説明

炭素質原料の処理方法及び処理装置

【課題】対向流式シャフト型熱分解炉で生成されるクリンカの弊害を排除しつつ、炭化物の破砕、冷却及び選別工程の処理量を低減する。
【解決手段】(a)対向流式シャフト型熱分解炉1により炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成し、(b)前記熱分解炉1で生成された前記熱分解ガスをガス処理装置2に導入し、(c)前記ガス処理装置2により、前記熱分解炉1から導入された前記熱分解ガスを処理するとともに、当該熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物を当該熱分解ガスから分離して回収し、(d)前記熱分解炉1で生成された前記炭化物と、前記熱分解処理により前記熱分解炉内で発生したクリンカとの混合物を、前記熱分解炉1の下部から排出し、(e)前記熱分解炉1から排出された前記混合物を破砕し、(f)前記破砕された混合物を冷却し、(g)前記冷却された混合物の中から前記炭化物を選別して回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質原料の処理方法及び処理装置に関し、特に、熱分解炉で生成された炭化物の回収処理量を低減するための炭素質原料の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量を削減する狙いから、廃棄物原料を有価資源として活用することが試みられている。この廃棄物原料は、例えば、木質系バイオマス(建築廃材、間伐材、林地残材等)、下水汚泥、都市ゴミ、廃プラスチック、廃タイヤ等の多様な廃棄物を複合的に含む原料である。これら廃棄物の多くは炭素を含んでおり、炭素を含む有機物を主体とする原料を炭素質原料と称する。
【0003】
しかし、上記炭素質原料の多くは水分を多く含んでいるため、当該炭素質原料を熱分解炉で熱分解して生成した熱分解ガスの発熱量は低く、かつ、大きく変動する。従って、かかる炭素質原料は、主として燃焼発電に用いられる。近年では、上記炭素質原料を熱分解して生成された熱分解ガスを改質炉により改質し、この改質ガスを原燃料ガスとして効率よく利用する手法が種々提案されている。
【0004】
かかる改質ガスの主な用途は、ガスエンジン又は蒸気ボイラ等における燃焼発電である。炭素質原料を一旦ガス化することによって、大きいサイズの固体を直接燃焼する場合よりも、ハンドリング性及び制御性が向上する。また、必要以上の熱を加えないため、熱効率(原料潜熱に対し、使用可能なガス燃料潜熱への転換効率)も向上する。さらに、炭素質原料の熱分解により生成される炭化物(熱分解による炭素質残渣)は、原料の破砕に比べると低動力で微粉炭のように容易に微破砕可能であるので、燃焼利用しやすく、ガス化溶融炉等の追加による系内ガス転換や、微粉炭等の燃焼設備等による系外燃焼利用が容易に可能である。これらの利点から、特に低質とされているバイオマス系原料を含んだ炭素質原料の有効利用に関して技術開発が進められている。
【0005】
例えば特許文献1には、熱分解炉で炭素質原料を熱分解することによって、熱分解ガスを生成するとともに、当該熱分解により生じた炭化物残渣をガス化原料として利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−41848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記炭素質原料の熱分解処理後の炭化物残渣は2種類ある。ひとつは、熱分解炉から直接排出される大径の塊状炭化物(例えば数十mm以下)であり、もうひとつは、熱分解炉の後段に設けられたガス処理装置(改質炉、ガス精製装置等)から排出される微粉状炭化物(例えば数十μm以下)である。微粉状炭化物は、熱分解炉からガス処理装置に導入される熱分解ガスに同伴して、不可避的にガス処理設備に進入する。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1等に記載の従来技術では、熱分解炉から排出される塊状炭化物を回収しているが、ガス処理設備において微粉状炭化物を分離・回収して有効利用していなかった。本願発明者の検討によれば、上記塊状炭化物と微粉状炭化物の発生比率は、塊状炭化物:微粉状炭化物=5:5〜7:3(質量比)であり、微粉状炭化物の発生量は塊状炭化物の発生量に匹敵することが分かった。従って、塊状炭化物のみならず、微粉状炭化物も回収して、有効利用することが望ましい。
【0009】
そこで、上記塊状炭化物及び微粉状炭化物を回収する方法について検討する。塊状炭化物と微粉状炭化物は、上記熱分解処理による炭素質残渣を含む同質の材料である。また、各々の炭化物は、300℃以上の高温域より排出されることから、発火等を防ぎ、安全に搬送処理するためには、各々の炭化物を冷却する必要がある。従って、塊状炭化物及び微粉状炭化物を回収するに当たり、回収設備の簡略化の観点からすれば、当該2種類の炭化物の回収系統をひとつに集約して、両者を同一の回収系統で同時に処理(冷却等)する方法が、当業者にとって一般的である。
【0010】
ところが、本願発明者が鋭意研究したところ、実際に対向流式シャフト型熱分解炉を用いて木質系バイオマスを主体とする炭素質原料を熱分化した場合、当該原料中の灰分が凝縮・固化した大塊(クリンカ)が熱分解炉内に発生することが判明した。
【0011】
対向流式シャフト型熱分解炉では、炉下部から炭化物を回収するために、炉内温度は比較的低温であり、炉上部より排出される熱分解ガスの温度は例えば400℃程度、炉下部より排出される炭化物の温度は例えば300〜600℃程度である。従って、かかる低温の熱分解炉で原料を熱分解したとしても、一般的にはクリンカは発生しにくいと考えられてきた。勿論、廃プラスチック等の低融点原料を熱分解した場合や、炉内温度が1000℃以上のガス化炉で原料をガス化した場合に、クリンカが発生することは知られている。しかしながら、上記低温の対向流式シャフト型熱分解炉において木質系バイオマスを熱分解した場合に、炉内にクリンカが不可避的に発生することは、従来にはない新たな知見である。
【0012】
このように熱分解炉においてクリンカが発生する場合、当該熱分解炉から排出される塊状炭化物とクリンカの混合物と、上記ガス処理設備から排出される微粉炭化物とを、同一の回収系統でまとめて処理すると、以下の弊害がある。即ち、クリンカは、塊状炭化物と比べて、大径(例えば250mm程度)かつ硬質であり、容易に冷却されない。従って、当該混合物からクリンカと塊状炭化物を選別するためには、まず破砕機にてクリンカを冷却に適した程度に破砕した上で、冷却効果の高い冷却装置で冷却する工程が必須となる。一方、ガス処理設備で回収される微粉炭化物は、冷却されやすいので、冷却効果の高い冷却装置を用いる必要がなく、また、破砕及び選別工程も不要である。従って、図7に示すように、微粉炭化物と塊状炭化物を同一の回収系統でまとめて処理すると、破砕、冷却及び選別工程の処理量が増大するので、大きな処理設備が必要となり、処理エネルギーも無駄になるという問題があった。さらに、微粉炭化物が破砕機の隙間に入り込んでしまうため、クリンカや塊状炭化物の破砕効率が低下するという問題もあった。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、対向流式シャフト型熱分解炉で生成されるクリンカの弊害を排除しつつ、炭化物の破砕、冷却及び選別工程の処理量を低減することが可能な、新規かつ改良された炭素質原料の処理方法及び処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、(a)対向流式シャフト型熱分解炉により、少なくとも木質系バイオマスを含む炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成する工程と、(b)前記熱分解炉で生成された前記熱分解ガスをガス処理装置に導入する工程と、(c)前記ガス処理装置により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを処理するとともに、当該熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物を当該熱分解ガスから分離して回収する工程と、(d)前記熱分解炉で生成された前記炭化物と、前記熱分解処理により前記熱分解炉内で発生したクリンカとの混合物を、前記熱分解炉の下部から排出する工程と、(e)前記熱分解炉から排出された前記混合物を破砕する工程と、(f)前記破砕された混合物を冷却する工程と、(g)前記冷却された混合物の中から前記炭化物を選別して回収する工程と、を含むことを特徴とする、炭素質原料の処理方法が提供される。
【0015】
