説明

炊飯器

【課題】温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】鍋1を加熱する鍋加熱手段3と、鍋の開口部を覆う内蓋4を有する蓋5と、内蓋を加熱する内蓋加熱手段10と、内蓋の加熱により放射される赤外線を検出する赤外線センサ8と、赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する制御手段12とを備え、前記赤外線センサ8は前記蓋内に配置した。これにより、赤外線センサ8による温度検出速度を早くし、加えて、高い精度を保ち、かつ汚れをなくし正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサによる温度検出情報に応じて加熱量を制御する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な炊飯器においては、鍋の底部に接触した鍋温度検出手段により鍋の温度を計測し、この鍋の温度検出情報に基づいて鍋加熱手段を制御することで加熱調理を実行している。
【0003】
しかしながら、鍋温度検出手段による温度計測では、鍋加熱手段による加熱する時、特に、加熱コイルによる電磁誘導加熱で鍋を短時間に大熱量で加熱する時に、実際の鍋の温度上昇に対して、温度検出が遅れ、すでに所定温度に上昇しているものをさらに連続加熱して、加熱量が過大になるという問題がある。
【0004】
何故なら、鍋温度検出手段は鍋の底部と接触状態で熱伝導によりコンタクトの温度が上昇し、さらに内部の感熱素子へと熱伝導による温度上昇があり、そのためにはそれぞれの接触部での熱伝導効率と部材の熱容量により、鍋の温度検出までに時間が必要であるからである。
【0005】
そのため、赤外線センサなど、鍋の底面と非接触な鍋温度検出手段を搭載した調理器が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特許第1862944号公報
【特許文献2】特許第2747887号公報
【特許文献3】特開平9−154715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の赤外線センサなどの鍋温度検出手段を搭載した調理器の構成では、いずれも鍋の温度変化を高速に検出できるが、単純に赤外線を検出するだけであるため、温度検出精度が高いとは言い難く、適切な鍋加熱手段の加熱量制御ができない。
【0007】
温度検出精度が高くない原因としては、鍋を加熱させるための加熱装置が鍋の近傍に存在し、鍋を加熱させると鍋だけでなく鍋近傍の物体や加熱装置および加熱装置近傍の物体まで加熱されてしまう。
【0008】
赤外線センサは赤外線センサが受け取る赤外線量に応じて温度を検出するため、鍋以外から発せられた赤外線を赤外線センサが受け取ると、検知誤差が生じ、温度検出精度が低下してしまう。
【0009】
炊飯器をコンパクトに構成するためには、鍋から赤外線センサを遠く離して熱的な影響を緩和することができないので、どうしても温度検出精度が低下してしまっていた。
【0010】
また、赤外線センサなどの鍋温度検出手段は鍋底温度を検出するものであるため、鍋の着脱時などにおいて、上方から米粒、ご飯粒、水や埃などが落下し、赤外線の透過部を汚し正確な温度検出が行えない恐れもある。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、赤外線センサにより温度検出を高速にす
るとともに、温度検出精度が高く、かつ赤外線の透過部の汚れをなくし正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、機器本体と、機器本体に装備する鍋と、鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う内蓋を有し機器本体に対して回動自在に装備した蓋と、内蓋を加熱する内蓋加熱手段と、内蓋の加熱により放射される赤外線を検出する赤外線センサと、赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する制御手段とを備え前記赤外線センサを蓋内に配置したものである。
【0013】
これによって、内蓋加熱手段により内蓋を加熱し、内蓋温度が上昇すると、内蓋から赤外線の放射が発生し、赤外線センサが赤外線を検出する。内蓋は鍋内の水や米を加熱するための主な手段ではないため、内蓋の加熱量は鍋の加熱量と比べて多くない。
【0014】
すなわち、内蓋の温度も内蓋加熱手段の温度も鍋および鍋加熱手段の温度よりも低いので温度検出精度を低下させる影響は少なくすることができる。
【0015】
また、赤外線センサは蓋内に配置したことにより、外部と隔離され汚れを阻止できる。したがって、赤外線センサにより温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の炊飯器は、赤外線センサにより温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ赤外線の透過部の汚れをなくし正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、機器本体と、機器本体に装備する鍋と、鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う内蓋を有し機器本体に対して回動自在に装備した蓋と、内蓋を加熱する内蓋加熱手段と、内蓋の加熱により放射される赤外線を検出する赤外線センサと、赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサを蓋内に配置した炊飯器としたものである。
【0018】
これによって、内蓋は鍋内の水や米を加熱するための主な手段ではないため、内蓋の加熱量は鍋の加熱量と比べて少なく、内蓋および内蓋加熱手段の温度も鍋および鍋加熱手段の温度よりも低いので温度検出精度を低下させる影響は少なくすることができる。
【0019】
また、赤外線センサは蓋内に配置したことにより、外部と隔離され汚れを阻止できる。したがって、温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ赤外線の透過部の汚れをなくし正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明において、内蓋加熱手段として内蓋を電磁誘導加熱する内蓋加熱コイルとし、内蓋と蓋との間に空隙を設けたことにより、赤外線センサが内蓋だけでなく内蓋加熱手段から発生する赤外線も受け取ってしまうことを低減し、温度検知精度を向上させることができる。
【0021】
また、内蓋と蓋とが接触した状態では温度検出精度の低下を防ぐために、温度検知範囲を内蓋の内蓋加熱手段との接触部から一定距離離した場所しか選択できなかったが、空隙を設けたことにより温度検知範囲を内蓋の被加熱部まで選択できるので、内蓋の最も加熱
される部分の温度を検知して内蓋加熱手段を制御することができるので、内蓋の温度制御性が向上する。
【0022】
第3の発明は、特に、第2の発明において、赤外線センサは、内蓋の被加熱部の温度を検知することとしたものである。
【0023】
内蓋を急激に加熱する場合に内蓋の被加熱部と非加熱部との温度差が大きくなるが、被加熱部の温度を検知することにより、内蓋の温度制御が容易となるので、内蓋によるご飯の加熱量をより制御しやすくなり、炊飯性能を向上させることが可能となる。
【0024】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、制御手段は、炊飯を開始した後鍋内の水が沸騰するまでの間に、内蓋加熱手段により内蓋を加熱させることとしたものである。
【0025】
