説明

炭化水素の酸化カップリング用触媒

(A)ランタノイド族、Mg、Caおよび周期律表の4族の元素(Ti、ZrおよびHf)から成る群より選択される少なくとも1種の元素、(B)周期律表の1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび3族の元素(LaおよびAcを包含)および5−15族の元素から成る群より選択される少なくとも1種の元素、(C)1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび元素Ca、SrおよびBaから成る群より選択される少なくとも1種の元素および(D)酸素を含有する触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本発明は、表題がProcess For The Oxidative Coupling Of MethaneおよびProcess For The Oxidative Coupling Of Hydrocarbonsの同時係属出願(両方ともFina Technology,Inc.が本出願と同じ日付で出願)に関する。
【0002】
本発明は一般に炭化水素の反応で使用可能な触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
メタンは天然ガスの主要な成分である。天然ガスは燃料として有用であり得るが、天然ガス源は遠く離れて存在し得ることから、しばしば、メタンの輸送は費用効果的ではない。1つの天然ガス輸送方法はガスを液化させる方法であるが、しかしながら、メタンの沸点は液化を困難かつ高価にし得るほど低い。そのような源を利用する新規で費用効果的な方法を見つけだそうとする研究が行われている。
【0004】
1つの可能な解決法は、メタンをより高級な炭化水素、例えばエタンまたはエチレンなどに変換する方法である。エチレンおよびより高級な炭化水素の液化はより容易であり得かつ遠く離れた場所からの輸送もより容易であり得かつまたそれらは価値ある生成物でもあり得る。一例として、エチレンは価値ある生成物であり得る、と言うのは、それはスチレンの製造で使用可能でありかつ他の数多くの用途、例えばポリエチレン、エタノール、エチレングリコールおよびポリ塩化ビニルなどの製造用途を有する。
【0005】
伝統的には、エチレンを主に炭化水素、例えばエタン、プロパン、ブタンまたはナフサなどの熱分解で得ている。エチレンはまた様々な精製プロセスでも生じかつ回収可能である。そのような源から得られたエチレンにはまた様々な不要生成物も含まれている可能性があり、そのような生成物にはジオレフィンおよびアセチレンが含まれるが、それらをエチレンから分離するには費用がかかり得る。分離方法には、例えば抽出蒸留法およびアセチレンに選択的水添を受けさせてエチレンに戻す方法などが含まれ得る。比較的高純度のエチレンをもたらすための熱分解および分離技術は結果として有意な生産コストを伴い得る。従って、そのようなある種の伝統的な手段を用いることなくエチレンをメタンから生じさせることができれば、エチレンの生産コストが低くなるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様は、(A)ランタノイド族、Mg、Caおよび周期律表の4族の元素(Ti、ZrおよびHf)から成る群より選択した少なくとも1種の元素を含有させた触媒である。本触媒に更に(B)周期律表の1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび3族の元素(LaおよびAcを包含)および5−15族の元素から成る群より選択した少なくとも1種の元素および(C)1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび元素Ca、SrおよびBaから成る群より選択した少なくとも1種の元素に加えて(D)酸素も含有させる。周期律表の1族に属する元素を(B)で用いる時にはそれを(C)で用いることはできない。
【0007】
(A)で選択した元素1種または2種以上の量を本触媒の40から90重量%の範囲にしてもよい。(B)で選択した元素1種または2種以上の量を本触媒の0.01から40重量%の範囲にしてもよい。(C)で選択した元素1種または2種以上の量を本触媒の0.01から40重量%の範囲にしてもよい。(D)に示した酸素の量を本触媒の10から
45重量%の範囲にしてもよい。
【0008】
本触媒を高温、例えば750℃以上の温度などに加熱することで本触媒に焼成を受けさせてもよい。
【0009】
本触媒はメタンの酸化カップリング用反応槽内で使用可能である。OCMの場合には温度を500℃から750℃、場合により600℃から750℃にしてもよい。メタンと酸素のモル比を1:1から100:1、場合により4:1から80:1にしてもよい。
【0010】
本触媒をまたトルエンの酸化メチル化用反応槽内で用いることも可能である。OMTの場合には温度を500℃から800℃、場合により550℃から700℃にしてもよい。メタンと酸素のモル比を1:1から100:1、場合により4:1から80:1にしてもよい。メタンとトルエンのモル比1:1から50:1、場合により8:1から30:1にしてもよい。
【0011】
OCMおよびOMTの両方の方法ばかりでなく他の炭化水素カップリングおよびクロスカップリング反応でも、特定の反応条件、例えば温度などを調整することで生成物の選択率を調節することができる。また、温度を調整することで酸化カップリングによってもたらされる発熱の度合を変えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、比較実施例Aで実施したOMT試験実験のデータ(変換率および選択率を包含)を示すチャートである。
【図2】図2は、実施例Cで実施したOMT試験による様々な温度に渡るトルエン変換率を示すチャートである。
【図3】図3は、実施例Cで実施したOMT試験で得た様々な生成物の選択率を示すチャートである。
【図4】図4は、実施例Dで実施したOMT試験のデータ(変換率および選択率を包含)を示すチャートである。
【図5】図5は、実施例Eで実施したOCM試験のデータ(変換率および選択率を包含)を示すチャートである。
【図6】図6は、実施例Eで実施したOMT試験のデータ(変換率および選択率を包含)を示すチャートである。
【0013】
