説明

炊飯器

【課題】電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定ができる炊飯器を提供すること。
【解決手段】加熱コイル6と共振コンデンサ7とパワー素子8で構成されたインバータ回路10と、ダイオードブリッジ3に流れる交流電流を検知し、検知電流に比例した電圧を出力する電流検知部2と、インバータ回路10内の電圧を検知し、検知電圧に比例した電圧を出力するインバータ電圧検知部5と、商用電源の電圧を検知する電源電圧検知回路12と、インバータ電圧検知部5の出力電圧が電流検知部2の出力電圧よりも、所定の閾値電圧以上になった時に所定位置に鍋が設置されていないと判断する鍋検知部9とを備え、電源電圧検知回路12の検出電圧が、定格電圧より高い場合には、閾値電圧をあらかじめ設定された閾値電圧より高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭あるいは業務用の炊飯器において、炊飯前に予め米と水を入れる鍋が、炊飯器本体の鍋収容部に設置されているかどうかを検知する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は入力電流とインバータ電圧をそれぞれ検出する検知回路を持ち、それぞれの検知回路の検知電流、検知電圧に応じた回路出力を比較して、インバータ電圧検知回路の出力が入力電流検知回路の出力より大きくなった場合、所定位置(炊飯器本体の鍋収容部)に鍋が設置されていないと判断するようにしている(例えば、特許文献1参照)。図4は、特許文献1に記載された従来の炊飯器を示すものである。図4に示すように、加熱コイル6と、共振コンデンサ7と、パワー素子8で構成されたインバータと、電流検知手段2と、インバータ電圧検知手段3と、鍋検知手段9と、インバータ制御回路10から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−95315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、インバータ電圧検知回路の出力が入力電流検知回路の出力より大きくなった場合に鍋が設置されていないと判断するため、商用電源電圧が変動した場合、特に商用電源電圧が高くなる場合は、入力電流よりインバータ電圧が相対的に高くなり、(すなわち、商用電源電圧が定格電圧の場合の、入力電流検知回路の検知電流をI、インバータ電圧検知回路の検知電圧をV、商用電源電圧が定格電圧より高い場合の、入力電流検知回路の検知電流をI、インバータ電圧検知回路の検知電圧をVとすると、I=I、V<Vとなる)鍋が有る場合にも、鍋が無いと判断する可能性がある。一般的な設計においては、ある程度の電圧変動を考慮して鍋検知部の判定レベルを考慮しているが、想定を超える電圧変動の場合、商用電源が不安定な地域においては、一時的に想定を超える過電圧が印加されることは少なくなく、鍋検知部が誤って判定するという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋の有無判定(炊飯前に炊飯器本体の鍋収容部に鍋が設置されているかどうかを判定すること)ができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、ダイオードブリッジに流れる交流電流を検知し、検知電流に比例した電圧を出力する電流検知部と、インバータ回路内の電圧を検知し、検知電圧に比例した電圧を出力するインバータ電圧検知部と、商用電源の電圧を検知する電源電圧検知回路と、インバータ電圧検知部の出力電圧が電流検知部の出力電圧よりも、所定の閾値電圧以上になった時に所定位置に鍋が設置されていないと判断する鍋検知部とを備え、電源電圧検知回路の検出電圧が、定格電圧より高い場合には、閾値電圧をあらかじめ設定された閾値電圧より高くするものである。
【0007】
これによって、電源電圧の変動に応じて鍋検知部の判定レベルを変えることができ、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定(炊飯前に炊飯器本体の鍋収容部に鍋が設置されているかどうかを判定すること)が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器では、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定(炊飯前に炊飯器本体の鍋収容部に鍋が設置されているかどうかを判定すること)ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における鍋無し判定の例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における他のインバータ利用のブロック図
