説明

炊飯器

【課題】炊飯時間を短縮し炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得るようにした炊飯器を提供する。
【解決手段】米を収容する鍋10と、この鍋10を加熱する鍋加熱手段11と、鍋10の温度を測定する鍋温度測定手段12と、鍋温度測定手段12による温度に基づき鍋加熱手段11への加熱量を制御して炊飯を行う制御手段13と、給水前の鍋10内の米にミストを供給する炊飯前処理手段14とを備えたものである。これによって、給水前の鍋内の米にミストを供給することで、米あるいは無洗米を浸水させることなく、短時間で吸水を実現させることが可能になり、このとき、特に、無洗米は水に浸漬されていないので、栄養成分は水中に溶出されることなく、全て米内部に留まった状態で吸水させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯時間を短縮して炊飯する機能を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器としては、圧力装置によって、炊飯工程中(浸水工程と炊き上げ・むらし工程中)において加圧状態を維持して、米への吸水、熱伝導を良好にして炊飯時間を短縮するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−22710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、炊飯工程中、加圧状態を維持していることから、トータルの炊飯時間は短縮されるが、炊飯終了後に得られた米飯の外観は、膨らみが悪く、食感は硬くなる。これは、浸水工程では加圧状態を維持しているので、吸水速度は促進されるが、米と米の間に隙間がなく、密な状態であるため、実際は、浸水工程の時間が短縮された分の吸水を補うだけの速度は促進されていない。その結果、吸水としては不十分な状態で、炊き上げ・むらし工程が開始され、中心部への吸水が不足気味となり、硬くなったと考えられる。よって、従来の構成では、炊飯時間を短縮しながら良好なご飯を得ることはできなかった。
【0004】
また、近年かなり普及されてきている無洗米は、精米した白米の表面に残存付着している糠などを、特殊な処理により除去した白米のことで、これは炊飯する前に米をとぐ必要がなく、水を加えるだけですぐに炊飯することができる。しかし、洗米をせずにすぐに炊飯するので、吸水が不足しがちになる。よって、炊飯器における無洗米炊飯コースとしては、洗米しないための吸水不足を補うために、白米炊飯コースより、浸水工程をかえって長くしなければならず、炊飯時間を短縮させることはできなかった。
【0005】
また、無洗米の製造方法としては、白米の表面に残存している糠などを、同じ米糠で取る方法、タピオカ澱粉でとる方法、水で洗う方法などがあり、いずれも表面に処理が加えられて、その処理により表面に傷などが付いている可能性があり、精米しただけの白米と比較して、水につけたときに表面から栄養成分が溶出しやすくなっている。さらに、無洗米炊飯コースでは、白米炊飯コースより浸水時間が長くなっていることもあって、無洗米を炊飯したとき、栄養成分として、例えばビタミンB1、B2などの水への溶出が多くなり、その結果、炊き上がったご飯の栄養成分の損失量が多くなるものであった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、炊飯時間を短縮するとともに炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得るようにした炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、米を収容する鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の温度を測定する鍋温度測定手段と、鍋温度測定手段による温度に基づき鍋加熱手段への加熱量を制御して炊飯を行う制御手段と、給水前の鍋内の米にミストを供給する炊飯前処理手段とを備えたものである。
【0008】