詳細な説明
酸化カップリングの結果は様々な要因、例えば反応条件、供給材料の源および内容および反応槽のデザインなどの影響を受け得る。当該反応で用いる触媒が最も重要な要因の中の1つであり得る。当該反応の有効性の測定は変換率、選択率および収率に換算して実施可能である。変換率は、化学反応を起こした反応体(例えばメタン、トルエン)のパーセントを指す。選択率は、ある混合物に入っている特定の化合物に関してある触媒が示した相対的活性を指す。選択率の量化を他のあらゆる生成物を基準にした特定の生成物の比率として行う。
【0014】
金属もしくは金属の組み合わせを担持する基質を含有して成る触媒を用いて炭化水素の
反応、例えばメタンの酸化カップリング(OCM)または炭化水素のクロスカップリング、例えばトルエンの酸化メチル化(OMT)などの反応に触媒作用を及ぼすことができる。そのような触媒を調製する方法、触媒の前処理および反応条件によってOCM、OMTおよび同様な工程の変換率、選択率および収率が影響を受け得る。
【0015】
1つの態様に従う本発明の触媒は基質、1種以上の金属助触媒および酸素を含有し得る。1つの態様に従う本発明の触媒が含有する基質の量は本触媒の40から90重量%の範囲であってもよく、前記基質は、ランタノイド族(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Th、Yb、Lu)、Mg、Caおよび周期律表の4族の元素(Ti、ZrおよびHf)から成るセットAの元素の中の1種以上で作られている。前記基質はLi、Na、K、Rb、Csおよび周期律表の3族の元素(LaおよびAcを包含)および5−15族の元素から成るセットBの元素の中の1種以上から選択した1番目の助触媒を担持しており、その1番目の助触媒の量は本触媒の0.01から40重量%の範囲である。前記基質は更にLi、Na、K、Rb、Cs、Ca、SrおよびBaから成るセットCの元素の中の1種以上から選択した2番目の助触媒も担持しており、その2番目の助触媒の量は本触媒の0.01から40重量%の範囲である。周期律表の1族に属する元素(Li、Na、K、Rb、Cs)をセットBの触媒作用元素として用いる時には、それをセットCの触媒作用元素として用いることはできない。本触媒に更に酸素から成るセットDも含有させ、それの量は10から45重量%の範囲である。パーセントは全部焼成を受けさせた後の触媒に関するパーセントである。
【0016】
本触媒はセットA、B、CおよびDの各々に属する少なくとも1種の元素をこの上に示した範囲内で含有する。本触媒の少なくとも90重量%は、焼成手順後の最終的触媒組成物に関して、セットA、B、Cの元素および酸素で構成されている。場合により、本触媒の少なくとも95重量%は、焼成手順後の最終的触媒に関して、セットA、B、CおよびDの元素で構成されていてもよい。最終的触媒に残存アニオン、例えば硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩および酢酸塩などが存在していても構わない。本触媒は活性、塩基性、寿命および他の特徴に関して多様であり得る。そのような多様性はセットA、B、CおよびDから選択する元素の選択およびそれらが本触媒中で示す個々の含有量の影響を受け得る。
【0017】
本触媒を構成する様々な元素は、適切な源のいずれかから誘導可能であり、例えば元素形態、または有機もしくは無機の性質を有する化合物もしくは配位錯体、例えば炭酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、燐酸塩、硫化物およびスルホン酸塩などの形態で誘導可能である。そのような元素および/または化合物の調製は、そのような材料の製造に関する技術で公知の適切な方法のいずれかで実施可能である。
【0018】
本明細書で用いる如き用語“基質”は、当該成分が必ず不活性であると同時に他の金属および/または助触媒が活性種であることを示すことを意味するものではない。対照的に、当該基質は本触媒の活性部分であってもよい。用語“基質”は単に当該基質が本触媒全体の有意な量、一般に40重量%以上を構成していることを暗示するものであり得る。そのような助触媒の量は個別に本触媒の0.01から40重量%、場合により0.01%から10%の範囲であってもよい。2種以上の助触媒を組み合わせる場合、それらを一緒にした量は一般に本触媒の0.01から50重量%の範囲であってもよい。本触媒組成物の元素を適切な源のいずれかから供給、例えば元素形態、塩、配位化合物などとして供給してもよい。
【0019】
本触媒の物性を向上させる目的で担体材料を添加することは本発明の範囲内であり得る。結合剤材料、押出し加工助剤または他の添加剤を本触媒組成物に添加してもよいか或は最終的触媒組成物を担体構造物をもたらす構造材料に添加してもよい。例えば、最終的触媒組成物をアルミナもしくはアルミン酸塩骨組を含有して成る構造材料で担持させてもよ
い。そのような結合剤材料、押出し加工助剤、構造材料または他の添加剤およびそれらの個々の焼成生成物の含有量を本明細書に示したセットA−Dに関して記述したパーセントの範囲の中に入れることは考えない。追加的例として、セットA−Dの中に含まれる元素を含有している可能性のある結合剤材料を本触媒組成物に添加することは可能である。そのような元素は、焼成後に変化、例えば酸化などで変化する可能性があり、それによって最終的触媒構造物の中の相対的酸素含有量が高くなるであろう。そのような結合剤材料の元素および焼成生成物を本明細書に示したセットA−Dに関して示したパーセント範囲の中に入れることは考えない。本発明の触媒を追加的元素、例えば結合剤、押出し加工助剤、構造材料または他の添加剤などおよびそれらの個々の焼成生成物と組み合わせた時の組み合わせは本発明の範囲内に含まれる。
【0020】
