炊飯器
【課題】炊飯時間を短縮することができ、また、炊きムラの改善されたご飯を炊くことのできる炊飯器を得る。
【解決手段】制御手段5は、予熱工程において、内鍋2に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、内鍋加熱手段6を駆動するとともに、貯水容器9に入れられた必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度θ1となるよう、貯水容器加熱手段11を駆動し、貯水容器9内の水が予熱温度付近の所定温度に達すると、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の水を内鍋2内に供給する。
【解決手段】制御手段5は、予熱工程において、内鍋2に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、内鍋加熱手段6を駆動するとともに、貯水容器9に入れられた必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度θ1となるよう、貯水容器加熱手段11を駆動し、貯水容器9内の水が予熱温度付近の所定温度に達すると、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の水を内鍋2内に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の食品を入れた鍋状容器を本体内に収容して加熱調理する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炊飯器を使用する使用者が炊飯器に望む機能は、時間をかけずにおいしい米飯を炊くことである。特に、鍋の中の一部の米飯が硬く、一部の米飯が軟らかいといった炊きムラが発生すると食味上好ましくない。このため、短時間の炊飯でも、炊きムラのない炊飯を実行できる炊飯器が望まれている。
【0003】
そこで従来、「炊飯開始前後に水タンク加熱手段32を駆動して水タンク28内の水の温度を上昇させて沸騰に至らせ、米が水面上に出ない最小限の水量を加えて炊飯を開始し、残りの必要水量は炊飯開始後の沸騰前後の頃に所定温度に加温したものを水タンク28から供給する」という炊飯器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−89254号公報(第6頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の炊飯器では、沸騰工程(炊き上げ工程)において内鍋内が沸騰する前後に、加熱された水タンク内の水(湯)を内鍋に供給している。しかしながら、引用文献1に記載の炊飯器では、予熱工程(浸漬工程)の時間を短縮することができず、さらなる炊飯時間の短縮が望まれていた。また、予熱工程における内鍋内の上下の温度ムラを改善できず、炊きムラが発生する可能性があった。
【0006】
また、家庭用電源コンセントは100Vで、さらにコンセント一口の上限は15Aが一般的であるため、炊飯器の使用電力は1500Wが上限となる。家庭用炊飯器では、沸騰工程(炊き上げ工程)では最も火力を必要とし、上限の1500Wぎりぎりの火力で炊飯するのが望まれるが、引用文献1に記載の炊飯器は沸騰工程(炊き上げ工程)にて水タンク加熱手段にも通電しているため、内鍋を加熱するために割り当て可能な電力が少なくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、炊飯時間を短縮することができ、また、炊きムラの改善されたご飯を炊くことのできる炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炊飯器は、調理物を収納する内鍋と、前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、前記内鍋内の調理物または前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記予熱工程において、前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予熱工程時において、貯水容器に入れられた必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、貯水容器加熱手段を駆動し、貯水容器内の水が予熱温度付近の所定温度に達すると、貯水容器内の水を内鍋内に供給する。このため、予熱工程の時間を短縮することができ、炊飯時間を短縮することができる。また、予熱工程において内鍋内の温度をより均一化できるので、炊きムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器のブロック図である。
【図2】一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図3】図2に対し、内鍋内の別の部分の米の温度を破線で追加した一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図4】実施の形態1に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図9】実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図10】実施の形態3に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図11】実施の形態3に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図12】実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図13】実施の形態4に係る炊飯器のブロック図である。
【図14】実施の形態5に係る炊飯器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る炊飯器の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器のブロック図である。
図1において、炊飯器100は、例えば外観が有底筒状に形成された炊飯器の本体1と、本体1の内部に収容された内鍋2と、本体1の上部開口を開閉自在に覆う蓋体3と、炊飯器100の全体的な動作を制御する制御手段5と、制御手段5の制御プログラムや各種情報を記憶する記憶手段4と、内鍋2を加熱する内鍋加熱手段6とを備える。また、炊飯器100は、内鍋温度検知手段7と、蓋部温度検知手段8とを備える。
【0013】
内鍋2には、炊飯する米の合数に合った水の水位を示す水位目盛が印刷あるいは刻印等によって設けられている。なお、内鍋2に水位目盛を設けない構成とすることも可能である。蓋体3は、外蓋3aと、外蓋3aに着脱自在に取り付けられていて内鍋2の上部開口を覆う内蓋3bとを備える。使用者が、炊飯したい合数の米とそれに対応した水を入れた内鍋2を本体1に収容し、蓋体3を閉め、図示しない操作ボタンにより炊飯条件を設定して炊飯の開始を指示すると、制御手段5によって駆動制御された内鍋加熱手段6により内鍋2が加熱され、炊飯を行うことができるようになっている。内鍋加熱手段6としては、例えば、内鍋2を誘導加熱する加熱コイルや、シーズヒーター等の電気ヒーター等を用いることができるが、具体的な構成を限定するものではない。
【0014】
内鍋温度検知手段7は、例えばサーミスタからなる。内鍋温度検知手段7は、本体1の底部中央にて内鍋2の底面に接するように設けられていて内鍋2の温度を検知し、検知した温度情報を制御手段5に出力する。なお、ここでは、内鍋温度検知手段7により内鍋2の鍋底の温度を検知する例を示しているが、内鍋2の温度を検知する構成はこれに限定されるものではなく、鍋底以外の部位の温度を検知することも可能である。
【0015】
蓋部温度検知手段8は、例えばサーミスタからなる。蓋部温度検知手段8は、蓋体3の内鍋2の開口部と対面する部位に設けられており、内鍋2内の調理物(米や水)の温度を検知するために設けられたものである。蓋部温度検知手段8は、検知した温度情報を制御手段5に出力する。なお、ここでは、蓋体3に取り付けた蓋部温度検知手段8により内鍋2内の調理物の温度を検知する例を示しているが、調理物の温度を検知する構成はこれに限定されるものではなく、調理物の温度を検知可能であれば、任意の温度検知装置を任意の場所に設けることができる。
【0016】
本実施の形態1では、内蓋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8が、本発明の調理物温度検出手段に相当する。なお、内鍋2と調理物の温度のいずれか一方のみを検出するようにしてもよい。
【0017】
また、本実施の形態1の炊飯器100は、水を貯えるための貯水容器9と、貯水容器9内の水の温度を検知する貯水容器温度検知手段10と、貯水容器加熱手段11と、第一給水手段12とを備えている。
貯水容器9は、予熱工程で内鍋2に混入する水を予め貯えておくための容器である。貯水容器9には、炊飯する米の合数に対応した水位目盛(図示せず)が印刷あるいは刻印等により設けられていて、使用者はこの水位目盛を目安に炊飯前に貯水容器9に水を注入しておく。なお、貯水容器9に水位目盛を設けない構成とすることも可能である。図1では、貯水容器9を炊飯器100の本体1とは別体として設けた図となっているが、貯水容器9の配置を限定するものではない。例えば、本体1に、内鍋2とは別に貯水容器9を収容する収容部を設け、この収容部に貯水容器9を着脱自在に収容するようにしてもよい。
【0018】
貯水容器温度検知手段10は、例えばサーミスタからなり、貯水容器9内の水の温度を検知するためのものである。貯水容器温度検知手段10は、本実施の形態1では、貯水容器9の温度を検知することで貯水容器9内の水の温度を検出するように構成されているが、貯水容器9内の水の温度を検知可能であれば任意の構成を採用することができる。貯水容器温度検知手段10は、検知した貯水容器9の温度情報を、制御手段5に出力する。
【0019】
貯水容器加熱手段11は、貯水容器9内の水を加熱するためのものであり、例えば誘導加熱コイルやシーズヒーターなどの電気ヒーターからなる。貯水容器9内の水を加熱可能な構成であれば、貯水容器加熱手段11として任意の加熱手段を用いることができる。
【0020】
第一給水手段12は、貯水容器9内の水を、所定のタイミングで内鍋2に注入するための装置である。第一給水手段12を、例えば、電動の水ポンプと、貯水容器9と内鍋2内とを連通する配管とで構成し、制御手段5が水ポンプを駆動制御することにより貯水容器9内の水を内鍋2内に注入するようにしてもよい。また、例えば、貯水容器9を蓋体3内に設置するとともに、第一給水手段12として貯水容器9の底部近傍に制御手段5により開閉制御される電動バルブを設け、制御手段5が電動バルブを開くことにより、貯水容器9内の水を重力で内鍋2内に落下させるようにしてもよい。このような構成のほか、貯水容器9内の水を内鍋2内に注入することのできる構成であれば、第一給水手段12として任意の構成を採用することができる。
【0021】
このような構成において、炊飯器100の制御手段5は、記憶手段4に記憶された炊飯プログラムにしたがって、内鍋温度検知手段7及び蓋部温度検知手段8による温度検知情報に基づいて内鍋加熱手段6を駆動制御し、炊飯工程を実行する。この炊飯工程は、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含んでいる。また、制御手段5は炊飯工程において、後述するように、記憶手段4に記憶された炊飯プログラムにしたがい、貯水容器温度検知手段10の検知温度が所定温度となるように貯水容器加熱手段11を駆動制御して貯水容器9内の水を所定温度に加熱するとともに、所定のタイミングで貯水容器9の水を内鍋2に混入させるよう第一給水手段12を駆動制御する。制御手段5は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0022】
