説明

炊飯器

【課題】炊飯工程中の被調理物の吸水を促進し、炊飯時間を短縮しても加熱むらによる食味が損なわれない炊飯器を提供すること。
【解決手段】鍋1内に収納された被調理物を加熱する加熱手段2と、鍋1内への空気の流入出によって鍋1の内部を加減圧する圧力加減手段10と、加熱手段2と圧力加減手段10を制御し、少なくとも浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段13とを備え、炊飯工程中の被調理物の液体が存在する間、鍋1内の被調理物の液体が沸騰するように圧力加減手段10により鍋1の内部を加減圧することにより、浸漬時にも沸騰状態とすることができ、米と水が動くことで米が静置したままの時よりも、米と水の接触効率が上昇することで米の吸水が促進される。さらに、水が存在する間は攪拌作用を与えるので、炊き上げ中の加熱むらも改善してご飯の食味を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米の吸水を短時間で確実に行なうことで短時間で炊飯できる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水を短時間で行う炊飯器として、鍋の内部を加圧または減圧する圧力加減手段を備えて、圧力加減手段によって米の浸漬時に鍋内の圧力を減少させて米粒内部に存在する空隙中の気体を外部に放出して換わりに米粒の周りにある水を米粒へ浸透させ、お米の芯まで吸水させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の炊飯器で白米を短時間で炊飯すると、鍋内の上層の米は糊化不足で米に芯が残るご飯となってしまい、反対に鍋の下層の米は水に浸った状態が長く続き粥状のご飯となり、鍋内の上下層で炊飯の出来が不均一になるという課題が生じた。この加熱による不均一(加熱むら)を撹拌することで改善する方法が提案されている。その構成は鍋内の圧力を調整する圧力弁と、圧力弁を強制的に開放状態にする圧力弁開放機構からなり、炊飯開始から沸騰維持までは鍋内を加圧状態にし、沸騰維持中に圧力弁を開動させて急激に大気圧に戻すように制御している。鍋内の急激な圧力変化によって、圧力降下に伴う激しい沸騰現象(突沸)が発生し、その際に発生した泡で水と米粒が激しく攪拌するというものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−142228号公報
【特許文献2】特開2004−81824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、鍋内を減圧状態にして米粒内部に存在する空隙中の気体を外部に放出して換わりに米粒の周りにある水を米粒へ浸透させて米の芯まで吸水させるが、細胞間にある空隙の大きさは限られており、米に浸透できる水量にも限界があり、わずかしか吸水促進の効果が得られなかった。さらに、実使用の炊飯量では米が重なり合っており、減圧しても米自体は静置したままで、一部の米では水と接触が妨げられて吸水しにくい状態となっているという課題を有していた。
【0006】
また、特許文献2に記載の構成では、加圧状態から大気圧に急激に戻すことで急激な水の沸騰を起こして米と水を攪拌するものであるが、加圧状態は炊飯の加熱開始後に発生する蒸気を外部に排出しないように圧力弁を閉動することで実現しており、蒸気が発生しない浸水工程では加圧状態にできないので、沸騰による攪拌作用を米浸漬時に起こせないという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、炊飯工程中の被調理物の米と水の接触効率を増やして吸水を促進し、炊飯時間を短縮しても加熱むらによる食味が損なわれない炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋内に収納された被調理物を加熱する加熱手段と、鍋内への空気の流入出によって鍋の内部を加圧または減圧する圧力加減手段と、加熱手段と圧力加減手段を制御し、少なくとも浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、炊飯工程中の被調理物の液体が存在する間、鍋内の被調理物の液体が沸騰するように圧力加減手段により鍋の内部を加圧または減圧する構成としたものである。
【0009】