(h)前記(e)工程より前に、前記熱分解炉から排出された前記混合物を、第1の冷却方式で一次冷却する工程を更に含み、前記(f)工程では、前記第1の冷却方式よりも冷却効果の高い第2の冷却方式で、前記破砕された混合物を二次冷却するようにしてもよい。
【0016】
(i)前記ガス処理装置から回収された前記微粉状炭化物を、前記第1の冷却方式で冷却する工程を更に含むようにしてもよい。
【0017】
前記ガス処理装置は、少なくとも改質炉及び除塵装置を備え、前記(c)工程は、(c1)前記改質炉により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する工程と、(c2)前記改質炉に設けられた第1の回収装置により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する工程と、(c3)前記除塵装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスから、当該改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物を分離して回収する工程と、(c4)前記(c2)及び(c3)工程により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収する工程と、を含むようにしてもよい。
【0018】
前記ガス処理装置は、前記改質炉と前記除塵装置の間に設けられたガス温調整装置を更に含み、前記(c)工程は、(c5)前記ガス温調整装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスの温度を、前記除塵装置に適した温度に調整する工程と、(c6)前記ガス温調整装置に設けられた第2の回収装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する工程と、
を更に含み、前記(c4)工程では、前記(c2)、(c3)及び(c6)工程により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収するようにしてもよい。
【0019】
前記炭素質原料は、前記木質系バイオマスに加え、廃タイヤ又は廃プラスチックのいずれか一方若しくは双方を含むようにしてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、少なくとも木質系バイオマスを含む炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成し、前記炭化物と、前記熱分解処理により前記熱分解炉内で発生したクリンカとの混合物を下部から排出する対向流式シャフト型熱分解炉と、前記熱分解炉の下部から排出された前記混合物から前記炭化物を回収する第1の回収系統と、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを処理するガス処理装置と、前記熱分解炉から前記ガス処理装置に導入された前記熱分解ガスから、当該熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物を分離して回収する第2の回収系統と、を備え、前記第1の回収系統は、前記熱分解炉から排出された前記混合物を破砕する破砕装置と、前記破砕された混合物を冷却する第1の冷却装置と、前記冷却された混合物から前記炭化物を選別する選別装置と、を備えることを特徴とする、炭素質原料の処理装置が提供される。
【0021】
前記第1の回収系統は、前記熱分解炉から排出された前記混合物を、第1の冷却方式で一次冷却する第2の冷却装置を更に備え、前記第1の冷却装置は、前記第1の冷却方式よりも冷却効果の高い第2の冷却方式で、前記破砕された混合物を二次冷却するようにしてもよい。
【0022】
前記第2の回収系統は、前記ガス処理装置から回収された前記微粉状炭化物を、前記第1の冷却方式で冷却する第3の冷却装置を備えるようにしてもよい。
【0023】
前記ガス処理装置は、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する改質炉を備え、前記第2の回収系統は、前記改質炉に設けられ、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する第1の回収装置と、前記改質炉から導入された前記改質ガスから、当該改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物を分離して回収する除塵装置と、を備え、前記第1の回収装置及び前記除塵装置により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収するようにしてもよい。
【0024】
前記ガス処理装置は、前記改質炉と前記除塵装置の間に設けられ、前記改質炉から導入された前記改質ガスの温度を、前記除塵装置に適した温度に調整するガス温調整装置を更に備え、前記第2の回収系統は、前記ガス温調整装置に設けられ、前記改質炉から導入された前記改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する第2の回収装置を更に備え、前記改質炉、前記ガス温調整装置及び前記除塵装置により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収するようにしてもよい。
【0025】
前記炭素質原料は、前記木質系バイオマスに加え、廃タイヤ又は廃プラスチックのいずれか一方若しくは双方を含むようにしてもよい。
【0026】
上記構成によれば、第1の回収系統により、熱分解炉から排出される塊状の炭化物とクリンカを含む混合物を、破砕、冷却及び選別することで、当該混合物から炭化物を回収する。一方、第2の回収系統により、ガス処理装置から排出される微粉状炭化物を回収する。これにより、塊状の炭化物と微粉状炭化物を分離して回収できるので、熱分解炉から排出される混合物に対する破砕、冷却及び選別工程の処理量を低減できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、対向流式シャフト型熱分解炉で生成されるクリンカの弊害を排除しつつ、炭化物の破砕、冷却及び選別工程の処理量を低減できる。従って、これら工程の処理設備の小型化及び処理エネルギーの省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る炭素質原料の処理装置を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る炭素質原料の処理装置の各部から排出される炭化物の発生割合と温度を示す説明図である。
【図3】同実施形態に係る炭素質原料の処理装置の各部から排出される炭化物の発生割合と温度を示す説明図である。
【図4】同実施形態の変更例に係る炭素質原料の処理装置を示す模式図である。
【図5】図1に示す処理装置を用いて微粉状炭化物と塊状炭化物を分離回収する処理方法を示す工程図である。
【図6】図4に示す処理装置を用いて微粉状炭化物と塊状炭化物を分離回収する処理方法を示す工程図である。
【図7】本発明の比較例に係る微粉状炭化物と塊状炭化物を混合回収する処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
[1.炭素質原料の処理装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る炭素質原料の処理装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る炭素質原料の処理装置を示す模式図である。
【0031】
本実施形態に係る炭素質原料の処理装置(以下「原料処理装置」と称する。)は、事前炭化式可燃性ガス及び炭化物回収装置である。当該原料処理装置は、炭素質原料を熱分解して炭化させることにより、熱分解ガスと炭化物(熱分解による炭素質残渣)を生成し、当該熱分解ガスから生成した可燃性ガスをガス燃料として回収するとともに、上記炭化物も固形燃料として回収する。
【0032】
ここで、炭素質原料は、炭素を含む有機物を主体とする原料であり、例えば、バイオマス(特に、木質系バイオマス)、廃プラスチック、廃タイヤ、下水汚泥、一般廃棄物ゴミ等の廃棄物原料を含む。バイオマスは、生物由来の有機性資源であり、例えば、林業系バイオマス(製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等)、農業系バイオマス(麦わら、サトウキビ、米糠、草木等)、畜産系バイオマス(家畜廃棄物、水産系バイオマス(水産加工残滓)、廃棄物系バイオマス(生ゴミ、RDF(Refused Derived Fuel):ゴミ固形化燃料、庭木、建設廃材、下水汚泥、硬質プラスチック、軟質プラスチック、シュレッダーダスト等)を含む。上記林業系バイオマス等の木質系バイオバスは、木材を主体とするバイオマスであり、例えば、建築廃材、間伐材、林地残材、薪炭林、製紙廃棄物、製材廃材、木製電柱、木製枕木等を含む。この木質系バイオマスとしては、生木よりも、一度乾燥工程を経た比較的水分が少ないもの(例えば3〜20質量%)を用いることが好ましい。