次に、実施の形態1に係る炊飯器100の炊飯動作の詳細を説明する。
【0023】
ここで、実施の形態1に係る炊飯器100の説明に先立ち、まず、一般の炊飯器の炊飯動作について説明する。
【0024】
図2は、一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図2では、炊飯物(炊飯中の米)の温度を、内鍋中央の底面から15mmの高さの米(以降中心下部と呼ぶ)の温度(中心下部温度t1)としている。また、図2に示す入力電力は、内鍋を加熱するための加熱手段(本実施の形態1の内鍋加熱手段6に相当)への入力電力である。
一般に、炊飯器は、調理物である米や水が入れられた内釜が炊飯器本体内に収容され、蓋が閉じられて炊飯スイッチがONされると、制御部に設定された制御プログラムにしたがって炊飯工程を開始する。この炊飯工程は、予熱工程、次いで沸騰工程、最後に蒸らし工程を含み、この炊飯工程が終了すると保温工程に移行する。
【0025】
予熱工程は、調理物(米と水)の温度を予熱温度(例えば60℃程度)まで上げて、その後予熱温度を維持する工程である。予熱工程は、米に水を吸わせることと、糖化酵素の働きで米の糖度を増加させるという作用がある。
【0026】
予熱工程の後は、沸騰工程に入る。沸騰工程は、火力を上げて、一般の家庭用コンセントの許容電力である100V15Aぎりぎりの電力(一般に機器のばらつきも考慮し余裕をみて1350W程度)で水を沸騰状態にし、内釜内の水がなくなるまで沸騰を継続させる工程である。沸騰工程は、米の澱粉をアルファ化させる作用がある。内釜内の水がなくなると、それまで水の蒸発潜熱で消費されていた熱が内鍋温度を上昇させることに使われるようになり、内鍋温度が急激に上昇する。これをドライアップと呼び、内鍋の底に設けた温度センサでこの温度上昇(ドライアップ)をとらえると、沸騰工程を終了する。
【0027】
沸騰工程の後は、蒸らし工程に入る。蒸らし工程では、沸騰工程よりも低火力で加熱して米を10分から15分程度蒸らした後、炊飯を終了し、保温工程に移行する。上記の各工程では、最適な火加減を実現するように、鍋底や蓋部の温度検出手段で温度を確認しながらマイコンプログラムで火力制御される。
【0028】
ここで、沸騰工程で澱粉をアルファ化させておいしいご飯とするためには、米の芯まで十分に水が浸透していることが重要であるが、沸騰工程に入ってしまうと、米の表面が糊化するため米内への吸水は難しくなる。そのため、予熱工程で米の芯まで十分に吸水させることが重要である。つまり、予熱工程での吸水具合により、おいしさが異なってくることになる。また、予熱工程における内鍋内の温度ムラもおいしさに関与する要素であり、予熱工程において内鍋内に温度ムラがあると、炊き上がったときに炊きムラが生じる可能性がある。
【0029】
予熱工程中の糖化酵素の働きにより、米のおいしさの一要素である糖が生成されるが、この糖化酵素が最もよく働く温度帯域は約40℃から60℃、特に、活性化する温度は55℃から60℃とされており、60℃を超えると酵素が失活するとされている。内鍋内の米の温度ムラが大きいと、内鍋内の場所によってこの温度帯域にとどまる時間が異なり、その結果、場所によって甘さが異なってしまう。また、60℃を超えてしまう場所も生じることがあるため、場所によって糖度が低い部分が生じ、全体としても糖度が低いご飯となってしまう場合があった。このように、予熱工程における温度ムラを極力抑えることが、内釜内の場所によらず糖化酵素が十分に働いて全体としておいしいご飯を炊くために重要であることがわかる。このため、予熱工程初期では比較的弱い火力でゆっくり時間をかけ、なるべく全体が均一になるように加熱している。
【0030】
図3は、図2に対し、内鍋内の別の部分の米の温度を破線で追加した一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。ここでは一例として内鍋中央の底面から15mmの高さの米(以降中心下部と呼ぶ)の温度(中心下部温度t1)を実線で、上部の米面の中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度t2)を破線で示した。
予熱工程では比較的弱い火力でゆっくりと時間をかけて米の温度を60℃になるようにあたためているが、熱が伝わりにくい中心下部と、水の対流により温度上昇が早い中心上部で温度差が生じていることがわかる。また、これ以上入力電力を高めると、さらに中心下部温度t1と中心上部温度t2とで温度差が広がってしまう。
【0031】
このように、一般的な炊飯器においては、予熱工程において、調理物の中心上部と中心下部とで温度ムラが生じてしまっていた。
【0032】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯動作の詳細を説明する。
図4は、実施の形態1に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図5は、実施の形態1に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。以下、図4と図5を参照して実施の形態1の炊飯器100の炊飯動作を説明する。
【0033】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。なお、内鍋2内の米が水面上に露出していると、露出している米は吸水不十分となり炊きムラの原因となるため、内鍋2内にはすべての米が水に漬る程度の水を予め入れておく必要があるが、その量を厳密に限定するものではない。また、内鍋2内の米が水に浸るようにしつつ、貯水容器9で加熱する水の量をなるべく多くした方が好ましい。
【0034】
図5に示すように、炊飯工程は、まず予熱工程から始まる。
図4を参照して、予熱工程について詳細に説明する。
【0035】
予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S1)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図5には、図4のステップS1に相当する部分に「S1」の符号を記している。
【0036】
ステップS1を開始後、あるいはステップS1の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S2)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態1では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図5には、図4のステップS2に相当する部分に「S2」の符号を記している。
【0037】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて検知される貯水容器9内の水の温度が、所定温度θ1に達するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S3;No)。そして、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて貯水容器9内の水の温度が所定温度θ1に達したことを検出すると(S3;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9内の所定温度θ1の水を内鍋2内に供給し(S4)、貯水容器加熱手段11への電力投入を停止する(S5)。図5には、図4のステップS4に相当する部分に「S4」の符号を記している。なお、貯水容器9内の水を内鍋2内に供給するときの所定温度θ1は、予熱温度(例えば40℃から60℃)近傍の温度とするのが好ましい。例えば、所定温度θ1を予熱温度(例えば60℃)より高めの温度とし、貯水容器9内の水を投入した後の内鍋2内の温度が予熱温度により近づくようにしてもよい。
【0038】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続し(S6;No)、所定時間が経過すると(S6;Yes)、沸騰工程へ移行する。
【0039】
すなわち、本実施の形態1では、炊飯の必要水量のうち一部は、米とともに最初から内鍋2に入れられていて米とともに加熱され、残りの水は、所定温度θ1に昇温された後に予熱工程中に内鍋2に投入される。
【0040】
図5の説明に戻る。
沸騰工程では、制御手段5は、内鍋温度検知手段7、蓋部温度検知手段8の出力値に基づいて検出される内鍋2内の調理物の温度が沸騰温度となるよう、内鍋加熱手段6へ電力を投入する。沸騰工程の初期段階においては、炊飯器100で投入可能な最大電力を内鍋加熱手段6に投入し、高火力で加熱している。そして、内鍋2内の調理物が沸騰温度に達したことが検出されると、制御手段5は、調理物が沸騰温度を維持するよう内鍋加熱手段6への通電制御を行う。そして、内鍋2内の水が米にほぼ吸収されると、沸騰工程を終了する。
【0041】
沸騰工程の次に、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程では、制御手段5は、沸騰工程よりも低火力となるよう内鍋加熱手段6の通電制御を行い、所定時間が経過すると、蒸らし工程を終了する。これにより、炊飯工程が終了する。
【0042】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図6は、実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図6(a)として示し、本実施の形態1に係る前述の図5を図6(b)として示している。
【0043】
図6(b)に示すように、本実施の形態1によれば、予熱工程中に所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで(S4参照)、予熱工程における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図6(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態1に係る図6(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差は小さくなっている。これは、所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで、内鍋2内の米及び水が攪拌され、最初から内鍋2内に入っていた水がほぼ一様に温度上昇するためである。このように、本実施の形態1の炊飯器によれば、内鍋2内の場所によらず、予熱工程における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、内鍋2内の米の場所によらず、予熱工程における温度履歴がほぼ同一となり、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0044】
また、予熱工程中に、貯水容器9で予熱温度(例えば60℃)の水を作り混入させることで、内鍋2内の温度を速やかに予熱温度(例えば60℃)に上昇させることができる。このため、本実施の形態1の炊飯器によれば、図6に示すように、一般的な炊飯器よりも予熱工程の時間を短縮することができる(図6のX1参照)。したがって、炊飯工程全体の時間を短縮することができ、より速く炊飯できるようになる(図6のX2参照)。
【0045】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。また、貯水容器加熱手段11に電力を投入する予熱工程は、沸騰工程と比較して内鍋加熱手段6に投入する電力が小さく、炊飯器全体で投入可能な電力に余裕のある工程であるため、貯水容器加熱手段11に電力を投入しても内鍋加熱手段6による加熱を妨げることはない。
【0046】
実施の形態2.