これによって、給水前の鍋内の米にミストを供給することで、米あるいは無洗米を浸水させることなく、短時間で吸水を実現させることが可能になり、このとき、特に、無洗米は水に浸漬されていないので、栄養成分は水中に溶出されることなく、全て米内部に留まった状態で吸水させることができる。したがって、炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯器は、炊飯時間を短縮するとともに炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、米を収容する鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の温度を測定する鍋温度測定手段と、鍋温度測定手段による温度に基づき鍋加熱手段への加熱量を制御して炊飯を行う制御手段と、給水前の鍋内の米にミストを供給する炊飯前処理手段とを備えた炊飯器とすることにより、給水前の鍋内の米にミストを供給することで、米あるいは無洗米を浸水させることなく、短時間で吸水を実現させることが可能になり、このとき、特に、無洗米は水に浸漬されていないので、栄養成分は水中に溶出されることなく、全て米内部に留まった状態で吸水させることができる。したがって、炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得ることができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、炊飯前処理手段はミスト発生手段を有し、このミスト発生手段により発生したミストを給水前の鍋内の米に供給するようにしたことにより、ミスト発生手段でミストを発生させ、これを鍋内に収容した米に供給し、短時間で吸水させることができる。特に、無洗米においては、水に浸漬させていないので、栄養成分の溶出量を抑えた状態での吸水が可能になる。
【0012】
第3の発明は、特に、第2の発明において、炊飯前処理手段は、発生したミストを加熱するミスト加熱手段と、ミスト温度を測定するミスト温度測定手段とを有し、ミスト温度測定手段が測定したミスト温度に基づいて、ミスト加熱手段への加熱量を制御することにより、加熱制御されたミストを鍋内に投入することができるので、米あるいは無洗米への吸水速度がさらに高まる。
【0013】
第4の発明は、特に、第3の発明において、鍋内の米に供給するミストを米の糊化温度以下で一定時間維持するようにしたことにより、米あるいは無洗米の表面が糊化温度(60℃超え)になることがないので、糊化による吸水阻害が生じることなく吸水速度を効率よく促進させることができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第4の発明において、米の糊化温度以下で一定時間維持する時間は5分以上10分以下であることにより、効率よく、できるだけ短時間で米あるいは無洗米に吸水させることがきる。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、炊飯前処理手段は、水を貯水する水タンクと、水タンクの水を鍋内に供給する給水手段を備えたことにより、炊飯前処理工程で、米あるいは無洗米が入った鍋内に、ミストを投入し、予め吸水させた後、引き続き、自動的に炊飯に必要な水を給水し、短時間で炊飯することができる。特に、無洗米の場合は、栄養成分の溶出量も抑えた、良好な状態のご飯を短時間で得ることができる。
【0016】
第7の発明は、特に、第6の発明において、水タンクを加熱する水タンク加熱手段を備えたことにより、ミスト投入後、引き続き、予め加熱した水タンクの水を鍋内に供給することができるので、炊き上げ工程において、短時間での沸騰が実現し、その結果、さらに短時間で良好な状態のご飯を得ることがきる。特に、無洗米の場合は、栄養成分の損失が抑えた状態での炊き上げも可能になる。
【0017】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、炊飯工程として浸水工程と炊き上げ・むらし工程を有し、前記浸水工程において給水前の鍋内の米にミストを供給することにより、浸水工程において、鍋内にミストを投入させることにより、短時間で鍋内に収容された米あるいは無洗米への吸水が実現し、さらに継続して炊き上げ・むらし工程を行うことにより、自動的に短時間で、炊き上げ状態が良好なご飯を得ることができる。特に、無洗米の場合は、水に浸漬させずに吸水することができるので、栄養成分の損失が抑えた状態での炊き上げも可能になる。
【0018】
第9の発明は、特に、第8の発明において、水タンクを加熱する水タンク加熱手段は、浸水工程時に水タンクの水を予め加熱し、炊き上げ・むらし工程において、加熱した水タンクの水を給水手段により鍋内に供給するようにしたことにより、鍋内に供給する水は短時間で沸騰し、その結果、さらに炊飯時間を短縮して、炊き上げ状態が良好なご飯を得ることができる。
【0019】
第10の発明は、特に、第9の発明において、炊き上げ・むらし工程において、給水手段により鍋内に供給する水の温度は97℃以上99以下であることにより、鍋内に供給する水はさらに短時間で沸騰することが可能になり、その結果、炊飯時間を短縮して、炊き上げ状態が良好なご飯を得ることができる。このとき供給する水は、100℃ではないので、蒸気(気体)によるキャビテーションが発生しにくい状態になっている(キャビテーションが生じると給水手段であるポンプの給水不良が生じやすくなる)。また、無洗米の場合は、水に浸漬させずに吸水することができるので、栄養成分の損失が抑えた状態での炊き上げも可能になる。