【0033】
プラスチックに関しては、通常、曲げ弾性率が定常状態で7000kg/cm以上を硬質プラスチック、700kg/cm以下を軟質プラスチックと区別される。その間の性状のものは半硬質プラスチックとされる。硬質プラスチックは、熱硬化性プラスチック、スチロール樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、硬質塩ビ樹脂等の破砕時に溶融、融着しにくいプラスチックである。一方、軟質プラスチックは、ポリエチレン、軟質塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、発泡スチロール等、溶融性を有するため破砕に適さないプラスチックである。
【0034】
また、一般廃棄物ゴミは、自治体単位で収集する家庭系ゴミや、事業者から出る紙類を多く含む事業系ゴミである。ただし、本発明は炭素質のエネルギー転換に関するものであるため、炭素質をほとんど含まない廃棄物、すなわち分別された金属、ガラス類等は対象とはしない。
【0035】
なお、以下の説明では、木質系バイオマスを主体とし、廃プラスチック、廃タイヤが添加された炭素質原料を用いる例について説明する。しかし、本発明の炭素質原料は、木質系バイオマスを含む原料であれば、廃プラスチック及び廃タイヤを含まず、木質系バイオマスのみからなる原料であってもよいし、木質系バイオマス以外の任意の炭素質原料を含む原料であってもよい。
【0036】
図1に示すように、本実施形態に係る原料処理装置は、概略的には、熱分解炉1と、ガス処理装置2と、塊状炭化物回収系統3(第1の回収系統に相当する。)と、微粉状炭化物回収系統4(第2の回収系統に相当する。)とから構成される。以下に原料処理装置の各部について詳述する。
【0037】
[1.1.熱分解炉の構成及び動作]
熱分解炉1は、炭素質原料を熱分解処理し、熱分解ガスと炭化物を生成する。熱分解炉1は、対向流式シャフト型(縦型)の熱分解炉で構成されており、縦型の炉内に貯留した炭素質原料を上部から下部に移動させる一方、反応ガス及び熱分解ガスを下部から上部に移動させる。かかる熱分解炉1の炉頂部には、炭素質原料を投入するための原料投入口11と、熱分解ガスを排出するためのガス排出口12が設けられている。当該ガス排出口12は、配管51を介して改質炉21の炉頂部に接続されている。一方、熱分解炉1の炉底部には、炭化物を排出するための炭化物排出口13が設けられており、当該炭化物排出口13は搬送装置31に接続されている。また、熱分解炉1の炉底部と中央部にはそれぞれガス供給口14、15が設けられており、ガス供給口14からは液化石油ガス(LPG)等の燃料ガスが炉内に供給され、ガス供給口15からはLPG等の燃料ガス、酸素、窒素、蒸気等の反応ガスが炉内に供給される。
【0038】
かかる熱分解炉1の動作について説明する。不図示の搬送装置により搬送されてきた炭素質原料は、熱分解炉1の炉頂部の原料投入口11から投入されて、炉内を降下する。このとき、熱分解炉1のガス供給口14、15から、LPG、酸素、窒素及び蒸気等が炉内に供給されており、炉下部側で炭素質原料が熱分解される。このため、上記炭素質原料は、熱分解炉内部を徐々に下降しながら、炉内を上昇する熱分解ガスにより乾燥、昇温される。この結果、炭素質原料に含まれる有機物が熱分解されて、熱分解ガスが生成される。また、熱分解された炭素質原料の残渣は炭化物となる。
【0039】
生成された熱分解ガスは、炉内を上昇して炉頂部のガス排出口12から排出され、改質炉21に導入される。このとき、上記生成された炭化物のうち微細径(例えば数十μm以下)の微粉状炭化物は、熱分解ガスの流動に伴ってガス排出口12から排出され、改質炉21に導入される。一方、上記熱分解炉1で生成された炭化物のうち大径(例えば数十mm以下)の塊状炭化物は、炉底部の炭化物排出口13から排出される。また、廃タイヤや廃プラスチックなどに含まれる金属物等についても、塊状炭化物とともに炭化物排出口13から排出される。さらに、熱分解炉1で不可避的に発生するクリンカも、塊状炭化物とともに炭化物排出口13から排出されるが、詳細は後述する。
【0040】
[1.2.ガス処理装置の構成及び動作]
ガス処理装置2は、熱分解炉1から導入された熱分解ガスを処理(改質、加熱、冷却、除塵、精製等)するとともに、当該熱分解ガスに同伴してガス処理装置2に供給された微粉状炭化物を、当該熱分解ガスから分離して回収する。かかるガス処理装置2は、改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24、除塵装置25、ガス精製装置26等を備える。
【0041】
改質炉21は、熱分解炉1から導入された熱分解ガスを改質して、改質ガスを生成する。改質ガスは、熱分解ガスよりも発熱量の高い可燃性ガスである。改質炉21の炉頂部には、熱分解炉1からの配管51が接続されるとともに、酸素、窒素の供給口や、LPG等の燃料ガスを供給するためのガス供給口52が設けられる。改質炉21はボイラ22と併設されており、改質炉21の炉底部はボイラ22の下部と連通している。また、改質炉21の炉底部には、微粉状炭化物を回収するための微粉搬送装置41が設けられている。
【0042】
かかる改質炉21内は、ガス供給口52からの燃料ガスの燃焼熱により、例えば900℃〜1200℃の高温に維持される。そして、改質炉21は、熱分解炉1から導入された熱分解ガス中のタール分を、当該熱分解ガス中に含まれる水蒸気、追加して添加される酸素、水蒸気などを用いて改質し、改質ガスを生成する。かかる改質処理により生成された改質ガスは、改質炉21の炉底部からボイラ22に導入される。
【0043】
ところで、熱分解炉1から改質炉21に導入される熱分解ガスには、微粉状炭化物が同伴しているため、改質炉21から送出される改質ガス中にも当該微粉状炭化物が含まれることとなる。このため、かかる微粉状炭化物を改質ガスから分離して回収するために、改質炉21の後段に除塵装置25が設置されている。
【0044】
除塵装置25は、改質ガスから微粉状炭化物を分離して回収する。この除塵装置25は、例えば、バグフィルタ、高温セラミックフィルタ、サイクロン集塵装置など、各種の除塵方式を採用できる。ただし、除塵方式によっては除塵装置25に導入可能なガスの温度が低温に限られる場合があり、この場合には、除塵装置25に導入されるガスの温度を、その除塵方式に適した温度に制御する必要がある。例えば、除塵装置25としてバグフィルタを採用した場合、バグフィルタに導入されるガスの温度を、例えば200℃以下に調整する必要がある。
【0045】
そこで、本実施形態では、除塵装置25をバグフィルタで構成した場合には、上記改質炉21と除塵装置25の間に、ガス温を調整するためのガス温調整装置として、ボイラ22、23及びガス冷却装置24が設けられている。これらのボイラ22、23及びガス冷却装置24は、改質炉21から導入された改質ガスの温度を、除塵装置25の除塵方式に適した温度に調整する。例えば、改質炉21から排出された高温の改質ガス(例えば800℃)を、上記ガス温調整装置によりに冷却して、バグフィルタが対応可能な温度(例えば200℃以下)に調整する。
【0046】
ボイラ22、23は、改質炉21から導入された改質ガスの熱を回収し、蒸気を発生させる。かかるボイラ22、23による熱回収により、改質ガスの温度は低下する。ボイラ22は、改質炉21と併設されており、当該ボイラ22とボイラ23は配管53で接続されている。かかるボイラ22、23による熱回収により、改質ガスの温度は低下する。ボイラ22、23により廃熱を利用して生成された蒸気は、原料処理装置の熱分解炉1や他の設備により有効利用される。
【0047】
また、ボイラ23とガス冷却装置24は、上下に一体構成されている。ガス冷却装置24は、散水装置54を具備しており、ボイラ23から導入された改質ガスを水冷する。ガス冷却装置24の下部と除塵装置25とは、配管55により接続されている。また、ガス冷却装置24の底部には、微粉状炭化物を回収するための微粉搬送装置42が設けられている。
【0048】
かかる構成により、改質炉21から排出された改質ガスは、ボイラ22、23により熱回収されてその温度が低下した後、さらに、ガス冷却装置24により除塵装置25に適した温度まで冷却されてから、除塵装置25に導入される。なお、除塵装置25が高温セラミックフィルタである場合には、当該高温の改質ガスを直接、或いは若干冷却するだけで、除塵装置25に導入可能であるので、必ずしもボイラ22、23及びガス冷却装置24等のガス温調整装置を設けなくてもよい(図4参照。)。