前述の実施の形態1は、予熱工程の比較的初期に、貯水容器9で所定温度θ1(予熱温度、例えば60℃)に加熱した水を内鍋2に混入するものであった。本実施の形態2では、予熱工程の比較的後期に内鍋2に水を混入させる実施の形態を示す。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付している。
【0047】
図7は、実施の形態2に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図8は、実施の形態2に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図8では、内鍋2内の2箇所における炊飯物の温度を示しており、内鍋中央の底面から15mmの高さ(以降中心下部と呼ぶ)の米の温度(中心下部温度T1)を実線で、上部の米面中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度T2)を破線で示している。
【0048】
図7と図8を参照して実施の形態2の炊飯器100の予熱工程における炊飯動作を説明する。
【0049】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。
【0050】
図7に示すように、予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S11)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図8には、図7のステップS11に相当する部分に「S11」の符号を記している。
【0051】
ステップS11を開始後、あるいはステップS11の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S12)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態2では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図8には、図7のステップS12に相当する部分に「S12」の符号を記している。
【0052】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10が検知する貯水容器9の温度情報を取得し、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したと判断するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S13;No)。そして、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したことを検出すると(S13;Yes)、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への入力電力を低下させて貯水容器9内の水の温度を維持するように加熱制御する(S14)。
【0053】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続する(S15;No)。予熱工程を開始してから所定時間が経過すると(S15;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の水を内鍋2内に投入し(S16)、予熱工程を終了して沸騰工程へ移行する。図8には、図7のステップS16に相当する部分に「S16」の符号を記している。
【0054】
すなわち、本実施の形態2では、炊飯の必要水量のうち一部は、米とともに最初から内鍋2に入れられていて米とともに加熱され、残りの水は、沸騰温度に昇温された後に予熱工程中に内鍋2に投入される。
【0055】
次に、本実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図9は、実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図9(a)として示し、本実施の形態2に係る前述の図8を図9(b)として示している。
【0056】
図9(b)に示すように、本実施の形態2によれば、予熱工程終了前に沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで(S16参照)、沸騰工程時における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図9(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態2に係る図9(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差が小さくなっている。これは、沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで、内鍋2内の米及び水が攪拌され、最初から内鍋2内に入っていた予熱温度の水がほぼ一様に温度上昇するためである。このように、本実施の形態2によれば、内鍋2内の場所によらず、沸騰工程時における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、沸騰工程時における内鍋2内の米の温度履歴は、米の場所によらずほぼ同じとなり、炊飯ムラの改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0057】
また、米が十分に吸水する前に内鍋2内の水の温度を沸騰温度に上昇させると、米の表面が糊化して米は吸水しにくくなるとともに、米の糖化酵素が十分に働けなくなるため、良く吸水した甘みのあるおいしいご飯を炊くことができないが、本実施の形態2では給水工程の終了時に沸騰温度の水を供給するため、米の吸水を妨げることなくおいしいご飯を炊くことができる。
【0058】
また、予熱工程終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2内に混入させることで、内鍋2内のご飯を速やかに沸騰温度に一様に上昇させることができる。このため、本実施の形態2の炊飯器によれば、図9に示すように、一般的な炊飯器と比べて沸騰工程の時間を短縮することができる(図9のY1参照)。沸騰工程においては、家庭用電源コンセントの制限によって例えば100V15A以上の電力を投入できないが、比較的電力に余裕のある予熱工程時の電力を使用して沸騰させた貯水容器9の水を内鍋2に投入するので、内鍋2内を速やかに沸騰状態にすることができる。
【0059】
また、本実施の形態2の予熱工程開始時においては、炊飯に必要な水を、内鍋2と貯水容器9とに分けて収容してそれぞれを加熱するので、一般的な炊飯器と比べて内鍋2内の水を減らすことができる。このため、一般的な炊飯器と同一電力であっても、予熱工程開始から予熱温度(例えば60℃)まで上昇させる時間を短くすることができるので、予熱工程開始から貯水容器9からの水投入までの時間を短くすることが可能となり、予熱工程の時間を短縮できる(図示しない)。
【0060】
したがって、本実施の形態2の炊飯器によれば、一般的な炊飯器と比べて炊飯時間を短縮することができる(図9のY2参照)。
【0061】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。また、貯水容器加熱手段11に電力を投入する予熱工程は、沸騰工程と比較して内鍋加熱手段6に投入する電力が小さく、炊飯器全体で投入可能な電力に余裕のある工程であるため、貯水容器加熱手段11に電力を投入しても内鍋加熱手段6による加熱を妨げることはない。
【0062】
実施の形態3.
前述の実施の形態1は、予熱工程の比較的初期に、貯水容器9で所定温度θ1(予熱温度、例えば60℃)に加熱した水を内鍋2に混入するものであった。また、前述の実施の形態2は、予熱工程の終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2に混入するものであった。本実施の形態3では、これらを合わせて実施する実施の形態を示す。なお、本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付している。
【0063】
図10は、実施の形態3に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図11は、実施の形態3に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図11では、内鍋2内の2箇所における炊飯物の温度を示しており、内鍋中央の底面から15mmの高さ(以降中心下部と呼ぶ)の米の温度(中心下部温度T1)を実線で、上部の米面中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度T2)を破線で示している。
【0064】
図10と図11を参照して実施の形態3の炊飯器100の予熱工程における炊飯動作を説明する。
【0065】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。
【0066】
図10に示すように、予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S21)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図11には、図10のステップS21に相当する部分に「S21」の符号を記している。
【0067】
ステップS21を開始後、あるいはステップS21の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S22)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態3では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図11には、図10のステップS22に相当する部分に「S22」の符号を記している。
【0068】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて検知される貯水容器9内の水の温度が、所定温度θ1(例えば60℃)に達するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S23;No)。そして、貯水容器9内の水の温度が所定温度θ1に達したことを検出すると(S23;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9内の所定温度θ1の水のうち所定量Q1を、内鍋2内に供給する(S24)。図11には、図10のステップS24に相当する部分に「S24」の符号を記している。
【0069】
なお、貯水容器9内の水を内鍋2内に投入するときの所定温度θ1は、60℃に限定されないが、予熱温度である40℃〜60℃近傍の温度とするのが好ましい。例えば、所定温度θ1を予熱温度(例えば60℃)より高めの温度とし、水を投入した後の内鍋2内の温度が60℃により近づくようにしてもよい。また、ステップS24にて内鍋2に投入する所定量Q1は、内鍋2内の水が攪拌され、米面がひたひた以上になる量であって、貯水容器9内の水の全量よりも少ない量であればよい。ここでは、貯水容器9の水のうち100ccをステップS21にて内鍋2に投入するものとする。なお、この数値は一例であってこの値に限定されるものではなく、炊飯する米の合数に応じて水の投入量を異ならせてもよい。
【0070】
さらに、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10が検知する貯水容器9の温度情報を取得し、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したと判断するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S25;No)。このときにも、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲とする。本実施の形態3では機器のばらつきを考慮して余裕をみて1350Wとする。そして、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したことを検出すると(S25;Yes)、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への入力電力を低下させて貯水容器9内の水の温度を維持するように加熱制御する(S26)。
【0071】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続する(S27;No)。予熱工程を開始してから所定時間が経過すると(S27;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の残りの水量(所定量Q2)を内鍋2内に投入し(S28)、予熱工程を終了して沸騰工程へ移行する。図11には、図10のステップS28に相当する部分に「S28」の符号を記している。
【0072】
すなわち、本実施の形態3では、炊飯の必要水量のうち、一部は米とともに最初から内鍋2に入れて加熱し、残りの水のうち所定量Q1は所定温度θ1に昇温させて予熱工程中に内鍋2に投入し、さらに残りの所定量Q2は沸騰温度まで昇温させて予熱工程の終了時に内鍋2に投入している。
【0073】
次に、本実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図12は、実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図12(a)として示し、本実施の形態3に係る前述の図11を図12(b)として示している。
【0074】
図12(b)に示すように、本実施の形態3によれば、予熱工程の初期に所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで、予熱工程における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図12(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態1に係る図12(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差は小さくなっている。このように、本実施の形態3の炊飯器によれば、内鍋2内の場所によらず、予熱工程における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、内鍋2内の米の場所によらず、予熱工程における温度履歴がほぼ同一となり、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0075】
さらに、本実施の形態3では、予熱工程終了前に沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで(S24)、沸騰工程時における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図12(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態2に係る図12(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差が小さくなっている。このように、本実施の形態3によれば、内鍋2内の場所によらず、沸騰工程時における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、沸騰工程時における内鍋2内の米の温度履歴は、米の場所によらずほぼ同じとなり、炊飯ムラの改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0076】
また、予熱工程中に、貯水容器9で予熱温度(例えば60℃)の水を作り混入させることで、内鍋2内の温度を速やかに予熱温度(例えば60℃)に上昇させることができる。このため、本実施の形態3の炊飯器によれば、図12に示すように、一般的な炊飯器よりも予熱工程の時間を短縮することができる。これにより、炊飯工程全体の時間も短縮することができ、より速く炊飯できるようになる。
また、予熱工程終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2内に混入することで、内鍋2内のご飯を速やかに沸騰温度に一様に上昇させることができる。このため、本実施の形態3の炊飯器によれば、図12に示すように、一般的な炊飯器よりも沸騰工程の時間を短縮することができる。沸騰工程においては、家庭用電源コンセントの制限によって例えば100V15A以上の電力を投入できないが、比較的電力に余裕のある予熱工程時の電力を使用して沸騰させた貯水容器9の水を内鍋2に投入するので、内鍋2内を速やかに沸騰状態にすることができる。
このように、予熱工程と沸騰工程の時間を短縮できるため、本実施の形態3によれば、炊飯工程全体の時間を短縮することができ、より速く炊飯することができるようになる(図12のZ1参照)。
【0077】
このように、本実施の形態3によれば、予熱工程と沸騰工程の両方において、内鍋2内における米の温度のばらつきを低減できるので、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供することができる。また、図9に示すように、一般的な炊飯器と比べて炊飯時間を短縮することができ、より速く炊飯することができる。
【0078】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。
【0079】
実施の形態4.