1つの面において、本発明は、OCM、OMTまたは別の酸化カップリング反応用の酸化用触媒を製造する方法である。1つの態様において、本触媒の調製はセットAに属する少なくとも1種の元素から選択した基質とセットBから選択した少なくとも1種の助触媒元素、セットCから選択した少なくとも1種の助触媒元素およびセットDに属する酸素を一緒にすることで実施可能である。本発明をそのような触媒製造方法で限定するものでなく、適切なあらゆる方法が本明細書の範囲内に入ると見なされるべきである。特に有効な技術は、固体状触媒の製造で利用される技術である。通常の方法には、水性、有機もしくは組み合わせた溶液−分散液から共沈を起こさせる方法、含浸、乾式混合、湿式混合などを単独またはいろいろな組み合わせで用いる方法が含まれる。一般的には、所定の成分を有効な量で含有する組成物をもたらす如何なる方法も使用可能である。1つの態様に従い、当該基質を助触媒で初期湿り含浸によって飽和させる。場合により、他の含浸技術、例えば浸漬、細孔容積含浸またはパーコレーションなどを用いることも可能である。また、代替方法、例えばイオン交換、ウォッシュコート、沈澱およびゲル生成などを用いることも可能である。触媒調製に関する様々な方法および手順がJ.Haber、J.H.BlockおよびB.Dolmonが1995年にInternational Union
of Pure and Applied Chemistry、67巻、Nos 8/9、1257−1306頁に発表した技術報告書Manual of Methods
and Procedures for Catalyst Characterization(全体が本明細書に組み入れられる)に示されている。
【0021】
1つの態様における基質は、セットAの1種以上の元素の金属酸化物であり得る。本発明で用いるに有用な酸化物である基質の一例は酸化マグネシウム、即ちMgOである。この酸化物である基質は商業的に入手可能であるか或は実験室で製造可能である。例えば、金属酸化物の相当する塩の熱分解を750℃に及ぶ高温で起こさせることで金属酸化物を生じさせることができる。酸化物である基質を生じさせる源の前駆体塩の選択によって最終的触媒の性能がある程度影響を受ける可能性がある。
【0022】
スラリー、沈澱物などを生じさせた場合、一般に、それらを乾燥、通常は水または他の担体を揮発させるに充分な温度、例えば100℃から250℃の温度で乾燥させる。前記成分をどのようにして一緒にするかに関係なくかつ前記成分の源に関係なく、その乾燥させた組成物に一般に焼成を遊離酸素含有ガスの存在下で通常は約300℃から約900℃の温度で1から24時間受けさせる。その焼成は酸素含有雰囲気または還元性もしくは不活性雰囲気中で実施可能である。
【0023】
当該触媒に応じて、その触媒の前処理は必要であるか或は必要でないかもしれない。1つの態様における本発明は、OCM、OMTまたは別の酸化カップリング反応用の酸化用触媒に前処理を受けさせることを伴う。そのようにして調製した触媒を粉砕、圧縮、ふるい分けした後、反応槽の中に充填してもよい。その反応槽は触媒粒子製造技術分野で公知の如何なる種類のものであってもよく、例えば固定床、流動床または揺動床反応槽などで
あってもよい。場合により、反応槽組み立てに再循環流れを含めることも可能である。場合により、その触媒床を支えかつ触媒を床の中に位置させる目的で不活性材料、例えば石英チップなどを用いることも可能である。前処理を行う場合、当該反応槽を空気流、例えば100mL/分などの空気流を伴わせて高温、例えば800℃から900℃の温度に加熱しそしてその条件をある時間、例えば1から3時間保持してもよい。次に、その反応槽を冷却して反応槽稼働温度付近の温度、例えば500℃から650℃または場合により大気温度または他の所望温度にしてもよい。その反応槽を不活性パージ、例えばヘリウム下などに維持してもよい。
【0024】
別の面において、本発明は、OCM、OMTまたは別の酸化カップリング反応用の反応条件に関する。反応の結果はいくつかのパラメーターの影響を受ける可能性があり、そのようなパラメーターには、供給材料の組成、炭化水素反応体と酸素のモル比、温度、圧力、稼働時間、製造方法、粒径、間隙率、表面積、接触時間などが含まれる。ほとんど全ての反応条件に関して、酸化カップリングに適した最良の値の範囲が存在し得る。一般的には、変換率および選択率が高くなる手段を採用する。
【0025】
メタンの酸化カップリングの場合、供給材料の内容物にメタンおよび酸素源を含めてもよい。酸素は酸化カップリング用供給材料の必要成分である。メタンは天然ガスまたは有機源、例えば廃棄物を発酵で分解させることなどで得ることができる。その源がどのような源であろうとも、OMTで用いるメタンは、酸化カップリング反応を有意に妨害するか或はそれに有害な影響を与える可能性がある汚染物を含有しているべきではない。そのような酸素源は酸素を反応ゾーンに供給するに適した如何なる源であってもよく、例えば高純度の酸素、酸素が豊富な空気または空気などであってもよい。そのような酸素含有ガスは、酸化カップリング反応を有意に妨害する可能性がある如何なる汚染物も含有しているべきでない。また、代替酸素源、例えばニトロベンゼン、酸化窒素または他の酸素含有化合物などを用いることも可能である。
【0026】
酸化カップリング反応を有意に妨害する可能性がある汚染物を回避すべきではあるが、反応調節剤を痕跡量で添加するのも有用であり得る。反応調節剤は、個々の触媒が示す変換率、選択率または活性を調節または変える目的でか或は特定の反応条件に応じて使用可能である。可能反応調節剤の非限定例には、塩素、エチレンおよび一酸化炭素が含まれる。
【0027】
気体の分圧を調整する目的で不活性希釈剤、例えばヘリウムおよび窒素などを供給材料の中に含めることも可能である。場合により、COまたは水(蒸気)などを供給材料流れの中に含めることも可能である、と言うのは、そのような成分は有益な特性、例えばコークスの沈着を防止する特性などを有する可能性があるからである。酸化カップリング反応に適した圧力は一般に1psiaから200psiaの範囲またはそれ以上であり得る。反応の圧力は本発明に関して限定要因ではなく、適切な如何なる条件も本発明の範囲内であると見なす。
【0028】
酸化カップリング反応に適した温度は一般に500℃から800℃、場合により600℃から750℃の範囲であり得る。反応の温度は本発明に関して限定要因ではなく、適切な如何なる条件も本発明の範囲内であると見なす。メタンと酸素のモル比を1:1から100:1、場合により4:1から80:1の範囲にしてもよい。
【0029】
適切な如何なる空間速度も本発明の範囲内であると見なすことができる。本明細書で用いる如き空間速度は下記:空間速度=[蒸気としての供給材料の流量(cm/時)]/[触媒の重量(g)]の如くであると定義する。そのような条件下で液体、例えばトルエンなどを供給用蒸気流れに変える時、標準的基準温度および圧力(72°Fおよび14.
