げ加工したものを用い、この昇降保持部22b内に形成した水路22cにポンプ等の冷却手段23により冷却水を導き、昇降保持部22bが過剰に加熱されるのを防止するようにしている。
【0039】
なお、この実施形態においては、案内レール21の上に自走するカート22を設けるようにしたが、外部からカート22を案内レール21に沿って移動させるようにすることも可能である。
【0040】
また、この実施形態においては、各案内レール21の上にそれぞれ上記のようなカート22を1つ設けるようにしただけであるが、例えば、図8に示すように、各案内レール21の上にそれぞれ上記のようなカート22を2つ又はそれ以上設け、各カート22により、固定ビーム14の上に保持された被処理物Aを搬送方向下流側に順々に搬送させて移動させるようにすることもできる。
【0041】
また、上記のように加熱処理する前の被処理物Aを加熱炉10外の搬入部1から加熱炉10内に搬入させ、またこの加熱炉10内において加熱処理された被処理物Aを加熱炉10内から加熱炉10外の搬出部2に搬出させるにあたり、上記の炉内搬送装置20を利用するために、図9及び図10に示すように、加熱炉10の搬入側に、上記の搬送案内溝17と対応するようにして搬入側壁面案内溝18aを設けると共に上記の搬入部1に搬入用案内溝1aを設け、また加熱炉10の搬出側に、上記の搬送案内溝17と対応するようにして搬出側壁面案内溝18bを設けると共に上記の搬出部2に搬出用案内溝2aを設けるようにすることができる。
【0042】
このようにした場合、上記の搬入部1における加熱処理する前の被処理物Aを加熱炉10内に搬入させるにあたっては、上記のカート22を加熱炉10から搬入部1の下に導き、このカート22における昇降保持部22bを搬入部1における搬入用案内溝1aを通して上昇させて、搬入部1における被処理物Aをこの昇降保持部22bの上に保持させるようにする。そして、このように被処理物Aを昇降保持部22bに保持させた状態で、カート22を搬入部1から加熱炉10に移動させ、上記の昇降保持部22bに保持された被処理物Aを搬入用案内溝1aに沿って搬入部1から上記の搬入口15及び搬入側壁面案内溝18aを通して加熱炉10内に搬入させる。その後、上記の搬送案内溝17を通して昇降保持部22bを下降させ、この昇降保持部22bに保持された被処理物Aを加熱炉10内に設けられた固定ビーム14の上に保持させるようにする。
【0043】
また、加熱炉10内において加熱処理された被処理物Aを加熱炉10内から加熱炉10外の搬出部2に搬出させるにあたっては、カート22における昇降保持部22bを上昇させて、加熱炉10内において加熱処理された被処理物Aをこの昇降保持部22bに保持させ、この状態で、上記のカート22を加熱炉10から搬出部2の下に移動させて、上記の昇降保持部22bを上記の搬送案内溝17から搬出口16及び搬出側壁面案内溝18bを通して上記の搬出用案内溝2aに沿って移動させ、この昇降保持部22bに保持された被処理物Aを加熱炉10内から搬出口16を通して搬出部2に導くようにする。その後、上記の昇降保持部22bを上記の搬出用案内溝2aを通して下降させ、昇降保持部22bに保持された被処理物Aを搬出部2に保持させるようにする。
【0044】
上記のようにすると、加熱処理する前の被処理物Aを搬入部1から加熱炉10内に搬入させたり、加熱処理された被処理物Aを加熱炉10内から搬出部2に搬出させたりする作業も容易に行えるようになる。
【0045】
また、上記のように搬送案内溝17と対応するようにして、加熱炉10の搬入側に搬入側壁面案内溝18aや搬入用案内溝1aを設け、また加熱炉10の搬出側に搬出側壁面案内溝18bや搬出用案内溝2aを設け、カート22を加熱炉10の外に導くようにすると、加熱炉10を停止させて冷却させなくても、カート22等のメンテナンスや補修が可能になる。さらに、搬入用案内溝1aや搬出用案内溝2aを設けた搬入部1や搬出部2は、加熱前後の被処理物Aから落下するスケールや、放射される熱からカート22を保護する効果がある。
【0046】
また、図11に示すように、搬入用案内溝1aや搬出用案内溝2aを設ける搬入部1や搬出部2をなくして開放状態にすることも可能であり、このようにした場合には、カート22を加熱炉10の外に取出した時のメンテナンススペースを広くすることができ、カート22等のメンテナンスや補修や交換がより簡単に行えるようになる。
【符号の説明】
【0047】
1 搬入部
1a 搬入用案内溝
2 搬出部
