説明

炎症モジュレーターとしてのフェニル酢酸誘導体

炎症および免疫関連疾患および身体状態の治療に有用な、化合物、薬学的組成物、および方法を提供する。詳細には、本発明は、アトピー性疾患、炎症状態、および癌に関与するタンパク質の機能および/または発現を調節する化合物を提供する。本発明の化合物は、式Iのカルボン酸誘導体であり、式中R1は、アルキルまたはシクロアルキルであり;R2は、ハロ、アルキルI、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;およびXはクロロまたはフルオロである。



【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
G−タンパク質結合受容体(GPCR)は、生体防御機構に関与するものなど様々な信号伝達プロセスで重要な役割を果たす。感染症、外傷、腫瘍、および臓器移植に対する、ならびに疾患および身体状態(喘息、アレルギー、リウマチ様関節炎、および腫瘍症など)における免疫応答は、GPCR調節と関連付けられてきた。過剰なまたは誤った免疫応答は、多くの炎症性疾患および過敏性疾患の原因であり、そのまま放置すると、組織または器官の損傷、疼痛、および/または機能喪失をもたらす恐れがある。組織炎症はそうした疾患の発病に大きく関っており、疾患のなかで最も特徴的なのが喘息とアレルギー性疾患である。気道炎症および気道過敏性の根底にある機構は、他の組織(皮膚および内蔵など)のアレルギー性炎症の根底にあるものと類似している。
【0002】
プロスタグランジンは、脂質由来の炎症メディエーターであり、マクロファージ、T細胞、好酸球、好塩基球、および好中球を、末梢血から損傷組織または炎症組織へ、補充する。また、プロスタグランジンは、標的細胞の型に依存して、応答細胞の細胞内Ca2+動員、cAMP産生、血小板凝集、白血球凝集、T細胞増殖、リンパ球遊走、およびTh2細胞化学遊走、IL−1aおよびIL−2分泌、ならびに血管平滑筋および非血管平滑筋収縮を誘導または阻害することができる。プロスタグランジンは、発熱、様々なアレルギー性疾患、血管平滑筋および非血管平滑筋弛緩、痛覚、睡眠、血小板凝集、および生殖プロセスと関連付けられてきた。プロスタグランジンは、特定のGPCRと相互作用することでこの効果を発揮する。
【0003】
プロスタグランジンD(PGD)は、免疫誘発に際して、代表的には皮膚表面近く、粘膜、および血管で見つかる活性化肥満細胞から放出される、主要な炎症メディエーターである(Lewis et al.(1982)J.Immunol.129:1627−1631)。喘息およびアレルギー反応の間、PGDは大量に放出される。アレルギー性炎症の開始および持続におけるPGDの役割は、喘息のマウスモデルで十分に確立されている。例えば、喘息のマウスモデルで、PGD合成酵素によるin vivoでのPGD過剰産生が気道炎症を悪化させることが実証されている(Fujitani et al.(2002)J.Immunol.168:443−449)。
【0004】
PGD選択的受容体は、DPと命名されており、同定されている(Power et al.(1995)J.Biol.Chem.270:19495−19500)。ヒトでは、DPは平滑筋、血小板、小腸、および脳で発現し、肺上皮でのDP発現はアレルギー誘発により誘導される。受容体活性化は、cAMP産生および細胞内Ca2+動員を誘導し、血小板凝集と細胞遊走を阻害して様々な平滑筋の弛緩を誘導すると思われる。DPは主にGαタンパク質と結合する。
【0005】
OVA誘導喘息モデルにおいて顕著に、DP−/−マウスは、喘息症状の減少、例えば、好酸球の細胞浸潤の減少、気管支肺胞洗浄液中のリンパ球の減少、気管支肺胞洗浄液中のTh2サイトカインレベルの減少、およびアセチルコリンに対する気道の過敏性の低下を示した(Matsuoka et al.(2002)Science 287:2013−2019)。ヒトの喘息の特徴でもあり野生型マウスで観測される、肺組織での細胞浸潤の増加および気道上皮細胞による粘膜分泌の増加は、DP欠損マウスでは観測されなかった。
【0006】
最近では、さらに別のPGD選択的受容体(Th2細胞で発現する化学誘引物質受容体相同分子(chemoattractant receptor−homologous molecule expressed on Th2 cell)、即ちCRTH2と命名されている。)が同定されている(Hirai et al.(2001)J.Exp.Med.193(2):255−261)。この受容体は、以前はGPR44またはDL1Rと示されていた。ヒトCRTH2は、末梢血Tリンパ球の中でもTh2細胞で選択的に発現し、アレルギー性炎症と関連する細胞種(好酸球、好塩基球、およびTh2細胞など)で発現が多い。CRTH2活性化が細胞内Ca2+動員ならびにTh2細胞、好酸球、および好塩基球の浸潤を誘導することが示されている。
【0007】
タンパク質配列分析は、CRTH2にはDPとの明らかな相同性というものがなく、むしろ、N−ホルミルペプチド受容体(FPR)サブファミリーのメンバーと関連があることを示唆している(Nagata et al.(1999)J.Immunol.162:1278−1286)。DPとは対照的に、CRTH2は、Gαiタンパク質と主に結合することが示されている。
【0008】
こうした観測は、CRTH2とDPがそれぞれ独立してアレルギー性炎症の態様を調節するように機能する可能性を示唆する。
【0009】
喘息、アレルギー性疾患、および免疫疾患の発生が世界規模で増加していることは、こうした疾患を有効に治療または予防する新規治療が必要であることを強調する。CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体を調節する小分子の発見は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体が介在する生理プロセスの研究、ならびに喘息、アレルギー性疾患、および他の免疫疾患用治療薬の開発に有用である。このような望ましい活性を示す新規化合物が、本明細書に記載される。
【0010】
WO04/058164は、あるアリールスルホンアミドで置換したカルボン酸化合物を喘息およびアレルギー性炎症モジュレーターとして開示する。WO04/058164に開示される化合物のクラスから、臨床試験に進めるのに最も好ましい化合物としてAMG009が選択された。AMG009の構造を以下に示す。
【0011】
【化1】

Can J Physiol Pharmacol 1995;73:191に記載されるとおり、ヒツジ気道反応モデルで試験した場合、AMG009は、(1)抗原に誘導される遅発型気道反応(LAR)を阻害し、(2)カルバコールに対する気道過敏性(AHR)の抗原誘導型発生を遮断し、および(3)炎症細胞の肺(BAL)へのアレルゲン誘導型動員を遮断する(それぞれ図1、図2、および図3を参照)。
【0012】
AMG009を投与された健康なボランティアで肝臓ALT/ASTレベルの予期せぬ増加が観測されて、AMG009の開発は延期になった。肝機能の変化は、AMG009を用いた前臨床安全性試験からは予期されなかった。In vitroでの代謝研究により、AMG009が、代謝により活性化されて、タンパク質と共有結合付加体を形成する能力がある化学反応性中間体になり得ることが明らかになった。研究では、AMG009代謝の反応性代謝産物を生成する傾向を発揮させて、標準化法によりin vitroでのタンパク質との共有結合を評価した(Day,et al.,J.Pharmacol.Toxicol.Methods.,52,278−285(2005))。こうした研究は、[14C]放射活性AMG009等価物を、NADPH補因子の存在下、約50pmol等価物/mgタンパク質のレベルで、ラット肝臓ミクロソームおよびヒト肝臓ミクロソームとともに温置すると、等価物がタンパク質に共有結合することを示した。ミクロソーム中の[14C]AMG009とタンパク質の共有結合は、文献に報告されるとおり、ミクロソーム中の許容可能な共有結合についての標的カットオフ(50pmol等価物/mgタンパク質)と同一範囲であった(Evans,et al.Chem.Res.Toxicol.,17,3−16(2004))。
【0013】
タンパク質1mgあたりの50pmol薬物残留物等価物の標的共有結合数は、標的共有結合値であるが閾値ではない。50pmol薬物残留物等価物/mgタンパク質の数値は任意指定のものではなく、既知の肝臓毒を投与された動物での肝臓タンパク質に対する共有結合レベルについて文献を調査した結果によるものである(例えば、ブロモベンゼン(Monks,T.J.et al.,(1982)Life Sci.,30,841−848)、イソニアジド(Nelson,S.D.et al,(1978)J.Pharmacol.Exp.Ther.,206,574−585)、およびアセトアミノフェン(Matthews,A.M.et al,)(1997)Toxicol.Lett.,90,77−82)、こうした薬物が肝毒性を誘導する条件下(Evans,D.C.et al,(2004 Chem.Res.Toxicol.,17,3−16)。こうした薬物のタンパク質への共有結合値を測定したところ、このレベルは1000から2000pmol等価物/mg肝臓タンパク質という高さであった。従って、Merck Research Laboratoriesにより採用される共有結合標的(Evans,D.C.et al,(2004)Chem.Res.Toxicol.,17,3−16)は、こうした肝毒性薬モデルの多くで引き起こされるものの約20分の1未満である。
【0014】
当業者の多くは、現在、どのような薬物または薬物候補でも化学反応性代謝産物を望ましくない特徴として見ている(Baillie,T.A.(2007)Chem.Res.Toxicol.2007 Dec4 [印刷前の電子出版])。従って、薬物開発のゴールは、薬物候補の代謝活性化の不利益を排除するか、少なくとも最小限にすることであり、そうすることで、より安全な薬物の開発に成功する可能性が高まるかもしれない(Baillie,T.A.et al,(2001)Adv.Exp.Med.Biol.,500,45−51;Park,B.K.,et al(2005)Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol,45,177−202;Baillie,T.A.(2006)Chem.Res.Toxicol.,19,889−893;Doss,G.A.and Baillie,T.A.(2006).Drug Metab.Rev.,38,641−649;Kalgutkar,A.S.and Soglia,J.R.(2005)Expert Opin.Drug Metab.Toxicol,1,91−142)。
【0015】
薬学的化合物の臨床用量も重要な要因である。なぜなら、一日量が10mg未満であった薬物で、毒性を理由に市場から消えたものは極少数だからである(Uetrecht,J.P.(1999)Chem.Res.Toxicol.,12,387−395)。
【0016】
思いがけないことに、本発明の化合物は、DP効力の改善を示し、さらにWO04/058164に開示される最も類似した化合物、ならびにこのクラス内の最も好ましい化合物AMG009と比較してCRTH2とDP効力のバランスの改善を示す。この改善は、AMG009で使用される臨床用量よりも低い用量を可能にすると期待される。さらに、本発明の化合物とAMG009との構造上の違いはAMG009で判明した代謝部位での代謝を遮断することが予想され、このことがさらにAMG009で遭遇する共有結合の問題を回避する助けになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第04/058164号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Lewis et al.(1982)J.Immunol.129:1627−1631
【非特許文献2】Fujitani et al.(2002)J.Immunol.168:443−449
【非特許文献3】Power et al.(1995)J.Biol.Chem.270:19495−19500
【非特許文献4】Matsuoka et al.(2002)Science 287:2013−2019
【非特許文献5】Hirai et al.(2001)J.Exp.Med.193(2):255−261
【非特許文献6】Nagata et al.(1999)J.Immunol.162:1278−1286
【非特許文献7】Can J Physiol Pharmacol 1995;73:191
【非特許文献8】Day,et al.,J.Pharmacol.Toxicol.Methods.,52,278−285(2005)
【非特許文献9】Evans,et al.Chem.Res.Toxicol.,17,3−16(2004)
【非特許文献10】Monks,T.J.et al.,(1982)Life Sci.,30,841−848
【非特許文献11】Nelson,S.D.et al,(1978)J.Pharmacol.Exp.Ther.,206,574−585
【非特許文献12】Matthews,A.M.et al,(1997)Toxicol.Lett.,90,77−82
【非特許文献13】Evans,D.C.et al,(2004 Chem.Res.Toxicol.,17,3−16)
【非特許文献14】,T.A.(2007)Chem.Res.Toxicol.2007 Dec4
【非特許文献15】Baillie,T.A.et al,(2001)Adv.Exp.Med.Biol.,500,45−51
【非特許文献16】Park,B.K.,et al(2005)Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol,45,177−202
【非特許文献17】Baillie,T.A.(2006)Chem.Res.Toxicol.,19,889−893
【非特許文献18】Doss,G.A.and Baillie,T.A.(2006).Drug Metab.Rev.,38,641−649
【非特許文献19】Kalgutkar,A.S.and Soglia,J.R.(2005)Expert Opin.Drug Metab.Toxicol,1,91−142
【非特許文献20】Uetrecht,J.P.(1999)Chem.Res.Toxicol,12,387−395
【発明の概要】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、アレルギー性炎症プロセスに関連する身体状態および障害を治療または予防するのに有用な、化合物、薬学的組成物、および方法を提供する。詳細には、本発明は、喘息、アレルギー性疾患、炎症状態、および癌を治療または予防するのに有用な、化合物、薬学的組成物、および方法を提供する。
【0020】
本発明は、以下の式I:
【0021】
【化2】