従来、鍋内の水を鍋加熱手段により一定温度に上昇させる際は、鍋と接触している部分の温度がその他の水と比べて非常に高くなり、糊化温度を超えて上昇してしまう場合があったが、内蓋により加熱することで、水が内蓋と接触する部分がなく、極端に水温が上昇する部分がないので、浸水工程中に一部の米が糊化温度を超え、米の表面が崩れてしまい食味の悪いご飯となってしまうことを防ぐことができる。
【0026】
その結果、より均一に米と水を沸騰状態まで加熱することができ、食味の良いご飯が炊ける炊飯性能を向上させた炊飯器を提供することが可能となる。
【0027】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、赤外線センサが検出する内蓋の温度に基づいて、制御手段は鍋内の圧力を調整するようにしたことにより、鍋内が発生する蒸気で充満され、さらに加熱を継続し高温度で大気圧以上の蒸気で充満された場合に、赤外線センサが内蓋の温度を高速に温度検出することで、鍋内の温度変化を正確に検出する。
【0028】
これにより、炊飯の各工程において、適切なタイミングで圧力調整手段により鍋内を大気圧に開放したり、大気圧以上に高めたり、鍋内を必要な圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
【0029】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、内蓋からの赤外線が透過する赤外線透過部は、内蓋と赤外線センサとの中間部に配置したことにより、内蓋からの赤外線は赤外線透過部を透過して赤外線センサに到達し、内蓋の温度を測定できることに加えて、赤外線透過部の部材により赤外線センサに蒸気や水滴や埃が進入することを防止できるので、内蓋の温度測定が正確で、長期間炊飯性能を維持することができる。
【0030】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、赤外線センサは、センサ基材と、赤外線の吸収によるセンサ基材の温度変化を検出する第1の感熱素子と、センサ基材の雰囲気温度を検出する第2の感熱素子と、第2の感熱素子に相対して赤外線を反射する赤外線反射層とを有することとしたものである。
【0031】
これにより、赤外線センサを形成するセンサ基材が内蓋からの赤外線を吸収し、センサ基板に配置された第1の感熱素子がセンサ基材の温度変化を検出する。同時に、センサ基材は、赤外線反射層が配置された部分では内蓋からの赤外線は吸収されずに、温度変化が発生しないので、第2の感熱素子はセンサ基材の設置されている周囲温度を検出する。
【0032】
このように赤外線センサは第1の感熱素子が温度検出用感熱素子として、第2の感熱素
子が温度補償用感熱素子として作用し、制御手段はこの赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する。
【0033】
蓋は米や水を加熱する主な手段ではないため、蓋の温度も鍋の温度よりは低いため、センサ基材は熱容量が小さく少ない赤外線でも比較的容易に感熱素子が差を検出することができるため、温度検出精度がさらに上昇する。
【0034】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、センサ基材には第1の感熱素子に相対し赤外線を吸収する赤外線吸収層を設けたことにより、内蓋が放射する赤外線を高効率に吸収し、この熱量でセンサ基材を加熱するものである。
【0035】
赤外線吸収層を、例えば黒色の赤外線反射率の小さい塗料で形成し、第1の感熱素子を覆うようにセンサ基材に塗布すると、内蓋が放射する赤外線を第1の感熱素子よりも広い面積で受熱すると同時に、この熱量でセンサ基材を加熱するので、内蓋が短時間で温度上昇する場合に、その温度変化に追従してセンサ基材および第1の感熱素子が温度上昇し、正確に内蓋の温度を検出することができる。
【0036】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、赤外線反射層は第2の感熱素子を覆うようにセンサ基材と蓋に形成した赤外線透過部との間に配置したことにより、第2の感熱素子の配置された部分のセンサ基材に、第2の感熱素子よりも広い面積で赤外線が放射されることを防止する。
【0037】
さらには、赤外線反射層とセンサ基材との間に空隙を設ければ、第2の感熱素子およびその部分のセンサ基材の温度は、温度検出用感熱素子である第1の感熱素子のように内蓋の温度に影響されず、赤外線センサの配置された雰囲気温度をほぼ保持し、温度補償用感熱素子として作用するものであって、正確に内蓋の温度を検出することができる。
【0038】
第10の発明は、特に、第1〜第9のいずれか1つの発明において、センサ基材は第1の感熱素子と第2の感熱素子の中間部に断熱部を設け、第1の感熱素子から第2の感熱素子への熱流を抑制することにより、温度検出用感熱素子である第1の感熱素子が配置された部分のセンサ基材から温度補償用感熱素子である第2の感熱素子が配置されたセンサ基材へと、熱伝導で熱が移動することによる温度補償用感熱素子の温度上昇を抑制するものであり、低温度から高温度まで正確に温度を検出することができる。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0040】
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示している。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器は、機器本体13と、米や水などの被調理物を収容し機器本体13に装備する鍋1と、機器本体13内において鍋1を収納する保護枠6と、保護枠6に装備され、鍋1底を加熱する鍋加熱手段2および鍋1側面を加熱する鍋側面加熱手段3と、鍋1の開口部を覆う内蓋4を有し機器本体13に対して回動自在に装備した蓋5と、内蓋4を加熱する内蓋加熱手段10と、内蓋4の加熱により放射される赤外線を検出する赤外線センサ8と、赤外線センサ8による内蓋4の温度検出情報に応じて鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段10を同時あるいは個別に加熱量を制御する制御手段12とを備えている。
【0042】
そして、前記赤外線センサ8は、蓋5内に配置したものである。
【0043】
本実施の形態では、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段10はそれぞれ加熱コイルよりなり鍋1および内蓋4を電磁誘導加熱する。蓋5は機器本体13の一端に設けた蓋ヒンジ5aを中心に回転するもので、内蓋4は蓋5の片側の内蓋収納部5bに収納され、蓋5の下部を構成する蓋カバー5dに着脱自在に設けられている。
【0044】
そして、蓋5が閉じられた状態のときに鍋1の開口部を覆うものである。この内蓋4は炊飯中の蒸気を排出する蒸気孔4aを有している。
【0045】
また、蓋5が閉じられた状態のとき、鍋1と内蓋4の間には隙間ができるが、その隙間は内蓋4に取り付けられたループ状のパッキン4bで封止され、鍋1内は密閉される。
【0046】
内蓋4は主に磁性を有する金属で構成されるが、鍋1側の面は金属が剥き出しの状態ではなく樹脂コーティングが施されており、鍋1側に向かって赤外線を放射しやすい構成となっている。
【0047】
また、蓋5の蓋カバー5dの一部には、内蓋加熱手段10による内蓋4の加熱により放射される赤外線を透過する材質で形成された赤外線透過部7を有している。
【0048】
この赤外線透過部7は、具体的には、ハロゲン化合物ガラス、結晶化ガラスやいわゆる赤外線透過性樹脂などが想定されるが、赤外線透過部7の大きさと赤外線センサ8の全体としての熱容量、感熱素子の熱容量により、種々のものが可能であり特に限定するものでない。
【0049】
赤外線透過部7の上方位置で蓋5内には、赤外線センサ8を配置しているものである。なお、内蓋4を内蓋収納部5bに収納すると、内蓋4の上面と赤外線透過部7および赤外線センサ8との間に所定の空隙5cがある。
