説明

炊飯器

【課題】蒸気と空気を十分混合させて排出蒸気の温度を低下させ、操作部へのアクセスと同様の動作方向から送風経路と蒸気経路を同時に着脱することを両立させることができる炊飯器を得る。
【解決手段】炊飯器本体と、炊飯器本体の内部の鍋収納部に収納される鍋と、鍋を加熱する鍋加熱装置と、炊飯器本体の開口部をヒンジ軸を中心に開閉可能な蓋本体と、外気と連通した送風装置と、送風装置と連結するとともに外気と連通する送風経路と、送風経路と鍋内とを連通させた蒸気経路と、鍋加熱装置と送風装置の動作を制御する制御装置とを備え、送風経路と蒸気経路とを一体的に構成し、蓋本体が閉状態時に送風装置から分離可能とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯中に鍋から発生する高温の蒸気の排出を抑制する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯中に排出される蒸気に空気を送風し、蒸気の濃度を下げて混合体として排出する炊飯器があり、蓋本体内に、送風装置と、送風経路と、鍋に蓮通する蒸気管とを備ええ、蒸気管からの蒸気に送風経路において送風装置からの送風空気を供給し、蒸気の濃度を下げて混合体として蒸気口から炊飯器本体外へ排出するようにした炊飯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の特許文献1および2のような構成では、蒸気の流れが蒸気管により送風装置による風の流れとほぼ平行に流れるよう方向付けされた構成となっているため、蒸気と送風空気は十分混合されず高音蒸気の排出抑制という目的が十分得られないとし、蓋本体内に、送風装置と、その送風装置と鍋に連通する蒸気管とを備え、蒸気管からの蒸気に送風経路において送風装置からの送風空気を供給し、蒸気の濃度を下げて混合体として蒸気口から炊飯器本体外へ排出する炊飯器があり、蒸気経路の蒸気経路出口を送風経路の経路壁に開口させるとともに、この蒸気経路出口と鍋内と連通する蒸気経路入口とを水平方向に位置をずらしては位置したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3682252号公報
【特許文献2】特開2009−28513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、炊飯時に米中のでんぷんなどの成分が水中に溶け出して膜状となった粘度の高いおねばが蒸気とともに鍋外に流出するため、蒸気で押し出されたおねばが、鍋内とする蒸気経路とこの蒸気経路と連通し送風装置と連結する送風経路とに入り込んだ場合、おねがが送風経路と蒸気経路内に残ってしまい、放置すると菌などが発生し不衛生であった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、蒸気と空気を十分混合させて排出蒸気の温度を低下させ、操作部へのアクセスと同様の動作方向から送風経路と蒸気経路を同時に着脱することを両立させることができる炊飯器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の内部の鍋収納部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、前記炊飯器本体の開口部をヒンジ軸を中心に開閉可能な蓋本体と、外気と連通した送風装置と、前記送風装置と連結するとともに外気と連通する送風経路と、前記送風経路と前記鍋内とを連通させた蒸気経路と、前記鍋加熱装置と前記送風装置の動作を制御する制御装置とを備え、前記送風経路と蒸気経路とを一体的に構成し、前記蓋本体が閉状態時に前記送風装置から分離可能としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、美味しいご飯を炊くことと、排出蒸気の温度を低くすることを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の全体斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る炊飯器の断面図である。
【図3】実施の形態1に係る炊飯器の上面図である。
【図4】実施の形態1に係る炊飯器の送風経路と蒸気経路とを外したときの全体斜視図である。
【図5】実施の形態1に係る炊飯器の送風経路と蒸気経路とを外したときの上面図である。
【図6】実施の形態1に係る炊飯器の送風経路と蒸気経路の分解斜視図である。
【図7】実施の形態1に係る炊飯器の標準炊飯工程の温度特性図である。