【0020】
第11の発明は、特に、第2〜第10のいずれか1つの発明において、ミスト発生手段は超音波振動子であることにより、確実にミストを発生させることが可能になる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態)
図に示すように、本実施の形態における炊飯器は、米(あるいは水)を収容する鍋10と、この鍋10を加熱して、炊飯を行う電磁加熱コイルなどからなる鍋加熱手段11と、鍋10の温度を測定する温度センサーからなる鍋温度測定手段12と、鍋温度測定手段12が測定した鍋10の温度に基づき、炊飯の各工程を順次実行できるように、鍋加熱手段11への加熱量を制御する制御手段13とを備えている。
【0023】
また、鍋10とは別に、給水前の鍋10内の米にミストを供給する炊飯前処理手段14とを備えている。この炊飯前処理手段14は、本実施の形態では、以下の各部より構成されている。しかし、必ずしもすべての各部を備えなければならないと言うものではない。
【0024】
すなわち、水を貯蔵しておく水タンク15と、水タンク15を加熱する水タンク加熱手段15aを備え、水タンク15からポンプなどからなる給水手段16により、ミスト発生室17に水が供給され、ミスト発生手段18によりミストが生成される。ミスト発生室17に供給される水量は、制御手段13で制御され、流量は流量調節器19にて調節される。このミスト発生手段18は、主に超音波振動子で構成されており、発生したミストは、ミスト通路パイプ20にて、鍋10上部のミスト加熱手段21に送られ、加熱されて鍋10内部に投入される。ミスト加熱手段21への加熱量は、ミストの温度を測定する温度センサーからなるミスト温度測定手段22が測定したミストの温度に基づいて、制御手段13にて制御される。
【0025】
ミスト加熱手段21の構成は、鍋10上部を覆う内蓋23と、その加熱手段24と、鍋10内部に通じる加熱室25などからなり、加熱手段24を制御手段13にて制御し、ミストの温度が決定される。
【0026】
なお、本実施の形態では、鍋10内の米に供給するミストを米の糊化温度以下(60℃以下、好ましくは30℃以上60℃以下)で、一定時間(5分以上10分以下)維持するようにしている。
【0027】
また、本実施の形態の炊飯器では、炊飯工程として浸水工程と炊き上げ・むらし工程を有しており、給水前の鍋10内の米に供給するミストは、前記浸水工程において供給するようにしている。また、水タンク加熱手段15aは、浸水工程時に水タンク15の水を予め加熱し、炊き上げ・むらし工程において、加熱した水タンク15の水を給水手段16により鍋10内に供給するようにしている。そして、炊き上げ・むらし工程において、給水手段16により鍋10内に供給する水の温度は97℃以上99以下に制御している。水の温度が97℃以上99以下であることにより、鍋10内に供給する水はさらに短時間で沸騰することが可能になり、その結果、炊飯時間を短縮して、炊き上げ状態が良好なご飯を得ることができる。このとき供給する水は、100℃ではないので、蒸気(気体)によるキャビテーションが発生しにくい状態になっている(キャビテーションが生じると給水手段16であるポンプの給水不良が生じやすくなる)。
【0028】
ここで、米3合(450g)を鍋10に収容した場合を例にとって、本実施の形態における炊飯器の炊飯工程を説明する。
【0029】
まず、鍋10に米を収容し、炊飯器筐体26の一部に設けた炊飯開始ボタン27を押すことにより炊飯が開始される。すなわち、鍋温度測定手段12で測定した鍋10の温度に基づいて、浸水工程を炊飯工程として有する炊飯器において、炊飯工程の浸水工程、炊き上げ・むらし工程が実行される。浸水工程においては、炊飯前処理工程が行われ、水タンク15からミスト発生室17に必要量の水が供給され、供給された水を用いて、超音波振動子を中心に構成されたミスト発生手段18により、ミストが発生される。発生されたミストは、ミスト通路パイプ20を通過して、ミスト加熱室25に送られ、ミスト加熱室25では、ミスト温度測定手段22の情報に基づいて、ミスト温度が40℃で維持されるように制御手段13にて制御される。40℃に維持されたミストは、鍋10内に10分間投入され、浸水工程は終了する。
【0030】
浸水工程において、ミスト発生室17に必要量の水が供給された後、水タンク15内の水は、水タンク加熱手段15aにより、98℃まで加熱され、浸水工程の終了とともに、加熱された水が、鍋10内に供給され、炊き上げ・むらし工程が行われ、炊飯が終了する。(表1)は、炊き上がったご飯に関するデータである。