【0050】
また、蓋5の上部には、鍋1内の蒸気を排出する第2の蒸気孔9aと、鍋1で炊飯中に発生する「おねば」の上昇を検出することで吹き零れを防止する球状のうまみセンサ9bとを有する蒸気筒9が配置されている。
【0051】
また、鍋1の底部に接触して鍋温度検出手段41が設けられ、この鍋温度検出手段41は鍋1の底部と接触状態で熱伝導により温度が上昇するコンタクト41bと、このコンタクト41bからの熱伝導により温度が上昇する感熱素子41aとを有している。
【0052】
前記制御手段12は、加熱手段制御部12aと鍋温度計測制御部12bと内蓋温度計測制御部12cとを有し、機器本体13の前面に設けられた入力操作部14により入力された信号、および記憶手段(図示せず)に記憶された、浸水工程における温度、温度上昇速度、時間、炊き上げ工程における温度、温度上昇速度などの値に基づいて、炊飯工程を実行する。
【0053】
炊飯工程において、加熱手段制御部12aは赤外線センサ8および鍋温度検出手段41の検出信号に基づいて鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段10を同時あるいは個別に制御する。
【0054】
次に、図2に基づき赤外線センサ8について説明する。
【0055】
赤外線センサ8は、樹脂フィルムのセンサ基材20と、センサ基材20に形成された配線パターン21と、赤外線の吸収によるセンサ基材20の温度変化を検出する第1の感熱
素子22と、センサ基材20の雰囲気温度を検出する第2の感熱素子23とを有する。
【0056】
また、センサ基材20の表面には第1の感熱素子22に相対するように赤外線を吸収する赤外線吸収層24を配置し、第2の感熱素子23には相対するように赤外線を反射する赤外線反射層25を配置している。
【0057】
さらに、電気的な絶縁性、耐熱性などを有する樹脂材料の保護層26が第1の感熱素子22、第2の感熱素子23、配線パターン21などを保護する目的で、センサ基材20の片面を覆っている。
【0058】
赤外線吸収層24の材質は赤外線吸収率の高い材料として黒色の樹脂材料など、赤外線反射層25の材質は赤外線吸収率の低い材料として研磨されたアルミニウム金属材料などを用いることができるが、特に限定するものではない。
【0059】
センサ基材20の樹脂フィルムの材質は、鍋1が放射する赤外線による温度上昇に対する耐熱性と、配線パターン21を印刷できる絶縁性などがあれば、薄いフィルム形状のポリイミド樹脂のような樹脂材料でよい。
【0060】
赤外線吸収層24と赤外線反射層25は、センサ基材20の表面に接着して一体的としているが、これらを別体に配置することもできる。
【0061】
なお、図2においては、センサ基材20と、配線パターン21と、第1の感熱素子22と、第2の感熱素子23とは、センサ基材20に、まず第1の感熱素子22と第2の感熱素子23とを例えば印刷するように塗布することで配置し、その後に配線パターン21を配置している。
【0062】
また、図2ではセンサ基材20の厚さが保護層26より薄く、センサ基材20と第1の感熱素子22の厚さが同程度であるように見えるが、これに限定するものではなく、その大きさ、厚さなど形状を本発明の趣旨を逸脱しない範囲で調整してもよいものである。
【0063】
ここで、図3は機器本体13の前面部に設けた入力操作部14を示しており、米と水を入れた鍋1を機器本体13にセットし、炊飯スイッチ14aを押すことで、炊飯が開始する。
【0064】
入力操作部14には、かたさ設定スイッチ14bやコース設定スイッチなどがあり、入力表示部15aを見ながら、各種の設定ができる。
【0065】
また、運転中には、炊飯ランプ15b、保温ランプ15c、再加熱ランプ15dが炊飯、保温などの運転状態に合わせて点灯する。
【0066】
次に、炊飯工程の各工程の運転方法について説明する。
【0067】
本実施の形態における炊飯器の炊飯工程は、よく知られているように、図4に示す浸水工程A1、炊き上げ工程A2および蒸らし工程A3の順で構成される。
【0068】
なお、炊き上げ工程A2には鍋1内を高温に維持する工程が行われ、これを沸騰維持工程と呼ぶ。
【0069】
浸水工程A1は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことで、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるための工程である。
【0070】
そのため、米の糊化が開始しない温度まで米と水の温度が上昇するように鍋加熱手段2である鍋加熱コイルおよび鍋側面加熱手段3である鍋側面加熱コイルに通電し、鍋1の底面および側面を発熱させる。鍋1の米全体を目的の温度で均一に維持し、鍋1の米の吸水条件を均一に保つことが行われる。
【0071】
浸水工程A1時の所定温度としては米の糊化が起こらない40℃から60℃以下に保持される。
【0072】
浸水工程A1で、鍋1内の米と水は主として鍋1の底部の鍋加熱手段2により加熱され、熱が上部に移動するので、鍋1の上方ほど高い水温であり、内蓋4の温度が内部の水と米の温度に対応した温度を示す。
【0073】
赤外線センサ8による内蓋4の温度検出情報と鍋温度検出手段41による鍋1の温度検出情報により、制御手段12は浸水工程を米の糊化が起こらない温度に維持する。
【0074】
浸水工程A1を所定時間行うと、次に炊き上げ工程A2を実行する。炊き上げ工程A2では、主として鍋加熱手段2で鍋1の底面を発熱させ、炊飯中の米および水の温度を水の沸点まで上昇する。
【0075】
もちろん、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段10で加熱してもよい。
【0076】
炊き上げ工程A2の加熱途中で、鍋1内の米および水の温度が60℃前後になるとデンプンの糊化が始まる。
【0077】
浸水工程A1で適度に吸水させることで、米内部への水や熱の伝達が十分に行え、米中心部まで糊化が行われ、炊き上げ工程A2の沸騰維持工程に移る。
【0078】
また、炊き上げ工程A2で、制御手段12は鍋温度検出手段41による鍋1の温度検出情報と赤外線センサ8による内蓋4の温度検出情報により、炊飯量判定制御部(図示せず)により鍋1内の米と水の量を算定し、炊飯量検出情報を得る。
【0079】
制御手段12はこの炊飯量検出情報に基づいて、以後の鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3などの加熱を加熱手段制御部12aにて制御するものである。
【0080】
沸騰維持工程では、底部からの沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。また、鍋1内の水が沸騰して蒸気となり、蒸気は米の間を通過して上昇して内蓋4の蒸気孔4aを経て第2の蒸気孔9aから機外へ放出される。蒸気が米の間を通過することによりさらに糊化が促進される。
【0081】
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼなくなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な温度上昇により所定の温度を鍋温度検出手段41が検出したとき、制御手段12は沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。
【0082】
すなわち、沸騰維持工程の時間は、浸水工程A1において鍋1内に供給する水量、米と水の割合(水加減という)や炊飯量などに依存する。
【0083】
最後に、蒸らし工程A3では鍋加熱手段2が鍋1の底面のご飯が乾燥したり焦げたりし
ない程度に鍋1の底面を発熱させ、ご飯の糊化を持続させる。
【0084】