【図8】実施の形態1に係る炊飯器の早炊き炊飯工程の温度特性図である。
【図9】実施の形態1に係る炊飯器の送風経路と蒸気経路を炊飯器本体から取り外した状態の断面図である。
【図10】実施の形態1に係る炊飯器に送風経路と蒸気経路とを炊飯器本体から取り外した状態の断面図である。
【図11】実施の形態1に係る炊飯器の各音響フィルタ特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図6は、本実施の形態1に係る炊飯器を示しており、図1は全体斜視図、図2は断面図、図3は上面図、図4は送風経路と蒸気経路を着脱したときの斜視図、図5は送風経路と蒸気経路とを外したときの上面図、図6は送風経路と蒸気経路の分解斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器は、略有底筒状の炊飯器本体1と、炊飯器本体1の内部に鍋収納部1aに収納されると鍋2と、炊飯器本体1の開口部を開閉可能に炊飯器本体1に取り付けられる蓋本体3と、蓋本体3の内側(鍋2の開口部を覆う側)に着脱自在に取り付けられて、鍋2の開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋4と、鍋2を誘導加熱する鍋加熱装置5と有し、鍋2の底部には当接可能に鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部である鍋温度センサ6が配置され、炊飯器本体1の前壁上部には、蓋本体3を閉時状態にロックするフック8が設けられている。
【0011】
炊飯器本体1内には、各部および各装置を駆動制御して炊飯動作を行う制御装置7が設置されている。制御装置7は、例えば蓋本体3に設けられた操作パネル3aにより行われた使用者の指示に応じて、各部および各装置の駆動制御を行う。
【0012】
蓋本体3には、蓋温度検知部である内蓋温度センサ9と、内蓋加熱装置10と、ヒンジ軸3aと、ファンなどの送風装置11と、送風装置11の吸気側11aと外気を連通させる吸気口12と、送風装置11からの風を蓋本体3外側へ導出する排気口13とが形成されている。
そして、蓋本体3の上面部には、送風装置11の排気側11bと排気口13とを連通接続する送風経路14と、鍋2と送風経路14とを連通接続する蒸気経路15とが一体となって蓋本体3から着脱可能に設置されている。
【0013】
この送風経路14と蒸気経路15は、分解可能となっている。図6の分解斜視図に示すように、外気と連通する経路を形成するための送風経路形成部14aと、鍋2と連通する経路を形成するための蒸気経路形成部15aと、送風経路14と蒸気経路15の境界壁をなす仕切板14bとからなる。仕切板14bには、その外周囲を被覆するように柔軟性のあるパッキン14cが設けられ、送風経路形成部14aと蒸気経路形成部15aとがパッキンを介して挟み込み支持固定されるように形成されている。このような構成にすることにより、蓋本体3の上面部から送風経路14と蒸気経路15とを同時に送風装置11から分離可能となり、送風経路14と蒸気経路15の着脱を容易に行うことができる
【0014】
さらに、送風経路14と蒸気経路15とを同時に一体的に取り外した後、送風経路形成部14aと蒸気経路形成部15aとを分解することで洗浄を行うことができる。そして、傾斜板14bも分解されるため、送風経路形成部14a内と蒸気経路形成部15a内が解放され、送風経路14内も蒸気経路15内にも指を入れて隅々まで洗浄を行うことができ、清掃し易い構造となっている。
【0015】
内蓋加熱装置10の一例である内釜加熱コイルは、蓋本体3内に設置され、制御装置7の制御により内蓋4を誘導加熱するよう構成されている。ヒンジ軸3aは、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。蓋本体3はヒンジ軸3aの近傍に設けた回動バネ(図示せず)により回動するように付勢されている。
【0016】
送風装置11は、蓋本体3のヒンジ軸3a側の後部、すなわち、ヒンジ軸3aに近い場所に配置されている。吸気口12は、蓋本体3の側面に複数のスリット状の穴で構成されている。送風経路14はほぼ一直線に排気側11bと排気口13を連結しており、断面積も略均一である。
【0017】