7psia)を用いる。例えば、0.076cm/分の液状トルエンをモルに変換した後、22.4L/モル(それがあたかも理想気体であるとして)を用いてそれを16cm/分の蒸気流量に変換する。空間速度を一般的には15,000cm−1−1から100,000cm−1−1、場合により20,000cm−1−1から85,000cm−1−1の範囲にしてもよい。この範囲は可能な空間速度、例えば固定床反応槽に可能な空間速度の指標である。勿論、触媒の組成、不活性材料の量などを変えた時には空間速度を前記範囲外に変えることも可能である。また、反応槽を固定床から代替デザイン、例えば流動床などに変えた時にもまた相対的空間速度を劇的に変えてもよく、上述した範囲外にしてもよい。示した空間速度の範囲は本発明を限定するものでなく、適切な如何なる条件も本発明の範囲内であると見なす。
【0030】
トルエンの酸化メチル化ばかりでなく炭化水素を伴う他のクロスカップリング反応の場合にも、反応条件はメタンの酸化カップリングに関して記述した条件と同様であり得る。勿論、供給材料の内容も異なるであろう。OMTの場合には、供給材料にトルエンに加えてメタンおよび酸素を含める。酸素とメタンガスの混合物を反応槽管の入り口直前に位置させたトルエン蒸気飽和装置に通すか或は液状トルエンを気体流れの中にシリンジポンプで輸送しそしてそれを前以て加熱しておいたゾーン(250〜300℃)の中で気化させた後に反応槽の中に入れることで、トルエンを気化させて反応槽に導入してもよい。メタンと酸素のモル比を1:1から100:1、場合により4:1から80:1にしてもよい。メタンとトルエンのモル比を1:1から50:1、場合により8:1から30:1にしてもよい。温度を300℃から900℃、場合により350℃から750℃にしてもよい。
【0031】
以下に示す式、即ち式1−2は、OCM触媒を用いて反応槽内で起こさせることができる反応である。これらの式をエンタルピー、即ち反応熱の変化と一緒に示す。式1−2が示すように、OCM中に起こる反応は発熱反応である。
【0032】
式1. 2 CH4 + 0.5 O2 -----> C2H6 + H2O、ΔH = - 174.2 kJ/モル
式2. C2H6 + 0.5 O2 -----> C2H4 + H2O、ΔH = - 103.9 kJ/モル
【0033】
以下の実施例は、本発明の特定の面および態様のより良好な理解をもたらすことを意図したものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図したものでない。
【実施例】
【0034】
比較実施例A
Baによる助長を受けたMgO基質を含有して成る酸化用触媒を調製した。そのBa/MgO触媒をメタンの酸化カップリングおよびトルエンの酸化メチル化で用いた。この触媒はBaを5重量%含有しかつこれの調製を硝酸バリウム(6.53g)(Sigma Aldrich、98.0%)およびMgO(23.46g)(Fisher、99%)を用いて水溶液中の初期湿り含浸方法で実施した。その混合物に乾燥を120℃で3時間に続いて焼成を850℃の空気中で1時間受けさせた。その触媒を粉砕し、圧縮し、ふるい分けして20−40のメッシュサイズ(420−841μm)にした後、0.577gの触媒を石英製反応槽の中に充填し、その触媒床を適当な場所に保持する目的で石英ウールプラグおよび石英チップを用いた。触媒の前処理では、前記反応槽を100ml/分の空気下で850℃に加熱して2時間保持した。次に、その反応槽をヘリウム下で600℃に冷却することで、OCMおよびOMT実験の準備を実施した。
【0035】
2つのOCM試験を実施した。1つの試験では反応槽の温度を600℃にし、もう一方の試験では反応槽の温度を650℃にした。この2つの試験を実施している間、温度以外のあらゆる反応条件を一定に保持した。酸素源を空気にした。メタンと酸素のモル比を5
:1にした。気体の総流量を500cm/分(250cm/分の空気および250cm/分のメタン)にしそして空間速度を51,993cm−1−1にした。以下の表に、その2つの試験の結果を示す。本明細書で用いる如きC選択率は、アセチレン、エタンおよびエチレンの累積選択率である。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、600℃の時のメタン活性化は非常に僅かでエチレンは全く生じなかった。650℃にするとメタン変換率が高くなって14.3%になりかつエチレン選択率が31.4%になった。
【0038】
トルエンの酸化メチル化に関して4つの試験を550℃から650℃の範囲の反応温度で実施した。この4つの試験を行っている間、温度以外のあらゆる反応条件を一定に保持した。酸素源を空気にした。メタンと酸素のモル比を5:1にした。メタンとトルエンのモル比を15:1にした。気体の総流量を500cm/分(240cm/分の空気、244cm/分のメタン、0.076cm/分の液状トルエン)にしそして空間速度を51,993cm−1−1にした。20分間の実験時間後に生成物のサンプルを採取して生成物の分布に関して分析した。これらの試験の結果を以下の表に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