このように蒸らし工程A3においては、ご飯が芯まで糊化するように、ご飯が乾燥したりこげたりしない温度で、且つ鍋1全体、すなわちご飯を高温の状態に保つことが重要である。
【0085】
所定時間(例えば、15分前後)の蒸らし工程A3を行った後、鍋1内の温度を所定温度(例えば、70℃前後)に維持する保温工程を行う。
【0086】
このような運転は、制御手段12が炊飯工程および保温工程の進行、また蓋5の開閉、入力操作部14からの入力などに応じて、鍋加熱手段2などを動作させることで実現される。
【0087】
次に、赤外線センサ8の動作について詳述する。
【0088】
炊飯工程で、鍋加熱手段2が鍋1を加熱すると、鍋1の開口部が内蓋4で覆れており、加熱された鍋1に収納された米と水の温度が上昇し、鍋1および内蓋4の温度が上昇する。これにより、内蓋4の上面から内蓋収納部5bに向けた赤外線の放射が発生し、赤外線透過部7を透過した赤外線を赤外線センサ8が検出する。
【0089】
赤外線センサ8を形成する樹脂フィルムのセンサ基材20は、赤外線吸収層24が配置された部分では赤外線が吸収され温度が上昇するので、配線パターン21に配置された第1の感熱素子22がセンサ基材20の温度変化を検出する。
【0090】
一方、センサ基材20は、赤外線反射層25が配置された部分では赤外線は吸収されずに、温度変化が発生せずに、配線パターンに配置された第2の感熱素子23はセンサ基材20の設置されている周囲温度を検出する。
【0091】
制御手段12はその鍋温度計測制御部12bにより、第1の感熱素子22を内蓋4の温度検出用感熱素子として、第2の感熱素子23を温度補償用感熱素子とすることで、内蓋4の温度を高速に検出するとともに、このような内蓋4の温度検出情報に応じて鍋加熱手段2、内蓋加熱手段10などの加熱量を高速に制御する。
【0092】
したがって、各工程において必要な温度と加熱量を最大限に得るものであり、ご飯の加熱ムラが小さく十分に糊化を促進し全体をおいしく炊き上げることができる。
【0093】
ここで、赤外線センサ8は、赤外線透過部7の上方位置で蓋5内に配置しているものであり、内蓋4の上面と赤外線透過部7および赤外線センサ8との間に所定の空隙5cがある。
【0094】
このため、内蓋4と内蓋収納部5bが直接接触することによる高温度の内蓋4から低温度の内蓋収納部5bへの熱伝導の変動によるバラツキが発生しない。
【0095】
したがって、内蓋4の温度変化、特に急速な温度上昇においても、赤外線の放射状態が安定し、正確に内蓋4の温度を検出できる。
【0096】
さらに、内蓋加熱手段10が誘導加熱方式である場合には、誘導加熱用の高周波電流が流れる内蓋加熱コイルや内蓋収納部5bよりも、内蓋4の温度が高いものであるから、内蓋4から内蓋収納部5bおよび空隙5cに向かって赤外線が放射され、内蓋収納部5bから内蓋4および空隙5cへの赤外線の放射はない。
【0097】
このような構成によって、内蓋4の温度および内蓋4から放射する赤外線が安定し、より正確に内蓋4の温度を検出できる。
【0098】
また、赤外線吸収層24は黒色の赤外線反射率の小さい塗料などで形成され、第1の感熱素子22を覆うようにセンサ基材20に塗布したものでよく、内蓋4が放射する赤外線を受熱すると同時に、熱容量の小さいフィルム形状のセンサ基材20を加熱するものであるので、内蓋4が短時間で温度上昇する場合にも、その温度変化により高速に追従して温度上昇し、より正確に温度を検出できる。
【0099】
また、従来の特許文献に見られるように、鍋底の温度を検知するために赤外線センサを設けた場合には温度検知精度が低下してしまう。
【0100】
炊飯器は鍋1の主に底部を加熱して鍋1内の米や水に熱を伝える。そのため、鍋1底部が最も高い温度となる。また、鍋1を加熱する鍋加熱手段2も発熱するため、赤外線センサ周囲の温度は鍋1の加熱時に急激に上昇する。赤外線センサは赤外線センサの雰囲気温度と鍋1からの赤外線量を鍋1と赤外線センサとの温度差に変換したものを足し合わせて鍋1温度と検知するので、雰囲気温度が急激に変化し、赤外線センサと赤外線センサの周囲部分とに温度差が生まれると誤差要因となる。
【0101】
つまり、鍋1の下部に赤外線センサを配置すると急激な温度変化により誤差要因が大きくなり、検知精度が低下してしまうという課題があった。
【0102】
しかし、本実施の形態に示すとおり、赤外線センサを内蓋4の温度検知用に用いることで、温度検知精度を大幅に向上させることができる。
【0103】
内蓋4は鍋1内の米や水を主体的に加熱する熱源ではなく、鍋内の米や水、ご飯を補助的に加熱する手段である。
【0104】
そのため、内蓋4の温度は雰囲気温度と同じレベルで上昇する。また、内蓋加熱手段10による加熱量も鍋加熱手段2による加熱量に比べて非常に少ない。よって、雰囲気温度は急激に上昇することがなく、検知精度が低下しない。
【0105】
従来から、炊飯量を検知するために、鍋温度検出手段41が一定温度を検知した後、内蓋4の温度が一定となる時間を測定し、この時間から炊飯量を判定していた。
【0106】
そのため、内蓋4の温度を高精度で検知することで、炊飯量がさらに正確に検知できる。
【0107】
内蓋4は内蓋加熱手段10により誘導加熱で加熱されるので、非接触状態で加熱される。内蓋加熱手段10が内蓋4と接触して熱を伝えるタイプ(例えばヒータなど)の加熱手段を用いると、内蓋4よりも内蓋加熱手段10の方が温度が高くなり、周囲温度が急激に上昇しやすくなる。
【0108】
また、赤外線センサの視野に内蓋加熱手段10が含まれてしまうと正確な内蓋4の温度検知ができなくなってしまう。
【0109】
しかし、本実施の形態のように非接触状態で内蓋4を加熱することで、周囲温度を低減し、また内蓋4の被加熱部4aを赤外線センサの視野に選択しても温度精度が低下しないので、赤外線センサの視野を自由に選択できる。
【0110】
このように、本実施の形態では、赤外線センサは第1の感熱素子が温度検出用感熱素子として、第2の感熱素子が温度補償用感熱素子として作用し、制御手段はこの赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する。
【0111】
内蓋の周囲温度は急激に変化しないため、温度検出精度は高く維持できる。また、赤外線センサは蓋内に配置したことにより、外部と隔離され汚れを阻止できる。
【0112】
したがって、赤外線センサにより温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ正確な温度検出で適切な加熱量制御ができる。
【0113】
また、制御手段12は浸水工程A1や炊き上げ工程A2において、内蓋加熱手段10を動作させると、内蓋4の放射熱で鍋1内の水を加熱することができる。
【0114】
鍋1内の水と米は鍋1によって加熱されるので、鍋1の温度は水温よりも高くなっている。特に浸水工程A1では米の温度を糊化温度以下に維持することが重要であるが、吸水を促進するためには糊化温度以下の範囲で水温を上げることが効果的であることはよく知られている。そのため、従来は鍋加熱手段2で鍋1を加熱し、水を介して米を加熱していた。
【0115】
しかし、鍋1内の一部の米は鍋1に接触しており、鍋1に接触した米は鍋1に直接加熱されて糊化温度以上の温度にまで加熱され、浸水工程A1であるにも関わらず、糊化が開始されてしまっている場合もあった。糊化が開始されると、米の中の成分が水に溶け出し、水中に逃げ出してしまうとともに、でんぷんを含むこれらの溶出成分が鍋1からの熱を吸収して糊化を始めるため、鍋1の熱が米に届きにくくなり、加熱効率が落ちてしまっていた。
【0116】
さらに、鍋1に接触する米は早い段階から糊化が進展してしまうので、食味が低下してしまい、鍋1内で炊きあがった米にムラが生じる原因となっていた。
【0117】
内蓋4の放射熱は鍋1内の水と米を加熱するが、基本的に米は沈殿するため、主に水を加熱する。そのため、米が鍋1温度よりも上昇することがないため、鍋1に接触する米が糊化することはなく、均一に効率よくご飯を炊くことができる。