式中
は、アルキルまたはシクロアルキルであり;
は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;および
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である、
の化合物およびこの塩に関する。
【0022】
本発明は、式Iの化合物、活性代謝産物、またはこの塩を、医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤とともに含む薬学的組成物も提供する。
【0023】
本発明は、喘息、アレルギー性鼻炎、COPD、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、発熱、敗血症、全身性紅斑性狼瘡、糖尿病、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、粥状動脈硬化、移植片拒絶、炎症性腸疾患、および癌の治療法または予防法も提供し、この方法は、この治療または予防を必要としている被検体に、式Iの化合物、活性代謝産物、またはこの塩を治療上有効量で投与することを含む。
【0024】
本発明はさらに、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節に反応した身体状態または障害の治療法または予防法も提供し、この方法は、この治療または予防を必要としている被検体に、式Iの化合物、活性代謝産物、またはこの塩を治療上有効量で投与することを含む。
【0025】
本発明はまた、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体が介在する身体状態または障害の治療法または予防法も提供し、この方法は、この治療または予防を必要としている被検体に、式Iの化合物、活性代謝産物、またはこの塩を治療上有効量で投与することを含む。
【0026】
本発明はまた、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節法も提供し、この方法は、細胞を式Iの化合物、活性代謝産物、またはこの塩と接触させることを含む。
【0027】
本発明はまた、式Iの化合物の製造方法、ならびに特許請求する方法で作られた化合物も提供する。
【0028】
本発明のこの他の目的、特徴、および利点は、以下の記載および特許請求の範囲から、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】喘息のヒツジ気道反応モデルでのAMG009(7.5mg/kgを1回用量で投与した場合)の効力を示す実例から得られたデータを示す。
【図2】喘息のヒツジ気道反応モデルでのAMG009(15mg/kgを1回用量で投与した場合)の効力を示す実例から得られたデータを示す。
【図3】喘息のヒツジ気道反応モデルでのAMG009(7.5mg/kgを複数回用量で投与した場合)の効力を示す実例から得られたデータを示す。
【図4】AMG009が様々な炎症細胞のヒツジ肺への動員を遮断するのに有効であったことを実証するさらなるヒツジモデルデータを示す。
【図5】被検体動物を0.625mg/mLの高用量でPGDエーロゾルで前処置した場合に実施例化合物14がもたらす用量依存性反応を示すモルモットモデルデータを示す。
【図6】気道狭窄のモルモットモデルにおけるAMG009と実施例化合物14の有効性を比較するデータを示す。
【図7】実施例化合物14多形体フォームIについて得られたX線粉末回折データを示す。
【図8】実施例化合物14多形体フォームII無水物について得られたX線粉末回折データを示す。
【図9】実施例化合物14多形体フォームIIIについて得られたX線粉末回折データを示す。
【図10】実施例化合物14多形体フォームIVについて得られたX線粉末回折データを示す。
【図11】実施例化合物14多形体フォームVについて得られたX線粉末回折データを示す。
【図12】実施例化合物14多形体フォームVIについて得られたX線粉末回折データを示す。
【図13】実施例化合物14多形体フォームIについて得られたDSC温度記録を示し、2回の熱転移を示す(183.41℃付近の発熱転移および203.19℃付近の吸熱転移)。
【図14】実施例化合物14多形体フォームII無水物について得られたDSC温度記録を示し、1回の熱転移を示す(203.21℃付近の吸熱転移)。
【図15】実施例化合物14多形体フォームIIIについて得られたDSC温度記録を示し、3回の熱転移を示す(約142.11℃での吸熱転移、174.05℃付近の発熱転移、および202.35℃付近の吸熱転移)。
【図16】実施例化合物14多形体フォームIVについて得られたDSC温度記録を示し、2回の熱転移を示す(約116.18℃での吸熱転移、および202.77℃付近の吸熱転移)。
【図17】実施例化合物14多形体フォームVについて得られたDSC温度記録を示し、2回の熱転移を示す(約131.45℃での吸熱転移、および202.22℃付近の吸熱転移)。
【図18】実施例化合物14多形体フォームVIについて得られたDSC温度記録を示し、2回の熱転移を示す(約141.77℃での吸熱転移、および202.07℃付近の吸熱転移)。
【0030】
本明細書で用いられるヒツジモデルおよびモルモットモデルは、Abraham,W.M.,Sheep Models of Allergic Bronchoconstriction)(in Allergy and Allergic Disease 2:1045 1977):Isenberg−Feig.H et al.,Animal Models of Allergic Asthma(in Current Allergy and Asthma Reports 2003,3:70−78);Abraham,W.M.,et al.Am J Respir Crit Care Med vol.159.pp.1205−1214,1999;Abraham,W.M.et al,Am J Respir Crit Care Med vol.169.pp.97−104,2004;and Jones,T.R.et al Can.J.Physiol.Pharmacol.73:191−201 1995.などの出版物に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
略号および定義
本明細書で使用される略号は、他に定義されないかぎり、従来どおりである。
【0032】
「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患および/またはこれに付随する症状を緩和するまたは無効にすること、および疾患の原因そのものを軽減するまたは撲滅させることを含むものとする。
【0033】
「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患および/またはこれに付随する症状の発現を遅らせるまたは妨げる方法、被検体が疾患にかからないようにする方法、または被検体が疾患にかかる危険性を下げる方法を示す。
【0034】
「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、またはその他臨床医により探索された、組織、系、動物、またはヒトの生物学的応答または医薬的応答を引き出すことができる、対象化合物の量を示す。「治療上有効量」という用語は、化合物が投与されたときに、治療される状態または疾患の1種以上の症状の進行を、防ぐかある度合いまで緩和するのに十分である化合物の量を含む。治療上有効量は、化合物、疾患およびこの重篤度、ならびに治療される哺乳類の年齢、体重などに依存して変化する。
【0035】
本明細書中、「被検体」は、哺乳類などの動物を含むものとして定義され、動物として霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な実施形態において、被検体はヒトである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「CRTH2」という用語は、in vitroまたはin vivoでPGDに対する細胞反応を介在する能力があるCRTH2タンパク質またはこの変異体を示す。CRTH2変異体は、天然のCRTH2と実質的に相同なタンパク質、即ち、自然にまたは不自然に生じるアミノ酸欠失、挿入、または置換が1つ以上生じたタンパク質を含む(例えば、CRTH2誘導体、相同体、および断片)。CRTH2変異体のアミノ酸配列は、好ましくは天然のCRTH2と少なくとも約80%同一であり、より好ましくは少なくとも約90%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも約95%同一である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「他のPGD受容体」、「別のPGD受容体」などの用語は、in vitroまたはin vivoでPGDに対する細胞反応を介在する能力がある、CRTH2以外のプロスタノイド受容体タンパク質、またはこの変異体を示す。別のPGD受容体は、PGD(例えば、DP)または他の1種以上の他のプロスタノイド(例えば、EP、EP、EP、およびEP、FP、IP、およびTP)に選択的であってもよい。他のPGD受容体の変異体は、対応する天然のCRTH2以外のプロスタノイド受容体と実質的に相同なタンパク質、即ち、自然にまたは不自然に生じるアミノ酸欠失、挿入、または置換が1つ以上生じたタンパク質を含む(例えば、別のPGD受容体の誘導体、相同体、および断片)。他のPGD受容体変異体のアミノ酸配列は、好ましくは対応する天然の他のPGD受容体と少なくとも約80%同一であり、より好ましくは少なくとも約90%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも約95%同一である。
【0038】
「調節する」、「調節」などの用語は、化合物がCRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の機能および/または発現を増加または減少させる能力を示し、このような機能として、転写調節活性および/またはタンパク質結合を挙げることができる。調節は、in vitroまたはin vivoで生じさせることが可能である。本明細書で使用される場合、調節は、直接または間接のいずれかによる、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体に関連した機能または特徴の阻害、アンタゴニズム、部分的アンタゴニズム、活性化、アゴニズム、もしくは部分的アゴニズム、および/または直接または間接のいずれかによる、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の発現の増加または減少を含む。好適な実施形態において、調節は直接行なわれる。インヒビターまたはアンタゴニストは、例えば、結合して部分的にまたは完全に、刺激遮断、減少、予防、阻害、活性化遅延、不活性化、脱感作、またはシグナル伝達下方制御する化合物である。アクチベーターまたはアゴニストは、例えば結合して、刺激、増加、開放、活性化、促進、活性化増強、活性化、感作、またはシグナル伝達上方制御する化合物である。化合物がCRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の機能を阻害する能力は、生化学アッセイ(例えば、結合アッセイ)、または細胞に基づくアッセイ(例えば、一過性形質転換アッセイ)で実証することができる。
【0039】
「CRTH2調節量」という用語は、本明細書に記載される、細胞に基づくアッセイ、生化学アッセイ、または動物モデルのいずれか1つで所望の効果をもたらすのに必要な化合物量を示す。代表的には、化合物のCRTH2調節量は、少なくとも、レポーター遺伝子の細胞に基づくアッセイで(未処理の対照と比較して)EC50を示す量となる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「CRTH2反応性身体状態または障害」、「CRTH2に反応した身体状態または障害」という用語、および関連する用語と語句は、不適切な、例えば、正常より低いか高いCRTH2活性を伴い、CRTH2調節に対し少なくとも部分的に反応するまたはCRTH2調節により影響を受ける、身体状態または障害を示す(例えば、CRTH2アンタゴニストまたはアゴニストが、少なくともある患者で患者の健康にある改善をもたらす)。不適切なCRTH2機能活性は、通常はCRTH2を発現しない細胞でのCRTH2発現、CRTH2発現の増加、または細胞内活性化度の増加(例えば、炎症および免疫関連疾患および障害を導く)、またはCRTH2発現の減少の結果として生じる可能性がある。CRTH2付随身体状態または障害は、CRTH2介在身体状態または障害を含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「CRTH2介在身体状態または障害」、「CRTH2が介在する身体状態または障害」という語句、および関連する語句と用語は、不適切な、例えば、正常より低いか高いCRTH2活性を特徴とする身体状態または障害を示す。不適切なCRTH2機能活性は、通常はCRTH2を発現しない細胞でのCRTH2発現、CRTH2発現の増加、または細胞内活性化度の増加(例えば、炎症および免疫関連疾患および障害を導く)、またはCRTH2発現の減少の結果として生じる可能性がある。CRTH2−介在身体状態または障害は、不適切なCRTH2機能活性により完全にまたは部分的に介在され得る。しかしながら、CRTH2介在身体状態または障害は、CRTH2の調節が根本の身体状態または障害にある効果をもたらすものである(例えば、CRTH2アンタゴニストまたはアゴニストが、少なくともある患者で患者の健康にある改善をもたらす)。
【0042】
「PGD受容体調節量」という用語、および関連する用語と語句は、本明細書に記載される、細胞に基づくアッセイ、生化学アッセイ、または動物モデルのいずれか1つで所望の効果をもたらすのに必要な化合物量を示す。代表的には、化合物のPGD受容体調節量は、少なくとも、レポーター遺伝子の細胞に基づくアッセイで(未処理の対照と比較して)EC50を示す量となる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「別のPGD受容体に反応する身体状態または障害」という用語、および関連する用語と語句は、別のPGD受容体の不適切な、例えば、正常より低いか高い活性を伴い、別のPGD受容体の調節に対し少なくとも部分的に反応するまたは別のPGD受容体の調節により影響を受ける、身体状態または障害を示す(例えば、別のPGD受容体アンタゴニストまたはアゴニストが、少なくともある患者で患者の健康にある改善をもたらす)。別のPGD受容体の不適切な機能活性は、通常は別のPGD受容体を発現しない細胞でのこの受容体の発現、別のPGD受容体発現の増加、または細胞内活性化度の増加(例えば、炎症および免疫関連疾患および障害を導く)、または別のPGD受容体発現の減少の結果として生じる可能性がある。別のPGD受容体付随身体状態または障害は、別のPGD受容体介在身体状態または障害を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「別のPGD受容体が介在する身体状態または障害」という語句、および関連する語句と用語は、別のPGD受容体の不適切な、例えば、正常より低いか高い活性を特徴とする身体状態または障害を示す。別のPGD受容体の不適切な機能活性は、通常は別のPGD受容体を発現しない細胞でのこの受容体の発現、別のPGD受容体発現の増加、または細胞内活性化度の増加(例えば、炎症および免疫関連疾患および障害を導く)、または別のPGD受容体発現の減少の結果として生じる可能性がある。CRTH2−介在身体状態または障害は、別のPGD受容体の不適切な機能活性により完全にまたは部分的に介在され得る。しかしながら、別のPGD受容体が介在する身体状態または障害は、別のPGD受容体の調節が根本の身体状態または障害にある効果をもたらすものである(例えば、別のPGD受容体アンタゴニストまたはアゴニストが、少なくともある患者で患者の健康にある改善をもたらす)。
【0045】
「アルキル」という用語は、他に指定がない限り、これ自体で、または別の置換基の一部として、完全に飽和した直鎖または分岐鎖、またはこれらの組合せを意味する。好適なアルキル基は、1から8個の炭素原子を有する(即ちC−C)。より好適なアルキル基は、1から6個の炭素原子を有する(即ちC−C)。アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、これらの同族体などが挙げられる。
【0046】
「ヘテロアルキル」という用語は、1個以上の炭素原子が窒素、酸素、および硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアルキル基を示す。
【0047】
「アルコキシ」および「ハロアルコキシ」という用語は、これらの従来どおりの意味で用いられ、分子のこれ自体以外の部分に酸素原子を介して結合したアルキル基およびハロアルキル基を示す。
【0048】
「シクロアルキル」という用語は、他に指定がない限り、これ自体で、または他の用語と組み合わせて、環状版の「アルキル」を表す。好適なシクロアルキル基は3から8個の炭素原子を有する(即ちC−C)。より好適なアルキル基は3から6個の炭素原子を有する(即ちC−C)。シクロアルキルの例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
【0049】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、他に指定がない限り、これ自体で、または別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに、例えば「ハロアルキル」という用語は、1から(2m’+1)の範囲の個数(m’はアルキル基中の全炭素原子数)のハロゲン原子で置換されたアルキルを含むものとし、ハロゲン原子は同一であることも異なっていることも可能である。例えば、「ハロ(C−C)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むものとする。従って、「ハロアルキル」という用語は、モノハロアルキル(1個のハロゲン原子で置換されたアルキル)およびポリハロアルキル(2から(2m’+1)の範囲の個数のハロゲン原子で置換されたアルキル)を含む。「ペルハロアルキル」という用語は、他に指定がない限り、(2m’+1)個のハロゲン原子で置換されたアルキルを意味し、m’はアルキル基中の全炭素原子数である。例えば、「ペルハロ(C−C)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、ペンタクロロエチル、1,1,1−トリフルオロ−2−ブロモ−2−クロロエチルなどを含むものとする。
【0050】
「アリール」という用語は、他に指定がない限り、ポリ不飽和の、代表的には芳香族の、炭化水素置換基を意味し、単環または複数の環(上限三環まで)が可能であり、これらの環は互いに縮合または共有結合している。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、およびSからなる群より選択されるヘテロ原子を1から4個含有するアリール基(またはアリール環)を示し、ヘテロアリールの窒素原子および硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子は場合により四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子のこれ自体以外の部分に結合することができる。アリール基およびヘテロアリール基の例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1H−インダゾール、カルバゾール、α−カルボリン、β−カルボリン、γ−カルボリン、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、および8−キノリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好ましくは、「アリール」という用語は、無置換または置換された、フェニルまたはナフチル基を示す。好ましくは、「ヘテロアリール」という用語は、無置換または置換された、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソキノリル、キノキサリニル、キノキサリニル、キノリル、またはキノリル基を示す。
【0052】
簡単には、「アリール」という用語は、他の用語と組み合わせて用いられる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記で定義されるとおりのアリール環およびヘテロアリール環両方を含む。従って、「アリールアルキル」という用語は、アリール基がアルキル基に結合したラジカル(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むものとし、こうしたラジカルとして、炭素原子(例えば、メチレン基)を、例えば、酸素原子で置換したアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)が挙げられる。
【0053】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)はそれぞれ、他に指定がない限り、示したラジカルの置換されたものおよび置換されてないもの両方の形を含むものとする。ラジカルそれぞれに好適な置換基を以下に示す。