これによって、浸漬時にも沸騰状態とすることができ、米と水が動くことで米が静置したままの時よりも、米と水の接触効率が上昇することで米の吸水が促進される。さらに、水が存在する間は攪拌作用を与えるので、炊き上げ中の加熱むらも改善してご飯の食味を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、特に浸漬時にも吸水を促進して炊飯時間を短縮し、かつ加熱むらの改善により食味の向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器のパッキン部の拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯工程の温度チャート
【図4】本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯工程の圧力チャート
【図5】米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図
【図6】米粒間を水が通る様子を示す模式説明図
【図7】水の蒸気圧曲線
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被調理物を収納する鍋と、前記鍋内に収納された前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋内への空気の流入出によって前記鍋の内部を加圧または減圧する圧力加減手段と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知手段と、前記加熱手段と前記圧力加減手段を制御し、少なくとも浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、炊飯工程中の被調理物の液体が存在する間、前記鍋内の前記被調理物の液体が沸騰するように前記圧力加減手段により前記鍋の内部を加圧または減圧することにより、炊飯の米の浸水工程から炊き上げの水のある間、鍋内に気泡が発生した状態が継続して起こるので、浸水工程時には重なりあった米粒同士が動いて米粒と水の接触効率が高まり、吸水を促進することができ、米粒同士の吸水のむらが解消されて炊飯時間を短縮し、かつ加熱むらの改善により食味の向上も図ることができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の圧力加減手段は、温度検知手段の検知温度に応じて前記鍋内の被調理物の液体温度が沸点に達する圧力となるよう前記鍋の内部を加圧または減圧することにより、より効率的に沸騰状態を制御でき、浸水工程時には重なりあった米粒同士が動いて米粒と水の接触効率が高まり、吸水を促進することができ、米粒同士の吸水のむらが解消されて炊飯時間を短縮し、かつ加熱むらの改善により食味の向上も図ることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の浸水工程において、加熱手段により鍋および収納された被調理物を常温から加熱することにより、温度上昇による米への吸水促進効果が加わり、短時間でさらに米の芯まで吸水できる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の圧力加減手段は鍋内への空気の投入と空気の排出をする空気ポンプとし、前記鍋内の被調理物の液体が存在する間、前記鍋内の空気を排出して前記鍋内の圧力を減少させるようにすることにより、空気ポンプで減圧処理と加圧処理が実行され、被調理物を非加熱の状態や被調理物に応じた適温での圧力処理が可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図、図2は同炊飯器のパッキン部の拡大断面図を示すものである。
【0018】
図1において、炊飯器本体14は、米や水などの被調理物を収納する鍋1を着脱自在に内部に有し、炊飯器本体14の上面及び鍋1の開口部を覆う蓋4を開閉自在に有している。蓋4は蓋ヒンジ5を中心に回動する。鍋1内に収納された被調理物は、鍋1の底面に対応して設けられた加熱コイルなどの鍋加熱手段2、鍋1の側面に対応して設けられた加熱コイルなどの鍋側面加熱手段3により加熱される。鍋温度検知手段11は鍋1の底部に接触して設けられ、鍋1の温度を検知することによって、鍋1内の被調理物の温度を検知する。
【0019】
蓋4は、蓋4の下部を構成する蓋カバーに着脱自在に設けられ、蓋4が閉じられた状態のとき鍋1の開口部を覆う内蓋6と、この内蓋6を誘導加熱する加熱コイルなどの内蓋加熱手段8と、内蓋6の温度を検知する内蓋温度検知手段12を有している。
【0020】
蓋4が閉じられた状態のとき、鍋1と内蓋6の間には隙間ができるが、その隙間は内蓋6に取り付けられたループ状のパッキン7で封止され、鍋1内は密閉される。