蒸気経路15は、鍋2内の余分な蒸気を送風経路14へと排出できるように、一端の蒸気経路入口15cを内蓋4の蒸気口4aと連通接続し、他端の蒸気経路出口15bを送風経路14の排気口13と排気側11bとの間の送風経路14の経路壁14dに開口するように形成している。蒸気経路15は、鍋2内と連通する蒸気経路入口15cよりも蒸気経路出口15bが水平方向にヒンジ軸3a側に位置をずらして配置し、かつ蒸気経路入口15cと蒸気経路出口15b間の経路を屈曲形成している。この構成により、蒸気経路15は、その経路に風進入防止構造16を構成している。なお、蒸気経路15は樹脂でできた経路壁面からなる。
【0018】
蒸気経路15の蒸気経路出口15bは、送風経路14と垂直方向から10〜20度ずれた方向(略垂直方向)で接続され経路壁14dに開口している。また、風進入防止構造16は、送風装置11からの風が蒸気経路15に進入した場合でも鍋2までには届きにくい略水平部16aと、直角に曲がった屈曲部16bとを有しており、蒸気経路15から出る蒸気の流出方向は送風経路14内での送風装置11からの風の流れ方向に対して略垂直な方向となるように構成されている。
【0019】
内蓋4の一部は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されており、蒸気を鍋2外へと排出するために、複数の穴からなる前記した蒸気口4aを設けている。内蓋4の外周部の鍋2側面には、蓋本体3が開状態にあるとき、鍋2と密接する略環状の内蓋パッキン17が取り付けられている。内蓋パッキン17は、ゴムなどの弾性体で構成されている。
【0020】
蓋本体3の外表面には、炊飯メニュー(標準炊飯や早炊き炊飯など)、時間などの各種情報を表示する表示部18と、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を行うための操作ボタン19が搭載されている。操作ボタン19の操作により、選択された炊飯メニューに合わせた炊飯器本体1に内蔵された制御装置7内蔵された炊飯プログラムが実行され、鍋加熱装置5、内蓋加熱装置10を炊飯プログラムの進行に合わせて動作、停止させて炊飯を実施するとともに、送風装置11に関しても、制御装置7により、炊飯メニューで選択された炊飯工程に連動して、動作、停止が制御される。
【0021】
次に、上述したような炊飯器の動作、作用について説明する。
まず、鍋2内に所定の米と水をセットし、操作ボタン19で、炊飯メニューから標準炊飯工程を選択し、炊飯開始ボタンを押下し、炊飯工程が開始される。炊飯工程は、水を一定温度に保って米に水を吸収させる浸水工程A、鍋2を鍋加熱装置5により一気に加熱し、鍋2内の水を沸騰状態にする炊き上げ工程B、鍋2内の水がほとんどなくなった状態で加熱を抑える蒸らし工程Cからなり、これらの工程の間に米の糊化を進めながら炊飯が行われることになる。制御装置7は鍋温度センサ6により鍋2の温度に応じて最適に鍋加熱装置5を制御し、あらかじめ決められた炊飯プログラムに従って炊飯を行う。炊飯プログラムは標準炊飯工程や早炊き炊飯工程など複数のコースが準備されている。蒸らし工程が終了すると炊飯が終了し、自動的に保温工程へと移行し、炊き上がったご飯の温度が低下しないようにして、使用者はいつでも温かいご飯が得られるようになっている。
【0022】
まず、標準炊飯工程の炊飯プログラム実行による動作の詳細を、図7の温度特性図を参照して以下に説明する。
炊飯が開始されると、まず米に水を吸収させる浸水工程Aが始まる。制御装置7は、鍋加熱装置5により鍋2を加熱し、鍋2内の水の温度を鍋温度センサ6によって検知し、米の糊化が始まらない温度T(約60℃未満)に調整して米の吸水を促進する。
【0023】
次に炊き上げ工程Bに入り、米に水と熱を加えて糊化を進行させる。制御装置7は、鍋加熱装置5を動作させて鍋2を急速に加熱する。そして制御装置7は鍋温度センサ6により鍋底温度Tを検知すると、送風装置11を動作させる。送風装置11は吸気口12から外気を吸い込み、室温の空気を送風経路14へと排出する。その後、鍋加熱装置5により鍋底温度が沸騰温度であるTに達すると、鍋2内の水が沸騰状態となり、蒸気が大量に発生する。そして、発生した蒸気が鍋2に充満し、余分な蒸気は蒸気経路15内に入り込み、風進入防止部16を経て、室内空気が充満している送風経路14内に入り込む。蒸気経路15から送風経路14へ導かれた蒸気は室温の空気と混合され、この空気と蒸気の混合体が排出口13から蓋本体3外へと排出される。蒸気経路15からの蒸気が送風経路14に入り込む前に送風装置11を動作させることで、確実に空気と混合することができるため、蒸気発生の最初から蒸気の濃度を低減することができ、排出される混合気体の温度を最初から確実に低下できる。このように蒸気経路15からの蒸気が送風経路14に入り込む前に送風装置11を動作させることで、排出される混合気体の温度を約60℃以下まで低下させることを目的としており、やけどを防止するために有効なものとなる。なお、蒸気経路15はその蒸気経路出口15bが送風経路14の経路壁14dに開口して接続されているので、蒸気経路15から排出された蒸気は空気よりも軽く自然と上方へと移動し、送風経路14内で均一に空気と混ざりやすくなっている。