【0054】
アルキルラジカル(ならびにアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと示される基)用の置換基は、以下:−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’−SONR’’R’’’、−NR’’COR’、−NH−C(NH)=NH、−NR’C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NR’、−S(O)R’、−SOR’、−SONR’R’’、−NR’’SOR、−CN、および−NO、からなる多様な群から、0から3個の範囲の個数で選択することができ、置換基が0、1、または2個の基が特に好ましい。R’、R’’、およびR’’’は、それぞれ独立して、水素、無置換(C−C)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリール、1から3個のハロゲンで置換されたアリール、無置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリール−(C−C)アルキル基を示す。R’とR’’が同じ窒素原子に結合している場合、これらは窒素原子と一緒になって五員、六員、または七員環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むものとする。代表的には、アルキルまたはヘテロアルキル基は、0から3個の置換基を有することができ、本発明では置換基が2個以下の基が好ましい。より好ましくは、アルキルまたはヘテロアルキルラジカルは、無置換であるか一置換である。さらに好ましくは、アルキルまたはヘテロアルキルラジカルは、無置換である。置換基についての上記の記載から、当業者は、「アルキル」という用語がトリハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)などの基を含むものとすることを理解する。
【0055】
アルキルラジカルに好適な置換基は、−OR’、=O、−NR’R’’、−SR’、ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’’COR’、−NR’−SONR’’R’’’、−S(O)R’、−SOR’、−SONR’R’’、−NR’’SOR、−CN、および−NOから選択され、R’およびR’’は上記で定義されるとおりである。さらに好適な置換基は、−OR’、=O、−NR’R’’、ハロゲン、−OC(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’’COR’、−NR’−SONR’’R’’’、−SOR’、−SONR’R’’、−NR’’SOR、−CN、および−NOから選択される。
【0056】
同様に、アリールおよびヘテロアリール基用の置換基も様々であり、以下:−ハロゲン、−OR’、−OC(O)R’、−NR’R’’、−SR’、−R’、−CN、−NO、−COR’、−CONR’R’’、−C(O)R’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NH−C(NH)=NH、−NR’C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NR’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−N、−CH(Ph)、ペルフルオロ(C−C)アルコキシ、およびペルフルオロ(C−C)アルキルから、0個から芳香環系の開放原子価(open valences)総数の範囲の個数で選択される。式中、R’、R’’およびR’’’は、独立して、水素、(C−C)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリールおよびヘテロアリール、(無置換アリール)−(C−C)アルキル、および(無置換アリール)オキシ−(C−C)アルキルから選択される。
【0057】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子にある2個の置換基は、式−T−C(O)−(CH−U−(式中、TおよびUは、独立して−NH−、−O−、−CH−、または単結合であり、qは0から2の整数である。)の置換基で場合により置き換えられてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子にある2個の置換基は、式−A−(CH−B−(式中、AおよびBは、独立して−CH−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、または単結合であり、rは1から3の整数である。)の置換基で場合により置き換えられてもよい。このようにして形成された新たな環の単結合のうち1つを、二重結合で場合により置き換えてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子にある2個の置換基は、式−(CH−X−(CH−(式中、sおよびtは、独立して0から3の整数であり、Xは−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−である。)の置換基で場合により置き換えられてもよい。−NR’−および−S(O)NR’−の置換基R’は、水素および無置換(C−C)アルキルから選択される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、およびケイ素(Si)を含むものとする。
【0059】
「遷移金属触媒」という用語は、本明細書で使用される場合、2つの構成要素、遷移金属源と配位子を含む。配位子は、遷移金属源と錯形成しているか、配位子は遷移金属源とともに独立して反応容器に導入するかのいずれかが可能である。遷移金属触媒の活性形は十分には特性決定されていない。従って、「遷移金属触媒」という用語は、本明細書で使用される場合、反応容器に導入されるとおりの、必要であればin situで活性形に変換される任意の触媒的遷移金属および/または触媒前駆体、ならびに反応中に析出する触媒の活性形を含むことを意図する。一般に、任意の遷移金属(即ち、周期表の3から12族またはランタノイド系列から選択されるもの)を用いて触媒を形成することができる。しかしながら、好適な実施形態において、金属は、遷移金属の番号の大きい方の族、好ましくは5から12族、より好ましくは7から11族から選択される。好適な遷移金属として、白金、パラジウム、鉄、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、および銅が挙げられる。より好適な遷移金属として、ニッケル、パラジウム、および銅が挙げられる。パラジウムが特に好適な遷移金属である。
【0060】
適した遷移金属触媒として、白金、パラジウム、ニッケル、および銅の、可溶性または不溶性錯体が挙げられる。適した錯体として、Pd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd(dba)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]、アリルパラジウム(II)クロリド[(η−CPdCl]、CI、CuI、Ni(acac)、NiCl[P(C、Ni(1,5−シクロオクタジエン)、Ni(1,10−フェナントロリン)、Ni(dppf)、NiCl(dppf)、NiCl(1−10−フェナントロリン)、Raneyニッケルなど(「acac」はアセチルアセトナートを表す)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「配位子」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばホスフィンおよびビホスフィン、アミン、ジアミン、イミン、アルシン、およびこれらの混成(ホスフィンとアミンの混成を含む。)のアルキルおよびアリール誘導体などのキレート配位子を含む。弱いまたは非求核性の安定化イオンが、対イオンの関与する望ましくない副反応を回避するのに好適である。好適な実施形態において、配位子は、1種以上のホスフィンまたはアミノホスフィン配位子を含む。ホスフィン配位子は、市販されているし、当業者に既知の方法により調製することもできる。ホスフィンは、一座ホスフィン配位子(トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン(phoshpine)、トリフェニルホスフィン(「PCy」)、トリ(o−トルイル)ホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト(phoshpite)、トリフェニルホスファイト、トリ(o−トルイル)ホスフィン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチル−9H−キサンテン(「キサントホス」)、t−ブチル2−ジ−tertブチルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(「t−Bu−X−Phos」)など)、または二座ホスフィン(phoshine)配位子(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(binapthyl)(BINAP)、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジ(dic)イソプロピルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)ブタン、2,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ペンタン(pentate)など)、またはOrganic Letters 2000,Vol.2,No.8,pp.1101−1104、およびJournal of the American Chemical Society 2002,Vol.124,pp.6043−6048に開示されるものなどの配位子、または当業者の化学合成の知見内の同様な類似体が可能である。好適な配位子として、Xanthpos、PCy、t−Bu−X−Phosなどが挙げられる。
【0062】
適した配位子としてさらに、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(2−メトキシフェニル)−1H−インドール、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(2−メトキシフェニル)−1H−ピロール、1−(2−メトキシフェニル)−2−メチル−1H−ピロール、5−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1−(1,3,5−トリフェニル−1H−ピラゾール−4−イル)−1H−ピラゾールなどのヘテロアリールホスフィン、および同様な類似体が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「塩基」という用語は、フッ化物、アミン、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、アルコキシド、金属アミド、およびカルボアニオンを含む。好適な塩基として、炭酸塩(特に炭酸セシウム)およびリン酸塩(特にリン酸カリウム)が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「酸」という用語は、酢酸、塩酸、フッ化水素、硫酸、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸(trifilic acid)、トリフルオロ酢酸(「TFA」)などの水素供与体である化合物を示す。
【0065】
「還元体」という用語は、C−O結合を開裂させHを送達する還元電位を有する化合物を包含することを意図する。「還元体」という用語は、ボラン、ホウ化水素、有機シラン、有機ゲルマン、有機スタンナン、ホスファイト、ヒポホスファイト、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、重亜硫酸塩、ハイドロスルファイト、ギ酸塩を含む。この用語は電気化学的還元を意図する。
【0066】
「金属ヨウ化物塩」という用語は、ヨードアニオン(I−1)と金属カチオンの化学量論的組合せを含む塩を示すことを意図し、金属はアルカリまたはアルカリ土類いずれかのファミリーから選択される。好適な金属ヨウ化物塩として、ヨウ化ナトリウムが挙げられる。
【0067】
「上昇した温度」は、25℃を超える温度を示す。
【0068】
「不活性雰囲気」は、加圧下で反応容器に供給される窒素下で実行される反応条件を示す。
【0069】
「DSC」または「示差走査熱量測定」を用いて得られたデータの参照は、当業者により一般に許容可能と見なされる標準条件下、毎分10℃の加熱速度を用いて得られたDSC測定を示す。
【0070】
DSC実験で観測される「熱転移」は、吸熱転移および発熱転移の両方を含む。
【0071】
粉末X線回折分光測定から得られる「2θ」値の参照は、当業者により一般に許容可能と見なされる標準条件下、線源としてCu−Kα線を用いて得られる値を示す。
【0072】
「約」という用語は、「℃」と組み合わせて用いられる場合、誤差±0.25を持たせることを意図する。「約」という用語は、粉末X線回折パターンの2θ値と組み合わせて用いられる場合、誤差±0.1を持たせることを意図する。
【0073】
「医薬的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載される化合物で見出される特定の置換基に依存して、比較的無毒の酸または塩基で調製される活性化合物の塩を含むものとする。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、無溶媒または適した不活性溶媒中のいずれかで、中性形であるこのような化合物を所望の十分量の塩基と接触させることにより、塩基付加塩を得ることができる。医薬的に許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または同様な塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、無溶媒または適した不活性溶媒中のいずれかで、中性形であるこのような化合物を所望の十分量の酸と接触させることにより、酸付加塩を得ることができる。医薬的に許容される酸付加塩の例として、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素(monohydrogencarbonic)、リン酸、リン酸水素(monohydrogenphosphoric)、リン酸二水素(dihydrogenphosphoric)、硫酸、硫酸水素(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸など)に由来するもの、ならびに比較的無毒性の有機酸(酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルイルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)に由来する塩が挙げられる。アルギン酸塩(arginate)などのアミノ酸塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。本発明のある特定の化合物は、塩基性と酸性の両方の官能基を含有し、これにより化合物は塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも変換することができる。
【0074】
中性形である化合物は、従来様式で、塩を塩基または酸と接触させ親化合物を単離することにより再生させることができる。親の形の化合物は、ある物性(極性溶媒への溶解性など)について様々な塩の形の化合物と異なっているが、その他は、本発明の目的について塩は親の形の化合物と等価である。
【0075】
塩の形のものに加えて、本発明はプロドラッグの形である化合物を提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を起こして本発明の化合物を与える化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境中、化学的または生化学的方法により本発明の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、経皮パッチリザーバー中に、適した酵素または化学試薬とともに配置すると、ゆっくりと本発明の化合物に変換され得る。プロドラッグは有用であることが多い。なぜなら、状況によっては、プロドラッグの方が親薬物よりも投与しやすいからである。例えば、プロドラッグは経口投与で生体利用可能であるが、親薬物はそうではないことがある。プロドラッグは、親薬物に勝る薬学的組成物中での安定性の改善も有することがある。広範なプロドラッグ誘導体(プロドラッグの加水分解による開裂または酸化による活性化に依存するものなど)が当分野で既知である。プロドラッグの限定ではなく例として、エステル(「プロドラッグ」)として投与される本発明の化合物が挙げられる。エステルとして投与されるが代謝により加水分解されて活性実体であるカルボン酸になる。さらなる例として、本発明の化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0076】
本発明のある化合物は、非溶媒和形で存在することも、水和形をはじめとする溶媒和形で存在することも可能である。一般に、溶媒和形は非溶媒和形と等価であり、本発明の範囲に包含するものとする。本発明のある化合物は、多結晶で存在することも、非晶質形で存在することも可能である。一般に、物理学的形状は全て本発明が意図する用途について等価であり、本発明の範囲内にあるものとする。
【0077】
本発明のある化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有する。ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、および個々の異性体は、全て本発明の範囲内に包含するものとする。こうした異性体は、従来方法により分離されるか不斉合成されて、「光学上純粋な」、即ち実質的に他の異性体を含まない異性体を与えることができる。
【0078】
本発明の化合物は、この化合物を構成する原子の1個以上について不自然な割合の同位体原子を含有することもできる。例えば、化合物は、放射性同位体(例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)など)で放射標識することができる。放射標識された化合物は、治療剤または予防剤として有用である、例えば、癌治療薬、調査試薬(例えば、CRTH2アッセイ試薬)、および診断剤(例えば、in vivo画像形成剤)である。本発明の化合物の同位体変異体は全て、放射性であるかないかに関らず、本発明の範囲内に包含するものとする。
【0079】
発明の実施形態
CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体を調節する化合物クラスが発見された。生物学的環境(例えば、細胞型、宿主の病状など)に依存して、これらの化合物は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の作用(例えば、リガンド結合)を活性化または阻害することができる。CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体を活性化または阻害することにより、化合物は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節に反応する、および/またはCRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体が介在する疾患および身体状態を調節する能力がある治療薬としての用途を見出す。上記のとおり、このような疾患および身体状態の例として、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、発熱、敗血症、全身性紅斑性狼瘡、糖尿病、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、粥状動脈硬化、移植片拒絶、炎症性腸疾患、および癌が挙げられる。さらに、化合物は、こうした疾患および障害(例えば、循環器疾患)の合併症の治療および/または予防に有用である。
【0080】
本発明の化合物は、CRTH2と相互作用することによりこの効果を発揮すると思われるが、化合物が作用するこの機構は、本発明を限定する実施形態ではない。例えば、本発明の化合物は、CRTH2以外のPGD受容体サブタイプ(例えば、DP受容体)および/または他のプロスタノイド受容体(例えば、トロンボキサンA(TXA)受容体)と相互作用することができる。実際、上記で触れたように、本発明は、具体的には、CRTH2以外のPGD受容体1種以上を調節するための、開示される化合物の使用を意図する。
【0081】
本発明が意図する化合物として、本明細書で提供される例示化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
化合物
1つの態様において、本発明は、以下の式(I):
【0083】
【化3】