【0021】
図2に示すように、ループ状のパッキン7は、鍋1内の圧力が大気圧以上のときに鍋1と内蓋6を密封する第1シール部7aと、大気圧より低いときに密封する第2シール部7bとを有する。これにより、炊飯時に鍋1内で蒸気が生成したときにパッキン7の第1シール7aが鍋1と密着し、鍋1内を密封して蒸気が漏れない。また、鍋1内の圧力が減少した時にはパッキン7の第2シール部7bが鍋1と密着し、鍋1内を密封して空気の進入を防止する。このように、鍋1内の加圧と減圧に対応したパッキン7であるので、所定の圧力処理を確実に実行することができる。
【0022】
蓋4には、鍋1内への空気の流入出によって鍋1の内部を加圧または減圧する圧力加減手段10である空気ポンプが配置されている。すなわち、圧力加減手段10は鍋1内への空気の排出と投入を行うことで鍋1内の圧力の減少と増大の圧力処理を行うものである。
【0023】
一方、炊飯工程中に発生した蒸気を炊飯器外へ放出する経路として、内蓋6に設けられた鍋1内の蒸気や空気を放出する蒸気孔6aと、蒸気孔6aと炊飯器外とを連通する蓋4に設けられた蒸気通路とがある。蒸気通路に、球状の弁体9aを移動させて蒸気孔6aを開閉する蒸気孔開閉手段9bと、鍋1内の圧力を検知する圧力検知手段9cから成る圧力調整手段9を設け、鍋1内に発生した蒸気の放出を制御することで、鍋1内の圧力を制御することも出来る。即ち、蒸気孔6aを密封して鍋1内に蒸気を充満させることにより、鍋1内の圧力を大気圧以上に加圧したり、蒸気孔6aを開放して蒸気孔6aと蓋4に設けられた蒸気通路を通じて鍋1内の蒸気を機外へ放出することにより、鍋1内の圧力を大気圧と同等まで減圧することができるものである。
【0024】
圧力加減手段10による鍋1内の圧力処理を行う場合には、圧力調整手段9の蒸気孔6aを密封するなどの制御を同時に行う必要がある。
【0025】
図3は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の炊飯工程の温度チャートを示すものである。
【0026】
鍋加熱手段2と圧力加減手段10を制御し、少なくとも浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段13は、炊飯器本体14の前面に設けられた入力操作部15により入力された信号、および記憶手段(図示せず)に記憶された炊飯の各工程の温度、温度上昇速度、時間、圧力値に基づいて図3に示す炊飯工程を実行する。炊飯工程において、加熱制御手段13aは鍋温度検知手段11および内蓋温度検知手段12の検知信号に基づいて鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8を制御して、鍋内に収納された被調理物(本実施例においては米と水)を加熱する。
【0027】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の炊飯工程の圧力チャート、図5は、米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図、図6は、米粒間を水が通る様子を示す模式説明図、図7は、水の蒸気圧曲線を示す。
【0029】
炊飯工程は、浸水工程A1、炊き上げ工程A2、蒸らし工程A3から構成される。まず、炊飯工程中の浸水工程A1は、糊化温度よりも低温の水に米を浸して米に水を吸水させる。この工程での吸水量が浸水工程以降の炊飯工程での糊化の進行状態を左右する。特に短時間で炊飯を行う場合は、浸水工程でいかに短時間で十分米に吸水できるかが重要となる。
【0030】
従来より、米の糊化が開始されない程度の湯浴中では吸水が短時間で進むことが知られている。湯温としては40℃から60℃である。よって、米と水が所定温度になるまで鍋加熱手段2および鍋側面加熱手段3に通電し、所定温度で維持するように通電が制御される。この時、鍋加熱手段2と鍋側面加熱手段3と接している鍋肌は特に温度が上昇し、鍋底面および鍋側面に接している米粒R1は糊化温度以上になる恐れがある。米表面が糊化してしまうとその部分からは吸水されなくなるので、炊き上げた時にそのようなお米は芯が残ったままの状態となる。また、浸水工程で米は重なり合って静置した状態であり、このような状態では米粒表面が水と接していない部分も生じ、吸水が妨げられている。更に、糊化温度以上になった複数の米粒R1が互いに付着して米粒群RG1が形成されているとき、鍋1内の水W1は、図5の点線矢印で示すように、米粒群RG1の外側を移動する。このため、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が小さくなり、米R1の吸水が悪くなる。