【0031】
【表1】

【0032】
本実施の形態(米)における炊飯器の各工程時間は、(表1)に示したように、浸水工程10分、炊き上げ・むらし工程9分で、トータルの炊飯時間は19分とかなり短縮でき、その上、官能評価から明らかなように、外観もふっくらと膨らみ、軟らかく、従来の炊飯器を用いて炊飯時間を48分かけて炊飯したご飯と同等の状態が実現できた。一方、従来の圧力炊飯器(米)では、炊飯時間は31分と、本実施の形態より長く、外観も悪く、食感も硬くなった。
【0033】
これは、次の理由によるものである。(表2)は、浸水工程時の米の含水率に関するデータである。
【0034】
【表2】

【0035】
本実施の形態(米)の浸水工程において、(表2)に示したように、鍋内に10分間、40℃に制御されたミストを投入することにより、米の含水率は、29%に上昇し、従来の炊飯器(米)の浸水温度60℃、浸水時間20分のときの含水率27%、圧力炊飯器(米)の浸水温度60℃、浸水時間8分のときの含水率26%と比較して、含水率が高く、吸水速度が上昇していた。ミスト状の水は、気体に近く、米内部まで水が浸透しやすくなると考えられ、一方、従来の炊飯器や圧力炊飯器の浸水温度の60℃は、ミスト温度の40℃より温度が高い分、米の表層部分での吸水は促進されるが、一般に言われている糊化温度(60℃超、場合によっては65℃超)付近であることから、吸水された表層部分で糊化反応が生じ、かえって米の中心部への吸水は妨げられ、最終の含水率は低くなったと考えられる。また、圧力炊飯器では、浸水時間が短い分、さらに含水率は低くなったと考えられる。
【0036】
次の炊き上げ・むらし工程では、水タンク15において、浸水工程時に予め98℃まで加熱された水を、鍋10内に供給するため、沸騰までの時間が従来の炊飯器や圧力炊飯器と比較して早くなり、9分で炊き上げ・むらし工程を行うことができた。炊き上げ・むらし工程では、米にさらに水を吸水させるとともに、米のβ澱粉をα澱粉に転移させる米の糊化が行われているが、この糊化反応は、ミスト投入により、より米内部まで水が浸透している分、早く促進され、9分で従来の炊飯器と同等の状態で炊き上げることができたと考えられる。
【0037】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態の炊飯器は、炊飯するとき、浸水工程において、鍋10内部の米に30℃以上60℃以下、好ましくは40℃のミストを5分以上10分以下、好ましくは10分投入することにより、米への吸水速度が高まり、さらに米内部の含水率も高くなり、加えて浸水工程時に水タンク15の水を予め加熱しておくことにより、炊き上げ・むらし工程において、沸騰までの時間が短縮される。また、ミスト吸水により、米内部まで水が吸水されていることから、糊化反応も促進され、さらに炊飯時間を短縮するとともに炊き上げ状態が良好なご飯を得ることができる。
【0038】
次に、無洗米3合(450g)を鍋10に収納した場合を例にとって、本実施の形態における炊飯器の炊飯工程を説明する。
【0039】
まず、鍋10に無洗米を収容し、図には示していないが、炊飯器筐体26の一部に設けた無洗米炊飯開始ボタンを押すことにより、先に説明したと同様、炊飯が開始され、浸水程工程、炊き上げ・むらし工程が実行される。
【0040】
まず、浸水工程においては、水タンク15からミスト発生室17に必要量の水が供給され、供給された水を用いて、超音波振動子を中心に構成されたミスト発生手段18により、ミストが発生され、発生されたミストは、ミスト通路パイプ20を通過して、ミスト加熱室25に送られ、ミスト加熱室25では、ミスト温度測定手段22の情報に基づいて、ミスト温度が30℃で維持されるように制御手段13にて制御される。30℃に維持されたミストは、鍋10内部に15分間投入され、浸水工程は終了する。
【0041】
浸水工程において、ミスト発生室25に必要量の水が供給された後、水タンク15内の水は、水タンク加熱手段15aにより、98℃まで加熱され、浸水工程の終了とともに、加熱された水が、鍋10内に供給され、炊き上げ・むらし工程が行われ、炊飯が終了する。
【0042】
本実施の形態(無洗米)における炊飯器の各工程時間は、(表1)に示したように、浸水工程15分、炊き上げ・むらし工程9分で、トータルの炊飯時間は24分とかなり短縮でき、従来の炊飯器で、米なら48分、無洗米なら58分かけて炊飯したご飯と同等の状態が実現できた。
【0043】
また、浸水工程では、水に浸漬させることなく吸水させており、さらにその時間も従来の炊飯器の浸水工程より短いことから、栄養成分の溶出量も少なく、炊き上がったご飯の栄養成分の損失を抑えることができた。
【0044】