これらの結果をまた図1にも示す。図1は、表2に示したデータのグラフ図である。x軸に540℃から650℃の温度を示す。グラフの左側のy軸はトルエンの変換率パーセントに相当する。分かるであろうように、温度を高くするにつれてトルエン変換率が3%から10%に上昇した。グラフの右側のy軸は、あらゆる反応生成物の選択率パーセントに相当する。その生成物にはベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、スチレン、ベンズアルデヒドおよびスチルベンが含まれていた。ベンゼンが選択率が最も高い生成物であった。しかしながら、その選択率は570℃の時にピークに到達した後、徐々に低下した。他
方、スチレンは温度と共に徐々に増加した。鍵となる生成物の変換率および選択率は温度に伴って変わり得ることから、温度を基にして生成物の選択率を調整することは可能であり得る。例えば、ベンゼンおよびスチレンは両方とも価値ある生成物であり得る。そのような生成物の需要は変動する可能性があり、従って、温度を調整することで前記2種類の中のどちらかがOMTの主要生成物になるように調節することができることは有用であり得る。他の生成物の選択率はあまり変動しなかった。ベンズアルデヒドの場合には選択率が30%から575℃の時の1%未満にまで急速に低下した。エチルベンゼン選択率、総キシレン選択率およびスチルベン選択率はあらゆる試験実験で低いままであった。
【0041】
比較実施例B
Liによる助長を受けた酸化物基質であるMgOを含有して成る酸化用触媒を調製した。そのLi/MgO触媒をトルエンの酸化メチル化で用いた。この触媒はLiを2.5重量%含有しかつこれの調製を炭酸リチウム塩(13.69g)(Sigma Aldrich、98.0%)およびMgO(16.304g)(Fisher、99%)を用いて水溶液中の初期湿り含浸方法で実施した。その混合物に乾燥を120℃で3時間に続いて焼成を850℃の空気中で1時間受けさせた。その触媒を粉砕し、ふるい分けして20−40のメッシュサイズにした後、0.542gの触媒を石英製反応槽の中に充填し、その触媒床を適当な場所に保持する目的で石英ウールプラグおよび石英チップを用いた。1つの形態の触媒前処理として、前記反応槽を100ml/分の空気下で850℃に加熱して2時間保持した。次に、その反応槽をヘリウム下で600℃に冷却することで、OMT実験の準備を実施した。
【0042】
トルエンの酸化メチル化では、反応温度を650℃にし、酸素源を空気にし、総気体流量を335cm/分(150cm/分の空気、150cm/分のメタン、0.167cm/分の液状トルエン)にし、メタンと酸素のモル比を5:1にしそしてメタンとトルエンのモル比を15:1にした。反応を異なる2種類の空間速度で2回実施した。1回目の試験では空間速度を37,085cm−1−1にした。2回目の試験では供給材料を窒素ガスで希釈することで空間速度を70,295cm−1−1に調整した(150cm/分の空気、150cm/分のメタン、0.167cm/分の液状トルエン、300cm/分の窒素)。空間速度は反応槽内の滞留時間と逆の関係にあり、空間速度を変えると反応体と触媒の間の接触時間が影響を受ける。空間速度を速くすると滞留時間および接触時間が短くなりかつ所定時間の間に触媒の上を通る反応体の量が多くなる。
【0043】
前記2つのOMT試験の結果を以下の表に示す。20分間が経過した時の気体および液体サンプルに分析を生成物の分布に関して受けさせた。
【0044】
【表3】

【0045】
空間速度を速くすればするほどスチレンに対する選択率が高くなった(9.9%に比較して10.4%)。トルエンの場合には変換率が4.3%から3.7%にまで降下した。ベンゼンおよびエチルベンゼン生成に対する選択率は空間速度を速くしても変化がなかった。しかしながら、スチルベン選択率は2.6から8.1モル%に劇的に上昇した。
【0046】
(実施例C)
Na、CsおよびReによる助長を受けたMgO基質を含有して成る酸化用触媒を調製した。そのNa/Cs/Re/MgO触媒をメタンの酸化カップリングおよびトルエンの酸化メチル化で用いた。この触媒は水溶液中の初期湿り含浸方法によって塩化ナトリウムのNaを5重量%(3.811g)、硝酸セシウムのCsを5重量%(2.199g)、塩化レニウムのReを0.01重量%(0.5856g)およびMgO(23.4033g)(Fisher、99%)を含有していた。その混合物に乾燥を120℃で3時間に続いて焼成を850℃の空気中で1時間受けさせた。その触媒を粉砕し、ふるい分けして20−40のメッシュサイズ(420−841μm)にした後、0.597gの触媒を石英製反応槽の中に充填し、その触媒床を適当な場所に保持する目的で石英ウールプラグおよび石英チップを用いた。触媒の前処理では、前記反応槽を100ml/分の空気下で850℃に加熱して2時間保持した。次に、その反応槽をヘリウム下で600℃に冷却することで、OCMおよびOMT実験の準備を実施した。
【0047】
4つのOCM試験を600℃から750℃の範囲の反応温度で実施した。全ての試験で酸素源を空気にし、気体の総流量を500cm/分(250cm/分の空気および250cm/分のメタン)にし、メタンと酸素のモル比を5:1にしそして空間速度を50,251cm−1−1にした。25分間の実験時間後に生成物のサンプルを採取して生成物の分布に関する分析を実施した。これらの試験の結果を以下の表に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