【0024】
炊き上げ工程中に、制御装置7は水温の上昇速度をおいしいご飯を炊くための最適速度とするために、合数に応じて火力を調整する必要がある。また、沸騰してからも米を十分柔らかいご飯にするために一定期間米を高温状態に保つ必要があり、そのためにも火力を調整する必要がある。そのため、大部分の場合、鍋加熱装置5は断続的に鍋2を加熱することで、火力を調節している。そのため、鍋加熱装置5が動作している間は、連続して鍋2内で蒸気が発生するが、鍋加熱装置5が動作していないときは、鍋2内の蒸気発生は停止する。鍋2内で連続的に蒸気が発生しているときは、鍋2内の空気は蒸気経路15以外には移動する場所がないので、鍋2内に蒸気が充満すると蒸気の圧力が高まり、蒸気経路15を経て送風経路14まで蒸気が移動する。
【0025】
このときに送風装置11が動作していても、送風装置11が生み出した風は蒸気経路15から出てくる蒸気に阻まれて、蒸気経路15内に入り込むことが非常に難しい。一方、鍋2内で蒸気の発生が停止すると、蒸気経路15に入り込んでいた蒸気は約100℃の高温で空気に比べて軽くなっており、上方へと移動しやすくなる。このとき、送風装置11から送られる室温(例えば20℃)の空気との間で置換が起こり、蒸気が送風経路14に出て、送風装置11からの風が蒸気経路15に入り込むという現象が生じる。室温の空気が鍋2に入り込んでしまうと、鍋2内の温度を低下させてしまうので、米の糊化が不十分になってしまい、おいしいご飯を炊くことができなくなってしまう。ただし、炊き上げ工程においては、通常、鍋加熱装置5の動作を停止させる時間が短い(例えば5秒以下)場合が多いので、蒸気経路15に風進入防止構造16を設け、屈曲部16bにより進入した風の勢いを弱め、鍋2まで水平方向の長い経路16aを設けて鍋2までの距離を長くとることで、送風装置11による風が鍋2にまで入り込むことは低減できる。
【0026】
送風装置11から送風経路14内を移動してきた風は、壁面との摩擦により壁面付近では乱流となり、壁面から離れた送風経路14の中心部分では層流となりやすい。蒸気経路出口15bは送風経路14の壁面に開口していることで、送風経路14に流入した蒸気はまず壁面付近の乱流に巻き込まれて空気との均一な混合が生じやすい。一方、送風経路14の中心で蒸気が空気と混合される場合には、層流となっているため空気と混合しにくくなる。また蒸気経路15は送風経路14と略垂直に接続されているので、蒸気の流れが送風装置11からの風の流れと垂直方向に送風経路14内に流入することになるので、さらに蒸気が空気と混合しやすい。

【0027】
また、炊き上げ工程では、米中のでんぷんなどの成分が水中に溶け出し、膜状となった粘度の高いおねばが蒸気とともに鍋2外に流出することがある。おねばは蒸気に押されるようにして鍋2外へと移動するのであるが、おねばに蒸気よりも十分低い温度の気体を当てると破裂する。このとき、蒸気経路15の天面壁は、送風経路14の底面壁である仕切板14bにより形成されているため、送風経路14内の送風装置11の風は蒸気経路15の天面壁を冷却することになり、さらに送風装置11からの風は蒸気経路15に入り込むため、蒸気経路15の経路壁面および蒸気経路15の雰囲気温度を冷却している。そのため、多少のおねばが進入しても送風経路14付近で送風装置11からの風によって冷却され破裂し、送風経路14内におねばが流入しにくくなる効果がある。もし、送風経路14内におねばが入り込んだ場合でも、仕切板14bの上面に形成された傾斜部14eが形成されており、蒸気経路15内に戻るようになっており、さらにはこの仕切板14bも分解して洗浄することができるため付着したおねばはきれいに洗浄できる。
【0028】
また、鍋2内から蒸気経路15および送風経路14へと移動した蒸気は蒸気経路15および送風経路14の経路壁面の温度が蒸気の温度よりも低い場合には、壁面によって冷却され、結露が生じる。これによってもさらに蓋本体3外へと排出される蒸気の濃度が低下する。さらに、このような結露は温度差が大きい場所に生じやすく、本実施の形態の場合には、蒸気経路出口15b付近で最も結露が生じ易い。炊飯中の炊き上げ工程や蒸らし工程では鍋2内を高温状態に保つことがおいしいご飯の条件であるが、結露水が鍋2にまで入り込むと鍋2内の温度が低下し、食味が低下する。また保温時に結露水が鍋2に入り込むと、蒸気口4a直下のみのご飯が水分を多く含んで白く膨潤する白化現象が生じて保温性能が低下してしまう。本実施の形態においては、蒸気経路15の壁面は樹脂で作られているので断熱性が金属よりも高く結露が生じにくくなっている。