【0118】
炊き上げ工程A2においても、鍋加熱手段2によって鍋1を連続的に加熱し、鍋1内の水を沸騰状態とするので、同様に鍋1全体としては不均一な加熱状態となる。このときも内蓋4の放射熱で加熱することで、鍋1内を均一に加熱することができ、効率的に加熱することが可能となる。
【0119】
内蓋4の放射熱で鍋1内の水と米を加熱する際には、もちろん内蓋4の温度を上昇させる必要がある。
【0120】
内蓋4を内蓋加熱手段10により短時間に加熱すると、内蓋4が内蓋加熱手段10により直接加熱される被加熱部4aとその他の部分との温度差が非常に大きくなる。
【0121】
従来の接触式温度センサでは、構成上の問題で、被加熱部4aの温度を検知することができないため、内蓋4の温度を一定温度に制御しようとしても、被加熱部4a以外の温度を基に温度制御するため、被加熱部4aの温度は一定とは言えない大きく上下するような制御しかできない。
【0122】
一方、本実施の形態に示すように、内蓋4の被加熱部4aの温度を赤外線センサで検知することで、内蓋4の被加熱部4aの温度を一定に温度制御できる。
【0123】
内蓋4の被加熱部4aの温度の制御が難しく温度変動幅が大きい場合には、周囲部品の耐熱温度を超えないように、温度変動幅の分だけ被加熱部4aの中心温度を低下させて制御する必要があるため、単位時間当たりの内蓋4の加熱量は非常に低い。
【0124】
一方、内蓋4の被加熱部4aの温度制御が容易で温度変動幅が小さい場合には、被加熱部4aの中心温度を周囲部品の耐熱温度に近い温度に設定することが可能となるので、単位時間当たりの内蓋4の加熱量は高くなる。
【0125】
そのため、鍋1の水と米を効率よく加熱することが可能となる。
【0126】
以上のように、内蓋4の被加熱部4aの温度を検知する赤外線センサを備え、炊飯を開始した後、鍋1内の水が沸騰するまでの間に、内蓋4の放射熱で鍋1内の水を加熱する炊飯器で、内蓋4の温度制御性が向上し、効率よく鍋1内の水が加熱することができるとともに、米を均一に加熱することができるので、食味を向上させることができる。
【0127】
なお、必ずしも内蓋4のみで鍋1内の水を加熱する必要はなく、鍋加熱手段2と組み合わせて加熱することで、より効率よく均一に加熱することができてよい。
【0128】
なお、本実施の形態では鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段10は、誘導加熱によるものを用いているが、それぞれ電気ヒータやガス燃焼など熱源は何でもよく、鍋加熱手段2以外は設けなくてもよい。
【0129】
また、それぞれが単一のリング形状であってもよく、複数個に分割されてあってもよい。もちろん、複数個のコイルで構成されてもよい。
【0130】
さらに、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3は、必ずしも両者を同時に備える必要はなく、最低限、鍋加熱手段2があればよい。
【0131】
なお、内蓋4の温度検出情報を得るために、非接触の赤外線センサ8単独で構成しているが、従来の接触式温度検出手段を併用して、内蓋温度計測制御部12cで演算処理してもよい。
【0132】
また、赤外線センサ8は、通常運転での温度から異常時の高温度までの範囲を検出できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0133】
なお、入力操作部14に炊飯する米種(白米、玄米、無洗米)や新鮮度(新米、普通米、古米)などを選択する米種入力部(図示せず)を設け、制御手段12の記憶手段に、各米種や新鮮度に適切な温度上昇速度をそれぞれ記憶しておき、選択された米種や新鮮度に応じた温度上昇速度で炊き上げ工程を実行することにより、芯が残らない適切なかたさに炊き上げることができる。
【0134】
なお、赤外線センサ8の第2の感熱素子23を赤外線透過部7からずらし、蓋カバー5dの上方に配置することで、内蓋4の放射する赤外線を遮蔽する構成としてもよい。言い換えると、赤外線反射層25を蓋カバー5dで形成してもよいものである。
【0135】
なお、内蓋4の温度を広範囲から測定できるように蓋カバー5dの全体あるいは内蓋4の上面に相対する部分を赤外線透過材料で形成してもよい。
【0136】
なお、赤外線センサ8を内蓋4の略中央の上方に配置しているが、内蓋加熱手段10の近傍や、その内部などに設けてもよく、これに限定するものではない。
【0137】
また、内蓋加熱手段10の近傍に配置することで、内蓋4の加熱部で最も温度が高く、さらには温度上昇の変化が大きい部位を直接計測することが可能となり、例えばご飯の表面が乾燥する直前まで鍋1内に上方から大きな熱量を与えることができる。
【0138】
さらには、運転コースのひとつとして、適度な乾燥を発生させて、食感と風味を変えるコースを設定することも可能となる。
【0139】
なお、赤外線センサ8は、少なくとも炊飯や保温の運転中で蓋5が閉じられている時には、赤外線センサ8には機外の物体から放射される赤外線が到達しない。
【0140】
すなわち、赤外線センサ8による温度計測に対する「外乱」がほとんどないので、内蓋4の温度検出情報は高精度に維持される。
【0141】
なお、本実施の形態においては、内蓋4の温度が赤外線センサ8の取り付け部の雰囲気温度より高い場合を想定して説明している。
【0142】
もちろん、炊飯運転開始時に、米と水の温度、内蓋4の温度が赤外線センサ8の温度より低い場合もある。
【0143】
そのような場合には赤外線センサ8における第1の感熱素子22の上面を覆うセンサ基材20の表面に形成された赤外線吸収層24が、より低温度である内蓋4に向けて赤外線を放射するので、第1の感熱素子22の温度は下がる。
【0144】
一方、第2の感熱素子23の上面を覆うセンサ基材20の表面に形成された赤外線反射層25から赤外線の放射はない。
【0145】
その結果、第1の感熱素子22を温度検出用感熱素子として、第2の感熱素子23を温度補償用感熱素子として、内蓋4の温度を検出できる。
【0146】
すなわち、内蓋4の温度が雰囲気温度より高温度の場合と同様、制御手段12で内蓋4の温度検出情報が得られて、鍋加熱手段2などを制御して、炊飯することができる。
【0147】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における炊飯器の赤外線センサを示している。炊飯器および赤外線センサの構成は、実施の形態1と同様であるので図面には同一符号を付し、具体的な構成の説明は実施の形態1のものを援用し、相違点を中心に説明する。
【0148】
図に示すように、本実施の形態における赤外線センサ8は、第1の感熱素子22、すなわち赤外線吸収層24と、第2の感熱素子23、すなわち赤外線反射層25とのセンサ基材20の中間部に断熱部である開口部27を設け、第1の感熱素子22から第2の感熱素子23への熱流を開口部27による断熱部で抑制するように構成したものである。
【0149】
これは、開口部27によりセンサ基材20の中間部の断面積が小さくなり、熱流を抑制する断熱部として作用し、温度検出用感熱素子である第1の感熱素子22が配置された部分のセンサ基材20から、温度補償用感熱素子である第2の感熱素子23が配置されたセンサ基材20に熱伝導で熱が移動して、温度補償用感熱素子である第2の感熱素子23の
温度が上昇することを抑制したものである。
【0150】
このように、本実施の形態における赤外線センサは、断熱部を設けることにより、温度検出用感熱素子である第1の感熱素子が配置された部分のセンサ基材から、温度補償用感熱素子である第2の感熱素子が配置されたセンサ基材へと熱伝導で熱が移動して温度補償用感熱素子の温度が上昇することを抑制するものであり、低温度から高温度まで正確に温度を検出できる。
【0151】