5つのOMT試験を550℃から750℃の範囲の反応温度で実施した。全ての試験で酸素源を空気にし、気体の総流量を500cm/分(244cm/分のメタン、240cm/分の空気、0.076cm/分の液状トルエン)にし、メタンと酸素のモル比を5:1にし、メタンとトルエンのモル比を15:1にしそして空間速度を50,251cm−1−1にした。最初の20分間の実験時間後に生成物のサンプルを採取して生成物の分布に関する分析を実施した。これらの試験の結果を以下の表に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
図2および3は、表5に示したデータのグラフ図である。図2にトルエン変換率のデータを示し、x軸に温度を示しそしてy軸に変換率パーセントを示す。トルエンの変換率は550℃の時の1.7%から750℃の時の39.9%にまで上昇した。図3に、選択率に関するデータを示す。温度を550℃から約685℃にするとベンゼンが主要な生成物になり、選択率は50%以上である。約685℃の時にベンゼンの選択率とスチレンの選択率が交差しそして685℃以上にするとスチレンが主要な生成物になる。また、この685℃のおおよその温度はスチレン生成速度が変化する点も示している。スチレンの選択率は550℃から685℃にした時に有意に上昇し(11.6%から46.2%に)たが、685℃以上にした時の選択率が上昇する度合は相対的に僅かである(46.2%から49.4%)。
【0052】
他の生成物の選択率は試験温度全体に渡って低下するか或は低いままであった。例えば、ベンズアルデヒドの選択率は550℃の時の30.6%から750℃の時の2.0%にまで低下した。
【0053】
最も一般的にはスチレンがOMTの所望生成物である。しかしながら、また、需要および工程の必要性に応じてまた他の生成物が望まれることもあり得る。例えば、エチルベン
ゼンが所望生成物であることもあり得る、と言うのは、それをスチレンに脱水素で変化させる技術が充分に確立されたからである。従って、反応条件、例えば温度などを変えることで生成物の分布に影響を与えることができることは本方法の有用な特徴である。ベンゼンが選択率が最も高い生成物であった。しかしながら、その選択率は600℃の時にピークに到達した後、徐々に低下した。他方、スチレンは温度と共に徐々に増加した。鍵となる生成物の変換率および選択率は温度に伴って変わり得ることから、温度を基にして生成物の選択率を調整することは可能であり得る。例えば、ベンゼンおよびスチレンは両方とも価値ある生成物であり得る。そのような生成物の需要は変動する可能性があり、従って、温度を調整することで前記2種類の中のどちらかがOMTの主要生成物になるように調節することができることは有用であり得る。
【0054】
(実施例D)
CaおよびLaによる助長を受けた酸化物基質であるMgOを含有して成る酸化用触媒を調製した。そのCa/La/MgO触媒をメタンとトルエンの酸化カップリングで用いた。この触媒は酸化カルシウムによるCaを5重量%(2.10g)および酸化ランタンによるLaを5重量%(3.51g)含有しかつこれの調製を酸化カルシウム塩、La(Sigma Aldrich、98.0%)およびMgO(24.38g)(Fisher、99%)を用いて水溶液中の初期湿り含浸方法で実施した。その混合物に乾燥を120℃で3時間に続いて焼成を850℃の空気中で1時間受けさせた。その触媒を粉砕し、ふるい分けして20−40のメッシュサイズにした後、0.661gの触媒を石英製反応槽の中に充填し、その触媒床を適当な場所に保持する目的で石英ウールプラグおよび石英チップを用いた。1つの形態の触媒前処理として、前記反応槽を100ml/分の空気下で850℃に加熱して2時間保持した。次に、その反応槽をヘリウム下で600℃に冷却することで、OMT実験の準備を実施した。
【0055】
前記Ca/La/MgO触媒を用いた4つのOMT試験を550℃から700℃の温度で実施した。温度以外の反応条件を一定に保持した。酸素源を空気にした。気体の総流量を498cm/分(244cm/分のメタン、240cm/分の空気、0.076cm/分の液状トルエン)にした。メタンと酸素のモル比を5:1にした。メタンとトルエンのモル比を15:1にした。空間速度を45,204cm−1−1にした。20分後に生成物に分析を生成物の分布に関して受けさせた。以下の表に前記4つのOMT試験の結果を示す。
【0056】
【表6】

【0057】
図4は、表6に示したデータのグラフ図である。トルエン変換率は温度を高くするにつれて上昇し、550℃の時の約3%の変換率から700℃の時のほぼ13%の変換率になった。また、生成物の分布も温度に伴って変化した。スチレン選択率は550℃の時の約40%から700℃の時のほぼ60%にまで高くなった。他のあらゆる生成物の選択率は
低く、一般に温度を高くするにつれて選択率が低下した。
【0058】
(実施例E)
SrおよびLaによる助長を受けた酸化物基質であるMgOを含有して成る酸化用触媒を調製した。そのSr/La/MgO触媒をメタンの酸化カップリングおよびトルエンの酸化メチル化で用いた。この触媒は硝酸ストロンチウムによるSrを5重量%(3.62g)および酸化ランタンによるLaを5重量%(3.51g)含有しかつこれの調製をSr(NO塩、La(Sigma Aldrich、98.0%)およびMgO(22.85g)(Fisher、99%)を用いて水溶液中の初期湿り含浸方法で実施した。その混合物に乾燥を120℃で3時間に続いて焼成を850℃の空気中で1時間受けさせた。その触媒を粉砕し、ふるい分けして20−40のメッシュサイズにした後、0.855gの触媒を石英製反応槽の中に充填し、その触媒床を適当な場所に保持する目的で石英ウールプラグおよび石英チップを用いた。1つの形態の触媒前処理として、前記反応槽を100ml/分の空気下で850℃に加熱して2時間保持した。次に、その反応槽をヘリウム下で600℃に冷却することで、OCMおよびOMT実験の準備を実施した。