【0029】
次に、蒸らし工程Cに入る。蒸らし工程では、鍋2内にはほとんど水は残留しておらず、米に付着した余分な水分を蒸散させながら、鍋2内を高温状態(約100℃の状態)に維持して糊化をさらに進展させる。この際、制御装置7は、内蓋温度センサ9で鍋2の上部空間の温度を検知しながら、内蓋加熱装置10を動作させて、米に対して熱を与え続け、糊化の進展を促進させる。
この蒸らし工程Cでも、蒸気は鍋2から排出されるが、炊き上げ工程に比べて量は少ない。そこで、蒸らし工程Cに入り、所定時間ΔS経過後、送風装置11のファン回転数を炊き上げ工程B時より下げるようにする。このようにすることで、送風装置11からの風が入りにくくなり、鍋2まで室温空気が到達することを低減することができる。なお、風進入防止構造16の一部である水平方向の長い経路16aにより、送風装置11による風が鍋2にまで到達しにくくなり、また屈曲部16bを設けることにより、蒸気の流れは屈曲部16bにおいて乱流となって送風装置11からの冷風が押し戻されやすくなるので、さらに鍋2まで室温空気が到達することを低減することができる。
【0030】
炊飯工程が終わり、保温工程に入ると、送風装置11は停止される。保温工程では、炊飯で室温よりも温まった送風経路14内が徐々に室温により冷却され、送風経路14内の湿度が高い場合には結露が生じる。蒸気経路出口15bは蒸気経路入口15cよりもヒンジ軸3a側にずらして配置していることで、蓋本体3を開くと送風経路14内の結露は蒸気経路15に入り込むことはあるが、蓋本体3を閉じても水は蒸気経路15の水平な経路である略水平部16aに滞留し、鍋2に入り込む可能性は非常に低くなっている。なお、送風経路14内に結露が入り込んでも、仕切板14bの上面の傾斜部14eにより蒸気経路15内に入り込むようになっている。
【0031】
次に、標準炊飯工程より短い時間で炊飯動作を行う早炊き炊飯工程の炊飯プログラム実行による動作を、図8の温度特性図を参照して以下に説明する。
標準炊飯工程では、炊飯工程時に水を一定温度に保って米に水を吸収させる浸水工程を設けているが、早炊き炊飯工程においてはこの浸水工程を短縮し、炊き上げ工程からスタートすることにより、炊飯時間を短縮するようにしている。
【0032】
まず、鍋2内に所定の米と水をセットし、操作ボタン19で、炊飯メニューにより早炊きを選択し、炊飯開始ボタンを押下し、炊飯工程が開始される。炊飯工程が開始されると、米の吸水を促進する浸水工程は行わずに、すぐ炊き上げ工程Eが始まり、加熱装置5により鍋2が加熱され、同時に送風装置11を操作させる。鍋2内の水の温度を鍋温度センサ6によって検知し、釜底温度Tまで一気に加熱する。鍋加熱装置5により釜底温度が沸騰温度であるTに達すると、鍋2内の水が沸騰状態となり、蒸気が大量に発生する。そして、発生した蒸気が鍋2に充満し、余分な蒸気は蒸気経路15内に入り込み、風進入防止部16を経て、室内空気が充満している送風経路14内に入り込む。蒸気経路15から送風経路14へ導かれた蒸気は室温の空気と混合され、この空気と蒸気の混合体が排出口13から蓋本体3外へと排出される。蒸気経路15からの沸騰状態による蒸気が送風経路14に入り込む前に送風装置11を動作させることで、確実に空気と混合することができるため、蒸気濃度を低減することができ、排出される混合気体の温度を最初から確実に低下できる。
【0033】
次に、蒸らし工程Fに入る。蒸らし工程では、鍋2内にはほとんど水は残留しておらず、米に付着した余分な水分を蒸散させながら、鍋2内を高温状態(約100℃の状態)に維持して糊化をさらに進展させる。この際、制御装置7は、内蓋温度センサ9で鍋2の上部空間の温度を検知しながら、内蓋加熱装置10を動作させて、米に対して熱を与え続け、糊化の進展を促進させる。
この蒸らし工程Gでも、蒸気は鍋2から排出されるが、炊き上げ工程に比べて量は少ない。そこで、蒸らし工程Cに入り、所定時間ΔS経過後、送風装置11のファン回転数Bを炊き上げ工程B時より下げるようにする(ファン回転数Aまで下げる)。このようにすることで、送風装置11からの風が入りにくくなり、鍋2まで室温空気が到達することを低減することができる。なお、風進入防止構造16の一部である水平方向の長い経路16aにより、送風装置11による風が鍋2にまで到達しにくくなり、また屈曲部16bを設けることにより、蒸気の流れは屈曲部16bにおいて乱流となって送風装置11からの冷風が押し戻されやすくなるので、さらに鍋2まで室温空気が到達することを低減することができる。そして、保温工程Hに入ると、送風装置11は停止される。