【0031】
この浸水工程A1において、圧力調整手段9の球状の弁体9aで蒸気孔6aを密封し、鍋1内を密封状態にするとともに、圧力加減手段10を作動させ、空気を排出して鍋1内の圧力を減圧する(図1のB1〜B2)。この時、鍋底温度の検知信号を基に減圧するレベルを決定し、圧力加減手段10の作動を制御する。鍋1内は沸騰して気泡が発生して米粒と水が撹拌される。減圧するレベルは図7に示す水の温度と蒸気圧の関係から決定する。
【0032】
例えば、浸水工程1での鍋温度検知手段11が検知した温度が60℃とする。水温60℃の場合、図7に示す水の蒸気圧曲線より18.5kPaで沸騰するので、鍋1内が18.5kPaに到達するまで圧力加減手段10を作動させる。その後も鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3で加熱するとともに、鍋温度検知手段11で検知した温度変動に伴って、圧力加減手段10を作動させて沸騰状態が継続するようにする(図4)。浸水工程A1で沸騰による気泡発生で重なった状態の米粒の間を水が通り、水と米の接触効率が上がって吸水が促進される。また、鍋底および鍋側面の米粒が気泡の発生によって動かされ、鍋肌付近で糊化してしまうことも防止でき、温度むらも均一化することで、米粒間の吸水状態も均一にすることができる。
【0033】
更に、気泡の発生により、鍋1内の米に分散力が付与されて米粒集合体の形成が阻害され、米粒R1,R1同士が互いに付着せずにバラバラの状態となる。従って、鍋1内の水W1は、図6の点線矢印で示すように、互いに隣接する米粒R1,R1間を移動し、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が大きくなり、各米粒R1が吸水でき、吸水状態も均一にすることができる。
【0034】
浸水工程A1を所定時間行った後、次に炊き上げ工程A2を実行する。炊き上げ工程A2では、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3で加熱して、炊飯中の米および水の温度を大気圧における沸点、即ち100℃まで上昇させ、米の急激な吸水と糊化を生ぜしめる。また、米の糊化のための熱伝達は水が媒体となることから、米粒と水の接触効率を上げることは炊飯時間の短縮にも有効となる。よって、この工程においても水が存在して鍋内が100℃に到達するまでは沸騰による気泡発生が起こるように、圧力加減手段10を作動させる。
【0035】
図3及び図4に示すように、炊き上げ工程A2では、米と水の温度は加熱手段の加熱により、浸水工程A1の60℃から100℃に上昇していく。鍋温度検知手段11で検知した温度が上昇していくに従って、鍋内の圧力は緩やかに大気圧に戻していくように圧力調整手段9で蒸気孔6aの開放と閉鎖を繰り返す。そして、鍋内が100℃に到達すれば、減圧状態でなくとも大気圧(100kPa)で沸騰状態が可能となるので、鍋温度検知手段11で100℃到達を検知した時点で蒸気孔6aを完全に開放するとともに、圧力加減手段10の作動も停止する。
【0036】
なお、鍋温度検知手段11で100℃到達を検知した後も蒸気孔6aを閉鎖した状態にしておき、鍋1内の圧力を大気圧よりも高い状態にして100℃以上の水で炊き上げるようにすれば、さらに糊化を進めることもできる。
【0037】
鍋1内の水が沸騰したことを内蓋温度検知手段12が検知すると、炊き上げ工程A2のうちの沸騰維持工程に移る。沸騰維持工程では蒸気孔6aを開放して鍋1内の圧力を大気圧と同等にすると共に加熱手段を制御し、沸騰を維持する。鍋1内の炊飯水が蒸発し、開放した蒸気孔6aを通じて炊飯器外へ放出され、鍋1内からほぼ無くなると鍋1(被調理物である米)の温度が急激に上昇して沸騰維持工程を終了し、次の蒸らし工程A3に移る。
【0038】
蒸らし工程A3では鍋加熱手段2が鍋1の底面のご飯が乾燥したり焦げたりしない程度に鍋1の底面を発熱させ、ご飯の糊化を持続させる。所定時間蒸らし工程A3を行った後、鍋1内の温度を所定温度(例えば、70℃前後)に維持する保温工程(図示せず)を行う。
【0039】
この保温工程に移る直前に蒸気孔6aを閉鎖して、圧力加減手段10を作動して鍋1内を減圧することによって鍋1内の余分な水分が蒸発し、その際の蒸発潜熱によって鍋1内はすばやく温度低下する。鍋1内が所定の温度(例えば70℃)に到達したことを内蓋温度検知手段12で検知した時点で圧力加減手段10の作動を停止し、蒸気孔6aは開放される。このように、蒸らし工程直後の100℃近いご飯を所定の保温温度まですばやく冷ますことで保温時のご飯の劣化を防止することができる。