【0049】
上記のように、改質ガスは、改質炉21からボイラ22、23及びガス冷却装置24を経て除塵装置25導入されるが、当該改質ガスにも微粉状炭化物が同伴している。除塵装置25は、上記のようにして導入された改質ガスから、当該改質ガスに同伴する粉塵(微粉状炭化物を含む。)を分離して回収する。粉塵が除去された改質ガスは、配管56を介してガス精製装置26に送出される。ガス精製装置26は、急冷塔、洗煙塔、熱交換器、ガスホルダ、排水処理設備等から構成されており、上記改質ガスを精製して、発熱量の多い可燃性ガスを生成する。かかる可燃性ガスは、ガスエンジン又は蒸気ボイラ等における燃焼発電に利用される。一方、除塵装置25により回収された微粉状炭化物は、当該除塵装置25の底部に設けられた微粉搬送装置43により排出される。
【0050】
[1.3.炭化物回収系統の構成及び動作]
次に、塊状炭化物回収系統3と微粉状炭化物回収系統4について説明する。上述したように、大径(例えば数十mm以下)の塊状炭化物は、熱分解炉1の下部から排出され、小径(例えば数十μm以下)の微粉状炭化物は、改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24、除塵装置25等のガス処理装置2から排出される。塊状炭化物回収系統3は、塊状炭化物専用の回収機構であり、微粉状炭化物回収系統4は、微粉状炭化物専用の回収機構である。
【0051】
このように、本実施形態に係る原料処理装置では、炭化物の回収系統を2系統に分離し、塊状炭化物と微粉状炭化物をそれぞれ別々に回収処理する。回収系統を2つに分離する理由は、第1に、熱分解炉1でクリンカが発生するため、第2に、冷却及び破砕の必要性が低い微粉状炭化物の発生量が多いためである。以下に当該理由について詳述する。
【0052】
まず、クリンカの発生について説明する。上述したように本実施形態に係る熱分解炉1は、対向流式シャフト型熱分解炉で構成されており、炉内を上昇する熱分解ガスの温度が炉頂部(ガス排出口12付近)で300〜600℃になり、炉底部から排出される炭化物の温度が400〜600℃になるように、熱分解炉1の操業条件が制御されている。本実施形態に係る対向流方式の固体とガスの熱交換では、熱分解ガスの熱源を投入する箇所付近(例えば、ガス供給口15)の温度が最も高く、その温度は木質系バイオマス原料を熱分解するのに必要な温度(原料成分にもよるが、例えば500℃以上)であればよい。その結果、上記のような炉頂部および炉底部の温度分布を生じる。このため、対向流式シャフト型熱分解炉の炉内温度は、一般的なガス化炉と比べて低温に設定されることが一般的である。従って、従来では、炉内温度が低い対向流式シャフト型熱分解炉により、木質系バイオマス等の原料を熱分解したとしても、クリンカ(溶融した原料中の灰分が凝縮・固化した硬質の大塊)が発生しないと考えられていた。
【0053】
しかし、本願発明者が鋭意研究したところ、上記低温で動作する対向流式シャフト型熱分解炉においても、タール凝縮対策等で炉頂温度を300℃〜600℃にするように熱を与える必要があることから、炉内に熱分解ガスの熱源を投入する箇所(最も高い温度になる箇所;例えばガス供給口15付近)は、局所的に高温(例えば600℃〜1000℃程度)になるので、クリンカが不可避的に発生することが判明した。かかるクリンカは、塊状炭化物よりも大径かつ硬質であり、塊状炭化物の回収系統に次のような制約を与える。
【0054】
熱分解炉1で発生したクリンカは、炉底部の炭化物排出口13から上記塊状炭化物や金属物とともに排出される。このようなクリンカと塊状炭化物の混合物から、再利用可能な塊状炭化物を分離・回収するためには、当該混合物を十分に冷却した上で破砕する工程が必要となる。特に、熱分解炉1から排出される高温(例えば400℃)のクリンカは、大径で硬質であり、内部の熱が冷めにくい。従って、当該クリンカが発火源となることを防止するためには、高い破砕能力を有する破砕機でクリンカを破砕してから、冷却効果の高い冷却装置で十分に冷却する必要がある。このように熱分解炉1で不可避的に発生するクリンカが塊状炭化物に混合して排出されるからこそ、クリンカを破砕してから、当該混合物を十分に冷却する必要がある。よって、塊状炭化物回収系統3では、熱分解炉1から排出される塊状炭化物にクリンカや金属物が混合しているため、これら混合物の破砕、冷却、選別処理が必須となる。
【0055】
一方、ガス処理装置2から排出される塊状炭化物には、クリンカや金属物が混合していないため、微粉状炭化物回収系統4では、破砕工程や選別工程が不要である。さらに、微粉状炭化物は、粒径が小さいため、塊状炭化物やクリンカと比べて冷却され易い。従って、微粉状炭化物回収系統4では、上記塊状炭化物のように冷却効果の高い冷却装置を使用しなくても、簡易な冷却装置で十分である。
【0056】
ここで、もし上記微粉状炭化物の発生量が少ない場合には、回収設備の簡素化の観点から、微粉状炭化物を塊状炭化物と同一の回収系統で同時に処理することも有効である(図7参照。)。しかし、本願発明者が図1に示す原料処理装置を実際に稼働させて、塊状炭化物と微粉状炭化物の発生状況を確認したところ、塊状炭化物と微粉状炭化物の発生比率は、塊状炭化物:微粉状炭化物=5:5〜7:3(質量比)であり、微粉状炭化物の発生量は塊状炭化物の発生量に匹敵することが判明した。
【0057】
ここで、図2及び図3を参照して、塊状炭化物と微粉状炭化物の発生量の具体例について説明する。図2、図3は、本実施形態に係る原料処理装置の各部から排出される炭化物の発生割合と温度を示す説明図である。図2は、熱分解炉1に投入される炭素質原料として、木質系バイオマス、廃プラスチック及び廃タイヤの3種類の廃棄物を混合したものを用いた場合を示し、図3は、当該炭素質原料として、木質系バイオマスを単独で用いた場合を示す。
【0058】
図2及び図3に示すように、熱分解炉1からは塊状炭化物とクリンカが排出される。この塊状炭化物のサイズは数十mm以下であり、クリンカのサイズは250mm以下である。このように、クリンカは塊状炭化物よりも10倍程度も大きい。一方、改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24、除塵装置25からは、微粉状炭化物が排出される。微粉状炭化物のサイズは数十μm以下であり、塊状炭化物の千分の一程度である。また、図2に示すように、混合原料を用いた場合には、熱分解炉1から、塊状炭化物及びクリンカとともに、排プラスチックや廃タイヤに含まれていた金属物も排出される。この金属物のサイズは、250mm以下である。
【0059】
このように、塊状炭化物は微粉状炭化物よりも圧倒的に大きく、さらに、この塊状炭化物よりもクリンカや金属物が大きい。従って、熱分解炉1から排出される塊状炭化物、クリンカ等の混合物を破砕する必要があるが、微粉状炭化物を破砕する必要がないことが分かる。
【0060】
また、塊状炭化物と微粉状炭化物の発生量を比較すると、図2と図3のいずれの場合も、熱分解炉1から排出される塊状炭化物の発生割合は、40〜50質量%(50〜60質量%)と最も大きいものの、排出物全体の半分程度である。これに対し、除塵装置25から排出される微粉状炭化物の発生割合は、20〜30質量%(25〜35質量%)であり、塊状炭化物の半分程度もある。さらに、改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24から排出される分も合わせると、微粉状炭化物の総発生量は、排出物全体の30〜50質量%程度を占める。
【0061】
このように、微粉状炭化物の発生量は、塊状炭化物の発生量に匹敵しており、かかる多量の微粉状炭化物を回収して有効利用することが好ましい。しかし、上述したように、微粉状炭化物は、塊状炭化物のような破砕工程や選別工程が不要であり、冷却工程も簡易な冷却で十分である。にもかかわらず、上記多量の微粉状炭化物を上記塊状炭化物やクリンカの混合物等と同一の回収系統でまとめて回収処理すると(図7参照。)、破砕、冷却及び選別工程の処理量が増大するので、大きな処理設備が必要となり、処理エネルギーも無駄になってしまう。さらに、上記塊状炭化物と微粉状炭化物を同一の破砕機で破砕した場合には、破砕機の破砕ツール隙間に微粉状炭化物が詰まってしまい、破砕効率が大幅に低下してしまう。
【0062】
そこで、かかる問題を解決すべく、本実施形態に係る原料処理装置では、クリンカや金属物が混合した塊状炭化物の回収系統と、微粉状炭化物の回収系統とを、別系統に分離している。即ち、図1に示すように、塊状炭化物回収系統3は、熱分解炉1から排出された塊状炭化物、クリンカ及び金属物の混合物を回収処理する。一方、塊状炭化物回収系統3は、ガス処理装置2から排出された微粉状炭化物を回収処理する。以下に、各々の回収系統について詳細に説明する。