本実施の形態4では、炊飯中に内鍋内で発生する蒸気を水により復水して回収する蒸気回収容器を備え、実施の形態1〜3で示した予熱工程中に内鍋内に投入する水を、この蒸気回収容器から供給するようにした炊飯器を説明する。なお、本実施の形態4では、前述の実施の形態1と同一または相当する構成には同一の符号を付している。また、本実施の形態4は、前述の実施の形態1〜3と組み合わせることが可能である。
【0080】
図13は、実施の形態4に係る炊飯器のブロック図である。
図13において、炊飯器100は、内鍋2内から出る蒸気を回収する蒸気回収容器91と、蒸気回収容器91と内鍋2内とを連通させる蒸気導管92と、第二給水手段93とを有している。蒸気回収容器91は、所定量の水を溜めることのできる水タンクである。蒸気導管92は、内蓋3bに設けられた蒸気口3cに接続されており、内鍋2内で発生した蒸気を蒸気回収容器91に導く。図13では、蒸気回収容器91を炊飯器100の本体1とは別体として設けた図となっているが、蒸気回収容器91の配置を限定するものではない。例えば、本体1に、内鍋2とは別に蒸気回収容器91を収容する収容部を設け、この収容部に蒸気回収容器91を着脱可能に設置するようにしてもよい。また、蒸気導管92は、蒸気回収容器91と内鍋2内とを連通させるように構成されていればよく、蒸気導管92の具体的構成は限定しない。
【0081】
蒸気の回収について簡単に説明する。まず、炊飯開始前に、蒸気回収容器91内には蒸気を冷却するための冷却水として水Wを入れておく。炊飯工程が開始されると、主に沸騰工程時において内鍋2内から蒸気が発生する。この蒸気は、内蓋3bに設けられた蒸気口3cから内鍋2を出て、蒸気導管92よって蒸気回収容器91に導かれ、蒸気回収容器91内の水Wによって冷やされて水となり、蒸気回収容器91内に溜められる。このようにすることで、内鍋2から出る蒸気は、蒸気回収容器91内に回収され、炊飯器の外部にはほぼ排出されない仕組みとなっている。
【0082】
第二給水手段93は、蒸気回収容器91内の水を貯水容器9に供給するための装置であり、制御手段5によって駆動制御される。第二給水手段93は、少なくとも、蒸気回収容器91から取り出す水量を量る水量検出装置と、蒸気回収容器91から貯水容器9に水を移動させる給水装置とを備えている。水量検出装置としては、例えば、重量センサを用い、蒸気回収容器91の重量変化を検知することによって水量を検出するようにしてもよい。また、水量検出装置として、超音波式や光学式の水位センサを用い、蒸気回収容器91内の水Wの水位を検知することで水量を検出するようにしてもよい。また、給水装置を、例えば電動の水ポンプと、貯水容器9と蒸気回収容器91とを連通する配管とで構成し、制御手段5が水ポンプを駆動制御することにより蒸気回収容器91内の水を貯水容器9に供給するようにしてもよい。このような構成のほか、給水装置としては、所定水量の水を所定タイミングで貯水容器9に供給することのできる装置であれば任意のものを採用することができる。
【0083】
次に、実施の形態4に係る炊飯器の動作を説明する。
本実施の形態4の炊飯器は、貯水容器9に入れる水を、蒸気回収容器91内の水とする。すなわち、実施の形態1〜3では、炊飯開始前に予め使用者が貯水容器9に水を入れておくものとして説明したが、本実施の形態4では、炊飯開始前に使用者は貯水容器9に水を入れておく必要はなく、蒸気回収容器91にのみ水を入れておけばよい。なお、蒸気回収容器91には、炊飯時に発生する蒸気を復水するのに必要な水と、貯水容器9に供給するための水とを合わせた水の水位を示す目盛が設けられているのが好ましく、このようにすることで使用者は容易に必要な水量の水Wを蒸気回収容器91に入れることができる。
【0084】
そして、炊飯開始が指示されると、予熱工程を開始すると同時に、あるいは予熱工程開始のタイミングと前後して、制御手段5は、第二給水手段93を制御して蒸気回収容器91の水Wの一部を貯水容器9に供給する。貯水容器9に水を供給した後の動作については、前述の実施の形態1〜3と同様である。
【0085】
このように、本実施の形態4によれば、蒸気回収容器91の水Wを貯水容器9に供給するようにしたので、使用者は、炊飯開始前に蒸気回収容器91に水Wを入れておけばよい。蒸気回収容器91と貯水容器9の両方に水を入れておく必要がないので、炊飯開始前の使用者の手間を軽減することができる。
【0086】
実施の形態5.
前述の実施の形態1〜4では、炊飯開始前に、炊飯に必要な水の一部を使用者が内鍋2に入れておくものとして説明したが、本実施の形態5では、内鍋2内に水を入れるタイミングが前述の実施の形態1〜4と異なる。なお、本実施の形態5では、前述の実施の形態1と同一または相当する構成には、同一の符号を付している。
【0087】
図14は、実施の形態5に係る炊飯器のブロック図である。
本実施の形態5では、使用者は、炊飯前に内鍋2に炊飯したい合数の米のみを入れるようになっている。このため、前述の実施の形態1の内鍋2は、米の合数に対応した水位目盛が設けられているのが好ましいが、本実施の形態5では、内鍋2に水位目盛を設けない構成としてもよい。
【0088】
また、貯水容器9Aは、実施の形態1の貯水容器9と比べて貯水容量が大きい。これは、前述の実施の形態1〜4では、貯水容器9には炊飯に必要な水の一部が入れられる構成であったが、本実施の形態5の貯水容器9Aには、炊飯に必要な水のすべてが入れられるためである。
【0089】
このような炊飯器100にて炊飯を行う際には、使用者は炊飯準備として予め、内鍋2に炊飯したい合数の米を入れるとともに、米の合数に応じた水を貯水容器9Aに入れておく。貯水容器9Aには、米の合数に応じた水位を示す水位目盛が設けられているのが好ましい。
【0090】
炊飯器100の制御手段5は、炊飯を開始すると、予熱工程を開始する前に、まず、内鍋2内の米の量(合数)を検出する。米の量は、例えば、炊飯器100に内鍋2及びその内容物の重量を検出する重量センサを設けておき、この重量センサの検出値に基づいて量ることができる。そのほか、例えば、炊飯器100に米の合数を設定するためのボタン等の入力装置を設けておき、炊飯する際に使用者がこの入力装置を用いて米の合数を設定するようにしてもよい。
【0091】
次に、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9A内の水を内鍋2に投入する。このとき内鍋2に投入する水の量は、米の上面がひたひたになる程度の水量となるように米の合数に応じて設定されている。この場合、第一給水手段12に、貯水容器9Aから供給する水量を量る水量検出装置を設けておく。水量検出装置としては、例えば、重量センサを用い、貯水容器9Aの重量変化を検知することによって水量を検出するようにしてもよい。また、水量検出装置として、超音波式や光学式の水位センサを用い、貯水容器9A内の水の水位を検知することで水量を検出するようにしてもよい。
【0092】
なお、米の合数によらず、同量の水を内鍋2に投入するようにしてもよい。この場合、何合の米を炊飯する場合であっても、炊飯器100の最大炊飯合数の米面がひたひたになる水量を投入するとよい。
【0093】
内鍋2への水の投入が終了すると、予熱工程を開始する。予熱工程以降の炊飯工程の動作については、前述の実施の形態1〜3のいずれかを用いることができる。
【0094】
このように、本実施の形態5の炊飯器では、炊飯準備段階では内鍋2に米のみを入れ、炊飯に必要な水は貯水容器9Aに入れておくようにしている。すなわち、米と水とを分けて炊飯準備をしておき、炊飯開始時に、米と水とを合わせるようにしている。米が水に長時間浸された状態が続くと、もしも雑菌が侵入していた場合には臭いが発生するためご飯のおいしさが損なわれる場合があったが、本実施の形態5のようにすることで、炊飯開始時に米と水を合わせるので、いつでもおいしいご飯を炊くことができる。
【0095】
特に、予約炊飯時は、長時間室温に、米が水に浸された状態が続くので、もしも雑菌が侵入していた場合、臭いが発生する可能性がさらに大きくなる。そこで、予約炊飯時に限定して本実施の形態5の炊飯を行ってもよい。このようにすることで、通常の炊飯時は、最初から米が水に浸されているので、吸水が促進され、おいしいご飯を炊くことができる。また、長時間米が水に浸された状態が続く予約炊飯時には、炊飯開始時に米と水を合わせるので、いつでもおいしいご飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 本体、2 内鍋、3 蓋体、3a 外蓋、3b 内蓋、3c 蒸気口、4 記憶手段、5 制御手段、6 内鍋加熱手段、7 内鍋温度検知手段、8 蓋部温度検知手段、9 貯水容器、9A 貯水容器、10 貯水容器温度検知手段、11 貯水容器加熱手段、12 第一給水手段、91 蒸気回収容器、92 蒸気導管、93 第二給水手段、100 炊飯器、T1 中心下部温度、T2 中心上部温度、t1 中心下部温度、t2 中心上部温度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の食品を入れた鍋状容器を本体内に収容して加熱調理する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炊飯器を使用する使用者が炊飯器に望む機能は、時間をかけずにおいしい米飯を炊くことである。特に、鍋の中の一部の米飯が硬く、一部の米飯が軟らかいといった炊きムラが発生すると食味上好ましくない。このため、短時間の炊飯でも、炊きムラのない炊飯を実行できる炊飯器が望まれている。
【0003】
そこで従来、「炊飯開始前後に水タンク加熱手段32を駆動して水タンク28内の水の温度を上昇させて沸騰に至らせ、米が水面上に出ない最小限の水量を加えて炊飯を開始し、残りの必要水量は炊飯開始後の沸騰前後の頃に所定温度に加温したものを水タンク28から供給する」という炊飯器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−89254号公報(第6頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の炊飯器では、沸騰工程(炊き上げ工程)において内鍋内が沸騰する前後に、加熱された水タンク内の水(湯)を内鍋に供給している。しかしながら、引用文献1に記載の炊飯器では、予熱工程(浸漬工程)の時間を短縮することができず、さらなる炊飯時間の短縮が望まれていた。また、予熱工程における内鍋内の上下の温度ムラを改善できず、炊きムラが発生する可能性があった。
【0006】
また、家庭用電源コンセントは100Vで、さらにコンセント一口の上限は15Aが一般的であるため、炊飯器の使用電力は1500Wが上限となる。家庭用炊飯器では、沸騰工程(炊き上げ工程)では最も火力を必要とし、上限の1500Wぎりぎりの火力で炊飯するのが望まれるが、引用文献1に記載の炊飯器は沸騰工程(炊き上げ工程)にて水タンク加熱手段にも通電しているため、内鍋を加熱するために割り当て可能な電力が少なくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、炊飯時間を短縮することができ、また、炊きムラの改善されたご飯を炊くことのできる炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る炊飯器は、調理物を収納する内鍋と、前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、前記内鍋内の調理物または前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記予熱工程において、前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予熱工程時において、貯水容器に入れられた必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、貯水容器加熱手段を駆動し、貯水容器内の水が予熱温度付近の所定温度に達すると、貯水容器内の水を内鍋内に供給する。このため、予熱工程の時間を短縮することができ、炊飯時間を短縮することができる。また、予熱工程において内鍋内の温度をより均一化できるので、炊きムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器のブロック図である。
【図2】一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図3】図2に対し、内鍋内の別の部分の米の温度を破線で追加した一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図4】実施の形態1に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図6】実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図7】実施の形態2に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図9】実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図10】実施の形態3に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