【0034】
このように、早炊き炊飯工程では、通常炊飯工程時の浸水工程がないため、送風装置11をすぐ動作させて、蒸気経路15から送風経路14に入り込んだ蒸気と送風装置11からの室温の空気とが確実に混合することができ、排出される混合気体の温度を確実に低下することができる。
【0035】
このように、通常炊飯工程の浸水工程時には送風装置の動作を停止し、蒸気が沸騰する直前に動作させ、さらに蒸らし工程ではファン回転数を下げ、保温工程では停止することで、消費電力を低減でき、かつ送風装置のファン騒音の発生も抑制することができる。
【0036】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、排出する蒸気温度を低減しつつも、消費電力を低減し、さらに送風経路と蒸気経路とを送風装置から蓋本体を開放することなく取り外すことができるため、洗浄性に優れ、かつ使い勝手の良い炊飯器を提供することができる。
【0037】
また、図7および図8に示すように、送風装置11のファン回転数は、炊飯器本体1に設置された図示しない室内温度検知センサにより室内温度を検知して、室内温度が25〜30℃以上の場合はファン回転数Bおよび回転数Aとし、室内温度が25〜30℃以下の場合は、ファン回転数Bおよびファン回転数Aよりも低いファン回転数bおよびファン回転数aで送風装置11を動作する。このように動作することによって、ファン騒音をさらに低減することができ、省エネを図ることもできる。
【0038】
なお、経路16aは必ずしも水平方向でなくてもよく、斜めなどでもよいが、蒸気経路
出口15bが蒸気経路入口15cの真上に位置しないようにずらせて配置すればよい。
【0039】
なお、蒸気経路15の壁面の外側を断熱材などで覆うとさらに蒸気経路15の内壁面に結露が生じにくくなるのでよい。
【0040】
なお、本実施の形態において、蒸気経路15の経路16aは水平方向であるが、蒸気経路入口15cに近づくほど高く、蒸気経路出口15bに近づくほど低く構成すると、さらに結露が鍋2に侵入しにくくなるのでよい。
【0041】
また、排気側11bと排出口13とを対向させて構成することにより、風が抵抗なく流
れ、屈曲した送風経路14に比べて風量を増加させることができ、より安価で風量の小さ
い送風装置11を使用しても屈曲した送風経路14の場合と同等以上の風量とすることが
可能となるのでよい。また、風量の小さい送風装置11ほど基本的には小型となるので、
蓋本体3をコンパクトに構成することができ、コンパクトで設置性のよい炊飯器を提供す
ることができる。
【0042】
なお、送風装置11はヒンジ軸3aから遠い蓋本体前方に配置しても、蒸気経路出口15bが蒸気経路入口15cの真上に配置しないようにずらせていれば、蒸気が鍋2にまで進入しにくいという効果が得られるのでよい。
【0043】
また、送風装置11が蓋本体3の中でもヒンジ軸3aに近い場所に配置していることにより、蓋本体3を開く際に必要な力を小さくすることができるので、回動バネ(図示せず)の力を低減することができる。このことにより、回動バネの力が大きいと蓋本体3が炊飯器本体1に対して略90度の角度まで開ききった場合に大きな力が働いて、鍋2が空の場合には炊飯器本体1が浮き上がってしまいがちになるという不具合も低減することができ、使い勝手のよい炊飯器を提供することができる。また回動バネの力が大きいとバネ自体も大きくなるが、送風装置11をヒンジ軸3a近傍に配置することで、炊飯器全体をコンパクトにすることができてよい。
【0044】
なお、蒸気経路出口15bの断面積を変更することで、蒸気の送風経路14への排出の勢いを制御することができ、蒸気経路出口15bの断面積を小さくすると蒸気は勢いよく排出され、より送風経路14の蒸気経路出口15bと逆側まで届きやすくなり、一方、蒸気経路出口15bの断面積を大きくすると蒸気の勢いは低減され、より送風経路14の蒸気経路出口15bと逆側まで届きにくくなる。これにより、送風経路14の断面積に合わせて蒸気経路出口15bの断面積を変化させて蒸気と空気との混合度合を最適にコントロールすることが可能となる。
【0045】
なお、蒸気経路15は送風経路14の底面の経路壁14dと接続しているが、その他の経路壁14dと接続しても同様の効果が見込めるのでよい。
【0046】
実施の形態2.