【0063】
まず、塊状炭化物回収系統3の構成例について説明する。図1に示すように、塊状炭化物回収系統3は、熱分解炉1から排出された塊状炭化物とクリンカ及び金属物の混合物を処理し、当該混合物から炭化物を選別して回収する。この塊状炭化物回収系統3は、搬送装置31、破砕機32、冷却機33、選別機34、粉砕機35、炭化物バンカ36等を備える。
【0064】
搬送装置31は、例えば、水冷式の搬送用スクリューコンベヤで構成され、熱分解炉1の炉底部にある炭化物排出口13に隣接して設けられる。この搬送装置31は、熱分解炉1の炭化物排出口13から排出された塊状炭化物とクリンカ等の混合物を、破砕機32まで搬送する。当該混合物の排出温度は400℃程度の高温であるため、当該混合物の熱から搬送装置31を保護する必要がある。このため、搬送装置31は、装置の内部又は周囲に冷却水を循環させる冷却構造を具備している。この冷却構造により、搬送装置31のスクリューコンベヤによる搬送中に、塊状炭化物とクリンカ等の混合物も、冷却された搬送装置31と接触することにより、自然に冷却される(一次冷却)。このように、冷却構造を有する搬送装置31は、熱分解炉1から排出された混合物を第1の冷却方式で一次冷却する第2の冷却装置に相当する。
【0065】
破砕機32は、被破砕物を所定の大きさ以下に破砕する装置であり、例えば搬送装置31の出側に設けられる。この破砕機32は、熱分解炉1から排出された混合物を破砕する破砕装置に相当する。破砕機32のサイズは、上記混合物に含まれるクリンカの大きさに応じて決定され、例えば、クリンカが250mm角程度である場合には、200〜300mm用の破砕機が選ばれる。また、破砕機32としては、採石相当の硬質を有するクリンカを破砕可能な性能を有する破砕機が選ばれる。
【0066】
かかる破砕機32は、当該搬送装置31により投入された混合物を、後段の冷却機33における冷却に適したサイズ(例えば50mm以下)の塊に破砕する。当該破砕機32により、混合物内の塊状炭化物のみならず、硬質のクリンカをも冷却機33で冷却可能な大きさに破砕できる。また、破砕機32には、塊状炭化物やクリンカ等のみが投入され、微粉状炭化物は投入されないので、破砕機32に微粉状炭化物が詰まり破砕性能や破砕効率が低下することもない。かかる破砕機32により破砕された混合物は、冷却機33に投入される。
【0067】
冷却機33は、上記破砕された混合物を第2の冷却方式で二次冷却する第1の冷却装置に相当する。冷却機33は、上述した冷却構造を有する搬送装置31(第2の冷却装置)よりも高い冷却性能を有する冷却装置で構成され、大径の炭化物やクリンカ等を冷却可能である。例えば、冷却機33は、間接水冷型回転冷却方式を有し、大塊やクリンカ等、被冷却物と接する雰囲気は不活性ガス雰囲気(N等)とし、直接、被冷却物に散水せずに外郭や内部の接触範囲を冷却して、抜熱する構造である。この冷却機33の冷却方式(第2の冷却方式)は、上記搬送装置31の冷却方式(第1の冷却方式)よりも冷却効果が高い。この冷却機33により、数百℃の混合物を十分に冷却することで、当該混合物が発火源とならない温度にまで当該混合物を冷却できる。特に、上記破砕機32によりクリンカや塊状炭化物を細かく破砕した上で冷却機33に投入することで、当該冷却機33は、破砕されたクリンカや塊状炭化物を効果的に冷却できる。よって、下工程で、当該混合物を安全に搬送できるとともに、後段の選別機34により当該混合物を好適に選別できるようになる。
【0068】
選別機34は、上記冷却された混合物の中から炭化物を選別して回収する選別装置に相当する。選別機34は、例えば、振動篩、回転式選別機、磁気選別機又はこれらの組合せなどで構成される。上記冷却機33で冷却された混合物は、不図示の搬送手段により搬送されて、選別機34に投入される。選別機34は、塊の大きさや質量、磁性の有無等に応じて当該混合物を選別し、クリンカと金属物と炭化物に分離する。かかる選別機34により、上記冷却後の混合物の中から、塊状炭化物が破砕された炭化物の塊を選別して回収できる。選別機34により回収された炭化物は、粉砕機35に投入される。
【0069】
粉砕機35は、例えば5mm用の粉砕機で構成され、上記選別機34により選別された炭化物を数mm程度の粒径に粉砕する。これにより、炭化物を燃焼する設備で利用し易いように、当該炭化物を適切な粒径に粉砕した上で回収することができる。かかる粉砕機35により粉砕された炭化物は、炭化物バンカ36に貯留される。
【0070】
次に、微粉状炭化物回収系統4の構成例について説明する。図1に示すように、微粉状炭化物回収系統4は、ガス処理装置2の各部(改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24、除塵装置25等)から排出された微粉状炭化物を回収する。この微粉状炭化物回収系統4は、除塵装置25、微粉搬送装置41、42、43、配管57、58、59等を備える。
【0071】
改質炉21に設けられた微粉搬送装置41は、熱分解炉1から改質炉21に導入された熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物の一部を回収する第1の回収装置に相当する。微粉搬送装置41は、例えば、水冷式の搬送用スクリューコンベヤで構成され、改質炉21及びボイラ22の底部に設けられる。
【0072】
上述したように、熱分解炉1から改質炉21に導入される熱分解ガスには、熱分解炉1で生成された炭化物の微粉成分(微粉状炭化物)が同伴している。このため、改質炉21で生成された改質ガスにも、当該微粉状炭化物が依然として混入しており、そのうちの一部は、自重又はガス流動の影響により改質炉21の底部に落下する。微粉搬送装置41は、当該改質炉21内の改質ガスから落下した微粉状炭化物を回収及び搬送して、炉外に排出する。
【0073】
このように改質炉21から排出される微粉状炭化物の温度は、800℃程度の高温であるため、当該微粉状炭化物の熱から微粉搬送装置41を保護する必要がある。このため、微粉搬送装置41は、装置の内部又は周囲に冷却水を循環させる冷却構造を具備している。この冷却構造により、微粉搬送装置41のスクリューコンベヤによる搬送中に、微粉状炭化物も、冷却された微粉搬送装置41と接触することにより、自然に冷却される。特に、微粉状炭化物は、粒径が小さく冷却され易いため、微粉搬送装置41を保護するための冷却構造であっても、上記改質炉21から排出された高温の微粉状炭化物を、発火源とならない温度にまで十分に冷却できる。
【0074】
このように、冷却構造を有する微粉搬送装置41は、改質炉21等のガス処理装置2により回収された微粉状炭化物を、第1の冷却方式で冷却する第3の冷却装置に相当する。ここで、当該微粉搬送装置41の冷却方式は、上述した搬送装置31の冷却方式と同一の第1の冷却方式であり、搬送に伴う自然冷却である。上記のように改質炉21から排出された微粉状炭化物は、微粉搬送装置41により冷却された後に、配管57を通じて炭化物バンカ36に気流搬送される。
【0075】
ガス冷却装置24に設けられた微粉搬送装置42は、改質炉21からガス温調整装置(即ち、ボイラ22、23、ガス冷却装置24)に導入された改質ガスに同伴する微粉状炭化物の一部を回収する第2の回収装置に相当する。微粉搬送装置41は、例えば、搬送用のテーブルフィーダーで構成され、ガス冷却装置24の底部に設けられる。
【0076】
この微粉搬送装置42は、改質炉21からボイラ22、23を通じてガス冷却装置24に導入された改質ガスから、微粉状炭化物の一部を回収する。具体的には、改質炉21からボイラ22、23、ガス冷却装置24に導入される改質ガスには、微粉状炭化物が同伴しており、そのうちの一部は、自重又はガス流動の影響によりガス冷却装置24の底部に落下する。微粉搬送装置42は、当該ガス冷却装置24内で落下した微粉状炭化物を回収及び搬送して、ガス冷却装置24の外部に排出する。
【0077】
また、除塵装置25は、改質炉21から除塵装置25に導入された改質ガスから、当該改質ガスに同伴する微粉状炭化物を分離して回収する。微粉搬送装置41は、例えば、搬送用スクリューコンベヤで構成され、除塵装置25の底部に設けられる。微粉搬送装置41は、除塵装置25により改質ガスから回収された微粉状炭化物を搬送して、除塵装置25の外部に排出する。
【0078】
ここで、除塵装置25が、導入ガスの温度制約を有する除塵機、例えばバグフィルタである場合、改質炉21から除塵装置25に導入される改質ガスは、ボイラ22、23、ガス冷却装置24により、制約温度(例えば200℃)まで冷却されている。従って、ガス冷却装置24や除塵装置25から排出された微粉状炭化物の温度は、例えば200℃程度の低温であるので、これらの微粉状炭化物を積極的に冷却する必要はない。従って、ガス冷却装置24や除塵装置25から排出された微粉状炭化物は、冷却工程を経ずに、配管58、59を通じて炭化物バンカ36に気流搬送される。