【図11】実施の形態3に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。
【図12】実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する図である。
【図13】実施の形態4に係る炊飯器のブロック図である。
【図14】実施の形態5に係る炊飯器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る炊飯器の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器のブロック図である。
図1において、炊飯器100は、例えば外観が有底筒状に形成された炊飯器の本体1と、本体1の内部に収容された内鍋2と、本体1の上部開口を開閉自在に覆う蓋体3と、炊飯器100の全体的な動作を制御する制御手段5と、制御手段5の制御プログラムや各種情報を記憶する記憶手段4と、内鍋2を加熱する内鍋加熱手段6とを備える。また、炊飯器100は、内鍋温度検知手段7と、蓋部温度検知手段8とを備える。
【0013】
内鍋2には、炊飯する米の合数に合った水の水位を示す水位目盛が印刷あるいは刻印等によって設けられている。なお、内鍋2に水位目盛を設けない構成とすることも可能である。蓋体3は、外蓋3aと、外蓋3aに着脱自在に取り付けられていて内鍋2の上部開口を覆う内蓋3bとを備える。使用者が、炊飯したい合数の米とそれに対応した水を入れた内鍋2を本体1に収容し、蓋体3を閉め、図示しない操作ボタンにより炊飯条件を設定して炊飯の開始を指示すると、制御手段5によって駆動制御された内鍋加熱手段6により内鍋2が加熱され、炊飯を行うことができるようになっている。内鍋加熱手段6としては、例えば、内鍋2を誘導加熱する加熱コイルや、シーズヒーター等の電気ヒーター等を用いることができるが、具体的な構成を限定するものではない。
【0014】
内鍋温度検知手段7は、例えばサーミスタからなる。内鍋温度検知手段7は、本体1の底部中央にて内鍋2の底面に接するように設けられていて内鍋2の温度を検知し、検知した温度情報を制御手段5に出力する。なお、ここでは、内鍋温度検知手段7により内鍋2の鍋底の温度を検知する例を示しているが、内鍋2の温度を検知する構成はこれに限定されるものではなく、鍋底以外の部位の温度を検知することも可能である。
【0015】
蓋部温度検知手段8は、例えばサーミスタからなる。蓋部温度検知手段8は、蓋体3の内鍋2の開口部と対面する部位に設けられており、内鍋2内の調理物(米や水)の温度を検知するために設けられたものである。蓋部温度検知手段8は、検知した温度情報を制御手段5に出力する。なお、ここでは、蓋体3に取り付けた蓋部温度検知手段8により内鍋2内の調理物の温度を検知する例を示しているが、調理物の温度を検知する構成はこれに限定されるものではなく、調理物の温度を検知可能であれば、任意の温度検知装置を任意の場所に設けることができる。
【0016】
本実施の形態1では、内蓋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8が、本発明の調理物温度検出手段に相当する。なお、内鍋2と調理物の温度のいずれか一方のみを検出するようにしてもよい。
【0017】
また、本実施の形態1の炊飯器100は、水を貯えるための貯水容器9と、貯水容器9内の水の温度を検知する貯水容器温度検知手段10と、貯水容器加熱手段11と、第一給水手段12とを備えている。
貯水容器9は、予熱工程で内鍋2に混入する水を予め貯えておくための容器である。貯水容器9には、炊飯する米の合数に対応した水位目盛(図示せず)が印刷あるいは刻印等により設けられていて、使用者はこの水位目盛を目安に炊飯前に貯水容器9に水を注入しておく。なお、貯水容器9に水位目盛を設けない構成とすることも可能である。図1では、貯水容器9を炊飯器100の本体1とは別体として設けた図となっているが、貯水容器9の配置を限定するものではない。例えば、本体1に、内鍋2とは別に貯水容器9を収容する収容部を設け、この収容部に貯水容器9を着脱自在に収容するようにしてもよい。
【0018】
貯水容器温度検知手段10は、例えばサーミスタからなり、貯水容器9内の水の温度を検知するためのものである。貯水容器温度検知手段10は、本実施の形態1では、貯水容器9の温度を検知することで貯水容器9内の水の温度を検出するように構成されているが、貯水容器9内の水の温度を検知可能であれば任意の構成を採用することができる。貯水容器温度検知手段10は、検知した貯水容器9の温度情報を、制御手段5に出力する。
【0019】
貯水容器加熱手段11は、貯水容器9内の水を加熱するためのものであり、例えば誘導加熱コイルやシーズヒーターなどの電気ヒーターからなる。貯水容器9内の水を加熱可能な構成であれば、貯水容器加熱手段11として任意の加熱手段を用いることができる。
【0020】
第一給水手段12は、貯水容器9内の水を、所定のタイミングで内鍋2に注入するための装置である。第一給水手段12を、例えば、電動の水ポンプと、貯水容器9と内鍋2内とを連通する配管とで構成し、制御手段5が水ポンプを駆動制御することにより貯水容器9内の水を内鍋2内に注入するようにしてもよい。また、例えば、貯水容器9を蓋体3内に設置するとともに、第一給水手段12として貯水容器9の底部近傍に制御手段5により開閉制御される電動バルブを設け、制御手段5が電動バルブを開くことにより、貯水容器9内の水を重力で内鍋2内に落下させるようにしてもよい。このような構成のほか、貯水容器9内の水を内鍋2内に注入することのできる構成であれば、第一給水手段12として任意の構成を採用することができる。
【0021】
このような構成において、炊飯器100の制御手段5は、記憶手段4に記憶された炊飯プログラムにしたがって、内鍋温度検知手段7及び蓋部温度検知手段8による温度検知情報に基づいて内鍋加熱手段6を駆動制御し、炊飯工程を実行する。この炊飯工程は、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含んでいる。また、制御手段5は炊飯工程において、後述するように、記憶手段4に記憶された炊飯プログラムにしたがい、貯水容器温度検知手段10の検知温度が所定温度となるように貯水容器加熱手段11を駆動制御して貯水容器9内の水を所定温度に加熱するとともに、所定のタイミングで貯水容器9の水を内鍋2に混入させるよう第一給水手段12を駆動制御する。制御手段5は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0022】
次に、実施の形態1に係る炊飯器100の炊飯動作の詳細を説明する。
【0023】
ここで、実施の形態1に係る炊飯器100の説明に先立ち、まず、一般の炊飯器の炊飯動作について説明する。
【0024】
図2は、一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図2では、炊飯物(炊飯中の米)の温度を、内鍋中央の底面から15mmの高さの米(以降中心下部と呼ぶ)の温度(中心下部温度t1)としている。また、図2に示す入力電力は、内鍋を加熱するための加熱手段(本実施の形態1の内鍋加熱手段6に相当)への入力電力である。
一般に、炊飯器は、調理物である米や水が入れられた内釜が炊飯器本体内に収容され、蓋が閉じられて炊飯スイッチがONされると、制御部に設定された制御プログラムにしたがって炊飯工程を開始する。この炊飯工程は、予熱工程、次いで沸騰工程、最後に蒸らし工程を含み、この炊飯工程が終了すると保温工程に移行する。
【0025】
予熱工程は、調理物(米と水)の温度を予熱温度(例えば60℃程度)まで上げて、その後予熱温度を維持する工程である。予熱工程は、米に水を吸わせることと、糖化酵素の働きで米の糖度を増加させるという作用がある。
【0026】
予熱工程の後は、沸騰工程に入る。沸騰工程は、火力を上げて、一般の家庭用コンセントの許容電力である100V15Aぎりぎりの電力(一般に機器のばらつきも考慮し余裕をみて1350W程度)で水を沸騰状態にし、内釜内の水がなくなるまで沸騰を継続させる工程である。沸騰工程は、米の澱粉をアルファ化させる作用がある。内釜内の水がなくなると、それまで水の蒸発潜熱で消費されていた熱が内鍋温度を上昇させることに使われるようになり、内鍋温度が急激に上昇する。これをドライアップと呼び、内鍋の底に設けた温度センサでこの温度上昇(ドライアップ)をとらえると、沸騰工程を終了する。
【0027】
沸騰工程の後は、蒸らし工程に入る。蒸らし工程では、沸騰工程よりも低火力で加熱して米を10分から15分程度蒸らした後、炊飯を終了し、保温工程に移行する。上記の各工程では、最適な火加減を実現するように、鍋底や蓋部の温度検出手段で温度を確認しながらマイコンプログラムで火力制御される。
【0028】
ここで、沸騰工程で澱粉をアルファ化させておいしいご飯とするためには、米の芯まで十分に水が浸透していることが重要であるが、沸騰工程に入ってしまうと、米の表面が糊化するため米内への吸水は難しくなる。そのため、予熱工程で米の芯まで十分に吸水させることが重要である。つまり、予熱工程での吸水具合により、おいしさが異なってくることになる。また、予熱工程における内鍋内の温度ムラもおいしさに関与する要素であり、予熱工程において内鍋内に温度ムラがあると、炊き上がったときに炊きムラが生じる可能性がある。
【0029】
予熱工程中の糖化酵素の働きにより、米のおいしさの一要素である糖が生成されるが、この糖化酵素が最もよく働く温度帯域は約40℃から60℃、特に、活性化する温度は55℃から60℃とされており、60℃を超えると酵素が失活するとされている。内鍋内の米の温度ムラが大きいと、内鍋内の場所によってこの温度帯域にとどまる時間が異なり、その結果、場所によって甘さが異なってしまう。また、60℃を超えてしまう場所も生じることがあるため、場所によって糖度が低い部分が生じ、全体としても糖度が低いご飯となってしまう場合があった。このように、予熱工程における温度ムラを極力抑えることが、内釜内の場所によらず糖化酵素が十分に働いて全体としておいしいご飯を炊くために重要であることがわかる。このため、予熱工程初期では比較的弱い火力でゆっくり時間をかけ、なるべく全体が均一になるように加熱している。
【0030】
図3は、図2に対し、内鍋内の別の部分の米の温度を破線で追加した一般の炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。ここでは一例として内鍋中央の底面から15mmの高さの米(以降中心下部と呼ぶ)の温度(中心下部温度t1)を実線で、上部の米面の中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度t2)を破線で示した。
予熱工程では比較的弱い火力でゆっくりと時間をかけて米の温度を60℃になるようにあたためているが、熱が伝わりにくい中心下部と、水の対流により温度上昇が早い中心上部で温度差が生じていることがわかる。また、これ以上入力電力を高めると、さらに中心下部温度t1と中心上部温度t2とで温度差が広がってしまう。
【0031】
このように、一般的な炊飯器においては、予熱工程において、調理物の中心上部と中心下部とで温度ムラが生じてしまっていた。
【0032】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯動作の詳細を説明する。
図4は、実施の形態1に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図5は、実施の形態1に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。以下、図4と図5を参照して実施の形態1の炊飯器100の炊飯動作を説明する。
【0033】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。なお、内鍋2内の米が水面上に露出していると、露出している米は吸水不十分となり炊きムラの原因となるため、内鍋2内にはすべての米が水に漬る程度の水を予め入れておく必要があるが、その量を厳密に限定するものではない。また、内鍋2内の米が水に浸るようにしつつ、貯水容器9で加熱する水の量をなるべく多くした方が好ましい。
【0034】
図5に示すように、炊飯工程は、まず予熱工程から始まる。
図4を参照して、予熱工程について詳細に説明する。
【0035】
予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S1)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図5には、図4のステップS1に相当する部分に「S1」の符号を記している。
【0036】