2a 搬出用案内溝
10 加熱炉
11 側壁
12 燃焼装置
13 炉床
14 固定ビーム, 14a 支持部材
15 搬入口, 15a 搬入扉
16 搬出口, 16a 搬出扉
17 搬送案内溝
18a 搬入側壁面案内溝, 18b 搬出側壁面案内溝
20 炉内搬送装置
21 案内レール
22 カート, 22a 昇降装置, 22b 昇降保持部, 22c 水路
23 冷却手段
A 被処理物
G 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床の上方に被処理物の搬送方向に沿った固定ビームが被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して複数設けられると共に、被処理物の搬送方向に沿って上記の炉床を貫通する搬送案内溝が被処理物の搬送方向と交差する方向に所要間隔を介して複数設けられ、上記の炉床の下において上記の搬送案内溝に沿って被処理物の搬送方向に走行するカートに、上記の搬送案内溝を通して上方に突出されて昇降する昇降保持部が設けられてなる炉内搬送装置であって、カートに設けられた上記の昇降保持部を上昇させて、上記の固定ビームに保持された被処理物をこの昇降保持部に保持させると共に、上記のカートを走行させて昇降保持部に保持された被処理物を固定ビームの所定位置まで搬送させることを特徴とする炉内搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炉内搬送装置において、被処理物を保持する上記の昇降保持部を冷却させる冷却手段が設けられていることを特徴とする炉内搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の炉内搬送装置において、上記のカートが各搬送案内溝に対応して被処理物の搬送方向と交差する方向に複数設けられていることを特徴とする炉内搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の炉内搬送装置において、上記のカートが被処理物の搬送方向に所要間隔を介して複数設けられていることを特徴とする炉内搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の炉内搬送装置が設けられていることを特徴とする加熱炉。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱炉において、被処理物を加熱炉内に搬入させる加熱炉の搬入部側に上記の搬送案内溝と対応するようにして搬入側壁面案内溝を設け、この搬入側壁面案内溝を通して、上記のカートを搬入部側における加熱炉の外部に導くことを特徴とする加熱炉。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱炉において、被処理物を加熱炉内に搬入させる搬入部に上記の搬送案内溝及び搬入側壁面案内溝と対応するようにして搬入用案内溝を設け、この搬入用案内溝を通してカートに設けられた上記の昇降保持部を上昇させて、搬入部における被処理物をこの昇降保持部に保持させ、この搬入用案内溝及び搬入側壁面案内溝を通して上記の昇降保持部に保持された被処理物を加熱炉内に搬入させることを特徴とする加熱炉。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか1項に記載の加熱炉において、被処理物を加熱炉外に搬出させる加熱炉の搬出部側に上記の搬送案内溝と対応するようにして搬出側壁面案内溝を設け、この搬出側壁面案内溝を通して、上記のカートを搬出部側における加熱炉の外部に導くことを特徴とする加熱炉。
【請求項9】
請求項8に記載の加熱炉において、被処理物を加熱炉外に搬出させる搬出部に上記の搬送案内溝及び搬出側壁面案内溝と対応するようにして搬出用案内溝を設け、カートにおける昇降保持部に保持された被処理物を、上記の搬出側壁面案内溝及びこの搬出用案内溝を通して加熱炉外に搬出させることを特徴とする加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−104115(P2013−104115A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250260(P2011−250260)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】