【0079】
一方、除塵装置25が、高温のガスに対応した除塵機、例えば高温セラミックフィルタである場合、図1に示すようなボイラ22、23、ガス冷却装置24等のガス温調整装置を設けずに、改質炉21から排出された高温の改質ガスを、除塵装置25に導入することができる。
【0080】
ここで、図4を参照して、除塵装置25が、高温セラミックフィルタ等の高温ガスに対応可能である場合の原料処理装置の構成例について説明する。図4は、本実施形態の変更例に係る原料処理装置を示す模式図である。
【0081】
図4に示すように、改質炉21と除塵装置25の間には、上記ガス温調整装置が設けられておらず、改質炉21から排出された改質ガスは、配管60を通じて、高温セラミックフィルタ等からなる除塵装置25に直接導入される。除塵装置25は、当該改質ガスから微粉状炭化物を分離及び回収する。除塵装置25の底部に設けられた微粉搬送装置43は、除塵装置25により回収された微粉状炭化物を搬送して、外部に排出する。
【0082】
このように、改質炉21から除塵装置25に直接、高温の改質ガスを導入した場合、除塵装置25から排出される微粉状炭化物は、依然として高温(例えば400℃)であるので、発火源とならないように当該微粉状炭化物を冷却する必要がある。そこで、微粉搬送装置43の後段に、冷却構造を有する微粉搬送装置44が追加設置されている。
【0083】
この微粉搬送装置44は、除塵装置25で回収された微粉状炭化物を上記第1の冷却方式で冷却する第3の冷却装置に相当する。当該微粉搬送装置44は、例えば、水冷式の搬送用スクリューコンベヤで構成されており、装置の内部又は周囲に冷却水を循環させる冷却構造を具備している。かかる微粉搬送装置44は、上記微粉搬送装置43から供給された高温の微粉状炭化物を冷却しながら搬送する。上述したように、微粉状炭化物は粒径が小さく冷却され易いため、微粉搬送装置44を保護するための冷却構造であっても、上記除塵装置25から排出された高温の微粉状炭化物を、発火源とならない温度にまで十分に冷却できる。かかる微粉搬送装置44により冷却された微粉状炭化物は、配管59を通じて炭化物バンカ36に気流搬送される。なお、微粉搬送装置44を設けずに、微粉搬送装置43に冷却構造を設けても、同様の冷却効果が得られる。
【0084】
また、図1、図4のいずれの例でも、ガス処理装置2の各部(改質炉21、除塵装置25、ボイラ22、23、ガス冷却装置24等)でそれぞれ回収された微粉状炭化物は、一箇所(例えば炭化物バンカ36)に集約されて回収される。このように、微粉状炭化物回収系統4は、ガス処理装置2の各所で回収された微粉状炭化物をまとめて回収する。これにより、ガス処理装置2の各所で回収される同質の微粉状炭化物を集約して取り扱うことが可能となる。
【0085】
以上、図1、図4を参照して、本実施形態に係る炭化物の回収系統について説明した。上記のように、熱分解炉1から排出される塊状炭化物には、破砕工程や選別工程が必要なクリンカや金属物が混合している。このため、当該混合物から炭化物を回収する塊状炭化物回収系統3には、破砕機32、冷却機33及び選別機34が設けられている。これにより、当該混合物を破砕、冷却した上で、当該混合物から炭化物を選別して回収できる。
【0086】
一方、改質炉21、除塵装置25等から回収される微粉状炭化物は、比較的粒径の整った微細径の炭化物のみを含み、クリンカや金属物等の異物は含んでいない。このため、微粉状炭化物回収系統4には、簡易な冷却装置(第3の冷却装置)のみを設ければよく、破砕機や選別機を設けなくてもよい。しかも、第3の冷却装置としては、搬送用スクリューコンベヤ等からなる微粉搬送装置41、44に冷却構造を設ければ十分であり、専用の冷却装置を別途設置する必要はない。従って、微粉状炭化物回収系統4の装置構成を簡素化し、設備コストを低減できる。
【0087】
上記のように塊状炭化物回収系統3及び微粉状炭化物回収系統4により回収された炭化物は、系外の微粉炭ボイラ等の原料や、本原料処理装置の熱分解炉1や改質炉21の燃料として有効利用される。
【0088】
なお、図1及び図4に示した構成例では、塊状炭化物回収系統3により回収された塊状炭化物と、微粉状炭化物回収系統4により回収された微粉状炭化物は、同一の炭化物バンカ36に集約して貯留されていた。しかし、かかる例に限定されず、塊状炭化物と微粉状炭化物を、相異なる貯留装置にそれぞれ貯留して、別々に搬出するようにしてもよい。
【0089】
[2.炭素質原料の処理方法]
次に、図5を参照して、図1に示した原料処理装置を用いた炭素質原料の処理方法について説明する。図5は、本実施形態に係る原料処理装置を用いた炭素質原料の処理方法を示す工程図である。
【0090】
図5に示すように、まず、対向流式シャフト型熱分解炉1は、木質系バイオマス、廃プラスチック及び廃タイヤ等を含む炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成する(S1)。この熱分解工程では、熱分解炉1内が局所的に高温(例えば1000℃以上)になるため、炭素質原料中の灰分が凝縮・固化した大塊(クリンカ)が不可避的に発生する。このクリンカと塊状炭化物の混合物は、熱分解炉1の底部から排出される(S2)。一方、熱分解炉1で生成された熱分解ガスは、改質炉21に導入される。このとき、熱分解炉1で生成された炭化物の微粉成分(微粉状炭化物)は、熱分解ガスに同伴して改質炉21内に進入する。
【0091】
次いで、改質炉21は、高温の炉内で、酸素、蒸気等を用いて、熱分解炉1から導入された熱分解ガス中のタール分を改質して、改質ガスを生成する(S3)。この改質工程により生成された改質ガスは、改質炉21からボイラ22、23に導入される。さらに、かかる改質工程とともに、改質炉21内に導入された熱分解ガス中、及び改質炉21で生成された改質ガス中に含まれる微粉状炭化物の一部が回収される(S4)。改質炉21で回収された微粉状炭化物は、改質炉21の底部に設けられた微粉搬送装置41により炉外に搬送される。
【0092】
その後、ボイラ22、23は、改質炉21から導入された改質ガスの熱を回収する(S5)。この収熱工程により、改質ガスの温度が例えば800℃から250℃程度に低下する。熱回収された改質ガスは、ボイラ22、23からガス冷却装置24に導入される。さらに、かかる収熱工程とともに、ボイラ22、23内に導入された改質ガス中に含まれる微粉状炭化物の一部を回収してもよい(S6)。図1では図示していないが、ボイラ23の出側に搬送装置等の回収機構を設けることにより、ボイラ23内の改質ガスから微粉状炭化物を回収して機外に搬出することが可能となる。
【0093】
次いで、ガス冷却装置24は、ボイラ23から導入された改質ガスを冷却する(S7)。このガス冷却工程により、改質ガスの温度が例えば250℃から200℃程度に低下し、後段の除塵装置25(バグフィルタ)が対応可能な温度に調整される。冷却された改質ガスは、ガス冷却装置24から除塵装置25に導入される。さらに、かかるガス冷却工程とともに、ガス冷却装置24内に導入された改質ガス中に含まれる微粉状炭化物が回収される(S8)。ガス冷却装置24で回収された微粉状炭化物は、ガス冷却装置24の底部に設けられた微粉搬送装置42により装置外に搬出される。
【0094】
その後、除塵装置25(バグフィルタ)は、濾布を用いて改質ガスから微粉状炭化物を捕集することで、改質ガスから微粉状炭化物を分離して回収する(S9)。このように微粉状炭化物等のダストが除去された改質ガスは、ガス精製装置26に送出されて、精製される。一方、除塵装置25で回収された微粉状炭化物は、当該除塵装置25の底部に設けられた微粉搬送装置43により装置外に搬出される。
【0095】
以上の回収工程S4、S6、S8、S9により、改質炉21、ボイラ22、23、ガス冷却装置24及び除塵装置25にてそれぞれ回収された微粉状炭化物は、必要に応じて冷却される(S10)。特に、改質炉21から排出される微粉状炭化物は高温(例えば800℃)であるので、冷却する必要がある。しかし、微粉状炭化物は容易に冷却されるので、大がかりな冷却装置を設置する必要はない。そこで本実施形態では、上記冷却構造を有する微粉搬送装置41により、改質炉21から排出された微粉状炭化物を搬送することで、当該搬送中に微粉状炭化物を適正温度まで自然に冷却する。
【0096】
なお、図5の例では、冷却工程S10にて、改質炉21で回収された微粉状炭化物のみならず、ボイラ22、23、ガス冷却装置24及び除塵装置25により回収された微粉状炭化物もまとめて冷却している。しかし、後者の微粉状炭化物の排出温度は比較的低温(例えば200〜250℃)であり、必ずしも冷却する必要はないので、図5の波線で示すように、当該微粉状炭化物については冷却工程S10を経ずに回収してもよい。