ステップS1を開始後、あるいはステップS1の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S2)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態1では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図5には、図4のステップS2に相当する部分に「S2」の符号を記している。
【0037】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて検知される貯水容器9内の水の温度が、所定温度θ1に達するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S3;No)。そして、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて貯水容器9内の水の温度が所定温度θ1に達したことを検出すると(S3;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9内の所定温度θ1の水を内鍋2内に供給し(S4)、貯水容器加熱手段11への電力投入を停止する(S5)。図5には、図4のステップS4に相当する部分に「S4」の符号を記している。なお、貯水容器9内の水を内鍋2内に供給するときの所定温度θ1は、予熱温度(例えば40℃から60℃)近傍の温度とするのが好ましい。例えば、所定温度θ1を予熱温度(例えば60℃)より高めの温度とし、貯水容器9内の水を投入した後の内鍋2内の温度が予熱温度により近づくようにしてもよい。
【0038】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続し(S6;No)、所定時間が経過すると(S6;Yes)、沸騰工程へ移行する。
【0039】
すなわち、本実施の形態1では、炊飯の必要水量のうち一部は、米とともに最初から内鍋2に入れられていて米とともに加熱され、残りの水は、所定温度θ1に昇温された後に予熱工程中に内鍋2に投入される。
【0040】
図5の説明に戻る。
沸騰工程では、制御手段5は、内鍋温度検知手段7、蓋部温度検知手段8の出力値に基づいて検出される内鍋2内の調理物の温度が沸騰温度となるよう、内鍋加熱手段6へ電力を投入する。沸騰工程の初期段階においては、炊飯器100で投入可能な最大電力を内鍋加熱手段6に投入し、高火力で加熱している。そして、内鍋2内の調理物が沸騰温度に達したことが検出されると、制御手段5は、調理物が沸騰温度を維持するよう内鍋加熱手段6への通電制御を行う。そして、内鍋2内の水が米にほぼ吸収されると、沸騰工程を終了する。
【0041】
沸騰工程の次に、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程では、制御手段5は、沸騰工程よりも低火力となるよう内鍋加熱手段6の通電制御を行い、所定時間が経過すると、蒸らし工程を終了する。これにより、炊飯工程が終了する。
【0042】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図6は、実施の形態1に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図6(a)として示し、本実施の形態1に係る前述の図5を図6(b)として示している。
【0043】
図6(b)に示すように、本実施の形態1によれば、予熱工程中に所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで(S4参照)、予熱工程における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図6(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態1に係る図6(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差は小さくなっている。これは、所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで、内鍋2内の米及び水が攪拌され、最初から内鍋2内に入っていた水がほぼ一様に温度上昇するためである。このように、本実施の形態1の炊飯器によれば、内鍋2内の場所によらず、予熱工程における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、内鍋2内の米の場所によらず、予熱工程における温度履歴がほぼ同一となり、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0044】
また、予熱工程中に、貯水容器9で予熱温度(例えば60℃)の水を作り混入させることで、内鍋2内の温度を速やかに予熱温度(例えば60℃)に上昇させることができる。このため、本実施の形態1の炊飯器によれば、図6に示すように、一般的な炊飯器よりも予熱工程の時間を短縮することができる(図6のX1参照)。したがって、炊飯工程全体の時間を短縮することができ、より速く炊飯できるようになる(図6のX2参照)。
【0045】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。また、貯水容器加熱手段11に電力を投入する予熱工程は、沸騰工程と比較して内鍋加熱手段6に投入する電力が小さく、炊飯器全体で投入可能な電力に余裕のある工程であるため、貯水容器加熱手段11に電力を投入しても内鍋加熱手段6による加熱を妨げることはない。
【0046】
実施の形態2.
前述の実施の形態1は、予熱工程の比較的初期に、貯水容器9で所定温度θ1(予熱温度、例えば60℃)に加熱した水を内鍋2に混入するものであった。本実施の形態2では、予熱工程の比較的後期に内鍋2に水を混入させる実施の形態を示す。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付している。
【0047】
図7は、実施の形態2に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図8は、実施の形態2に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図8では、内鍋2内の2箇所における炊飯物の温度を示しており、内鍋中央の底面から15mmの高さ(以降中心下部と呼ぶ)の米の温度(中心下部温度T1)を実線で、上部の米面中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度T2)を破線で示している。
【0048】
図7と図8を参照して実施の形態2の炊飯器100の予熱工程における炊飯動作を説明する。
【0049】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。
【0050】
図7に示すように、予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S11)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図8には、図7のステップS11に相当する部分に「S11」の符号を記している。
【0051】
ステップS11を開始後、あるいはステップS11の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S12)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態2では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図8には、図7のステップS12に相当する部分に「S12」の符号を記している。
【0052】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10が検知する貯水容器9の温度情報を取得し、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したと判断するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S13;No)。そして、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したことを検出すると(S13;Yes)、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への入力電力を低下させて貯水容器9内の水の温度を維持するように加熱制御する(S14)。
【0053】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続する(S15;No)。予熱工程を開始してから所定時間が経過すると(S15;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の水を内鍋2内に投入し(S16)、予熱工程を終了して沸騰工程へ移行する。図8には、図7のステップS16に相当する部分に「S16」の符号を記している。
【0054】
すなわち、本実施の形態2では、炊飯の必要水量のうち一部は、米とともに最初から内鍋2に入れられていて米とともに加熱され、残りの水は、沸騰温度に昇温された後に予熱工程中に内鍋2に投入される。
【0055】
次に、本実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図9は、実施の形態2に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図9(a)として示し、本実施の形態2に係る前述の図8を図9(b)として示している。
【0056】
図9(b)に示すように、本実施の形態2によれば、予熱工程終了前に沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで(S16参照)、沸騰工程時における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図9(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態2に係る図9(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差が小さくなっている。これは、沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで、内鍋2内の米及び水が攪拌され、最初から内鍋2内に入っていた予熱温度の水がほぼ一様に温度上昇するためである。このように、本実施の形態2によれば、内鍋2内の場所によらず、沸騰工程時における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、沸騰工程時における内鍋2内の米の温度履歴は、米の場所によらずほぼ同じとなり、炊飯ムラの改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0057】
また、米が十分に吸水する前に内鍋2内の水の温度を沸騰温度に上昇させると、米の表面が糊化して米は吸水しにくくなるとともに、米の糖化酵素が十分に働けなくなるため、良く吸水した甘みのあるおいしいご飯を炊くことができないが、本実施の形態2では給水工程の終了時に沸騰温度の水を供給するため、米の吸水を妨げることなくおいしいご飯を炊くことができる。
【0058】
また、予熱工程終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2内に混入させることで、内鍋2内のご飯を速やかに沸騰温度に一様に上昇させることができる。このため、本実施の形態2の炊飯器によれば、図9に示すように、一般的な炊飯器と比べて沸騰工程の時間を短縮することができる(図9のY1参照)。沸騰工程においては、家庭用電源コンセントの制限によって例えば100V15A以上の電力を投入できないが、比較的電力に余裕のある予熱工程時の電力を使用して沸騰させた貯水容器9の水を内鍋2に投入するので、内鍋2内を速やかに沸騰状態にすることができる。
【0059】
また、本実施の形態2の予熱工程開始時においては、炊飯に必要な水を、内鍋2と貯水容器9とに分けて収容してそれぞれを加熱するので、一般的な炊飯器と比べて内鍋2内の水を減らすことができる。このため、一般的な炊飯器と同一電力であっても、予熱工程開始から予熱温度(例えば60℃)まで上昇させる時間を短くすることができるので、予熱工程開始から貯水容器9からの水投入までの時間を短くすることが可能となり、予熱工程の時間を短縮できる(図示しない)。
【0060】
したがって、本実施の形態2の炊飯器によれば、一般的な炊飯器と比べて炊飯時間を短縮することができる(図9のY2参照)。
【0061】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。また、貯水容器加熱手段11に電力を投入する予熱工程は、沸騰工程と比較して内鍋加熱手段6に投入する電力が小さく、炊飯器全体で投入可能な電力に余裕のある工程であるため、貯水容器加熱手段11に電力を投入しても内鍋加熱手段6による加熱を妨げることはない。
【0062】
実施の形態3.