なお、センサ基材20として、例えば、樹脂と金属粉とを組み合わせて、図の垂直方向には熱移動が可能であるが、横方向には熱移動ができないような構成としたり、センサ基材20の中間部に断熱部材を設けたりすることで、図5の開口部27による断熱部と同様な効果を得ることができる。
【0152】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における炊飯器の赤外線センサを示している。炊飯器および赤外線センサの構成は、実施の形態1と同様であるので図面に同一符号を付し、具体的な構成の説明は実施の形態1のものを援用し、相違点を中心に説明する。
【0153】
図に示すように、本実施の形態における赤外線センサ8は、センサ基材20に、まず配線パターン21を配置し、その後に第1の感熱素子22と第2の感熱素子23を配置している。
【0154】
また、赤外線センサ8におけるセンサ基材20は基本構成部材であり、これに絶縁層を追加してもよい。
【0155】
また、赤外線反射層25を、図のように、赤外線反射率の高い板金などで形成し、同時に第2の感熱素子23を覆うようにセンサ基材20と赤外線透過部7との中間に空隙を設けて配置している。
【0156】
この構成により内蓋4から第2の感熱素子23の配置された部分のセンサ基材20に赤外線が放射されることを防止することができる。
【0157】
さらに、赤外線反射層25とセンサ基材20との間に空隙があるので、第2の感熱素子23およびその部分のセンサ基材20の温度は、温度検出用感熱素子である第1の感熱素子22とは異なり、赤外線センサ8の配置された雰囲気温度を保持するものであるから、より高精度な温度補償用感熱素子として作用できるものであって、より正確に温度を検出できる。
【0158】
このように、本実施の形態における赤外線センサは、赤外線反射層は、第2の感熱素子を覆うようにセンサ基材と赤外線透過部との間に配置したことにより、内蓋から第2の感熱素子の配置された部分のセンサ基材に、第2の感熱素子よりも広い面積で赤外線が放射されることを防止する。
【0159】
さらには、赤外線反射層とセンサ基材との間に空隙を設けると、第2の感熱素子およびその部分のセンサ基材の温度は、第1の感熱素子のように内蓋の温度に影響されず、赤外線センサの配置された雰囲気温度をほぼ保持するものである。
【0160】
すなわち、第1の感熱素子が温度検出用感熱素子として作用するに対し、第2の感熱素子は温度補償用感熱素子として作用するものであって、正確に内蓋の温度を検出できる。
【0161】
(実施の形態4)
図7〜図9は、本発明の実施の形態4における炊飯器として、電磁誘導加熱式の炊飯器を例示している。全体的構成については実施の形態1と同様であるので図面に同一符号を付し、具体的な構成の説明は実施の形態1のものを援用する。
【0162】
図7に示すように、本実施の形態における電磁誘導加熱式の炊飯器は、圧力調整手段31を有し、炊飯工程中に鍋1内の圧力を大気圧以上に高める点で実施の形態1と相違するものである。
【0163】
なお、機器本体13内には室温検出手段35をも有している。
【0164】
圧力調整手段31は、蒸気孔4aを開閉する球状の調圧ボール31aと、球状の調圧ボール31aを移動させて蒸気孔4aを開閉する調圧ボール駆動手段31bとにより構成される。調圧ボール31aによって蒸気孔4aを閉じ、鍋1内に蒸気を密封することより鍋1内の圧力を大気圧以上にする。
【0165】
また、調圧ボール31aを移動させて蒸気孔4aを開放し、蒸気孔4aと蓋5に設けられた蒸気通路を通じて、鍋1内の蒸気を機外へ放出することにより鍋1内の圧力を大気圧と同等にする。
【0166】
このように、この圧力調整手段31は鍋1内の圧力を高める機能を発揮するものであるから、加圧手段であるとも言える。
【0167】
なお、圧力調整手段31の球状の調圧ボール31aを移動させる調圧ボール駆動手段31bは、電動機、ソレノイド、温度に応じて伸縮する形状記憶合金等により形成することができるものであるが、一般的なよく知られた技術でもあり、図示を省略する。
【0168】
図8は本実施の形態における入力操作部14であり、米と水を入れた鍋1を機器本体13にセットし、炊飯スイッチ14aを押すことで、炊飯が開始する。
【0169】
入力操作部14には、かたさ設定スイッチ14bやコース設定スイッチなどがあり、入力表示部15aを見ながら、各種の設定ができる。また、運転中には、炊飯ランプ15b、保温ランプ15c、再加熱ランプ15d、圧力ランプ15eが炊飯、保温などの運転状態に合わせて点灯する。
【0170】
次に、炊飯工程の各工程について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0171】
図9における炊飯工程において、赤外線センサ8は内蓋4の上面の温度を検出し、制御手段12へと信号を送る。
【0172】
赤外線センサ8および鍋温度検出手段41よりの信号に基づき、制御手段12は浸水工程A1、炊き上げ工程A2、蒸らし工程A3に大分された炊飯工程のそれぞれにおいて、鍋1の内部の水と米の状態が適正値として設定された温度や所定時間に維持されるよう、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3、内蓋加熱手段10のそれぞれの加熱コイルへの通電量を制御する。
【0173】
すなわち、鍋加熱手段2と鍋側面加熱手段3は制御手段12より供給される電流で誘導加熱により鍋1の底と側面を発熱させる。同様に、内蓋加熱手段10も制御手段12より供給される電流で誘導加熱により内蓋4を発熱させる。また、浸水、炊き上げ、蒸らしの各工程A1〜A3において、球状の調圧ボール31aの開閉状態を切り替えることなどに
より、炊飯中の米の温度制御を行う。
【0174】
本実施の形態では、「圧力炊飯」を行うものであるから、浸水工程A1、炊き上げ工程A2、蒸らし工程A3のうち、通常は炊き上げ工程A2では鍋1内の圧力を大気圧以上に高め、100℃以上に加熱するものである。
【0175】
そのために、炊き上げ工程A2の開始時には圧力調整手段31である調圧ボール駆動手段31bにより蒸気孔4aを閉じて鍋1内を密閉しておく。
【0176】
そして鍋加熱手段2が鍋1を加熱し、鍋1内の水と米が加熱され、水の沸騰により蒸気が生成すると、蒸気が鍋1内に密封されるので、鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することができる。
【0177】
すなわち、水の沸点を高め、加圧した「高温高圧」状態で炊飯する。鍋1全体のご飯をすばやく加熱し、米澱粉の糊化を行う。鍋1内が大気圧より高い時には、沸点が100℃を越え、内蓋4の温度も同様に高温となり、赤外線センサ8で検出する内蓋4の温度検出情報により、鍋1内の圧力を推定することができる。
【0178】
もちろん、この炊き上げ工程A2において、炊飯時間を短縮するために急激に沸騰させると、米表面が先に糊化してしまい米内部への水や熱の伝達が十分に行えず、特に米中心部の糊化が完了しない状態で炊飯工程が終了するため、粘りのないパサパサしたご飯になってしまう。
【0179】
しかしながら、適度な浸水工程A1を経た米は、鍋1内の圧力が大気圧よりも高いため、100℃以上の水で炊き上げることができ、温度上昇速度を高めて急速に沸騰させ、100℃の水で炊く場合に比べて単位時間の加熱量が増え、糊化を促進させることができる。所定の「高温高圧」で炊き上げを実行していることを検出すると、炊き上げ工程A2の後半部分である沸騰維持工程に移る。
【0180】
沸騰維持工程では、制御手段12は圧力調整手段31の調圧ボール駆動手段31bを動作させ調圧ボール31aを移動し、蒸気孔4aを開放する。鍋1内の圧力を大気圧と同等にしながら、鍋加熱手段2などの加熱によって沸騰を維持する。
【0181】
炊き上げ工程A2で最高温度および最高圧力による圧力処理を経た米の含水率は高くなっているため、米の吸水に要する時間を短縮することができる。
【0182】