【0097】
以上の工程S4、S6、S8、S9及びS10が、上記微粉状炭化物回収系統4により微粉状炭化物を回収する工程に相当する。一方、上記塊状炭化物の回収工程は、上記塊状炭化物回収系統3により、以下の手順で行われる。
【0098】
上記工程S2にて、熱分解炉1の底部の炭化物排出口13から、微粉状炭化物、クリンカ及び金属物の混合物(例えば400℃)が排出され、搬送装置31により搬送される。搬送装置31は、水冷構造を有しており、当該搬送装置31により搬送される混合物は、搬送装置31のスクリューコンベヤに対して放熱して、自然に冷却される(S11)。このように、熱分解炉1から排出された高温の混合物は、搬送装置31による搬送中に一次冷却される。
【0099】
次いで、上記S11で一次冷却された混合物は、破砕機32により所定サイズ以下の塊に破砕される(S12)。かかる破砕工程S12により混合物中の塊状炭化物及びクリンカが、次の冷却工程S13における冷却に適したサイズに破砕される。
【0100】
さらに、上記S12で破砕された混合物は、冷却機33により強制的に二次冷却される(S13)。この冷却機33の冷却方式は、上記搬送装置31の冷却構造による冷却方式よりも冷却効果が高い。よって、破砕された混合物(塊状炭化物及びクリンカ等)を内部まで十分に冷却することができるので、下工程で混合物が発火源となることを防止でき、選別工程S14を実行可能となる。
【0101】
その後、上記S13で冷却された混合物は、選別機34により炭化物とクリンカと金属物に選別される(S14)。さらに、選別された炭化物は、粉砕機35により粉砕され、微粉炭ボイラ等での使用に適した所定粒径以下の炭化物となる(S15)。
【0102】
以上の工程S2、S11〜S15により、熱分解炉1で生成された塊状炭化物やクリンカ等を含む混合物から、回収対象の炭化物のみを適切に回収することができる。このとき、ガス処理装置2から排出される微粉状炭化物とは別系統で、当該混合物を単独で処理するので、破砕工程S12や冷却工程S13、選別工程S14の処理量を必要最小限に抑えることができる。
【0103】
図7は、本実施形態の比較例として、塊状炭化物と微粉状炭化物を同一の回収系統で同時に処理する場合の工程図である。図7では、熱分解炉1から排出される塊状炭化物を含む混合物と、ガス処理装置2から排出される微粉状炭化物とをまとめて、同一の回収系統で破砕、冷却、選別処理する(S21、S22、S23)。しかし、このように処理すると、破砕、選別工程が不要な微粉状炭化物までもが破砕機32、冷却機33及び選別機34に投入されることになり、これら設備での処理量が無駄に増加してしまう。
【0104】
これに対し、本実施形態に係る原料処理方法では、図5に示したように、塊状炭化物と微粉状炭化物を別系統で処理する。これにより、塊状炭化物回収系統3では、塊状炭化物を含む混合物のみを破砕、冷却、選別処理し、微粉状炭化物を処理しないので、図7の場合よりも処理量を大幅に低減できる。
【0105】
次に、図6を参照して、本実施形態の変更例に係る原料処理装置(図4参照。)を用いた炭素質原料の処理方法について説明する。図6は、本実施形態の変更例に係る原料処理装置を用いた炭素質原料の処理方法を示す工程図である。
【0106】
図4に示した原料処理装置における除塵装置25は、高温セラミックフィルタ等の高温ガスに対応した構造を有しているので、改質炉21から排出される高温の改質ガスをそのまま除塵装置25に導入可能である。従って、上記ボイラ22、23、ガス冷却装置24等のガス温調整装置を具備していない。
【0107】
かかる原料処理装置を用いた炭素質原料の処理方法では、図6に示すように、改質炉21と除塵装置25で微粉状炭化物が回収される(S4、S6)。かかる改質炉21と除塵装置25から排出される微粉状炭化物は、高温であるので、冷却工程S10にて微粉状炭化物を適切な温度まで冷却する必要がある。この冷却工程S10で用いられる冷却装置としては、上述した微粉搬送装置41、44のような冷却構造を有する搬送用スクリューコンベヤ等で十分であり、高性能の冷却機を別途設置する必要はない。
【0108】
[3.まとめ]
以上、本実施形態に係る炭素質原料の処理装置及び処理方法について説明した。本実施形態によれば、熱分解炉1から排出される塊状炭化物と、ガス処理装置2から排出される微粉状炭化物の回収系統を別系統にしている。そして、塊状炭化物とクリンカの混合物を処理する塊状炭化物回収系統3にのみ、破砕機32、冷却効果の高い冷却機33、及び選別機34を設置する。この塊状炭化物回収系統4により、硬質で大径のクリンカや金属物を含む混合物を破砕、強冷却して、当該混合物から炭化物を適切に選別して回収できる。
【0109】
さらに、塊状炭化物回収系統3と、微粉状炭化物回収系統4が分離されているので、破砕、強冷却及び選別工程が不要な微粉状炭化物を、塊状炭化物から分離して処理することができる。従って、塊状炭化物回収系統3における破砕、冷却及び分離工程の処理量を、図7に示すように微粉状炭化物と塊状炭化物をまとめて処理した場合の例えば60%程度にまで低減できる。よって、処理設備の小型化、ひいては、処理エネルギーの省力化を図ることができる。
【0110】
さらに、図7に示すように、破砕機32に対して塊状炭化物とともに大量の微粉状炭化物を投入して、破砕処理を行うと(S21)、破砕ツールの溝に微粉が噛み込んで、破砕性能が低下してしまう。また、冷却されにくいクリンカや塊状炭化物を強制冷却するため冷却機33に対し、大量の微粉状炭化物も投入して、冷却処理を行うと(S22)、冷却の必要性が低い微粉状炭化物までも冷却することになり、冷却効率が低下する。さらに、選別機34に大量の微粉状炭化物も投入して選別処理を行うと(S23)、微粉状炭化物が邪魔になり、塊状炭化物の選別効率が低下する。
【0111】
これに対し、本実施形態では、塊状炭化物と微粉状炭化物を別系統で処理し、破砕機32、冷却機33、選別機34には、塊状炭化物とクリンカ等の混合物のみを投入し、微粉状炭化物は投入しない。従って、微粉状炭化物により破砕機32の破砕性能が低下しないので、破砕機32は、好適に動作して混合物を破砕することができる。また、冷却機33も、当該混合物のみを集中的に冷却できるので、塊状炭化物及びクリンカの冷却効率も向上できる。さらに、選別機34も、微粉状炭化物に邪魔されずに、塊状炭化物とクリンカと金属物を好適に選別できるようになる。
【0112】
以上のように本実施形態によれば、熱分解炉1で不可避的に発生するクリンカの弊害(塊状炭化物の選別回収の困難性)を解消しつつ、塊状炭化物と微粉状炭化物まとめて処理したときの弊害(処理量の増大)も回避できる。
【実施例】
【0113】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、上記図1に示した構成の原料処理装置の熱分解炉1に炭素質原料を投入し、塊状炭化物、クリンカ、金属物、微粉状炭化物の発生割合と発生量を測定した。次の表1は、炭素質原料として、木質系バイオマス単独で投入した場合の発生量を示す。また、表2は、炭素質原料として、木質系バイオマス、廃プラスチック及び廃タイヤの3種混合原料を投入した場合の炭化物等の発生量を示す。なお、塊状炭化物、クリンカ及び金属物の発生量は、熱分解炉1からの排出量であり、微粉状炭化物の発生量は、改質炉21、ボイラ22、23及びガス冷却装置24からの排出量の総量である。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
上記表1に示す発生量の炭化物等を処理するために必要な設備処理能力は、次の表3の通りである。また、上記表2に示す発生量の炭化物等を処理するために必要な設備処理能力は、次の表4の通りである。なお、表3及び表4の設備処理能力は、上記破砕機32、冷却機33、選別機34に要求される単位時間当たりの処理能力を示す。また、実施例1、2は、図5に示したように塊状炭化物と微粉状炭化物を分離回収する場合の処理能力を示す。一方、比較例1、2は、図7に示したように塊状炭化物と微粉状炭化物を混合して回収するときの処理能力を示す。
【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
表3に示すように、比較例1では、塊状炭化物(350kg/h)及びクリンカ(40kg/h)の混合物とともに、微粉状炭化物(310kg/h)も処理するので、必要な設備処理能力は700kg/hと大きい。これに対し、実施例1では、微粉状炭化物と塊状炭化物を分離して処理するので、必要な設備能力は390kg/hであり、比較例と比べて56%程度に抑制できる。
【0120】