式中
は、アルキルまたはシクロアルキルであり;
は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;および
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である、
の化合物およびこの塩を提供する。
【0084】
式Iの範囲内の好適な化合物として、Xがクロロである化合物が挙げられる。
【0085】
式Iの範囲内の好適な化合物としてさらに、Rがアルキル、(より好ましくはC−Cアルキル)(特に好ましくはt−ブチル)である化合物が挙げられる。
【0086】
式Iの範囲内の好適な化合物としてさらに、Rがシクロアルキル、(より好ましくはC−Cシクロアルキル)(特に好ましくはシクロプロピル)である化合物が挙げられる。
【0087】
式Iの範囲内の好適な化合物として、以下:
【0088】
【化4】


の化合物およびこれらの塩が挙げられる。
【0089】
化合物の調製
本明細書で提供される化合物の合成経路は、実施例に記載される。当業者は、合成経路を修飾して異なる出発物質を用いることおよび/または所望の変換を達成するのに試薬を変更することができることを理解する。さらに、当業者は、調製する化合物によっては保護基が必要になることもあると認識し、そのために選択した保護基と適合する条件を知っている。従って、本明細書に記載される方法および試薬は全て非制限的実施形態として表現される。
【0090】
本発明は、以下の式IIの化合物:
【0091】
【化5】

式中
はt−ブチルであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり(好適なR基は式IでR基について記載したものと同じである。);
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である;
の製造方法であって、
a)遷移金属触媒;および
b)塩基;
の存在下、式Aの化合物:
【0092】
【化6】

式中、Rは、クロロ、ブロモ、ヨード、−OS(O)アルキル、または−OS(O)アリールである;
を、式Bの化合物:
【0093】
【化7】

と接触させて、式Cの化合物:
【0094】
【化8】

を形成する工程を含む、方法を含む。
【0095】
本発明はさらに、酸の存在下、式Cの化合物をさらに、式Dの化合物:
R’−O−C(=O)−アルキル D
と接触させて、式Eの化合物:
【0096】
【化9】

を形成し、式Eの化合物を続けて加水分解して式IIの化合物を形成する方法を含む。
【0097】
本発明はさらに、塩基の存在下、式Fの化合物:
【0098】
【化10】

を、式Gの化合物:
【0099】
【化11】

式中、RはハロゲンまたはOTsである;
と接触させて、式Aの化合物を調製する方法を含む。
【0100】
本発明はさらに、
a)遷移金属触媒;および
b)塩基;
の存在下、式Hの化合物:
【0101】
【化12】

を、R−BY、およびR−M−X
式中、Yは、−(OR)、−F、またはRであり;
Rは独立して、H、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであるか、
または2つのR基が一緒になってピナコールもしくはカテコールを形成し;
R’は、アルキルであるか、2つのR’基が一緒になって9−ボラビシクロノナンを形成し(9−BBN);
Mは、ZnまたはMgであり;
は、Cl、Br、またはIである;
から選択される化合物と接触させて、式Jの化合物:
【0102】
【化13】

を形成する工程を含む方法により、式Bの化合物を調製する方法を含む。
【0103】
−BYおよびR−M−Xの好適な例として、RZnCl、RZnBr、RZnI、RMgCl、RMgBr、RMgI、RB(OH)、RB(ピナコール)、RB(カテコール)、RB(OiPr)、RBFK、およびR−9−BBN)が挙げられる。
【0104】
本発明はさらに、式Kの化合物:
【0105】
【化14】

式中、Rは、CN、−C(=O)OH、または−C(=O)O−アルキルである、
を、
(1)強酸の存在下でヨウ化水素水溶液または金属ヨウ化物塩と;または
(2)酸の存在下で還元体と、
のいずれかと接触させることを含む方法により、式Fの化合物を調製する方法を含む。
【0106】
好適な反応条件は、上昇した温度と不活性雰囲気の使用を含む。
【0107】
中間体
本発明はさらに、式IIの化合物を作るのに有用な式C:
【0108】
【化15】

の新規中間体を含む。
【0109】
組成物
別の態様において、本発明は、本発明の化合物1種以上および医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、薬学的用途に適した薬学的組成物を提供する。
【0110】
「組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、指定した成分(示されている場合には、指定した量で)を含む製品、ならびに指定した量の指定した成分の組合せから、直接または間接的に得られる任意の製品を包含することを意図する。「医薬的に許容される」により、担体または賦形剤が配合物の他の成分と適合性があり、この受容者に有害ではないことを意味する。
【0111】
配合物は、本発明の化合物(本明細書中、活性成分と示す)の薬物動態に関する性質(例えば、経口生体利用能、膜透過性)1種以上を改善することができる。
【0112】
本発明の化合物を投与するための薬学的組成物は、簡便なように、単位剤形とすることができ、当分野で周知である方法の任意のものにより調製することができる。方法は全て、活性成分を1種以上の修飾成分を構成する担体と結び付ける工程を含む。一般に、薬学的組成物は、活性成分を液体担体または微粉固体担体またはこの両方と均一および密接に結び付け、それから必要であれば生成物を成形して所望の配合物にすることにより調製される。薬学的組成物において、活性対象化合物は、疾患のプロセスまたは状態に所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。
【0113】
活性成分を含有する薬学的組成物は、経口で用いるのに適した形(例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳濁液、硬質もしくは軟質カプセル剤、またはシロップもしくはエリキシル剤)にすることができる。経口用組成物は、当分野で既知である、薬学的組成物を製造する任意の方法に従って調製することができる。薬学的に洗練されて口当たりも良い製剤を提供する目的で、このような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤から選択される作用剤を1種以上含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した他の無毒性の医薬的に許容される賦形剤に混合された活性成分を含有する。そうした賦形剤として、例えば、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなど);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸など);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア・ゴム)、および潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなど)が可能である。錠剤は、被覆されていなくてもよいし、既知の技法により被覆されて胃腸管での分解吸収を遅らせ、これにより長期にわたる作用の持続をもたらしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの遅延材料を用いることができる。錠剤は、U.S.Patent No.4,256,108、U.S.Patent No.4,166,452、およびU.S.Patent No.4,265,874に記載される技法により被覆されてもよく、これにより放出制御浸透圧性治療用錠剤を形成する。
【0114】
経口用配合物は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)と混合されている硬質ゼラチンカプセル剤として存在してもよく、活性成分が水または油性媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油など)と混合されている軟質ゼラチンカプセル剤として存在してもよい。
【0115】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤に混合された活性成分を含有する。このような賦形剤とは、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴム、およびアカシア・ゴムなど);分散剤または湿潤剤、これは、天然のホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸のヘキシトール部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸のヘキシトール無水物部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート)が可能である。水性懸濁液は、1種以上の保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、もしくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルなど)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、および1種以上の甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど)も含有することができる。
【0116】
油性懸濁液は、活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油)に、または鉱物油(流動パラフィンなど)に懸濁させることにより、配合することができる。油性懸濁液は、増粘剤(例えば、ミツロウ、硬質パラフィン、またはセチルアルコール)を含有することができる。上記のような甘味剤、および香味剤を加えて、口当たりのよい経口製剤を提供することができる。こうした組成物は、酸化防止剤(アスコルビン酸など)の添加により保存することができる。
【0117】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤、および1種以上の保存料に混合された活性成分を提供する。適した分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤は、すでに上記に記載したもので例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、香味剤、および着色剤も存在することができる。
【0118】
本発明の薬学的組成物は、水中油乳濁液の形にもできる。油相は、植物油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)、または鉱物油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの混合物が可能である。適した乳化剤は、天然ゴム(例えば、アカシア・ゴムまたはトラガカント・ゴム)、天然ホスファチド(例えば、大豆、レシチン)、および脂肪酸とヘキシトール無水物によるエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレアート)、および前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が可能である。乳濁液は、甘味剤および香味剤も含有することができる。
【0119】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロース)と配合することができる。このような配合物は、粘滑剤、保存料および香味剤および着色剤も含有することができる。
【0120】
薬学的組成物は、水性または油性(oleagenous)の滅菌注射用懸濁液の形にもできる。この懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の技術に従って配合することができ、分散剤または湿潤剤および懸濁剤は上記に記載されている。滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口で許容可能な希釈剤または溶媒に加えた滅菌注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)にもできる。許容可能なビヒクルおよび溶媒の中で用いることができるものは、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌した不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の混合不揮発性油を用いることができる。また、脂肪酸(オレイン酸など)も、注射液の製造へ使用できる。
【0121】
薬学的組成物は、薬物の直腸投与用坐剤の形で投与することもできる。こうした組成物は、薬物を適した無刺激性賦形剤と混合することで調製でき、この賦形剤は常温では固体であるが直腸温度では液体となるもので、従って直腸で溶融して薬物を放出する。このような材料は、カカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0122】
局所的使用については、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、または懸濁液などが用いられる。本明細書で使用される場合、局所的塗布は、洗口液およびうがい薬の使用も含むものとする。
【0123】
本発明の薬学的組成物および方法は、本明細書に記載されるとおり、喘息、アレルギー性疾患、炎症状態、および癌、およびこれらに関連した病理(例えば、循環器疾患)の治療に有用なその他の治療活性化合物、または他のアジュバントをさらに含有することができる。多くの場合、本発明の化合物および代替作用剤を含む組成物は、投与されると、相加効果または相乗効果を示す。
【0124】
使用法
さらに別の態様において、本発明は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体と関連する疾患または身体状態を有する被検体に、本発明の化合物または組成物を治療上有効量で投与することによる、このような疾患または身体状態の治療法または予防法を提供する。実施形態の群の1つにおいて、ヒトまたは他の種の慢性疾患をはじめとする疾患および身体状態を、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体のモジュレーター、またはアンタゴニストで治療することができる。こうした疾患および身体状態として、(1)炎症性またはアレルギー性疾患(全身性アナフィラキシーおよび過敏性疾患、COPD、アトピー性皮膚炎、じんましん、薬物アレルギー、虫刺されのアレルギー、食物アレルギー(セリアック病などを含む。)、および肥満細胞症など)、(2)炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎、および腸炎など)、(3)血管炎、ベーチェット病、(4)乾癬および炎症性皮膚疾患(皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんましん、ウイルス性皮膚病変(ヒトパピローマウイルス、HTV、またはRLV感染に由来するものなど)、細菌性病変、真菌性病変、およびその他寄生虫性皮膚病変、および皮膚エリテマトーデスなど)、(5)喘息および呼吸器アレルギー性疾患(アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、中耳炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患など)、(6)自己免疫疾患(関節炎(リウマチ性および乾癬性を含む。)、全身性紅斑性狼瘡、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、グレーブス病、糸球体腎炎など)、(7)移植片拒絶(同種移植片拒絶および移植片対宿主病を含む。)(例えば、皮膚移植片拒絶、実質臓器移植片拒絶、骨髄移植片拒絶など)、(8)発熱、(9)心血管障害(急性心不全、低血圧、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心筋症、うっ血性心不全、粥状動脈硬化、冠動脈疾患、再狭窄、および血管狭窄など)、(10)脳血管障害(外傷性脳損傷、脳卒中、虚血性再灌流傷害、および動脈瘤など)、(11)乳癌、皮膚癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、肺癌、肝臓癌、喉頭癌、口腔癌、結腸癌、および胃腸管癌(例えば、食道、胃、膵臓の癌)、脳癌、甲状腺癌、血液癌、およびリンパ系癌、(12)線維症、結合組織疾患、および類肉腫症、(13)性器および生殖の身体状態(勃起不全など)、(14)胃腸障害(胃炎、潰瘍、悪心、膵炎、および嘔吐など)、(15)神経障害(アルツハイマー病など)、(16)睡眠障害(不眠、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、およびピックウィック症候群(Pickwick Syndrome)など)、(17)疼痛、(18)腎障害、(19)眼障害(緑内障など)、および(20)感染症(HIVなど)が挙げられる。
【0125】
さらに別の態様において、本発明は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節に反応する疾患または障害の治療法または予防法を提供し、この方法は、このような疾患または障害を有する被検体に、対象の化合物または組成物1種以上を治療上有効量で投与することを含む。
【0126】
さらに別の態様において、本発明は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体が介在する疾患または障害の治療法または予防法を提供し、この方法は、このような状態または疾患を有する被検体に、対象の化合物または組成物1種以上を治療上有効量で投与することを含む。
【0127】
さらに別の態様において、本発明は、CRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節法を提供し、この方法は、対象の化合物または組成物1種以上を細胞に接触させることを含む。
【0128】
治療しようとする疾患および被検体の状態に依存して、本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射もしくは輸液、皮下注射、または移植)、吸入、経鼻、経膣、直腸、舌下、または局所的(例えば、経皮、局所)投与経路により投与することができ、単独または組み合わせて、各投与経路に適切な従来の無毒性の医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する適した用量単位の配合物に配合することができる。本発明はまた、規定した期間にわたって活性成分を放出するデポ配合物で本発明の化合物を投与することを意図する。
【0129】
喘息、COPD、アレルギー性鼻炎、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、発熱、敗血症、全身性紅斑性狼瘡、糖尿病、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、粥状動脈硬化、移植片拒絶、炎症性腸疾患、癌、またはその他のCRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体が関連する身体状態または障害の治療または予防において、適切な用量レベルは、通常、1日あたり患者の体重1kgあたり約0.001から100mgであり、この量を一用量または複数用量で投与することができる。好ましくは、用量レベルは、1日あたり約0.01から約25mg/kg、より好ましくは1日あたり約0.05から約10mg/kgである。適した用量レベルは、1日あたり約0.01から25mg/kg、1日あたり約0.05から10mg/kg、または1日あたり約0.1から5mg/kgが可能である。この範囲内において、用量は、1日あたり0.005から0.05、0.05から0.5、または0.5から5.0mg/kgが可能である。経口投与については、治療しようとする患者に対して用量を症状に合わせて調節するため、組成物は好ましくは活性成分1.0から1000mg、特に活性成分1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、および1000.0mgを含有する錠剤の形で提供される。化合物は、1日あたり1から4回、好ましくは1日あたり1回または2回のレジメンで投与することができる。
【0130】
しかしながら、任意の特定の患者に対する特異的用量レベルおよび投薬頻度は様々であり、様々な要因に依存することが理解される。このような要因として、用いた特定の化合物の活性、この化合物の作用の代謝安定性および長さ、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排出速度、薬物の組合せ、特定の身体状態の重篤度、および治療を受けている宿主が挙げられる。
【0131】
本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または身体状態の治療、予防、抑制、または改善に有用な他の作用剤と組み合わせること、または組み合わせて用いることが可能であり、このような疾患または身体状態として、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、乾癬、アトピー性皮膚炎、発熱、敗血症、全身性紅斑性狼瘡、糖尿病、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、粥状動脈硬化、移植片拒絶、炎症性腸疾患、癌、および上記の病理が挙げられる。
【0132】
このような他の作用剤、または薬物は、これに対して通常用いられる経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは続いて、投与することができる。本発明の化合物が他の薬物1種以上と同時に用いられる場合、本発明の化合物に加えてこのような他の作用剤を含有する薬学的組成物が好適である。従って、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物に加えて1種以上の他の活性成分または治療薬も含有するものを含む。
【0133】
本発明の化合物と組み合わせることができ、別々にまたは同一薬学的組成物中のいずれかで投与される他の治療薬の例として、(a)VLA−4アンタゴニスト;(b)コルチコステロイド(ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(prenisolone)、デキサメタゾン、フルチカゾン、およびヒドロコルチゾンなど)、およびコルチコステロイド類似体(ブデソニドなど);(c)免疫抑制薬(シクロスポリン(シクロスポリンA、Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリムス(FK−506、Prograf(登録商標))、ラパマイシン(sirolimus、Rapamune(登録商標))、および他のFK−506型免疫抑制薬など)、およびミコフェノール酸塩(例えば、ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標))など);(d)抗ヒスタミン薬(H1−ヒスタミンアンタゴニスト)(ブロムフェニラミン(bromopheniramine)、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジンなど);(e)非ステロイド性抗ぜんそく薬、例えばβ2−アゴニスト(例えば、テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、ビトルテロール、およびピルブテロール)およびβ2−アゴニスト−コルチコステロイド併用薬(例えば、サルメテロール−フルチカゾン(Advair(登録商標))、ホルモテロール−ブデソニド(Symbicort(登録商標))など)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、イプラトロピウム臭化物、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト(iralukast)、ポビルカスト(pobilukast)、およびSKB−106、203)、ロイコトリエン生合成インヒビター(ジロートン、BAY−1005)など;(f)非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えばプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシン酸(bucloxic acid)、カプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸(fenclozic acid)、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク(oxpinac)、スリンダク、チオピナク(tiopinac)、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラク)、フェナム酸(fenamic acid)誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル(flufenisal))、オキシカム(例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、およびテノキシカム(tenoxican))、サリチル酸塩(例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)、およびピラゾロン(例えば、アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、およびフェニルブタゾン);(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)インヒビター(セレコキシブ(Celebrex(登録商標))およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))など);(h)ホスホジエステラーゼIV型(PDE−IV)のインヒビター;(i)他のPGD受容体アンタゴニスト、特にDPアンタゴニスト;(j)オピオイド鎮痛薬(コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、およびペンタゾシンなど);(k)コレステロール降下薬、例えばHMG−CoAレダクターゼインヒビター(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、およびその他のスタチン)、胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミンおよびコレスチポール)、ビタミンB(ニコチン酸またはナイアシンとしても既知)、ビタミンB(ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、フィブリン酸(fibric acid)誘導体(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート、およびベンザフィブラート(benzafibrate))、プロブコール、ニトログリセリン、およびコレステロール吸収のインヒビター(例えば、β−シトステロールおよびアシルCoA−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター、例えばメリナミドなど)、HMG−CoA合成酵素インヒビター、スクアレンエポキシダーゼインヒビター、およびスクアレン合成酵素インヒビター;(l)抗血栓剤、例えば血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、およびレテプラーゼ)、ヘパリン、ヒルジン、およびワルファリン誘導体、β−遮断薬(例えば、アテノロール)、β−アドレナリン作用薬(例えば、イソプロテレノール)、ACEインヒビター、および血管拡張薬(例えば、ニトロプルシドナトリウム、ニカルジピン塩酸塩、ニトログリセリン、およびエナラプリラト(enaloprilat)など);(m)抗糖尿病薬(インシュリンおよびインシュリン模倣薬など)、スルホニル尿素薬(例えば、グリブリド、メグリナチド(meglinatide)など)、ビグアナイド、例えばメトホルミン(Glucophage(登録商標))、α−グルコシダーゼインヒビター(アカルボース)、チアゾリジノン化合物(例えば、ロシグリタゾン(Avandia(登録商標))、トログリタゾン(Rezulin(登録商標))、シグリタゾン、ピオグリタゾン(Actos(登録商標))、およびエングリタゾンなど);(n)インターフェロンβ製剤(インターフェロンβ−1α、インターフェロンβ−1β);(o)金化合物(オーラノフィンおよびオーロチオグルコースなど);(p)TNFインヒビター、例えば、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、抗体治療薬(オルソクローン(OKT3)、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標))、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、およびD2E6 TNF抗体など);(q)潤滑剤または皮膚軟化薬(ワセリンおよびラノリンなど)、角質溶解薬、ビタミンD誘導体(例えば、カルシポトリエンおよびカルシポトリオール(Dovonex(登録商標))など)、PUVA、アントラリン(Drithrocreme(登録商標))、エトレチナート(Tegison(登録商標))、およびイソトレチノイン;(r)多発性硬化症治療薬(インターフェロンβ−1β(Betaseron(登録商標))、インターフェロンβ−1α(Avonex(登録商標))、アザチオプリン(Imurek(登録商標)、Imuran(登録商標))、酢酸グラチラマー(Capoxone(登録商標))、糖質コルチコイド(例えば、プレドニゾロン)、およびシクロホスファミドなど);(s)その他の化合物(5−アミノサリチル酸およびこのプロドラッグ);(t)DNA−アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、葉酸アンタゴニスト、および5−フルオロウラシルなど、ピリミジンアンタゴニスト)、微小管破壊薬(disrupter)(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、コルヒチン、ノコダゾール、およびビノレルビン)、DNAインターカレーター(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、およびシスプラチン)、DNA合成インヒビター(ヒドロキシウレアなど)、DNA架橋剤(例えば、マイトマイシンC)、ホルモン治療薬(例えば、タモキシフェンおよびフルタミド)、および細胞分裂阻害剤)(例えば、イマチニブ(STI571、Gleevec(登録商標))およびリツキシマブ(Rituxan(登録商標))など)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物対第二の活性成分の重量比は、様々なものが可能であり、各成分の有効用量に依存する。一般に、それぞれの有効用量が用いられる。従って、例えば、本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物対NSAIDの重量比は、一般に約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲となる。本発明の化合物と他の活性成分の組合せも、一般に上記の範囲内になるが、それぞれの場合において、各活性成分が有効用量で用いられるべきである。
【実施例】
【0134】
以下の実施例は、例示としてのみ提供するもので制限するためのものではない。当業者は、基本的に同様な結果をもたらす改変や修飾が可能な、多様な重要ではないパラメーターを容易に認識できる。
【0135】
(実施例1)
【0136】
【化16】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−2,5−ジフルオロフェニル)酢酸(A)。
【0137】
【化17】