これにより、炊き上げ工程A2、沸騰維持工程において水を加熱する加熱エネルギーの消費電力量を抑えることができる。
【0183】
また、沸騰維持工程では、鍋1の底部からの沸騰により水が対流するため、水が米同士の間を激しく流れることにより、鍋1内の米全体に水と熱がまんべんなく供給され糊化が促進される。
【0184】
また、鍋1内の水が沸騰して蒸気となり、蒸気は米の間を通過して上昇して内蓋4の蒸気孔4aから圧力調整手段31を経て機外へ放出される。蒸気が米の間を通過することによりさらに糊化が促進される。
【0185】
鍋1内の炊飯水が蒸発してほぼなくなると鍋1の温度が急激に上昇する。この急激な温度上昇により所定の温度を鍋温度検出手段41が検出したとき、制御手段12は沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。
【0186】
すなわち、沸騰維持工程の時間は、浸水工程A1において鍋1内に供給する水量、米と水の割合(水加減という)や炊飯量などに依存する。
【0187】
さらに、蒸らし工程A3で発生した余分な蒸気やご飯の付着水などは、使用者のほぐす操作で除去することが必要であるが、一方、保温工程では蒸気の流出はご飯の乾燥を進行しておいしさを低下させるので、このような蒸気の流出は抑制する必要がある。
【0188】
そこで圧力調整手段31の動作により、鍋1内の蒸気の流出を抑制することが行われる。
【0189】
なお、蒸気孔4aを閉じ、蒸気の充満により鍋1内の圧力を大気圧より高圧に保持することで、加圧した状態で蒸らすこともできる。
【0190】
100℃以上の高温蒸気は細かい粒子となって、鍋1内の米の隙間を通り鍋1内の底部にも行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。高温蒸気が鍋1内のご飯にくまなく供給されて、糊化が均一に持続される。
【0191】
この時にも、内蓋温度計測制御部12cでは、赤外線センサ8が検出する内蓋4の温度検出情報を得るので、圧力調整手段31を作動させ鍋1内の温度および圧力を適正に維持することができる。
【0192】
なお、圧力調整手段31を、鍋1内の蒸気を放出する蒸気孔4aを開閉する調圧ボール31aと、調圧ボール駆動手段31bとで構成することにより、炊飯量や水加減など、鍋1内で生成される蒸気量の変動による、鍋1内の圧力変化を赤外線センサ8により高精度に検出して、蒸気孔4aの開放時間を制御し、蒸気の放出量を調整することができる。
【0193】
これにより、炊飯の各工程で所定の圧力および温度にきめ細かく制御するものである。内蓋4の温度検出情報により鍋1内の圧力を算定し、圧力の低下を確認できるので、制御手段12は圧力調整手段31および鍋加熱手段2などの運転を制御することで、所定の高温高圧に保持し、炊飯性能が安定するものである。
【0194】
なお、米種に応じて、炊飯の各工程で蒸気孔4aを閉じて、必要な高温高圧の状態に保持することもできるので、例えば、白米と無洗米、雑穀米、発芽玄米、玄米などに合わせた高温高圧を得ることで、炊飯性能がより安定する。
【0195】
なお、鍋1内の圧力を検出するために、赤外線センサ8による温度検出情報を利用しているが、さらに圧力検出手段を別途設ける構成としてもよい。
【0196】
なお、保温工程において、所定時間の間隔で、圧力調整手段31の球状の調圧ボール31aで蒸気孔4aを閉じ、鍋1内を密閉するとともに、減圧手段(図示せず)を作動させ、鍋1内の圧力を減圧することで、鍋1内の空気や保温臭を追い出し、保温したご飯のおいしさを維持することも可能なものである。
【0197】
次に、赤外線センサ8の構成と動作を説明する。
【0198】
赤外線センサ8による内蓋4の温度検出の構成は実施の形態1と同様ではあるが、圧力調整手段31と併用することで、さらに炊飯性能が向上する。
【0199】
炊き上げ工程で沸騰が開始し、鍋1内の温度が上昇し、密封された蒸気で鍋1内が大気
圧以上、100℃以上の「高温高圧」になることを内蓋温度検出手段(図示せず)で検出する。
【0200】
ここで鍋加熱手段2による加熱を継続することで、鍋1の底部をさらに加熱し、沸騰により発生する蒸気で充満した鍋1の上部が高温高圧状態になる直前で、赤外線センサ8で内蓋4の表面温度を高速に検出する。制御手段12は内蓋温度計測制御部12cの温度検出情報に基づき、加熱手段制御部12aにより鍋加熱手段2を停止する。
【0201】
すなわち、ぎりぎりの最高温度、最高圧力まで加熱して、米の糊化を促進させる。また、圧力調整手段31により鍋1内を大気圧に開放し、鍋1内を必要な圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
【0202】
また、通常炊飯より高温高圧で炊飯することで、玄米、発芽玄米などを比較的短時間でやわらかく炊き上げられるという点に優れているが、さらに赤外線センサ8で内蓋4の温度を高速に、高精度に検出できるので、炊飯の各工程でぎりぎりの高温度まで鍋加熱手段2で加熱することができて、加熱量の増大が図れて、炊飯性能が向上するものである。
【0203】
また、内蓋4が放射する赤外線が透過する赤外線透過部7を内蓋4と赤外線センサ8との中間部に配置したものであり、内蓋4からの赤外線は赤外線透過部7を透過して赤外線センサ8に到達し、内蓋4の温度を測定できることに加えて、赤外線透過部7の部材が存在することにより、赤外線センサ8に蒸気や水滴や埃が進入することを防止できるので、内蓋4の温度測定が長期間正確で、いつも最高の炊飯性能を維持できる。
【0204】
なお、入力操作部14に炊飯する米種を選択する米種入力部(図示せず)を設け、各米種に適切な圧力値を記憶手段にそれぞれ記憶しておき、選択された米種に応じた圧力値になるよう圧力調整手段31により調節することにより、各米種に適切な温度、圧力で炊飯することができる。
【0205】
例えば、玄米の場合は、白米が選択された場合よりも圧力値を高くすることにより、かたさやぱさつきがなく炊き上げることができる。
【0206】
また、軟質米と硬質米、新米と古米、白米と玄米などより細かく米種を選択できるようにすることにより、より各米種に対して適切な炊飯を行うことができる。
【0207】
このように、本実施の形態では、鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、赤外線センサが検出する内蓋の温度に基づいて、制御手段は鍋内の圧力を調整するようにしたことにより、鍋内が発生する蒸気で充満され、さらに加熱を継続し高温度で大気圧以上の蒸気で充満された場合に、赤外線センサが内蓋の温度を高速に温度検出することで、鍋内の温度変化を正確に検出する。
【0208】
これにより、炊飯の各工程において、適切なタイミングで圧力調整手段により鍋内を大気圧に開放したり、大気圧以上に高めたり、鍋内を必要な圧力に制御することができて、炊飯性能が向上する。
【0209】
なお、圧力調整手段31は内蓋4の蒸気孔4aを開閉することにより鍋1内の圧力を調節したが、鍋1内の圧力を制御できるものであればどのようなものでもよい。
【0210】
なお、炊飯工程または保温工程で、鍋1内の圧力を大気圧より高圧にした「圧力加熱」と鍋1内に蒸気発生手段(図示せず)が生成した蒸気を投入する「蒸気加熱」を交互に繰り返し行うことにより、上下の加熱ムラをなくすとともに、投入した蒸気を密封して加熱
して高圧にすることで、炊飯工程ではより柔らかく炊き上げることもできる。
【0211】
また、炊飯工程や保温工程では投入した蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものであり、鍋1内の上下のムラなく、乾燥させずに加熱と加水ができるので、糊化を促進しておいしいご飯に炊き上げる炊飯性能と、適切な温度でしっとりとした保温ご飯に維持する保温性能とを得るものである。
【0212】