図9、図10は、本発明の実施の形態2における炊飯器を示している。実施の形態1と同一の構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図9および図10は、送風装置11をファンにより構成した場合に発生するファン騒音対策を施した送風経路14の排気側11bと排気口13を示すものであり、その開口形状を騒音低減フィルタとしたものである。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0048】
ファン騒音は、風力に比例する風きり音とファンが回転する際にするモータ軸付近で発生する音(軸音)がある。風量がある程度多い場合には、風きり音が主成分となり、羽根形状が騒音の違いとなる。低回転で動作させた場合は風きり音よりも軸音が目立つようになる。
【0049】
このようなファン騒音は、送風装置11と連通する送風経路14内からほぼ一直線に連結している排気側11bと排気口13から外部へと排出されてしまう。そこで、送風装置11に対向するように配置された排気側11bおよび排気口13を、複数の円筒状の窪みの騒音低減部21と、この窪みの底部に窪み直径より小さな開口穴からなる音響エネルギーを熱エネルギーに変換する複数の音熱変換穴22を形成してなる騒音低減フィルタ形状にする。これらの音熱変換穴22は、貫通穴であるため、送風装置11内の風は、音熱変換穴22を通って外部へ排出されることになる。
【0050】
次に、本実施の形態の動作について説明する。上述した実施の形態1に記載したように炊飯動作が開始されると、送風装置11が駆動し、風が発生する。この風は、騒音低減部21に到達する。騒音の音響エネルギーは、騒音低減部21に形成された音熱変換穴22で熱エネルギーに変換され、騒音の出力音圧レベルが低減する。そして、騒音低減部21に到達した空気流は音熱変換穴つまり排気穴13から排出される。
【0051】
音熱変換穴22により、騒音の音響エネルギーを熱エネルギーに変換できるのは以下の原理による。即ち、騒音の音波が音熱変換穴22に進入した場合、まず騒音低減部21により形成される収縮部21aで音波が巣絞り込まれる。その後、音波は音熱変換穴22である膨張部22aに進入するが、収縮部21aの孔幅に比べて膨張部22aの孔幅が広いために、一旦絞り込まれた音波は、一気に膨張する。この膨張によって、騒音の音響エネルギーが熱エネルギーに変換される。その結果、ファン騒音の出力音圧レベルを効果的に低減させることができる。ここで、音熱変換穴22で低減できる騒音は、所定の周波数帯域の音に限られる。つまり、図9音熱変換穴22の開口形状と図10の音熱変換穴22の開口形状とでは、図11の音響フィルタ特性図に示すように、低減できる周波数帯域が、音熱変換穴22の開口形状によって特定される。
【0052】
また、炊き上げ工程において、連続して沸騰が生じている場合には、蒸気経路15が長いと蒸気の噴出音が大きくなる恐れがあるが、上述した騒音低減フィルタ形状の騒音低減部21と音熱変換穴22とを設けることで、噴出音を効果的に下げることができる。
【0053】
以上の構成により、本実施の形態の炊飯器は、排出する蒸気温度を低減しつつも、騒音低減フィルタ形状により音響インピーダンスを高め送風装置11のファン騒音を低減し、さらには沸騰時の蒸気の噴出音も低減させることができ、音の静かな炊飯器を提供することが可能となる。
【0054】
なお、吸入口12は送風装置11の種類に合わせて送風装置11の性能が十分発揮できるように圧力損失が少なくなるように設ければよく、位置や形状は異なってもよい。また、蓋本体3内部は気密空間になっていないことが多く、外気とどこかでつながっているので、送風装置11の送風に支障がなければ、吸入口12を特に設けることなく、従来から存在する蓋本体3と外気との連通した隙間を吸入口12としてもよい。
【0055】
なお、送風装置11は蓋本体3の後部に配置しているが、蓋本体3前部に配置してもよいし、炊飯器本体1内部に配置して送風経路14を炊飯器本体1内および蓋本体3にわたって設けてもよい。
【0056】
また、送風装置11を蓋本体3の後部左側に偏在させ、排気口13を右側に設けて送風方向を横方向にとるなど、送風方向を他の方向にとっても蒸気を室温空気と混合して炊飯器本体外へと排出する機能が達成されればよい。
【0057】
なお、送風装置11を偏在させる場合には左右どちらでもよいが、より炊飯器本体の中心に近い方が蓋本体3の開閉がスムーズになってよい。
【符号の説明】
【0058】