【0059】
前記Sr/La/MgO触媒を用いた5つのOCM試験を実施した。この5つの試験は500℃から700℃の範囲の5種類の温度に相当する。5つの試験全部で酸素源を空気にし、気体の総流量を500cm/分(250cm/分のメタン、250cm/分の空気)にし、メタンと酸素のモル比を5:1にしそして空間速度を35,088cm−1−1にした。最初の25分後に相当する気体サンプルに生成物の分布および選択率に関する分析を受けさせた。表7に前記5つのOMT試験の結果を示す。
【0060】
【表7】

【0061】
600℃未満の時にはC生成物(アセチレン、エタンおよびエチレン)の選択率は限られていて部分酸化生成物であるCOが生成物の大きな部分を占めていた。600℃以上にするとメタン変換率がより高くなり、C生成物がより高い選択率を示すと同時にCOの選択率は低くなった。
【0062】
図5は、表7に示したデータのグラフ図である。温度が550℃から600℃の範囲の時、メタン変換率およびC選択率が突然上昇すると同時にCO選択率が劇的に降下する。この上に示した実施例の場合と同様に、そのような結果は、温度を変えることで生成物の分布を調整することができることを示している。
【0063】
前記Sr/La/MgO触媒を4つのOMT試験で温度を500℃から650℃にして用いた。これらの試験を実施する時、温度以外のあらゆる反応条件を一定に保持した。酸素源を空気にした。気体の総流量を498cm/分(244cm/分のメタン、24
0cm/分の空気、0.067cm/分の液状トルエン)にした。メタンと酸素のモル比を5:1にした。メタンとトルエンのモル比を15:1にした。空間速度を34,947cm−1−1にした。20分後に生成物のサンプリングそして分析を実施した。以下の表に、前記4つのOMT試験の結果を示す。
【0064】
【表8】

【0065】
図6は、表8に示したデータのグラフ図である。温度を高くするにつれてトルエン変換率が上昇し、500℃の時の0.4重量%から650℃の時の15.8重量%になった。温度を高くするにつれてまたスチレン選択率も一般的上昇を示し、500℃の時の4.5重量%から600℃の時の43.0重量%にまで上昇した。ベンゼン選択率は初期に選択率の上昇を示すことに加えて550℃の時に51重量%のピークに到達した。しかしながら、温度を550℃以上にすると、ベンゼン選択率が低下して650℃の時に16.2重量%になった。約595℃の時にベンゼン選択率とスチレン選択率が約42.0重量%の所で交差した。そのような温度はまたスチレン生成速度が変化する点も示していると思われる。595℃未満では、温度を高くするにつれてスチレン選択率が徐々に上昇したが、その温度以上にするとスチレン選択率が変化する度合は非常に僅かになった。ベンゼンおよびスチレンを除くあらゆる生成物は温度を高くするにつれて選択率の一般的低下を示した。
【0066】
本明細書ではデータを例示する目的で図を用いるが、それらをグラフ上にデータ点として示す。データの一般的傾向を示す時、データ点をつなぐ線を用いて視線を導くことでそれを補助する。その線は追加的データ点を入手することができるとしてもそれらが必ず収まるであろう場所を予測する判断材料として意図したものでない。
【0067】
本明細書で用いる如き用語“C選択率”は、アセチレン、エタンおよびエチレンの累積選択率である。
【0068】
本明細書で用いる如き“OCM”の省略形は、メタンの酸化カップリングを指す。例えば、メタンとメタンのカップリングを起こさせることでより高級な炭化水素、例えばエタンまたはエチレンなどを生じさせることができる。
【0069】
本明細書で用いる如き“OMT”の省略形は、新規な化合物を生じさせるためのトルエンの酸化メチル化を指す。例えば、トルエンとメタンのカップリングを起こさせることでエチルベンゼンおよび/またはスチレンを生じさせることができる。
【0070】
ある請求項のいずれかの要素に関して用語“場合により”を用いる場合、その主要な要素が必要であるか或は必要でないことを意味することを意図する。両方の代替ともその請求項の範囲内であることを意味する。より幅広い用語、例えば含んで成る、包含する、有
するなどの使用は、より狭い用語、例えばから成る、から本質的に成る、で実質的に構成されているなどの用語の下支えを与える目的であると理解されるべきである。
【0071】
本明細書で用いる如き空間速度は、空間速度=[蒸気としての供給材料の流量(cm/時)]/[触媒の重量(g)]であると定義する。
【0072】