1−アリル−2,5−ジフルオロ−4−メトキシベンゼン(A.2)。
【0138】
アルゴン雰囲気下、化合物A.1(5g、22.4mmol)およびアリルトリブチルスズ(8.91g、27mmol)を無水DMF(100ml)に加えて混合し、Pd(PPh(2.59g、2.24mmol)の存在下、110℃で4時間撹拌した。溶液を酢酸エチルで希釈して、濾過した。ろ液を水およびブラインで洗い、NaSOで乾燥させ、減圧濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、100%ヘキサン溶離液)で精製して化合物A.2を得た(4.0g、97%)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.30(d,J=13.7Hz,1H);7.19(d,J=7.8Hz,1H);5.87−5.97(m,1H);5.07−5.12(m,2H);3.91(s,3H);3.33(d,J=6.45Hz,2H)
【0139】
【化18】

2−(2,5−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)酢酸(A.3)。
【0140】
化合物A.2(4.0g、22mmol)を混合溶媒(CCl:CHCN:HO=1:1:1.5、350ml)に溶解し、この溶液にNaIO(23.25g、22mmol)およびRuCl・HO(0.68g、3.3mmol)を一回で入れた。反応液を室温で1時間撹拌し、それから水に注いだ。水層をDCM(3×)で抽出し、1つにまとめた有機層を水およびブラインで洗い、NaSOで乾燥させ、減圧濃縮して化合物A.3を得た(2.7g、56%)。LC−MS ESI(neg.)m/z:201.1(M−H)。
【0141】
【化19】

2−(2,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)酢酸(A.4)。
【0142】
下、−78℃で、化合物A.3(2.7g、13.4mmol)のDCM(60ml)溶液に、BBrのジクロロメタン溶液(1M、38mmol)を1時間かけて滴下した。反応液を室温で5時間撹拌し、それから氷水に注いだ。水層を酢酸エチル(3×)で抽出し、1つにまとめた有機層を水およびブラインで洗い、NaSOで乾燥させ、減圧濃縮して化合物A.4を得た(2.5g、97%)。LC−MS ESI(pos.)m/z:188.9(M+H).H NMR(500MHz)(DMSO−d)δ7.14(dd,J=11.0,7.2Hz,1H);6.74(dd,J=11.0,7.2Hz,1H);3.49(s,2H)。
【0143】
【化20】

N−tert−ブチル−4−クロロ−3−ニトロベンズアミド(A.5)。
【0144】
4−クロロ−3−ニトロ安息香酸(56.17g、255mmol)をTHF325mLに溶解し、この溶液を氷浴で冷却して、これに、terf−ブチルアミン(26.9mL、255mmol)とトリエチルアミン39.1mLをTHF75mLに溶解した溶液を30分かけて滴下した。反応物を室温で平衡化した。5時間後、固体を濾過して除去し、ろ液を減圧濃縮した。得られる固体を、酢酸エチル250mLずつ用いて0.5N塩酸との間で分配した。有機層を、飽和重炭酸(bicarb)溶液4×150mLで洗い、続いて水およびブラインそれぞれ100mLで洗った。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌し、濾過し、ろ液を減圧濃縮してオフホワイト固体を得た。H NMR(500MHz)(CDCl)δ8.07(d,J=8.8Hz,1H);7.93(d,J=2.2Hz,1H);7.73(s,1H);7.49(dd,J=1.9Hz,J=8.6Hz,1H);7.38(d,J=7.3Hz,1H);7.22(s,1H);7.17(d,J=8.6Hz,1H);6.62(d,J=8.6Hz,1H);6.38(d,J=9.5Hz,1H);5.94(s,1H);3.67(s,2H);1.47(s,9H)ppm。
【0145】
【化21】

【0146】
【化22】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−ニトロフェノキシ)−2,5−ジフルオロフェニル)酢酸メチル(A.6)。
【0147】
化合物A.4(500mg、2.66mmol)とN−tert−ブチル−4−クロロ−3−ニトロベンズアミド(A.5)(682mg、2.66mmol)をDMSO(25ml)に溶解し、この溶液にCsCO(1.73g、5.32mmol)を1回で入れた。反応液を80℃で1時間撹拌し、酢酸エチルで希釈し、それから10%クエン酸を加えてpH=2に調整した。水層を酢酸エチル(2×)で抽出し、1つにまとめた有機層を水およびブラインで洗い、NaSOで乾燥させ、減圧濃縮した。残留物をメタノール(10ml)に溶解し、この溶液にクロロトリメチルシランを加えた。反応物を室温で1時間撹拌して、減圧濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、30%酢酸エチル入りヘキサン溶離液)で精製して、化合物A.6を得た(340mg、30%、2工程)。LC−MS ESI(pos.)m/z:423.1(M+H)。
【0148】
【化23】

条件1.(X=F)
化合物A.6(0.81mmol)を、酢酸エチル(5ml)とメタノール(5ml)の混合物に溶解した。10%Pd/C(86mg、0.081mmol)を加えて、反応液をH下室温で1時間撹拌した。反応液を濾過し、ろ液を減圧濃縮して化合物A.7aを得た.
【0149】
【化24】

2−クロロ−4−シクロプロピルベンゼンアミン(A.8)。
【0150】
機械撹拌器および還流冷却管を備えたジャケット付き5L反応器に、窒素下、4−ブロモ−2−クロロアニリン(103g、499mmol)、シクロプロピルボロン酸(58g、673mmol)、およびリン酸カリウム(376g、1771mmol)を2.5Lトルエンに加えたものを入れた。反応フラスコを脱気して再び窒素充填し、それからトリシクロヘキシルホスフィン(14g、51mmol)を加え、続いて水(100mL)を加えた。反応物を再度脱気して再び窒素充填することを3回繰り返し、それから酢酸パラジウム(II)(5.8g、26mmol)を加えた。フラスコをもう一度脱気して再び窒素充填し、加熱マントルを用いて94℃に加熱した。加熱すると、ゴム状析出物が暗褐色の溶液になった。2.5時間後、反応をHPLCでチェックすると、出発物質が残っていないことがわかった。反応物を室温に冷却し、それから分液ロートに移して、水(2×500mL)、それからブライン(500mL)で抽出した。有機物にMgSOを加えて10分間撹拌して濾過し、ろ液を減圧濃縮して粗生成物を橙色油状物として得た(80g)。それから粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーで勾配をつけて(シリカ;1から10%EtOAc入りヘキサン)精製した。精製した最終物質A.8(67.7g、収率81%)が橙色油状物として集まり、これを一晩結晶化した。LC−MS ESI(pos.)m/e:168.1(M+H)。
【0151】
【化25】