【図4】従来の炊飯器のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、ダイオードブリッジに流れる交流電流を検知し、検知電流に比例した電圧を出力する電流検知部と、インバータ回路内の電圧を検知し、検知電圧に比例した電圧を出力するインバータ電圧検知部と、商用電源の電圧を検知する電源電圧検知回路と、インバータ電圧検知部の出力電圧が電流検知部の出力電圧よりも、所定の閾値電圧以上になった時に所定位置に鍋が設置されていないと判断する鍋検知部とを備え、電源電圧検知回路の検出電圧が、定格電圧より高い場合には、閾値電圧をあらかじめ設定された閾値電圧より高くすることにより、電源電圧の変動に応じて鍋検知部の判定レベルを変えることができ、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定(炊飯前に炊飯器本体の鍋収容部に鍋が設置されているかどうかを判定すること)が可能となる。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の構成図を示すものである。図1において、商用電源1をダイオードブリッジ3で直流電圧に変換し、加熱コイル6と、共振コンデンサ7とパワー素子8で構成されたインバータ回路により発生させた高周波電力を加熱コイル6の上部に配置した炊飯鍋13に高周波磁界として供給し、炊飯鍋13に渦電流を発生させ、そのジュール熱によって炊飯鍋を加熱するものである。
【0012】
また、カレントトランス2aと電流電圧変換回路2bで構成された電流検知部2は、ダイオードブリッジ3に流入する交流電流値に比例した電圧を発生させるものである。さらに、インバータ電圧検知部5はインバータ回路で発生する電圧を検知するものであり、図1ではパワー素子8にかかる電圧を検知するようにしている。さらに、電源電圧検知回路12は、商用電源電圧の定格電圧に対する変動幅を検知するものである。
【0013】
電流検知部2とインバータ電圧検知部5の出力は、鍋検知部9を構成する比較回路9aで比較され、その比較結果を鍋有無判定回路9bに出力する。鍋有無判定回路9bでは電源電圧検知回路12の出力から補正値を算出し、インバータ電圧検知の出力が電流検知部の出力に補正値を加えた値より大きい場合に鍋が無いと判定する。
【0014】
図2は鍋検知部の判定の考え方を示したものである。鍋検知部は電源電圧検知部の出力から、補正値Aを設定し、入力電流検知部の出力に補正値を加えた値とインバータ電圧検知部の出力を比較し、鍋無し判定レベルを超えてインバータ電圧が上昇した場合に鍋が無いと判断するものである。
【0015】
補正値は定格電圧時の補正値をA1、過大電圧時の補正値をA2とした場合、A1<A2となるように設定されるものとする。
【0016】
まず、定格電圧時の入力電流の検知値をIin1、インバータ電圧の検知値をVin1とすると、動作点は31に示す位置にある。電源電圧が定格電圧を超えて上昇すると、インバータ電圧が上昇するため動作点は32に移行する。この時の動作点はIin1、Vin2の位置にある。入力電流に対し補正がされていない場合、動作点32が鍋無し判定レベルに到達し、鍋有りの状態であっても、鍋無しと誤って判定することがある。
【0017】
本実施の形態では、過大電圧時の補正値A2をIin1に加えたIin2を算出し、Iin2と電源電圧検知回路の出力により補正値を設定し、Vin2と比較するものである。
【0018】
補正値を加えることにより、鍋検知回路は動作点33として判断し、鍋無し判定レベルに対し十分に余裕があり、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定が可能となる。
【0019】
本実施の形態では、入力電流に対して補正する考え方を示しているが、インバータ電圧に対する補正や、鍋無し判定レベルに対する補正を行った場合でも同様の効果を得ることができる。
【0020】
また、図3は2石式のインバータに応用した例である。
【0021】
インバータの動作に応じて電圧が上昇する部分をインバータ電圧の検知電圧として応用すれば同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、電源電圧の変動許容範囲を拡大し、電源電圧の不安定な地域においても確実な鍋有無判定が可能となるので、電源事情の安定しない地域の炊飯器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 商用電源
2 電流検知部
2a カレントトランス
2b 電流−電圧変換回路
3 ダイオードブリッジ
4 平滑コンデンサ
5 インバータ電圧検知部
6 加熱コイル
7 共振コンデンサ
8 パワー素子
9 鍋検知部
9a 比較回路
9b 鍋有無判定回路
10 インバータ制御回路
11 パワー素子駆動回路
12 電源電圧検知回路
13 炊飯鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を直流電圧に変換するダイオードブリッジと、
鍋に高周波磁界を供給する加熱コイルと、
前記加熱コイルと共振コンデンサとパワー素子で構成されたインバータ回路と、
前記ダイオードブリッジに流れる交流電流を検知し、検知電流に比例した電圧を出力する電流検知部と、
前記インバータ回路内の電圧を検知し、検知電圧に比例した電圧を出力するインバータ電圧検知部と、
商用電源の電圧を検知する電源電圧検知回路と、
前記インバータ電圧検知部の出力電圧が前記電流検知部の出力電圧よりも、所定の閾値電圧以上になった時に所定位置に鍋が設置されていないと判断する鍋検知部とを備え、
前記電源電圧検知回路の検出電圧が、定格電圧より高い場合には、前記閾値電圧をあらかじめ設定された閾値電圧より高くする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−23163(P2011−23163A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165643(P2009−165643)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】