この上に示した実施例で本発明の可能な態様を立証する。本明細書で“発明”を言及する場合、内容に応じて、全部がある場合には特定の具体的態様のみを指し得る。他の場合には、それは本請求項の中の必ずしも全部ではないが1つ以上に示した主題事項を指し得る。前記は本発明の態様、バージョンおよび例に向けたものであり、それらは、通常の当業者が本特許に示した情報を入手可能な情報および技術と組み合わせた時に本発明を作成および使用することができるようにする目的で含めたものであるが、本発明をそのような個々の態様、バージョンおよび例にのみ限定するものでない。本発明の基本的範囲から逸脱することなく本発明の他のさらなる態様、バージョンおよび例を考案することができ、それの範囲を以下の請求項で決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒であって、
(A)ランタノイド族、Mg、Caおよび周期律表の4族の元素(Ti、ZrおよびHf)から成る群より選択される少なくとも1種の元素、
(B)周期律表の1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび3族の元素(LaおよびAcを包含)および5−15族の元素から成る群より選択される少なくとも1種の元素、
(C)1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび元素Ca、SrおよびBaから成る群より選択される少なくとも1種の元素、および
(D)酸素、
を含有して成っていて周期律表の1族に属する元素が(B)で用いられている時にはそれが(C)で用いられることはあり得ない触媒。
【請求項2】
(A)で選択した少なくとも1種の元素が触媒の40から90重量%の範囲である請求項1記載の触媒。
【請求項3】
(B)で選択した少なくとも1種の元素が触媒の0.01から40重量%の範囲である請求項1記載の触媒。
【請求項4】
(C)で選択した少なくとも1種の元素が触媒の0.01から40重量%の範囲である請求項1記載の触媒。
【請求項5】
(D)に示した酸素が触媒の10から45重量%の範囲である請求項1記載の触媒。
【請求項6】
前記元素を一緒にした後に焼成を受けさせた請求項1記載の触媒。
【請求項7】
前記焼成が750℃以上に加熱することを含んで成る請求項6記載の触媒。
【請求項8】
メタンの酸化カップリングを温度が500℃から750℃の反応槽内で起こさせる能力を有する請求項6記載の触媒。
【請求項9】
メタンの酸化カップリングをメタンと酸素のモル比が1:1から100:1の反応槽内で起こさせる能力を有する請求項6記載の触媒。
【請求項10】
メタンおよびトルエンから成る炭化水素の酸化カップリングを起こさせる能力を有しかつメタンとトルエンの酸化カップリングの生成物がエチルベンゼンおよびスチレンを含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項11】
メタンとトルエンの酸化カップリング用の供給材料がメタン、トルエンおよび酸素または酸素源を含有して成る請求項10記載の触媒。
【請求項12】
メタンとトルエンの酸化カップリングを温度が500℃から800℃の反応槽内で起こさせる請求項11記載の触媒。
【請求項13】
メタンとトルエンの酸化カップリングをメタンと酸素のモル比が1:1から100:1の反応槽内で起こさせる請求項11記載の触媒。
【請求項14】
メタンとトルエンの酸化カップリングをメタンとトルエンのモル比が1:1から50:1の反応槽内で起こさせる請求項11記載の触媒。
【請求項15】
炭化水素の酸化カップリングで用いるに先立って前以て750℃以上に加熱しておく請求項14記載の触媒。
【請求項16】
当該触媒の使用でもたらされる反応生成物の調整を反応温度の調整で実施することを可能にする請求項1記載の触媒。
【請求項17】
当該触媒の使用でもたらされる反応生成物の調整を反応空間速度の調整で実施することを可能にする請求項1記載の触媒。
【請求項18】
触媒であって、
(A)ランタノイド族、Mg、Caおよび周期律表の4族の元素(Ti、ZrおよびHf)から成る群より選択される少なくとも1種の元素を触媒の40から90重量%の範囲、(B)周期律表の1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび3族の元素(LaおよびAcを包含)および5−15族の元素から成る群より選択される少なくとも1種の元素を触媒の0.01から40重量%の範囲、
(C)1族の元素であるLi、Na、K、Rb、Csおよび元素Ca、SrおよびBaから成る群より選択される少なくとも1種の元素を触媒の0.01から40重量%の範囲、および
(D)酸素を触媒の10から45重量%の範囲、
の量で含有して成っていて周期律表の1族に属する元素が(B)で用いられている時にはそれが(C)で用いられることはあり得ず、かつ
前記元素を一緒にした後に焼成を受けさせた触媒。
【請求項19】
メタンの酸化カップリングでエタンおよびエチレンを生じさせる能力を有する請求項18記載の触媒。
【請求項20】
メタンとトルエンの酸化カップリングでエチルベンゼンおよびスチレンを生じさせる能力を有する請求項18記載の触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532010(P2012−532010A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517751(P2012−517751)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039886
【国際公開番号】WO2011/002664
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】