2−クロロ−4−シクロプロピルベンゼン−1−スルホニルクロリド(A.9)。
【0152】
オーバーヘッド撹拌器、窒素入り口、および温度プローブを備えたジャケット付き5L反応容器中、2−クロロ−4−シクロプロピルベンゼンアミン(66.0g、394mmol)をアセトニトリル1.6Lに溶解した。撹拌しながらこの溶液に濃塩酸(632ml)を加えた。[注:HClを加える際はジャケット付き反応器を15℃に設定した。]HClを加えると、反応物はわずかに発熱した(18℃から22℃)。それから反応物を−2から0℃に冷却してから、硝酸ナトリウム(15ml、472mmol)を水溶液(80.0ml)として、滴下ロートから20分かけて加えた。次いで、これで得られる橙色混合物を冷却条件(0から5℃)下でさらに1時間撹拌し、それから冷やした酢酸750mLを加えた。次いで、二酸化硫黄(141g)を、レクチャーボトルからガス分散チューブを通して20分間かけて反応液に吹き込んだ。次いで、塩化銅(II)(27g、201mmol)と塩化銅(I)(0.1ml、5mmol)の混合物を一度にまとめて反応物に加えた。得られる緑色反応液を室温で平衡化し一晩撹拌した。反応液を濾過して固体を除去した。次いで、ろ液を減圧濃縮して析出を生じさせた。それから混合物を酢酸エチル(1L)で希釈して、水(2×500mL)およびブライン(1×500mL)で抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌して濾過し、ろ液を濃縮して暗橙色油状固体を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ;0から5%EtOAc入りヘキサン)で精製した。最終生成物A.9(86g、収率87%)を、明黄色固体(油状の質感)として得た。H NMR(500MHz)(CDCl)δ8.01(d,J=8.4Hz,1H);7.29(d,J=1.7Hz,1H);7.13(dd,J=2.0,8.6Hz,1H);1.99(m,1H);1.21(m,2H);0.87(m,2H)。
【0153】
【化26】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−2,5−ジフルオロフェニル)酢酸(A)。
【0154】
化合物A.7a(100mg、0.255mmol)をピリジン(2ml)に溶かした溶液に、スルホニルクロリドA.9(76.8mg、0.306mmol)を加えた。反応液を室温で2時間撹拌し、それから減圧濃縮した。濃縮物を混合溶媒(THF:MeOH:HO=2:2:1、2ml)に溶解し、この溶液に水酸化リチウム(75.5mg、1.8mmol)を加えた。反応液を室温で2時間撹拌し、それから減圧濃縮した。残留物をHPLCで精製して、化合物Aを得た(90mg、2工程で60%)。MS ESI(pos.)m/e:593.0(M+H).H NMR(400MHz)(DMSO−d)δ7.96(d,J=2.0Hz,1H);7.75(d,J=8.3Hz,1H);7.50(d,J=2.0Hz,1H)、7.48(dd,7=8.0,2.0Hz,1H);7.08(d,J=1.4Hz,1H);6.98(dd,J=8.3,1.4Hz,1H);6.71(d,7=8.6Hz,1H);6.32−6.35(m,1H);3.33(s,2H);1.89−1.90(m,1H);1.46(s,9H);1.06−1.10(m,2H);0.72−0.75(m,2H)。
【0155】
以下の実施例化合物2から12を、実施例1に記載される方法に従って調製した。実施例1の、「条件1」下で化合物A.6を化合物A.7に変換する工程を、以下に記載のとおり修飾した:
条件2.(X=Cl)
化合物A.6(1.02mmol)をAcOH(20ml)とHO(8ml)の混合物に溶解した。この溶液に、Fe粉末(3.07mmol)を加えた。反応液を60℃で3時間撹拌し、それから減圧濃縮した。残留物を酢酸エチルで希釈し、飽和NaCOを加えてpH=8に調節した。水層を酢酸エチル(2×)で抽出し、1つにまとめた有機層を水およびブラインで洗い、NaSOで乾燥させ、減圧濃縮して化合物A.7bを得た。
【0156】
【化27】

【0157】
【表1】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2,4−ジクロロフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(B.1)。
【0158】
MS ESI(pos.)m/e:605.0(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.98(d,J=1.7Hz,1H);7.90(d,J=8.5Hz,1H);7.47−7.55(m,3H);7.37(d,J=8.5Hz,1H);6.72(d,J=8.5Hz,1H);6.35(d,J=10.0Hz,1H);3.68(s,2H);1.46(s,9H)。
【0159】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)−4−((1−メチルシクロブチル)カルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.2)。
【0160】
MS ESI(pos.)m/e:621.1(M+H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.04(d,J=2.0Hz,1H);7.77(d,J=8.3Hz,1H);7.53(dd,J=8.6,2.0Hz,1H);7.47(d,J=7.5Hz,1H);7.09(d,J=1.4Hz,1H);6.98(d,J=8.3,1.4Hz,1H);6.64(d,J=8.6Hz,1H);6.26(d,J=10.0Hz,1H)、3.68(s,2H);2.40(dd,J=21.3,9.5Hz,2H);2.07−2.13(m,2H);1.87−1.94(m,3H);0.71−0.75(m,2H)。
【0161】
2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(B.3)。
【0162】
MS ESI(neg.)m/e:683.(M−H)。H NMR(400MHz)(MeOD)7.98−8.03(m,2H);7.53(dd,J=2.1,4.0,2H);7.47(d,J=7.5,1H);7.38(d,J=2.1Hz,1H);7.26(d,J=8.8Hz,1H);6.68(d,J=8.8Hz,1H);6.24−6.46(m,2H);3.36(s,2H);1.46(s,9H)。
【0163】
2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−メチルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(B.4)。
【0164】
MS ESI(neg.)m/e:581.0(M−H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ7.99(d,J=2.1Hz,1H);7.81(d,J=8.1Hz,1H);7.65(d,J=8.1Hz,1H);7.47−7.51(m,2H);7.23(s,1H);7.16(d,J=8.1,1H);6.68(d,J=8.6Hz,1H);6.19(d,J=10.1Hz,1H)、3.67(s,2H);2.33(s,3H);1.46(s,9H)。
【0165】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−メチルフェニルスルホンアミド)−4−(シクロブチルカルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.5)。
【0166】
MS ESI(pos.)m/e:581.0(M+H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.08(d,J=2.1Hz,1H);7.80(d,J=8.1Hz,1H);7.57(dd,J=8.6,2.1Hz,1H);7.48(d,J=7.5Hz,1H);7.23(s,1H);7.15(d,J=8.1Hz,1H);6.68(d,J=8.6,1H);6.21(d,J=10.2Hz,1H);4.44−4.53(m,1H);3.67(s,2H);2.32−2.40(m,5H);2.07−2.17(m,2H);1.75−1.83(m,2H)。
【0167】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)−4−(シクロブチルカルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.7)。
【0168】
MS ESI(neg.)m/e:605.0(M−H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.08(d,J=1.8Hz,1H);7.77(d,J=8.2Hz,1H);7.56(dd,J=1.9,8.6Hz,1H);7.48(d,J=7.4Hz,1H);7.09(s,1H);6.98(d,J=8.2Hz,1H);6.65(d,J=8.6Hz,1H);6.27(d,J=9.9Hz,1H);4.44−4.52(m,1H)、3.68(s,2H);2.34−2.67(b,2H);2.10−2.14(m,2H);1.87−1.91(m,1H);1.76−1.82(m,2H);1.05−1.10(m,2H);0.72−0.75(m,2H)。
【0169】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−メチルフェニルスルホンアミド)−4−((1−メチルシクロブチル)カルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.8)。
【0170】
MS ESI(pos.)m/e:595.0(M+H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.00(d,J=2.10Hz,1H);7.74(d,J=8.1Hz,1H);7.48(dd,J=8.6,2.1Hz,1H);7.41(d,J=7.5Hz,1H);7.60(s,1H);7.09(d,J=8.1Hz,1H);6.61(d,J=8.6,1H);6.11(d,J=10.1Hz,1H)、3.60(s,2H);2.30−2.38(m,2H);2.26(s,3H);1.98−2.08(m,2H);1.81−1.88(m,2H);1.6(m,3H)。
【0171】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニルスルホンアミド)−4−((1−メチルシクロブチル)カルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.9)。
【0172】
MS ESI(pos.)m/e:665.0(M+H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.05(d,J=3.3Hz,1H);8.04(d,J=3.3Hz,1H);7.58(dd,J=8.6,2.1Hz,1H);7.48(d,J=7.5Hz,1H);7.42(s,1H);7.28(d,J=8.8Hz,1H);6.67(d,J=8.6Hz,1H);6.48(d,J=9.9Hz,1H)、3.68(s,2H);2.37−2.45(m,2H);2.09−2.15(m,2H);1.88−1.95(m,2H);1.59(s,3H)。
【0173】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド)−4−((1−メチルシクロブチル)カルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.10)。
【0174】
MS ESI(pos.)m/e:649.0(M+H)。H NMR(400MHz)(MeOD)δ8.11(d,J=8.2Hz,1H);8.03−8.04(m,1H);7.79(s,1H);7.66(d,J=8.3Hz,1H);7.58−7.61(m,1H);7.45(d,J=7.5Hz,1H);6.68(d,J=8.6,1.8Hz,1H);6.42(d,J=9.9,1.8Hz,1H)、3.66(s,2H);2.38−2.45(m,2H);2.09−2.15(m,2H);1.90−1.96(m,2H);1.56(s,3H)。
【0175】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド)−4−(tert−ペンチルカルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.11)。
【0176】
MS ESI(pos.)m/e:651.0(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ8.11(d,J=8.3Hz,1H);7.97(d,J=2.0Hz,1H);7.84(s,1H);7.65(d,J=8.2Hz,1H);7.54(dd,J=9.0,2.0Hz,1H);7.44(d,J=7.5Hz,1H);6.68(d,J=8.6Hz,1H);6.43(d,J=10.0Hz,1H);3.66(s,2H);1.87(q,J=7.4Hz,2H)、1.41(s,6H);0.91(t,J=7.4Hz,3H)。
【0177】
2−(5−クロロ−4−(2−(2−クロロ−4−メチルフェニルスルホンアミド)−4−(tert−ペンチルカルバモイル)フェノキシ)−2−フルオロフェニル)酢酸(B.12)。
【0178】
MS ESI(pos.)m/e:597.1.0(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.98(d,J=2.0Hz,1H);7.81(d,J=8.1Hz,1H);7.47−7.50(m,2H);7.23(s,1H);7.16(d,J=8.0Hz1H);6.68(d,J=8.6Hz,1H);6.21(d,J=10.0Hz,1H);3.67(s,2H);2.32(s,3H);1.87(q,J=7.4Hz,2H)、1.40(s,6H);0.91(t,J=7.4Hz,3H)。
(実施例13)
【0179】
【化28】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(D)。
【0180】
【化29】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸tert−ブチル(D.1)。
【0181】
実施例C(スキームC.5)の方法に従って、アニリンC.4のスルホニル化を行なった。エステルD.1を明黄色ガラス状固体として得た(収率84%)。H NMR(500MHz)(CDCl)δ8.10(d,J=8.8Hz,1H);7.96(s,1H);7.67(s,1H);7.47(dd,J=2.1,8.5Hz,1H);7.39(d,J=7.4Hz,1H);7.27(s,1H);7.19(dd,J=1.0,8.8Hz,1H);6.64(d,J=8.6Hz,1H);6.39(d,J=9.6Hz,1H);5.91(s,1H);3.57(s,2H);1.49(s,9H);1.48(s,9H)。
【0182】
【化30】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメトキシ)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(D)。
【0183】
実施例C(スキームC.6)の方法に従って、tert−ブチルエステルの加水分解を行なった。酸Dを無色固体として得た(収率98%)。LC−MS ESI(neg.)m/e:651.0(M−H)。H NMR(500MHz)(CDCl)δ8.07(d,J=8.8Hz,1H);7.93(d,J=2.2Hz,1H);7.73(s,1H);7.49(dd,J=1.9,8.6Hz,1H);7.38(d,J=7.3Hz,1H);7.22(s,1H);7.17(d,J=8.6Hz,1H);6.62(d,J=8.6Hz,1H);6.38(d,J=9.5Hz,1H);5.94(s,1H);3.67(s,2H);1.47(s,9H)ppm。
(実施例14)
【0184】
【化31】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(C)。
【0185】
【化32】

4−ブロモ−2−クロロ−5−フルオロフェノール(C.1)。
【0186】
2−クロロ−5−フルオロフェノール(24.1g、165mmol)を無水クロロホルム(200mL)に溶解し、75℃に加熱して、臭素(8.5mL、165mmol)を無水クロロホルム(40mL)に溶かした溶液を5分かけて滴下して処理した。3時間後、反応物をさらに、臭素(1.7mL、33mmol)を無水クロロホルム(15mL)に溶かした溶液で処理して、75℃で撹拌した。2時間後、反応物を室温に冷却し、ジクロロメタン(300mL)およびNa(100mL、飽和水溶液)で処理した。激しく混合した後、層を分離させ、有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた黄色液体を減圧蒸留で精製した。化合物C.1(22.3g、60%)を無色液体として得た。LC−MS ESI(neg.)m/e:224.9(M−H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.51(d,J=6.9Hz,1H);6.85(d,J=9.2Hz,1H);5.69(s,1H)。
【0187】
【化33】