前述の実施の形態1は、予熱工程の比較的初期に、貯水容器9で所定温度θ1(予熱温度、例えば60℃)に加熱した水を内鍋2に混入するものであった。また、前述の実施の形態2は、予熱工程の終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2に混入するものであった。本実施の形態3では、これらを合わせて実施する実施の形態を示す。なお、本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付している。
【0063】
図10は、実施の形態3に係る炊飯器の予熱工程を説明するフローチャートである。
図11は、実施の形態3に係る炊飯器の炊飯物の温度と入力電力の状態を示した図である。図11では、内鍋2内の2箇所における炊飯物の温度を示しており、内鍋中央の底面から15mmの高さ(以降中心下部と呼ぶ)の米の温度(中心下部温度T1)を実線で、上部の米面中央から5mm埋没した部分(以降中心上部と呼ぶ)の米の温度(中心上部温度T2)を破線で示している。
【0064】
図10と図11を参照して実施の形態3の炊飯器100の予熱工程における炊飯動作を説明する。
【0065】
なお、予め内鍋2には、使用者によって所定の合数の米が入れられているものとする。また、当該合数の米を炊くのに必要な水は、内鍋2と、貯水容器9とに分けて入れられている。このとき、内鍋2には米の上面がひたひたになる程度の水が入れられ、残りの水が貯水容器9に入れられる。内鍋2と貯水容器9には、米の合数に対応させて、このような水位を示す水位目盛が設けられている。
【0066】
図10に示すように、予熱工程を開始すると、制御手段5は、内鍋加熱手段6への電力投入を開始する(S21)。より具体的には、制御手段5は、内鍋温度検知手段7と蓋部温度検知手段8の出力に基づいて、内鍋2内の調理物(米と水)の温度が所定の予熱温度(例えば40℃から60℃程度、ここでは60℃とする)を維持するように、内鍋加熱手段6への投入電力を制御して内鍋2の温度調節を行う。図11には、図10のステップS21に相当する部分に「S21」の符号を記している。
【0067】
ステップS21を開始後、あるいはステップS21の開始と同時に、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への電力投入を開始する(S22)。これにより、貯水容器9内の水が加熱され始める。ここで、内鍋加熱手段6と貯水容器加熱手段11への入力電力の合計は、家庭用電源コンセントの上限(1500W)を超えない範囲とする。本実施の形態3では、機器のばらつきを考慮して、余裕をみて例えば1350Wとする。図11には、図10のステップS22に相当する部分に「S22」の符号を記している。
【0068】
そして、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10の出力に基づいて検知される貯水容器9内の水の温度が、所定温度θ1(例えば60℃)に達するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S23;No)。そして、貯水容器9内の水の温度が所定温度θ1に達したことを検出すると(S23;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9内の所定温度θ1の水のうち所定量Q1を、内鍋2内に供給する(S24)。図11には、図10のステップS24に相当する部分に「S24」の符号を記している。
【0069】
なお、貯水容器9内の水を内鍋2内に投入するときの所定温度θ1は、60℃に限定されないが、予熱温度である40℃〜60℃近傍の温度とするのが好ましい。例えば、所定温度θ1を予熱温度(例えば60℃)より高めの温度とし、水を投入した後の内鍋2内の温度が60℃により近づくようにしてもよい。また、ステップS24にて内鍋2に投入する所定量Q1は、内鍋2内の水が攪拌され、米面がひたひた以上になる量であって、貯水容器9内の水の全量よりも少ない量であればよい。ここでは、貯水容器9の水のうち100ccをステップS21にて内鍋2に投入するものとする。なお、この数値は一例であってこの値に限定されるものではなく、炊飯する米の合数に応じて水の投入量を異ならせてもよい。
【0070】
さらに、制御手段5は、貯水容器温度検知手段10が検知する貯水容器9の温度情報を取得し、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したと判断するまで、貯水容器加熱手段11への電力投入を継続する(S25;No)。このときにも、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲とする。本実施の形態3では機器のばらつきを考慮して余裕をみて1350Wとする。そして、貯水容器9内の水の温度が沸騰温度に達したことを検出すると(S25;Yes)、制御手段5は、貯水容器加熱手段11への入力電力を低下させて貯水容器9内の水の温度を維持するように加熱制御する(S26)。
【0071】
そして、予熱工程開始から所定時間(予熱工程の時間)が経過するまで内鍋加熱手段6への加熱を継続する(S27;No)。予熱工程を開始してから所定時間が経過すると(S27;Yes)、制御手段5は、第一給水手段12を制御して貯水容器9内の残りの水量(所定量Q2)を内鍋2内に投入し(S28)、予熱工程を終了して沸騰工程へ移行する。図11には、図10のステップS28に相当する部分に「S28」の符号を記している。
【0072】
すなわち、本実施の形態3では、炊飯の必要水量のうち、一部は米とともに最初から内鍋2に入れて加熱し、残りの水のうち所定量Q1は所定温度θ1に昇温させて予熱工程中に内鍋2に投入し、さらに残りの所定量Q2は沸騰温度まで昇温させて予熱工程の終了時に内鍋2に投入している。
【0073】
次に、本実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する。ここでは、一般的な炊飯器と対比して説明する。図12は、実施の形態3に係る炊飯器の作用を説明する図であり、一般的な炊飯器に係る前述の図3を図12(a)として示し、本実施の形態3に係る前述の図11を図12(b)として示している。
【0074】
図12(b)に示すように、本実施の形態3によれば、予熱工程の初期に所定温度θ1の水を内鍋2内に投入することで、予熱工程における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図12(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態1に係る図12(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差は小さくなっている。このように、本実施の形態3の炊飯器によれば、内鍋2内の場所によらず、予熱工程における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、内鍋2内の米の場所によらず、予熱工程における温度履歴がほぼ同一となり、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0075】
さらに、本実施の形態3では、予熱工程終了前に沸騰温度の水を内鍋2内に投入することで(S24)、沸騰工程時における炊飯物の中心上部温度T2と、中心下部温度T1とのばらつきが改善されている。すなわち、図12(a)における中心上部温度t2と中心下部温度t1との温度差に対し、実施の形態2に係る図12(b)では、中心上部温度T2と中心下部温度T1との温度差が小さくなっている。このように、本実施の形態3によれば、内鍋2内の場所によらず、沸騰工程時における米の温度をほぼ同じ温度とすることができる。このため、沸騰工程時における内鍋2内の米の温度履歴は、米の場所によらずほぼ同じとなり、炊飯ムラの改善されたおいしいご飯を提供できるようになる。
【0076】
また、予熱工程中に、貯水容器9で予熱温度(例えば60℃)の水を作り混入させることで、内鍋2内の温度を速やかに予熱温度(例えば60℃)に上昇させることができる。このため、本実施の形態3の炊飯器によれば、図12に示すように、一般的な炊飯器よりも予熱工程の時間を短縮することができる。これにより、炊飯工程全体の時間も短縮することができ、より速く炊飯できるようになる。
また、予熱工程終了前に、貯水容器9で沸騰させた水を内鍋2内に混入することで、内鍋2内のご飯を速やかに沸騰温度に一様に上昇させることができる。このため、本実施の形態3の炊飯器によれば、図12に示すように、一般的な炊飯器よりも沸騰工程の時間を短縮することができる。沸騰工程においては、家庭用電源コンセントの制限によって例えば100V15A以上の電力を投入できないが、比較的電力に余裕のある予熱工程時の電力を使用して沸騰させた貯水容器9の水を内鍋2に投入するので、内鍋2内を速やかに沸騰状態にすることができる。
このように、予熱工程と沸騰工程の時間を短縮できるため、本実施の形態3によれば、炊飯工程全体の時間を短縮することができ、より速く炊飯することができるようになる(図12のZ1参照)。
【0077】
このように、本実施の形態3によれば、予熱工程と沸騰工程の両方において、内鍋2内における米の温度のばらつきを低減できるので、炊飯ムラが改善されたおいしいご飯を提供することができる。また、図9に示すように、一般的な炊飯器と比べて炊飯時間を短縮することができ、より速く炊飯することができる。
【0078】
また、貯水容器加熱手段11への入力電力は、炊飯器全体で1500Wを超えない範囲としているので、家庭用コンセントで本発明の炊飯を実現でき、おいしいご飯を速く提供できる。
【0079】
実施の形態4.
本実施の形態4では、炊飯中に内鍋内で発生する蒸気を水により復水して回収する蒸気回収容器を備え、実施の形態1〜3で示した予熱工程中に内鍋内に投入する水を、この蒸気回収容器から供給するようにした炊飯器を説明する。なお、本実施の形態4では、前述の実施の形態1と同一または相当する構成には同一の符号を付している。また、本実施の形態4は、前述の実施の形態1〜3と組み合わせることが可能である。
【0080】
図13は、実施の形態4に係る炊飯器のブロック図である。
図13において、炊飯器100は、内鍋2内から出る蒸気を回収する蒸気回収容器91と、蒸気回収容器91と内鍋2内とを連通させる蒸気導管92と、第二給水手段93とを有している。蒸気回収容器91は、所定量の水を溜めることのできる水タンクである。蒸気導管92は、内蓋3bに設けられた蒸気口3cに接続されており、内鍋2内で発生した蒸気を蒸気回収容器91に導く。図13では、蒸気回収容器91を炊飯器100の本体1とは別体として設けた図となっているが、蒸気回収容器91の配置を限定するものではない。例えば、本体1に、内鍋2とは別に蒸気回収容器91を収容する収容部を設け、この収容部に蒸気回収容器91を着脱可能に設置するようにしてもよい。また、蒸気導管92は、蒸気回収容器91と内鍋2内とを連通させるように構成されていればよく、蒸気導管92の具体的構成は限定しない。
【0081】
蒸気の回収について簡単に説明する。まず、炊飯開始前に、蒸気回収容器91内には蒸気を冷却するための冷却水として水Wを入れておく。炊飯工程が開始されると、主に沸騰工程時において内鍋2内から蒸気が発生する。この蒸気は、内蓋3bに設けられた蒸気口3cから内鍋2を出て、蒸気導管92よって蒸気回収容器91に導かれ、蒸気回収容器91内の水Wによって冷やされて水となり、蒸気回収容器91内に溜められる。このようにすることで、内鍋2から出る蒸気は、蒸気回収容器91内に回収され、炊飯器の外部にはほぼ排出されない仕組みとなっている。
【0082】
第二給水手段93は、蒸気回収容器91内の水を貯水容器9に供給するための装置であり、制御手段5によって駆動制御される。第二給水手段93は、少なくとも、蒸気回収容器91から取り出す水量を量る水量検出装置と、蒸気回収容器91から貯水容器9に水を移動させる給水装置とを備えている。水量検出装置としては、例えば、重量センサを用い、蒸気回収容器91の重量変化を検知することによって水量を検出するようにしてもよい。また、水量検出装置として、超音波式や光学式の水位センサを用い、蒸気回収容器91内の水Wの水位を検知することで水量を検出するようにしてもよい。また、給水装置を、例えば電動の水ポンプと、貯水容器9と蒸気回収容器91とを連通する配管とで構成し、制御手段5が水ポンプを駆動制御することにより蒸気回収容器91内の水を貯水容器9に供給するようにしてもよい。このような構成のほか、給水装置としては、所定水量の水を所定タイミングで貯水容器9に供給することのできる装置であれば任意のものを採用することができる。
【0083】
次に、実施の形態4に係る炊飯器の動作を説明する。
本実施の形態4の炊飯器は、貯水容器9に入れる水を、蒸気回収容器91内の水とする。すなわち、実施の形態1〜3では、炊飯開始前に予め使用者が貯水容器9に水を入れておくものとして説明したが、本実施の形態4では、炊飯開始前に使用者は貯水容器9に水を入れておく必要はなく、蒸気回収容器91にのみ水を入れておけばよい。なお、蒸気回収容器91には、炊飯時に発生する蒸気を復水するのに必要な水と、貯水容器9に供給するための水とを合わせた水の水位を示す目盛が設けられているのが好ましく、このようにすることで使用者は容易に必要な水量の水Wを蒸気回収容器91に入れることができる。
【0084】
そして、炊飯開始が指示されると、予熱工程を開始すると同時に、あるいは予熱工程開始のタイミングと前後して、制御手段5は、第二給水手段93を制御して蒸気回収容器91の水Wの一部を貯水容器9に供給する。貯水容器9に水を供給した後の動作については、前述の実施の形態1〜3と同様である。
【0085】
このように、本実施の形態4によれば、蒸気回収容器91の水Wを貯水容器9に供給するようにしたので、使用者は、炊飯開始前に蒸気回収容器91に水Wを入れておけばよい。蒸気回収容器91と貯水容器9の両方に水を入れておく必要がないので、炊飯開始前の使用者の手間を軽減することができる。
【0086】
実施の形態5.