また、表4に示すように、比較例1では、塊状炭化物(300kg/h)、クリンカ(130kg/h)及び金属物(40kg/h)の混合物とともに、微粉状炭化物(230kg/h)も処理するので、必要な設備処理能力は700kg/hと大きい。これに対し、実施例2では、微粉状炭化物と塊状炭化物を分離して処理するので、必要な設備能力は470kg/hであり、比較例と比べて67%程度に抑制できる。
【0121】
以上の結果から、微粉状炭化物と塊状炭化物を分離して処理することで、破砕機32、冷却機33及び選別機34に要求される処理能力を大幅に低減できることが分かる。従って、原料処理装置において炭化物を回収処理する設備の小型化、及び処理エネルギーの省力化を実現できることが実証されたといえる。
【0122】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0123】
1 熱分解炉
2 ガス処理装置
3 塊状炭化物回収系統
4 微粉状炭化物回収系統
11 原料投入口
12 ガス排出口
13 炭化物排出口
14、15 ガス供給口
21 改質炉
22、23 ボイラ
24 ガス冷却装置
25 除塵装置
26 ガス精製装置
31 搬送装置
32 破砕機
33 冷却機
34 選別機
35 粉砕機
36 炭化物バンカ
41、42、43、44 微粉搬送装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対向流式シャフト型熱分解炉により、少なくとも木質系バイオマスを含む炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成する工程と、
(b)前記熱分解炉で生成された前記熱分解ガスをガス処理装置に導入する工程と、
(c)前記ガス処理装置により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを処理するとともに、当該熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物を当該熱分解ガスから分離して回収する工程と、
(d)前記熱分解炉で生成された前記炭化物と、前記熱分解処理により前記熱分解炉内で発生したクリンカとの混合物を、前記熱分解炉の下部から排出する工程と、
(e)前記熱分解炉から排出された前記混合物を破砕する工程と、
(f)前記破砕された混合物を冷却する工程と、
(g)前記冷却された混合物の中から前記炭化物を選別して回収する工程と、
を含むことを特徴とする、炭素質原料の処理方法。
【請求項2】
(h)前記(e)工程より前に、前記熱分解炉から排出された前記混合物を、第1の冷却方式で一次冷却する工程を更に含み、
前記(f)工程では、前記第1の冷却方式よりも冷却効果の高い第2の冷却方式で、前記破砕された混合物を二次冷却することを特徴とする、請求項1に記載の炭素質原料の処理方法。
【請求項3】
(i)前記ガス処理装置から回収された前記微粉状炭化物を、前記第1の冷却方式で冷却する工程を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の炭素質原料の処理方法。
【請求項4】
前記ガス処理装置は、少なくとも改質炉及び除塵装置を備え、
前記(c)工程は、
(c1)前記改質炉により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する工程と、
(c2)前記改質炉に設けられた第1の回収装置により、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する工程と、
(c3)前記除塵装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスから、当該改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物を分離して回収する工程と、
(c4)前記(c2)及び(c3)工程により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素質原料の処理方法。
【請求項5】
前記ガス処理装置は、前記改質炉と前記除塵装置の間に設けられたガス温調整装置を更に含み、
前記(c)工程は、
(c5)前記ガス温調整装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスの温度を、前記除塵装置に適した温度に調整する工程と、
(c6)前記ガス温調整装置に設けられた第2の回収装置により、前記改質炉から導入された前記改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する工程と、
を更に含み、
前記(c4)工程では、前記(c2)、(c3)及び(c6)工程により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収することを特徴とする、請求項4に記載の炭素質原料の処理方法。
【請求項6】
前記炭素質原料は、前記木質系バイオマスに加え、廃タイヤ又は廃プラスチックのいずれか一方若しくは双方を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素質原料の処理方法。
【請求項7】
少なくとも木質系バイオマスを含む炭素質原料を熱分解処理することにより、炭化物及び熱分解ガスを生成し、前記炭化物と、前記熱分解処理により前記熱分解炉内で発生したクリンカとの混合物を下部から排出する対向流式シャフト型熱分解炉と、
前記熱分解炉の下部から排出された前記混合物から前記炭化物を回収する第1の回収系統と、
前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを処理するガス処理装置と、
前記熱分解炉から前記ガス処理装置に導入された前記熱分解ガスから、当該熱分解ガスに同伴する微粉状炭化物を分離して回収する第2の回収系統と、
を備え、
前記第1の回収系統は、
前記熱分解炉から排出された前記混合物を破砕する破砕装置と、
前記破砕された混合物を冷却する第1の冷却装置と、
前記冷却された混合物から前記炭化物を選別する選別装置と、
を備えることを特徴とする、炭素質原料の処理装置。
【請求項8】
前記第1の回収系統は、
前記熱分解炉から排出された前記混合物を、第1の冷却方式で一次冷却する第2の冷却装置を更に備え、
前記第1の冷却装置は、前記第1の冷却方式よりも冷却効果の高い第2の冷却方式で、前記破砕された混合物を二次冷却することを特徴とする、請求項7に記載の炭素質原料の処理装置。
【請求項9】
前記第2の回収系統は、
前記ガス処理装置から回収された前記微粉状炭化物を、前記第1の冷却方式で冷却する第3の冷却装置を備えることを特徴とする、請求項8に記載の炭素質原料の処理装置。
【請求項10】
前記ガス処理装置は、
前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスを改質して改質ガスを生成する改質炉を備え、
前記第2の回収系統は、
前記改質炉に設けられ、前記熱分解炉から導入された前記熱分解ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する第1の回収装置と、
前記改質炉から導入された前記改質ガスから、当該改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物を分離して回収する除塵装置と、
を備え、
前記第1の回収装置及び前記除塵装置により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の炭素質原料の処理装置。
【請求項11】
前記ガス処理装置は、
前記改質炉と前記除塵装置の間に設けられ、前記改質炉から導入された前記改質ガスの温度を、前記除塵装置に適した温度に調整するガス温調整装置を更に備え、
前記第2の回収系統は、
前記ガス温調整装置に設けられ、前記改質炉から導入された前記改質ガスに同伴する前記微粉状炭化物の一部を回収する第2の回収装置を更に備え、
前記改質炉、前記ガス温調整装置及び前記除塵装置により回収された前記微粉状炭化物を集めて回収することを特徴とする、請求項10に記載の炭素質原料の処理装置。
【請求項12】
前記炭素質原料は、前記木質系バイオマスに加え、廃タイヤ又は廃プラスチックのいずれか一方若しくは双方を含むことを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の炭素質原料の処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−87222(P2012−87222A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235374(P2010−235374)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】