4−(4−ブロモ−2−クロロ−5−フルオロフェノキシ)−N−tert−ブチル−3−ニトロベンズアミド(C.2)。
【0188】
化合物C.1(13.0g、58.0mmol)をDMSO(140mL)に溶解し、CsCO(24.6g、75.4mmol)で処理した。10分後、N−tert−ブチル−4−クロロ−3−ニトロベンズアミド(A.5)(12.9g、50.2mmol)を一度に加え、得られる混合物を75℃に加熱した。18時間後、反応液を室温に冷却し、酢酸エチル(450mL)および水(200mL)で処理した。分離した有機層をHO(2×150mL)で洗い、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られる褐色固体を熱酢酸エチル(200mL)に溶解してヘキサン(200mL)に注いだ。析出物を濾過して冷ヘキサン(50mL)で洗った。化合物C.2(16.1g、72%)を白色固体として得た。LC−MS ESI(pos.)m/e:445.0(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ8.32(d,J=2.1Hz,1H);7.97(dd,J=8.6、2.1Hz,1H);7.72(d,J=6.9Hz,1H);6.91(dd,J=19.0,8.6Hz,2H);5.93(s,1H);1.50(s,9H)。
【0189】
【化34】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−ニトロフェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸tert−ブチル(C.3)。
【0190】
化合物C.2(17.38g、39.1mmol)を無水THF(150mL)に溶解し、混合物を窒素ガス流で20分間脱気した。次いで、反応液を撹拌しながら、そこにPddba(672mg、1.17mmol)およびCTC−Q−Phos(833g、1.17mmol)を一度に加えた。10分後、2−tert−ブトキシ−2−オキソエチル亜鉛クロリドの0.5M EtO溶液(117.3mL、58.6mmol)を滴下ロートから10分かけて滴下した。加え終わったら、反応物を加熱して還流させた。1時間後、反応物を室温に冷却し、混合物を酢酸エチル(400mL)と水(200mL)に溶解した。分離した有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、15%酢酸エチル入りヘキサン溶離液)で精製した。化合物C.3(13.2g、70%)を淡黄色固体として得た。LC−MS ESI(pos.)m/e:481.1(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ8.29(d,J=2.1Hz,1H);7.89(dd,J=8.6,2.1Hz,1H);7.35(d,J=7.3Hz,1H);6.80(dd,J=8.6,7.3Hz,2H);6.43(s,1H);3.48(s,2H);1.40(s,18H)。
【0191】
【化35】

2−(4−(2−アミノ−4−(tert−ブチルカルバモイル)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸teft−ブチル。
【0192】
化合物C.3(13.2g、27.5mmol)を酢酸(108mL)および水(72mL)に溶解し、鉄粉(7.7g、137.5mmol)で処理し、それから65℃に加熱した。3時間後、反応物を減圧濃縮し、得られる残留物を酢酸エチル(500mL)で希釈した。NaHCO(飽和水溶液、200mL)を注意しながら滴下し、分離した有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、10%MeOH入りCHCl溶離液)で精製した。化合物C.4(9.2g、74%)を白色発泡物として得た。LC−MS ESI(pos.)m/e:451.1(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.33(d,J=7.5Hz,1H);7.25(s,1H);6.96(d,J=7.5Hz,1H);6.76(d,J=8.2Hz,1H);6.58(d,J=10.1Hz,1H);5.94(s,1H);3.50(s,2H);1.44(s,18H)。
【0193】
【化36】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸teft−ブチル(C.5)。
【0194】
化合物C.4(10.4g、23.1mmol)をピリジン(100mL)に溶解し、2−クロロ−4−シクロプロピルベンゼン−1−スルホニルクロリド(6.4g、25.4mmol)で処理した。2時間後、混合物を減圧濃縮し、得られる残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、10%メタノール入りCHCl溶離液(eluant))で精製した。化合物C.5(11.5g、75%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.90−7.87(m,2H);7.62(s,1H);7.46(d,J=8.5Hz,1H);7.38(d,J=7.3Hz,1H);7.01(s,1H);6.96(d,J=8.6Hz,1H);6.63(d,J=8.6Hz,1H);6.27(d,J=9.8Hz,1H);5.86(s,1H);3.55(s,2H);1.85−1.75(m,1H);1.46(s,18H);1.10−1.07(m,2H);0.75−0.73(m,2H)。
【0195】
【化37】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−シクロプロピルフェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(C)。
【0196】
化合物C.5(7.2g、10.8mmol)を酢酸(60mL)に溶解し、10℃に冷却してHBrの30%AcOH溶液(18mL)で処理した。15分後、反応物を15分間室温に温め、水(100mL)に注いだ。得られる析出物を酢酸エチル(300mL)に溶解し、HO(100mL)およびブライン(100mL)で洗った。得られる有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。化合物C(3.8g、58%)を白色固体として得た。LC−MS ESI(pos.)m/e:609.0(M+H)。H NMR(400MHz)(CDCl)δ7.88(s,1H);7.87(d,J=6.5Hz,1H);7.62(s,1H);7.52(dd,J=8.5、2.1Hz,1H);7.39(d,J=7.4Hz,1H);7.01(s,1H);6.96(d,J=8.2Hz,1H);6.63(d,J=8.5Hz,1H);6.27(d,J=9.6Hz,1H);5.88(s,1H);3.69(s,2H);1.87−1.81(m,1H);1.47(s,9H);1.11−1.07(m,2H);0.75−0.71(m,2H)。
【0197】
代替合成法
【0198】
【化38】

【0199】
スルホンアミド合成
【0200】
【化39】

4−ブロモ−2−クロロベンゼンスルホニルクロリド1(4.0Kg、13.8mol)をヘプタン(32L)に加えてスラリーとした。温度を40℃未満に保ちながら、t−ブチルアミン(7.25L、69mol)を2時間かけて加えた。スラリーを一晩放置し、次いで、温度を40℃未満に保ちながら、5NのHCl(8.5L、42mol)を加えた。生成物を濾過して単離し、続けて水洗い(40L)した。乾燥して、2を4.2Kg(93%)得た。
【0201】
2を150g(0.46mol)、シクロプロピルボロン酸(50g、0.58mol)、リン酸カリウム(195g、0.92mol)、酢酸パラジウム(200mg、0.92mmol)、トリフェニルホスフィン(480mg、1.83mmol)、アニソール(300mL)、および水(900mL)を混合して80℃で一晩加熱した。混合物を周辺温度に冷却し、酢酸イソプロピルを加えた(1050mL)。混合物を5NのHCl(150mL)で中和して、固体を溶解した。水を加え(600mL)て、水相を除去した。酢酸イソプロピルを減圧で留去して、トリフルオロ酢酸(410mL)を加えた。混合物を50℃で一晩加熱し、それから周辺温度に冷却して、酢酸イソプロピル(1500mL)を加えた。混合物を5NのNaOH(1050mL)で中和し、次いで水を加え(750mL)、水相を除去した。酢酸イソプロピルを減圧で留去し、それからヘプタン(900mL)を加えた。一晩放置後、生成物を濾過して単離し、ヘプタン(450mL)で洗った。乾燥させて、物質101gを回収し、純度で補正した収率は91%であった。
【0202】
マンデル酸合成
【0203】
【化40】

マンデル酸反応体の調製に用いた手順を以下に概要で示す:
1.2−クロロ−5−フルオロフェノール(1当量)を入れる
2.NaCl(0.86当量)を入れる
3.水を入れる。
4.撹拌を開始する。
5.温度を40℃未満に保ちながら、NaOH(10N、1.8当量)を入れる
6.温度を40℃未満に保ちながら、グリオキシル酸(1.2当量)を滴下する
7.pHを8.6前後に調整する。
8.24時間撹拌しながら温度(35±5℃)を保つ。
9.サンプル採取する(HPLC)。IPC:<3%出発物質
10.温度を40℃未満に保ちながら、ゆっくりとHCl(5N)を加える。pHを5.9に調整する。
11.一晩冷却する
12.撹拌を止めて母液のサンプル採取する。IPC:<12mg/mL
13.白色結晶固体を濾過する。
14.フィルターケーキを10%NaCl水溶液で洗う。
15.真空オーブン中窒素流下40℃で、恒量になるまで乾燥させる。
【0204】
マンデル酸の還元
1.フラスコに、マンデル酸ナトリウム塩10.93g(1.0当量)を入れ、続いて次亜リン酸ナトリウム2.44g(0.5当量)を入れる。
2.窒素下室温で、フラスコにメタンスルホン酸50%水溶液25mLを入れる
3.しっかりと撹拌されている状態にする。
4.フラスコの内容物を95±1.5℃に加熱する。
5.窒素下、ヨウ化ナトリウム1.023g(0.15当量)と次亜リン酸ナトリウム3.655g(0.75当量)とをメタンスルホン酸50%水溶液25mLに加えた溶液をゆっくりと加える。LCAP生成物への変換が>99%に到達するまで95±1.5℃で反応器の均一な内容物の撹拌を続ける。
6.加熱を止める。1時間かけてゆっくりと55℃に冷却する。
7.55℃で種結晶50mgを加える。種結晶を維持する。55℃±1.5℃で少なくとも1時間保つ。
8.1時間かけてゆっくりと45℃に冷却し、次いで1時間かけて35℃に冷却し、次いで3時間以上(または一晩)かけて0から4℃に冷却する。撹拌を止める。MLアッセイ用のサンプルを採取する(c=8.8mg/g)。
9.ガラスフリットで懸濁液を濾過する。
10.ろ液を用いて反応器をすすぎ、再び濾過する。合計ML:67.92g(53ml)、含有量0.60g(収率6.5%)。
11.氷冷脱イオン(DI)水(10ml)でのすすぎを1回行なってフィルターケーキを洗う、(ろ液:16.459g、生成物含量123mg(1.3%)。
12.フィルターケーキを45から55℃で恒量になるまで乾燥させ、3から4時間後に塊を砕く。
13.重さを測定する:白色結晶質粉末固体8.45g(89%、修正収率;97.3wt%)、99.7%LCAP{220nm}。
【0205】
アリールブロミド合成
【0206】
【化41】

25℃で、フェニル酢酸(1.82Kg、8.89mol、1.1当量)とニトリル(1.62Kg、8.08mol、1.0当量)をDMSO(8L)に溶解した。この溶液に、KCO(2.46Kg、17.8mol、2.2当量)を少しずつ、ガス発生を抑えながら加えた。紫色スラリーを60℃に加熱して、一晩放置した。反応が完了したら、反応液をMTBE(16L)、脱イオン(DI)水(12.9L)、およびメタンスルホン酸(3.5L)の混合物にゆっくりと加えて逆クエンチした。30分撹拌後、水層を除去して、有機層を脱イオン(DI)水16Lで洗い、濃縮乾固した。残留MTBEがGCで<5%になるまで、MeOH(4L)を加えて溶液を濃縮乾固することを2回行なった。この生成物に、MeOH(22L)およびメタンスルホン酸8.3mLを加え、99%変換されるまでこのバッチを15時間にわたり63℃に加熱した。勾配をつけて反応物を20℃に冷却し、得られる懸濁液を濾過してMeOH(2×3L)で洗った。固体ケーキをN下乾燥させて、収率74%、効力101.8wt%、および純度99.5A%を得た。クロロ異性体含量は、2.16A%であった。MeOH23.6Lを用い68℃に加熱して行なった2回目の結晶化により、所望の生成物を、67%、効力100wt%、純度99.7A%、およびクロロ異性体含量0.74A%で得た。クロロ異性体含量が<0.5A%になるまで再結晶プロセスを繰り返した。
【0207】
Pd−触媒によるスルホンアミド結合
100L反応器に、2−(4−(2−ブロモ−4−シアノフェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸メチル2330.9g、2−クロロ−4−シクロプロピル−ベンゼンスルホンアミド1490.3g、tBu−X−Phos47.0g、炭酸セシウム4513.1g、およびPddba*CHCl38.3gを投入した。反応器を3psiaに吸気してNで大気圧に戻すことにより、パージした。反応器にトルエン23Lを投入し、容器を再び5psiaに減圧パージした。反応器のジャケットを85℃に設定して350rpmで一晩撹拌した。約16時間経過後、反応が完了したか分析するためのサンプルにより、アリールブロミド出発物質が0.88%であることを確認した。
【0208】
反応器に精製水6Lを投入し、これとは別に精製水6Lを50Lポータブル反応器に投入した。それから反応器内容物を50Lポータブル反応器に移した。トルエン3Lを用いて反応器をすすぎ、洗液をポータブル反応器に流し込んだ。5NのHCl6455mLを1時間10分かけてポータブル反応器に投入した。この速度はCO発生により制限を受けた。このバッチを1時間撹拌し、サンプルを採取してpH<1を確認した。相を分離させるため撹拌を停止すると、有機相に固体が眼に見える形で析出してきた。HCl2.3Lを投入し、このバッチをしっかりと撹拌して固体を溶解させたが、撹拌を停止すると固体は依然として眼で確認できた。MTBE2.3Lを投入し、このバッチを撹拌した。撹拌を停止すると、バッチの相はきれいに分離した。
【0209】
最終生成物からパラジウムを除去する目的で、Silicycle(登録商標)Si−チオ尿素シリカゲル547.6gを反応器に投入し、一晩撹拌した。次いで、Silicycle(登録商標)を除去する目的で、このバッチを5umポリプロピレンフィルター布と2kgのセライト521で濾過した。トルエン8.75Lを用いてポータブル反応器とケーキベッドをすすいだ。ろ液を50Lポータブル反応器に戻し、さらにSilicycle(登録商標)255.4gとともに一晩撹拌した。次いで、このバッチを同一のセライトベッドで濾過し、トルエン8Lで洗い、反応器からフィルターを通して流した。さらに2L用いて50Lの容器をきれいにした。サンプル分析により、パラジウムレベルが13ppmであることを確認した。
【0210】
Ritter反応
ベンゾニトリル出発物質3358g(6.1mol、1.0当量)をトルエン(9L)に加え、これに、45から50℃で、メタンスルホン酸(397ml)を加え、続いて酢酸tert−ブチル(8.24L)を加えた。反応物を45℃に維持した。2時間後、さらにMsOH(0.177L)およびtBuOAc(1.84L)を加え、97%が変換されるまで反応物を撹拌した。反応物をトルエン(13.43L)で希釈し、25℃に冷却し、1Mリン酸水素二ナトリウム水溶液(2×4.5容量、15L)および水(1×15L)で洗った。溶液を45から50℃に加熱し、減圧下5容量に濃縮した。さらにトルエンを加えて7.4容量(24.85L)に調節した。溶液を60℃に加熱しn−ヘプタン(6.21L=1.85容量)。溶液に種結晶1gを加え、4時間または一晩かけてゆっくりと20℃に冷却した。n−ヘプタン(7.17L)をゆっくり加えてトルエン/ヘプタン比を65:35に調節した。懸濁液を濾過して白色結晶固体を単離した。フィルターケーキを室温でn−ヘプタン−トルエン35:65(2容量、6.7L)およびn−ヘプタン(2容量、6.7L)で洗い、窒素流下室温で恒量になるまで乾燥させ、Ritter生成物2.68kgを得た(77%、97LCAP、0.84LCAPのCl異性体、9ppmPd)。
【0211】
加水分解
メチルエステル出発物質(1139g、1当量)をエタノール(10.3L)および水(2.9L)に加えたスラリーに、10NのNaOH(455mL、2.5当量)を加えた。変換が100%に達したら、溶液をポリッシュフィルターで濾過した。溶液を60℃に加熱し、クエン酸(1.29M、3.6L、2.5当量)を加えた。溶液に生成物の種結晶62gを加え、水(4.5L)をゆっくりと加えて、混合物を室温に冷却した。生成物を濾過して単離し、1:1のエタノール/水(2.3L)で洗い、続いて水(4.5L)で洗った。生成物を真空オーブン中40℃で乾燥させて、表題化合物1048.5gを得た(収率88.5%)。
【0212】
多形体
実施例化合物14は、少なくとも6種類の異なる物理的形が存在する。無水のフォームII遊離酸が好適な実施形態のものである。フォームIIは、以下の手順に従って、出発物質化合物のメチルエステル前駆体の加水分解から単離される:
フォームII
メチルエステル出発物質(1139g、1当量)をエタノール(10.3L)および水(2.9L)に加えたスラリーに、10NのNaOH(455mL、2.5当量)を加えた。変換が100%に達したら、溶液をポリッシュフィルターで濾過した。溶液を60℃に加熱し、クエン酸(1.29M、3.6L、2.5当量)を加えた。溶液に生成物の種結晶62gを加え、水(4.5L)をゆっくりと加えて、混合物を室温に冷却した。生成物を濾過して単離し、1:1のエタノール/水(2.3L)で洗い、続いて水(4.5L)で洗った。生成物を真空オーブン中40℃で乾燥させて、フォームIIを1048.5g得た(収率88.5%)。
【0213】
フォームII無水物:
上記の手順で生成したフォームIIを、60℃でEtOH7.8容量に溶解した。析出溶媒として水を加え、EtOH65%で種結晶を加え、室温で水を加え続けてEtOH50%にし、冷却し、濾過して、104.7g単離した(96%)。
【0214】
フォームIIは、無水の非吸湿性形である。このフォームは、示差走査熱量測定(DSC)により毎分10℃で加熱しながら分析すると、熱転移を1回起こす(図#)。1回の熱転移は、203℃付近にピーク温度を持つ吸熱転移である。フォームIIは、X線粉末回折によれば結晶である。フォームIIのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図8および図14に示す。
【0215】
フォームI、III、IV、V、およびVIは以下のとおりに調製した
フォームI無水物:
フォームII無水物のIPA飽和溶液にヘプタンを析出溶媒として加えた。フォームIのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図7および図13に示す。
【0216】
フォームIII無水物:
フォームII無水物は、クロマトグラフィー後の溶媒濃縮により析出して生じた。フォームIIIのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図9および図15に示す。
【0217】
フォームIV一水和物
LiOH水和物3.5当量をMeOH50mL/水20mLに加えたものを、化合物14のメチルエステル前駆体に加えて室温で撹拌した。加水分解は1時間で完了した(HPLC)。溶液を5℃で20%(w/v)クエン酸(28mL)にゆっくりと滴下した。析出固体を0から5℃で1時間撹拌し、濾過し、水で洗い、真空オーブン中40℃で乾燥させ、非常に高い湿度で結晶化させた。フォームVIのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図10および図16に示す。
【0218】
フォームVエタノール溶媒和物:
無水のフォームIIをEtOH:水(1:1)に加えた飽和溶液を55℃から室温に冷却した。フォームVのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図11および図17に示す。
【0219】
フォームVI一水和物:
フォームII無水物をEtOH(10容量)に加えて、加熱して溶解し、冷却し、水を一回で加え高飽和にした。フォームIのX線粉末回折スペクトルおよびDSC温度記録を、それぞれ図12および図18に示す。
【0220】
実施例化合物14のフォームIからVIの多形体についてのラマンデータおよび近赤外データを以下の表に示す:
【0221】
【表2】