なお、保温ご飯または冷めたご飯を加熱する再加熱工程で、少なくとも鍋1内の圧力を大気圧より高圧にする「圧力加熱」を実施することにより、圧力調整手段31により鍋1内の蒸気を密封し、蒸気発生手段(図示せず)で生成し蒸気投入口(図示せず)から投入した蒸気を加熱して高圧にすることで、蒸気をさらに鍋1の底部へと浸透させるものである。
【0213】
短時間でムラなく加熱と加水を実行できるので、ご飯を乾燥させずにおいしいご飯に再加熱できるものである。
【0214】
なお、圧力調整手段31の球状の調圧ボール31aを移動させる調圧ボール駆動手段31bは、電動機、ソレノイド、温度に応じて伸縮する形状記憶合金などにより形成することができるものであるが、一般的なよく知られた技術である。
【0215】
なお、蒸気発生手段(図示せず)が鍋1内に供給する蒸気を、さらに加熱する蒸気加熱手段(図示せず)を内蓋4、内蓋加熱手段10などで構成することにより、蒸気の温度を水の沸点を超える温度の高温蒸気にして、鍋1内に投入することができる。
【0216】
鍋1内の温度が圧力炊飯の炊き上げ工程では100℃以上であるのに対し、それと同程度以上の高温度の蒸気を投入するものであり、蒸らし工程でもご飯の温度を下げずに高温を維持できるものであり、赤外線センサ8により焦げる直前まで加熱を継続した米に高温蒸気でさらに甘みを引き出すことで、おいしさが向上する。
【0217】
なお、白米と玄米、新米と古米など、米の種類、状態に応じ、赤外線センサ8による温度検出情報によって高精度に加熱量を調整し、蒸気発生手段(図示せず)と内蓋加熱手段10の動作を制御することで、必要な温度の高温蒸気を投入する構成が可能であり、十分な糊化による甘み、粘りがある良好な食味のご飯に炊き上げ、炊飯性能が向上するものである。
【0218】
また、炊飯工程後の保温工程や、冷めたご飯に対し、使用者が必要に応じてご飯を温めるための再加熱工程などにおいても、蒸気加熱を導入することで、おいしさを長時間持続することができる。
【0219】
また、従来から行われているように、米の種類に応じ、炊き上げ工程の圧力と温度条件を設定し、選択することで、それぞれに適した炊飯を実現し、ご飯の粘り、硬さなどを制御することができるものであり、食味のバラツキを抑制し、食味の向上が図れる。
【0220】
なお、入力操作部14に炊飯する米種を選択する米種入力部(図示せず)を設け、各米種に適切な圧力値を記憶手段にそれぞれ記憶しておき、選択された米種に応じた圧力値になるよう圧力調整手段9により調節することにより、各米種に適切な温度、圧力で炊飯することができる。
【0221】
例えば、玄米の場合は、白米が選択された場合よりも圧力値を高くすることにより、かたさやぱさつきがなく炊き上げることができる。
【0222】
また、軟質米と硬質米、新米と古米、白米と玄米などより細かく米種を選択できるようにすることにより、より各米種に対して適切な炊飯を行うことができる。
【0223】
なお、圧力調整手段31は内蓋4の蒸気孔4aを開閉することにより鍋1内の圧力を調節したが、鍋1内の圧力を制御できるものであればどのようなものでもよい。
【0224】
なお、上記すべての実施の形態において、赤外線センサの感熱素子は赤外線を検知するものと周囲温度を検知するものからなればよく、薄膜サーミスタ、チップサーミスタ、ビードサーミスタ、熱電対、サーモパイル型熱型赤外線センサ、量子型センサなどどの方式でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0225】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、赤外線センサにより温度検出を高速にするとともに、温度検出精度が高く、かつ赤外線の透過部の汚れをなくし正確な温度検出で適切な加熱量制御ができるので、炊飯器全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の赤外線透過部と赤外線センサを示す断面図
【図3】同炊飯器の入力操作部を示す平面図
【図4】同炊飯器の炊飯工程を示す温度チャート
【図5】本発明の実施の形態2における炊飯器の赤外線センサを示す平面図
【図6】本発明の実施の形態3における炊飯器の赤外線透過部と赤外線センサを示す断面図
【図7】本発明の実施の形態4における炊飯器の断面図
【図8】同炊飯器の入力操作部を示す平面図
【図9】同炊飯器の炊飯工程を示す温度チャート
【符号の説明】
【0227】
1 鍋
2 鍋加熱手段
3 鍋側面加熱手段
4 内蓋
4a 被加熱部
5 蓋
7 赤外線透過部
8 赤外線センサ
12 制御手段
13 機器本体
14 入力操作部
20 センサ基材
21 配線パターン
22 第1の感熱素子
23 第2の感熱素子
24 赤外線吸収層
25 赤外線反射層
26 保護層
27 断熱部(開口部)
31 圧力調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、機器本体に装備する鍋と、鍋を加熱する鍋加熱手段と、鍋の開口部を覆う内蓋を有し機器本体に対して回動自在に装備した蓋と、内蓋を加熱する内蓋加熱手段と、内蓋の加熱により放射される赤外線を検出する赤外線センサと、赤外線センサによる内蓋の温度検出情報に応じて鍋加熱手段、内蓋加熱手段の加熱量を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサは前記蓋内に配置した炊飯器。
【請求項2】
内蓋加熱手段は、非接触で内蓋を加熱する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
赤外線センサは、内蓋の被加熱部の温度を検知する請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
制御手段は、炊飯を開始した後鍋内の水が沸騰するまでの間に、内蓋加熱手段により内蓋を加熱させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
鍋内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、赤外線センサが検出する内蓋の温度に基づいて、制御手段が鍋内の圧力を調整するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
内蓋からの赤外線が透過する赤外線透過部は、内蓋と赤外線センサとの中間部に配置した請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
赤外線センサは、センサ基材と、赤外線の吸収によるセンサ基材の温度変化を検出する第1の感熱素子と、センサ基材の雰囲気温度を検出する第2の感熱素子と、第2の感熱素子に相対して赤外線を反射する赤外線反射層とを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
センサ基材には第1の感熱素子に相対し赤外線を吸収する赤外線吸収層を設けた請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
赤外線反射層は第2の感熱素子を覆うようにセンサ基材と蓋に形成した赤外線透過部との間に配置した請求項1〜8のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項10】
センサ基材は第1の感熱素子と第2の感熱素子の中間部に断熱部を設け、第1の感熱素子から第2の感熱素子への熱流を抑制する請求項1〜9のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−99221(P2010−99221A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272763(P2008−272763)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】