1 炊飯器本体、1a 鍋収納部、1b 上枠、2 鍋、3 蓋本体、3a ヒンジ軸、4 内蓋、4a 蒸気口、5 鍋加熱装置、6 鍋温度センサ、7 制御装置、8 フック、9 内蓋温度センサ、10 内蓋加熱装置、11 送風装置、11a 送風装置の吸気側、11b 送風装置の排気側、12 吸気口、13 排気口、14 送風経路、14a 送風経路形成部、14b 仕切板、14c パッキン、14d 経路壁、14e 傾斜部、15 蒸気経路、15a 蒸気経路形成部、15b 蒸気経路出口、15c 蒸気経路入口、16 風進入防止構造、16a 経路、16b 屈曲部、17 内蓋パッキン、18 表示部、19 操作ボタン、21 騒音低減部、21a 収縮部、22 音熱変換穴、22a 膨張部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体の内部の鍋収納部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、前記炊飯器本体の開口部をヒンジ軸を中心に開閉可能な蓋本体と、外気と連通した送風装置と、前記送風装置と連結するとともに外気と連通する送風経路と、前記送風経路と前記鍋内とを連通させた蒸気経路と、前記鍋加熱装置と前記送風装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記送風経路と蒸気経路とを一体的に構成し、前記蓋本体が閉状態時に前記送風装置から分離可能としたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記送風装置から分離した前記送風経路と蒸気経路とを、それぞれ分割可能としたことを特徴とする請求項1項に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記送風経路と蒸気経路は、前記鍋と連通する蒸気経路形成部と、前記送風経路と蒸気経路の境界部を形成する仕切板と、外気と連通する送風経路形成部とから構成されることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の炊飯器。
【請求項4】
前記送風装置の排気側、騒音低減フィルタを配置したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記送風経路の排出口に、騒音低減フィルタを配置したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
前記騒音低減フィルタは、円筒状の窪みと、前記窪みの底部に該窪みの直径より小さい孔径の穴とで構成され、前記窪み及び穴を複数形成して構成することを特徴とする請求項4または5いずれか記載の炊飯器。
【請求項7】
前記送風経路と蒸気経路の境界部を形成する仕切板は、その周囲を柔軟性のあるパッキン部材で被覆し、該パッキン部材を介して前記送風経路形成部と前記送風経路形成部を挟み込み支持するように構成したことを特徴とする請求項3項に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記送風装置のファンの回転を、炊き上げ工程時のファン回転数より炊き上げ工程完了後は回転数を下げることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項9】
複数の炊飯メニューが選択できる炊飯器において、浸水工程のない炊飯メニューが選択された場合、前記鍋加熱手段による炊飯加熱開始とほぼ同時に前記送風装置のファン回転を開始し、炊き上げ工程完了後に低回転にすることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項10】
保温工程時はファン回転を停止することを特徴とする請求項8および9いずれか記載の炊飯器。
【請求項11】
前記制御手段は、炊き上げ工程時の送風装置のファン回転を、鍋底温度が所定温度を検知した後一定時間経過するとファン回転数を下げるように制御することを特徴とする請求項8記載の炊飯器。
【請求項12】
前記制御手段は、前記送風経路の排気口から排出される混合気体の温度を約60℃以下になるように前記送風装置を制御することを特徴とする請求項8〜11いずれかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−220750(P2010−220750A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70234(P2009−70234)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】