【0222】
【表3】

【0223】
(実施例15)
【0224】
【化42】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(F)。
【0225】
【化43】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸tert−ブチル(F.1)。
【0226】
実施例C(スキームC.5)の方法に従って、アニリンC.4のスルホニル化を行なった。エステルF.1を明黄色ガラス状固体として得た。LC−MS ESI(pos.)m/e:693.1(M+H)。
【0227】
【化44】

2−(4−(4−(tert−ブチルカルバモイル)−2−(2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド)フェノキシ)−5−クロロ−2−フルオロフェニル)酢酸(F)。
【0228】
実施例C(スキームC.6)の方法に従って、tert−ブチルエステルの加水分解を行なった。酸Fを無色固体として得た(収率72%)。LC−MS ESI(neg.)m/e:651.0(M−H)。H NMR(500MHz)(d−DMSO)δ12.58(brs,1H);10.60(brs,1H);8.02(d,J=8.0Hz,1H);7.94(d,J=1.2Hz,1H);7.90(d,J=2.2Hz,1H);7.83(s,1H);7.75(dd,J=1.2,8.3Hz,1H);7.67(dd,J=2.2,8.6Hz,1H);7.53(d,J=10.2Hz,1H);6.73(d,J=7.6Hz,1H);6.41(d,J=10.2Hz,1H);3.61(s,2H);1.38(s,9H)。
【0229】
生物試験
ヒトCRTH2結合アッセイ
ヒトゲノムDNAをテンプレートとして用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)および続けてpCDNA3.1(+)(インビトロゲン)中へ移植してCRTH2発現プラスミドpHLT124を作成することより、全長ヒトCRTH2cDNAを作成した。Lipofect AMINETM試薬(Gibco/BRL)を用いて、プラスミドを、通常CRTH2を発現する細胞293個に形質移入した。形質移入の48時間後、培養物にG418(800mg/mL)を添加し、細胞を3週間淘汰下に維持して、生存細胞が全て安定してCRTH2を発現することを確実にした。本明細書中以下、これらの細胞に293(124)と付ける。
【0230】
293(124)細胞を用いてH−PGD結合アッセイを行なった。簡単には、細胞を洗浄して、0.5%BSAおよび20mMHEPESを含有するRPMIに懸濁させた。アッセイごとに、25,000個の細胞、必要であれば適切な量の試験化合物、および1nMのH−PGD(Amersham Pharmacia Biotech)および30nMの未標識PGD(Cayman Chemicals)の混合物を加えて最終体積200mLにしたものを用いた。細胞混合物を震盪しながら室温で2.5時間培養し、細胞を未結合H−PGDから分離して細胞ハーベスターでフィルタープレートに移した。液体シンチレーションカウンターで細胞に結合した放射能を測定した。10mMの未標識PGDの存在下、非特異的結合を測定した。
【0231】
試験化合物によるCRTH2および/または1種以上の他のPGD受容体の調節は、他のin vitroおよびin vivoアッセイにより評価することができる。このようなアッセイの例として、二次メッセンジャー(例えば、cAMP、IP、またはCa2+)レベル、イオン流速、リン酸化レベル、転写レベルなどの測定が挙げられる。組換えまたは天然のCRTH2ポリペプチドおよび/または他のPGD受容体ペプチドを用いることができ、タンパク質を、単離、細胞で発現、細胞由来膜で発現、組織または動物で発現させることができる。シグナル伝達も、キメラ分子(異種シグナル伝達ドメインと共有結合した受容体の細胞外ドメイン、または受容体の膜貫通および/または細胞質ドメインと共有結合した異種細胞外ドメインなど)を用いて、溶解状態または固体状態反応でin vitroで試験することができる。遺伝子増幅も試験することができる。そのうえさらに、対象のタンパク質の配位子結合ドメインを溶解状態または固体状態反応でin vitroで用いて、配位子結合をアッセイすることができる。
【0232】
CRTH2−Gタンパク質または別のPGD受容体−Gタンパク質の相互作用も、Gタンパク質の受容体への結合またはこの受容体からの放出を分析することにより、試験することができる。
【0233】
本明細書で例示される化合物をCRTH2活性およびDP活性の両方について試験した。測定されたIC50値を以下の表1に示す。比較のため、AMG 009、ならびにWO04/058164に示される最も類似した化合物の対応する活性も、以下の参照表2に示す。容易にわかるとおり、本発明の化合物は明らかに、AMG 009およびその他の先行技術の化合物よりも強力なDPインヒビター(特に血漿および/または全血において)である。同時に、本発明の化合物は、先行技術の化合物で判明したCRTH2活性を維持しているかこれを改善しているかのいずれかである。結果としてCRTH2活性とDP活性のバランスを顕著に改善する。
【0234】
【表4】




【0235】
【表5】


【0236】
本明細書に記載される刊行物および特許出願は全て、それぞれ個別の刊行物または特許出願が具体的および個別に参照として援用されると示されるかのように、本明細書中に参照として援用される。理解を明確にするために、例示としてある程度詳細に本発明を上記で記載してきたが、これに対するある変更および修飾が、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなくなされ得ることが、本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I:
【化1】

(式中
は、アルキルまたはシクロアルキルであり;
は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;および
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である。)
の化合物およびこの塩。
【請求項2】
Xはクロロである、請求項1の化合物。
【請求項3】
はアルキルである、請求項1の化合物。
【請求項4】
はt−ブチルである、請求項3の化合物。
【請求項5】
はシクロアルキルである、請求項1の化合物。
【請求項6】
はシクロプロピルである、請求項5の化合物。
【請求項7】
【化2】


およびこの塩から選択される、請求項1の化合物。
【請求項8】
【化3】

およびこの塩から選択される、請求項7の化合物。
【請求項9】
請求項8の化合物であって前記化合物は、DSCを用いて分析すると熱転移が1回あるフォームII無水遊離酸であり、前記1回の熱転移は約203℃での吸熱転移である、化合物。
【請求項10】
前記1回の熱転移は約203.22℃での吸熱転移である、請求項9の化合物。
【請求項11】
請求項8の化合物であって前記化合物は、2−θについて約19.2における特徴ピークを含む粉末X線回折パターンを有するフォームII無水遊離酸である、化合物。
【請求項12】
2−θについて約9.5における特徴ピークをさらに含む粉末X線回折パターンを有する、請求項11の化合物。
【請求項13】
2−θについて約22.0、20.2、17.2、および16.6において特徴ピークをさらに含む粉末X線回折パターンを有する、請求項12の化合物。
【請求項14】
2−θについて図8に示す通りの特徴ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項13の化合物。
【請求項15】
請求項1の化合物および医薬的に許容されるビヒクルアジュバントまたは希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項16】
喘息の治療を必要としている患者に請求項1の化合物を治療上有効量で投与することを含む、喘息の治療法。
【請求項17】
COPDの治療を必要としている患者に請求項1の化合物を治療上有効量で投与することを含む、COPDの治療法。
【請求項18】
鼻炎の治療を必要としている患者に請求項1の化合物を治療上有効量で投与することを含む、鼻炎の治療法。
【請求項19】
皮膚炎の治療を必要としている患者に請求項1の化合物を治療上有効量で投与することを含む、皮膚炎の治療法。
【請求項20】
式IIの化合物:
【化4】

(式中
はt−ブチルであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である。)
の製造方法であって、
a)遷移金属触媒;および
b)塩基;
の存在下、式Aの化合物:
【化5】

(式中、Rは、クロロ、ブロモ、ヨード、−OS(O)アルキル、または−OS(O)アリールである。)
を、式Bの化合物:
【化6】

と接触させて、式Cの化合物:
【化7】

を形成する工程を含む、方法。
【請求項21】
遷移金属はパラジウムを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
パラジウム源は、(η−CPdCl、Pd(dba)、Pd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C、Pd(dba)、およびPd(dba)から選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
遷移金属触媒は、配位子t−ブチル−2−ジ−tertブチルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニルを含む、請求項22の方法。
【請求項24】
酸の存在下、式Cの化合物をさらに、式Dの化合物:
R’−O−C(=O)−アルキル D
と接触させて、式Eの化合物:
【化8】

を形成し、式Eの化合物を続けて加水分解して式IIの化合物を形成する、請求項20の方法。
【請求項25】
塩基の存在下、式Fの化合物:
【化9】

を、式Gの化合物:
【化10】

(式中、RはハロゲンまたはOTsである。)
と接触させることにより、式Aの化合物を調製する、請求項20の方法。
【請求項26】
a)遷移金属触媒;および
b)塩基;
の存在下、式Hの化合物:
【化11】

を、R−BYおよびR−M−X
(Yは、−(OR)、−F、またはR’であり;
Rは独立して、H、アルキル、アリール、またはアリールアルキルであるか;
または2つのR基は一緒になってピナコールまたはカテコールを形成し;
R’は、アルキルであるかまたは2つのR’が一緒になって9−ボラビシクロノナンを形成し(9−BBN);
Mは、ZnまたはMgであり;および
は、Cl、Br、またはIである。)
から選択される化合物と接触させて、式Jの化合物:
【化12】

を形成させる工程を含む方法により式Bの化合物を調製する、請求項20の方法。
【請求項27】
遷移金属はパラジウムを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
パラジウム源は、(η−CPdCl、Pd(dba)、Pd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C、Pd(dba)、およびPd(dba)から選択される、請求項27の方法。
【請求項29】
遷移金属触媒は、トリアリールホスフィンおよびトリアルキルホスフィンから選択される配位子を含む、請求項28の方法。
【請求項30】
式Jの化合物を続けて酸で処理して式Bの化合物を形成させる、請求項26の方法。
【請求項31】
式Kの化合物:
【化13】

(式中、Rは、CN、−C(=O)OH、または−C(=O)O−アルキルである。)
を、(1)強酸の存在下、ヨウ化水素水溶液または金属ヨウ化物塩と;または
(2)酸の存在下、還元体と
のいずれかと接触させることを含む方法により、式Fの化合物を調製する、請求項25の方法。
【請求項32】
請求項24の方法により作成される、式II:
【化14】

(式中、
はt−ブチルであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;および
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である。)
の化合物。
【請求項33】
式C:
【化15】

(式中、
は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはシクロアルキルであり;および
Xは、クロロまたはフルオロ(flouro)である。)
の中間体。
【請求項34】
請求項20の方法により作成される、請求項33の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−507847(P2011−507847A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539482(P2010−539482)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/013833
【国際公開番号】WO2009/085177
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】