次の炊き上げ・むらし工程では、先に説明したと同様、糊化反応は、ミスト投入により、より無洗米内部まで水が浸透している分、早く促進され、9分で通常の炊飯器と同等の状態で炊き上げることができた。
【0045】
このように、本実施の形態の炊飯器は、炊飯するとき、浸水工程において、鍋10内に30℃以上60℃以下、好ましくは30℃のミストを5分以上10分以下、好ましくは15分投入することにより、無洗米への吸水速度が高まり、さらに無洗米内部の含水率も高くなり、水に浸漬させていないので、栄養成分の溶出量も少なく、加えて、浸水工程時に水タンク15の水を予め加熱しておくことにより、炊き上げ・むらし工程において、沸騰までの時間が短縮される。また、ミスト吸水により、米内部まで水が吸水されていることから、糊化反応も促進され、炊飯時間を短縮するとともに炊き上げ状態が良好な、栄養成分の損失の少ないご飯を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、炊飯時間を短縮するとともに炊き上げ状態が良好なご飯や、炊き上げ状態が良好で、栄養成分の消失も抑制した無洗米ご飯を短時間で得ることができるので、家庭用、業務用にかかわらず、また通常の米、無洗米の種類にかかわらず炊飯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態における炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0048】
10 鍋
11 鍋加熱手段
12 鍋温度測定手段
13 制御手段
14 炊飯前処理手段
15 水タンク
15a 水タンク加熱手段
16 給水手段
17 ミスト発生室
18 ミスト発生手段(超音波振動子)
19 流量調節器
21 ミスト加熱手段
22 ミスト温度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を収容する鍋と、この鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の温度を測定する鍋温度測定手段と、鍋温度測定手段による温度に基づき鍋加熱手段への加熱量を制御して炊飯を行う制御手段と、給水前の鍋内の米にミストを供給する炊飯前処理手段とを備えた炊飯器。
【請求項2】
炊飯前処理手段はミスト発生手段を有し、このミスト発生手段により発生したミストを給水前の鍋内の米に供給するようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
炊飯前処理手段は、発生したミストを加熱するミスト加熱手段と、ミスト温度を測定するミスト温度測定手段とを有し、ミスト温度測定手段が測定したミスト温度に基づいて、ミスト加熱手段への加熱量を制御する請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
鍋内の米に供給するミストを米の糊化温度以下で一定時間維持するようにした請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
米の糊化温度以下で一定時間維持する時間は5分以上10分以下である請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
炊飯前処理手段は、水を貯水する水タンクと、水タンクの水を鍋内に供給する給水手段を備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
水タンクを加熱する水タンク加熱手段を備えた請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
炊飯工程として浸水工程と炊き上げ・むらし工程を有し、前記浸水工程において給水前の鍋内の米にミストを供給する請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
水タンクを加熱する水タンク加熱手段は、浸水工程時に水タンクの水を予め加熱し、炊き上げ・むらし工程において、加熱した水タンクの水を給水手段により鍋内に供給するようにした請求項8に記載の炊飯器。
【請求項10】
炊き上げ・むらし工程において、給水手段により鍋内に供給する水の温度は97℃以上99以下である請求項9に記載の炊飯器。
【請求項11】
ミスト発生手段は超音波振動子である請求項2〜10のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−209382(P2007−209382A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29360(P2006−29360)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】