前述の実施の形態1〜4では、炊飯開始前に、炊飯に必要な水の一部を使用者が内鍋2に入れておくものとして説明したが、本実施の形態5では、内鍋2内に水を入れるタイミングが前述の実施の形態1〜4と異なる。なお、本実施の形態5では、前述の実施の形態1と同一または相当する構成には、同一の符号を付している。
【0087】
図14は、実施の形態5に係る炊飯器のブロック図である。
本実施の形態5では、使用者は、炊飯前に内鍋2に炊飯したい合数の米のみを入れるようになっている。このため、前述の実施の形態1の内鍋2は、米の合数に対応した水位目盛が設けられているのが好ましいが、本実施の形態5では、内鍋2に水位目盛を設けない構成としてもよい。
【0088】
また、貯水容器9Aは、実施の形態1の貯水容器9と比べて貯水容量が大きい。これは、前述の実施の形態1〜4では、貯水容器9には炊飯に必要な水の一部が入れられる構成であったが、本実施の形態5の貯水容器9Aには、炊飯に必要な水のすべてが入れられるためである。
【0089】
このような炊飯器100にて炊飯を行う際には、使用者は炊飯準備として予め、内鍋2に炊飯したい合数の米を入れるとともに、米の合数に応じた水を貯水容器9Aに入れておく。貯水容器9Aには、米の合数に応じた水位を示す水位目盛が設けられているのが好ましい。
【0090】
炊飯器100の制御手段5は、炊飯を開始すると、予熱工程を開始する前に、まず、内鍋2内の米の量(合数)を検出する。米の量は、例えば、炊飯器100に内鍋2及びその内容物の重量を検出する重量センサを設けておき、この重量センサの検出値に基づいて量ることができる。そのほか、例えば、炊飯器100に米の合数を設定するためのボタン等の入力装置を設けておき、炊飯する際に使用者がこの入力装置を用いて米の合数を設定するようにしてもよい。
【0091】
次に、制御手段5は、第一給水手段12を制御して、貯水容器9A内の水を内鍋2に投入する。このとき内鍋2に投入する水の量は、米の上面がひたひたになる程度の水量となるように米の合数に応じて設定されている。この場合、第一給水手段12に、貯水容器9Aから供給する水量を量る水量検出装置を設けておく。水量検出装置としては、例えば、重量センサを用い、貯水容器9Aの重量変化を検知することによって水量を検出するようにしてもよい。また、水量検出装置として、超音波式や光学式の水位センサを用い、貯水容器9A内の水の水位を検知することで水量を検出するようにしてもよい。
【0092】
なお、米の合数によらず、同量の水を内鍋2に投入するようにしてもよい。この場合、何合の米を炊飯する場合であっても、炊飯器100の最大炊飯合数の米面がひたひたになる水量を投入するとよい。
【0093】
内鍋2への水の投入が終了すると、予熱工程を開始する。予熱工程以降の炊飯工程の動作については、前述の実施の形態1〜3のいずれかを用いることができる。
【0094】
このように、本実施の形態5の炊飯器では、炊飯準備段階では内鍋2に米のみを入れ、炊飯に必要な水は貯水容器9Aに入れておくようにしている。すなわち、米と水とを分けて炊飯準備をしておき、炊飯開始時に、米と水とを合わせるようにしている。米が水に長時間浸された状態が続くと、もしも雑菌が侵入していた場合には臭いが発生するためご飯のおいしさが損なわれる場合があったが、本実施の形態5のようにすることで、炊飯開始時に米と水を合わせるので、いつでもおいしいご飯を炊くことができる。
【0095】
特に、予約炊飯時は、長時間室温に、米が水に浸された状態が続くので、もしも雑菌が侵入していた場合、臭いが発生する可能性がさらに大きくなる。そこで、予約炊飯時に限定して本実施の形態5の炊飯を行ってもよい。このようにすることで、通常の炊飯時は、最初から米が水に浸されているので、吸水が促進され、おいしいご飯を炊くことができる。また、長時間米が水に浸された状態が続く予約炊飯時には、炊飯開始時に米と水を合わせるので、いつでもおいしいご飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 本体、2 内鍋、3 蓋体、3a 外蓋、3b 内蓋、3c 蒸気口、4 記憶手段、5 制御手段、6 内鍋加熱手段、7 内鍋温度検知手段、8 蓋部温度検知手段、9 貯水容器、9A 貯水容器、10 貯水容器温度検知手段、11 貯水容器加熱手段、12 第一給水手段、91 蒸気回収容器、92 蒸気導管、93 第二給水手段、100 炊飯器、T1 中心下部温度、T2 中心上部温度、t1 中心下部温度、t2 中心上部温度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋内の調理物または前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋内の調理物の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が沸騰温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記予熱工程の終了前に、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水の一部を前記内鍋内に供給し、
その後、前記貯水容器内の水の残りの一部が沸騰温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記予熱工程の終了前に、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記内鍋内で発生する蒸気を復水させるための冷却水を収容する蒸気回収容器と、
前記蒸気回収容器の水を前記貯水容器に供給する第二給水手段とを備え、
前記制御手段は、
前記予熱工程開始前に、
前記第二給水手段を制御して、前記蒸気回収容器内の水を前記貯水容器に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記炊飯工程の開始時に、前記第一給水手段を制御して、前記米を炊飯するのに必要な必要水量の一部を前記貯水容器内から前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御手段は、
予約炊飯における前記炊飯工程の開始時に、前記第一給水手段を制御して、前記米を炊飯するのに必要な必要水量の一部を前記貯水容器内から前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記炊飯器全体への投入電力が1500W(ワット)を超えない範囲で、前記貯水容器加熱手段に電力を投入する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項1】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋内の調理物または前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋内の調理物の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が沸騰温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記予熱工程の終了前に、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
調理物を収納する内鍋と、
前記内鍋を着脱自在に収納可能な炊飯器本体と、
前記内鍋を加熱する内鍋加熱手段と、
前記内鍋の温度を検出する調理物温度検出手段と、
予熱工程時に混入する水を貯える貯水容器と、
前記貯水容器内の水を加熱する貯水容器加熱手段と、
前記貯水容器内の水の温度を検出する貯水容器温度検出手段と、
前記貯水容器内の水を前記内鍋に供給する第一給水手段と、
前記調理物温度検出手段及び前記貯水容器温度検出手段の検出値に基づいて、前記内鍋加熱手段、前記貯水容器加熱手段、及び前記第一給水手段を駆動制御して、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予熱工程において、
前記内鍋に入れられた米と当該米を炊飯するのに必要な必要水量の一部が予熱温度となるよう、前記内鍋加熱手段を駆動するとともに、
前記貯水容器に入れられた前記必要水量の残りの水が予熱温度付近の所定温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記貯水容器内の水が前記予熱温度付近の所定温度に達すると、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水の一部を前記内鍋内に供給し、
その後、前記貯水容器内の水の残りの一部が沸騰温度となるよう、前記貯水容器加熱手段を駆動し、
前記予熱工程の終了前に、前記第一給水手段を制御して前記貯水容器内の水を前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記内鍋内で発生する蒸気を復水させるための冷却水を収容する蒸気回収容器と、
前記蒸気回収容器の水を前記貯水容器に供給する第二給水手段とを備え、
前記制御手段は、
前記予熱工程開始前に、
前記第二給水手段を制御して、前記蒸気回収容器内の水を前記貯水容器に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記炊飯工程の開始時に、前記第一給水手段を制御して、前記米を炊飯するのに必要な必要水量の一部を前記貯水容器内から前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御手段は、
予約炊飯における前記炊飯工程の開始時に、前記第一給水手段を制御して、前記米を炊飯するのに必要な必要水量の一部を前記貯水容器内から前記内鍋内に供給する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記炊飯器全体への投入電力が1500W(ワット)を超えない範囲で、前記貯水容器加熱手段に電力を投入する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−75095(P2013−75095A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217789(P2011−217789)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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