【0040】
以上のように、炊飯工程の浸水工程から炊き上げ工程の100℃到達の間、鍋内の温度を基に減圧レベルを制御していくことで鍋内を沸騰状態にして気泡を発生させ、米と水の接触効率を上げることで吸水を促進することができる。また、気泡発生によって、鍋底や鍋底面の高温化による温度むらを解消することで米粒間の吸水量を均一化することができる。さらに、炊き上げ工程では気泡発生によって、米の熱伝達の効率もよくなる。また、鍋内の米に分散力が付与されて米粒集合体の形成が阻害され、米粒同士が互いに付着せずにバラバラの状態となって、鍋内の水1が、互いに隣接する米粒間を移動し、1つの米粒当たりの水の接触面積が大きくなり、各米粒が吸水でき、吸水状態も均一にすることができる。これらの各工程での効果によって、短時間炊飯が可能になるとともに食味も向上させることができる。
【0041】
なお、鍋加熱手段2、鍋側面加熱手段3および内蓋加熱手段8は、誘導加熱によるものを用いているが、それぞれ電気ヒータやガス燃焼あるいは温風、高温蒸気などの熱源でもよく、必ずしも鍋加熱手段2以外を設けなくてもよい。また、それぞれが単一のリング形状であってもよく、複数個に分割されてあっても同効果が得られる。もちろん、複数のコイルで構成されてもよい。また、鍋側面加熱手段3は上下方向に多段であることで、炊飯量に応じて、鍋1の上部空間を側面から加熱することができるが、単一の加熱コイルであっても問題はない。
【0042】
なお、本発明は短時間で吸水させることができるので、煮豆や乾物などの調理にも同様の効果を奏し、調理器としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、吸水を促進して炊飯時間を短縮し、かつ加熱むらの改善により食味の向上も図ることが可能となるので、調理器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 鍋
2 鍋加熱手段
3 鍋側面加熱手段
4 蓋
5 蓋ヒンジ
6 内蓋
6a 蒸気孔
7 パッキン
7a 第1シール部
7b 第2シール部
8 内蓋加熱手段
9 圧力調整手段
9a 球状の弁体
9b 蒸気孔開閉手段
9c 圧力検知手段
10 圧力加減手段(空気ポンプ)
11 鍋温度検知手段
12 内蓋温度検知手段
13 制御手段
13a 加熱制御手段
14 炊飯器本体
15 入力操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納する鍋と、前記鍋内に収納された前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋内への空気の流入出によって前記鍋の内部を加圧または減圧する圧力加減手段と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知手段と、前記加熱手段と前記圧力加減手段を制御し、少なくとも浸水工程、炊き上げ工程、蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、炊飯工程中の被調理物の液体が存在する間、前記鍋内の前記被調理物の液体が沸騰するように前記圧力加減手段により前記鍋の内部を加圧または減圧する炊飯器。
【請求項2】
圧力加減手段は、温度検知手段の検知温度に応じて前記鍋内の被調理物の液体温度が沸点に達する圧力となるよう前記鍋の内部を加圧または減圧する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
浸水工程において、加熱手段により鍋および収納された被調理物を常温から加熱するようにした請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
圧力加減手段は鍋内への空気の投入と空気の排出をする空気ポンプとし、前記鍋内の被調理物の液体が存在する間、前記鍋内の空気を排出して前記鍋内の圧力を減少させるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183017(P2011−183017A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52716(P2010−52716)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】